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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104356
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240729BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240729BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240729BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240729BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240729BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/36 D
H01M10/0569
H01M4/587
H01M4/133
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008509
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】武下 宗平
(72)【発明者】
【氏名】進藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】細江 健斗
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB29
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】充放電を繰り返した際の抵抗増加を抑制可能な非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】ここに開示される非水電解液二次電池は、正極と、負極と、非水電解液と、を備える。前記負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を備える。前記負極活物質は、アスペクト比が1.5以下の第1負極活物質粒子と、アスペクト比が1.5超えの第2負極活物質粒子とを含む。前記第1負極活物質粒子と前記第2負極活物質粒子の質量比が、50:50~95:5である。前記第2負極活物質粒子の50%以上が、前記負極活物質層の面方向と、前記第2負極活物質粒子の長軸との間の角度が30°以上となるように配向している。前記非水電解液は、非水溶媒と電解質塩とを含有する。前記非水溶媒は、炭素数4以下のカルボン酸エステルを1~30体積%含有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
非水電解液と、
を備える非水電解液二次電池であって、
前記負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を備え、
前記負極活物質は、アスペクト比が1.5以下の第1負極活物質粒子と、アスペクト比が1.5超えの第2負極活物質粒子とを含み、
前記第1負極活物質粒子と前記第2負極活物質粒子の質量比が、50:50~95:5であり、
前記第2負極活物質粒子の50%以上が、前記負極活物質層の面方向と、前記第2負極活物質粒子の長軸との間の角度が30°以上となるように配向しており、
前記非水電解液は、非水溶媒と電解質塩とを含有し、
前記非水溶媒は、炭素数4以下のカルボン酸エステルを1~30体積%含有する、非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記第1負極活物質粒子の平均アスペクト比が、1.0~1.4であり、前記第2負極活物質粒子の平均アスペクト比が、2.0~7.0である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記第1負極活物質粒子が、球状化天然黒鉛粒子であり、前記第2負極活物質粒子が、鱗片状天然黒鉛粒子である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記第1負極活物質粒子と前記第2負極活物質粒子の質量比が、50:50~65:45である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記カルボン酸エステルが、酢酸メチルである、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記非水溶媒が、前記カルボン酸エステルを15体積%~30体積%含有する、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項7】
ハイブリッド車の車両駆動電源用である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
【0003】
非水電解液二次電池の一般的な負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を備える。非水電解液二次電池の特性を向上させる技術として、2種以上の負極活物質粒子を用いる技術(例えば、特許文献1参照)、および高アスペクト比の負極活物質粒子を配向させる技術(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-129212号公報
【特許文献2】特許第6057124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両駆動用電源用途において、車両の航続距離延長の観点から、非水電解液二次電池の高容量化に対する要望が益々高くなっている。本発明者らの検討によれば、非水電解液二次電池の高容量化のために、負極活物質層の高密度化、負極活物質層の寸法増大などを行う場合には、非水電解液二次電池に充放電を繰り返した際の抵抗増加が大きくなりやすいことを見出した。したがって、非水電解液二次電池の高容量化の要望に対し、充放電を繰り返した際の抵抗増加を抑制可能な新規な技術の開発が課題となる。
【0006】
そこで本発明は、充放電を繰り返した際の抵抗増加を抑制可能な非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される非水電解液二次電池は、正極と、負極と、非水電解液と、を備える。前記負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を備える。前記負極活物質は、アスペクト比が1.5以下の第1負極活物質粒子と、アスペクト比が1.5超えの第2負極活物質粒子とを含む。前記第1負極活物質粒子と前記第2負極活物質粒子の質量比が、50:50~95:5である。前記第2負極活物質粒子の50%以上が、前記負極活物質層の面方向と、前記第2負極活物質粒子の長軸との間の角度が30°以上となるように配向している。前記非水電解液は、非水溶媒と電解質塩とを含有する。前記非水溶媒は、炭素数4以下のカルボン酸エステルを1~30体積%含有する。
【0008】
このような構成によれば、充放電を繰り返した際の抵抗増加を抑制可能な非水電解液二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式分解図である。
図3】負極活物質層の面方向と、第2負極活物質粒子の長軸との間の角度を説明するための負極の模式断面図である。
図4】実施例1の評価用リチウムイオン二次電池のプレス処理前の負極の断面SEM画像である。
図5】実施例1の評価用リチウムイオン二次電池のプレス処理後の負極の断面SEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において「A~B」として表現される数値範囲には、AおよびBが含まれる。
【0011】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスを指す。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0012】
以下、扁平形状の捲回電極体と扁平形状の電池ケースとを有する扁平角型のリチウムイオン二次電池を例にして、本発明について詳細に説明するが、本発明をかかる実施形態に記載されたものに限定することを意図したものではない。
【0013】
図1に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解液80とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型電池である。電池ケース30には外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。また、電池ケース30には、非水電解液80を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。なお、図1は、非水電解液80の量を正確に表すものではない。
【0014】
捲回電極体20は、図1および図2に示すように、正極シート50と、負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、捲回電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0015】
捲回電極体20には、その厚み方向に荷重を印加してもよい。当該荷重は、好ましくは0.1kN/cm以上であり、より好ましくは0.4kN/cm以上である。この範囲の荷重は、特にHEVの駆動用電源用途において、有利である。当該荷重は、リチウムイオン二次電池100を組電池として構成した際の、組電池に印加される拘束荷重であり得る。
【0016】
正極シート50を構成する正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電体を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。正極集電体52としては、アルミニウム箔が好ましい。
【0017】
正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極集電体52としてアルミニウム箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0018】
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極活物質を用いてよい。具体的に例えば、正極活物質として、リチウム複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物等を用いることができる。正極活物質の結晶構造は、特に限定されず、層状構造、スピネル構造、オリビン構造等であってよい。
【0019】
リチウム複合酸化物としては、遷移金属元素として、Ni、Co、Mnのうちの少なくとも1種を含むリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、その具体例としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。これらの正極活物質は、1種単独で用いてよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
なお、本明細書において「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。このことは、上記したリチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等についても同様である。
【0021】
リチウム遷移金属リン酸化合物としては、例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸マンガン鉄リチウム等が挙げられる。
【0022】
正極活物質としては、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物が特に好ましい。
【0023】
正極活物質の平均粒子径(メジアン径:D50)は、特に限定されないが、例えば、0.05μm以上25μm以下であり、好ましくは1μm以上20μm以下であり、より好ましくは3μm以上15μm以下である。なお、正極活物質の平均粒子径(D50)は、例えば、レーザ回折散乱法により求めることができる。
【0024】
正極活物質層54は、正極活物質以外の成分、例えば、リン酸三リチウム、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばカーボンブラック(例、アセチレンブラック(AB))、カーボンナノチューブ、グラファイトなどの炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0025】
正極活物質層54中の正極活物質の含有量(すなわち、正極活物質層54の全質量に対する正極活物質の含有量)は、特に限定されないが、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上97質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以上96質量%以下である。正極活物質層54中のリン酸三リチウムの含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上12質量%以下がより好ましい。正極活物質層54中の導電材の含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上13質量%以下がより好ましい。正極活物質層54中のバインダの含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、1.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0026】
正極活物質層54の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上400μm以下であり、好ましくは20μm以上300μm以下である。
【0027】
正極シート50は、正極活物質層非形成部分52aと正極活物質層54との境界部に絶縁層(図示せず)を有していてもよい。当該絶縁層は、例えば、セラミック粒子等を含有する。
【0028】
負極シート60を構成する負極集電体62としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の負極集電体を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。負極集電体62としては、銅箔が好ましい。
【0029】
負極集電体62の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。負極集電体62として銅箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは6μm以上20μm以下である。
【0030】
負極活物質層64は負極活物質を含有する。本実施形態においては、負極活物質として、アスペクト比が相互に異なる、第1負極活物質粒子と、第2負極活物質粒子と、が用いられる。
【0031】
第1負極活物質粒子および第2負極活物質粒子の構成材料の例としては、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料が挙げられ、なかでも黒鉛が好ましい。黒鉛は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよく、黒鉛が非晶質な炭素材料で被覆された形態の非晶質炭素被覆黒鉛であってもよい。黒鉛としては、天然黒鉛が好ましく、天然黒鉛が非晶質な炭素材料で被覆された形態の非晶質炭素被覆黒鉛がより好ましい。
【0032】
第1負極活物質粒子のアスペクト比は1.5以下であり、第2負極活物質粒子のアスペクト比は1.5超えである。よって本実施形態では、低アスペクト比の第1負極活物質粒子と、高アスペクト比の第2負極活物質粒子とが用いられる。よって、第1負極活物質粒子は球状または球状に近い形状を有しており、第2負極活物質粒子は、大きな長軸を有するため、配向し易い。
【0033】
リチウムイオン二次電池において用いられる最も一般的な黒鉛は、鱗片状黒鉛であり、鱗片状黒鉛のアスペクト比は、通常2以上である。したがって、第2負極活物質粒子として、鱗片状黒鉛を用いてよい。
【0034】
一方で、第1負極活物質粒子には、鱗片状黒鉛をそのまま使用することができない。よよって、第1負極活物質粒子には、典型的に例えば、鱗片状黒鉛に球状化処理を施したもの(いわゆる球状化黒鉛)を用いる。この球状化処理は、公知であり、球状化処理方法の具体的例として、鱗片状黒鉛を転動させながら、それぞれの粒子が強固に密着するよう衝撃を与え、数μm~数十μmの球状粒子に成るまで造粒処理を行う方法が挙げられる。このような造粒処理には、ボールミル、ビーズミル、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステム、ホソカワミクロン社製ノビルタ、日本コークス工業社製FMミキサ、日本コークス工業社製コンポジなどの装置を使用することができる。このとき、処理条件(特に、処理時間、処理回数など)を変更することで、アスペクト比を調整することができる。
【0035】
なお、第2負極活物質粒子に使用される鱗片状黒鉛について、上記の造粒処理を行うことにより、アスペクト比が1.5を超える範囲で、アスペクト比を調整することも可能である。
【0036】
本実施形態においては、第1負極活物質粒子が球状化黒鉛粒子であり、かつ第2負極活物質粒子が鱗片状黒鉛粒子であることが好ましく、第1負極活物質粒子が球状化天然黒鉛粒子であり、かつ第2負極活物質粒子が鱗片状天然黒鉛粒子であることがより好ましい。
【0037】
第1負極活物質粒子の平均アスペクト比は、1.50以下であり、好ましくは1.45以下であり、より好ましくは1.40以下であり、さらに好ましくは1.30以下であり、特に好ましくは1.25以下である。一方、第1負極活物質粒子の平均アスペクト比は、1.00以上であり、1.10以上であってよい。
【0038】
第2負極活物質粒子の平均アスペクト比は、1.50超えであり、好ましくは1.75以上であり、より好ましくは2.00以上であり、さらに好ましくは2.20以上であり、特に好ましくは2.40以上である。一方、第2負極活物質粒子の平均アスペクト比は、10.00以下、7.00以下、5.00以下、または4.00以下であってよい。
【0039】
なお、負極活物質粒子のアスペクト比は、負極活物質粒子の短軸(または短辺)に対する、負極活物質粒子の長軸(または長辺)の比であり、公知方法に従い求めることができる。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて負極活物質層64の断面電子顕微鏡画像を撮影し、当該画像内の負極活物質粒子の短軸と長軸の長さを求め、比(長軸/短軸)を算出することにより、求めることができる。なお、負極活物質粒子の短軸と長軸の決定とその比の算出は、画像解析ソフトウエア(例、「ImageJ」等)を用いると容易である。なお、第1負極活物質粒子の平均アスペクト比は、断面電子顕微鏡画像において、アスペクト比が1.5以下の負極活物質粒子を任意に25個以上選択し、それらのアスペクト比の平均値を算出することにより求めることができる。第2負極活物質粒子の平均アスペクト比は、断面電子顕微鏡画像において、アスペクト比が1.5超えの負極活物質粒子を任意に25個以上選択し、それらのアスペクト比の平均値を算出することにより求めることができる。この作業も、画像解析ソフトウエア(例、「ImageJ」等)を用いると容易である。
【0040】
第1負極活物質粒子と第2負極活物質粒子の質量比(第1負極活物質粒子:第2負極活物質粒子)は、50:50~95:5である。当該質量比がこの範囲外だと、リチウムイオン二次電池100に充放電を繰り返した際の抵抗増加の抑制が不十分となる。より高い抵抗増加抑制効果の観点から、当該質量比は、50:50~82:18が好ましく、50:50~70:30がより好ましく、50:50~65:35がさらに好ましい。
【0041】
第1負極活物質粒子および第2負極活物質粒子の平均粒子径(メジアン径:D50)は、特に限定されないが、例えば、それぞれ、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上30μm以下であり、より好ましくは5μm以上20μm以下である。なお、負極活物質の平均粒子径(D50)は、例えば、レーザ回折散乱法により求めることができる。
【0042】
本実施形態においては、第2負極活物質粒子の50%以上が、負極活物質層64の面方向と、第2負極活物質粒子の長軸との間の角度が30°以上となるように配向している。好ましくは、第2負極活物質粒子の50%以上が、負極活物質層64の面方向と、第2負極活物質粒子の長軸との間の角度が45°以上となるように配向している。好ましくは、第2負極活物質粒子の55%以上(特に58%以上)が、負極活物質層64の面方向と、第2負極活物質粒子の長軸との間の角度が30°以上となるように配向している。この技術的意義については後述する。
【0043】
この角度について図3を用いて説明する。図3は負極60の模式断面図であり、負極集電体62と、負極活物質層64とが示されている。また、負極活物質層64内に第1負極活物質粒子66と、第2負極活物質粒子68とが示されている。説明の便宜のため、第1負極活物質粒子66および第2負極活物質粒子68は1個ずつ示されているが、実際は、これらは複数個が、負極活物質層64に含まれている。第2負極活物質粒子68は、長軸Lを有している。負極活物質層64の面方向は、負極活物質層64の主面の方向であり、図3における矢印Pの方向である。ここで、負極活物質層64は、外表面と負極集電体62に接している面との2つの(一対の)主面を有している。そのため、負極活物質層64の面方向Pとして、負極集電体62の面方向を採用してよい。この矢印Pと長軸Lとの間の角度θが、負極活物質層の面方向と、第2負極活物質粒子の長軸との間の角度であり、当該角度には、鋭角の角度が採用される。
【0044】
上記のような第2負極活物質粒子の配向状態は、例えば、次の方法で得ることができる。第1負極活物質粒子と第2負極活物質粒子とを50:50~95:5の質量比で含有するスラリーを調製する。このスラリーを負極集電体62上に塗布し、乾燥して負極活物質層64を形成する。そして、負極活物質層64に対してプレス処理を、負極活物質層64の見かけ密度が通常0.95g/cm以上、特に1.00g/cm以上になるように行う。
【0045】
通常、高アスペクト比の負極活物質粒子は、スラリー塗工時において、負極活物質層64の面方向に沿うように配向し易く、さらにプレス処理によって、負極活物質層64の面方向に沿うような配向が起こる。したがって、通常、ほとんどの負極活物質粒子について、負極活物質層64の面方向(すなわち、主面方向)と、負極活物質粒子の長軸との間の角度は30°未満となる。
【0046】
しかしながら、低アスペクト比の第1負極活物質粒子が適量存在することで、スラリー塗工後(すなわち、負極活物質層のプレス処理前)において、負極活物質粒子間に適度なスペースが生成する。そして、プレス処理によって、このスペースを埋めるように負極活物質粒子が移動し、このときに負極活物質層64の面方向に対して第2負極活物質粒子が傾いた配向状態が得られる。このようにして、第2負極活物質粒子の50%以上が、負極活物質層64の面方向と、第2負極活物質粒子の長軸との間の角度が30°以上となるように配向している状態が得られる(参考として、後述の実施例1のプレス処理前とプレス処理後の負極活物質層の断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を、図4および図5にそれぞれ示す)。
【0047】
第2活物質粒子の配向状態は、次のようにして確認することができる。走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて負極活物質層64の断面電子顕微鏡画像を撮影し、各負極活物質粒子のアスペクト比を算出する。これにより、アスペクト比が1.5超えの第2負極活物質粒子を特定する。なお、アスペクト比の算出には、画像解析ソフトウエア(例、「ImageJ」等)を用いると容易である。
【0048】
次に、負極活物質層64の面方向と、第2負極活物質粒子の長軸との間の角度を決定する。この角度の決定も、画像解析ソフトウエア(例、「ImageJ」等)を用いると容易である。なお、負極活物質層64の面方向は、通常、負極集電体62の面方向と一致する。負極活物質層64の面方向が、負極集電体62の面方向と一致する場合、負極集電体62が含まれるように負極活物質層64の断面電子顕微鏡画像を取得し、負極集電体62の面方向を把握可能にすることで、負極活物質層64の面方向の特定が容易となり、配向度の測定が容易になる。
【0049】
上記角度の測定は、任意に選ばれる20個以上の第2負極活物質粒子に対して行う。上記角度が30°以上となるように配向している第2負極活物質粒子の個数を数え、(上記角度が30°以上の第2負極活物質粒子の個数/上記角度を測定した第2負極活物質粒子の個数)×100により、その割合(%)を算出する。
【0050】
負極活物質層64は、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0051】
負極活物質層64中の負極活物質の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上99質量%以下がより好ましい。負極活物質層64中のバインダの含有量は、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。負極活物質層64中の増粘剤の含有量は、0.3質量%以上3質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0052】
負極活物質層64の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上400μm以下であり、好ましくは20μm以上300μm以下である。
【0053】
本実施形態において、負極活物質層64の見かけ密度(いわゆる、負極密度)は、特に限定されない。負極60作製時のプレス時の圧力によって、第2負極活物質粒子を配向させるため、負極活物質層64の見かけ密度は、通常、0.95g/cm以上であり、好ましくは1.00g/cm以上であり、より好ましくは1.10g/cm以上、さらに好ましくは1.30g/cmである。負極活物質層64の見かけ密度は、2.00g/cm以下、1.70g/cm以下または1.50g/cm以下であってよい。当該見かけ密度が大きい方が、車両駆動用電源用途(特にHEVの駆動用電源用途)において有利である。
【0054】
なお、負極活物質層64の見かけ密度は、負極活物質層64の空隙部を含めた見かけ体積(cm)に対する、負極活物質層64の重量(g)の比であるが、例えば、負極活物質層64の目付量と、負極活物質層64の厚さとを測定し、負極活物質層64の目付量/負極活物質層64の厚さとして容易に算出することができる。
【0055】
負極活物質層64の目付量は、特に限定されないが、好ましくは4mg/cm以上であり、より好ましくは8mg/cm以上であり、さらに好ましくは10mg/cm以上であり、特に好ましくは20mg/cm以上である。負極活物質層64の目付量は、50mg/cm以下、または40mg/cm以下であってよい。当該目付量が大きい方が、車両駆動用電源用途(特にHEVの駆動用電源用途)において有利である。
【0056】
セパレータ70としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から構成される多孔性シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70の表面には、セラミック粒子等を含有する耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0057】
セパレータ70の厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上50μm以下であり、好ましくは10μm以上30μm以下である。セパレータ70のガーレー試験法によって得られる透気度は特に限定されないが、好ましくは350秒/100cc以下である。
【0058】
非水電解液80は、非水溶媒と電解質塩(支持塩とも呼ばれる)とを含有する。本実施形態においては、非水溶媒は、炭素数4以下のカルボン酸エステルを1体積%~30体積%含有する。
【0059】
炭素数4以下のカルボン酸エステルは、非水電解液80の粘度を低減するように作用する。よって、カルボン酸エステルの炭素数が5以上だと、非水電解液80の粘度低減が不十分となる。炭素数4以下のカルボン酸エステルの例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。なかでも、非水電解液80の粘度低減作用が特に高いことから、酢酸メチルが好ましい。
【0060】
非水溶媒は、カルボン酸エステル以外の有機溶媒を含む。当該有機溶媒の例としては、カーボネート類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等が挙げられ、なかでも、カーボネート類が好ましい。カーボネート類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が例示される。このような有機溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0061】
より高い抵抗増加抑制効果の観点から、非水溶媒は、炭素数4以下のカルボン酸エステルを15体積%~30体積%含有することが好ましい。非水溶媒は、好ましくは、炭素数4以下のカルボン酸エステル、およびカーボネート類を含有し、炭素数4以下のカルボン酸エステル、およびカーボネート類のみを含有していてもよい。カーボネート類は、鎖状カーボネートと環状カーボネートとの両方を含有することが好ましい。
【0062】
電解質塩としては、例えば、LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩(好ましくはLiPF)を好適に用いることができる。電解質塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
【0063】
非水電解液80は、非水溶媒および電解質塩以外の成分(以下、任意成分ともいう)を含有していてもよい。当該任意成分の好適な例としては、ビニレンカーボネート、オキサラト錯体等の被膜形成剤が挙げられる。なかでも、オキサラト錯体が好ましく、その例としては、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiDFOB)等が挙げられる。非水電解液80が被膜形成剤を含有することにより、リチウムイオン二次電池100の耐久性を向上させることができる。非水電解液80中の被膜形成剤の濃度は特に限定されないが、例えば0.05質量%~1.2質量%であり、好ましくは0.1質量%~1.0質量%である。
【0064】
その他の任意成分としては、増粘剤、ガス発生剤(例、ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等)などの各種添加剤が挙げられる。
【0065】
以上のように、負極活物質が、アスペクト比が1.5以下の第1負極活物質粒子と、アスペクト比が1.5超えの第2負極活物質粒子とを質量比50:50~95:5で含み、第2負極活物質粒子の50%以上が、負極活物質層64の面方向と、第2負極活物質粒子の長軸との間の角度が30°以上となるように配向しており、非水電解液80の非水溶媒が、炭素数4以下のカルボン酸エステルを1体積%~30体積%含有することにより、リチウムイオン二次電池100に充放電を繰り返した際の抵抗増加を抑制することができる。その理由について以下説明する。
【0066】
リチウムイオン二次電池100に充放電を繰り返した場合には、負極活物質の膨張/収縮によって、非水電解液80の捲回電極体20の端部からの流出/流入が起こる。この非水電解液80の流出/流入の繰り返しによって、捲回電極体20内において電解質塩の濃度にムラが発生し、これが、抵抗増加の要因となる。
【0067】
ここで、本実施形態では、第2負極活物質粒子が、第2負極活物質粒子の50%以上が、負極活物質層64の面方向と、第2負極活物質粒子の長軸との間の角度が30°以上となるように配向している(図5のSEM画像参照)。このため、第2負極活物質粒子が、非水電解液80を、負極活物質層64の面方向(図5のSEM画像では左右方向)へ移動させにくくなっており、これにより、非水電解液80の捲回電極体20の端部からの流出を抑制することができる。なお、この配向状態は、負極活物質が、アスペクト比が1.5以下の第1負極活物質粒子と、アスペクト比が1.5超えの第2負極活物質粒子とを質量比50:50~95:5で含むことで得られる。
【0068】
一方で、本実施形態では、非水電解液80の非水溶媒が、炭素数4以下のカルボン酸エステルを1体積%~30体積%含有することで、非水電解液80が低粘度化されている。このため、捲回電極体20から排出された非水電解液80が、負極活物質層64が高密度化された場合であっても、捲回電極体20内に戻り易くなっている。
【0069】
これらの結果、捲回電極体20全体での非水電解液80の含浸状態が改善され、捲回電極体20内における電解質塩の濃度ムラの発生が抑制される。よって、リチウムイオン二次電池100に充放電を繰り返した際の抵抗増加が抑制される。
【0070】
以上の説明のように、リチウムイオン二次電池100によれば、充放電を繰り返した際の抵抗増加を抑制することができる。リチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、リチウムイオン二次電池100は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。
【0071】
リチウムイオン二次電池100は、充放電を繰り返した際の抵抗増加が抑制されているため、高い入出力性能を長期にわたって実現することができる。このため、入出力特性に優れるリチウムイオン二次電池100は、高い発電効率が望まれる車両駆動用電源に好適であり、特に、HEVの駆動用電源用途に好適である。リチウムイオン二次電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0072】
以上、一例として扁平形状の捲回電極体20を備える角形のリチウムイオン二次電池100について説明した。しかしながら、リチウムイオン二次電池は、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備えるリチウムイオン二次電池として構成することもできる。また、リチウムイオン二次電池は、円筒形リチウムイオン二次電池、ラミネートケース型リチウムイオン二次電池等として構成することもできる。
【0073】
本実施形態に係る二次電池は、公知方法に従ってリチウムイオン二次電池以外の非水電解液二次電池として構成することができる。
【0074】
以下、本発明に関する実施例を詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0075】
〔実施例1~10および比較例1~3〕
<評価用リチウムイオン二次電池の作製>
第1負極活物質粒子として、平均アスペクト比が1.2の球状化天然黒鉛を用意した。第2負極活物質粒子として、平均アスペクト比が2.5の鱗片状天然黒鉛を用意した。なお、第1負極活物質粒子および第2負極活物質粒子には、非晶質炭素で被覆されたものを用いた。第1負極活物質粒子と第2負極活物質粒子とを、表1に示す質量比で混合することにより、負極活物質を調製した。
【0076】
上記負極活物質と、結着剤としてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、活物質:SBR:CMC=99:0.5:0.5の質量比で、イオン交換水と混合し、負極スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ8μmの長尺状の銅箔の両面に帯状に塗布して乾燥した後、プレスすることにより負極シートを作製した。なお、片面あたりの負極活物質層の目付量は4mg/cmとした。また、プレス処理は、負極密度(負極活物質層の見かけ密度)が1.0g/cm以上となるように行った。
【0077】
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、LNCM:AB:PVdF=92:5:3の質量比でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ15μmの長尺状のアルミニウム箔の両面に帯状に塗布して乾燥した後、プレスすることにより正極シートを作製した。
【0078】
セパレータとして、PP/PE/PPの三層構造の多孔質ポリオレフィンシート(厚み20μm)にHRL(厚み4μm)が設けられたものを用意した。上記で作製した正極シートと、負極シートと、2枚の上記用意したセパレータシートとを積層し、捲回して捲回電極体を作製した。このとき、セパレータのHRLを正極シートに対向させた。
【0079】
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、カルボン酸エステルとを、30:30:40-x:xの体積比で含む混合溶媒を用意した。なお、カルボン酸エステルとしては、表1示すように、酢酸メチル(MA)またはプロピオン酸メチル(MP)を使用し、xの値(体積比;体積%でもある)は、表1に示す値とした。この混合溶媒に、リチウムビス(オキサレート)ボレートを1.0質量%の濃度で溶解させ、電解質塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させた。これにより、非水電解液を得た。
【0080】
上記作製した電極体に端子類を取り付け、これを非水電解液と共に電池ケースに収容し、封止して、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0081】
<第2活物質粒子の配向評価>
各評価用リチウムイオン二次電池の負極をイオンミリング加工して、負極活物質層の断面サンプルを作製した。このサンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、断面SEM画像を取得した。このとき、断面SEM画像には、銅箔(負極集電体)が含まれるようにした。画像解析ソフトウエア「ImageJ」を用いて、断面SEM画像内の負極活物質粒子のアスペクト比を測定し、アスペクト比が1.5以下の第1負極活物質粒子とアスペクト比が1.5超えの第2負極活物質粒子を特定した。このとき、画像解析ソフトウエア「ImageJ」により、第1負極活物質粒子および第2負極活物質粒子の平均アスペクト比を求めた。
【0082】
次に、画像解析ソフトウエア「ImageJ」を用いて、任意に選択した20個以上の第2負極活物質粒子について、負極活物質層の面方向と、第2負極活物質粒子の長軸との間の角度を求めた。このとき、断面SEM画像内に写っている銅箔を利用して、銅箔の面方向を、負極活物質層の面方向とした。
【0083】
この角度が30°以上となるように配向している第2負極活物質粒子の個数を数え、(当該角度が30°以上の第2負極活物質粒子の個数/当該角度を測定した第2負極活物質粒子の個数)×100により、その割合(%)を算出した。その値を表2に示す。
【0084】
<活性化処理>
上記作製した各評価用リチウムイオン二次電池を、25℃の恒温槽内に置いた。各評価用リチウムイオン二次電池を、0.3Cの電流値で4.10Vまで定電流充電した。その後、0.3Cの電流値で3.00Vまで定電流放電した。
【0085】
<初期特性評価>
上記活性化した各評価用リチウムイオン二次電池を、0.2Cの電流値で4.10Vまで定電流充電した後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行う定電流-定電圧充電により、満充電状態にした。その後、0.2Cの電流値で3.00Vまで定電流放電した。このときの放電容量を測定し、初期容量とした。
【0086】
上記の初期容量をSOC100%として、25℃の恒温槽中にて1Cの電流値でSOCが60%になるまで各評価用リチウムイオン二次電池を充電した。次いで、30Cの電流値で10秒間充電を行い、このときの電圧降下量ΔVを取得した。この電圧降下量ΔVと電流値とを用いて、各評価用リチウムイオン二次電池の初期抵抗値を算出した。
【0087】
<サイクル特性評価>
25℃の恒温槽中にて1Cの電流値でSOCが60%になるまで各評価用リチウムイオン二次電池を充電した。次いで、30Cの電流値で10秒間充電、5秒間休止、3Cの電流値で100秒間放電、5秒間休止を1サイクルとする充放電を2000サイクル繰り返した。その後、初期抵抗測定と同じ方法で、2000サイクル後の電池抵抗を求めた。(充放電2000サイクル後の電池抵抗/初期抵抗)×100より、抵抗増加率(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1の結果が示すように、負極活物質が、アスペクト比が1.5以下の第1負極活物質粒子と、アスペクト比が1.5超えの第2負極活物質粒子とを質量比50:50~95:5で含み、第2負極活物質粒子の50%以上が、負極活物質層の面方向と、第2負極活物質粒子の長軸との間の角度が30°以上となるように配向しており、非水電解液の非水溶媒が、炭素数4以下のカルボン酸エステルを1体積%~30体積%含有する場合に、リチウムイオン二次電池に充放電を繰り返した際の抵抗増加が小さいことがわかる。この結果より、ここに開示される非水電解液二次電池によれば、充放電を繰り返した際の抵抗増加を抑制可能なことがわかる。
【0090】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0091】
すなわち、ここに開示される非水電解液二次電池は、以下の項[1]~[7]である。
[1]正極と、
負極と、
非水電解液と、
を備える非水電解液二次電池であって、
前記負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を備え、
前記負極活物質は、アスペクト比が1.5以下の第1負極活物質粒子と、アスペクト比が1.5超えの第2負極活物質粒子とを含み、
前記第1負極活物質粒子と前記第2負極活物質粒子の質量比が、50:50~95:5であり、
前記第2負極活物質粒子の50%以上が、前記負極活物質層の面方向と、前記第2負極活物質粒子の長軸との間の角度が30°以上となるように配向しており、
前記非水電解液は、非水溶媒と電解質塩とを含有し、
前記非水溶媒は、炭素数4以下のカルボン酸エステルを1~30体積%含有する、非水電解液二次電池。
[2]前記第1負極活物質粒子の平均アスペクト比が、1.0~1.4であり、前記第2負極活物質粒子の平均アスペクト比が、2.0~7.0である、項[1]に記載の非水電解液二次電池。
[3]前記第1負極活物質粒子が、球状化天然黒鉛粒子であり、前記第2負極活物質粒子が、鱗片状天然黒鉛粒子である、項[1]または[2]に記載の非水電解液二次電池。
[4]前記第1負極活物質粒子と前記第2負極活物質粒子の質量比が、50:50~65:45である、、項[1]~[3]のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
[5]前記カルボン酸エステルが、酢酸メチルである、項[1]~[4]のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
[6]前記非水溶媒が、前記カルボン酸エステルを15体積%~30体積%含有する、項[1]~[5]のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
[7]ハイブリッド車の車両駆動電源用である、項[1]~[6]のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
【符号の説明】
【0092】
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
80 非水電解液
100 リチウムイオン二次電池
図1
図2
図3
図4
図5