(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104350
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
G01D5/347 110C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008502
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】磯村 翼
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA10
2F103BA37
2F103CA01
2F103CA02
2F103CA03
2F103DA13
2F103EA03
2F103EA12
2F103EA13
2F103EB01
2F103EB11
2F103EB32
2F103EB33
2F103GA08
(57)【要約】
【課題】従来は、異物の大きさがスリットよりも小さく、異物がスリットに付着すると終段側から出力される出力信号のレベルが大きく低下していた。
【解決手段】エンコーダは、従来よりもスリット5aの長さが長く細長状であるため、異物Eがスリット5a上に裁置した場合でも、異物Eの大きさはスリット5aの大きさの数分の1となり、エンコーダからの出力信号の出力低下は極めて小さくなり、装置等の動作を迅速化できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリット(2)を有する回転円板(1)と、前記回転円板(1)の一面側に配設された発光体(3)と、前記回転円板(1)の他面側に配設され、透光パターン(4)を有するグレーティングディスク(5)と、前記透光パターン(4)を透過した透過光を受光する受光体(7)とからなるエンコーダ(10)において、
四辺を有する前記透光パターン(4)に形成され、スリット状の前記透光パターン(4)の内径側又は外径側の何れか一辺を周方向に移動させた角度を持たせることにより、前記透光パターン(4)の開口面であるスリット(5a)全体に対する異物(E)による遮蔽割合を抑えることを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記透光パターン(4)は、平行四辺形形状、長手傾斜形形状、長方形の何れか1形状よりなる形状としたことを特徴とする請求項1記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記透光パターン(4)は、複数個に分割されることを特徴とする請求項1又は2記載のエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダに関し、特に、グレーティングディスクのスリット内にゴミ等の異物が入り込んだ場合の出力信号に対する異物の影響を抑制するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたグレーティングディスクを用いて透過した透光により回転検出信号を検出するための代表的構造として、参考までに述べると、特許文献1を挙げることができる。
すなわち、
図4で示される透光型及び
図5で示される反射型を用いることができる。
図4で示される透光型を概略的に説明する。
図4において符号1で示されるものは、図示しないエンコーダの回転軸に同芯接続され多数のスリット2を有する回転円板であり、この回転円板1の左側にはLEDからなる発光体3が所定位置に配設されている。
【0003】
前記回転円板1の
図4で見て下側には、多数の透光パターン4を有するグレーティングディスク5が配設されている。
前記発光体3からの発光線6は、前記回転円板1のスリット2から前記グレーティングディスク5の前記透光パターン4を経て受光体7の受光素子8に入光し、前記受光体7から得られる受光体出力7Aに波形整形等を施すことにより高精度のエンコーダ信号に変換されていた。
【0004】
図5は、前述の透光型エンコーダに対し、光を反射させて信号を得るようにした反射型エンコーダからなる他の従来例を示している。
図5において、符号1で示されるものは、回転円板であり、多数の反射可能な反射パターン10を有する前記回転円板1が図示しないエンコーダの回転軸に接続されて回転自在に設けられている。
前記回転円板1の
図5で見て上側位置には、LED光源である発光体3、スリットからなる透光パターン4を有するグレーティングディスク5及び多数の受光素子8を有する受光体7が配設されている。
【0005】
前述の構造において、前記発光体3からの発光線6が前記反射パターン10で反射した後、前記発光線6は、前記グレーティングディスク5の前記透光パターン4を通過し、受光体7でエンコーダ信号に変換されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のエンコーダは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
これまでの磁極信号用、原点信号、低パルス/REV信号用トラックのディスク、グレーティングは、パターンについて、
図4で示されるように、グレーティングは単一の開口部(スリット)を有し、回転中心から放射状又は長方形、扇形の形状であった。ディスク上の明暗が切替るエッジも接線に垂直であった。また、周方向に大きな開口部とすると出力電圧の変化率がなだらかになり、光量劣化によるデューティへの影響が大きくなる。H/Lの閾値を光量一定chにて検出しているが、単一開口窓から同面積のまま複数本の平均値とすることで異物の影響を抑制できる。
しかしながら、
図6のようにグレーティングディスク5のスリット5aの上開口面に異物Eが付着した時、出力信号の符号が反転してしまう影響が大きく出ることがある。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、グレーティングディスクのスリット内にゴミ等の異物が入り込んだ場合の出力信号に対する異物の影響を抑制するための構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるエンコーダは、スリットを有する回転円板と、前記回転円板の一面側に配設された発光体と、前記回転円板の他面側に配設され、透光パターンを有するグレーティングディスクと、前記透光パターンを透過した透過光を受光する受光体とからなるエンコーダにおいて、四辺を有する前記透光パターンに形成され、スリット状の前記透光パターンの内径側又は外径側の何れか一辺を周方向に移動させた角度を持たせることにより、前記透光パターンの開口面であるスリット全体に対する異物による遮蔽割合を抑える構造であり、また、前記透光パターンは、平行四辺形形状、長手傾斜形形状、長方形の何れか1形状よりなる構造であり、また、前記透光パターンは、複数個に分割される構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるエンコーダは以上のような構造であるため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、本発明によるエンコーダは、スリットを有する回転円板と、前記回転円板の一面側に配設された発光体と、前記回転円板の他面側に配設され、透光パターンを有するグレーティングディスクと、前記透光パターンを透過した透過光を受光する受光体とからなるエンコーダにおいて、四辺を有する前記透光パターンに形成され、スリット状の前記透光パターンの内径側又は外径側の何れか一辺を周方向に移動させた角度を持たせることにより、前記透光パターンの開口面であるスリット全体に対する異物による遮蔽割合を抑えることができる。すなわち、開口円弧の長さを変更せず、スリット内径又は外径側のどちらか一辺を周方向に移動させた平行四辺形上の角度を持たせることにより開口面全体に対する異物による遮蔽部割合を小さくすることができ、異物の影響を受けにくくなる。つまり、スリットの開口面の一部を遮る大きさの異物による影響を受けにくくなる。
また、出力電圧のH/Lの閾値を光量一定CRにて検出しているが、単一開口窓から同面積のまま複数本の平均値とすることで異物の影響を抑制できる。
また、グレーティングディスクに設けた開口面スリットの角度により、隣接トラックへの急峻なクロストークの抑制に所定の寄与ができる。
また、前記透光パターンは、平行四辺形形状、長手傾斜形形状、長方形の何れか1形状よりなる形状としたことにより、大きい異物に対抗できる。
また、前記透光パターンは、複数個に分割されていることにより、大、小何れの異物にも対抗できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態によるエンコーダのグレーティングディスクの開口面であるスリットを示す要部の断面図である。
【
図2】本発明による回転円板の他の形態を示す要部の断面図である。
【
図3】本発明による閾値chグレーティングディスクを示す断面図である。
【
図4】従来のエンコーダの透光型のグレーティングディスクを示す断面図である。
【
図5】従来の反射型のエンコーダを示す構成図である。
【
図6】従来のエンコーダのグレーティングディスクの平面図である。
【
図7】エンコーダの正常動作を示す出力信号の波形図である。
【
図8】グレーティングディスク上に異物が付着している場合の出力信号の低下を示す波形図である。
【
図9】
図8の状態の出力低下時を示す波形図である。
【
図10】グレーティングディスクのスリット上に異物がある状態の出力信号の低下を示す波形図である。
【
図11】スリット上に異物が位置した時の波形図である。
【
図12】
図1のスリットを示す変形例(A-E)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるエンコーダは、グレーティングディスクのスリット内にゴミ等の異物が入り込んだ場合の出力信号に対する異物の影響を抑制することである。
【実施例0013】
以下、図面と共に本発明によるエンコーダの好適な実施の形態について述べる。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
本発明は、前述の透光型の従来例の
図4から
図6に示されるエンコーダの構造におけるグレーティングディスク5の透光パターン4に形成されたスリット5aの形状を種々開発したことにより、グレーティングディスク5のスリット5a内にゴミ等の異物Eが入り込んだ場合の出力信号に対する異物の影響を抑制することである。尚、
図4、
図5の従来例の構造は、本発明の実施の形態に援用するものとする。
【0014】
図4の従来例で示した前記グレーティングディスク5は、本発明の開発によって
図1のようにその形態が変更されており、
図1では、開口面であるスリット5aが四辺よりなる長方形により形成されている。また、スリット5aは、平行四辺形であることが条件であるが、精密な平行四辺形でなくても実用にできる。
【0015】
図1のグレーティングディスク5に形成された前記スリット5aは、平行四辺形(四辺形でも可)よりなり、その長さ(長辺)Lに対し、その幅(短辺)Pを有する細長状の形状である。
図1に示すように、異物Eがスリット5a上に覆うように付着した状態の場合、前記異物E対スリット5aの大きさの割合は、従来例として示した
図6の構造の約10分の1の場合もあり得る。
【0016】
そのため、
図1のように、開口面円弧(短辺P)の長さを変更せず、スリット5aの内径又は外径側のどちらか一辺を周方向に移動させた平行四辺形上の角度αを持たせることにより、開口面全体に対する異物Eの遮蔽割合を小さくでき、異物Eによる影響を受けにくくすることができる。すなわち、スリット状の前記透光パターン4の内径側又は外径側の何れか一辺を周方向に移動した角度αを持たせることにより、前記透光パターン4の開口面全体に対する異物Eによる遮蔽割合を抑えることができる。
また、回転円板1にも前記角度を持たせることで、急峻な変化への影響はない。
また、受光体7の半導体チップの感光部周方向に最大となるような開口面であるスリット5aを設け、同様の角度を回転円板1のスリット2に配置すると有効である。すなわち、
図1のスリット5aに対して、
図2で示す回転円板1を適用することができる。
【0017】
次に、
図7から
図11で示す波形図のうち、
図7は正常に作動している正常動作を示しており、図示しないコンパレータ出力が矩形波状に発光体3に供給され、受光体7から受光体出力7Aが正常に出力されている状態を示している。
【0018】
次に、
図8は、前記異物Eがスリット5aに当たって出力信号としての受光体出力7Aのレベルがわずかに低下した状態を示している。
次に、グレーティングディスク5のスリット5aに対する異物Eの影響が大となると、
図9に示されるように、さらに一層、出力低下が著しくなる。
また、
図10及び
図11は、前記異物Eによる受光体出力7Aの低下が発生すると、
図1に示される前述の対策がとられることにより、出力低下が避けられる。
従来例である
図6の形態では、長さP1<幅Pであるがほぼ同じで開口部が大きいため、例えば、複数の異物Eがスリット5a内に入れるような大きさ(5a>E)の状態であるため、異物Eの影響がそのまま受光体出力7Aに表れている。
【0019】
図1の形態では、一部前述したが、開口面であるスリット5aは平行四辺を有する長方形で、一対の長辺Lと一対の短辺Pで構成され、スリット5aの長さ=長辺L>短辺Pであり、長辺L>短辺Pであるため、スリット5a上に異物Eが乗った場合でも、この異物Eによって出力低下される光量としては、
図8のように無視できる程度となる。
【0020】
また、
図3において、グレーティングディスク5は、複数(例えば10本)のスリット5aが互いに所定の間隔で形成され、各スリット5aは、その幅が0.1Pの長方形で構成されている。
従って、
図6のスリット5aよりも小さいスリット5aを用いているため、小型のスリット5aよりも大きい異物Eが添着又は付着した場合でも、受光体7からの受光体出力7Aは、異物Eの影響を避けた状態で、高精度な受光体出力7A(出力信号)を得ることができる。
尚、前記スリット5aの形状は、完全な平行四辺形に限ることなく、多少寸法に余裕がある形状でも可で、その形状も
図12に示される種々の形状がある。
本発明によるエンコーダは、グレーティングディスクのスリットを小さくし、通常の大きさの異物がスリットに付着しても、エンコーダ出力(受光体出力)のレベルが小さいものとし、異物付着時の動作不良を抑制することができる。