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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104335
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】防災システム及び変換装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
G08B17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008478
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA01
5G405AA04
5G405AA06
5G405AB05
5G405AD02
5G405CA13
5G405CA18
5G405CA36
5G405FA25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】伝送方式が異なる防災受信盤と火災検知器であっても防災システムの構築を可能とし、火災検知器の一本化を可能として生産や在庫管理等の一貫性を図る。
【解決手段】防災受信盤と火災検知器とを信号回線で接続して火災を含む異常を監視する防災システムは、防災受信盤と火災検知器との間の信号回線に変換装置としてR-P変換装置64が設けられる。R-P変換装置64は、送受信する信号の種類に対応して設けられた複数の回線を備えた信号回線により防災受信盤に接続されP型伝送方式により防災受信盤と信号を送受信し、送受信する信号で共通とした信号回線により火災検知器に接続されR型伝送方式により火災検知器と信号を送受信する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災受信盤と監視エリアの火災を検知する火災検知器とを信号回線で接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、
前記防災受信盤と前記火災検知器とは、前記防災受信盤と前記火災検知器との間の信号回線に設けられた変換装置を介して信号を送受信し、
前記変換装置は、前記防災受信盤又は前記火災検知器の一方とは、送受信する信号の種類に対応して設けられた複数の回線を備えた信号回線により接続されP型伝送方式により信号を送受信し、前記防災受信盤又は前記火災検知器の他方とは、送受信する信号で共通とした信号回線により接続されR型伝送方式により信号を送受信することを特徴とする防災システム。
【請求項2】
請求項1記載の防災システムにおいて、
前記防災受信盤と前記変換装置とは、送受信する信号の種類に対応して設けられた複数の回線を備えた信号回線により接続されP型伝送方式により信号を送受信し、
前記火災検知器と前記変換装置とは、送受信する信号で共通とした信号回線により接続されR型伝送方式により信号を送受信したことを特徴とする防災システム。
【請求項3】
請求項2記載の防災システムにおいて、
前記変換装置は、
前記防災受信盤から送信される信号に対応した送信回線に接続されたP型受信部と、
前記防災受信盤へ送信する信号に対応した受信回線に接続されたP型送信部と、
前記火災検知器との間で共通とした信号回線に接続された伝送部と、
前記P型伝送方式の信号と前記R型伝送方式の信号との信号変換を制御する変換制御部と、
を備え、
前記変換制御部は、
前記P型受信部で前記P型伝送方式の信号を受信した場合に、当該受信した信号に対応した前記R型伝送方式の信号を前記伝送部から送信させ、
前記伝送部で前記R型伝送方式の信号を受信した場合に、当該受信した信号に対応した前記P型伝送方式の信号を送信するための受信回線に接続された前記P型送信部から送信させることを特徴とする防災システム。
【請求項4】
請求項3記載の防災システムにおいて、
前記防災受信盤と前記火災検知器との間で送受信される信号は、
前記火災検知器が火災を検知した場合に送信する火災検知信号と、
前記防災受信盤が前記火災検知器に所定の試験を行わせるために送信する試験起動入力信号と、
前記火災検知器が前記試験起動入力信号による前記所定の試験が終了した場合に送信する試験起動出力信号と、
前記火災検知器が前記所定の試験により異常状態を判定した場合に送信する異常信号と、
前記火災検知器が前記所定の試験により異常に至ることが予測される状態である予告状態を判定しれた場合に送信する異常予告信号と、
を含み、
前記防災受信盤と前記変換装置との間に接続された信号回線が備える複数の回線は、
前記防災受信盤から前記試験起動入力信号を送信する送信回線となる試験起動入力信号回線と、
前記防災受信盤へ前記火災検知信号及び前記異常予告信号を送信する受信回線となる火災検知/異常予告信号回線と、
前記防災受信盤へ前記試験起動出力信号を送信する受信回線となる試験起動出力信号回線と、
前記防災受信盤へ前記異常信号を送信する受信回線となる異常信号回線と、
を含むことを特徴とする防災システム。
【請求項5】
請求項4記載の防災システムにおいて、
前記変換装置は、前記火災検知/異常予告信号回線に、前記火災検知信号を送信する第1のP型送信部と、前記火災検知信号とは電流値が異なる前記異常予告信号を送信する第2のP型送信部とを並列に接続したことを特徴とする防災システム。
【請求項6】
請求項4記載の防災システムにおいて、
前記火災検知器は、
前記所定の試験として、前記監視エリアで発生する火災炎の光エネルギーを透過させる透光性窓の汚損状態を判定する汚損試験、及び前記監視エリアで発生する火災炎を検出するために設けられた炎検出部の検出感度状態を判定する感度試験を行い、
前記異常信号として、前記汚損試験により汚損状態を判定した場合に汚損信号を送信し、前記感度試験により感度異常状態を判定した場合に感度異常信号を送信し、
前記変換装置は、前記異常信号回線に、前記汚損信号を送信する第1のP型送信部と、前記汚損信号とは電流値が異なる前記感度異常信号を送信する第2のP型送信部とを並列に接続したことを特徴とする防災システム。
【請求項7】
請求項4記載の防災システムにおいて、
前記変換装置は、前記防災受信盤との間で接続される電源回線と試験電源回線を、前記火災検知器との間で接続される電源回線と試験電源回線に接続することを特徴とする防災システム。
【請求項8】
請求項7記載の防災システムにおいて、
前記火災検知器と前記変換装置との配線は、
前記電源回線を構成する第1電源線及び第1電源コモン線と、
前記試験電源回線を構成する第2電源線及び第2電源コモン線と、
前記信号回線を構成するシリアル信号線及びシリアル信号コモン線と、
を備える6線であり、
前記防災受信盤と前記変換装置との配線は、
前記電源回線を構成する電源線及び電源コモン線と、
前記試験電源回線を構成する試験電源線及び試験電源コモン線と、
前記試験起動入力信号回線を構成する試験起動入力信号線と、
前記火災検知/異常予告信号回線を構成する火災検知/異常予告信号線と、
前記試験起動出力信号回線を構成する試験起動出力信号線と、
前記異常信号回線を構成する異常信号線と、
を備える8線であり、
前記電源コモン線と前記試験電源コモン線は接続され共通のコモン線を形成し、当該共通のコモン線は、前記試験起動入力信号回線、前記火災検知/異常予告信号回線、前記試験起動出力信号回線及び前記試験起動出力信号回線を構成するコモン線となるように前記P型受信部及び前記P型送信部に接続されることを特徴とする防災システム。
【請求項9】
請求項3記載の防災システムにおいて、
前記変換制御部は、前記変換装置の故障を検出した場合に、前記受信回線の何れかに接続されるP型送信部から前記防災受信盤へ変換装置故障信号を送信することを特徴とする防災システム。
【請求項10】
請求項1記載の防災システムにおいて、
前記変換装置は、前記監視エリアに前記火災検知器と一体にして設置されることを特徴とする防災システム。
【請求項11】
伝送方式が異なる防災受信盤と火災検知器との間に設けられる変換装置であって、
前記防災受信盤又は前記火災検知器の一方とは送受信する信号の種類に対応して設けられた複数の回線を備えた信号回線により接続してP型伝送方式により信号を送受信し、前記防災受信盤又は前記火災検知器の他方とは送受信する信号で共通とした信号回線により接続してR型伝送方式により信号を送受信することを特徴とする変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災受信盤と監視エリアの火災を検知する火災検知器とを信号回線で接続して火災を含む異常を監視する防災システム及び変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視エリアとなる自動車専用道路のトンネル内等で発生する火災事故から人身及び車両等を守るために火災を含む異常を監視する防災システムとして、トンネル内には火災検知器が設置され、火災検知器はトンネルの電気室等に設置された防災受信盤から引き出された信号回線に接続されている。
【0003】
火災検知器は、例えばトンネルの長手方向となる上り側及び下り側の両方向に検知エリアを持ち、トンネルの長手方向に沿って、例えば25m間隔或いは50m間隔で連続的に設置され、隣りに設置される火災検知器と検知エリアが重なって相互補完するように設置されている。
【0004】
また、火災検知器は、透光性窓を介して検知エリアからの光エネルギーとして、例えばトンネル内で発生する火災炎からの赤外線を受光センサで受光して受光感度(受光値)を検出することで火災を検知しており、火災の検知機能を維持するために、受光センサの検出感度を監視するための感度試験や透光性窓の汚れを監視するための汚損試験を行っている。
【0005】
受光センサの感度試験は、防災受信盤から定期的に送信される試験起動入力信号を受信した場合に、炎からの赤外線に相当する疑似的な試験光を試験光源から受光センサに入射して受光感度を検出する。検出された受光感度(検出感度)が所定の感度閾値に低下するまでは、検出感度の逆数となる補正値で受光感度を補正し、検出感度が所定の感度閾値を下回り補正が不可能となった場合には、受光センサの故障を示す感度異常信号を防災受信盤に送信して防災受信盤から感度異常警報を出力させている。また、感度閾値に対して高い感度となる予告感度閾値を設定し、検出感度が予告感度閾値を下回った場合には感度異常予告信号を防災受信盤へ送信して防災受信盤から感度異常の予告警報を出力させている。
【0006】
透光性窓の汚損試験は、防災受信盤から定期的に送信される試験起動入力信号を受信した場合に、火災検知器の外側に設けられた試験光源から試験光を透光性窓に入射し、受光センサで受光して検出された受光感度から減光率を求め、減光率が所定の汚損閾値を下回った場合には汚損信号を防災受信盤へ送信して防災受信盤から汚損警報を出力させている。また、汚損閾値に対して低い予告汚損閾値を設定し、減光率が予告汚損閾値を下回った場合には汚損予告信号を防災受信盤へ送信して防災受信盤から汚損予告警報を出力させている。
【0007】
また、防災システムには、信号の伝送方式に対応してP型防災システムとR型防災システムが存在している。
【0008】
P型トンネル防災システムでは、火災検知信号、試験起動入力信号等の信号の種類に対応してP型防災受信盤から引き出された複数の信号回線にトンネル長手方向の所定区画に設置されている複数のP型火災検知器を並列接続し、P型防災受信盤は個別の信号回線により火災検知器から火災検知信号を受信して火災警報を出力し、個別の信号回線により試験起動入力信号を送信してP型火災検知器の感度試験と汚損試験を行わせ、個別の信号回線により感度異常信号、感度異常予告信号、汚損信号又は汚損予告信号を受信して対応する警報を出力するようにしている。
【0009】
また、R型防災システムでは、火災検知信号、試験起動入力信号等の信号の種類に関わらずR型防災受信盤から共通の信号回線を引き出し、設置されているR型火災検知器を接続し、R型防災受信盤は共通の信号回線により火災検知器から火災検知信号を受信して火災警報を出力し、試験起動入力信号を送信してR型の火災検知器の感度試験と汚損試験を行わせ、感度異常信号、感度異常予告信号、汚損信号又は汚損予告信号を受信して対応する警報を出力するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6-325271号公報
【特許文献2】特開2013-105370号公報
【特許文献3】特開2020-187401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、P型防災システムは、信号の種類に対応した複数の信号回線により防災受信盤と火災検知器との間を接続することから、防災受信盤と火災検知器とを接続する信号回線の配線量が増加するものであるから、トンネル長及び通行量から見て比較的規模の小さなトンネルを対象に設置されている。
【0012】
これに対して、R型防災システムは、信号の種類に関わらず共通の信号回線で防災受信盤と火災検知器との間を接続することから、防災受信盤と火災検知器とを接続する信号回線の配線量を低減することができ、また伝送する信号の種類も容易に増加できることから、トンネル長及び通行量から見て比較的規模の大きなトンネルを対象に設置されている。
【0013】
また、トンネル全体としては比較的規模の大きなトンネルが多い傾向にあることから、R型火災検知器の生産量がP型火災検知器よりも多く、生産量の違いからR型火災検知器のコストがP型火災検知器のコストよりも低く、火災検知器の生産コストを低減するためには、R型火災検知器の生産に一本化することが望まれる。
【0014】
また、防災システムは、運用中に故障した火災検知器を交換するために予備の火災検知器の在庫を確保しておく必要があり、P型火災検知器とR型火災検知器の在庫を別々に確保しておくことは火災検知器の在庫管理等の運用コストが嵩むことからも、R型火災検知器に一本化することが望まれる。
【0015】
しかしながら、従来の防災システムは、P型防災システムであればP型防災受信盤とP型火災検知器とを接続し、R型防災システムであればR型防災受信盤とR型火災検知器とを接続することを前提としており、伝送方式が異なる防災受信盤と火災検知器と接続して防災システムを構築することはできない。
【0016】
本発明は、伝送方式が異なる防災受信盤と火災検知器であっても防災システムの構築を可能とし、火災検知器の一本化を可能として生産や在庫管理等の一貫性を図れる防災システム及びその変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(防災システム)
本発明は、防災受信盤と監視エリアの火災を検知する火災検知器とを信号回線で接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、
防災受信盤と火災検知器とは、防災受信盤と火災検知器との間の信号回線に設けられた変換装置を介して信号を送受信し、
変換装置は、防災受信盤又は火災検知器の一方とは、送受信する信号の種類に対応して設けられた複数の回線を備えた信号回線により接続されP型伝送方式により信号を送受信し、防災受信盤又は火災検知器の他方とは、送受信する信号で共通とした信号回線により接続されR型伝送方式により信号を送受信することを特徴とする。
【0018】
(P型防災受信盤とR型火災検知器を備える防災システム)
防災受信盤と変換装置とは、送受信する信号の種類に対応して設けられた複数の回線を備えた信号回線により接続されP型伝送方式により信号を送受信し、
火災検知器と変換装置とは、送受信する信号で共通とした信号回線により接続されR型伝送方式により信号を送受信する。
【0019】
(変換装置の構成)
変換装置は、
防災受信盤から送信される信号に対応した送信回線に接続されたP型受信部と、
防災受信盤へ送信する信号に対応した受信回線に接続されたP型送信部と、
火災検知器との間で共通とした信号回線に接続された伝送部と、
P型伝送方式の信号とR型伝送方式の信号との信号変換を制御する変換制御部と、
を備え、
変換制御部は、
P型受信部でP型伝送方式の信号を受信した場合に、当該受信した信号に対応したR型伝送方式の信号を伝送部から送信させ、
伝送部でR型伝送方式の信号を受信した場合に、当該受信した信号に対応したP型伝送方式の信号を送信するための受信回線に接続されたP型送信部から送信させる。
【0020】
(送受信する信号の種類)
防災受信盤と火災検知器との間で送受信される信号は、
火災検知器が火災を検知した場合に送信する火災検知信号と、
防災受信盤が火災検知器に所定の試験を行わせるために送信する試験起動入力信号と、
火災検知器が試験起動入力信号による所定の試験が終了した場合に送信する試験起動出力信号と、
火災検知器が所定の試験により異常状態を判定した場合に送信する異常信号と、
火災検知器が所定の試験により異常に至ることが予測される状態である予告状態を判定しれた場合に送信する異常予告信号と、
を含み、
防災受信盤と変換装置との間に接続された信号回線が備える複数の回線は、
防災受信盤から試験起動入力信号を送信する送信回線となる試験起動入力信号回線と、
防災受信盤へ火災検知信号及び異常予告信号を送信する受信回線となる火災検知/異常予告信号回線と、
防災受信盤へ試験起動出力信号を送信する受信回線となる試験起動出力信号回線と、
防災受信盤へ異常信号を送信する受信回線となる異常信号回線と、
を含む。
【0021】
(火災検知/異常予告のP型伝送)
変換装置は、火災検知/異常予告信号回線に、火災検知信号を送信する第1のP型送信部と、火災検知信号とは電流値が異なる異常予告信号を送信する第2のP型送信部とを並列に接続する。
【0022】
(汚損/感度異常のP型伝送)
火災検知器は、
所定の試験として、監視エリアで発生する火災炎の光エネルギーを透過させる透光性窓の汚損状態を判定する汚損試験、及び監視エリアで発生する火災炎を検出するために設けられた炎検出部の検出感度状態を判定する感度試験を行い、
異常信号として、汚損試験により汚損状態を判定した場合に汚損信号を送信し、感度試験により感度異常状態を判定した場合に感度異常信号を送信し、
変換装置は、異常信号回線に、汚損信号を送信する第1のP型送信部と、汚損信号とは電流値が異なる感度異常信号を送信する第2のP型送信部とを並列に接続する。
【0023】
(変換装置の電源系統)
変換装置は、防災受信盤との間で接続される電源回線と試験電源回線を、火災検知器との間で接続される電源回線と試験電源回線に接続する。
【0024】
(変換装置の配線)
火災検知器と変換装置との配線は、
電源回線を構成する第1電源線及び第1電源コモン線と、
試験電源回線を構成する第2電源線及び第2電源コモン線と、
信号回線を構成するシリアル信号線及びシリアル信号コモン線と、
を備える6線であり、
防災受信盤と変換装置との配線は、
電源回線を構成する電源線及び電源コモン線と、
試験電源回線を構成する試験電源線及び試験電源コモン線と、
試験起動入力信号回線を構成する試験起動入力信号線と、
火災検知/異常予告信号回線を構成する火災検知/異常予告信号線と、
試験起動出力信号回線を構成する試験起動出力信号線と、
異常信号回線を構成する異常信号線と、
を備える8線であり、
電源コモン線と試験電源コモン線は接続され共通のコモン線を形成し、当該共通のコモン線は、試験起動入力信号回線、火災検知/異常予告信号回線、試験起動出力信号回線及び試験起動出力信号回線を構成するコモン線となるようにP型受信部及びP型送信部に接続される。
【0025】
(変換装置の故障監視)
変換制御部は、変換装置の故障を検出した場合に、受信回線の何れかに接続されるP型送信部から防災受信盤へ変換装置故障信号を送信する。
【0026】
(変換装置の設置)
変換装置は、監視エリアに火災検知器と一体にして設置される。
【0027】
(変換装置)
本発明は、伝送方式が異なる防災受信盤と火災検知器との間に設けられる変換装置であって、
防災受信盤又は火災検知器の一方とは送受信する信号の種類に対応して設けられた複数の回線を備えた信号回線により接続してP型伝送方式により信号を送受信し、防災受信盤又は火災検知器の他方とは送受信する信号で共通とした信号回線により接続してR型伝送方式により信号を送受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
(防災システムの効果)
本発明は、防災受信盤と監視エリアの火災を検知する火災検知器とを信号回線で接続して火災を含む異常を監視する防災システムであって、防災受信盤と火災検知器とは、防災受信盤と火災検知器との間の信号回線に設けられた変換装置を介して信号を送受信し、変換装置は、防災受信盤又は火災検知器の一方とは、送受信する信号の種類に対応して設けられた複数の回線を備えた信号回線により接続されP型伝送方式により信号を送受信し、防災受信盤又は火災検知器の他方とは、送受信する信号で共通とした信号回線により接続されR型伝送方式により信号を送受信するようにしたため、伝送方式の異なる防災受信盤と火災検知器との間で信号の送受信が可能となり、設置する火災検知器を1種類に統一することができ、生産コストや運用コストを低減することを可能とする。
【0029】
(P型防災受信盤とR型火災検知器を備える防災システムの効果)
また、防災受信盤と変換装置とは、送受信する信号の種類に対応して設けられた複数の回線を備えた信号回線により接続されP型伝送方式により信号を送受信し、火災検知器と変換装置とは、送受信する信号で共通とした信号回線により接続されR型伝送方式により信号を送受信するため、トンネル全体としては比較的規模の大きなトンネルが多い傾向にあることから、R型火災検知器に統一することができ、前述した効果がより効果的となる。
【0030】
(変換装置の構成による効果)
また、変換装置は、防災受信盤から送信される信号に対応した送信回線に接続されたP型受信部と、防災受信盤へ送信する信号に対応した受信回線に接続されたP型送信部と、火災検知器との間で共通とした信号回線に接続された伝送部と、P型伝送方式の信号とR型伝送方式の信号との信号変換を制御する変換制御部と、を備え、変換制御部は、P型受信部でP型伝送方式の信号を受信した場合に、当該受信した信号に対応したR型伝送方式の信号を伝送部から送信させ、伝送部でR型伝送方式の信号を受信した場合に、当該受信した信号に対応したP型伝送方式の信号を送信するための受信回線に接続されたP型送信部から送信させるようにしたため、従来のR型伝送方式の場合に設けられる伝送部と、従来のP型伝送方式の場合に設けられる送信部及び受信部と用いて容易に変換装置を構成することを可能とする。
【0031】
(送受信する信号の種類による効果)
また、防災受信盤と火災検知器との間で送受信される信号は、火災検知器が火災を検知した場合に送信する火災検知信号と、防災受信盤が火災検知器に所定の試験を行わせるために送信する試験起動入力信号と、火災検知器が試験起動入力信号による所定の試験が終了した場合に送信する試験起動出力信号と、火災検知器が所定の試験により異常状態を判定した場合に送信する異常信号と、火災検知器が所定の試験により異常に至ることが予測される状態である予告状態を判定しれた場合に送信する異常予告信号と、を含み、防災受信盤と変換装置との間に接続された信号回線が備える複数の回線は、防災受信盤から試験起動入力信号を送信する送信回線となる試験起動入力信号回線と、防災受信盤へ火災検知信号及び異常予告信号を送信する受信回線となる火災検知/異常予告信号回線と、防災受信盤へ試験起動出力信号を送信する受信回線となる試験起動出力信号回線と、防災受信盤へ異常信号を送信する受信回線となる異常信号回線と、を含むようにしたため、従来の防災受信盤と火災検知器との間で送受信されている信号について、伝送方式が異なる防災受信盤と火災検知器との間であっても伝送することを可能とする。
【0032】
(火災検知/異常予告のP型伝送による効果)
また、変換装置は、火災検知/異常予告信号回線に、火災検知信号を送信する第1のP型送信部と、火災検知信号とは電流値が異なる異常予告信号を送信する第2のP型送信部とを並列に接続するようにしたため、P型伝送において火災検知信号と異常予告信号を1つの回線で送信する場合であっても、その信号の種類を区別して送信することを可能とする。
【0033】
(汚損/感度異常のP型伝送による効果)
また、火災検知器は、所定の試験として、監視エリアで発生する火災炎の光エネルギーを透過させる透光性窓の汚損状態を判定する汚損試験、及び監視エリアで発生する火災炎を検出するために設けられた炎検出部の検出感度状態を判定する感度試験を行い、異常信号として、汚損試験により汚損状態を判定した場合に汚損信号を送信し、感度試験により感度異常状態を判定した場合に感度異常信号を送信し、変換装置は、異常信号回線に、汚損信号を送信する第1のP型送信部と、汚損信号とは電流値が異なる感度異常信号を送信する第2のP型送信部とを並列に接続するようにしたため、火災検知器の試験に感度試験と汚損試験がある場合であっても、その試験の種類を区別して異常状態に関する信号を送信することを可能とする。
【0034】
(変換装置の電源系統による効果)
また、変換装置は、防災受信盤との間で接続される電源回線と試験電源回線を、火災検知器との間で接続される電源回線と試験電源回線に接続するようにしたため、信号と同様に電源についても伝送方式が異なる防災受信盤と火災検知器との間で接続することを可能とする。
【0035】
(変換装置の配線による効果)
また、火災検知器と変換装置との配線は、電源回線を構成する第1電源線及び第1電源コモン線と、試験電源回線を構成する第2電源線及び第2電源コモン線と、信号回線を構成するシリアル信号線及びシリアル信号コモン線と、を備える6線であり、防災受信盤と変換装置との配線は、電源回線を構成する電源線及び電源コモン線と、試験電源回線を構成する試験電源線及び試験電源コモン線と、試験起動入力信号回線を構成する試験起動入力信号線と、火災検知/異常予告信号回線を構成する火災検知/異常予告信号線と、試験起動出力信号回線を構成する試験起動出力信号線と、異常信号回線を構成する異常信号線と、を備える8線であり、電源コモン線と試験電源コモン線は接続され共通のコモン線を形成し、当該共通のコモン線は、試験起動入力信号回線、火災検知/異常予告信号回線、試験起動出力信号回線及び試験起動出力信号回線を構成するコモン線となるようにP型受信部及びP型送信部に接続されるようにしたため、変換装置と火災検知器の間については従来のR型伝送方式の配線をそのまま利用し、変換装置と防災受信盤の間については従来のP型伝送方式の配線をそのまま利用することを可能とする。
【0036】
(変換装置の故障監視の効果)
また、変換制御部は、変換装置の故障を検出した場合に、受信回線の何れかに接続されるP型送信部から防災受信盤へ変換装置故障信号を送信するようにしたため、変換装置の故障を監視することができ、高い信頼性の確保を可能とする。
【0037】
(変換装置の設置による効果)
また、変換装置は、監視エリアに火災検知器と一体にして設置されるため、新たに設けられる変換装置の取り扱いが容易となり、従来の火災検知器と同等の取り扱いを可能とする。
【0038】
また、変換装置の発明にあっても、前述した防災システムの効果と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】トンネル防災システムを示した説明図である。
図2】P型防災受信盤の構成を示した説明図である。
図3】P型伝送方式の基本構成を示した説明図である。
図4】収容箱に取り付けられたR型火災検知器を示した説明図である。
図5】R型火災検知器の外観を示した説明図である。
図6】R型火災検知器の機能構成を変換装置と共に示した説明図である。
図7】変換装置の機能構成を示した説明図である。
図8】R型伝送方式の基本構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明に係る防災システム及び変換装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0041】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、防災受信盤と監視エリアの火災を検知する火災検知器とを信号回線で接続して火災を含む異常を監視する防災システム及び伝送方式が異なる防災受信盤と火災検知器との間に設けられる変換装置に関するものである。
【0042】
従来の防災システムでの防災受信盤と火災検知器との間の信号の送受信にはP型(Proprietary-type)伝送方式とR型(Recorded-type)伝送方式がある。ここで、P型伝送方式を行う防災受信盤は「P型防災受信盤」、R型伝送方式を行う防災受信盤を「R型防災受信盤」と呼び、火災検知器についても同様とする。
【0043】
また、「P型伝送方式」とは、防災受信盤と火災検知器との間で送受信する信号の種類に対応して設けられた複数の回線(送信回線と受信回線)を備えた信号回線を用いて信号の送受信を行うものであり、「R型伝送方式」とは、防災受信盤と火災検知器との間で送受信する信号の種類に関わらず共通の信号回線(1つの信号回線)で信号の送受信を行うものである。
【0044】
そして、本実施形態の防災システムは、伝送方式の異なる防災受信盤と火災検知器に加えて変換装置を備える。ここで、「伝送方式の異なる防災受信盤と火災検知器」は、防災受信盤がP型防災受信盤であれば火災検知器はR型火災検知器となり、防災受信盤がR型防災受信盤であれば火災検知器はP型火災検知器となる。
【0045】
ここで、「防災受信盤」とは、防災システムを構築する施設や設備の電気室等に設置され、監視エリアに設置された火災検知器や消火栓装置等の非常用設備の端末機器を接続することで監視エリアの火災等の異常を監視するものである。また、「監視エリア」とは防災システムにより監視される場所であり、例えば建物内の部屋、廊下、階段、トンネル内部等を含む概念である。
【0046】
また、「火災検知器」とは、監視エリアの火災を検知するものであり、火災の検知方法は任意であるが、例えば透光性窓を介して監視エリアで発生する火災炎からの光エネルギーとして、例えば火災炎からの放射線(赤外線)を炎検出部で受光して炎を検出することで監視エリアの火災を検知するものを含む。
【0047】
また、「変換装置」とは、防災受信盤と火災検知器の一方とはP型伝送方式により信号を送受信し、防災受信盤と火災検知器の他方とはR型伝送方式により信号を送受信するものであり、伝送方式の異なる防災受信盤と火災検知器との間で信号の送受信を可能とするものである。
【0048】
また、トンネル全体としては比較的規模の大きなトンネルが多い傾向にあり、R型火災検知器での一本化を図ることが効果的であることから、P型防災受信盤とR型火災検知器との間に設けられる変換装置を取り上げると、当該「変換装置」は、例えばP型受信部、P型送信部、伝送部及び変換制御部で構成されるものである。
【0049】
「P型受信部」とは、P型防災受信盤から送信される信号に対応した送信回線に接続されたものであり、「P型送信部」とは、P型防災受信盤へ送信する信号に対応した受信回線に接続されたものであり、「伝送部」とは、R型火災検知器との間で共通とした信号回線に接続されたものである。
【0050】
また、「送信回線」とは、P型防災受信盤と変換装置との間の信号回線が備える複数の回線の内、防災受信盤から送信される信号が伝送される回線のことであり、「受信回線」とは、P型防災受信盤と変換装置との間の信号回線が備える複数の回線の内、防災受信盤で受信される信号(火災検知器側から送信された信号)が伝送される回線のことである。
【0051】
また、「変換制御部」とは、P型伝送方式の信号とR型伝送方式の信号との信号変換を制御するものであり、P型受信部でP型防災受信盤から信号を受信した場合に、当該受信した信号に対応したR型伝送方式の信号を伝送部からR型火災検知器に向けて送信させ、伝送部でR型火災検知器から信号を受信した場合に、当該受信した信号に対応したP型伝送方式の信号を送信するための受信回線に接続されたP型送信部からP型防災受信盤に向けて送信させることで信号変換を制御している。
【0052】
また、防災受信盤と火災検知器との間で送受信される信号として、例えば「火災検知信号」、「試験起動入力信号」、「試験起動出力信号」、「異常信号」及び「異常予告信号」等が含まれる。
【0053】
「火災検知信号」とは、火災検知器が火災を検知した場合に送信する信号であり、「試験起動入力信号」とは、防災受信盤が火災検知器に所定の試験を行わせるために送信する信号であり、「試験起動出力信号」とは、火災検知器が試験起動入力信号による所定の試験が終了した場合に送信する信号であり、「異常信号」とは、火災検知器が所定の試験により異常状態を判定した場合に送信する信号であり、「異常予告信号」とは、火災検知器が所定の試験により異常に至ることが予測される状態である予告状態を判定した場合に送信する信号である。
【0054】
そして、これらの信号は、変換装置とR型火災検知器との間では共通の信号回線により伝送される。また、変換装置とP型火災検知器との間では、「試験起動入力信号」が送信回線となる「試験起動入力信号回線」により伝送され、「火災検知信号」及び「異常予告信号」が受信回線となる「火災検知/異常予告信号回線」により伝送され、「試験起動出力信号」が受信回線となる「試験起動出力信号回線」により伝送され、「異常信号」が受信回線となる「異常信号回線」により伝送される。
【0055】
また、「火災検知/異常予告信号回線」により伝送される「火災検知信号」及び「異常予告信号」を区別可能とする構成として、変換装置は、火災検知/異常予告信号回線に、火災検知信号を送信する第1のP型送信部と、火災検知信号とは電流値が異なる汚損予告信号を送信する第2のP型送信部とを並列に接続する。
【0056】
また、火災検知器が行う「所定の試験」とは、例えば火災検知器の故障や火災の検知機能が正常であるかを確認するための試験であり、透光性窓を介して監視エリアで発生する火災炎からの光エネルギーとして、例えば放射線(赤外線)を炎検出部で検出することで監視エリアの火災を検知する火災検知器にあっては、透光性窓の汚損状態を判定する汚損試験や炎検出部の検出感度状態を判定する感度試験等を含むものである。
【0057】
また、所定の試験として汚損試験と感度試験を行う場合には、「異常信号」は、汚損試験により汚損状態を判定した場合に送信される「汚損信号」と、感度試験により感度異常状態を判定した場合に送信される「感度異常信号」の2種類の信号を含み、「異常信号回線」により伝送される「汚損信号」と「感度異常信号」を区別可能とする構成として、変換装置は、異常信号回線に、汚損信号を送信する第1のP型送信部と、汚損信号とは電流値が異なる感度異常信号を送信する第2のP型送信部とを並列に接続する。
【0058】
また、「変換装置」は、信号回線に加えて、防災受信盤との間で接続される電源回線と試験電源回線を、火災検知器との間で接続される電源回線と試験電源回線に接続する。
【0059】
また、防災受信盤火災検知器との間で信号回線に加えて電源回線と試験電源回線を接続する場合、火災検知器と変換装置との配線は、電源回線を構成する第1電源線及び第1電源コモン線と、試験電源回線を構成する第2電源線及び第2電源コモン線と、信号回線を構成するシリアル信号線及びシリアル信号コモン線と、を備える6線である。
【0060】
また、防災受信盤と変換装置との配線は、電源回線を構成する電源線及び電源コモン線と、
試験電源回線を構成する試験電源線及び試験電源コモン線と、試験起動入力信号回線を構成する試験起動入力信号線と、火災検知/異常予告信号回線を構成する火災検知/異常予告信号線と、試験起動出力信号回線を構成する試験起動出力信号線と、異常信号回線を構成する異常信号線と、を備える8線である。
【0061】
尚、信号回線、電源回線又は試験電源回線のように「回線」と表現した場合には信号線又は電源線と対応するコモン線とを組み合わせた線のことであり、信号線、電源線又はコモン線のように「線」と表現した場合はその単線のことである。
【0062】
また、「変換制御部」は、変換装置の故障を検出した場合に、受信回線の何れかに接続されるP型送信部から防災受信盤へ変換装置故障信号を送信する。
【0063】
また、「変換装置」は、監視エリアに火災検知器と一体にして設置される。どのように変換装置と火災検知器を一体にして設置するかは任意であるが、例えば同じ収容箱内に変換装置と火災検知器を取り付けて収容箱を設置するものや、火災検知器の何れかの箇所に変換装置を取り付けて火災検知器を設置するもの等が含まれる。
【0064】
尚、「信号」、「電源」、及び信号や電源を伝送するための「回線」や「線」の名称は区別するための名称であり、その他の名称が付されていても機能・用途等から見て同等である場合には同じ信号、回線や線に含まれるものである。
【0065】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「防災システム」が「トンネルで構築されたトンネル防災システム」であり、「防災受信盤」が「P型防災受信盤」であり、「火災検知器」が「R型火災検知器」であり、「変換装置」が「R-P変換装置」である場合について説明する。
【0066】
[実施形態の具体的内容]
トンネル防災システムの実施形態について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.トンネル防災システム
b.P型防災受信盤
b1.P型防災受信盤の機能構成
b2.P型伝送の基本構成
b3.P型伝送部
b4.盤制御部
c.R型火災検知器
c1.R型火災検知器の外観
c2.R型火災検知器の設置
c3.R型火災検知器の機能構成
c4.汚損試験
c5.感度試験
d.R-P変換装置
d1.R-P変換装置の機能構成
d2.R型伝送の基本構成
d3.R-P変換装置のP型伝送部
e.本発明の変形例
【0067】
[a.トンネル防災システム]
まず、トンネル防災システムについて説明する。当該説明にあっては、トンネル防災システムの概要を示した図1を参照する。
【0068】
図1に示すように、自動車専用道路のトンネルとして、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bが構築されている。上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の壁面に沿って、例えば25メートル又は50メートル間隔でR型火災検知器12が収容箱に組み込まれた状態でトンネル壁面に埋込み設置されている。
【0069】
R型火災検知器12は、2組の炎検出部を備えることでトンネル長手方向の上り側及び下り側の両方向に検知エリアを持ち、上り側の検知エリアが1つ上り側に位置するR型火災検知器12の下り側の炎検出部の検知エリアに重なり、下り側の検知エリアが1つ下り側に位置するR型火災検知器12の上り側の炎検出部の検知エリアに重なることで検知エリアを相互補完するように設置され、R型火災検知器12が検知エリア内で発生した火災による火災炎からの光エネルギーとして、例えば赤外線を炎検出部で受光して炎を検出して火災を検知することで、トンネル防災システムは火災を監視している。
【0070】
また、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bには、防災システムを構築する非常用設備として、火災通報のために手動通報装置や非常電話が設けられ、火災の消火や延焼防止のために消火栓装置が設けられ、更にトンネル躯体やダクト内を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧などが設置されるが、図示を省略されている。
【0071】
トンネル設備の電気室等にはP型防災受信盤10が設置されている。P型防災受信盤10からは上り線トンネル1aと下り線トンネル1bに対し電源回線を含むP型配線ケーブル14a,14bが所定の区画毎に引き出され、P型配線ケーブル14a,14bは収容箱の内部に取り付けられたR-P変換装置に接続され、更にR-P変換装置からは電源回線を含むR型配線ケーブルが引き出され、R型配線ケーブルがR型火災検知器12に接続されることで、R型火災検知器12とP型防災受信盤10とが接続されている。尚、1区画を構成するR型火災検知器12の数は任意であるが、本実施形態では、例えば2台のR型火災検知器12で構成されている。また、P型配線ケーブル14a,14bと区別しない場合には、P型配線ケーブル14と表現する。
【0072】
また、P型防災受信盤10に対しては、防災システムを構築する設備としてその他に、消火ポンプ設備16、ダクト用の冷却ポンプ設備18、IG子局設備20、換気設備22、警報表示板設備24、ラジオ再放送設備26、テレビ監視設備28及び照明設備30等を設けており、IG子局設備20をデータ伝送回線で接続する点を除き、それ以外の設備はP型信号回線により防災受信盤10に個別に接続されている。ここで、IG子局設備20は、防災受信盤10と外部に設けた上位設備である遠方監視制御設備32とをネットワークを経由して結ぶための通信設備である。
【0073】
換気設備22は、トンネル内の天井側に設置されているジェットファンの運転による高い吹き出し風速によってトンネル内の空気にエネルギーを与えて、トンネル長手方向に換気の流れを起こす設備である。警報表示板設備24は、トンネル内の利用者等に対して、トンネル内の異常を電光表示板に表示して知らせる設備である。ラジオ再放送設備26は、トンネル内で利用者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。テレビ監視設備28は、火災の規模や位置の確認、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握するための設備である。照明設備30はトンネル内の照明機器を駆動して管理する設備である。
【0074】
[b.P型防災受信盤]
続いて、P型防災受信盤について説明する。当該説明にあっては、P型防災受信盤の機能構成を示した図2、及びP型伝送方式の基本構成を示した図3を参照する。尚、図3(A)は端末側から受信機側へ1種類の信号を送信するための基本構成の一例を示し、図3(B)は端末側から受信機側へ2種類の信号を送信するための基本構成の一例を示し、図3(C)は受信機側から端末側へ1種類の信号を送信するための基本構成の一例を示す。
【0075】
(b1.P型防災受信盤の機能構成)
図2に示すように、P型防災受信盤10は盤制御部34を備え、盤制御部34は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用している。
【0076】
盤制御部34に対して、P型伝送部36(36-1)、36(36-2)~36(36-n)が設けられ、所定の区画ごとに、例えば芯線8本を有するP型配線ケーブル14が引き出されている。
【0077】
P型伝送部36(36-1)、36(36-2)~36(36-n)は、P型伝送部36(36-1)に代表して示すように、2系統の電源回線に加えて信号の種類に対応したP型受信部、P型送信部及び信号回線(送信回線、受信回線)が設けられている。
【0078】
電源部56の電源端子(プラス端子とマイナス端子)からは電源線Pと電源コモン線Cが電源回線として引き出され、試験電源部58の電源端子(プラス端子とマイナス端子)からは試験電源線V1と試験電源コモン線V2が電源部56とは試験電源回線として引き出されている。尚、電源コモン線Cと試験電源コモン線V2とを接続することで共通の電源コモン線としている。また、P型伝送部36(36-1)には、信号の送受信部として、P型受信部48、52、54とP型送信部50が設けられている。尚、P型受信部48、52、54とP型送信部50の詳細については後述する。
【0079】
(b2.P型伝送方式の基本構成)
ここで、P型伝送方式の基本構成について、図3を参照して説明する。
【0080】
まず、図3(A)は端末側から受信機側へ1種類の信号を送信するための基本構成であり、受信機側にP型受信部110が設けられ、端末側にP型送信部120が設けられ、P型受信部110とP型送信部120が信号線Sと信号コモン線SCからなる信号回線(受信回線)で接続されている。
【0081】
受信機側のP型受信部110は、信号線Sと信号コモン線SCとの間に所定の回線電圧を印加しており、信号線S側に接続された電流検出抵抗112の両端電圧を受信制御部に出力している。端末側のP型送信部120は、信号線Sと信号コモン線SCの間に、トランジスタやリレー接点等のスイッチング素子122と終端抵抗124を直列接続し、スイッチング素子122は端末制御部からの制御信号でオン、オフされる。
【0082】
端末側から受信機側に所定の信号を送信する場合には、端末制御部によりP型送信部120のスイッチング素子122をオンする。スイッチング素子122のオンにより、P型受信部110が印加している所定の回線電圧と終端抵抗124の抵抗値R1を含む抵抗値とで決まる所定の回線電流i1が信号線Sと信号コモン線SCの間に流れ、P型受信部110の電流検出抵抗112の両端には回線電流i1に応じた電流検出電圧が発生し、この電流検出電圧を受信制御部が読み込んで端末側から送信された信号の受信を検出する。
【0083】
次に、図3(B)は、端末側から受信機側へ2種類の信号を送信するための基本構成であり、図3(A)のP型送信部(第1のP型送信部)120に加え、端末側にP型送信部(第2のP型送信部)130が追加されている。P型送信部130は、信号線Sと信号コモン線SCの間に、スイッチング素子126と終端抵抗128を直列接続し、スイッチング素子126は端末制御部からの制御信号でオン、オフされる。また、終端抵抗128の抵抗値R2はP型送信部120の終端抵抗124の抵抗値R1と異ならせており、例えば終端抵抗128の抵抗値R2を終端抵抗124の抵抗値R1の2倍としている(R2=2・R1)。
【0084】
P型送信部120から第1信号を送信する場合には、図3(A)の場合と同様に、端末制御部がスイッチング素子122をオンし、信号線Sと信号コモン線SCの間に、所定の回線電圧と終端抵抗124の抵抗値R1を含む抵抗値とで決まる回線電流i1が流れ、受信制御部がP型受信部110から回線電流i1に応じた電流検出電圧を読み込んで第1信号の受信を検出する。
【0085】
P型送信部130から別の第2信号を送信する場合には、端末制御部がスイッチング素子126をオンし、信号線Sと信号コモン線SCの間に、所定の回線電圧と終端抵抗128の抵抗値R2を含む抵抗値とで決まる回線電流i2(=i1/2)が流れ、受信制御部がP型受信部110から回線電流i2に応じた電流検出電圧を読み込んで他の第2信号の受信を検出する。
【0086】
このように端末側から同じ信号回線を使用して複数種類の信号を受信機側へ送信する場合には、異なる終端抵抗を備える複数のP型送信部を信号回線に対して並列に接続すればよい。
【0087】
次に、図3(C)は、受信機側から端末側へ1種類の信号を送信するための基本構成であり、受信機側にP型送信部140が設けられ、端末側にP型受信部150が設けられ、P型送信部140とP型受信部150が信号線Sと信号コモン線SCからなる信号回線で接続されている。
【0088】
受信機側のP型送信部140は、信号線S側にスイッチング素子142が挿入接続され、スイッチング素子142は受信制御部からの制御信号によりオン、オフされる。端末側のP型受信部150は、信号線Sと信号コモン線SCの間に電流検出抵抗152が接続され、その両端に発生する電流検出電圧を端末制御部に出力している。
【0089】
受信機側から端末側に信号を送信する場合には、受信制御部によりP型送信部140のスイッチング素子142をオンする。スイッチング素子142のオンにより、信号線Sと信号コモン線SCの間に、所定の回線電圧が印加され、所定の回線電圧と電流検出抵抗152の抵抗値で定まる所定の回線電流が流れ、P型受信部150の電流検出抵抗152の両端には回線電流に応じた電流検出電圧が発生し、この電流検出電圧を端末制御部が読み込んで受信機側から送信された信号の受信を検出する。
【0090】
(b3.P型伝送部)
次に、図2に示したP型防災受信盤10のP型伝送部36(36-1)に設けられたP型受信部48、52、54とP型送信部50について説明する。
【0091】
P型受信部48は、R型火災検知器12から送信される火災検知信号又は汚損予告信号を受信して盤制御部34に出力する受信部であり、火災検知器側(端末側)からの火災検知/汚損予告信号線PAが接続され、信号コモン線を共通の電源コモン線の試験電源コモン線V2として組み合わせることにより火災検知信号/汚損予告信号を受信するための信号回線(受信回線)を形成しており、図3(B)に示したP型伝送の基本構成に対応している。
【0092】
即ち、火災検知/汚損予告信号線PAと試験電源コモン線V2の火災検知器側のR-P変換装置には、火災検知信号を送信するためのP型送信部と汚損予告信号を送信するためのP型送信部が並列に接続されている。この詳細は、端末側に接続されるR-P変換装置の説明で明らかにされる。
【0093】
P型送信部50は、盤制御部34から所定のタイミング、例えば24時間に1回の周期による試験起動入力の指示を受けて試験起動入力信号を火災検知器側へ送信する送信部であり、試験起動入力信号線Vinが火災検知器側に引き出され、信号コモン線を共通の電源コモン線の試験電源コモン線V2として組み合わせることにより試験起動入力信号を火災検知器側へ送信するための信号回線(送信回線)を形成しており、図3(C)に示したP型伝送の基本構成に対応している。
【0094】
即ち、P型送信部50は、盤制御部34からの試験起動入力の指示を受けてスイッチング素子をオンすることにより、試験起動入力信号線Vinと試験電源コモン線V2の間に、所定の回線電圧が印加され、所定の回線電圧と火災検知器側のR-P変換装置の電流検出抵抗の抵抗値で定まる所定の回線電流が流れ、電流検出抵抗の両端に回線電流に応じて発生した電流検出電圧を火災検知器側の端末制御部が読み込んで、P型防災受信盤10からの送信された試験起動入力信号の受信を検出する。この詳細も、端末側に接続されるR-P変換装置の説明で明らかにされる。
【0095】
P型受信部52は、R型火災検知器12から送信される試験起動出力信号を受信して盤制御部34に出力する受信部であり、火災検知器側からの試験起動出力信号線Voutが接続され、信号コモン線を共通の電源コモン線の試験電源コモン線V2として組み合わせることにより試験起動出力信号を受信するための信号回線(受信回線)を形成しており、図3(A)に示したP型伝送の基本構成に対応している。
【0096】
即ち、試験起動出力信号線Voutと試験電源コモン線V2の火災検知器側のR-P変換装置には、試験起動出力信号を送信するためのP型送信部が接続されている。この詳細も、端末側に接続されるR-P変換装置の説明で明らかにされる。
【0097】
P型受信部54は、R型火災検知器12から送信される汚損信号又は感度異常信号を受信して盤制御部34に出力する受信部であり、火災検知器側からの汚損/感度異常信号線V0が接続され、信号コモン線を共通の電源コモン線の試験電源コモン線V2として組み合わせることにより汚損信号又は感度異常信号を受信するための信号回線(受信回線)を形成しており、図3(B)に示したP型伝送の基本構成に対応している。
【0098】
即ち、汚損/感度異常信号線V0と試験電源コモン線V2の火災検知器側のR-P変換装置には、汚損信号を送信するためのP型送信部と感度異常信号を送信するためのP型送信部が並列に接続されている。この詳細も、端末側に接続されるR-P変換装置の説明で明らかにされる。
【0099】
なお、実施形態でP型伝送部36(36-1)に接続される端末機器はP型火災検知器ではなく、R型火災検知器12であることから、P型伝送部36(36-1)の接続先はP型防災受信盤10にR型火災検知器12を接続するためのR-P変換装置となる。また、P型伝送部36(36-2)~36(36-n)についてもP型伝送部36(36-1)の構成と同様である。
【0100】
(b4.盤制御部)
次に、盤制御部34について説明する。盤制御部34に対して、P型伝送部36(36-1)の他に、スピーカ、警報表示灯等を備えた警報部38、液晶ディスプレイ、プリンタ等を備えた表示部40、各種スイッチ等を備えた操作部42、外部監視設備と通信するIG子局設備20を接続するモデム44を設け、更に、図1に示した消火ポンプ設備16、冷却ポンプ設備18、換気設備22、警報表示板設備24、ラジオ再放送設備26、テレビ監視設備28及び照明設備30を接続するIO部として機能するP型伝送部46が設けられている。
【0101】
ここで、盤制御部34は、P型伝送部36(36-1)~36(36-n)により火災検知器側から火災検知信号を受信した場合には、例えば警報部38により火災警報を出力させると共にP型伝送部46を介して他設備の連動制御を指示する制御を行う。
【0102】
また、盤制御部34は、システムの立上げ時あるいは運用中の所定のタイミングで、P型伝送部36(36-1)~36(36-n)を順次指定して試験起動入力信号を送信させ、火災検知器に汚損試験と感度試験を行わせる制御を行う。
【0103】
また、盤制御部34は、火災検知器の汚損試験により得られた汚損予告信号を受信した場合には、その火災検知器が設置された区画を特定した汚損予告警報を、例えば警報部38及び表示部40による警報音、ディスプレイ表示、印刷等により報知させる制御を行う。
【0104】
また、盤制御部34は、火災検知器の汚損試験により得られた汚損信号を受信した場合には、その火災検知器が設置された区画を特定した汚損警報を、例えば警報部38及び表示部40による警報音、ディスプレイ表示、印刷等により報知させる制御を行う。
【0105】
また、盤制御部34は、火災検知器の感度試験により得られた感度異常信号を受信した場合には、その火災検知器が設置された区画を特定した感度異常警報を、例えば警報38及び表示部40による警報音、ディスプレイ表示、印刷等により報知させる制御を行う。
【0106】
尚、火災検知器は、感度異常信号に加えて感度異常予告信号を送信できるようにしても良く、盤制御部34は、感度異常予告信号を受信した場合には、その火災検知器が設置された区画を特定した感度異常予告警報を、例えば警報38及び表示部40による警報音、ディスプレイ表示、印刷等により報知させる制御を行うようにしても良い。
【0107】
また、盤制御部34は、火災検知器12の汚損試験及び感度試験により得られた汚損予告信号、汚損信号、感度異常信号(又は感度異常予告信号)を受信した場合には、モデム44から図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に送信し、遠方監視制御設備32側で汚損予告警報、汚損警報、感度異常警報(又は感度異常予告警報)を報知させる制御を行う。
【0108】
[c.R型火災検知器]
続いて、P型防災受信盤にR-P変換装置を介して接続されるR型火災検知器ついて説明する。
【0109】
(c1.R型火災検知器の外観)
まず、R型火災検知器の外観について説明する。当該説明にあっては、R型火災検知器の外観を示した図4を参照する。
【0110】
ここで、図4の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、トンネル壁面に埋込み設置された状態の火災検知器の透過性窓を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。この点は、図5においても同様となる。
【0111】
図4に示すように、R型火災検知器12は、筐体66の前部に設けられたセンサ収納部68に、左右に分けて2組の透光性窓70R,70Lが設けられ、透光性窓70R,70L各々の筐体66内側に炎検出部(受光センサ)が収納されている。また、透光性窓70R,70Lの近傍の受光センサを見通せる位置に、透光性窓70R,70Lの汚損試験に使用される外部試験光源を備えた2組の試験光源用透光窓72R,72Lが設けられている。
【0112】
(c2.R型火災検知器の設置)
次に、R型火災検知器の設置について説明する。当該説明にあっては、収容箱に取り付けられたR型火災検知器を示した図5を参照する。尚、図5(A)は収容箱の正面を示し、図5(B)は箱蓋を外した収容箱の内部構造を示す。
【0113】
図5(A)、(B)に示すように、R型火災検知器12は収容箱60の箱本体6010の中に取付け基台1210により取付け固定され、箱蓋6020に形成された検知器開口6030から透光性窓70R,70Lを備えたセンサ収納部68を外部に露出させている。
【0114】
また、収容箱60の左右両側面の下側には電線管62が接続され、電線管62にはP型配線ケーブル1410、1420が配線される。
【0115】
また、収容箱60の箱本体6010の内部、例えば左下の空スペースには、R-P変換装置64が取付け固定されている。R-P変換装置64は、R型火災検知器12を図2に示したP型防災受信盤10に接続可能とするものであり、防水構造を有している。
【0116】
R型火災検知器12とR-P変換装置64との接続は、R-P変換装置64から引き出された芯線6本を有するR型配線ケーブル1430を防水コネクタ63によりR型検知器12に着脱自在に接続している。また、R-P変換装置64からは芯線8本を有するP型配線ケーブル1440が引き出され、P型配線ケーブル1440はケーブル接続部65により電線管62に配線された芯線8本を有するP型配線ケーブル1410,1420に接続されREスリーブとして知られた公知の絶縁チューブで被覆し、更にビニール袋67で被蓋して保護されている。また、P型配線ケーブル1440とP型配線ケーブル1410,1420の各々は、それぞれに対応する芯線同士を圧着端子により接続している。
【0117】
このように、収容箱60にR型火災検知器12と共にR-P変換装置64が取り付け固定されることから、R-P変換装置64は単体での取付け固定を必要とせず、R型火災検知器12と一体化した取り扱いを可能とする。
【0118】
また、R型防災受信盤に接続するためにR型火災検知器12としてそのまま使用する場合には、R-P変換装置64を取り外すか、又はR-P変換装置64の防水コネクタ63をR型火災検知器12から取り外し、別途準備した防水コネクタ付きのR型配線ケーブルをR型火災検知器12に接続し、ケーブル接続部65で電線管62に配線されたR型配線ケーブルと接続すればよい。このため、実施形態の火災検知器は、R型防災受信盤及びP型防災受信盤のどちらにも対応可能であり、P型の防災システム用についてはR-P変換装置64を設けるようにする。
【0119】
勿論、全てR型火災検知器12にR-P変換装置64を設けて生産し、R型防災システム用では、配線作業においてR-P変換装置64を介さずに電線管に配線されたR型配線ケーブルに接続するようにしてもよい。
【0120】
(c3.R型火災検知器の機能構成)
次に、R型火災検知器の機能構成について説明する。当該説明にあっては、R型火災検知器の機能構成をR-P変換装置と共に示した図6を参照する。尚、R-P変換装置の詳細については別途後述する。
【0121】
図6に示すように、R-P変換装置64と共に収容箱60に設けられたR型火災検知器12には、検知器制御部74、伝送部76、2組の炎検出部78R,78L、電源部80、試験電源部82、試験発光駆動部84、透光性窓70R,70Lの汚損試験に用いられる外部試験光源86R,86L、及び炎検出部78R,78Lの感度試験に用いられる内部試験光源88R,90R,88L,90Lが設けられている。
【0122】
検知器制御部74は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用している。
【0123】
伝送部76は、R型配線ケーブルの信号回線(シリアル伝送回線)を構成するシリアル伝送線SAとシリアル伝送コモン線SBによりR-P変換装置64に接続され、R-P変換装置64との間で火災検知信号、試験起動入力信号、試験起動出力信号、汚損予告信号、汚損信号、感度異常信号を含む各種信号をR型伝送(シリアル伝送)により送受信する。尚、伝送部76によるシリアル伝送の詳細は、R-P変換装置64の説明で明らかにされる。
【0124】
電源部80は、R型配線ケーブルの電源回線を構成する第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1によりR-P変換装置64に接続され、図2に示したP型防災受信盤10の電源部56からR-P変換装置48を介して電源の供給を受け、例えば検知器制御部74、伝送部76、炎検出部78R,78Lに所定の電源電圧を供給している。尚、図6では炎検出部78R,78Lに対する電源ラインの記載を省略している。
【0125】
試験電源部82は、R型配線ケーブルの試験電源回線を構成する第2電源線SV2と第2電源コモン線SG2によりR-P変換装置64に接続され、図2に示したP型防災受信盤10の試験電源部58から電源の供給を受け、試験発光駆動部84に供給している。
【0126】
試験発光駆動部84には、汚損試験に使用する外部試験光源86R,86Lが接続されると共に、感度試験に使用する内部試験光源88R,90R,88L,90Lが接続され、試験光源の発光素子として、それぞれにLEDを設けている。
【0127】
炎検出部78R,78Lによる炎検出の方法は任意であるが、例えば2波長式の炎検出により火災炎を検出している。2波長式の炎検出は、炎検出部78Rを例にとると、透光性窓70Rを介して入射した光エネルギーの中から、炎特有のCO2共鳴放射帯である4.4~4.5μmの放射線(赤外線)を光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光センサにより当該放射線を検出して、光電変換、信号増幅等の所定の処理を行って、当該放射線のエネルギー量に対応する受光信号レベルの第1受光信号を検知器制御部74へ出力する。
【0128】
また、透光性窓70Rを介して入射した光エネルギーの中から、5~6μmの放射線(赤外線)を光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光センサにより当該放射線を検出して、光電変換、信号増幅等の所定の処理を行って、当該放射線のエネルギー量に対応する受光信号レベルの第2受光信号を検知器制御部74へ出力する。
【0129】
検知器制御部74は、例えば第1受光信号と第2受光信号の受光信号レベルの相対比を求め、当該相対比を所定の閾値と比較することにより炎の有無を判定し、炎有りの判定により火災を検知した場合には、伝送部76に指示して、火災検知信号を防災受信盤側へ伝送させる制御を行う。
【0130】
(c4.汚損試験)
次に、プログラムの実行により実現される検知器制御部74の機能である汚損試験機能について説明する。検知器制御部74は、R-P変換装置64、伝送部76を介して試験起動入力信号を受信した場合には、試験発光駆動部84を制御し、外部試験光源86R,86Lを順番に発光駆動させて透光性窓70R,70Lの汚損試験を行わせる。
【0131】
透光性窓70Rの汚損試験を例にとると、試験発光駆動部84は外部試験光源86Rを発光駆動させることにより、火災炎に相当する炎疑似光を、透光性窓70Rを介して炎検出部78Rの受光センサに入射させる。尚、外部試験光源86Rからの炎疑似光は、炎検出部78Rの受光センサで受光する炎に固有な4.4~4.5μm及び5~6μmの放射線を含み、且つ炎に固有な8~12Hzのゆらぎ周波数をもつ光としている。
【0132】
また、工場出荷時の透光性窓70Rに汚れがない状態での汚損試験で得られた受光信号の受光値が汚損試験基準受光値としてメモリに記憶されており、汚損試験で求められる減光率の演算に利用される。
【0133】
R型火災検知器がトンネル壁面に埋込み設置され、防災システムの立上げ時の汚損試験で得られた受光値(検出受光値)は、透光性窓70Rに汚れがほとんどないため基準受光値に一致しており、基準受光値と検出受光値から演算された減光率は0となっている。そして、運用期間が経過して透光性窓70Rに埃等が付着し汚れていくと、減光率は徐々に増加していく。
【0134】
検知器制御部74は、このように減光率が増加した場合には、汚損試験により減光率を求める際に、合わせて減光率の逆数となる補正値を求めてメモリに記憶させ、その後の運用状態で得られる検出受光値については補正値により除算して汚損補正を行い、汚損補正された受光値により火災を検知する。
【0135】
また、検知器制御部74は、前述した汚損補正が不可能となる限界に対応した減光率が、例えば所定の汚損閾値(=0.5)として予め設定され、汚損試験で求められた減光率が汚損閾値以上又は超えた場合には、透光性窓70Rの汚損補正が不可能となる汚損異常と判定し、汚損信号を防災受信盤側へ送信するために、伝送部76に指示してR-P変換装置64との間でシリアル伝送させる制御を行う。
【0136】
また、検知器制御部74は、前述した汚損閾値より低い減効率となる所定の汚損予告閾値が、例えば0.4として予め設定され、汚損試験で求められた減光率が汚損予告閾値以上又は超えた場合には、汚損異常が近いと判定し、汚損予告信号を防災受信盤側へ送信するために、伝送部76に指示してR-P変換装置64との間でシリアル伝送させる制御を行う。
【0137】
(d3.感度試験)
次に、プログラムの実行により実現される検知器制御部74の機能である感度試験機能について説明する。検知器制御部74は、R-P変換装置64、伝送部76を介して試験起動入力信号を受信した場合には、試験発光駆動部84を制御し、内部試験光源88R,90R,88L,90Lを順番に発光駆動して炎検出部78R,78Lの感度試験を行わせる。尚、前述した汚損試験と感度試験の試験順序は任意の順序でよい。
【0138】
炎検出部70Rの感度試験を例にとると、試験発光駆動部84は内部試験光源88R,90Rを発光駆動することにより、火災炎に相当する炎疑似光を炎検出部78Rの受光センサに入射させる。尚、内部試験光源88R,90Rからの炎疑似光は、炎検出部78Rの受光センサで受光する炎に固有な4.4~4.5μm及び5~6μmの放射線を含み、且つ炎に固有な8~12Hzのゆらぎ周波数をもつ光としている。
【0139】
工場出荷時の感度試験で得られた受光信号の受光値が感度試験基準受光値としてメモリに記憶されている。R型火災検知器がトンネル壁面に埋込み設置され、防災システムの立上げ時の感度試験で得られた受光値(検出受光値)は基準受光値に一致しており、検出受光値を基準受光値で割った検出感度は1となっている。そして、運用期間が経過していくと、部品の経年劣化等により検出受光値は徐々に低下していく。
【0140】
検知器制御部74は、このように検出感度が低下した場合には、感度試験により検出感度を求める際に、合わせて検出感度の逆数となる補正値を求めてメモリに記憶させ、その後の運用状態で得られる検出受光値については補正値を乗算して感度補正を行い、感度補正された受光値により火災を検知する。つまり、運用状態で得られる検出受光値は、前述した汚損試験で得られた補正値および感度試験で得られた補正値で補正されることになる。
【0141】
また、検知器制御部74には、前述した感度補正が不可能となる限界に対応した所定の感度閾値が例えば0.5として予め設定され、感度試験で求められた検出感度が感度閾値以下又は下回った場合に炎検出部78Rの故障となる感度異常と判定し、感度異常信号を防災受信盤側へ送信するために、伝送部76に指示してR-P変換装置64との間でシリアル伝送させる制御を行う。
【0142】
また、検知器制御部74には、前述した感度閾値より高い検出感度となる所定の感度予告閾値が例えば0.6として予め設定されていても良く、感度試験で求められた検出感度が感度予告閾値以下又は下回った場合には、炎検出部78Rの故障となる感度異常が近いと判定し、感度異常予告信号を防災受信盤側へ送信するために、伝送部76に指示してR-P変換装置64との間でシリアル伝送させる制御を行う。
【0143】
炎検出部70Lについても、試験発光駆動部84により内部試験光源88L,90Lを発光駆動することにより、同様にして感度試験が行われる。また、検知器制御部74は、汚損試験及び感度試験を終了すると、送部76に指示して試験起動出力信号を防災受信盤側へシリアル伝送させる制御を行う。
【0144】
[d.R-P変換装置]
続いて、R-P変換装置について説明する。当該説明にあっては、R-P変換装置の機能構成を示した図7、及びR型伝送方式の基本構成を示した図8を参照する。
【0145】
(d1.R-P変換装置の機能構成)
図7に示すように、R-P変換装置64には、変換制御部92、伝送部94、P型送信部95,96,100,102,104、P型受信部98、第1電源部106及び第2電源部108が設けられている。
【0146】
変換制御部92は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。また、変換制御部92に対して、伝送部94、P型送信部95,96,100,102,104が設けられる。
【0147】
伝送部94は、図6に示したR型火災検知器12の伝送部76との間をシリアル伝送線SAとシリアル伝送コモン線SBで構成されるR型配線ケーブルのシリアル伝送回線で接続し、R型火災検知器12からR-P変換装置64へ送信される火災検知信号、汚損予告信号、試験起動出力信号、汚損信号又は感度異常信号と、R-P変換装置64からR型火災検知器12へ送信される試験起動入力信号のシリアル伝送を行う。
【0148】
第1電源部106は、P型防災受信盤10からの電源線Pと電源コモン線PCで構成される電源線が接続され、所定の直流電源電圧、例えばDC48ボルトが供給されている。また、第1電源部106は、変換制御部92及び伝送部94を含む内部の回路部に対する所定の電源電圧を供給すると共に、第1電源線SV1と第1電源コモン線SG1によりR型火災検知器12に同じくDC48ボルトの電源を供給している。
【0149】
第2電源部108は、R型火災検知器12へ試験電源を供給するものであり、P型防災受信盤10からの試験電源線V1と試験電源コモン線V2で構成される試験電源線が接続され、所定の直流電源電圧、例えばDC48ボルトが供給されている。また、第2電源部108は、第2電源線SV2と第2電源コモン線SG2によりR型火災検知器12に同じくDC48ボルトの試験電源を供給している。
【0150】
(d2.R型伝送の基本構成)
次に、R型伝送の基本構成の一例について、R-P変換装置の伝送部とR型火災検知器の伝送部との間の構成を示した図8を参照して説明する。図8に示すように、本実施形態のR型伝送方式は、上位装置となるR-P変換装置64の伝送部94と下位装置となるR型火災検知器12の伝送部76との間で行われる。ここで、伝送部94が上位側となり、伝送部76が下位側となることから、伝送部94から伝送部76への伝送信号を下り信号とし、伝送部76から伝送部92への伝送信号を上り信号とする。
【0151】
上位側の伝送部94は下位側の伝送部72へ電圧モードで下り信号を送信し、下位側の伝送部76は上位側の伝送部94へ電流モードで上り信号を送信する。電圧モードによる下り信号の送信にあっては、例えば回線電圧を所定電圧範囲で変化させる電圧パルスとした下り信号の送信とする。また、電流モードによる上り信号の送信にあっては、例えば伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号を送信するものとする。尚、シリアル伝送線SAとシリアル伝送コモン線SCからなる2線式のR型伝送の場合には、電圧モードによる下り信号と電流モードによる上り信号を切り替えて伝送する半二重通信となる。
【0152】
また、上位側の伝送部94は、変換制御部92からの指示に基づきアドレスを順次指定した呼出信号を下位側の伝送部76に送信しており、検知器制御部74は伝送部76を介して受信された呼出信号のアドレスが自己アドレスと一致した場合に、呼出信号に続く応答タイミングで送信条件が成立している火災検知信号、汚損予告信号、試験起動出力信号、汚損信号又は感度異常信号を伝送部76に応答送信させる。
【0153】
また、上位側の伝送部94は、変換制御部92でP型火災受信盤10から試験起動入力信号を受信した場合に変換制御部92の指示を受けて、R型火災検知器12のアドレスを指定した試験起動入力信号を下位側の伝送部72へ送信し、検知器制御部74は自己アドレスに一致する試験起動入力信号を受信した場合に汚損試験及び感度試験を行わせる。尚、1台のR-P変換装置64に接続されるR型火災検知器12は1台であることから、R-P変換装置64からR型火災検知器12への呼出信号はR型火災検知器12の固有アドレスを設定せず、全てのR型火災検知器で指定可能とする共有アドレスを設定してもよい。
【0154】
(d3.R-P変換装置のP型伝送部)
次に、P型防災受信盤との間で行うP型伝送のためにP型伝送部として設けられたP型送信部95,96,100,102,104とP型受信部98について説明する。
【0155】
P型送信部95は、変換制御部92が伝送部94を介してR型火災検知器12から伝送された火災検知信号の受信を判別した場合に出力される火災検知指示信号E1が入力されて動作し、スイッチング素子のオンにより火災検知/汚損予告信号線PAと試験電源コモン線V2の間に終端抵抗を接続して所定の回線電流を流すことで、火災検知信号をP型防災受信盤10へ送信する。
【0156】
P型送信部96は、変換制御部92が伝送部94を介してR型火災検知器12から伝送された汚損予告信号の受信を判別した場合に汚損予告指示信号E2が入力されて動作し、スイッチング素子のオンによりP型送信部95と同じ火災検知/汚損予告信号線PAと試験電源コモン線V2の間に、例えばP型送信部95の終端抵抗とは異なる抵抗値、例えばP型送信部95の終端抵抗の抵抗値の2倍の抵抗値である終端抵抗を接続して、火災検知信号の場合の半分となる回線電流を流し、汚損予告信号をP型防災受信盤10へ送信する。ここで、P型送信部95,96は、図3(B)に示したP型伝送の基本構成における端末側のP型送信部に対応しており、防災受信盤10側のP型受信部48に向けて送信する。
【0157】
P型受信部98は、試験起動入力信号線Vinと試験電源コモン線V2の間にP型防災受信盤10側で印加された回線電圧により流れる回線電流を検出した場合に試験起動入力指示信号E3を変換制御部92に出力し、変換制御部92が伝送部94に指示して試験起動入力信号をR型火災検知器12へ伝送させて汚損試験と感度試験を行わせる。ここで、P型受信部98は、図3(C)に示したP型伝送の基本構成における端末側のP型受信部に対応しており、防災受信盤10側のP型送信部50から受信する。
【0158】
P型送信部100は、変換制御部92が伝送部94を介してR型火災検知器12から伝送された試験起動出力信号の受信を判別した場合に試験起動出力指示信号E3が入力されて動作し、スイッチング素子のオンにより試験起動出力信号線Voutと試験電源コモン線V2の間に終端抵抗を接続して所定の回線電流を流すことで、試験起動出力信号をP型防災受信盤10へ送信する。ここで、P型送信部100は、図3(A)に示したP型伝送の基本構成における端末側のP型送信部に対応しており、防災受信盤10側のP型受信部52に向けて送信する。
【0159】
P型送信部102は、変換制御部92が伝送部94を介してR型火災検知器12から伝送された汚損信号の受信を判別した場合に汚損指示信号E5が入力されて動作し、スイッチング素子のオンにより、汚損/感度異常信号線V0と試験電源コモン線V2の間に終端抵抗を接続して所定の回線電流を流すことで、汚損信号をP型防災受信盤10へ送信する。
【0160】
P型送信部104は、変換制御部92が伝送部94を介してR型火災検知器12から伝送された感度異常信号の受信を判別した場合に感度異常指示信号E6が入力されて動作し、スイッチング素子のオンにより、P型送信部102と同じ汚損/感度異常信号線V0と試験電源コモン線V2の間に、例えばP型送信部102の終端抵抗とは異なる抵抗値、例えばP型送信部102の終端抵抗の抵抗値の2倍の抵抗値である終端抵抗を接続して、汚損信号の場合の半分となる回線電流を流し、感度異常信号をP型防災受信盤10へ送信する。ここで、P型送受信部102、104は、図3(B)に示したP型伝送の基本構成における端末側のP型送信部に対応しており、防災受信盤10側のP型受信部54に向けて送信する。
【0161】
また、変換制御部92は、R-P変換装置64の故障を監視しており、故障を検出した場合には、例えば火災検知/汚損予告信号線PAと試験電源コモン線V2を使用して、変換装置故障信号をP型防災受信盤10へ送信し、P型防災受信盤10でR-P変換装置64の故障灯を点灯させるようにしても良い。
【0162】
この場合には、火災検知/汚損予告信号線PAと試験電源コモン線V2に対し、P型送信部95,96に加えて変換装置故障信号を送信するためのP型送信部を並列に接続する。この変換装置故障信号を送信するP型送信部は、スイッチング素子のオンにより接続する終端抵抗の抵抗値を、P型送信部95,96の終端抵抗とは異なる抵抗値とし、変換装置故障信号として固有な回線電流を流すことで、P型防災受信盤10へ変換装置故障信号を送信することが可能となる。
【0163】
[e.本発明の変形例]
本発明による防災システム及び変換装置の変形例について説明する。本発明の防災システム及び変換装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0164】
(P型伝送の信号回線)
上記の実施形態は、火災検知/汚損予告信号線PAに火災検知信号のP型送信部95と汚損予告信号のP型送信部96の出力を並列に接続し、回線電流を異ならせることで2種類の信号を区別した上で同じ信号回線で伝送し、また汚損/感度異常信号線V0に汚損信号のP型送信部102と汚損感度異常信号のP型送信部104の出力を並列に接続し、回線電流を異ならせることで2種類の信号を区別した上で同じ信号回線で伝送しているが、2種類の信号を伝送する信号回線は任意であり、同じ信号回線にて伝送する信号の組み合わせは、これに限定されない。
【0165】
(火災検知器)
上記の実施形態は2波長方式の火災検知器を例にとっているが、他の方式でも良く、例えば前述した2波長に加え、CO2の共鳴放射帯である4.4~4.5μm帯に対し例えば短波長側の3.8μm付近の波長帯域における放射線を2波長式と同様の手法で検知し、これらの3波長帯域における各受光信号の相対比によって炎の有無を判定して火災を検知する3波長式の火災検知器としても良い。
【0166】
(汚損試験)
上記の実施形態は、炎検出部78R,78Lの受光センサにより外部試験光源86R,86Lからの試験光により得られた受光値を使用して減光率を求めているが、汚損試験専用のセンサ部を別途設けて外部試験光源86R,86Lからの試験光による受光値から減光率を求めるようにしても良い。
【0167】
(P-R変換装置)
上記の実施形態は、P型防災受信盤10にR-P変換装置64を介してR型検出器12を接続するトンネル防災システムを例にとるものであったが、「R型防災受信盤」に「P-R変換装置」を介して「P型火災検出器」を接続するトンネル防災システムとしてもよい。この場合、「R型防災受信盤」は、図1のP型防災受信盤10がR型防災受信盤となり、例えば、上り線トンネル1aと下り線トンネルをそれぞれ1系統としてR型配線ケーブルが引出される。また、「R型防災受信盤」は公知であり、具体的には、図2に示したP型防災受信盤10のP型伝送部36(36-1)~36(36-n)が図8に示した上位の伝送部94となる。また、「P型火災検知器」も公知であり、具体的には、図6に示したR型火災検知器12の伝送部76が図7のR-P変換装置64に示したP型送信部95,96,100,102,10及びP型受信部98と同様の回路部となる。また、「R-P変換装置」は、図7に示したR-P変換装置64のP型送信部95,96,100,102,104及びP型受信部98の回路部が図8に示した下位の伝送部74となり、伝送部94が図2に示したP型防災受信盤10のP型伝送部36(36-1)に示されたP型受信部48,52,54及びP型送信部50と同様の回路部となる。更に、電源系統については、上記の実施形態と同様に、通常電源と試験電源の2系統が維持される。
【0168】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0169】
1a:上り線トンネル
1b:下り線トンネル
10:P型防災受信盤
12:R型火災検知器
14,14a,14b:P型配線ケーブル
16:消火ポンプ設備
18:冷却ポンプ設備
20:IG子局設備
22:換気設備
24:警報表示板設備
26:ラジオ再放送設備
28:テレビ監視設備
30:照明設備
32:遠方監視制御設備
34:盤制御部
36(36-1)~36(36-n),46:P型伝送部
38:警報部
40:表示部
42:操作部
44:モデム
48,52,54,98:P型受信部
50,95,96,100,102,104:P型送信部
56:電源部
58:試験電源部
60:収容箱
62:電線管
64:R-P変換装置
66:筐体
68:センサ収納部
70R,70L:透光性窓
72R,72L:試験光源用透光窓
74:検知器制御部
76,94:伝送部
78R,78L:炎検出部
80:電源部
82:試験電源部
84:試験発光駆動部
86R,86L:外部試験光源
88R,88L,90R,90L:内部試験光源
92:変換制御部
94:伝送部
106:第1電源部
108:第2電源部
SV1:第1電源線
SG1:第1電源コモン線
SV2:第2電源線
SG2:第2電源コモン線
SA:シリアル伝送線
SB:シリアル伝送コモン線
P:電源線
C:電源コモン線
PA:火災検知/汚損予告信号線
Vin:試験起動入力信号線
Vout:試験起動出力信号線
Vo:汚損/感度異常信号線
V1:試験電源線
V2:験電源コモン線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8