(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104358
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/169 20210101AFI20240729BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240729BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240729BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20240729BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240729BHJP
H01M 50/159 20210101ALI20240729BHJP
H01M 50/117 20210101ALI20240729BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20240729BHJP
H01M 50/157 20210101ALI20240729BHJP
H01M 50/164 20210101ALI20240729BHJP
H01M 50/16 20210101ALI20240729BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240729BHJP
【FI】
H01M50/169
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/131
H01M50/119
H01M50/159
H01M50/117
H01M50/124
H01M50/157
H01M50/164
H01M50/16
H01M50/121
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008511
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】原 有輝
(72)【発明者】
【氏名】田村 和樹
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC01
5H011CC05
5H011CC06
5H011DD09
5H011DD13
5H011FF03
5H011KK02
(57)【要約】
【課題】レーザ光が電池ケース内部に進入することを抑制し、より安全性の高い二次電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】ここに開示される蓄電デバイスの製造方法は、一側面が開口した有底のケース本体12と、該開口を封口する封口板14と、正極および負極を有する電極体とを用意する工程と、電極体をケース本体12の内部に収容し、ケース本体12の開口に封口板14を装着して、蓄電デバイスを組み立てる工程と、ケース本体12と封口板14との境界に対して封口板14の外表面側からレーザ光ILを照射し、ケース本体12と封口板14とをレーザ溶接する工程とを含む。かかる製造方法では、ケース本体12の開口周縁部12dと封口板14とが対向する領域のうち少なくとも一部は、溶接工程で用いられるレーザの光吸収率が他の部分よりも高くなることを特徴とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側面が開口した有底のケース本体と、該開口を封口する封口板と、正極および負極を有する電極体とを用意する工程と、
前記電極体を前記ケース本体の内部に収容し、前記ケース本体の前記開口に前記封口板を装着して、蓄電デバイスを組み立てる工程と、
前記ケース本体と前記封口板との境界に対して前記封口板の外表面側からレーザ光を照射し、前記ケース本体と前記封口板とをレーザ溶接する工程と
を含み、
前記ケース本体の開口周縁部と前記封口板とが対向する領域のうち少なくとも一部は、前記溶接工程で用いられるレーザの光吸収率が他の部分よりも高い、蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記溶接工程は、前記ケース本体と前記封口板との境界のうち、予め定められた部分に対して前記封口板の外表面側からレーザ光を照射し、前記ケース本体と前記封口板とを仮溶接する仮溶接工程と、
前記ケース本体と前記封口板との境界に沿ってレーザ光を走査し、前記ケース本体と前記封口板とを全周溶接する本溶接工程と
を含み、
前記開口周縁部と前記封口板とが対向する領域のうち、前記仮溶接工程で仮溶接される部分は、前記仮溶接工程で用いられるレーザの光吸収率が他の部分よりも高い、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記開口周縁部と前記封口板とが対向する領域のうち少なくとも一部は、波長300nm~1100nmの光に対する光吸収率が高くなるように黒色に表面処理されている、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
一側面が開口した有底のケース本体と、
前記ケース本体の開口周縁部に溶接された封口板と、
前記ケース本体の内部に収容された電極体と
を備え、
前記ケース本体の開口周縁部と前記封口板とが対向する領域のうち少なくとも一部において、波長300nm~1100nmの光に対する光吸収率が他の部位よりも高くなるように黒色に処理された表面処理部を有している、蓄電デバイス。
【請求項5】
前記表面処理部は、波長300nm~1100nmの光に対する光吸収率が60%以上である、請求項4に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記ケース本体および前記封口板はアルミニウムから構成されており、前記表面処理部はアルマイト被膜から構成される、請求項4または5に記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記表面処理部が黒色着色剤を含む黒色着色層である、請求項4または5に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極体と、該電極体を収容するケース本体と、ケース本体の開口を封口する封口体とを備える蓄電デバイスが知られている。上記したケース本体と封口板とは、例えばレーザ溶接などで溶接されて密閉される。例えば、特開2018-202478号公報には、かかる蓄電デバイスのレーザ封口装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電デバイスを製造する際には、一般的にケース本体と封口板とは、別々に作製されて用意される。このため、それぞれの部品において寸法公差が生じ、これに起因してケース本体と封口板との間にわずかな隙間が生じることがある。このような隙間が発生した状態のまま溶接工程においてレーザ照射を行うと、かかる隙間からレーザ光が直接ケース内部に進入する所謂、「レーザ抜け」が生じ得る。レーザ光の角度を調整したとしても、ケース本体と封口板との隙間においてレーザ光が反射して、ケース内部に進入することがあり得る。あるいは、レーザ照射装置とケースとの相対位置、姿勢、つまりレーザ光照射位置に対するレーザ光の照射角度は製造固体ごとにワーク取付け、固定の誤差も起因して変わり得る。したがって、適切なレーザ光の照射角度は製造固体ごとに変わりその照射角度を毎回調整することはかなり難しい。ケースとレーザ光の照射角度との相対位置、姿勢の関係が適切でない場合に意図せずケース内部にレーザ光が進入した場合には、ケース内部の収容物(例えばケース内に収容された電極体)を破損する虞があり、好ましくない。また、クランプ等によって隙間を押しつぶしたとしても、ケース本体と封口板との組み合わせによっては隙間が生じる虞がある(ある箇所の隙間をなくせても別の箇所に隙間が残るなど、全ての溶接箇所の隙間をなくすことは難しい)。したがって、より安全性が高い蓄電デバイスを製造する観点から未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、レーザ光が電池ケース内部に進入することを抑制し、より安全性の高い二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される製造方法は、一側面が開口した有底のケース本体と、該開口を封口する封口板と、正極および負極を有する電極体とを用意する工程と、上記電極体を上記ケース本体の内部に収容し、上記ケース本体の上記開口に上記封口板を装着して、蓄電デバイスを組み立てる工程と、上記ケース本体と上記封口板との境界に対して上記封口板の外表面側からレーザ光を照射し、上記ケース本体と上記封口板とをレーザ溶接する工程とを含む。ここに開示される製造方法において、上記ケース本体の開口周縁部と上記封口板とが対向する領域のうち少なくとも一部は、上記溶接工程で用いられるレーザの光吸収率が他の部分よりも高い。
【0007】
かかる構成によれば、溶接工程においてレーザ光が好適に吸収され、ケース本体と封口板とのわずかな隙間からレーザ光がケース内部に進入することを抑制することができる。これにより、安全性が向上した蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る電池の内部構造を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、電極体の構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法について説明するためのフローチャート図である。
【
図7】
図7は、組立工程の様子を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、溶接工程の様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここで開示される技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここに開示される技術を特徴付けない蓄電デバイスの一般的な構成および製造プロセス等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と、当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、各図面は模式的に描かれており、寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。また、以下に説明する図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0010】
本明細書において、「蓄電デバイス」とは、電解質を介して一対の電極(正極および負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じるデバイスをいう。かかる蓄電デバイスは、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の二次電池;リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池);を包含し得る。
以下、ここで開示される蓄電デバイスに係る好適な一実施形態として、リチウムイオン二次電池を例にして説明するが、適用対象をかかる電池に限定することを意図したものではない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る二次電池100の斜視図である。
図2は、二次電池100の内部構造を模式的に示す図である。なお、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、二次電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、二次電池100の設置形態を何ら限定するものではない。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
【0012】
<二次電池>
図1および
図2に示すように、二次電池100は、電極体20と、電解液(図示せず)と、電極体20および電解液を収容する電池ケース10と、正極端子30と、負極端子40とを備えている。
【0013】
図3は、電極体20の構成を模式的に示す図である。電極体20は、ここでは
図3に示すように、帯状の正極シート22と帯状の負極シート24とが、2枚の帯状のセパレータ26を介して絶縁された状態で積層され、巻回軸WLを中心として長手方向に巻回されてなる巻回電極体である。ただし、電極体は、方形状の正極シートと方形状の負極シートとが、方形状のセパレータによって絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。あるいは、電極体は、方形状の正極シートと方形状の負極シートとが、つづら折りされたセパレータによって絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。
図2に示すように、ここでは、電極体20は、当該電極体20の左右に正極タブ群23と負極タブ群25とが位置する、所謂、横タブ構造である。ただし、電極体は、電極体の上方側に正極タブ群と負極タブ群とが位置する、所謂、上タブ構造であってもよい。
【0014】
正極シート22は、
図3に示すように、長尺な帯状の部材である。正極シート22の構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。例えば、正極シート22は、正極集電体22cと、正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aと、を有する。なお、正極シート22は、正極活物質層22aよりも電気伝導性が低くなるように構成された正極保護層(図示せず)を有していてもよい。
【0015】
正極集電体22cは、長尺な帯状の部材である。正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属から構成される。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミ箔である。正極集電体22cの寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図3の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。正極タブ22tは、正極集電体22cの一部であり、金属箔(例えば、アルミ箔)からなっている。正極タブ22tの一部には、正極活物質層22aが形成されている。正極タブ22tの少なくとも一部では、正極活物質層22aが形成されずに正極集電体22cが露出している。複数の正極タブ22tは長辺方向Yの一方の端部(
図2の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成している。複数の正極タブ22tは、外方側の端が揃うように折り曲げられて湾曲している。正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と接続されている。
【0016】
正極活物質層22aは、
図3に示すように、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、正極活物質を含有する。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極活物質を用いてよい。具体的に例えば、正極活物質として、リチウム複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物等を用いることができる。これらの正極活物質は、1種単独で用いてよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の成分、例えば、導電材、バインダ等を含み得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例、グラファイトなど)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
【0017】
負極シート24は、
図3に示すように、長尺な帯状の部材である。負極シート24の構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。例えば、負極シート24は、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。
【0018】
負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。負極集電体24cの寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。負極集電体24cの長辺方向Yの一方の端部(
図3の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。負極タブ24tは、負極集電体24cの一部であり、金属箔(例えば、銅箔)からなっている。負極タブ24tの一部には、負極活物質層24aが形成されている。負極タブ24tの少なくとも一部では、負極活物質層24aが形成されずに負極集電体24cが露出している。複数の負極タブ24tは長辺方向Yの一方の端部(
図2の右端部)で積層され、負極タブ群25を構成している。複数の負極タブ24tは、外方側の端が揃うように折り曲げられて湾曲している。負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と接続されている。
【0019】
負極活物質層24aは、
図3に示すように、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは負極活物質を含有する。当該負極活物質としては、特に限定されないが、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。黒鉛は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよく、黒鉛が非晶質な炭素材料で被覆された形態の非晶質炭素被覆黒鉛であってもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0020】
セパレータ26は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁性の樹脂シートである。セパレータ26の構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。セパレータ26としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から構成される多孔性シート(フィルム)が挙げられる。セパレータ26の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0021】
上記したとおり、二次電池100は電解液を備えている。電解液は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。電解液は、例えば、非水系溶媒(有機溶媒)と電解質塩(支持塩)とを含む非水電解液であり得る。非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を用いることができる。また、支持塩としては、種々のリチウム塩を用いることができ、なかでもLiPF6、LiBF4等のリチウム塩が好適である。電解液は、例えば、被膜形成剤、ガス発生剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0022】
図1および
図2に示すように、電池ケース10は、ケース本体12と、封口板14と、を備えている。封口板14には、正極端子30および負極端子40が取り付けられている。正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方側の端部(
図1および
図2の左端部)に取り付けられている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方側の端部(
図1および
図2の右端部)に取り付けられている。正極端子30および負極端子40は、端子装着孔18、19に挿通され、封口板14の外表面側から内表面側に向けて延びている。正極端子30の下端は、ケース本体12の内部で、正極集電部50と接続されている。正極端子30は、正極集電部50を介して電極体20の正極シート22と接続されている。負極端子40の下端は、ケース本体12の内部で、負極集電部60と接続されている。負極端子40は、負極集電部60を介して電極体20の負極シート24と接続されている。
【0023】
正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金か構成されることがより好ましい。負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金から構成されることがより好ましい。
図1に示すように、正極端子30および負極端子40は、電池ケース10の外側において板状の外部導電部材35と電気的に接続されている。外部導電部材35は、複数の二次電池を相互に電気的に接続する際に、バスバーが付設される部材である。外部導電部材35は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。ただし、外部導電部材35は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0024】
図1および
図2に示すように、外部導電部材35は、それぞれ外部絶縁部材70によって絶縁されている。また、封口板14の端子装着孔18および19には、それぞれガスケット72が装着されている。これにより、端子装着孔18および19に挿通された電極端子(正極端子30および負極端子40)と、封口板14と、が絶縁されている。外部絶縁部材70およびガスケット72は、例えばパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂材料によって構成され得る。
【0025】
図1に示すように、電池ケース10は、ここでは有底の直方体形状(角型)の外形を有する。電池ケース10には、従来公知の材料を特に制限なく使用することができる。電池ケース10(ケース本体12および封口板14)は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、鉄、鉄合金等から構成され得る。なかでも、電池ケース10はアルミニウムから構成されていることが好ましい。
【0026】
電池の高容量化の観点からは、電極体20を大型化させることが好ましく、電池ケース10も大型化する傾向にある。ここに開示される二次電池100の電池ケース10は、比較的大型な電極体20を収容できる大きさであるとよい。特に限定されないが、電池ケース10は、例えば、長辺方向Yの長さが100mm以上500mm以下であることが好ましく、長辺方向Yの長さが200mm以上400mm以下であることがより好ましい。また、特に限定されないが、電池ケース10の短辺方向Xの長さが10mm以上60mm以下であることが好ましく、短辺方向Xの長さが20mm以上50mm以下であることがより好ましい。電池ケース10の高さ(上下方向Zの長さ)は、特に限定されないが、例えば、70mm以上120mm以下程度であるとよい。
【0027】
ケース本体12は、電極体20と非水電解液とを収容する筐体である。ケース本体12は、一側面(ここでは上面)に開口12hを有する有底かつ角型の容器である。開口12hは、ここでは略矩形状である。ケース本体12は、長辺および短辺を有し、平面視で略矩形状の底面12aと、底面12aの長辺から上下方向Zの上方に延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底面12aの短辺から上下方向Zの上方に延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。短側壁12cの面積は、長側壁12bの面積よりも小さい。特に限定されるものではないが、ケース本体12の平均厚み(平均板厚)は、耐久性等の観点から、概ね0.5mm以上、例えば1mm以上であるとよく、コストやエネルギー密度の観点から、概ね5mm以下、例えば3mm以下であってもよい。
【0028】
封口板14は、ここでは平面視で略矩形状であり、ケース本体12の開口12hを封口する部材である。封口板14は、二次電池100の内部側(電極体20と対向する側)の表面である内表面14a(
図5参照)と、外部側の表面である外表面14b(
図5参照)と、を有している。
図1に示すように、封口板14は、ケース本体12の底面12aと対向している。封口板14には、注液孔15と、ガス排出弁17とが設けられている。注液孔15は、ケース本体12に封口板14を組み付けた後、電池ケース10の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注液孔15は、電解液の注液後に封止部材16によって封止される。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。特に限定されるものではないが、封口板14の平均厚み(平均板厚)は、耐久性等の観点から、概ね0.3mm以上、例えば0.5mm以上であるとよく、コストやエネルギー密度の観点から、概ね5mm以下、例えば3mm以下であってもよく、2.5mm以下であってもよい。
【0029】
図4は、
図1の平面図である。
図4に示すように、封口板14と、ケース本体12の開口12hの周縁部(以下、「開口周縁部12d」という。)とは溶接接合されており、ケース本体12と封口板14との境界に沿って溶接部10wが形成されている。かかる溶接接合は、例えばレーザ溶接によって実現され得る。溶接部10wは、ケース本体12と封口板14との境界がレーザ溶接されることによって、ケース本体12の構成金属と封口板14の構成金属とが溶融されて形成された部分である。ここでは、溶接部10wは、封口板14の外表面側に位置している。溶接部10wでは、ケース本体12の開口12hの内周縁と封口板14の外周縁とが面一になるように連結されている。溶接部10wは、平面視において、封口板14とケース本体12との境界に沿って、略環状に連続して形成されている。
【0030】
ケース本体12では、開口周縁部12dのうち一対の短辺部の内壁面において支持部12f(
図7参照)が設けられていてもよい。支持部12fは、ケース本体12の内側方向に突出するようにして形成されている。これにより、開口12hに嵌められた封口板14は、支持部12fの上に載置されることとなり、開口12hから深く沈みこむことがない。このため、封口板14の外表面14bが隣接する開口周縁部12dの上面とほぼ面一になるように配置される。なお、支持部12fは、開口周縁部12dのうち短辺部に設けられていてもよいが、4つのコーナー部において設けられていてもよい。
【0031】
図5は、
図4のV-V線に沿う模式的な断面図である。
図5に示すように、ここに開示される二次電池100では、開口周縁部12dと封口板14とが対向する領域の少なくとも一部において、波長300nm~1100nmの範囲における光吸収率が他の部位よりも高くなるように黒色に表面処理された表面処理部80を有している。なお、本明細書において「光吸収率」とは、分光光度計を用いて測定されたサンプルの透過率T(%)および反射率R(%)から、式:光吸収率A(%)=100%-T(%)-R(%);により算出される値をいう。また、本明細書において「波長300nm~1100nmの範囲における光吸収率」とは、当該波長範囲における最小のレーザ光吸収率を指すものとする。以下の説明において「光吸収率」とは、特記しない場合、上記のように波長300nm~1100nmの範囲における最小の光吸収率をいう。
【0032】
特に限定されないが、表面処理部80は、波長300nm~1100nmの範囲における光吸収率が60%以上であることが好ましい。かかる光吸収率は、後述する溶接工程S40において、ケース本体12および封口板14に照射されるレーザ光のうち、表面処理部80によって吸収されるレーザ光の割合を意味し得る。開口周縁部12dと封口板14とが対向する領域の少なくとも一部において、このような表面処理部80を設けていることにより、溶接時のレーザ光を効果的に吸収することができる。このため、例えば封口板14とケース本体12との境界の隙間から、レーザ光がケース内部に進入することを好適に抑制することができる。
【0033】
特に限定されないが、表面処理部80の波長300nm~1100nmの範囲における光吸収率は、60%超であってもよく、65%以上であってもよく、70%以上であってもよく、80%以上であってもよい。かかる表面処理部80の光吸収率は、100%であってもよいが、実用的には95%以下が好ましく、90%以下でもよい。かかる光吸収率は、表面処理(例えば、アルマイト処理)の実施時間や、後述する黒色着色剤の種類や量によって適宜調整することができる。
【0034】
なお、表面処理部80の透過率T(%)および反射率R(%)は特に限定されない。光吸収率を高めやすくする観点から、いくつかの態様において、表面処理部80は、波長300nm~1100nmの範囲で光吸収率が最小となる波長における特定のレーザ光の透過率が、例えば35%未満であってよく、20%未満でもよく、10%未満でもよい。表面処理部80の透過率の下限は特に制限されず、例えば1%以上であってよく、5%以上でもよい。また、表面処理部80は、波長300nm~1100nmの範囲で光吸収率が最小となる波長における特定のレーザ光の反射率が、例えば20%未満であってよく、10%未満でもよい。表面処理部80の反射率の下限は特に制限されず、0でもよい。実用上の観点から、通常、表面処理部80の反射率は、1%以上が適当であり、3%以上でもよい。
【0035】
表面処理部80の形態は、波長300nm~1100nmの範囲における光吸収率を向上させることができる限りにおいて、特に限定されない。表面処理部80は、黒色に処理されていることにより、光吸収率を向上させることができる。表面処理部80は、例えば、アルマイト処理、着色処理、化成処理、メッキ処理、コーティング処理等によって黒色に表面処理されているとよい。表面処理部80は、複数の処理が実施されて構成されていてもよい。
【0036】
特に限定されないが、表面処理部80は、アルマイト被膜から構成されていてもよい。すなわち、電池ケース10(ケース本体12および封口板14)はアルミニウムから構成されており、開口周縁部12dと封口板の側面14dとが対向する領域の少なくとも一部において、アルマイト処理されて形成された酸化アルミニウム層が形成されていることが好ましい。これにより、表面処理部80の光吸収率を好適に向上させることができる。
【0037】
また、特に限定されないが、表面処理部80は、黒色着色剤を含む黒色着色層から構成されていてもよい。黒色着色剤は、例えば黒色着色層に分散した状態で含まれている。黒色着色剤としては、従来公知の顔料や染料を用いることができる。顔料としては、例えば無機顔料や有機顔料が挙げられる。黒色着色剤の具体例としては、カーボンブラック、グラファイト、アニリンブラック、チタンブラック、無機顔料ヘマタイト、活性炭等が挙げられる。黒色着色剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0038】
上記したとおり、表面処理部80は、開口周縁部12dと封口板14とが対向する領域の少なくとも一部に形成されている。表面処理部80は、ケース本体12の開口周縁部12dおよび封口板14のうちいずれか一方に形成されていてもよいし、ケース本体12の開口周縁部12dおよび封口板14の両方に形成されていてもよい。開口周縁部12dに表面処理部80が形成されている場合、具体的には、開口周縁部12dの内壁面12eの少なくとも一部に形成されていることが好ましく、内壁面12eであって、封口板14の側面14dと対向する領域の全域に形成されていてもよい。開口周縁部12dに表面処理部80が形成されている場合、その上下方向Zの長さは、封口板14の平均厚みと同程度であることが好ましい。特に限定されないが、開口周縁部12dに表面処理部80が形成されている場合、かかる表面処理部80は、開口周縁部12dの上端から底面側に向けて0.1mm~6mm(例えば0.2mm~5mm)程度形成されていることが好ましい。これにより、レーザ光がケース内部に進入することを好適に抑制することができる。
【0039】
封口板14に表面処理部80が形成されている場合、具体的には、封口板14の側面14dの少なくとも一部に形成されていてもよいし、側面14dの全域に形成されていてもよい。封口板14の側面14dに表面処理部80が形成されている場合、その上下方向Zの長さは、封口板14の平均厚みと同程度であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、ケース本体12の内壁面12eと突き合せた際に、少なくとも側面14dの下方側の領域(すなわち、封口板14の平均厚みを100%としたときに、内表面側から50%以下の領域)に表面処理部80が設けられていることが好ましい。特に限定されないが、表面処理部80は、封口板14の内表面側から外表面側に向けて0.1mm~5mm(例えば0.2mm~4mm)程度形成されていることが好ましい。これにより、溶接時においてレーザ光がケース内部に進入することを好適に抑制し、より安全性の高い二次電池100を提供することができる。
【0040】
<二次電池の製造方法>
以下、ここで開示される蓄電デバイスの製造方法の好適な一実施形態として、リチウムイオン二次電池を例にして説明するが、適用対象をかかる電池に限定することを意図したものではない。
【0041】
図6は、ここに開示される蓄電デバイスの製造方法を大まかに示すフローチャート図である。
図6に示すように、ここに開示される蓄電デバイスの製造方法は、上記したようなケース本体12と封口板14と電極体20とを用意する用意工程S10と、表面処理部80を形成する表面処理工程S20と、電極体20をケース本体12の内部に収容し、ケース本体12に封口板14を装着して蓄電デバイスを組み立てる組立工程S30と、ケース本体12と封口板14との境界に対して封口板14の外表面側からレーザ光を照射し、ケース本体12と封口板14とをレーザ溶接する溶接工程S40と、を含み得る。溶接工程S40は、さらに、ケース本体12と封口板14との境界のうち、予め定められた部分に対して封口板14の外表面側からレーザ光を照射し、ケース本体12と封口板14とを仮溶接する仮溶接工程S42と、ケース本体12と封口板14との境界に沿ってレーザ光を走査し、ケース本体12と封口板14とを全周溶接する本溶接工程S44と、を含んでいてもよい。ここに開示される製造方法では、開口周縁部12dと封口板14とが対向する領域のうち少なくとも一部は、溶接工程S40で用いられるレーザの光吸収率が他の部分よりも高いことによって特徴づけられており、それ以外のプロセスは従来と同様であってもよい。また、任意の段階でさらに他の工程を含んでいてもよい。
【0042】
なお、上記した用意工程S10~溶接工程S40のうち、用意工程S10、表面処理工程S20、組立工程S30は、順不同に実施することができる。用意工程S10、表面処理工程S20、組立工程S30は、いずれか一つ以上を先に実施してもよいし、2つ以上を同時に実施してもよい。例えば、表面処理工程S20と組立工程S30とは、並行して実施することもできる。
【0043】
蓄電デバイスを製造する際には、ケース本体12と封口板14とは典型的には別々に作製されて用意される。このため、それぞれの部品において寸法公差が生じ、これに起因してケース本体12と封口板14との間にわずかな隙間が生じ得る。かかる隙間は、ケース本体12に封口板14を装着した状態でクランプによって押圧することで、概ね解消することができるが、クランプの摩耗やそれに伴う変形によって、ケース本体12と封口板14との間にわずかな隙間が生じることがあり得る。また、ケース本体12と封口板14との組み合わせによって、わずかに隙間が生じる虞がある。あるいは、レーザ照射装置と電池ケース10との相対位置、姿勢、つまりレーザ光照射位置に対するレーザ光の照射角度は製造固体ごとにワーク取付け、固定の誤差も起因して変わり得る。ケース本体12と封口板14との境界のいずれかの位置において、このような隙間が発生した状態のままレーザ照射を行うと、かかる隙間からレーザ光が直接ケース内部に進入する所謂、「レーザ抜け」が生じることがある。あるいは、レーザ光の角度をレーザ抜けが発生しないように調整したとしても、開口周縁部12dと封口板14との隙間においてレーザ光が反射して、2次反射光や3次反射光がケース内部に進入することがあり得る。ケース内部にレーザ光が侵入した際には、ケース内部の収容物(例えばケース内に収容された電極体)を破損する虞があり、好ましくない。そこで、ここに開示される製造方法では、開口周縁部12dと封口板14とが対向する領域のうち少なくとも一部は、溶接工程で用いられるレーザの光吸収率が他の部分よりも高くなるように構成されている。これによって、レーザ光がケース内部に進入することを抑制することができ、より安全性に優れる蓄電デバイスを提供することができる。
【0044】
用意工程S10では、上記したようなケース本体12と封口板14と電極体20とを用意する。電極体20は、公知方法に従って作製することができる。
図3に示すように、電極体20が巻回電極体である場合、かかる巻回電極体は、例えば次のようにして準備することができる。まず、帯状の正極シート22と帯状の負極シート24とを、2枚の帯状のセパレータ26によって絶縁された状態となるように積層する。このとき、正極シート22の正極タブ22tと負極シート24の負極タブ24tとが、2枚のセパレータ26の長辺方向Yの端部から、それぞれ反対方向にはみ出すように重ね合わせる。次いで、用意した積層体を、巻回軸を中心として長手方向に巻回する。積層体の巻回は、公知方法に従って実施することができる。巻回した積層体をプレス処理して、扁平形状の巻回電極体を作製する。このプレス処理は、一般的な扁平形状の巻回電極体の製造に用いられる公知のプレス装置を用いて実施すればよく、特に限定されない。このようにして、電極体20を用意することができる。
【0045】
表面処理工程S20では、上記用意したケース本体12および封口板14の少なくとも一部に対して、後述する溶接工程S40で用いられるレーザの光吸収率が他の部位よりも高くなるように表面処理を実施する。好ましくは、開口周縁部12dと封口板14とが対向する領域の少なくとも一部において、波長300nm~1100nmの範囲における光吸収率が他の部位よりも高くなるように、黒色に表面処理を実施するとよい。特に限定されないが、開口周縁部12dと封口板14とが対向する領域のうち少なくとも一部は、波長300nm~1100nmの範囲における光吸収率が60%以上となるように黒色に表面処理されていることが好ましく、光吸収率が75%以上となるように黒色に表面処理されていることがより好ましい。かかる表面処理は、光吸収率が100%となるように実施されてもよいが、実用的には光吸収率が95%以下程度となるように表面処理されているとよい。かかる表面処理の方法は特に限定されず、例えば、アルマイト処理、着色処理、化成処理、メッキ処理、コーティング処理等の方法が挙げられる。
【0046】
表面処理工程S20は、例えば、アルマイト処理によって実施され得る。アルマイト処理は、公知の方法を用いて行うことができる。かかるアルマイト処理の時間を変更することにより、表面処理部80の光吸収率を調整することができる。例えば、アルマイト処理を1分以上20分程度(好ましくは、2分以上15分以下)実施することにより、波長300nm~1100nmの範囲における光吸収率が60%以上とすることができる。なお、表面処理工程S20において、アルマイト処理によって黒色の表面処理を行う場合、用意工程S10では、アルミニウムから構成されるケース本体12および封口板14を用意する。
【0047】
また、表面処理工程S20は、着色処理によって実施され得る。具体的には、ケース本体12および/または封口板14の所望する位置に、黒色着色剤を塗布する。黒色着色剤は、従来公知の黒色の無機顔料や黒色の有機顔料であってよい。表面処理工程S20は、例えば、黒色の顔料と樹脂とが水系の溶媒に分散された水系インクや、黒色の顔料と樹脂とが揮発性の高い有機溶媒に分散された有機系のインクを用いて実施することができる。なお、上記したアルマイト処理と着色処理とは両方実施してもよい。
【0048】
着色処理によって表面処理工程S20を実施する場合、後述する組立工程S30と同時に実施してもよい。具体的には、ケース本体12に封口板14を装着する際に、封口板14を把持する把持部材110(
図7参照)に予め黒色着色剤を含むインクを供給しておき、把持部材110によって封口板14が把持された際に黒色に表面処理されるように構成されているとよい。これにより、簡便に所望する位置に黒色の表面処理を施すことができる。また、製造工程を短縮することができ、製造効率の観点からも好ましい。
【0049】
図7は、組立工程S30の様子を模式的に示す図である。組立工程S30では、用意した電極体20をケース本体12の内部に収容し、ケース本体12に封口板14を装着して、二次電池100を組み立てる。具体的に、まず、封口板14に電極体20を取り付ける。封口板14と電極体20とは、正極集電部50および負極集電部60を介して接続される。次いで、
図7に示すように、封口板14(ここでは、側面14d)を把持部材110で把持し、電極体20をケース本体12の内部に挿入する。このとき、巻回軸WLが底面12aに沿った向き(すなわち、巻回軸WLが長辺方向Yと平行になる向き)でケース本体12の内部に配置されるように、挿入するとよい。
【0050】
封口板14は、ケース本体12の開口12hに装着される。
図7に示す例では、封口板14の外径は、ケース本体12の開口12hの内径よりもわずかに小さく形成されており、封口板14は開口12hに嵌められている。封口板14の一部は、ここでは、ケース本体12の内壁面12eと封口板14の側面14dとが対向するように、ケース本体12の支持部12f上に載置される。かかる支持部12fは、後述する溶接工程S40において、レーザ光の進入を抑制し得る。一方で、開口周縁部12dのうち一対の長辺部においては、支持部12fの強度を十分に確保することができないため、支持部12f設けることは困難である。このため、開口周縁部12dと封口板14とが対向する領域のうち、特に長辺部において、溶接工程S40で用いられるレーザの光吸収率が他の部位よりも高くなるよう表面処理されていることにより、ここに開示される技術の効果が好適に発揮され得る。さらに、比較的大型(例えば、長辺方向Yの長さが100mm以上500mm以下程度)である蓄電デバイスにおいては、上記した観点から長辺部において支持部14fを設けることが特に困難である。したがって、かかる大型の蓄電デバイスにおいて、開口周縁部12dと封口板14とが対向する領域のうち長辺部において、溶接工程S40で用いられるレーザの光吸収率が他の部位よりも高くなるよう表面処理されていることにより、ここに開示される技術の効果がより一層発揮され得る。
【0051】
図8は、溶接工程S40の様子を模式的に示す図である。なお、
図8では、説明のためにケース本体12と封口板14との隙間をあえて大きく描いている。溶接工程S40では、電池ケース10の内部に電極体20が収容された後、ケース本体12と封口板14との境界に対して、レーザ照射装置120を用いて、レーザ光ILを照射する。上記したとおり、溶接工程S40は、ケース本体12と封口板14との境界のうち、予め定められた部分に対してレーザ光ILを照射し、ケース本体12と封口板14とを仮溶接する仮溶接工程S42と、ケース本体12と封口板14との境界に沿ってレーザ光ILを走査し、ケース本体12と封口板14とを全周溶接する本溶接工程S44と、を含み得る。
【0052】
溶接工程S40(仮溶接工程S42および本溶接工程S44)で用いられるレーザ照射装置120は、従来公知の装置と同様でよく、特に限定されない。レーザ照射装置120は、例えばレーザ照射部122を備えている。ここでは、レーザ照射部122には、ファイバレーザが採用されており、よってレーザ照射部122は、ファイバレーザ照射器として構成されている。しかしながら、レーザ照射部122のレーザは、ファイバレーザに限られず、ケース本体12と封口板14とを溶接可能である限りその種類に制限はない。レーザは、例えば、固体レーザ(例、YAGレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ等)、液体レーザ(例、色素レーザ等)、気体レーザ(例、CO2レーザ等)、半導体レーザ、自由電子レーザ、化学レーザ等であってよい。
【0053】
レーザ照射装置120は、レーザの波長が300nm~1100nmである装置を用いることが好ましい。レーザの波長が上記した範囲であるレーザ照射装置120を用いることにより、ケース本体12と封口板14とを好適に溶接することができる。なお、仮溶接工程S42で用いられる溶接装置と、本溶接工程S44で用いられる溶接装置は同じであってもよいし、異なっていてもよい。製造効率の観点からは、仮溶接工程S42と本溶接工程S44とで同じ溶接装置を用いることが好ましい。
【0054】
上記したとおり、好ましい一態様では、表面処理工程S20において、開口周縁部12dと封口板14とが対向する領域の少なくとも一部において、波長300nm~1100nmの範囲における光吸収率が他の部位よりも高くなるように、黒色に表面処理されている。このため、溶接工程S40において、レーザの波長が300nm~1100nmであるレーザ照射装置120を用いることにより、レーザ光がケース内部に進入することを好適に抑制することができる。
【0055】
仮溶接工程S42では、ケース本体12と封口板14との境界のうち、予め定められた部分に対してレーザ光を照射する。これによって、ケース本体12と封口板14との位置関係を固定することができる。また、後述する本溶接工程S44よりも前工程において仮溶接工程S42を実施することにより、封口板14が熱によって変形することを抑制することができ、より精度の高い溶接接合を実現することができる。
【0056】
図8に示すように、レーザ光ILは、ケース本体12と封口板14との境界に対して封口板14の外表面側から照射される。仮溶接工程S42では、予め定められた位置(例えば4箇所以上20箇所以下程度、好ましくは8箇所以上16箇所以下)において、ケース本体12と封口板14とが完全に溶融しない程度のレーザ溶接を実施する。例えば、仮溶接工程S42は、予め定められた位置において、封口板14の中央側から外縁側に向けてレーザ光を走査することにより実施することができる。あるいは、仮溶接工程S42は、予め定められた位置において、封口板14の外縁側から中央側に向けてレーザ光を走査することにより実施することができる。仮溶接工程S42におけるレーザ溶接の条件については、特に限定されない。レーザ光の角度(レーザ照射方向と封口板14の外表面14b(水平面)とのなす角のうち小さい方の角度)は、例えば、80°以上87°以下であることが好ましく、80°以上85°以下であることがより好ましい。また、レーザの出力値は、1000W以上5000W以下であることが好ましく、2000W以上4000W以下であることがより好ましい。また、特に限定されないが、レーザの走査速度は、100mm/秒~200mm/秒であってもよく、150mm/秒~180mm/秒であることが好ましい。
【0057】
ここに開示される製造方法では、仮溶接工程S42で仮溶接される部分は、仮溶接工程で用いられるレーザの光吸収率が他の部分よりも高くなっていることが好ましい。仮溶接工程S42では、上記したとおり、ケース本体12と封口板14とを完全に溶融させないため、溶融池が形成されない。このため、上記したようなレーザ抜けや、レーザ光ILの反射光RLが生じやすい。すなわち、仮溶接工程S42ではケース内部にレーザ光が進入しやすい。したがって、少なくとも仮溶接工程S42で溶接する位置において表面処理部80が設けられていることにより、レーザ光がケース内部に進入することをより好適に抑制することができる。
【0058】
本溶接工程S44では、ケース本体12と封口板14との境界に沿ってレーザ光を走査し、ケース本体12と封口板14とを全周溶接する。これにより、ケース本体12と封口板14との境界に溶接部10wが形成されるとともに、電池ケース10を気密に封止することができる。
【0059】
図8に示すように、レーザ光ILは、ケース本体12と封口板14との境界に対してケース本体12の外表面側から照射される。本溶接工程S44では、ケース本体12の構成金属と封口板14の構成金属とが溶融されて、溶融池が形成される。本溶接工程S44におけるレーザ溶接の条件については、特に限定されない。レーザ光の角度(レーザ照射方向と封口板14の外表面14b(水平面)とのなす角のうち小さい方の角度)は、例えば、80°以上87°以下であることが好ましく、80°以上85°以下であることがより好ましい。また、レーザの出力値は、1000W以上5000W以下であることが好ましく、2000W以上4000W以下であることがより好ましい。また、特に限定されないが、レーザの走査速度は、100mm/秒~200mm/秒であってもよく、150mm/秒~180mm/秒であることが好ましい。
【0060】
<変形例>
上記した実施形態では、ケース本体12の開口周縁部12dの内壁面12eと封口板14の側面14dとが対向するように、封口板14がケース本体12の開口12hに装着される。しかし、ここに開示される技術は上記した実施形態に限定されない。
図9は、変形例に係る二次電池200の
図8対応図である。なお、
図9では、説明のためにケース本体212と封口板214との隙間をあえて大きく描いている。二次電池200では、ケース本体212の開口周縁部212dの上端212fと封口板214の内表面214aとが対向するように、封口板214がケース本体212に装着されている。ケース本体212の開口周縁部212dの上端212fと封口板214の内表面214aとを突き合せた場合、
図9に示すように、溶接工程S40ではケース本体212と封口板214との境界に対して略水平にレーザ光ILを照射する。封口板214とケース本体212との間に、上記したような寸法公差等に起因するわずかな隙間が存在している場合、照射されたレーザ光ILは、封口板214とケース本体212との間で反射して、反射光RLがケース内部に進入する虞がある。そこで、二次電池200では、開口周縁部212dの上端212fと封口板214の内表面214aとが対向する領域の少なくとも一部において、溶接工程S40において用いられるレーザの光吸収率が高くなるように表面処理された表面処理部280を有している。表面処理部280は、開口周縁部212dの上端212fおよび封口板214の内表面214aうち、いずれか一方に形成されていてもよいし、開口周縁部12dの上端212fおよび封口板214の内表面214aの両方に形成されていてもよい。かかる表面処理部280は、波長300nm~1100nmの範囲における光吸収率が60%以上となるように黒色に表面処理されていることが好ましく、光吸収率が75%以上となるように黒色に表面処理されていることがより好ましい。かかる表面処理部280は、光吸収率が100%となるように実施されてもよいが、実用的には光吸収率が95%以下程度となるように表面処理されているとよい。かかる表面処理部280は、溶接工程S40よりも前工程において、上記したような表面処理工程S20を実施することにより形成することができる。
【0061】
<電池の用途>
上述した電池は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。電池は、組電池の構築においても好適に用いることができる。
【0062】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0063】
<実施例1>
まず、正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのPVdFとを用意した。これらを溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)中で混合し、正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、長尺状のアルミニウム箔の両面に帯状に塗布して乾燥し、正極シートを作製した。次いで、負極活物質としての黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを用意した。これらを溶媒としてのイオン交換水中で混合して、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、長尺状の銅箔の両面に帯状に塗布して乾燥し、負極シートを作製した。そして、セパレータシートとしては、PE製の基材部の表面に、アルミナとPVdFとを含む耐熱層を備えたものを2枚用意した。作製した正極シートと負極シートとを、セパレータシートを介して対向させて積層し、巻回して電極体を作製した
【0064】
次に、底面に対向する一側面に開口を有する有底のケース本体と、該開口を封口する矩形状の封口板とを用意した。実施例1では、油性ペンを用いて封口板の側面を黒色に着色した。黒色に着色した部分(すなわち、封口板の側面)の光吸収率を分光光度計によって測定した。結果を表1に示す。その後、上記作製した巻回電極体をケース本体に収容して、ケース本体の開口周縁部と封口板の側面とが対向するように、封口板をケース本体に装着した。
【0065】
実施例1では、封口板の側面と開口周縁部の内壁面との距離(隙間量)が0.1mmとなるように調整した。具体的には、ケース本体と封口板との間にSUS板を挟み込み、隙間量を調節した。そして、高出力ファイバレーザを用いて、開口周縁部と封口板周縁部との境界を仮溶接した。具体的には、発振器出力:3000W、溶接速度:150mm/秒、焦点距離:0mm、角度:+7deg(83°)の条件で、合計16か所にレーザ光を照射した。仮溶接後に電池を解体して、電極体の損傷の有無を確認した。結果を表1に示す。なお、表1の「角度(deg)」では、電池ケースの中心から外側に向かう角度はマイナス(-)で示し、電池ケースの外側から中心に向かう角度はプラス(+)で示している。
【0066】
<実施例2および実施例3>
隙間量(mm)と角度(deg)とを、表1に示すようにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして開口周縁部と封口板周縁部との境界を仮溶接した。結果を表1に示す。
【0067】
<比較例1~比較例3>
比較例1~比較例3では、封口板の側面を黒色に着色しなかった。また、隙間量(mm)と照射角度(deg)とは、表1に示すようにそれぞれ変更した。これらのこと以外は実施例1と同様にして開口周縁部と封口板周縁部との境界を仮溶接した。結果を表1に示す。
【0068】
【0069】
表1に示すように、封口板の側面を黒色に着色した実施例1~実施例3では、電極体が損傷していないことがわかる。これは、封口板の側面を黒色に着色することで、溶接工程において用いるレーザの光吸収率が高くなり、レーザ光が好適に吸収されたことによるものと推測される。
【0070】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0071】
以上のとおり、ここに開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:一側面が開口した有底のケース本体と、該開口を封口する封口板と、正極および負極を有する電極体とを用意する工程と、上記電極体を上記ケース本体の内部に収容し、上記ケース本体の上記開口に上記封口板を装着して、蓄電デバイスを組み立てる工程と、上記ケース本体と上記封口板との境界に対して上記封口板の外表面側からレーザ光を照射し、上記ケース本体と上記封口板とをレーザ溶接する工程とを含み、上記ケース本体の開口周縁部と上記封口板とが対向する領域のうち少なくとも一部は、上記溶接工程で用いられるレーザの光吸収率が他の部分よりも高い、蓄電デバイスの製造方法。
項2:上記溶接工程は、上記ケース本体と上記封口板との境界のうち、予め定められた部分に対して上記封口板の外表面側からレーザ光を照射し、上記ケース本体と上記封口板とを仮溶接する仮溶接工程と、上記ケース本体と上記封口板との境界に沿ってレーザ光を走査し、上記ケース本体と上記封口板とを全周溶接する本溶接工程とを含み、上記ケース本体の開口周縁部と上記封口板とが対向する領域のうち、上記仮溶接工程で仮溶接される部分は、上記仮溶接工程で用いられるレーザの光吸収率が他の部分よりも高い、項1に記載の製造方法。
項3:上記ケース本体の開口周縁部と上記封口板とが対向する領域のうち少なくとも一部はは、波長300nm~1100nmの光に対する光吸収率が高くなるように黒色に表面処理されている、項1または項2に記載の製造方法。
項4:一側面が開口した有底のケース本体と、上記ケース本体の開口周縁部に溶接された封口板と、上記ケース本体の内部に収容された電極体とを備え、上記ケース本体の開口周縁部と上記封口板とが対向する領域のうち少なくとも一部において、波長300nm~1100nmの光に対する光吸収率が他の部位よりも高くなるように黒色に処理された表面処理部を有している、蓄電デバイス。
項5:上記表面処理部は、波長300nm~1100nmの光に対する光吸収率が60%以上である、項4に記載の蓄電デバイス。
項6:上記ケース本体および上記封口板はアルミニウムから構成されており、上記表面処理部はアルマイト被膜から構成される、項4または項5に記載の蓄電デバイス。
項7:上記表面処理部が黒色着色剤を含む黒色着色層である、項4~項6のいずれか一つに記載の蓄電デバイス。
【符号の説明】
【0072】
10 電池ケース
10w 溶接部
12 ケース本体
12a 底面
12b 長側壁
12c 短側壁
12d 開口周縁部
12e 内壁面
12f 支持部
12h 開口
14 封口板
14a 内表面
14b 外表面
14d 側面
14f 支持部
20 電極体
22 正極シート
24 負極シート
26 セパレータ
30 正極端子
40 負極端子
50 正極集電部
60 負極集電部
80 表面処理部
100 二次電池
110 把持部材
120 レーザ照射装置
200 二次電池
212 ケース本体
212d 開口周縁部
212f 上端
214 封口板
214a 内表面
280 表面処理部