(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104360
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】洗掘防止部材、これを設置する設置方法および洗掘防止方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/52 20060101AFI20240729BHJP
E02D 27/42 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
E02D27/52 Z
E02D27/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008517
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】道前 武尊
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA31
2D046DA61
(57)【要約】
【課題】水底に構築される基礎構造物の周囲に隙間なく設置可能な洗掘防止部材、これを設置する設置方法および洗掘防止方法を提供する。
【解決手段】
この洗掘防止部材10は、洗掘防止のため基礎構造物5の周囲の水底に設置されるもので、多数の石材を収容する矩方体状の石材収容部11と、圧縮により閉じられる空洞状の複数の被圧縮部12a~12eと、複数の被圧縮部を圧縮し閉じて石材収容部を基礎構造物の外周に追従して変形するように絞り込むための絞り込み機構25と、を備え、石材収容部は隔壁13,13aにより区切られた複数の区画部11a~11fから構成され、複数の被圧縮部のそれぞれは、隣接する区画部間に位置し、石材収容部が基礎構造物の周囲の水底近傍に配置された状態で絞り込み機構により隣接する区画部間の各被圧縮部が閉じられることで石材収容部が絞り込まれて基礎構造物の外周5aに隙間なく接する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗掘防止のため基礎構造物の周囲の水底に設置される洗掘防止部材であって、
多数の石材を収容する矩方体状の石材収容部と、
圧縮により閉じられる空洞状の複数の被圧縮部と、
前記複数の被圧縮部を圧縮し閉じて前記石材収容部を基礎構造物の外周に追従して変形するように絞り込むための絞り込み機構と、を備え、
前記石材収容部は隔壁により区切られた複数の区画部から構成され、
前記複数の被圧縮部のそれぞれは、隣接する前記区画部間に位置し、
前記石材収容部が前記基礎構造物の周囲の水底近傍に配置された状態で前記絞り込み機構により前記隣接する区画部間の前記各被圧縮部が閉じられることで前記石材収容部が絞り込まれて前記基礎構造物の外周に隙間なく接するように構成された洗掘防止部材。
【請求項2】
前記被圧縮部は、前記隣接する区画部間において平面形状が前記基礎構造物側に一辺を有しかつ前記基礎構造物の反対側に頂点を有する略三角形状に構成され、前記圧縮により前記一辺が閉じられる請求項1に記載の洗掘防止部材。
【請求項3】
前記絞り込み機構は、前記石材収容部の一端および他端の前記基礎構造物側にそれぞれ固定された第1および第2の一対のロープ保持部材と、前記第1および第2の一対のロープ保持部材に保持されてそれぞれ互いに反対方向に引っ張り可能な少なくとも2本の絞り込み用ロープと、を備え、前記絞り込み用ロープをそれぞれ一方向とその反対方向とに引っ張ることで前記石材収容部を絞り込む請求項1に記載の洗掘防止部材。
【請求項4】
前記絞り込み機構は、前記絞り込み用ロープが引っ張られて前記石材収容部が絞り込まれた後に緩む方向に移動することを規制するロープ移動規制機構を備える請求項3に記載の洗掘防止部材。
【請求項5】
前記石材収容部は、繊維製、樹脂製または鋼製の網状部材から構成され、矩方体状に保たれるように構成される請求項1に記載の洗掘防止部材。
【請求項6】
前記複数の被圧縮部は、前記隔壁に設けられた拘束部材により前記閉じられる方向と反対方向に開かないように拘束されかつ上下方向に開かないように拘束されている請求項1に記載の洗掘防止部材。
【請求項7】
前記拘束部材は、前記被圧縮部内に横方向および縦方向に配置された繊維材料または樹脂材料から構成される請求項5に記載の洗掘防止部材。
【請求項8】
前記被圧縮部は圧縮変形容易部材から構成される請求項1に記載の洗掘防止部材。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の洗掘防止部材を設置する設置方法であって、
前記洗掘防止部材の吊り上げおよび吊り下げを行う吊り装置と、前記絞り込み機構の絞り込み用ロープを引っ張る引張装置と、前記吊り装置と前記引張装置とを配置した吊具本体と、を有する洗掘防止部材設置装置を準備し、
前記吊具本体を前記基礎構造物の上部に載置して前記洗掘防止部材設置装置を設置するステップと、
前記吊り装置により前記洗掘防止部材を水底近傍まで吊り下げるステップと、
前記引張装置により前記絞り込み用ロープを引っ張ることで前記洗掘防止部材を絞り込むステップと、を含み、
前記絞り込みにより前記洗掘防止部材を前記基礎構造物の外周に隙間なく接するようにして水底に設置する洗掘防止部材の設置方法。
【請求項10】
前記吊り装置により前記洗掘防止部材を水底までいったん吊り下げてから所定高さまで浮かせた状態にした後に、前記絞り込み用ロープの引っ張りを行う請求項9に記載の洗掘防止部材の設置方法。
【請求項11】
前記洗掘防止部材を水底近傍まで吊り下げた時に前記洗掘防止部材の自重により前記絞り込み用ロープに引っ張り力が作用するように前記絞り込み用ロープの長さを予め調整しておき、
前記洗掘防止部材が前記水底近傍まで吊り下げられた時に前記絞り込み用ロープの引っ張り力により自動的に絞り込まれる請求項9に記載の洗掘防止部材の設置方法。
【請求項12】
前記絞り込み用ロープによる絞り込みの終了後に前記吊り装置の吊り部材と前記絞り込み用ロープとを自動切離装置により前記洗掘防止部材から切り離す請求項9に記載の洗掘防止部材の設置方法。
【請求項13】
複数一組の前記洗掘防止部材について前記吊り下げステップを同時に行い、次に、前記絞り込みステップを同時に行い、
前記複数一組の洗掘防止部材を前記基礎構造物の外周を包囲しその外周に接するようにして水底に設置する請求項9に記載の洗掘防止部材の設置方法。
【請求項14】
請求項9に記載の洗掘防止部材の設置方法により前記洗掘防止部材を前記基礎構造物の周囲に設置する洗掘防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎構造物の周囲に設置される洗掘防止部材、この洗掘防止部材を設置する設置方法および洗掘防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電設備の施工において、
図1のように、モノパイル5などの基礎構造物が海底Sに打設等により構築されると、基礎構造物の周りの流れが変化し、流速の増加や渦の発生によって、基礎構造物の周囲の地盤が洗掘される洗掘現象が発生することがある。特に、洋上風力発電設備のモノパイル5は直径が10m程度と大きく、流れの変化が大きいため洗掘が発生する可能性が高くなるので、洗掘防止対策が重要となる。欧州では、洗掘現象の防止のため海底に石材を直接投入し、フィルター層やアーマー層と呼ばれる層を構築している。
【0003】
特許文献1は、水中基礎から離した状態で吊り降ろした洗掘防止部材を、水底で水中基礎に密着させて設置できる洗掘防止部材設置用装置の提供を目的とし、洗掘防止部材設置用装置を、塔状の水中基礎を囲うように所定の離隔を持たせた枠材と、枠材を吊り下げる設置用天秤と、移動手段である回動支持部とで構成する。枠材は上段枠材と下段枠材からなる2段構造であり、回動支持部は下段枠材とヒンジ部を介して連結されて枠材の外側方向に張出す。回動支持部の外側の先端部付近と設置用天秤とは、上段枠材の外側に設けた滑車を介して線材で接続される。洗掘防止部材は回動支持部の外側の先端部付近に吊り下げられ、線材によって回動支持部を回動させることで、洗掘防止部材を枠材の外側から内側方向に向けて移動させることを開示する(要約)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
国内においては石材を直接投入することによって発生する濁りによる環境問題や欧州のように石材投入用の専用船が無いことなどの理由から欧州と同様の構造や施工方法を採用することが困難である。そこで、国内の防波堤などで利用されているキョーワ株式会社から販売のフィルターユニットや前田工繊株式会社から販売のパワフルユニット(登録商標)などの洗掘防止部材(ロックバッグ)をモノパイルの周りに設置する方法がある。しかし、洗掘防止部材の平面形状は円形のものが大半であるため、かかる洗掘防止部材を円形のモノパイルの外周に接するように配置しても以下の問題点が発生する。
【0006】
図2(a)(b)のモノパイルおよびその周囲を示す上面図およびb-b線方向の断面図に示すように、円形のモノパイル5に対し円形状の複数の洗掘防止部材1a~1d,1,・・・をモノパイル5の外周5aに接するように配置すると、モノパイル5の外周5aと洗掘防止部材1a,1bおよび1c,1dとの間にそれぞれ隙間2が生じてしまう。また、洗掘防止部材1a,1bおよび1c,1d同士が重なり合うことによって隙間3が生じる。隙間2,3は、隣接する2つの洗掘防止部材1a~1d,1,・・・においてそれぞれ生じる。かかる隙間は、洗掘防止のためには限りなく少ない方が有効であり、洗掘防止部材をモノパイル5の外周に隙間ができるだけ低減するように配置することが必要である。また、特許文献1は、円形の複数の洗掘防止部材を水中基礎の周囲に設置するが、その
図4(a)に示される設置形態は、上記
図2(a)と同様である。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、水底に構築されるモノパイルのような基礎構造物の周囲に隙間なく設置可能な洗掘防止部材、これを設置する設置方法および洗掘防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための洗掘防止部材は、洗掘防止のため基礎構造物の周囲の水底に設置される洗掘防止部材であって、
多数の石材を収容する矩方体状の石材収容部と、圧縮により閉じられる複数の被圧縮部と、前記複数の被圧縮部を圧縮し閉じて前記石材収容部を基礎構造物の外周に追従して変形するように絞り込むための絞り込み機構と、を備え、
前記石材収容部は隔壁により区切られた複数の区画部から構成され、前記複数の被圧縮部のそれぞれは、隣接する前記区画部に接合され、
前記石材収容部が前記基礎構造物の周囲の水底近傍に配置された状態で前記絞り込み機構により前記隣接する区画部間の前記各被圧縮部が閉じられることで前記石材収容部が絞り込まれて前記基礎構造物の外周に隙間なく接するように構成されたものである。
【0009】
この洗掘防止部材によれば、洗掘防止部材の石材収容部が基礎構造物の周囲の水底近傍に配置された状態で、絞り込み機構により隣接する区画部間に位置する各被圧縮部が圧縮されて閉じられることで石材収容部が基礎構造物の外周に追従して変形するように絞り込まれて基礎構造物の外周に限りなく隙間が無い状態で密着する。これにより、洗掘防止部材を基礎構造物の周囲に隙間なく設置することができる。
【0010】
上記洗掘防止部材において、前記被圧縮部は、前記隣接する区画部間において平面形状が前記基礎構造物側に一辺を有しかつ前記基礎構造物の反対側に頂点を有する略三角形状に構成され、前記圧縮により前記一辺が閉じられるようにすることが好ましい。
【0011】
また、前記絞り込み機構は、前記石材収容部の一端および他端の前記基礎構造物側にそれぞれ固定された第1および第2の一対のロープ保持部材と、前記第1および第2の一対のロープ保持部材に保持されてそれぞれ互いに反対方向に引っ張り可能な少なくとも2本の絞り込み用ロープと、を備え、前記絞り込み用ロープをそれぞれ一方向とその反対方向とに引っ張ることで前記石材収容部を絞り込むように構成できる。
【0012】
また、前記絞り込み用ロープは、引っ張られて前記石材収容部が絞り込まれた後に緩む方向に移動することを規制するロープ移動規制機構を備えることにより、絞り込み用ロープの引っ張りで石材収容部が絞り込まれた状態を保つことができる。
【0013】
また、前記石材収容部は、繊維製、樹脂製または鋼製の網状部材から構成され、矩方体状に保たれるように構成されることが好ましい。
【0014】
また、前記複数の被圧縮部は、前記隔壁に設けられた拘束部材により前記閉じられる方向と反対方向に開かないように拘束されかつ上下方向に開かないように拘束されていることが好ましい。なお、前記拘束部材は、前記被圧縮部内に横方向および縦方向に配置された繊維材料または樹脂材料から構成されることが好ましい。
【0015】
また、前記被圧縮部は、空洞状であってよいが、圧縮変形容易部材から構成されてもよい。これにより、被圧縮部が圧縮されたとき圧縮変形容易部材が容易に圧縮されることで、仮に被圧縮部が完全に閉じないときでも被圧縮部に空洞部分が残らない。
【0016】
上記目的を達成するための洗掘防止部材の設置方法は、上述の洗掘防止部材を設置する設置方法であって、
前記洗掘防止部材の吊り上げおよび吊り下げを行う吊り装置と、前記絞り込み機構の絞り込み用ロープを引っ張る引張装置と、前記吊り装置と前記引張装置とを配置した吊具本体と、を有する洗掘防止部材設置装置を準備し、
前記吊具本体を前記基礎構造物の上部に載置して前記洗掘防止部材設置装置を設置するステップと、前記吊り装置により前記洗掘防止部材を水底近傍まで吊り下げるステップと、前記引張装置により前記絞り込み用ロープを引っ張ることで前記洗掘防止部材を絞り込むステップと、を含み、
前記絞り込みにより前記洗掘防止部材を前記基礎構造物の外周に隙間なく接するようにして水底に設置するものである。
【0017】
この洗掘防止部材の設置方法によれば、吊り装置により洗掘防止部材を水底近傍まで吊り下げ、次に、引張装置により絞り込み用ロープを引っ張って洗掘防止部材の石材収容部を絞り込むことで、洗掘防止部材が水底に達する前に石材収容部の絞り込みを行うことができる。これにより、洗掘防止部材を基礎構造物の外周に限りなく隙間が無い状態で密着するようにして水底に設置できるとともに、基礎構造物の外周に隙間なく設置することができる。
【0018】
上記洗掘防止部材の設置方法において、前記吊り装置により前記洗掘防止部材を水底までいったん吊り下げてから所定高さまで浮かせた状態にした後に、前記絞り込み用ロープの引っ張りを行うことが好ましい。
【0019】
また、前記洗掘防止部材を水底近傍まで吊り下げた時に前記洗掘防止部材の自重により前記絞り込み用ロープに引っ張り力が作用するように前記絞り込み用ロープの長さを予め調整しておき、前記洗掘防止部材が前記水底近傍まで吊り下げられた時に前記絞り込み用ロープの引っ張り力により自動的に絞り込まれるようにしてもよい。
【0020】
また、前記絞り込み用ロープによる絞り込みの終了後に前記吊り装置の吊り部材と前記絞り込み用ロープとを自動切離装置により前記洗掘防止部材から切り離すことが好ましい。
【0021】
また、複数一組の前記洗掘防止部材について前記吊り下げステップを同時に行い、次に、前記絞り込みステップを同時に行い、前記複数一組の洗掘防止部材を前記基礎構造物の外周を包囲しその外周に接するようにして水底に設置することが好ましい。複数一組の洗掘防止部材を、基礎構造物の外周を包囲しその外周に限りなく隙間が無い状態で密着するように設置することができる。
【0022】
上記目的を達成するための洗掘防止方法は、上述の洗掘防止部材の設置方法により前記洗掘防止部材を前記基礎構造物の周囲に設置するものである。
【0023】
この洗掘防止方法によれば、洗掘防止部材を、基礎構造物の外周を包囲しその外周に隙間なく設置できるので、基礎構造物の周囲において洗掘現象の発生を効率的に防止することができる。
【0024】
なお、本明細書において基礎構造物とは、水底に構築される構造物を意味する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、水底に構築されるモノパイルのような基礎構造物の周囲に隙間なく設置可能な洗掘防止部材、これを設置する設置方法および洗掘防止方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】海底に設置されたモノパイルなどの基礎構造物の周囲における洗掘現象を説明するための概略図である。
【
図2】
図1のモノパイルの周囲に従来の円形状の洗掘防止部材を複数配置した状態を示す上面図(a)およびb-b線方向の断面図(b)である。
【
図3】本実施形態による洗掘防止部材を示す上面図(a)、洗掘防止部材を基礎構造物であるモノパイルの周囲に設置した状態を示す上面図(b)、洗掘防止部材をC-C線の矢印方向に見た図(c)、洗掘防止部材をD-D線の矢印方向に見た図(d)、および、洗掘防止部材の隣接する区画部間の被圧縮部を示す拡大図(e)である。
【
図4】
図3(a)の洗掘防止部材に設けられた絞り込み機構を説明するための要部上面図である。
【
図5】
図4の石材収容部の一端に固定された第1の輪状の一対のロープ保持部材および絞り込み用ロープに設けられた一対の固定部材を絞り込み前の状態で示す要部上面図(a)、同じく絞り込み後の状態で示す要部断面図(b)、輪状のロープ保持部材を
図5(a)の横方向から見た図(c)および固定部材を
図5(a)の横方向から見た図(d)である。
【
図6】
図3,
図4の複数一組の洗掘防止部材を、基礎構造物であるモノパイルを包囲するように配置した状態を示す上面図(a)および各洗掘防止部材を絞り込んでモノパイルの全周に隙間なく接するように設置した状態を示す上面図(b)である。
【
図7】本実施形態においてモノパイルの上端に設置される洗掘防止部材設置装置の吊具本体および吊具本体から吊り下げられた洗掘防止部材を示す側断面図(a)および海底に設置された洗掘防止部材を示す側断面図(b)である。
【
図8】
図7(a)の洗掘防止部材設置装置の吊具本体の上面図である。
【
図9】
図7(a)(b),
図8の洗掘防止部材設置装置を用いて
図3の洗掘防止部材を海底に設置する各工程を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図9の洗掘防止部材の設置方法のさらに別の例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図3は本実施形態による洗掘防止部材を示す上面図(a)、洗掘防止部材を絞り込んで基礎構造物であるモノパイルの周囲に設置した状態を示す上面図(b)、洗掘防止部材をC-C線の矢印方向に見た図(c)、洗掘防止部材をD-D線の矢印方向に見た図(d)、および、洗掘防止部材の隣接する区画部間の被圧縮部を示す拡大図(e)である。
【0028】
[洗掘防止部材]
本実施形態による洗掘防止部材10は、
図3(a)~(e)のように、多数の石材9を収容する矩方体状の石材収容部11と、圧縮により閉じられる空洞状の複数の被圧縮部12a~12eと、を備える。石材収容部11は、設置対象のモノパイル5の反対側に
図3(a)の縦方向に延びる共通の壁14を有し、壁14と隔壁13,13aにより区切られた複数の区画部11a~11fから構成される。石材収容部11は、繊維製、樹脂製または鋼製の網状部材から構成され、この網状部材から各区画部11a~11fが構成されることで、石材収容部11が全体として矩方体状に保たれるようになっている。なお、隔壁13aは、被圧縮部12a~12eの両側面側に位置する。各区画部11a~11fの上面の隔壁が開閉可能となっており、石材投入後に上面の隔壁が閉じられる。
【0029】
図3(a)(b)(e)のように、被圧縮部12aは、隣接する区画部11a,11bの間に位置し、同様に、被圧縮部12bは区画部11b,11cの間、被圧縮部12cは区画部11c,11dの間、被圧縮部12dは区画部11d,11eの間、被圧縮部12eは区画部11e,11fの間にそれぞれ位置する。各被圧縮部12a~12eは、上面から見て、略二等辺三角形状に形成され、モノパイル5側に二等辺以外の一辺aが位置し、二等辺の頂点bがモノパイル5の反対側に位置し、一辺aによりモノパイル5側に開口している。空洞状の各被圧縮部12a~12eは、それぞれ両側の区画部側から圧縮され、各一辺aによる開口か閉塞されるようにして閉じられるとともに各区画部11a~11fから構成される石材収容部11が湾曲するように変形する。
【0030】
図3(d)(e)のように、被圧縮部12a側の隔壁13aには横方向の複数の拘束部材15aと同じく縦方向の複数の拘束部材15bとが格子状に設けられることで、被圧縮部12aが補強され上下方向に開かないように拘束されている。また、被圧縮部12a内には両隔壁13a,13aを横方向に結ぶように複数の拘束部材16が設けられ、各拘束部材16を連結するように拘束部材16aが設けられ、被圧縮部12aは、一辺aが閉じられる方向と反対方向に開かないように拘束されている。他の被圧縮部12b~12eも同様に構成される。
【0031】
なお、各拘束部材15a,16,16a,16bは、被圧縮部12a~12eが圧縮されて閉じたとき内部に残るので、繊維材や樹脂材等の撓み易い材料からなることが好ましい。また、被圧縮部12a~12eはスポンジ状部材や多孔質部材のような圧縮変形容易部材から構成されてもよい。これにより、被圧縮部12a~12eが圧縮されたとき圧縮変形容易部材が容易に圧縮されることで、仮に被圧縮部12a~12eが完全に閉じないときでも被圧縮部12a~12eに空洞部分が残らない。
【0032】
次に、洗掘防止部材10に設けられた絞り込み機構25による洗掘防止部材10の絞り込みについて
図4を参照して説明する。
図4は、
図3(a)の洗掘防止部材に設けられた絞り込み機構を説明するための要部上面図である。絞り込み機構25は、
図3(a)(c),
図4のように、石材収容部11の一端および他端のモノパイル5側にそれぞれ固定された第1の輪状の一対のロープ保持部材17,17と第2の輪状の一対のロープ保持部材18,18と、を有する。
図4の実線で示す1本の絞り込み用ロープ19が輪状の一対のロープ保持部材17,17に通され、絞り込み用ロープ19の一端と他端とが輪状の一対のロープ保持部材18,18に通されて区画部11fから外部へと延びている。
図4の破線で示す別の1本の絞り込み用ロープ20が輪状の一対のロープ保持部材18,18に通され、絞り込み用ロープ20の一端と他端とが輪状の一対のロープ保持部材17,17に通されて区画部11aから外部へと延びている。なお、絞り込み用ロープ19,20は繊維ロープからなることが好ましい。
【0033】
図4のように、絞り込み機構25の絞り込み用ロープ19の両端を方向Tに、絞り込み用ロープ20の両端を方向Tの反対方向T’に、それぞれ引っ張ることにより、各区画部11a~11fが移動し各被圧縮部12a~12eをそれぞれ圧縮して閉じる。このようにして、石材収容部11がモノパイル5の外周5aに追従して湾曲するように変形して絞り込まれることで、洗掘防止部材10は、
図3(b)のように、各区画部11a~11fの側面が基礎構造物である円形のモノパイル5の外周5aに限りなく隙間が無い状態で密接するようになる。
【0034】
次に、
図4の絞り込み機構25に設けたロープ移動規制機構について
図5を参照して説明する。
図5は、
図4の石材収容部の一端に固定された第1の輪状の一対のロープ保持部材および絞り込み用ロープに設けられた一対の固定部材を絞り込み前の状態で示す要部上面図(a)、同じく絞り込み後の状態で示す要部断面図(b)、輪状のロープ保持部材を
図5(a)の横方向から見た図(c)および固定部材を
図5(a)の横方向から見た図(d)である。
【0035】
図5(a)のように、ロープ移動規制機構は、絞り込み用ロープ19に設けられ固定された
図5(d)の球状の一対の固定部材21,21を有する。固定部材21,21は、石材収容部11の一端の区画部11aよりも内側に位置している。球状の固定部材21の直径rは、
図5(c)の輪状のロープ保持部材17の内径Rよりも大きくなっている。球状の一対の固定部材21,21は、たとえば、ゴムのような弾性体からなり、絞り込み用ロープ19を方向T’に引っ張ると輪状のロープ保持部材17,17の内径部17bに当接し一定の荷重が加えられると弾性変形し、輪状のロープ保持部材17の内径部17bを通過し、区画部11aの端部の隔壁13側に移動する。固定部材21,21は、ロープ保持部材17,17の内径部17bを通過した後は、引張荷重を逆方向に加えない限り元の位置に戻ることはない。
図4の石材収容部11の他端の区画部11f側においても同様の固定部材を絞り込み用ロープ20に固定して設ける。
図5(a)~(d)のロープ移動規制機構によれば、石材収容部11が絞り込まれた後に絞り込み用ロープ19,20が元に戻り緩んで洗掘防止部材10が開くことを防止することができる。
【0036】
なお、
図5(b)の絞り込み後の固定部材21,21の位置で洗掘防止部材10が
図3(b)のようにモノパイル5の外周5aに接して絞り込みが完了するように
図5(a)の絞り込み前の固定部材21,21の初期位置を設定することが好ましい。この場合、
図5(a)(b)のように、区画部11aの内側にもう一対の輪状のロープ保持部材17a,17aを固定し設けてもよい。絞り込み完了位置が、ロープ保持部材17a,17aの位置またはロープ保持部材17,17の位置であってよいので、固定部材21,21の初期位置が若干ばらついても、ロープ移動規制を確実に実現できる。
【0037】
次に、
図3,
図4の洗掘防止部材10を用いてモノパイル5の全周に設置する例について
図6を参照して説明する。
図6は、
図3,
図4の各掘防止部材を、基礎構造物であるモノパイルを包囲するように配置した状態を示す上面図(a)および各洗掘防止部材を絞り込んでモノパイルの全周に隙間なく接するように設置した状態を示す上面図(b)である。
【0038】
図6(a)のように、複数一組の洗掘防止部材10を、上面から見て、モノパイル5の外周5aを包囲するように略正四角形状に配置する。次に、各洗掘防止部材10の両端の各隔壁13から延びた絞り込み用ロープ19,20を図の矢印の4方向に同時にそれぞれ引っ張ることで、各洗掘防止部材10を絞り込んで、
図6(b)のように、各洗掘防止部材10を円形のモノパイル5の外周5aに接するようにして全周に隙間なく設置することができる。このように複数一組の洗掘防止部材10をモノパイル5のような基礎構造物の全周に限りなく隙間が無い状態で密着するように設置することで、基礎構造物の全周において洗掘現象の発生を効率的に防止することができる。
【0039】
なお、
図6(a)(b)のように洗掘防止部材10を円形のモノパイル5の周囲に設置する場合、絞り込まれた各洗掘防止部材10がモノパイル5の外周5aに接しかつ隣接する洗掘防止部材10,10の端部の隔壁13,13が周方向に互いに接するように洗掘防止部材10の全長や被圧縮部12a~12eの形状などを設定することが好ましい。また、洗掘防止部材10の設置個数を変更する場合(たとえば、2つ、3つ、5つ、6つ)、同様に、洗掘防止部材10の全長や被圧縮部12a~12eの形状などを設定する。また、区画部11a~11fは、モノパイル5の外径などに応じてその個数を増減可能であるが、現場の作業性を考慮した上で可能な限り個数を増やすことが望ましい。
【0040】
[洗掘防止部材の設置方法]
次に、洗掘防止部材の設置方法について
図3~
図9を参照して説明する。
図7は、および吊具本体から吊り下げられた洗掘防止部材を示す正面図(a)および海底に設置された洗掘防止部材を示す正面図(b)である。
図8は、
図7(a)の洗掘防止部材設置装置の吊具本体の上面図である。
図9は、
図7(a)(b),
図8の洗掘防止部材設置装置を用いて
図3の洗掘防止部材を海底に設置する各工程を説明するためのフローチャートである。
【0041】
図7(a)(b),
図8のように、洗掘防止部材設置装置30は、各洗掘防止部材10の吊り上げ、吊り下げを行うため吊りワイヤ34を巻き上げ、巻き下げる複数のドラムウィンチ31を有する吊り装置と、絞り込み機構25の各絞り込み用ロープ19,20を複数箇所で引っ張るため巻き上げる複数のドラムウィンチ32を有する引張装置と、とドラムウィンチ32等を固定配置しモノパイル5の上部に載る円板状の吊具本体33と、を備える。また、各洗掘防止部材10には複数の水深計を設け、吊り装置のドラムウィンチ31には吊りワイヤ34の張力計を設け、かかる張力計による張力変化と水深計の数値とに基づいて洗掘防止部材10の水中位置や海底Sへの着底を確認し、吊り下げを停止する。
【0042】
また、
図8のように、吊具本体33は、各洗掘防止部材10を吊り下げるために各ドラムウィンチ31に対応して吊りワイヤ34のための滑車35を有し外側に突き出た吊り部33aと、各洗掘防止部材10の絞り込み用ロープ19,20を巻き上げるために各ドラムウィンチ32に対応して絞り込み用ロープ19,20のための滑車36を有し外側に突き出た吊り部33bと、を備える。また、吊り部33aと、吊り部33bとは、各洗掘防止部材10の絞り込みによる平面位置の移動に応じて滑車35,36を吊具本体33の半径方向に移動させるためにたとえば油圧シリンダー等による移動機構(図示省略)を有することが好ましい。
【0043】
なお、ドラムウィンチ31,32は油圧式または電動式であってよい。また、洗掘防止部材設置装置30の制御操作室を、吊具本体33上または船舶上に配置し、制御操作室にて、洗掘防止部材10の吊り下げや絞り込みやロープ・ワイヤの切り離し操作などを一括管理することで設置に伴う作業工程を大幅に縮減でき、設置作業が容易となる。また、吊具本体33をモノパイル5上に設置することによって、海上クレーンに対し気海象の影響を小さくすることができる。
【0044】
また、吊具本体33をモノパイル5上に設置する際には、モノパイル5が許容誤差範囲内で微小に傾斜し、モノパイル5上の設置高さにおけるモノパイル5の中心位置が見かけの中心位置からずれている場合があるので、吊具本体に設けた傾斜計によりモノパイル5の傾きを計測し、吊具本体33のモノパイル5上の設置高さにおけるモノパイル5の中心位置を求め、その中心位置に吊具本体33を吊具本体33の中心位置と一致するように設置することが好ましい。これにより、複数一組の洗掘防止部材10をモノパイル5の外周5aの複数位置で外周5aに対する間隔w(
図7(a))を均等にして吊り下げることができる。この場合、各吊り部33a,33bの滑車35,36の位置を各洗掘防止部材10の絞り込みによる平面位置の移動に合わせて移動機構により移動させることで間隔wを調整することが好ましい。
【0045】
本実施形態による洗掘防止部材の設置方法について説明すると、
図7(a)(b)、
図8、
図9のように、洗掘防止部材設置装置30を準備し(S01)、施工海域まで運搬してから、まず、海上クレーンを用いて、吊具本体33を吊り上げモノパイル5の上部に載置するようにして設置する(S02)。なお、吊具本体33は、モノパイル5への載置後に、吊具本体33をモノパイル5の側面方向から油圧ジャッキ等によりモノパイル5に把持させるようにして安定して設置できる。
【0046】
次に、ドラムウィンチ31を操作制御して吊りワイヤ34を巻き下げ、各洗掘防止部材10を吊り下げることで、海中を海底に向けて降下させ(S03)、海底Sの近傍まで吊り下げる(S04)。
【0047】
なお、各洗掘防止部材10には、水平に吊り下げるため複数点に吊り部が設けられている。また、事前に敷設対象の海底Sまでの水深を計測し、水深計により洗掘防止部材10の水中位置を確認して海底Sまでの距離を把握し、ドラムウィンチ31による吊りワイヤ34の吊り下げ速度を調整しながら、洗掘防止部材10を海底Sの近傍まで吊り下げることが好ましい。また、各洗掘防止部材10が同じ吊り下げ速度で水深位置をほぼ同じに保ちながら降下するようにドラムウィンチ31を操作制御することが好ましい。
【0048】
また、洗掘防止部材10に作用する波や流れを考慮して、洗掘防止部材10をモノパイル5の外周5aから十分に離隔させて吊り下げることが好ましい。また、洗掘防止部材10を吊り下げている途中は、洗掘防止部材10の絞り込み用ロープ19,20と接続した引っ張り用のウィンチ32に引っ張り力がかからないようにする。
【0049】
次に、ドラムウィンチ32を操作制御して各洗掘防止部材10の絞り込み用ロープ19,20を巻き上げて引っ張る(S05)。かかる引っ張りにより、
図3(b)、
図6(b)のように、洗掘防止部材10を絞り込むことで、洗掘防止部材10がモノパイル5の外周5aに追従して変形し外周5aに隙間なく接する(S06)。なお、各絞り込み用ロープ19,20の引っ張りは一定速度でかつ一定の巻き上げ量となるようにドラムウィンチ32が操作制御されることが好ましい。また、各絞り込み用ロープ19,20の巻き上げ量は、たとえば、各ロープに付けた目盛りにより確認可能である。
【0050】
次に、全体がモノパイル5の外周5aに接した状態の各洗掘防止部材10を、吊りワイヤ34による吊り上げと自重による降下とのバランスをとりながら自重により若干降下させて海底Sに到達させる(S07)。次に、吊りワイヤ34と、絞り込み用ロープ19,20とをそれぞれ、自動切離装置により切り離す(S08)。なお、ワイヤ・ロープの自動切離装置は公知のものを使用でき、たとえば、ワイヤ等のトリガーにテンションを加えることで切り離しを行うタイプ、超音波の電気信号により自動切り離し装置内の開閉機構を動作させるタイプを使用できる。
【0051】
以上のようにして、
図6(b)、
図7(b)のように、各洗掘防止部材10を周囲の海底Sに、モノパイル5の外周5aに対し限りなく隙間が無い状態で密着して設置することができる。
【0052】
次に、洗掘防止部材の設置方法の別の例について説明する。本例は、
図9の破線で示すように、各洗掘防止部材10を吊りワイヤ34により海底Sまでいったん吊り下げて着底させ(S09)、次に、吊りワイヤ34の巻き上げ張力管理を行いながら、吊りワイヤ34により海底Sから少し浮かせた状態にする(S10)。次に、
図9の工程S05~S08と同様にして、各洗掘防止部材10を周囲の海底Sにモノパイル5の外周5aに対し隙間なく設置することができる。本例によれば、各洗掘防止部材10を海底Sから若干浮かせた状態に確実にしてから、洗掘防止部材10の絞り込みを行うことができる。
【0053】
この場合、上述と同様に水深計による水中位置を確認して海底Sまでの水深方向の距離を把握し、ドラムウィンチ31による吊りワイヤ34の吊り下げ速度を調整しながら、洗掘防止部材10を海底Sに到達するまで吊り下げることが好ましい。また、ドラムウィンチ31の張力計により吊りワイヤ34の張力を計測し、計測した張力の変化により海底Sに到達したことを確認し、このタイミングで吊り下げを停止することが好ましい。
【0054】
次に、洗掘防止部材の設置方法のさらに別の例について
図10のフローチャートを参照して説明する。本例が
図9の各工程と異なる点を主に説明すると、モノパイル5の天端の高さと海底Sとの高低差を考慮して、各洗掘防止部材10を海底Sの近傍まで吊り下げた時に各洗掘防止部材10の自重により絞り込み用ロープ19,20に引っ張り荷重が作用するように絞り込み用ロープ19,20の長さを予め調整しておく(S12)。各洗掘防止部材10は、
図9の工程S04と同様に海底Sの近傍まで吊り下げられた時に(S14,S15)、自重により絞り込み用ロープ19,20の引っ張り力により自動的に絞り込まれ(S16)、海底Sに近づくにつれてモノパイル5の外周5aに追従し変形する。このようにして、各洗掘防止部材10を周囲の海底Sにモノパイル5の外周5aに対し限りなく隙間が無い状態で密着して設置することができる。本例によれば、各洗掘防止部材10を海底Sの近傍でその自重により自動的に絞り込むことができる。
【0055】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態では、洗掘防止部材を適用した基礎構造物は上面から見て円形であったが、本発明はこれに限定されず、たとえば、長円状であってもよく、また、部分的に曲率半径を有する形状であってもよく、曲率半径部分に本発明を適用して好ましい。
【0056】
また、本実施形態の基礎構造物は、洋上風力発電設備の基礎構造物であるモノパイルであったが、本発明はこれに限定されず、他用途の基礎構造物であってもよいことはもちろんである。
【0057】
また、
図4の絞り込み機構の絞り込み用ロープ19,20の引っ張り長さは、各洗掘防止部材10が
図3(a)、
図6(a)の絞り込み前の矩方体形状の状態でモノパイル5の外周5aに点接触した状態から絞り込まれて全体が外周5aに隙間なく接するようになるまでの長さに洗掘防止部材10とモノパイル5の外周5aとの間隔wを勘案して決定することが好ましい。
【0058】
また、洗掘防止部材10は、石材収容部11内に、たとえば、最大寸法100~150mm程度の多数の石材を収容し、石材の総重量が1~2トン程度であるので、不陸があっても海底Sに追従して設置され、海底Sとの間に隙間は生じない。
【0059】
また、
図9のS04,
図10のS15における海底Sの近傍の状態と、
図9の破線で示すS10の海底Sから浮かせる状態とは、ともに洗掘防止部材10を海底Sの近くで海底Sに接触させずにスムーズに絞り込みを行うためのものであるので、相違するものではなく同じ状態を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、たとえば洋上風力発電設備のためのモノパイルのような基礎構造物の周囲に洗掘防止部材を隙間なく設置でき、基礎構造物の周囲において洗掘現象の発生を防止できるので、基礎構造物および洋上風力発電設備等を継続的に安定して使用することができる。
【符号の説明】
【0061】
5 モノパイル(基礎構造物)
5a 外周
9 石材
10 洗掘防止部材
11 石材収容部
11a~11f 区画部
12a~12e 被圧縮部
13,13a 隔壁
14 壁
15a,16,16a,16b 拘束部材
17,18 一対のロープ保持部材
19,20 絞り込み用ロープ
21 固定部材
25 絞り込み機構
30 洗掘防止部材設置装置
31,32 ドラムウィンチ
33 吊具本体
33a,33b 吊部
34 吊りワイヤ
35,36 滑車
S 海底
a 被圧縮部の三角形の一辺
b 被圧縮部の三角形の頂点
w 洗掘防止部材とモノパイルの外周との間隔