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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104337
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】水中作業機および水中掘削工法
(51)【国際特許分類】
   E02F 5/00 20060101AFI20240729BHJP
   E21B 4/06 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
E02F5/00 A
E21B4/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008481
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 博之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 久
(72)【発明者】
【氏名】北原 貴明
(72)【発明者】
【氏名】春原 和宏
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA01
2D129AA04
2D129AB14
2D129BA09
2D129CB12
2D129CB13
2D129HB01
(57)【要約】
【課題】水底の岩盤を掘削(割岩)可能な水中作業機および水中掘削工法を提案する。
【解決手段】下端が水底Glに支持されて、上部が作業船Bに支持されたシャフト2に沿って水中作業機1を下降させる作業機下降工程と、水中作業機1により水底GLを掘削する水底掘削工程とを備える水中掘削工法である。水中作業機1のアーム14には、ダウンザホールハンマ4が取り付けられており、水底掘削工程は、ダウンザホールハンマ4により水底GLに掘削孔Hを形成する作業を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンザホールハンマを備えるアタッチメントがアームの先端に取り付けられていることを特徴とする、水中作業機。
【請求項2】
前記ダウンザホールハンマが、前記アタッチメントに対して横移動可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の水中作業機。
【請求項3】
前記アタッチメントは、取付フレームを備えており、
前記取付フレームの側面にはレールが形成されていて、
前記ダウンザホールハンマは、前記レールに沿って横移動可能であることを特徴とする、請求項2に記載の水中作業機。
【請求項4】
前記ダウンザホールハンマに沿ってガイド材が配設されていることを特徴とする、請求項2に記載の水中作業機。
【請求項5】
前記ガイド材は、既設の掘削孔内に圧縮空気を噴出可能であることを特徴とする、請求項4に記載の水中作業機。
【請求項6】
前記ガイド材は、既設の掘削孔内のズリを吸引可能であることを特徴とする、請求項4に記載の水中作業機。
【請求項7】
前記ダウンザホールハンマに沿って割岩パッカーが配設されていることを特徴とする、請求項2に記載の水中作業機。
【請求項8】
下端が水底に当接するとともに上部が作業船に支持されたシャフトに、上下動可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の水中作業機。
【請求項9】
前記シャフトに取り付けられた昇降部と、
シャフトを中心に旋回可能に前記昇降部に取り付けられた旋回体と、を備えており、
前記アームは、ブームを介して前記旋回体に取り付けられていることを特徴とする、請求項8に記載の水中作業機。
【請求項10】
前記旋回体、前記アームおよび前記ブームのうちの少なくとも一つの動力源としての油圧ポンプの油圧量を制御する油圧ポンプ制御機構を備えていることを特徴とする、請求項9に記載の水中作業機。
【請求項11】
前記昇降部に対する前記旋回体の旋回角度を検出する旋回体用エンコーダーと、
前記旋回体に対する前記ブームの角度を検出するブーム用エンコーダーと、
前記ブームに対する前記アームの角度を検出するアーム用エンコーダーと、
前記アームに対する前記アタッチメントの角度を検出するアタッチメント用エンコーダーと、を備えていることを特徴とする、請求項9に記載の水中作業機。
【請求項12】
下端が水底に支持されて、上部が作業船に支持されたシャフトに沿って水中作業機を下降させる作業機下降工程と、
前記水中作業機により水底を掘削する水底掘削工程と、を備える水中掘削工法であって、
前記水中作業機のアームには、ダウンザホールハンマが取り付けられており、
前記水底掘削工程は、前記ダウンザホールハンマにより水底に掘削孔を形成する作業を含むことを特徴とする、水中掘削工法。
【請求項13】
前記ダウンザホールハンマは横移動可能であり、
前記水底掘削工程では、一の前記掘削孔の形成後に前記ダウンザホールハンマを横移動させる作業を繰り返すことで、複数の前記掘削孔を連設することを特徴とする、請求項12に記載の水中掘削工法。
【請求項14】
前記水底掘削工程では、前記シャフトを中心として円弧状に複数の掘削孔を連設することを特徴とする、請求項12に記載の水中掘削工法。
【請求項15】
前記ダウンザホールハンマに沿ってガイド材が配設されており、
前記水底掘削工程では、先行して形成された前記掘削孔である先行掘削孔に前記ガイド材を挿入した状態で、前記ダウンザホールハンマにより前記先行掘削孔に隣接する掘削孔を削孔することを特徴とする、請求項13または請求項14に記載の水中掘削工法。
【請求項16】
前記水底掘削工程では、前記ガイド材から圧縮空気を噴出することで、前記先行掘削孔内に残存するズリを除去することを特徴とする、請求項15に記載の水中掘削工法。
【請求項17】
前記水底掘削工程では、前記先行掘削孔内に残存するズリを前記ガイド材を通じて吸引除去することを特徴とする、請求項15に記載の水中掘削工法。
【請求項18】
前記ダウンザホールハンマに沿って割岩パッカーが配設されており、
前記ダウンザホールハンマおよび前記割岩パッカーは横移動可能であり、
前記水底掘削工程により形成された掘削孔に、前記割岩パッカーを挿入して前記掘削孔の周囲を割岩する割岩工程を備えていることを特徴とする、請求項12に記載の水中掘削工法。
【請求項19】
前記ダウンザホールハンマを前記アームから取り外して、第二ダウンザホールハンマと割岩パッカーとを前記アームに取り付けるハンマ交換工程と、
前記水底掘削工程において形成された複数の前記掘削孔から離れた位置に、前記第二ダウンザホールハンマにより割岩用掘削孔を形成する第二水底掘削工程と、
前記割岩用掘削孔に前記割岩パッカーを挿入して前記割岩用掘削孔の周囲を割岩する割岩工程と、をさらに備えており、
前記第二ダウンザホールハンマおよび前記割岩パッカーは横移動可能であり、
前記割岩工程では、前記第二ダウンザホールハンマおよび前記割岩パッカーを横移動させて、前記割岩パッカーを前記割岩用掘削孔の位置に合わせることを特徴とする、請求項13に記載の水中掘削工法。
【請求項20】
前記シャフトの上部は、前記作業船上において上下に配設された第一作業台および第二作業台により支持されており、
前記作業機下降工程は、前記第一作業台の上方に前記水中作業機を配設する作業と、
前記第二作業台により前記シャフトを支持した状態で、前記第一作業台の前記シャフトの周囲を開口して前記水中作業機を前記第一作業台と前記第二作業台との間に下降させる作業と、
前記第一作業台の開口部分を閉塞して前記第一作業台により前記シャフトを支持させる作業と、
前記第二作業台の前記シャフトの周囲を開口して前記水中作業機を前記第二作業台の下方に下降させる作業と、
前記第二作業台の開口部分を閉塞して前記第二作業台により前記シャフトを支持させる作業と、を備えていることを特徴とする、請求項12に記載の水中掘削工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中作業機および水中掘削工法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム湖等の貯水池では、雨水や河川水等とともに流れ込んだ土砂等が水底に堆積する。水底に土砂等が多く堆積すると、貯水性能が低下する等、ダムとしての機能が低下するおそれがある。そのため、ダム湖等では、定期的に浚渫を行い、水底に堆積した土砂等(堆砂)を除去している。浚渫は、バックホウやグラブバケット等を利用して水底の堆砂をすくい上げる方法や、ポンプを利用して堆砂を吸引する方法等が採用される。
また、特許文献1には、作業船のシャフト支持装置に支持されたシャフトを下降させ、シャフトの下部を水底に食い込ませて固定状態に保持し、この状態で、シャフトに設けたショベル等の水中作業部によりシャフトの周囲を掘削する水中掘削方法が開示されている。
近年、ダム湖の水底地盤を掘削することで、ダムの貯水能力を向上させるダムの改修工事が検討されている。ところが、ダム湖の水底に硬質岩盤が存在する場合には、従来の水中掘削方法では掘削できなおそれがある。例えば、特許文献1の水中掘削方法は、水中作業部のショベルなどによって、水底に堆積した土砂等、比較的軟質な土砂を掘削するものであるため、硬質岩盤を割岩できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-068068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、水底の岩盤を掘削(割岩)可能な水中作業機および水中掘削工法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための水中作業機は、ダウンザホールハンマを備えるアタッチメントがアームの先端に取り付けられている。かかる水中作業機によれば、水底に岩盤が存在する場合であっても、ダウンザホールハンマにより削孔することができる。ダウンザホールハンマにより形成された掘削孔を利用すれば、岩盤の割岩や掘削が可能となる。
なお、前記ダウンザホールハンマが、前記アタッチメントに対して横移動可能に取り付けられていれば、連続して複数の掘削孔を形成する場合であっても、ダウンザホールハンマの位置決めが容易である。このようなアタッチメントとしては、取付フレームを備えており、この取付フレームの側面にはダウンザホールハンマを横移動可能に支持するレールが形成されているのが望ましい。
また、前記ダウンザホールハンマに沿ってガイド材が配設されていれば、先行して形成された掘削孔にガイド材を挿入することで、ダウンザホールハンマを所定の位置(新たに削孔する掘削孔の位置)に配置できるため、作業性が向上する。このガイド材は、既設の掘削孔内に圧縮空気を噴出可能、もしくは、既設の掘削孔内のズリを吸引可能であるのが望ましい。このすることで、ガイド材を利用して、先行して形成された掘削孔の内部からズリ(掘削残土)を除去することができる。
さらに、前記ダウンザホールハンマに沿って割岩パッカーが配設されていれば、アタッチメントを交換することなく、ダウンザホールハンマにより形成された掘削孔を利用して割岩することが可能となる。
【0006】
本発明の水中作業機は、下端が水底に当接するとともに上部が作業船に支持されたシャフトに、上下動可能に取り付けられているのが望ましい。かかる水中作業機によれば、シャフトにより支持されているため、安定した掘削作業が可能である。また、水中作業機の位置決めも容易である。このような水中作業機は、前記シャフトに取り付けられた昇降部と、シャフトを中心に旋回可能に前記昇降部に取り付けられた旋回体とを備えており、前記アームはブームを介して前記旋回体に取り付けられているのが望ましい。
また、前記旋回体、前記アームおよび前記ブームのうちの少なくとも一つの動力源としての油圧ポンプの油圧量を制御する油圧ポンプ制御機構を備えていれば、水中作業機の動作速度の低速化が可能となり、アタッチメントをより位置決めしやすくなる。
さらに、前記昇降部に対する前記旋回体の旋回角度を検出する旋回体用エンコーダーと、前記旋回体に対する前記ブームの角度を検出するブーム用エンコーダーと、前記ブームに対する前記アームの角度を検出するアーム用エンコーダーと、前記アームに対する前記アタッチメントの角度を検出するアタッチメント用エンコーダーとを備えていれば、水中作業機(アタッチメント)の位置や向き等を把握することができ、水中での作業性や位置決め精度が向上する。
【0007】
また、本発明の水中掘削工法は、下端が水底に支持されて上部が作業船に支持されたシャフトに沿って水中作業機を下降させる作業機下降工程と、前記水中作業機により水底を掘削する水底掘削工程とを備えている。前記水中作業機のアームにはダウンザホールハンマが取り付けられており、前記水底掘削工程は、前記ダウンザホールハンマにより水底に掘削孔を形成する作業を含んでいる。かかる水中掘削工法によれば、水底に岩盤が存在する場合であっても、ダウンザホールハンマにより削孔することができる。また、ダウンザホールハンマにより形成された掘削孔を利用すれば、岩盤の割岩や掘削が可能となる。
なお、前記ダウンザホールハンマが横移動可能である場合には、前記水底掘削工程において、一の前記掘削孔を形成後に前記ダウンザホールハンマを横移動させる作業を繰り返すことで、複数の前記掘削孔を連設することが可能となる。複数の掘削孔は前記シャフトを中心として円弧状に連設するのが望ましい。
【0008】
また、前記ダウンザホールハンマに沿ってガイド材が配設されていれば、前記水底掘削工程において、先行して形成された前記掘削孔である先行掘削孔に前記ガイド材を挿入することで、前記ダウンザホールハンマの位置決めが完了する。したがって、前記先行掘削孔に隣接する掘削孔を正確な位置に形成できる。前記先行掘削孔内に残存するズリは、前記ガイド材から圧縮空気を噴出するか、前記ガイド材を通じて吸引除去するのが望ましい。
【0009】
前記ダウンザホールハンマに沿って、前記ダウンザホールハンマとともに横移動可能な割岩パッカーが配設されている場合は、前記水底掘削工程により形成された掘削孔に、前記割岩パッカーを挿入して前記掘削孔の周囲の岩盤を割岩する割岩工程を備えていてもよい。
また、水中掘削工法は、前記ダウンザホールハンマを前記アームから取り外して、第二ダウンザホールハンマと割岩パッカーとを前記アームに取り付けるハンマ交換工程と、前記水底掘削工程において形成された複数の前記掘削孔から離れた位置に、前記第二ダウンザホールハンマにより割岩用掘削孔を形成する第二水底掘削工程と、前記割岩用掘削孔に前記割岩パッカーを挿入して前記掘削孔の周囲の岩盤を割岩する割岩工程とをさらに備えていてもよい。前記第二ダウンザホールハンマおよび前記割岩パッカーは横移動可能な構成とし、前記割岩工程では、前記第二ダウンザホールハンマおよび前記割岩パッカーを横移動させて、前記割岩パッカーを前記割岩用掘削孔の位置に合わせればよい。
かかる水中掘削工法によれば、掘削孔を利用して岩盤を割岩することが可能となり、ひいては、水底の岩盤を掘削することが可能となる。
【0010】
前記シャフトの上部が、前記作業船上において上下に配設された第一作業台および第二作業台により支持されている場合には、前記作業機下降工程において、前記第一作業台の上に前記水中作業機を配設する作業と、前記第二作業台により前記シャフトを支持した状態で、前記第一作業台の前記シャフトの周囲を開口して前記水中作業機を前記第一作業台と前記第二作業台との間に下降させる作業と、前記第一作業台の開口部分を閉塞して前記第一作業台により前記シャフトを支持させる作業と、前記第二作業台の前記シャフトの周囲を開口して前記水中作業機を前記第二作業台の下方に下降させる作業と、前記第二作業台の開口部分を閉塞して前記第二作業台により前記シャフトを支持させる作業とを行う。こうすることで、作業船によりシャフトを支持しつつ、シャフトに沿って気中から水中に水中作業機を配置することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中作業機および水中掘削工法によれば、水底の岩盤を掘削することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る水中作業機を示す側面図である。
図2】水中作業機を示す側面図である。
図3】第一ダウンザホールハンマが取り付けられたアタッチメントを示す斜視図である。
図4】ガイドパイプを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図5】第二ダウンザホールハンマが取り付けられたアタッチメントを示す斜視図である。
図6】割岩パッカーを示す図であって、(a)は拡開前、(b)は拡開後である。
図7】水中掘削工法の手順を示すフローチャートである。
図8】作業機下降工程において水中作業機を第一作業台の上方に配置した状態を示す側面図である。
図9】作業機下降工程において水中作業機を第一作業台と第二作業台との間に下降させた状態を示す側面図である。
図10】作業機下降工程おいて水中作業機を第二作業台の下方に下降させた状態を示す側面図である。
図11】水底掘削工程の作業状況を示す正面図であって、(a)は1本目の掘削孔の穿孔状況、(b)は2本目の掘削孔の穿孔状況、(c)は3本目の掘削孔の穿孔状況、(d)は5本目の掘削孔の穿孔状況である。
図12】水底掘削工程の作業状況を示す斜視図である。
図13】第二水底掘削工程の穿孔前を示す断面図である。
図14】第二水底掘削工程の穿孔状況を示す断面図である。
図15】割岩工程を示す断面図である。
図16】割岩工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態では、水中作業機1を利用してダム湖の水底GLを掘削する場合について説明する。水底GLには岩盤層が存在している。
図1に水中作業機1を示す。水中作業機1は、図1に示すように、下端が水底に当接するとともに上部が作業船Bに支持されたシャフト2に取り付けられている。水中作業機1は、シャフト2に対して上下動可能である。シャフト2には、シャフト2の傾きを測定する傾斜計21が取り付けられている。
図2に水中作業機を示す。図2に示すように、水中作業機1は、シャフト2に取り付けられた昇降部11と、シャフト2を中心に旋回可能に昇降部11に取り付けられた旋回体12と、基端部が旋回体12に横軸を中心に回動可能に取り付けられたブーム13と、ブーム13の先端部に横軸を中心に回動可能に取り付けられたアーム14とを備えている。アーム14の先端には、アタッチメント3を着脱できる。昇降部11には、水中作業機の昇降量を検出する昇降量検出用エンコーダー155が取り付けられている。
旋回体12には、昇降部11に対する旋回体12の旋回角度を検出する旋回体用エンコーダー151が取り付けられている。また、ブーム13には、旋回体12に対するブーム13の角度を検出するブーム用エンコーダー152が取り付けられている。さらに、アーム14には、ブーム13に対するアーム13の角度を検出するアーム用エンコーダー153が取り付けられている。
【0014】
図3にアタッチメント3を示す。水底GLの掘削に使用するアタッチメント3は、図3に示すように、鋼材を組み合わせることにより箱型に形成された取付フレーム31と、アーム14の先端に取り付けるためのキャッチ部32と、取付フレーム31の側面に形成された一対のレール33,33と、一対のレール33,33に摺動可能に取り付けられた取付部34と、取付けフレーム31の下方に向けて延出する支持脚35とを備えている。キャッチ部32は、取付フレーム31の上面に設けられており、支持脚35は、取付フレーム31の下面に突設されている。さらに、アタッチメント3には、アーム14に対するアタッチメント3の角度を検出するアタッチメント用エンコーダー154が取り付けられている。
レール33は、アーム14の前後方向に延在している。本実施形態では、上下二段のレール33,33が平行に配設されている。取付部34は、レール33に沿ってスライド可能である。すなわち、取付部34は、アーム14に対して前後方向に横移動可能である。取付部34は、ダウンザホールハンマ4(第一ダウンザホールハンマ41または第二ダウンザホールハンマ42)および割岩パッカー6(図5参照)を着脱できるように構成されている。本実施形態では、削孔径が異なる2種類のダウンザホールハンマ4(第一ダウンザホールハンマ41と第二ダウンザホールハンマ42)を使用して水底の岩盤を穿孔する。
【0015】
本実施形態の第一ダウンザホールハンマ41は、岩盤に自由面を形成する際に使用する。自由面は、複数の掘削孔を連設することにより形成する。図3(a)に示すように、第一ダウンザホールハンマ41は、取付フレーム31の取付部34にガイド材5を介して取り付ける。第一ダウンザホールハンマ41は、ガイド材5に並設されている。すなわち、第一ダウンザホールハンマ41は、ガイド材5の取付部34と反対側の側面に沿って配設(添設)されている。本実施形態の第一ダウンザホールハンマ41の径は例えばφ270mmである。第一ダウンザホールハンマ41は、ガイド材5に沿って上下動することで、水底GLを穿孔する。取付部34を介してレール33に取り付けられた第一ダウンザホールハンマ41およびガイド材5は、レール33に沿って前後方向に横移動可能である。すなわち、第一ダウンザホールハンマ41およびガイド材5は、アーム14に対して前後方向にスライド可能である。
【0016】
本実施形態において、掘削孔を連続穿孔する際のガイド材5(第一ダウンザホールハンマ41が取り付けられている状態のガイド材5)には、ガイドパイプ51が設けられている。ガイドパイプ51は、図3に示すように、取付部材52を介して、第一ダウンザホールハンマ41に並設されている。取付部材52は、ガイドパイプ51を上下方向に移動可能に支持している。ガイドパイプ51には、送気管(図示せず)が接続されている。図4にガイドパイプ51を示す。ガイドパイプ51は、先端部から圧縮空気を噴出可能である。第一ダウンザホールハンマ41による削孔時には、図4(a)および(b)に示すように、ガイドパイプ51を既設の掘削孔H(先行掘削孔H1)内に挿入することで第一ダウンザホールハンマ41の位置決めを行うとともに、ガイドパイプ51から圧縮空気を噴出して、既設の掘削孔H(先行掘削孔H1)内および穿孔中の掘削孔H内のズリを除去する。
【0017】
図5に第二ダウンザホールハンマ42が取り付けられた状態のアタッチメント3(取付フレーム31)を示す。本実施形態の第二ダウンザホールハンマ42は、割岩パッカー6を挿入するための掘削孔(割岩用掘削孔)を形成する際に使用する。図5に示すように、取付フレーム31には、第二ダウンザホールハンマ42とともに、割岩パッカー6が取り付けられている。割岩パッカー6は、ダウンザホールハンマ42に沿って配設されている。すなわち、第二ダウンザホールハンマ42と割岩パッカー6は、アーム14に対して前後(レール33に沿う方向)に並設されている。第二ダウンザホールハンマ42は、ガイド材5に取り付けられていて、割岩パッカー6は取付部34に直接とりつけられている。第二ダウンザホールハンマ42の径は、例えばφ105mmである。取付部34を介してレール33に取り付けられた第二ダウンザホールハンマ42および割岩パッカー6は、レール33に沿って前後方向に横移動可能である。すなわち、第二ダウンザホールハンマ42および割岩パッカー6は、アーム14に対して前後方向にスライド可能である。第二ダウンザホールハンマ42は、ガイド材5に沿って上下動することで、水底GLを穿孔する。
【0018】
図6に割岩パッカー6を示す。図6(a)に示すように、割岩パッカー6は、左右一対の拡解刃61,61と、拡開刃61,61の間に挟持された心棒62と、心棒62を軸方向に進退させるための油圧シリンダ(図示せず)とを備えている。心棒62の下部には、上に行くに従って左右の幅が大きくなるように、テーパー面63が形成されている。すなわち、心棒62の下部は、楔型を呈している。図6(b)に示すように、岩盤に削孔された掘削孔H(割岩用掘削孔Hb)に割岩パッカー6を挿入した状態で、心棒62を下降させることで、左右の拡開刃61,61が左右に広がり、掘削孔周囲の岩盤に亀裂を生じさせる。本実施形態の心棒62には、先端部および上部にテーパー面63が形成されていて、上下2箇所において拡開刃61を左右に広げる。
【0019】
本実施形態の水中作業機を利用した水中掘削工法について説明する。図6に水中掘削工法の手順を示す。図7に示すように、水中掘削工法は、作業機下降工程S1と、水底掘削工程S2と、ハンマ交換工程S3と、第二水底掘削工程S4と、割岩工程S5とを備えている。
【0020】
図8図10に作業機下降工程の概要を示す。作業機下降工程は、シャフト2に沿って水中作業機を下降させる工程である。シャフト2は、下端が水底に支持されて、上部が作業船Bに形成された支持構台7により支持されている(図1参照)。
支持構台7は、上下に配設された第一作業台71および第二作業台72によりシャフト2を支持している。シャフト2は、第一作業台71および第二作業台72に挿通されている(図8参照)。
【0021】
作業機下降工程S1では、まず、第一作業台71の上方に水中作業機1を配設する。図8に示すように、水中作業機1は、クレーンを用いて、第一作業台71の上方に配置し、シャフト2の上端から下降させて、所定の位置に配置する。シャフト2は、第二作業台72に支持させる。第一作業台71は、横移動させ、シャフト2の周囲に水中作業機1が通過し得る開口部を形成する。
次に、水中作業機1を第一作業台71と第二作業台72との間に下降させる。より詳細には、第二作業台72によりシャフト2を支持した状態で、第一作業台71の開口部を通じて水中作業機1を下降させる。水中作業機1が第一作業台71の開口部を通過したら、図9に示すように、第一作業台71の開口部分を閉塞して第一作業台71によりシャフト2を支持させ、その後、第二作業台72を横移動させ、シャフト2の周囲に水中作業機1が通過し得る開口部を形成する。
続いて、水中作業機1を第二作業台72の下方に下降させる。水中作業機1が第二作業台72の開口部を通過したら、図10に示すように、第二作業台72の開口部分を閉塞して第二作業台72によりシャフト2を支持させる。第一作業台71と第二作業台72でシャフト2を支持したら、水中作業機1を水底GLまで下降させる。
【0022】
水底掘削工程S2では、水中作業機1により水底GLを穿孔して自由面Fを形成する。図11および図12に水底掘削工程を示す。水底GLの穿孔は、図11(a)~(d)に示すように、第一ダウンザホールハンマ41により行う。自由面Fは、図12に示すように、水中作業機1を操作することで第一ダウンザホールハンマ41を横移動させ、複数の掘削孔Hを順次連設することにより形成する。自由面Fの施工は、まず、図11(a)に示すように、第一ダウンザホールハンマ41により水底GLを穿孔して、1本目の掘削孔Hを形成する。次に、図11(b)および(c)に示すように、第一ダウンザホールハンマ41およびガイドパイプ51を取付フレーム31に沿って横移動させて、2本目以降の掘削孔Hを形成する。二本目以降の掘削孔Hは、先行して形成された先行掘削孔H1にガイドパイプ51を挿入することで、第一ダウンザホールハンマ41の位置決めを行ったうえで、先行掘削孔H1に隣接する掘削孔Hを削孔する。ガイドパイプ51は、先端部から圧縮空気を噴出して先行掘削孔H1内に残存するズリを除去しながら先行掘削孔H1に挿入する。取付フレーム31(レール33)のストロークが限界となったら(本実施形態では4本目の掘削孔Hを穿孔したら)、図11(d)に示すように、アームにより次の掘削孔H(本実施形態では5本目の掘削孔)の位置に第一ダウンザホールハンマ41を配置させて、掘削孔Hを穿孔する。この作業を繰り返すことで、複数の掘削孔H,H,…が連設される。水中作業機1は、旋回体12、ブーム13およびアーム14の動力源としての油圧ポンプの油圧量を制御する油圧ポンプ制御機構(図示せず)を備えている。そのため、第一ダウンザホールハンマ41の位置決め等の際に、水中作業機1を低速運転(例えば通常の1/10程度)して、所定の位置に配置させる。また、各種エンコーダーの計測値に応じて水中作業機1を制御する。
【0023】
ハンマ交換工程S3では、アタッチメント3に取り付けられた第一ダウンザホールハンマ41を第二ダウンザホールハンマ42に交換する。ハンマ交換工程S3では、まず、水中作業機1を水上に上昇させる。このとき、水中作業機1は、第一作業台71上に配置してもよいし、第二作業台72上に配置してもよい。水中作業機1を上昇させたら、アタッチメント3を作業船Bの上の適所に載置する。そして、作業船B上において、第一ダウンザホールハンマ41およびガイドパイプ51をアタッチメント3から取り外して、第二ダウンザホールハンマ42をアタッチメント3に取り付ける(図5参照)。このとき、アタッチメント3に割岩パッカー6を取り付けて、第二ダウンザホールハンマ42に沿って割岩パッカー6を配設する。アタッチメント3に第二ダウンザホールハンマ42および割岩パッカー6を取り付けたら、水中作業機1を再び下降させる。
【0024】
第二水底掘削工程S4では、水底に割岩用掘削孔Hbを形成する。図13および図14に第二水底掘削工程を示す。割岩用掘削孔Hbは、自由面(水底掘削工程において形成された複数の掘削孔)から離れた位置において、図13および図14に示すように、第二ダウンザホールハンマ42により水底GLを穿孔することにより形成する。
【0025】
割岩工程S5では、割岩用掘削孔Hbを利用して水底GLの岩盤を割岩する。図15および図16に割岩工程S5を示す。割岩工程S5では、まず、第二ダウンザホールハンマ42および割岩パッカー6を取付フレーム31のレール33に沿って横移動させて、割岩パッカー6を割岩用掘削孔Hbの位置に合わせる。続いて、割岩用掘削孔Hbに割岩パッカー6を挿入する。そして、割岩用掘削孔Hb内において割岩パッカー6の心棒62を下降させて拡開刃61,61を左右に広げることで、割岩用掘削孔Hbの周囲を割岩する。割岩用掘削孔Hbから離れた位置に複数の掘削孔Hにより自由面が形成されているため、割岩パッカー6によって自由面側に岩盤が押し出された状態となり、割岩用パッカー6を起点とした亀裂が生じやすい。
岩盤を割岩したら、アタッチメント3をバケット等に交換して、水底GLを掘削する。水底GLの掘削は、例えば、高さ0.75mの複数の段に分けて行うものとし、各段ごとに作業機下降工程S1~割岩工程S5を繰り返すことにより、所定の深さまで掘削すればよい。
【0026】
本実施形態の水中作業機1によれば、水底GLに岩盤が存在する場合であっても、ダウンザホールハンマ4により掘削孔Hを削孔することができる。そして、この掘削孔Hを利用すれば、岩盤の割岩や掘削が可能となる。
また、ダウンザホールハンマ4は、アタッチメント3に対して横移動可能に取り付けられているため、連続して複数の掘削孔4を穿孔する際に、ダウンザホールハンマ4の位置決めが容易となる。
アタッチメント3は、側面にレール33が形成された取付フレーム31を備えているため、レール33によりダウンザホールハンマ4を横移動可能に支持できる。
【0027】
ダウンザホールハンマ4に沿ってガイド材5が配設されているため、先行掘削孔H1(図4参照)にガイド材5を挿入することで、ダウンザホールハンマ4を所定の位置(新たに削孔する掘削孔の位置)に配置でき、作業性が向上する。また、ガイド材5は、既設の掘削孔内に圧縮空気を噴出可能であるため、先行掘削孔H1の内部からズリ(掘削残土)を除去できる。ズリが先行掘削孔H1に堆積することを防止できれば、ガイド材5を先行掘削孔H1から抜き出せなくなることを防止できる。また、圧縮空気により連設された掘削孔H内のズリの除去も可能なため、ダウンザホールハンマ4を掘削孔Hから抜き出せなくなることも防止できる。また、ガイド材5を穿孔掘削孔H1に挿入してダウンザホールハンマ4の位置決めを行うため、先行掘削孔H1の肩部が崩れて変形した場合であっても、ダウンザホールハンマ4の位置決めに影響しない。
第二ダウンザホールハンマ42に沿って割岩パッカー6が配設されているため、作業船B上での段取り替えを省略できる。すなわち、第二ダウンザホールハンマ42と割岩パッカー6を交換することなく、水中において横移動させて割岩用掘削孔Hbに割岩パッカー6を挿入すれば、割岩することが可能となる。割岩パッカー6は、所定長(第二ダウンザホールハンマ42の軸から割岩パッカー6の軸までの距離)横移動させるのみで、第二ダウンザホールハンマ42により先行した割岩用掘削孔Hbの位置に配置できるため、詳細な測量や操作を要しない。
【0028】
水中作業機1は、シャフト2により支持されているため、位置決めが容易であるとともに、安定した掘削作業が可能である。例えば、シャフト2の頂点の絶対座標をGPSあるいは自動追尾型測量機で取得し、シャフト2自体を高さ方向の座標軸とし、シャフト2と水中作業機1の交点を平面位置のX軸およびY軸の原点とし、水中作業機2の位置および姿勢情報からアタッチメント3先端における座標値を算出することで、所定の位置にアタッチメント3を配置できる。このとき、傾斜計21の測定値に応じてシャフト2の座標の補正あるいは、シャフト2の傾きの修正を行う。
また、水中作業機1は、シャフト2に取り付けられた昇降部11と、シャフト2を中心に旋回可能に昇降部11に取り付けられた旋回体12とを備えているため、旋回体12の回転により、所定の位置にアーム14を配設できる。また、旋回体12、アーム14およびブーム13の動力源としての油圧ポンプの油圧量を制御する油圧ポンプ制御機構を備えているため、水中作業機1の動作速度の低速化が可能となり、アタッチメント3の位置決めがしやすい。
さらに、旋回体用エンコーダー151、ブーム用エンコーダー152、アーム用エンコーダー153、およびアタッチメント用エンコーダー15により、水中作業機1およびアタッチメント3の位置や向き等を把握することができ、水中での作業性や位置決め精度が向上する。そのため、オペレータが直接視認せずに作業船B上からのマシンガイダンスのみで、高い精度で計画位置に削孔機先端をセットして削孔することができる。
【0029】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、ガイドパイプが圧縮空気を噴出可能である場合について説明したが、ガイドパイプは、先行掘削孔内のズリを吸引可能であってもよい。このようなガイドパイプによれば、水底掘削工程において先行掘削孔内に残存するズリをガイドパイプを通じて吸引除去することできる。ガイドパイプは、先端が開口していてもよいし、先端部の周囲に複数のスリットが形成されていてもよい。
また、ガイド材には、ガイドパイプに代えて先行掘削孔の孔口に係止可能なコーンが固定されていてもよい。このガイド材によれば、コーンを先行掘削孔に係止させることで、第一ダウンザホールハンマの位置決めが完了する。
レール33の本数は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。また、アタッチメント3は必ずしもレールを備えている必要はない。
また、レール33の取り付け位置は、取付フレーム31の左右の側面に限らず、前後の側面でもよい。
【0030】
前記実施形態では、複数の掘削孔を連設して自由面を形成する場合について説明したが、自由面は必ずしも形成する必要はない。また、自由面は、水中作業機1を操作する(旋回体12を回転させる)ことで、シャフト2を中心とした円弧状に連設してもよい。
前記実施形態では、自由面を形成する際と、割岩用掘削孔を形成する際にそれぞれ異なるダウンザホールハンマを使用するものとしたが、同一のダウンザホールハンマにより形成してもよい。この場合のアタッチメント3には、ダウンザホールハンマ4と、ガイドパイプ51と割岩パッカー6が取り付けられているのが望ましい。
施工位置と作業動作の双方の精度が向上したため、水中硬岩掘削するための削孔・割岩位置や深さをマシンコントロール制御とすることで、完全無人化施工としてもよい。
前記実施形態では、ダム湖等の水底掘削を行う場合について説明したが、水中作業機の用途はこれに限定されるものではなく、例えば、水中構造物への削孔・アンカー打設等に使用してもよい。
水中作業機1は、シャフト2に取り付けられている場合に限定されるものではなく、例えば、自走式であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 水中作業機
11 昇降部
12 旋回体
13 ブーム
14 アーム
151 旋回体用エンコーダー
152 ブーム用エンコーダー
153 アーム用エンコーダー
2 シャフト
3 アタッチメント
31 取付フレーム
32 キャッチ部
33 レール
34 取付部
4 ダウンザホールハンマ
41 第一ダウンザホールハンマ
42 第二ダウンザホールハンマ
5 ガイド材
51 ガイドパイプ
6 割岩パッカー
7 支持構台
71 第一作業台
72 第二作業台
B 作業船
GL 水底
H 掘削孔
H1 先行掘削孔
S1 作業機下降工程
S2 水底掘削工程
S3 ハンマ交換工程
S4 第二水底掘削工程
S5 割岩工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16