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  • 特開-はんだこて先の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104355
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】はんだこて先の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/02 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
B23K3/02 Q
B23K3/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008508
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000101606
【氏名又は名称】アポロ精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩二
(72)【発明者】
【氏名】岩田 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩幸
(57)【要約】
【課題】
高品質なはんだこて先を低コストで製造可能なはんだこて先の製造方法を提供する。
【解決手段】
はんだこて先本体10に先端部材20を接合する接合工程と、接合された先端部材を切削して所望の形状に成形する切削工程とを順次実行することによりはんだこて先1を製造するはんだこて先の製造方法による。この製造方法によれは、鉄めっきを施さずとも、機械的に純鉄をはんだこて先の先端に被覆した状態を実現可能なので、鉄めっきの厚みが不均一になるといった、従来のはんだこて先の製造方法で生じていた問題が発生しないため、品質およびコストに優れたはんだこて先を製造することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだこて先本体に先端部材を接合する接合工程と、
接合された先端部材を切削して所望の形状に成形する切削工程と、
を順次実行することによりはんだこて先を製造することを特徴とするはんだこて先の製造方法。
【請求項2】
前記はんだこて先本体の素材は、純銅あるいは銅合金とし、前記先端部材の素材は、純鉄あるいは鉄鋼とすることを特徴とする請求項1に記載のはんだこて先の製造方法。
【請求項3】
前記接合工程では、先端に突部を有するはんだこて先本体と、当該突部と嵌合可能な円筒部を有する先端部材とを、先端部材の円筒部にはんだこて先の突部を嵌合させた状態で圧縮することにより機械的に接合することを特徴する請求項1または2に記載のはんだこて先の製造方法。
【請求項4】
前記切削工程では、先端部材の表面からはんだこて先本体の突部を露出させることなく先端部材を切削して所望の形状に成形することを特徴とする請求項3に記載のはんだこて先の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動はんだ付け装置およびはんだこてに用いられるはんだこて先の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のはんだこて先としては、特許文献1に示すものが知られている。このはんだこて先は、熱伝導性の良好な銅材料で成り、その先端部に鉄めっきを施すことによって、はんだによる侵食を防止するとともに、使用による損耗に耐えられるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭64-33373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のはんだこて先は、鉄めっきが厚いほど長寿命を得られるので、鉄めっきを厚く施す手段が用いられているが、そうすると、鉄めっきの性質上、厚みが不均一になるという品質上の問題をかかえていた。また、鉄めっきを厚く施すと、はんだこて先の先端先鋭な部分に鉄の金属粒が生じてしまうことがあり、追加工よってこの部分を削り落とさなければならず、コスト上の問題もかかえていた。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて創成されたものであり、高品質なはんだこて先を低コストで製造可能なはんだこて先の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、はんだこて先本体に先端部材を接合する接合工程と、接合された先端部材を切削して所望の形状に成形する切削工程とを順次実行することによりはんだこて先を製造するはんだこて先の製造方法によって解決できる。
【0007】
なお、前記はんだこて先本体の素材は、純銅あるいは銅合金とし、前記先端部材の素材は、純鉄あるいは鉄鋼とすることが好ましい。
【0008】
なお、前記接合工程では、先端に突部を有するはんだこて先本体と、当該突部と嵌合可能な円筒部を有する先端部材とを、先端部材の円筒部にはんだこて先の突部を嵌合させた状態で圧縮することにより機械的に接合することが好ましい。
【0009】
なお、前記切削工程では、先端部材の表面からはんだこて先本体の突部を露出させることなく先端部材を切削して所望の形状に成形することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、はんだこて先の先端部分にめっきを施すことなくはんだこて先を製造するので、めっきによる種々の問題が発生しないため、本発明によって製造されたはんだこて先は、品質およびコストに優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明であるはんだこて先の製造方法によって製造されるはんだこて先を示す斜視図である。
図2】本発明であるはんだこて先の製造方法によって製造されるはんだこて先を構成する部品のはんだこて先本体を示す正面図である。
図3】本発明であるはんだこて先の製造方法によって製造されるはんだこて先を構成する部品の先端部材を示す断面図である。
図4】本発明であるはんだこて先の製造方法における接合工程において、接合前の状態を示す図である。
図5】本発明であるはんだこて先の製造方法における接合工程において、接合後の状態を示す図である。
図6】本発明であるはんだこて先の製造方法における切削工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明によって製造されるはんだこて先1を示し、図2および図3は、当該はんだこて先を構成する部品を示すものである。10は純銅(例えば、無酸素銅)を素材とするはんだこて先本体、20は純鉄を素材とする先端部材であり、はんだこて先本体10と先端部材20とは両者を接合可能に構成されている。これらはんだこて先本体10および先端部材20は、ヘッダーやフォーマなどの冷間圧造機(図示せず)によって詳細を後述する形状に加工される。なお、はんだこて先本体10の素材は、熱伝導性の高い材料である無酸素銅が好ましいが、場合によっては銅合金であってもよい。また、先端部材20の素材は、純鉄が好ましいが、場合によっては鉄鋼であってもよい。
【0013】
図2に示すように、前記はんだこて先本体10は、中実軸状を成しており、その先端には突部11が一体成形されている。この突部11は、大径突部11aと小径突部11bによる二段形状を成しており、大径突部11aの外径は、はんだこて先本体10の外径の2/3程度に設定され、小径突部11bの外径は、はんだこて先本体10の外径の1/3程度に設定されている。
【0014】
図3に示すように、前記先端部材20は、中実軸部21を有しており、その一端には前記はんだこて先本体10の突部11と合致嵌合可能な中空穴22aを有する円筒部22が一体成形されている。
【0015】
以下、上述した部品であるはんだこて先本体10および先端部材20を用いてはんだこて先1を製造する方法を図4乃至図6に基づいて説明する。本発明のはんだこて先の製造方法は、接合工程と、切削工程とを順次実行するものである。
【0016】
接合工程は、はんだこて先本体10と先端部材20とを接合する工程であり、図4に示すように、はんだこて先本体10の突部11を手前(図面上は上方)にして、当該はんだこて先10を全長にわたって受け型2の成形穴3に挿入する。
【0017】
また、受け型2の成形穴3の奥には、成形穴3と同径でこれに沿って摺動可能なノックアウトピン4が配置されており、これら成形穴3とノックアウトピン4により、先端部材20の円筒部22とはんだこて先本体10を拘束する一方、当該円筒部22に連設された中実軸部21は非拘束となる。なお、はんだこて先本体10および先端部材20の円筒部22の外径は、同一に設定されており、受け型2の成形穴3は、はんだこて先本体10および円筒部22の外径と同径に構成されているため、はんだこて先本体10および円筒部22はこの成形穴3にすきまばめ程度のはめあいで嵌合する。
【0018】
次に、図5に示すように、先端部材20の中実軸部21をパンチ5により押圧して軸方向に圧縮すると、中実軸部21は円形鍔状に塑性変形して鍔部23が成形される。このとき、先端部材20の円筒部22は受け型2とはんだこて先10に拘束されているため、円筒部22の中空穴22aを形成する内周壁面がはんだこて先本体10の突部11に圧着する。これにより、はんだこて先本体10の端面10aおよびこの端面に連設する突部11には先端部材20の円筒部22が高い密着度で接合される。
【0019】
なお、上記接合工程においては、先端部材20の中軸軸部21に鍔部23が成形される例を示したが、本発明の接合工程は、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、先端部材20を全長にわたって受け型2の成形穴3に挿入し、することで当該先端部材20の中実軸部21の外周を拘束する。この状態で中実軸部21をパンチ5で押圧して圧縮することにより、はんだこて先本体20と接合部材20とを接合することも可能である。このようは接合工程によれば、先端部材20の中軸軸部21に鍔部23が成形されないので、切削工程において当該鍔部23を切削する必要がなくなるため、材料ロスを減らすことができる。
【0020】
続いて、図6に示すように、切削工程は、はんだこて先本体10に接合された先端部材20を所望の形状に切削する工程である。その方法としては、公知の工作機械(図示せず)を用いて、図6の二点鎖線で示す線上を切削することで、先端部材20の鍔部23を切り落とすとともに、先端部材20の先端がマイナスドライバのような形状になるように先端部材20を切削してマイナスドライバ型に成形する。このように切削することで、図1に示す形状のはんだこて先1を成形することができる。
【0021】
最後に、切削工程によって所望の形状に成形されたはんだこて先1は、はんだの濡れ性を高めるために、先端表面にはんだめっきを施すことが望ましい。また、先端以外の表面には、クロムめっきを施すことが望ましい。
【0022】
なお、上記切削工程においては、先端部材20をマイナスドライバ型に成形する例を示したが、本発明の切削工程は、必ずしもこれに限定されるものではなく、公知のはんだこて先1の形状に切削して成形してもよい。例えば、先端部材20を円錐形状に切削してペンシル型に成形してもよい。他には、ナイフ型や、先端部材20の一部をテーパ状に切削してベベル型に成形してもよい。これら形状は、はんだこて先本体10の突部11の外径寸法や、先端部材20の円筒部22の厚み、全長を必要に応じて設計変更し、所望の先端形状に合わせた削り代を確保することで実現可能である。
【0023】
上記はんだこて先1の製造方法によれば、接合工程において、はんだこて先本体10の先端に純鉄を被覆する手段として、鉄めっきではなく、機械的接合を用いる。言わば、はんだこて先10の突部11に機械的接合によって純鉄素材の先端部材を被覆する。そして、切削工程では、先端部材20の表面から、はんだこて先本体10の突部11が露出しないように所望の先端形状に切削する。このようにして製造されたはんだこて先1は、純銅素材のはんだこて先本体10の突部11がはんだこて先の芯材として機能するとともに、これを被覆する純鉄の先端部材がはんだこて先の純鉄めっきと同様の機能を発揮することになる。つまり、鉄めっきを用いずともはんだこて先1を製造することが可能になるので、生産コストに優れるととともに、鉄めっきによる種々の問題が発生せず、品質も優れたはんだこて先を提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 はんだこて先
2 受け型
3 成形穴
4 ノックアウトピン
5 パンチ
10 はんだこて先本体
11 突部
11a 大径突部
11b 小径突部
11c 端面
20 先端部材
21 中実軸部
22 円筒部
22a 中空穴
23 鍔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6