(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104340
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】バネ状フィルタろ過システム及びこれを用いる溶解不純物除去方法
(51)【国際特許分類】
B01D 29/48 20060101AFI20240729BHJP
B01D 37/02 20060101ALI20240729BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B01D29/48 A
B01D37/02 G
B01J20/26 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008484
(22)【出願日】2023-01-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、独立行政法人環境再生保全機構、環境研究総合推進費「バネの隙間を利用した超高速ホウ素除去技術の開発」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】596002549
【氏名又は名称】株式会社モノベエンジニアリング
(71)【出願人】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】物部 長順
(72)【発明者】
【氏名】物部 長智
(72)【発明者】
【氏名】内村 泰造
(72)【発明者】
【氏名】保科 宏行
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 典明
【テーマコード(参考)】
4D116
4G066
【Fターム(参考)】
4D116AA30
4D116DD05
4D116HH02B
4D116KK06
4D116QA06C
4D116QA22A
4D116QA22F
4D116QC13D
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4D116VV07
4G066AC02C
4G066AC13C
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4G066AC37B
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4G066CA21
4G066CA32
4G066CA45
4G066CA46
4G066CA47
4G066CA49
4G066GA11
4G066GA37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より効率的に溶解不純物除去と吸着剤の再生が可能なバネ状フィルタろ過システム及び溶解不純物除去方法を提供する。
【解決手段】本発明のバネ状フィルタろ過システムSは、バネ状フィルタろ過装置1、不純物溶解液ILを収容するタンク2、バネ状フィルタろ過装置で処理された処理液PLを収容するタンク3、酸性又は塩基性溶液ALを収容するタンク4、中和液NLを収容するタンク5を備える。また本発明の溶解不純物除去方法は、バネ状フィルタろ過装置内に吸着剤を収容するステップ、不純物溶解液をバネ状フィルタろ過装置内に送水し不純物溶解液を処理する溶解不純物除去ステップ、バネ状フィルタろ過装置に酸性又は塩基性溶液を送水して吸着剤に対して酸又は塩基処理を行い溶解不純物を溶離させる酸塩基処理ステップ、バネ状フィルタろ過装置に中和溶液を送水して酸塩基処理が行われた吸着剤に対して中和処理を行うステップ、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネ状フィルタと、前記バネ状フィルタを収容する収容容器と、を有するバネ状フィルタろ過装置と、
前記バネ状フィルタろ過装置へ不純物溶解液を供給する第一の配管路と、
前記バネ状フィルタろ過装置と第二の配管路を介して接続され、前記バネ状フィルタを透過して処理された処理液を収容する処理液収容タンクと、
前記バネ状フィルタろ過装置と循環路である第三の配管路を介して接続され、酸性又は塩基性溶液を収容する酸塩基性溶液収容タンクと、
前記バネ状フィルタろ過装置と循環路である第四の配管路を介して接続され、中和液を収容する中和液収容タンクと、を備えるバネ状フィルタろ過システム。
【請求項2】
前記バネ状フィルタろ過装置と前記第一の配管路を介して接続され、不純物溶解液を収容する不純物溶解液収容タンクを備える請求項1記載のバネ状フィルタろ過システム。
【請求項3】
前記バネ状フィルタろ過装置内に投入される吸着剤を有する請求項1記載のバネ状フィルタろ過システム。
【請求項4】
前記中和液収容タンクに第七の配管路を介して接続され、前記中和液収容タンクに酸性又は塩基性溶液を供給する中和液補充タンクを備える請求項1記載のバネ状フィルタろ過システム。
【請求項5】
前記酸塩基性溶液収容タンクに取り付けられるpH測定器を有する請求項1記載のバネ状フィルタろ過システム。
【請求項6】
前記中和液収容タンクに取り付けられるpH測定器を有する請求項1記載のバネ状フィルタろ過システム。
【請求項7】
前記バネ状フィルタろ過装置に第八の配管路を介して接続され、前記バネ状フィルタろ過装置内に脱液用エアーを供給するエアタンクと、を有する請求項1記載のバネ状フィルタろ過システム。
【請求項8】
前記酸塩基性溶液収容タンクを加温又は冷却する温調装置を備える請求項1記載のバネ状フィルタろ過システム。
【請求項9】
前記酸塩基性溶液収容タンクに第五の配管路を介して接続され、前記酸塩基性溶液収容タンクから排出される前記酸性又は塩基性溶液を回収するサブタンクを備える請求項1記載のバネ状フィルタろ過システム。
【請求項10】
前記酸塩基性溶液収容タンク及び前記サブタンクの少なくともいずれかにバネ状フィルタを備える請求項9記載のバネ状フィルタろ過システム。
【請求項11】
バネ状フィルタと前記バネ状フィルタを収容する収容容器を有するバネ状フィルタろ過装置内に吸着剤を収容するステップ、
溶解不純物を含む不純物溶解液を前記バネ状フィルタろ過装置内へ送水し、前記不純物溶解液から前記溶解不純物を除去する溶解不純物除去ステップ、
前記バネ状フィルタろ過装置に酸性又は塩基性溶液を送水し、前記吸着剤に吸着した前記溶解不純物を溶離させる酸塩基処理ステップ、
前記バネ状フィルタろ過装置に中和溶液を送水して前記酸塩基処理が行われた前記吸着剤に対して中和処理を行う中和処理ステップ、を備える溶解不純物除去方法。
【請求項12】
吸着剤と、前記吸着剤を収容する収容容器と、を有するろ過装置と、
前記ろ過装置と第一の配管路を介して接続され、不純物溶解液を収容する不純物溶解液収容タンクと、
前記ろ過装置と第二の配管路を介して接続され、前記ろ過装置を透過して処理された処理液を収容する処理液収容タンクと、
前記ろ過装置と循環路である第三の配管路を介して接続され、酸性又は塩基性溶液を収容する酸塩基性溶液収容タンクと、
前記ろ過装置と循環路である第四の配管路を介して接続され、中和液を収容する中和液収容タンクと、を備えるろ過システム。
【請求項13】
吸着剤を収容する収容容器を有するろ過装置内に吸着剤を収容するステップ、
溶解不純物を含む不純物溶解液を前記ろ過装置内に送水し、前記不純物溶解液から前記溶解不純物を除去する溶解不純物除去ステップ、
前記ろ過装置に酸性又は塩基性溶液を送水して前記吸着剤に吸着した前記溶解不純物を溶離させる酸塩基処理ステップ、
前記ろ過装置に中和溶液を送水して前記酸塩基処理が行われた前記吸着剤に対して中和処理を行う中和処理ステップ、を備える溶解不純物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バネ状フィルタろ過システム及びこれを用いる溶解不純物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素は、耐熱ガラス、ガラス繊維、ニューセラミックス、アモルファス合金、うわ薬、肥料、原子力分野、パソコンTFTディスプレイなどさまざまな用途で利用されており、広く環境中に存在している。
【0003】
またホウ素は人間にとって必須の元素であるが、一日あたり数mg以上の過剰量の溶解不純物を継続的に摂取することにより、生殖機能の低下などの健康障害が生じる可能性が指摘されている。そのため、ホウ素排水に対する規制として、排水基準は水質汚濁防止法により10mg/Lに、環境基準値ではその10分の1の値である1mg/L以下に制定されている。
【0004】
ところで、上記ホウ素など溶解不純物の一般的な処理としては凝集沈殿法や樹脂による吸着法が知られている。しかしながら、これらの方法は処理速度において十分でなく、また凝集沈殿法は処理過程でスラッジが出るなどの問題点があり、新しい排水処理技術の開発が強く求められている。
【0005】
上記の問題に対し、例えば、下記特許文献1には、溶解したホウ素を除去するために、グラフト重合によって得られた機能性高分子を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、使用した吸着剤に対し、その吸着剤の再利用について課題がある。仮に、吸着剤を再利用しようとすると、酸処理及び塩基処理(中和処理)を行う必要があるが、この吸着剤の再生処理の効率について検討の余地がある。
【0008】
また、上記した例ではホウ素を例にとって説明しているものであるが、このことはホウ素に限られず、一般に、水等の液体に溶解した溶解不純物に対して同様のことがいえる。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、より効率的に溶解不純物除去を行い、吸着剤の再生が可能なバネ状フィルタろ過システム及び溶解不純物除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一観点に係るバネ状フィルタろ過システムは、バネ状フィルタと、バネ状フィルタを収容する収容容器と、を有するバネ状フィルタろ過装置と、バネ状フィルタへ不純物溶解液を供給する第一の配管路と、バネ状フィルタろ過装置と第二の配管路を介して接続され、バネ状フィルタろ過装置を透過して処理された処理液を収容する処理液収容タンクと、バネ状フィルタろ過装置と循環路である第三の配管路を介して接続され、酸性又は塩基性溶液を収容する酸塩基性溶液収容タンクと、バネ状フィルタろ過装置と循環路である第四の配管路を介して接続され、中和液を収容する中和液収容タンクと、を備えるものである。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、バネ状フィルタろ過装置と第一の配管路を介して接続され、不純物溶解液を収容する不純物溶解液収容タンクを備えることが好ましい。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけではないが、バネ状フィルタろ過装置内に投入される吸着剤を有することが好ましい。
【0013】
また、本観点において、限定されるわけではないが、酸塩基性溶液収容タンクに取り付けられるpH測定器を有することが好ましい。
【0014】
また、本観点において、限定されるわけではないが、中和液収容タンクに取り付けられるpH測定器を有することが好ましい。
【0015】
また、本観点において、限定されるわけではないが、中和液収容タンクに第七の配管路を介して接続され、中和液収容タンクに酸性又は塩基性溶液を供給する中和液補充タンクを備えることが好ましい。
【0016】
また、本観点において、限定されるわけではないが、バネ状フィルタろ過装置に第八の配管路を介して接続され、バネ状フィルタろ過装置内に脱液用エアーを供給するエアタンクと、を有することが好ましい。
【0017】
また、本観点において、限定されるわけではないが、酸塩基性溶液収容タンクを加温又は冷却する温調装置を備えることが好ましい。
【0018】
また、本観点において、限定されるわけではないが、酸塩基性溶液収容タンクに第五の配管路を介して接続され、酸塩基性溶液収容タンクから排出される酸性又は塩基性溶液を回収するサブタンクを備えることが好ましい。
【0019】
また、本観点において、限定されるわけではないが、酸塩基性溶液収容タンク及びサブタンクの少なくともいずれかにバネ状フィルタを備えることが好ましい。
【0020】
また、本発明の他の一観点に係る溶解不純物除去方法は、バネ状フィルタとバネ状フィルタを収容する収容容器を有するバネ状フィルタろ過装置内に吸着剤を収容するステップ、溶解不純物を含む不純物溶解液をバネ状フィルタろ過装置内に送水し、不純物溶解液から溶解不純物を除去する溶解不純物除去ステップ、バネ状フィルタろ過装置に酸性又は塩基性溶液を送水して吸着剤に対して酸又は塩基処理を行い、溶解不純物を溶離させる酸塩基処理ステップ、バネ状フィルタろ過装置に中和溶液を送水して酸塩基処理が行われた吸着剤に対して中和処理を行う中和処理ステップ、を備えるものである。
【0021】
また、本発明の他の一観点に係るろ過システムは、吸着剤と、吸着剤を収容する収容容器と、を有するろ過装置と、ろ過装置と第一の配管路を介して接続され、不純物溶解液を収容する不純物溶解液収容タンクと、ろ過装置と第二の配管路を介して接続され、吸着剤を透過して処理された処理液を収容する処理液収容タンクと、ろ過装置と循環路である第三の配管路を介して接続され、酸性又は塩基性溶液を収容する酸塩基性溶液収容タンクと、ろ過装置と循環路である第四の配管路を介して接続され、中和液を収容する中和液収容タンクと、を備えるものである。
【0022】
また、本発明の一観点に係る溶解不純物除去方法は、吸着剤を収容する収容容器を有するろ過装置内に吸着剤を収容するステップ、溶解不純物を含む不純物溶解液をろ過装置内に送水し、不純物溶解液から溶解不純物を除去する溶解不純物除去ステップ、ろ過装置に酸性又は塩基性溶液を送水して吸着剤に対して酸又は塩基処理を行い溶解不純物を溶離させる酸塩基処理ステップ、ろ過装置に中和溶液を送水して酸塩基処理が行われた吸着剤に対して中和処理を行う中和処理ステップ、を備えるものである。
【発明の効果】
【0023】
以上、本発明によって、より効率的に溶解不純物除去と吸着剤の再生が可能なバネ状フィルタろ過システム及び溶解不純物除去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係るバネ状フィルタろ過システムの概略を示す図である。
【
図2】実施形態に係るバネ状フィルタろ過装置の概略を示す図である。
【
図3】実施形態に係るバネ状フィルタの概略を示す図である。
【
図4】実施形態に係るバネ状フィルタの断面概略図である。
【
図5】実施形態に係るバネ状フィルタの部分拡大を示す図である。
【
図6】実施形態に係る方法の液体の流れのイメージを示す図である。
【
図7】実施形態に係る方法の液体の流れのイメージを示す図である。
【
図8】実施形態に係る方法の液体の流れのイメージを示す図である。
【
図9】実施形態に係る方法の液体の流れのイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載された例示にのみ限定されるわけではない。
【0026】
図1は、本実施形態にかかるバネ状フィルタろ過システム(以下「本システム」という。)Sの概略を示す図であり、
図2は、本システムSにおけるバネ状フィルタろ過装置1の概略を示す図である。
【0027】
これらの図で示されるように、本システムSは、バネ状フィルタ11と、バネ状フィルタ11を収容する収容容器12と、を有するバネ状フィルタろ過装置1と、バネ状フィルタろ過装置1と第一の配管路P1を介して接続され、不純物溶解液ILを収容する不純物溶解液収容タンク2と、バネ状フィルタろ過装置1と第二の配管路P2を介して接続され、バネ状フィルタろ過装置1を透過して処理された処理液PLを収容する処理液収容タンク3と、バネ状フィルタろ過装置1と循環路である第三の配管路P3を介して接続され、酸性又は塩基性溶液ALを収容する酸塩基性溶液収容タンク4と、バネ状フィルタろ過装置1と循環路となっている第四の配管路P4を介して接続され、中和液NLを収容する中和液収容タンク5と、を備えるものである。本システムSによると、より効率的に溶解不純物の除去を行い、かつ、吸着剤ABの再生が可能なバネ状フィルタろ過システム及び溶解不純物除去方法を提供することができる。特に、本システムSによると、吸着剤ABの再生等効率を図ることができる結果、コストにおいても非常に有利となる。この原理については後述のとおりである。
【0028】
まず、本システムSのバネ状フィルタろ過装置1は、本システムSの中核となる部分の装置である。バネ状フィルタろ過装置1を用いることによって、後述の記載から明らかとなるように、不純物溶解液ILから溶解不純物を効率的に除去することができるようになる。具体的に説明すると、バネ状フィルタろ過装置1は、上記のとおりバネ状フィルタ11と、バネ状フィルタ11を収容する収容容器12と、を有する。
【0029】
図3は、本システムSにおけるバネ状フィルタ11の概略図である。本システムSのバネ状フィルタろ過装置1のバネ状フィルタ11は、細い線状部材111をらせん状に巻き回して構成されたフィルタであって、この細い線状部材111間の隙間が均一に形成されることで、一定の大きさ以上の物質をせき止めるフィルタとして機能させることができる。またこの一定の大きさ以上で上記細い線状部材111間の隙間にせき止められる物質として後述の吸着剤ABを用いれば、溶解した不純物であっても効果的に吸着除去することができるようになる。なお
図4に、本システムSにおけるバネ状フィルタ11の断面概略図を示す。
【0030】
なお、本システムSにおけるバネ状フィルタ11の構造は、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、細い線状部材111の周囲に小さな突起1111が形成されており、この細い線状部材111が巻き回される際、この突起1111が隙間の大きさを形成することになる。すなわちこの突起1111の大きさが隙間の大きさとなり、フィルタの分離能力をより正確なものとしている。
図5に、本システムSにおけるバネ状フィルタ11の部分拡大図を示しておく。
【0031】
また、本システムSにおけるバネ状フィルタ11は、上記のらせん状に巻き回された細い線状部材111と、細い線状部材111内に設けられ細い線状部材111を支持する芯棒112、芯棒112及び細い線状部材111の両端側に設けられる一対の固定具113と、を有して構成される。これにより、バネ状フィルタ11は安定した形状を維持、また収容容器12に安定して固定することが可能となる。なお、一対の固定具113の一方(収容容器12に固定される側、外部と接続する側)は中空となっており、この固定具113内部を処理対象となる液体が通過できるようになっている。
【0032】
また、本システムSにおける収容容器12は、上記の通り、バネ状フィルタ11を収容する空間を内部に備えた容器であって、具体的にはバネ状フィルタ11が収容容器12内部に挿入され、バネ状フィルタ11のバネ状部分が収容容器12内において露出するようになっている。なお、収容容器12に対しては、上記の通り、バネ状フィルタ11が挿入され、固定部113によって固定されている。
【0033】
また、本システムSにおいて、収容容器12には、複数のバネ状フィルタ11が挿入されている。複数のバネ状フィルタ11を挿入することで液体との接触面積を増やすことが可能となり、バネ状フィルタろ過装置1の処理能力を向上させることができる。
【0034】
特に、本システムSでは、収容容器12内には、鉛直方向に沿って対向する側からそれぞれバネ状フィルタ11が挿入されていることが好ましい。このようにすることで、溶解不純物除去時だけでなく洗浄処理時においてもこのバネ状フィルタ11を活用することが可能となり、後述の記載のように、吸着剤ABを取り出すことなく、容易に吸着剤ABを再生処理することが可能となる。より具体的には、液体を供給する側及び液体を排出する側の双方にバネ状フィルタ11を挿入することで、この液体を供給する側と排出する側を入れ替えたとしても内部に収容する吸着剤ABがバネ状フィルタろ過装置1外に出る恐れが少なくなり、フィルタの機能を維持することができる。
【0035】
また、本システムSにおいて、バネ状フィルタろ過装置1内、具体的に収容容器12内には、吸着剤ABが収容されていることが重要である。吸着剤ABを収容容器12内に投入することで、溶解不純物を吸着剤ABに吸着させ、これを処理対象となる不純物溶解液ILから除去することが可能となるためである。なおこの吸着剤ABは、上記のとおり、バネ状フィルタ11における細い線状部材111の隙間よりも大きくなっており、バネ状フィルタ11を透過してしまうことがないため、収容容器12を分離解体しない限り収容容器12から漏れ出るおそれはほぼない。
【0036】
吸着剤ABの形状は、粒状でバネ状フィルタ11の隙間を透過せずバネ状フィルタ11の周囲に層をなすことができる限りにおいてその形状は限定されず、球形状、回転楕円形状、柱状、線状、フレーク状、正六面体等の多角形状であってもよく、不規則な形状であってもよい。バネ状フィルタ11の周囲に吸着材ABが堆積した層を以下、「吸着層」という。なお、後述の例からも明らかであるが、本システムSにおいては、例えば、不織布等のシート状の吸着剤ABをミル等により粉砕することで粒状とした吸着剤ABであることは現実的な吸着剤ABの製造方法として好ましい一例である。
【0037】
吸着剤ABの大きさについても、バネ状ろ過装置1のバネ状フィルタ11の細い線状部材111の隙間より大きければよく、適宜設計変更可能であるが、例えばレーザー回折式による測定において、例えば平均粒径として10μm以上300μm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは50μm以上200μm以下の範囲である。
【0038】
また、上記の記載から明らかなように、本システムSにおける吸着剤ABは、粒状の部材であって、処理対象となる溶解不純物を吸着させることができるものである。吸着剤ABの具体的な内容としては限定されるわけではないが、基材と吸着基とを備えるものが好ましい。特に、吸着材は基材の表面に配置されていることが好ましい。この吸着基は、後述のように、除去対象となる溶解不純物の種類に応じて適宜調整可能である。
【0039】
吸着剤ABの基材は、吸着層を保持するための骨格となる部材であり、吸着層を保持することができて液体に不溶な物質である限りにおいて限定されるわけではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等及びこれらの誘導体といったポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン等及びこれらの誘導体といったハロゲン化ポリオレフィン、エチレン・ビニルアルコール等及びこれらの誘導体といったハロゲン化オレフィン共重合体、セルロース等及びセルロース骨格を有するセルロース誘導体等を例示することができる。
【0040】
また吸着剤ABの吸着基は、溶解不純物を吸着する吸着剤ABとしての機能を発揮するものであって、基材に強固に固定されているものであることが好ましい。吸着基としては、上記の通り、除去対象となる溶解不純物の種類に応じて適宜調整可能であって限定されるわけではないが、キレート基及びイオン交換基の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0041】
ここでキレート基とは、複数の配位座を備え、この複数の配位座によって金属イオン(半金属を含む)を捕捉することができる官能基をいう。キレート基としては、所望のイオン(例えば金属イオン及び半金属イオン)を捕捉することができる限りにおいて特に限定されるわけではないが、例えばエチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)等のポリエチレンアミン、ビピリジン、フェナントロリン、エチレンジアミン四酢酸、ポリフィリン、クラウンエーテル等を例示することができるがこれに限定されない。除去対象の溶解物(典型的に金属イオン)を捕捉可能なキレート基を適宜選択すればよい。特に、後の実施例から明らかとなるが、グルカミン基であればホウ素を、アミノ基であれば水銀、ジルコニウム基であればヒ素をより効率的に捕捉することができる。
【0042】
またイオン交換基とは、予め内部に保持したイオンを放出し、他のイオンを取り込むすなわちイオン交換を行うことのできる官能基をいう。イオン交換基としてはイオン交換を行うことができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えばスルホン基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基等を例示することができる。除去対象溶解物としてのイオンを交換可能なイオン交換基を適宜選択すればよい。
【0043】
また、バネ状フィルタろ過装置1の官能基の例示からも明らかなように、除去対象となる溶解物としては、特に限定されず様々なものを対象とすることができる。例えばホウ素、フッ素、ヒ素等、及びそのオキソニウムイオン等のイオンであるか、水銀、鉛、クロム、カドミウム、などのカチオン種で人体に有害か環境で規制対象となっている金属種であれば非常に有効なものとなる。また、銀、金、白金等の貴金属、モリブデン、バナジウム、ウラン等の希土類元素等資源となりうる有価な金属についても適用可能であり、非常に有効なものとなる。特に、水に溶解したイオン(典型的には金属イオン又は半金属イオン)の除去に好適に適用可能である。
【0044】
なお、上記のキレート基、イオン交換基は、基材に強固に固定されていることが好ましく、その方法については特に限定されるわけではないが、キレート基及びイオン交換基の少なくともいずれかが付されたグラフト鎖によって固定されていることが好ましい。グラフト鎖は、基材上に電子線やガンマ線を照射し、グラフト重合によって結合することができる。すなわち、基材上簡便にグラフト鎖を固定することが可能である。
【0045】
上記の記載から明らかなように、本システムSでは溶解不純物が吸着剤ABに吸着されることによって除去される。ここで「不純物溶解液」とは、不純物が溶解した液をいい、この不純物を除去することによって、不純物が除去され不純物の溶解量が少なくなった所望の溶液(処理水)となる。この「不純物」としては、除去の対象となる溶解物である限りにおいて限定されるわけではないが、上記例示したホウ素等の溶解物が該当する。なお、この記載から明らかなように、液体中に溶解した不純物を本明細書では「溶解不純物」と呼ぶ。
【0046】
より具体的に本システムSは、ホウ素が不純物として溶解した不純物溶解液ILを処理対象とすることが好ましい典型例であり、より具体的には温泉水が好ましい一形態である。我が国は火山が多く多数の温泉が存在する一方、温泉水にはホウ素が多く含まれており、その濃度は場所によって大きく異なるが1リットル当たり数十mgから数百mg以上となっている。そのため、温泉水が排水基準を満たすためにはホウ素を1リットル当たり10mgの範囲としなければならず、人の健康に関する環境基準を満たす範囲にするためには1リットル当たり1mg以下としなければならない。すなわち、本システムSは、この温泉施設などにおけるホウ素水処理として非常に有用なものとなる。
【0047】
また、本システムSにおける不純物溶解液収容タンク2は、上記の通り、不純物溶解液ILを収容するタンクであって、バネ状フィルタろ過装置1と第一の配管路P1を介して接続されている。不純物溶解液収容タンク2の材質については収容する溶液が漏洩しない材質であればよく、ステンレス等の金属材料であってもよく、塩化ビニル等のプラスチック材料で構成されていてもよい。また、不純物溶解液収容タンク2の容量は、バネ状フィルタろ過装置1の処理能力以上備えていれば効率的な処理が可能となるため好ましいが、バネ状フィルタろ過装置1の処理能力自体も適宜調節可能である。また、本システムSでは、不純物溶解液収容タンク2とすることとしてもよいが、上記のように温泉水を処理しようとする場合、敢えて不純物溶解液収容タンク2を設けず、河川などに直接第一の配管路P1を挿入する構成としてもよい。
【0048】
また、本システムSでは、上記の通り、バネ状フィルタろ過装置1と不純物溶解液収容タンク2は、第一の配管路P1を介して接続されており、より好ましくは、バネ状フィルタろ過装置1におけるバネ状フィルタ11の内部に接続されており、バネ状フィルタ11を介してバネ状フィルタ11外部かつ収容容器12内に供給される。ここで「配管路」とは、配管によって構成される経路をいい、「配管」とは、上記のように複数の構成要件を接続し、液体を搬送することができる管をいう。配管の材質は上記のように、溶液を漏洩せず腐食しにくいものであればよく、ステンレス等の金属材料であってもよく、また塩化ビニル等のプラスチック材料であってもよく限定されない。なお、本明細書でいう「第一の」とは、本システムSにおいて他の構成要件、例えば処理液収容タンク3とバネ状フィルタろ過装置1を接続する他の配管との区別を行うために用いる接頭語であり、これ以外の技術的な意味を持たない。この点は、後述の「第二の」、「第三の」等において同様である。なお、本明細書において「配管路」として表現しているのは、後述の記載からも明らかであるが、配管路が異なるとしても配管の一部が共通して使用する場合があるため、あえて「配管路」と表現しているものである。なお、第一の配管路P1は、吸着効率を高める観点から、バネ状フィルタろ過装置1の鉛直方向下側から収容容器12に挿入されるバネ状フィルタ11に接続されていることが好ましい。鉛直方向下側から処理対象となる不純物溶解液ILを充填させることで、十分に収容容器12内に不純物溶解液ILが満たされ、吸着剤ABとの接触機会を増やすことが可能となる。
【0049】
また、本システムSにおいて、配管路においては、液体を吸引する又は送り出すためのポンプPを備えていることが重要である。ポンプPを設けることで、配管内における流れを形成し、所望の処理を行わせることができるようになる。ポンプPの数および配置については適宜調整が可能であり限定されるわけではないが、数が多くなるとシステムの価格が高価となるため、数と処理能力のバランスが重要である。
【0050】
また、各配管においては、その配管内に各種液が流れる又は流れない、を制御するためのバルブVが配置されている。これらバルブの開閉を制御することで、配管の開閉を形成すること、配管路の形成が可能となる。
【0051】
また、本システムSにおける処理液収容タンク3は、バネ状フィルタ11を透過して処理された処理液PLを収容するものであって、バネ状フィルタろ過装置1と第二の配管路P2を介して接続されている。処理液収容タンク3とは、上記の通り、バネ状フィルタ11を透過、より具体的には吸着剤ABに接触して不純物が除去された処理液PLを収容する。すなわち本明細書において「処理水」とは、不純物溶解液ILから溶解不純物が除去された液体のことをいう。処理液収容タンク3の材質については収容する溶液が漏洩しない材質であればよく、ステンレス等の金属材料であってもよく、塩化ビニルなどのプラスチック材料で構成されていてもよい。また、処理液収容タンク3の容量は、バネ状フィルタろ過装置1の処理能力以上備えていれば効率的な処理が可能となるため好ましいが、バネ状フィルタろ過装置1の処理能力自体も適宜調節可能である。また、処理液PLについては、タンクに溜めることが好ましいものであるが、そのまま河川に排出することができる程度まで溶解不純物が除去されている場合、処理液収容タンク3を設けない構成とすることも可能ではある。
【0052】
また、本システムSでは、上記の通り、バネ状フィルタろ過装置1と処理液収容タンク3は、第二の配管路P2を介して接続されており、より好ましくは、バネ状フィルタろ過装置1におけるバネ状フィルタ11の内部に接続されており、バネ状フィルタ11の内部を介して収容容器12外に供給される。なお、第二の配管路P2は、吸着効率を高める観点から、バネ状フィルタろ過装置1の鉛直方向上側から収容容器12に挿入されているバネ状フィルタ11に接続されていることが好ましい。本システムSでは、鉛直方向下側から処理対象となる不純物溶解液ILを充填させる一方、鉛直方向上側から処理液PLを排出させる構成とすることで、十分に収容容器12内を不純物溶解液ILで満たし、吸着剤ABとの接触機会を増やし、溶解不純物を十分に除去したうえでバネ状フィルタろ過装置1から排出させることができるようになる。
【0053】
また、本システムSにおける酸塩基性溶液収容タンク4(酸塩基性収容容器41)は、酸性又は塩基性溶液ALを収容するものであって、バネ状フィルタろ過装置1と循環路である第三の配管路P3を介して接続されている。ここで「酸塩基性溶液収容タンク」とは、酸性又は塩基性の溶液を収容することができるタンクである。酸性の溶液を収容するか、塩基性の溶液を収容するかは、除去する溶解不純物の性質、吸着剤ABに用いる吸着基によって適宜選択可能である。また、酸性の溶液を収容する場合において、酸性の溶液としては、どのような酸性の溶液を使用するかは適宜調整可能であり、例えば塩酸、硫酸、硝酸等を例示することができる。また、塩基性の溶液を収容する場合において、塩基性の溶液としては、どのような塩基性の溶液を使用するかは適宜調整可能であり、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を例示することができる。
【0054】
本システムSでは、酸塩基性溶液収容タンク4からバネ状フィルタろ過装置1内に酸性又は塩基性溶液ALを投入することで、吸着剤ABが吸着した溶解不純物をこの酸性又は塩基性溶液AL内に溶解させることができる。すなわち、不純物溶解液ILに溶解していた不純物を吸着剤ABに溶解させ、その後この酸性又は塩基性溶液ALに溶解させることで、溶解不純物が除去された処理水PLを生成する一方、酸性又は塩基性溶液ALに溶解不純物を移し、吸着剤ABを再生させることが可能となる。
【0055】
また、本システムSでは、上記の通り、バネ状フィルタろ過装置1と酸塩基性溶液収容タンク4は、循環路である第三の配管路P3を介して接続されている。より具体的には、この第三の配管路P3は、酸塩基性溶液収容タンク4とバネ状フィルタろ過装置1におけるバネ状フィルタ11(より具体的には鉛直方向下側から収容容器12内に挿入されるバネ状フィルタ11)の内部に接続される部分P31と、このバネ状フィルタ11とは異なるバネ状フィルタ11(より具体的には鉛直方向上側から収容容器12内に挿入されるバネ状フィルタ11)の内部に接続され再び酸塩基性溶液収容タンク4に接続される部分P32と、を有して循環路を形成する。すなわち、一度、酸塩基性溶液収容タンク4から出た酸又は塩基性の溶液は、バネ状フィルタ11を介して収容容器12内に供給され、バネ状フィルタ11を通過して酸塩基性溶液収容タンク4に戻る。なお、本システムSでは、上記の、酸塩基性溶液収容タンク4とバネ状フィルタろ過装置1におけるバネ状フィルタ11の内部を接続される部分P31は、第一の配管路P1を形成する配管とその一部を共有して用いており、異なるバネ状フィルタ11の内部に接続され再び酸塩基性溶液収容タンク4に接続される部分P32は、第二の配管路P2を形成する配管とその一部を共有して用いている。なおこの共用に際しては、経路の分岐部分にバルブVを備えることで液体の流れの制御が可能である。
【0056】
ところで、本システムSにおいて、酸塩基性溶液収容タンク4を加温又は冷却する温調装置44を備えることが好ましい。温調装置44を用いることで、酸性又は塩基性溶液ALを温める又は冷却することが可能となり、温めることで、より多くの不純物を溶解させることができるようになる。一方で、この温調装置44による加温を止める又は駆動して低温にすることで、酸性又は塩基性溶液ALに過剰に溶解していた不純物を析出させることができるようにもなる。すなわち、本システムSでは、酸性又は塩基性溶液ALを加温することで多量の不純物を溶解させ、十分に不純物溶解液ILから溶解不純物を除去して処理水とした後、この除去した大量の溶解不純物を低温による析出等で析出させ、効率的に除去することができるようになる。もちろん、この酸性又は塩基性溶液ALから溶解不純物を取り除く方法は様々でありこれに限定されるわけではない。
【0057】
また、本システムSにおいて、酸塩基性溶液収容タンク4には、サブタンク42が接続されていることも好ましい。サブタンク42を設けることで、溶解不純物が溶解した酸性又は塩基性溶液ALをサブタンク42に移し、冷却させることで溶解不純物を飽和溶解度以上として析出させ、この溶解不純物を十分に除去した後、改めて配管路によって酸塩基性溶液収容タンク4に戻すことで、酸性又は塩基性溶液ALを再生させることができるようになる。なお、酸塩基性溶液収容タンク4とサブタンク42とは循環路を形成する第五の配管路P5によって接続されている。より具体的には、配管路P51によって、酸塩基性溶液収容タンク4からサブタンク42に溶解不純物が多く含まれる酸性又は塩基性溶液ALが移される一方、配管P52によって、冷却され溶解不純物の量が少なくなった酸性又は塩基性溶液ALをサブタンク42から(より具体的にはバネ状フィルタ421の内部空間に接続され)、再び酸塩基性溶液収容タンク4に戻すことになる。
【0058】
なお、サブタンク42は、一つであってもよいが複数のサブタンクにより構成されていてもよい。
図1の例では、貯蔵用サブタンク422と処理用サブタンク423を有して構成されており、配管P53によって接続されている。本図の例では、処理用サブタンク423にバネ状フィルタ421が挿入されており、析出して所定の大きさ以上となった不純物はバネ状フィルタ421の隙間を通り抜けることができなくなり、バネ状フィルタ421の周囲に取り残される、または底部に溜まり残ることになる。これにより、酸性又は塩基性溶液ALを再生できる。
【0059】
また、サブタンク42、より具体的には貯蔵用サブタンク422には、上記酸塩基性溶液収容タンク4と同様、温調装置44を備えていることが好ましい。ここで、温調装置44により温度調整を行うことで、上記したとおり、酸性又は塩基性の溶液から溶解不純物を析出させることができるようになる。
【0060】
繰り返しとなるが、本システムSのサブタンク42には、バネ状フィルタ421を備えることが好ましい。バネ状フィルタ421を備えることで、物理的な不純物の除去が可能となる。例えば、上記のように、温調装置44を用いて加温して溶解不純物を溶解させた酸性又は塩基性溶液ALに対し、加温を停止して、又は装置を駆動して冷却して低温状態にした場合、低温状態において溶解度以上の溶解不純物が存在していた場合、この過飽和分は析出することとなる。この析出した不純物は結晶としてある程度の大きさとなる。するとこのバネ状フィルタ421によってろ過することが可能となる。すなわち、不必要な化学的処理を施すことなく、不純物溶解液ILから溶解不純物を除去することが可能となるといった効果がある。
【0061】
また、本システムSでは、酸塩基性溶液収容タンク4に第六の配管路P6を介して接続され、酸塩基性溶液収容タンク4に酸性又は塩基性溶液ALを供給する酸塩基性溶液補充タンク43を備えることが好ましい。上記のように、酸性又は塩基性溶液ALを本システムS内に循環させることで効率的に溶解不純物除去が可能であるが、不純物を本システムS外に排出する際や、後述の中和処理において酸性又は塩基性溶液ALは徐々に消費されていく、そのため、酸性又は塩基性溶液ALを補充するために酸塩基性溶液補充タンク43を用いることでこの不足分を補うことができる。ここで「酸塩基性溶液補充タンク」とは、酸性又は塩基性の溶液を収容することができるタンクであって、上記酸塩基性溶液収容タンク4ほどの容量は必要でないが、上記酸塩基性溶液収容タンク4と同様の構成を採用することができる。なお、上記酸塩基性溶液収容タンク4と酸塩基性溶液補充タンク43は、上記のとおり、配管路P6を介して接続されており、バルブVを制御することで適宜酸性又は塩基性溶液ALを酸塩基性溶液収容タンク4に補充することができる。
【0062】
また、本システムSでは、酸塩基性溶液収容タンク4に取り付けられるpH測定器45を有することが好ましい。上記のように、酸塩基性溶液収容タンク4においては、酸性又は塩基性の溶液を供給するものであるが、この溶液の循環によってpHが変動する場合がある。そのため、pH測定器45を設けることで、pHが所望の値になっていない場合は、酸塩基性溶液補充タンク43から改めて酸性又は塩基性の溶液を補充し、溶液の補充及びpHの調整が可能となる。
【0063】
また、本システムSでは、上記を実現するため、pH測定器45により測定されたpHが所望の値になっていない場合、pH測定器45に接続されるバルブ制御ユニット46を介して、酸塩基性溶液補充タンク43、より具体的には酸塩基性溶液補充タンク43に接続される第六の配管路P6のバルブVの開閉を制御し、酸性又は塩基性の溶液の補充及びその中断を行い、pHを調整する。
【0064】
また、本システムSにおける中和液収容タンク5は、中和液NLを収容するものであって、バネ状フィルタろ過装置1と循環路である第四の配管路P4を介して接続されている。ここで「中和液収容タンク」とは、中和用の溶液を収容することができるタンクである。中和用の溶液とは、上記の酸又は塩基性溶液ALによって洗浄された吸着剤ABの中和を行うための溶液であって、具体的には、酸性溶液で吸着剤ABを洗浄(溶解不純物を溶解)した場合は塩基性溶液を、塩基性溶液で吸着剤ABを洗浄(溶解不純物を溶解)した場合は酸性溶液をそれぞれいう。ただし、中和処理において、いきなり強い酸性又は塩基性溶液ALを投入すると処理や配管に悪影響が出る恐れがある。そのため、まず中和液収容タンク5に中性の水を収容させて吸着剤ABを洗浄し、徐々に中和液補充タンク51から中和液NLを投入してpHの調整を図るようにしてもよい。なお、中和液補充タンク51と中和液収容タンク5はバルブVを有する第七の配管路P7によって接続されていることが好ましい。
【0065】
すなわち、本システムSでは、中和液収容タンク5に中和液NLを補充する中和液補充タンク51を備えていることが好ましい。これにより徐々に中和処理を行わせることが可能となる。また、この中和液補充タンク51は、配管路P7によって中和液収容タンク5と接続されており、この配管路の開閉はバルブVによって制御される。
【0066】
また、本システムSでは、上記の通り、バネ状フィルタろ過装置1と酸塩基性溶液収容タンク4は、循環路である第四の配管路P4を介して接続されている。より具体的には、この第四の配管路P4は、中和液収容タンク5とバネ状フィルタろ過装置1におけるバネ状フィルタ11(より具体的には収容容器12の鉛直方向下側から挿入されるバネ状フィルタ11)の内部に接続される部分P41と、このバネ状フィルタ11とは異なるバネ状フィルタ11(より具体的には収容容器12の鉛直方向上側から挿入されるバネ状フィルタ11)の内部に接続され再び中和液収容タンク5に接続される部分P42と、を有して循環路を形成する。すなわち、一度中和液収容タンク5から出た中和液NLは、バネ状フィルタ11を介して収容容器12内に供給され、吸着剤ABを洗浄し、バネ状フィルタ11を介して中和液収容タンク5に戻る。なお、本システムSでは、上記の、中和液収容タンク5とバネ状フィルタろ過装置1におけるバネ状フィルタ11の内部を接続される部分P41は、第一の配管路P1を形成する配管とその一部を共有して用いており、異なるバネ状フィルタ11の内部に接続され再び中和液収容タンク5に接続される部分P42は、第二の配管路P2を形成する配管とその一部を共有して用いている。なおこの共用に際しては、経路の分岐部分にバルブVを備えることで液体の流れの制御が可能である。
【0067】
また、本システムSでは、中和液収容タンク5に取り付けられるpH測定器52を有することが好ましい。上記のように、中和処理においては、酸性又は塩基性に寄った吸着剤ABを洗浄して中性にすることで再生するが、この中和がなされているか否かをpH測定器52によって測定することで確認可能である。ここで、pHが所望の値になっている場合は中和処理を完了させることができるが、pHが所望の値になっていない場合は、中和液補充タンク51から改めて中和液NLを補充し、中和処理を継続することが可能である。
【0068】
また、本システムSでは、上記のように、pH測定器52により測定されたpHが所望の値になっていない場合、pH測定器52に接続されるバルブ制御ユニット53を介して、中和液補充タンク51のバルブVの開閉を制御し、中和液NLの補充及びその中断を行い、中和処理を調節する。
【0069】
また、本システムSでは、上記のとおり、酸塩基性溶液収容タンク4に第五の配管路P5を介して接続され、酸塩基性溶液収容タンク4から排出される酸性又は塩基性溶液ALを収容するサブタンク42を備えている。本システムSでは、酸性又は塩基性溶液ALを使用するが、上記のように、酸性又は塩基性溶液ALによる吸着剤ABの洗浄や中和処理によって酸性又は塩基性溶液ALを排出し、新たな酸性又は塩基性溶液ALを充填させたほうが好ましいこともある。特に、酸性又は塩基性溶液ALによって吸着剤ABから溶解不純物を溶解させた場合、この酸性又は塩基性溶液ALには多量の溶解不純物が存在しているため、別途この液を外部に排出させることで、上記のように不純物溶解液ILから溶解不純物を除去する工程を行いつつ別の系でこの酸性又は塩基性溶液ALから溶解不純物を除去することが可能となる。そのため、酸性又は塩基性溶液ALを回収するためのサブタンク42を設けることでこれらの回収を効果的に行うことができる。
【0070】
また、本システムSでは、酸塩基性溶液収容タンク4とサブタンク42は、上記の通り第五の配管路P5を介して接続される。配管路については上記他の配管路と同様である。ただし、上記のとおり、第五の配管路P5は循環路を形成しており、サブタンク42に収容され、再利用が可能と判断された酸性又は塩基性溶液ALは酸塩基性溶液収容タンク4に戻され、再利用が困難と判断された酸性又は塩基性溶液ALは廃棄される。
【0071】
また、本システムSにおいて、バネ状フィルタろ過装置1に第八の配管路P8を介して接続され、バネ状ろ過装置1内に脱液用エアーを供給するエアタンク6を有することが好ましい。エアタンク6を用いることで、バネ状フィルタろ過装置1内、より具体的には収容容器12内に圧縮空気を供給し、バネ状フィルタ11に付着した吸着剤ABを取り外し、また乾燥させることが可能となる。
【0072】
(溶解不純物除去方法)
上記本システムSの記載から明らかであるが、本システムSでは溶解不純物除去方法(以下「本方法」という。)を提供することができる。すなわち、本システムSを用いる本方法は、(S1)バネ状フィルタとバネ状フィルタを収容する収容容器を有するバネ状フィルタろ過装置内に吸着剤を収容するステップ、(S2)溶解不純物を含む不純物溶解液をバネ状フィルタろ過装置内に送水し、不純物溶解液から溶解不純物を除去する溶解不純物除去ステップ、(S3)バネ状フィルタろ過装置に酸性又は塩基性溶液を送水して吸着剤に対して酸又は塩基処理を行い、溶解不純物を溶離させる酸塩基処理ステップ、(S4)バネ状フィルタろ過装置に中和溶液を送水して酸塩基処理が行われた吸着剤に対して中和処理を行う中和処理ステップ、を備えるものである。これらについて
図6乃至
図9を用いて説明する。
【0073】
まず、本方法では上記の通り(S1)バネ状フィルタとバネ状フィルタを収容する収容容器を有するバネ状フィルタろ過装置内に吸着剤を収容するステップを有する。吸着剤を収容容器内に収容させることで、まずは収容容器内に処理対象となる不純物溶解液が充填された場合に、吸着剤に溶解不純物を吸着させることが可能となる。本ステップはそのための前準備である。
【0074】
次に、本方法では(S2)溶解不純物を含む不純物溶解液をバネ状フィルタろ過装置内に送水し、不純物溶解液から溶解不純物を除去する溶解不純物除去ステップを有する。このステップのイメージを
図6に示す。
【0075】
より具体的に本ステップでは、溶解不純物を含む不純物溶解液を、不純物溶解液収容タンクから第一の配管路を介してバネ状フィルタろ過装置内に送水させる。すると、上記の通り、不純物溶解液と吸着剤は接触し、溶解不純物は吸着剤に捕捉される。一方、溶解不純物が除去された不純物溶解液は処理液となり、バネ状フィルタろ過装置外に排出される。具体的には、バネ状フィルタから第二の配管路を介して処理液収容タンクに収容させる。これにより、溶解不純物を含む不純物溶解液を処理液として処理液収容タンクに収容させることができる。
【0076】
そして、本方法では、この処理液として処理した後、(S3)バネ状フィルタろ過装置に酸性又は塩基性溶液を送水して吸着剤に対して酸又は塩基処理を行い溶解不純物を溶離させる酸塩基処理ステップを有する。このステップにおけるイメージを
図7に示しておく。
【0077】
上記の(S2)溶解不純物除去ステップでは、溶解不純物を不純物溶解液から除去することができるが、この溶解不純物は吸着剤に吸着保持されている。そのため、この吸着保持された溶解不純物を系外に取り出すことで吸着剤を再生し、繰り返し用いることができるようになる。
【0078】
具体的に本ステップでは、上記の通り、バネ状フィルタろ過装置に酸性又は塩基性溶液を送水してこの酸性又は塩基性溶液により吸着剤を洗浄することで、溶解不純物をこの酸性又は塩基性溶液に溶離させることができる。これにより、吸着剤に捕捉された溶解不純物を取り除き、再び吸着剤としての使用が可能になる。
【0079】
なお、この場合において、酸性又は塩基性溶液は温調装置によって加温されていることが好ましい。酸性又は塩基性溶液を加温することで溶解不純物の溶解度を向上させることができ、より多くの溶解不純物を吸着剤から脱離させることが可能となる。
【0080】
さらに、この場合において、酸性又は塩基性溶液を加温していた場合、降温させて(降温処理を行って)溶解不純物を析出させることも好ましい。このようにすれば、酸性又は塩基性溶液に他の溶液を混入させることなく不純物を析出させることが可能となり、酸性又は塩基性溶液をそのまま再利用することさえ可能になる。なおこの場合において、降温処理は、上記のように酸塩基性溶液収容タンク内で行ってもよく、また、酸塩基性溶液収容タンクとは別に設けられるサブタンクに配管路を介して移した後、降温処理を行うようにしてもよい。この場合のイメージを
図8に示しておく。
【0081】
さらに、上記のように降温処理を行い不純物が溶解した後、バネ状フィルタによるろ過処理を行い、不純物をバネ状フィルタ周囲に付着させて回収してもよい。降温処理によって析出した不純物がある程度の大きさとなった場合、バネ状フィルタにおける細い線状部材間の距離(隙間)よりも大きくなる。そしてこの大きさによって不純物がこの隙間より大きくなるとバネ状フィルタ周囲に残ることになる。これによって、上記の通り特に化学的な処理を施さずとも不純物を回収することが可能となる。
【0082】
また、本方法では、(S4)バネ状フィルタろ過装置に中和溶液を送水して酸塩基処理が行われた吸着剤に対して中和処理を行う中和処理ステップを有する。本ステップのイメージ図について
図9に示しておく。
【0083】
上記の(S3)酸塩基処理ステップでは、吸着剤を酸性又は塩基性溶液によって洗浄することで、吸着剤に付着した溶解不純物をこの酸性又は塩基性溶液に溶離させることが可能となり、吸着剤に溶解不純物が再び吸着できるようになる。しかしながら、酸性又は塩基性溶液によって洗浄すると、その吸着剤表面は酸性又は塩基性の状態が維持され、このままでは溶解不純物と接触したとしても溶解不純物を吸着することができない。そのため、本ステップでは、洗浄に用いた酸性又は塩基性溶液と反対の性質の塩基性又は酸性溶液で吸着剤表面を中和することで、吸着剤を再生することができる。すなわち本方法はこれらステップを実行する吸着剤再生方法であるともいえる。
【0084】
具体的に本ステップでは、中和液収容タンクに中和液を満たしておき、配管路を介してバネ状フィルタろ過装置内に中和液を供給する一方、バネ状フィルタろ過装置から排出される中和液を再び中和液収容タンクに戻す。これを繰り返すことで吸着剤を中性に戻し、再び溶解不純物を除去することができるようになる。なおこの場合において、中和液は、吸着剤から溶解不純物を除去する際に用いた酸性又は塩基性溶液と反対の性質である塩基性又は酸性溶液であることが好ましいが、徐々に中和を行う必要がある場合、まずは中和液として水を用いて中和しつつ、バネ状フィルタろ過装置から排出された液のpHを測定し、このpHに応じて徐々に中和液に塩基性又は酸性溶液を添加していき、pHを中和状態に持っていくこととするのが好ましい。
【0085】
そして上記の一連のステップにより、再び最初の状態に戻り、(S1)のステップから実行できるようになる。
【0086】
以上、本発明によって、より効率的に溶解不純物除去と吸着剤の再生が可能なバネ状フィルタろ過システム及び溶解不純物除去方法を提供することができる。
【0087】
なお、本システムでは、バネ状フィルタろ過装置内に吸着剤を充填させ、不純物溶解液から溶解不純物を除去することで処理水を得ることができる一方、酸性又は塩基性溶液を収容させるタンクと循環配管路を形成しつつバネ状フィルタろ過装置内に供給することができ、吸着剤から溶解不純物を溶離させて回収することができる。また、溶解不純物を回収した後、中和液を収容させるタンクと循環配管路を形成しつつバネ状フィルタろ過装置内に供給することで、吸着剤のpHを中和液によって中和することで最初の状態に戻すことができる。すなわち、吸着剤をシステム外に取り出す手間がなく、連続的に不純物溶解液から溶解不純物を取り出すことができるようになる。
【0088】
また、本実施形態では、説明の観点からバネ状フィルタ及びこれを収容するバネ状フィルタろ過装置を用いたシステムで説明しているが、必ずしもバネ状フィルタを用いたものではない例であっても可能である。すなわち、本システムは、吸着剤と、吸着剤を収容する収容容器と、を有するろ過装置と、ろ過装置と第一の配管路を介して接続され、不純物溶解液を収容する不純物溶解液収容タンクと、ろ過装置と第二の配管路を介して接続され、吸着剤を透過して処理された処理液を収容する処理液収容タンクと、ろ過装置と循環路である第三の配管路を介して接続され、酸性又は塩基性溶液を収容する酸塩基性溶液収容タンクと、ろ過装置と循環路である第四の配管路を介して接続され、中和液を収容する中和液収容タンクと、を備えるろ過システムとすることも可能である。
【符号の説明】
【0089】
AL…酸性又は塩基性溶液
IL…不純物溶解液
NL…中和液
PL…処理液
S…バネ状フィルタろ過システム
1…バネ状フィルタろ過装置
11…バネ状フィルタ
12…収容容器
2…不純物溶解液収容タンク
3…処理液収容タンク
4…酸塩基性溶液収容タンク
42…サブタンク
44…温調装置
45…pH測定器
5…中和液収容タンク
51…中和液補充タンク
6…エアタンク
P1…第一の配管路
P2…第二の配管路
P3…第三の配管路
P4…第四の配管路
P5…第五の配管路
P7…第七の配管路
P8…第八の配管路
AB…吸着剤