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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104341
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】管内走行装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 57/02 20060101AFI20240729BHJP
   F16L 55/32 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B62D57/02 N
F16L55/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008487
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】加古川 篤
(57)【要約】
【課題】高い走破性を実現することができると共に、不測の事態に陥ったとしても回収可能で、しかも、小型化、軽量化、低コスト化することができる管内走行装置を提供する。
【解決手段】配管内を走行可能な走行体2と、走行体2の後側に一定間隔を空けて設けられている駆動体3と、走行体2と駆動体3とを繋ぐ索体4と、を備えている。そして、この駆動体3の駆動によって、索体4が引っ張られると、走行体2が、配管の内壁面側に拡がって突っ張ってなる一方、駆動体3の駆動が停止すると、走行体2が、配管の内壁面側から離れる方向に狭まって突っ張りを解除してなる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内を走行可能な走行体と、
前記走行体の後側に一定間隔を空けて設けられている駆動体と、
前記走行体と前記駆動体とを繋ぐ索体と、を有し、
前記駆動体の駆動によって、前記索体が引っ張られると、前記走行体が、前記配管の内壁面側に拡がって突っ張ってなる一方、
前記駆動体の駆動が停止すると、前記走行体が、前記配管の内壁面側から離れる方向に狭まって突っ張りを解除してなる管内走行装置。
【請求項2】
前記走行体は、
前記配管の幅方向に所定間隔を空けて配置されている複数の駆動車輪と、
前記複数の駆動車輪間を繋ぐリンク機構と、
前記リンク機構に設けられている付勢部材と、を有し、
前記索体は、一端部が、前記リンク機構の先端側に固定され、他端部が、前記駆動体に固定され、
前記駆動体の駆動によって、前記索体が引っ張られると、前記付勢部材の付勢力に抗して前記リンク機構の軸線方向の長さが縮小し、これによって、前記複数の駆動車輪が前記配管の内壁面を押圧するように突っ張ってなる一方、
前記駆動体の駆動が停止すると、前記付勢部材の付勢力によって、前記リンク機構の軸線方向の長さが拡大し、これによって、前記複数の駆動車輪が前記配管の内壁面の押圧を解除してなる請求項1に記載の管内走行装置。
【請求項3】
前記リンク機構には、該リンク機構の移動をガイドするガイド機構が設けられ、
前記付勢部材は、前記ガイド機構に設けられてなる請求項2に記載の管内走行装置。
【請求項4】
前記索体は、ワイヤを備えてなり、
前記ワイヤが引っ張られるようになっている請求項1又は2に記載の管内走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガス管、水道管、プラントなどの配管の老朽化が深刻化しており、配管内部を点検する必要がある。しかしながら、配管の内径がφ100mm以下の場合、配管内部の点検が困難であるという問題があった。
【0003】
そこで、このような問題を解決すべく、例えば、特許文献1に記載のような管内走行装置が提案されている。この特許文献1に記載の発明は、広範囲な管径に対応可能とすると共に走行安定性の向上を図り、配管内の点検、保守作業に用いられるものである。
【0004】
ところで、上記のような管内走行装置は、配管の内径がφ100mm以下の場合、高い走破性を実現しようとすると、突っ張り機能が欠かせない。しかしながら、管内走行装置が、配管内を走行中に何らかの問題が発生し、駆動機能を失った場合、その突っ張り機能が仇となって、当該管内走行装置を回収することができないという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決すべく、例えば、特許文献2に記載のような管内走行装置が提案されている。この特許文献2に記載の発明は、2個の駆動車輪が直線状に配置された2組の車輪走行体と、供給される空気圧に応じて膨張・収縮される可変バッグと、を備え、2組の車輪走行体を、可変バッグを挟むように配置してその可変バッグの外面に固定したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-213241号公報
【特許文献2】特開2018-47775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような管内走行装置は、2組の車輪走行体を、可変バッグを挟むように配置してその可変バッグの外面に固定していることから、配管内の直径方向に向かって、管内走行装置のサイズが大きくなり、大型化してしまうという問題があった。さらには、空気圧を供給するためのコンプレッサ等の周辺機器が必要となるため、高重量化、高コスト化してしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、高い走破性を実現することができると共に、不測の事態に陥ったとしても回収可能で、しかも、小型化、軽量化、低コスト化することができる管内走行装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
請求項1に係る管内走行装置は、配管(H)内を走行可能な走行体(2)と、
前記走行体(2)の後側に一定間隔を空けて設けられている駆動体(3)と、
前記走行体(2)と前記駆動体(3)とを繋ぐ索体(4)と、を有し、
前記駆動体(3)の駆動によって、前記索体(4)が引っ張られると、前記走行体(2)が、前記配管(H)の内壁面(Ha)側に拡がって突っ張ってなる一方、
前記駆動体(3)の駆動が停止すると、前記走行体(2)が、前記配管(H)の内壁面(Ha)側から離れる方向に狭まって突っ張りを解除してなることを特徴としている。
【0011】
請求項2に係る管内走行装置は、上記請求項1に記載の管内走行装置(1)において、
前記走行体(2)は、
前記配管(H)の幅方向に所定間隔を空けて配置されている複数の駆動車輪(20)と、
前記複数の駆動車輪(20)間を繋ぐリンク機構(21)と、
前記リンク機構(21)に設けられている付勢部材(バネ28)と、を有し、
前記索体(4)は、一端部(ワイヤ40の一端部40a)が、前記リンク機構(21)の先端側(前側支持枠25)に固定され、他端部(ワイヤ40の他端部40b)が、前記駆動体(3)に固定され、
前記駆動体(3)の駆動によって、前記索体(4)が引っ張られると、前記付勢部材(バネ28)の付勢力に抗して前記リンク機構(21)の軸線方向の長さ(L)が縮小(図3(b)参照)し、これによって、前記複数の駆動車輪(20)が前記配管(H)の内壁面(Ha)を押圧するように突っ張ってなる一方、
前記駆動体(3)の駆動が停止すると、前記付勢部材(バネ28)の付勢力によって、前記リンク機構(21)の軸線方向の長さ(L)が拡大し(図3(c)参照)、これによって、前記複数の駆動車輪(20)が前記配管(H)の内壁面(Ha)の押圧を解除してなることを特徴としている。
【0012】
請求項3に係る管内走行装置は、上記請求項2に記載の管内走行装置(1)において、
前記リンク機構(21)には、該リンク機構(21)の移動をガイドするガイド機構(ガイドシャフト26、ガイド枠27)が設けられ、
前記付勢部材(バネ28)は、前記ガイド機構(ガイドシャフト26、ガイド枠27)に設けられてなることを特徴としている。
【0013】
請求項4に係る管内走行装置は、上記請求項1又は2に記載の管内走行装置(1)において、
前記索体(4)は、ワイヤ(40)を備えてなり、
前記ワイヤ(40)が引っ張られるようになっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
請求項1に係る発明によれば、駆動体(3)の駆動によって、索体(4)が引っ張られると、走行体(2)が、配管(H)の内壁面(Ha)側に拡がって突っ張るようになっている。そして、駆動体(3)の駆動が停止すると、走行体(2)が、配管(H)の内壁面(Ha)側から離れる方向に狭まって突っ張りを解除するようになっている。これにより、高い走破性を実現することができると共に、不測の事態に陥ったとしても回収可能となる。
【0016】
さらに、請求項1に係る発明によれば、駆動体(3)は、走行体(2)の後側に一定間隔を空けて設けられているから、従来のように、2組の車輪走行体を、可変バッグを挟むように配置しているものではないため、配管(H)内の直径方向に向かう管内走行装置(1)のサイズを、従来に比べて小さくすることができる。
【0017】
またさらに、請求項1に係る発明によれば、従来のように、空気圧を供給するものではなく、駆動体(3)の駆動によって索体(4)を引っ張っているだけであるから、空気圧を供給するためのコンプレッサ等の周辺機器が不要となる。これにより、軽量化、低コスト化することができる。
【0018】
したがって、本発明によれば、高い走破性を実現することができると共に、不測の事態に陥ったとしても回収可能で、しかも、小型化、軽量化、低コスト化することができる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、走行体(2)を配管(H)の内壁面(Ha)側に拡がって突っ張るようにし、さらに、配管(H)の内壁面(Ha)側から離れる方向に狭まって突っ張りを解除することを実現させるにあたって、リンク機構(21)と付勢部材(バネ28)を用いて実現させている。これにより、簡易な構成で、走行体(2)を拡げたり、狭めたりすることが可能となる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、リンク機構(21)の移動方向を正確にガイドすることができる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、管内走行装置(1)のサイズを小さくすることができると共に、配管(H)が曲がっていたとしても、その曲がりに柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る管内走行装置の動きを説明するための説明図であって、(a)は同実施形態に係る走行体が拡がっている状態を示し、(b)は同実施形態に係る走行体が狭まっている状態を示す図である。
図2】同実施形態に係る管内走行装置のうち駆動体を省いた状態を示す斜視図である。
図3】同実施形態に係る管内走行装置のうち駆動体を省いた状態を示す平面図で、(a)は配管内に走行体が配置された通常の状態を示し、(b)は走行体が拡がった状態を示し、(c)は走行体が狭まった状態を示す図である。
図4】同実施形態に係る管内走行装置の正面図である。
図5図4に示すA-A線断面図である。
図6図5に示す状態の管内走行装置を配管に配置した際の電源線と制御部並びに牽引用ワイヤの位置関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る管内走行装置を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0024】
<管内走行装置の概略説明>
図1に示す本実施形態に係る管内走行装置1は、走行体2と、駆動体3と、索体4と、で主に構成され、図1(a)に示すように、索体4が駆動体3によって矢印Y1方向に引っ張られると、走行体2が矢印Y2方向に拡がるようになっている。これにより、走行体2が、ガス管、水道管、プラントなどの配管H(図3参照)の内壁面Ha(図3参照)に突っ張った状態で走行可能となる。
【0025】
一方、何らかの原因で走行体2及び/又は駆動体3が駆動機能を失った場合、図1(b)に示すように、走行体2が矢印Y4方向に狭まるようになっている。これにより、走行体2における配管H(図3参照)の内壁面Ha(図3参照)による突っ張りを解除することができるため、人間の力等の所定の外力によって、駆動体3を矢印Y3方向に引っ張ると、走行体2に大きな抵抗がかかっていないため、走行体2も矢印Y3方向に引っ張られることとなる。それゆえ、何らかの原因で走行体2及び/又は駆動体3が駆動機能を失ったとしても、管内走行装置1を容易に回収できることとなる。
【0026】
ここで、上記の内容について、管内走行装置1の各構成について詳しく説明する事で、さらに詳しく説明することとする。
【0027】
<走行体の説明>
走行体2は、図3に示すように、配管Hの幅方向(図示上下方向)に所定間隔を空けて配置されている複数の駆動車輪20(図示では、4個)を有している。この駆動車輪20は、図示はしないが内部に、例えば、ギアードモータが設けられており、自走できるようになっている。そしてこのような駆動車輪20は、図3に示すように、図示下側に位置する下前駆動車輪20aと、この下前駆動車輪20aより配管Hの経路方向(図示左右方向)に所定間隔を空けて配置されている下後駆動車輪20bと、下前駆動車輪20aより配管Hの幅方向(図示上下方向)に所定間隔を空けて配置されている上前駆動車輪20cと、下後駆動車輪20bより配管Hの幅方向(図示上下方向)に所定間隔を空けて配置されている上後駆動車輪20dと、で構成されている。そして、このように構成される複数の駆動車輪20は、図3に示すリンク機構21にて繋げられている。以下、リンク機構21について詳しく説明する。
【0028】
<リンク機構の説明>
リンク機構21は、図3に示すように、第1リンク片22aと、第2リンク片22bと、第3リンク片22cと、第4リンク片22dと、を有している。この第1リンク片22aは、図3に示すように、平面視略矩形状に形成されており、図示右下側に位置する一端部22a1が下後駆動車輪20bの軸部20b1に取り付けられている。さらに、第1リンク片22aは、図3に示すように、図示左上側に位置する他端部22a2が、上前駆動車輪20cの軸部20c1に取り付けられている。
【0029】
一方、第2リンク片22bは、図3に示すように、平面視略矩形状に形成されており、図示右上側に位置する一端部22b1が、上後駆動車輪20dの軸部20d1に取り付けられている。さらに、第2リンク片22bは、図3に示すように、図示左下側に位置する他端部22b2が、下前駆動車輪20aの軸部20a1に取り付けられている。
【0030】
ところで、このような第1リンク片22aと第2リンク片22bとは、図3に示すように、第1リンク片22aが下部側に位置し、第2リンク片22bが上部側に位置するように、平面視クロス状に重なり合うように配置されている。そして、重なり合っている第1リンク片22aの中間部分と、第2リンク片22bの中間部分とが、平面視円形状の支持軸23aに取り付けられている。この支持軸23aは、図2に示す矩形状の中間支持枠23に取り付け固定されているものである。
【0031】
一方、第3リンク片22cは、図3に示すように、平面視略矩形状に形成されており、図示左下側に位置する一端部22c1が、下後駆動車輪20bの軸部20b1に取り付けられている。さらに、第3リンク片22cは、図3に示すように、図示右上側に位置する他端部22c2が、平面視円形状の支持軸24aに取り付けられている。この支持軸24aは、図2に示す矩形状の後側支持枠24に取り付け固定されているものである。なお、この後側支持枠24は、図2に示すように、中間支持枠23より後側(図示右側)に間隔を空けて配置されている。
【0032】
一方、第4リンク片22dは、図3に示すように、平面視略矩形状に形成されており、図示右上側に位置する一端部22d1が、上前駆動車輪20cの軸部20c1に取り付けられている。さらに、第4リンク片22dは、図3に示すように、図示左下側に位置する他端部22d2が、平面視円形状の支持軸25aに取り付けられている。この支持軸25aは、図2に示す矩形状の前側支持枠25に取り付け固定されているものである。なお、この前側支持枠25は、図2に示すように、中間支持枠23より前側(図示左側)に間隔を空けて配置されている。
【0033】
なお、上記説明は、リンク機構21を平面側から見た構成であるが、リンク機構21を裏面側から見た構成も、図示はしないが、リンク機構21を平面側から見た構成を反転しただけのもので同様の構成となっている。すなわち、リンク機構21の平面側から見た構成と背面側から見た構成は対称になっている。そのため、第1リンク片22a及び第2リンク片22bの取付箇所は同じであるが、平面側とは逆で、第1リンク片22aが上部側に位置し、第2リンク片22bが下部側に位置するように、平面視クロス状に重なり合うように配置されている。また、図3に示すように、背面側に位置する第3リンク片22cは、上後駆動車輪20dの軸部20d1に取り付けられると共に、支持軸24aに取り付けられている。さらに、第4リンク片22dは、下前駆動車輪20aの軸部20a1に取り付けられると共に、支持軸25aに取り付けられている。
【0034】
ところで、図2に示すように、前側支持枠25と、中間支持枠23と、後側支持枠24には、上下に離間した位置に、一対の棒状のガイドシャフト26が取り付けられている。より詳しく説明すると、図2に示すように、このガイドシャフト26の一端部26a(図示左側)は、前側支持枠25に取り付け固定されており、そして、軸線方向(図示左右方向)に延びるこのガイドシャフト26は、中間支持枠23と、後側支持枠24にて固定されておらず、挿入されて支持されている。さらに、図2に示すように、このガイドシャフト26の他端部26bは、矩形状のガイド枠27に取り付け固定されている。
【0035】
一方、図2に示すように、一対のガイドシャフト26には、外周面にバネ28が巻き付けられている。より詳しく説明すると、図2に示すように、前側支持枠25と、中間支持枠23との間にある一対のガイドシャフト26にバネ28がそれぞれ巻き付けられ、さらに、中間支持枠23と、後側支持枠24の間にある一対のガイドシャフト26にバネ28がそれぞれ巻き付けられている。すなわち、本実施形態においては、合計4個のバネ28が巻き付けられている。
【0036】
また一方、図2に示すように、前側支持枠25と、中間支持枠23と、後側支持枠24と、ガイド枠27との中間部分に索体4が、一対のガイドシャフト26に挟み込まれるようにして取り付けられている。なお、この点の詳細は、後述する索体4の詳細な説明のところで説明することとする。
【0037】
かくして、このようにしてリンク機構21は、構成されている。
【0038】
<駆動体の説明>
次に、図1に示す駆動体3の詳細について説明する。
【0039】
駆動体3は、図4に示すように、正面視矩形状の本体30を備えており、この本体30には、一対の前車輪31と、一対の後車輪32とが取り付けられている。なお、この一対の前車輪31と、一対の後車輪32とは、自走せず、走行体2に牽引されることによって回転するものである。これにより、図6に示すように、駆動体3は、走行体2と共に、配管H内を走行することとなる。
【0040】
一方、本体30内には、図5に示すように、モータ33が設けられている。さらに、図5に示すように、この本体30内には、モータ33が回転駆動すると、それに伴い回転する第1ギア34aが設けられている。そしてさらに、図5に示すように、この本体30内には、第1ギア34aの回転に伴い回転する第2ギア34bと第3ギア34cが設けられている。
【0041】
一方、図5に示すように、本体30内には、平面視横長矩形状の移動ラック35が設けられており、この移動ラック35には、下端部35aに長手方向(図示左右方向)に沿って、ラックレール36が設けられている。そして、このラックレール36は、第2ギア34bと第3ギア34cに噛み合っている。また一方、図5に示すように、移動ラック35の上端部35bに、本体30内に設けられているスライドレール37に沿って、図示左右方向にスライド移動することができる平面視細横長矩形状のスライド枠38が設けられている。これにより、移動ラック35は、ラックレール36に噛み合っている第2ギア34b及び第3ギア34cの回転に伴い、移動することとなる。この際、図5に示すように、移動ラック35にはスライド枠38が設けられているから、このスライド枠38がスライドレール37に沿って図示左右方向の何れか一方にスライド移動することに伴い、移動ラック35もそれに伴って、図示左右方向の何れか一方に移動することとなる。
【0042】
かくして、上記のように構成される駆動体3は、図4及び図5に示すように、走行体2の後側(図示右側)に一定間隔を空けて配置されている。
【0043】
<索体の説明>
次に、図1に示す索体4の詳細について説明する。
【0044】
索体4は、図2に示すように、軸線方向(図示左右方向)に延びる長尺状のワイヤ40を備えている。このワイヤ40は、図2に示すように、一端部40a(図示左側)に球状の左固定部40a1が取り付け固定され、他端部40b(図示右側)に球状の右固定部40b1が取り付け固定されている。これにより、図2に示すように、この左固定部40a1が前側支持枠25内に設けられている球状の嵌合部25b内に嵌め込まれることにより、ワイヤ40の一端部40a(図示左側)が前側支持枠25に取り付け固定されることとなる。また、図5に示すように、移動ラック35内には、球状の嵌合部35cが設けられており、この嵌合部35c内に、図2に示す右固定部40b1が嵌め込まれることにより、ワイヤ40の他端部40b(図2に示す右側)が、図5に示す本体30に取り付け固定されることとなる。これにより、ワイヤ40は、図5に示すように、リンク機構21の前側支持枠25から、駆動体3の移動ラック35まで軸線方向(図示左右方向)に長尺に延びて設けられることとなる。
【0045】
一方、このワイヤ40の外周面には、図2及び図5に示すように、中空で長尺状のチューブ41が設けられており、ワイヤ40は、このチューブ41内に通されている。これにより、ワイヤ40は、チューブ41にて保護されることとなる。
【0046】
一方、図2に示すように、このチューブ41の一端部41a(図示左側)には、中空で円形状の左取付金具42が取り付け固定されており、この左取付金具42は、一対のガイドシャフト26に挟み込まれるようにして、ガイド枠27の中間部分に固定されず挿入支持され、さらに、後側支持枠24の中間部分に挿入されて固定支持されている。なお、ワイヤ40は、チューブ41及び左取付金具42内を通ることとなり、さらに、左取付金具42内から外部に露呈した部分は、中間支持枠23の中間部分を通って、前側支持枠25まで延びている。
【0047】
一方、図2に示すように、チューブ41の他端部41b(図示右側)には、中空で円形状の右取付金具43が取り付け固定されており、右取付金具43には、中空のネジやボルトからなる固定金具44が取り付けられている。これにより、図5に示すように、右取付金具43は、固定金具44によって、駆動体3の本体30に取り付け固定されることとなる。なお、ワイヤ40は、図5に示すように、チューブ41及び右取付金具43並びに固定金具44を通って、移動ラック35まで延びている。
【0048】
したがって、上記のように構成される索体4は、上記説明したように、図2に示すように、前側支持枠25と、中間支持枠23と、後側支持枠24と、ガイド枠27との中間部分に索体4が、一対のガイドシャフト26に挟み込まれるようにして取り付けられる。
【0049】
かくして、上記のように取り付けられた索体4は、チューブ41を保持した状態で、図2に示すワイヤ40の他端部40bを図2に示す右方向に牽引すると、チューブ41、及び、左取付金具42に固定されている後側支持枠24をリンク機構21の固定端として、ワイヤ40の一端部40aに固定されている前側支持枠25が後側支持枠24側に近づくように引っ張られる。これにより、走行体2が拡がる方向、すなわち、複数の駆動車輪20が配管H(図3(b)参照)の内壁面Ha(図3(b)参照)を押圧する方向に拡がるように動作する。また、ワイヤ40の他端部40bの牽引を解除すると、バネ28の付勢力により前側支持枠25が後側支持枠24から離れる方向に移動し、走行体2が狭まる方向、すなわち、複数の駆動車輪20が配管Hの内壁面Haから離れる方向に縮まるよう動作することとなる。なお、この動作の詳細は、後述することとする。
【0050】
<管内走行装置の使用例の説明>
次に、上記のように構成される管内走行装置1を使用する例を説明することとする。
【0051】
まず、図3(a)に示すように、ガス管、水道管、プラントなどの配管Hの内部を点検するにあたって、走行体2が挿入される。そして、図6に示すように、駆動体3も配管Hに挿入される。また、この際、管内走行装置1には、図6に示すように、配管Hの内部を撮影するための前方カメラCMaと、後方カメラCMbが設けられている。なお、図6に示すように、前方カメラCMaは、ガイドシャフト26の一端部26a(図示左側)側に設けられており、後方カメラCMbは、駆動体3の本体30の右側面側に設けられている。
【0052】
一方、図6に示すように、走行体2の駆動車輪20の内部に設けられている図示しないギアードモータには、それぞれ、電源線DSが取り付けられている。この電源線DSは、図6に示すように、駆動体3の本体30の内部に配置されている制御部CLに接続されている。これにより、電源線DSへの給電制御は、制御部CLにて制御されることとなる。また、この制御部CLは、駆動体3のモータ33にも電気的に接続されており、モータ33を給電制御できるようになっている。一方、図6に示すように、駆動体3の本体30の右側面側には、ケーブル線CBが設けられており、配管Hの配管挿入口Hb外まで延びている。このケーブル線CBは、制御部CL等に電源を供給する電源線、配管H外との通信を行う通信線、前方カメラCMa及び後方カメラCMbに接続されるカメラ線にて構成されている。なお、図6に示すように、駆動体3には、牽引用ワイヤKWが取り付けられている。これにより、走行体2の配管H内走行時、ケーブル線CBと一緒に配管H内を引きずられることとなる。なお、この際、ケーブル線CBと牽引用ワイヤKWの長さは、走行体2の配管H内への侵入距離と同等の長さが必要となる。
【0053】
次いで、この状態で、図5に示すモータ33が回転駆動すると、それに伴い図5に示す第1ギア34aが回転する。そしてさらに、第1ギア34aの回転に伴い、図5に示す第2ギア34bと第3ギア34cが回転するから、図5に示す第2ギア34bと第3ギア34cに噛み合っているラックレール36によって、移動ラック35がスライドレール37に沿って、図示右方向に移動する。これにより、上記説明したように、移動ラック35には、ワイヤ40の他端部40b(図5に示す右側)が、取り付け固定されているから、ワイヤ40は、図5に示す右方向に引っ張られることとなる。そして、上記説明したように、図2に示すように、ワイヤ40の一端部40a(図2に示す左側)が、前側支持枠25に取り付け固定されているから、ワイヤ40が図5に示す右方向に引っ張られることによって、図2に示す前側支持枠25が、図2に示す右方向に引っ張られることとなる。これを受けて、図3(b)に示すように、前側支持枠25に取り付け固定されている支持軸25aに取り付けられている第4リンク片22dが図3(b)に示す右方向に移動することとなる。かくして、この移動に伴って、図3(b)に示すように、第1リンク片22aが、図3(b)に示す左方向に移動し、さらに、第2リンク片22bが、図3(b)に示す右方向に移動し、そしてさらに、第3リンク片22cが、図3(b)に示す左方向に移動する。これにより、図3(a)に示すリンク機構21の軸線方向(図示左右方向)の長さLは、図3(b)に示すように、長さL1に縮小することとなる。これに伴い、図3(b)に示すように、複数の駆動車輪20は、配管Hの内壁面Haを押圧し、突っ張ることとなる。
【0054】
かくして、このようにして、図1(a)に示すように、走行体2が矢印Y2方向に拡がるようになっている。これにより、突っ張った状態で、複数の駆動車輪20が自走することとなるから、複数の駆動車輪20が配管H内で滑ってしまい配管Hの奥まで到達できず内部の点検ができないという事態がないようにすることができる。それゆえ、配管Hの内径がφ100mm以下の場合であっても、高い走破性を実現することが可能となる。
【0055】
なお、図2に示す前側支持枠25が、図2に示す右方向に引っ張られた際、図2に示す一対のガイドシャフト26も、図2に示す右方向に移動すると共に、これに伴って、ガイド枠27も図2に示す右方向に移動することとなる。これにより、一対のガイドシャフト26及びガイド枠27によって、前側支持枠25が軸線方向(図2に示す右方向)に正確に移動できることとなる。
【0056】
また、リンク機構21の軸線方向(図示左右方向)の長さL(図3(a)参照)が、図3(b)に示すように、長さL1に縮小すると、図2に示す前側支持枠25と中間支持枠23との間に配置されているバネ28は、バネ28の付勢力に抗して圧縮され、さらに、図2に示す中間支持枠23と後側支持枠24との間に配置されているバネ28も、バネ28の付勢力に抗して圧縮されることとなる。この際、図5に示すモータ33が回転駆動されていることから、バネ28の付勢力よりもワイヤ40の引っ張る力が強いため、図3(b)に示す状態が維持されることとなる。
【0057】
かくして、上記のような状態で配管H内を走行体2が走行していた際、何らかのトラブルが発生し、複数の駆動車輪20の駆動が停止、及び/又は、モータ33の回転駆動が停止すると、図3(b)に示すように、複数の駆動車輪20は、配管Hの内壁面Haを押圧し、突っ張った状態のままとなる。そのため、このままの状態で走行体2を回収しようとしても、複数の駆動車輪20によって配管Hの内壁面Haに大きな抵抗がかかっていることから、回収することができないという問題がある。
【0058】
そこで、本実施形態においては、このような問題を解決すべく、上記説明したバネ28を設けている。すなわち、複数の駆動車輪20の駆動が停止した場合、モータ33の回転駆動を停止させ、或いは、モータ33の回転駆動自体が停止した場合、ワイヤ40の引っ張る力よりもバネ28の付勢力の方が強くなる。これにより、上記説明したように圧縮されたバネ28が元に戻ろうとする付勢力によって、図2に示すように前側支持枠25と中間支持枠23との間に設けられているバネ28によって、前側支持枠25が図2に示す左方向に移動し、さらに、図2に示すように中間支持枠23と後側支持枠24との間に設けられているバネ28によって、中間支持枠23が図2に示す左方向に移動することとなる。これを受けて、図3(c)に示すように、前側支持枠25に取り付け固定されている支持軸25aに取り付けられている第4リンク片22dが図3(c)に示す左方向に移動することとなる。そしてさらに、中間支持枠23に取り付け固定されている支持軸23aに取り付けられている第1リンク片22a及び第2リンク片22bが、図3(c)に示す右方向に移動する。かくして、この移動に伴って、第3リンク片22cが、図3(c)に示す右方向に移動する。これにより、図3(a)に示すリンク機構21の軸線方向(図示左右方向)の長さLは、図3(c)に示すように、長さL2に拡大することとなる。これに伴い、図3(c)に示すように、複数の駆動車輪20による配管Hの内壁面Haの押圧が解除される。
【0059】
かくして、このようにして、図1(b)に示すように、走行体2が矢印Y4方向に狭まるようになっている。これにより、走行体2における配管H(図3参照)の内壁面Ha(図3参照)による突っ張りを解除することができるため、図1(b)に示すように、人間の力等の所定の外力によって、図6に示す牽引用ワイヤKWを矢印Y3方向に引っ張ると、駆動体3を矢印Y3方向に引っ張ることができる。この際、複数の駆動車輪20によって配管Hの内壁面Haに大きな抵抗がかかっていないため、走行体2も矢印Y3方向に引っ張られることとなる。それゆえ、何らかの原因で走行体2及び/又は駆動体3が駆動機能を失ったとしても、管内走行装置1を容易に回収できることとなる。
【0060】
なお、図2に示すように、前側支持枠25とガイド枠27との間に一対のガイドシャフト26を固定し、一対のガイドシャフト26を挿入支持させた中間支持枠23および後側支持枠24が、図2においてガイドシャフト26に沿って左右方向に移動可能な構成となっている。そのため、ワイヤ40の牽引を解除した際、バネ28の付勢力により前側支持枠25が図2に示す左方向に移動した際、一対のガイドシャフト26およびガイド枠27も左方向に移動するとともに、中間支持枠23もガイドシャフト26に沿って移動することとなる。かくして、一対のガイドシャフト26は、図2に示すように、軸線方向(図示左右方向)に延びて設けられているため、前側支持枠25及び中間支持枠23も軸線方向(図示左右方向)に動くことになる。それゆえ、リンク機構21の軸線方向(図示左右方向)のスムーズな動作を実現することが可能となる。
【0061】
また、前側支持枠25が、図2に示す左方向に移動した際、ワイヤ40の一端部40a(図2に示す左側)が、前側支持枠25に取り付け固定されているから、ワイヤ40が図5に示す左方向に引っ張られることとなる。この際、ワイヤ40の他端部40b(図5に示す右側)が移動ラック35に取り付け固定されているから、スライドレール37に沿って、移動ラック35が、図5に示す左方向に移動する。そしてこの際、移動ラック35に設けられているラックレール36に噛み合っている図5に示す第2ギア34bと第3ギア34cが回転し、それに伴い、第1ギア34aも回転する。なお、この際、モータ33は停止しているが、この回転を阻害しないように、逆回転(バックドライブ)できるようなモータ33になっている。
【0062】
したがって、以上説明した本実施形態の管内走行装置1によれば、駆動体3の駆動によって、索体4が引っ張られると、走行体2が、配管Hの内壁面Ha側に拡がって突っ張るようになっている。そして、駆動体3の駆動が停止すると、走行体2が、配管Hの内壁面Ha側から離れる方向に狭まって突っ張りを解除するようにしている。これにより、高い走破性を実現することができると共に、不測の事態に陥ったとしても回収可能となる。
【0063】
また、本実施形態においては、駆動体3は、走行体2の後側に一定間隔を空けて設けられているから、従来のように、2組の車輪走行体を、可変バッグを挟むように配置しているものではないため、配管H内の直径方向に向かう管内走行装置1のサイズを、従来に比べて小さくすることができる。
【0064】
さらに、本実施形態においては、従来のように、空気圧を供給するものではなく、駆動体3の駆動によって索体4を引っ張っているだけであるから、空気圧を供給するためのコンプレッサ等の周辺機器が不要となる。それゆえ、本実施形態によれば、軽量化、低コスト化することができる。
【0065】
したがって、本実施形態によれば、高い走破性を実現することができると共に、不測の事態に陥ったとしても回収可能で、しかも、小型化、軽量化、低コスト化することができる。
【0066】
<変形例の説明>
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、走行体2を拡げたり、狭めたりするにあたって、リンク機構21とバネ28を使用して実現させる例を示したが、それに限らず、走行体2を拡げたり、狭めたりできれば、どのような方法でも良い。しかしながら、リンク機構21とバネ28を使用した方が、簡易な構成で、走行体2を拡げたり、狭めたりすることができるため好ましい。
【0067】
また、本実施形態においては、バネ28を用いた例を示したが、付勢力があれば、どのような部材を用いても良い。
【0068】
また、本実施形態においては、ワイヤ40を引っ張る例を示したが、それに限らず、引っ張れるものであれば、どのような部材でも良い。しかしながら、ワイヤ40を用いた方が好ましい。ワイヤ40であれば、管内走行装置1のサイズを小さくすることができ、さらには、配管Hが曲がっていたとしても、その曲がりに柔軟に対応することができるためである。
【0069】
また、本実施形態においては、走行体2の駆動車輪20の内部に設けられている図示しないギアードモータに、それぞれ、電源線DSを取り付ける例を示した。これは、各ギアードモータに個別に電源供給した方が制御の幅が広がるためである。しかしながら、個別に電源供給する必要が無ければ、ギアードモータ全てに電源供給するような配線にしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 管内走行装置
2 走行体
20 駆動車輪
21 リンク機構
25 前側支持枠(リンク機構の先端側)
26 ガイドシャフト(ガイド機構)
27 ガイド枠(ガイド機構)
28 バネ(付勢部材)
3 駆動体
4 索体
40 ワイヤ
40a 一端部
40b 他端部
L,L1,L2 (リンク機構の軸線方向の)長さ
H 配管
Ha 内壁面

図1
図2
図3
図4
図5
図6