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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104371
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】管理システム、走行制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20240729BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G08G1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008529
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 駿
(72)【発明者】
【氏名】野澤 優介
(72)【発明者】
【氏名】長川 研太
(72)【発明者】
【氏名】平中 貴士
(72)【発明者】
【氏名】小西 翔太
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA02
5H181AA03
5H181AA07
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181DD01
5H181EE13
5H181FF05
5H181FF13
5H181FF14
5H181MC01
5H181MC16
(57)【要約】
【課題】移動体が立ち往生し難くすることである。
【解決手段】走行領域の路面の状態と移動体が有する走破能力とに基づいて、移動体の走行領域における走行が制御されたり、作業計画が作成されたりする。その結果、移動体が走行領域において立ち往生し難くすることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行領域を走行する複数の移動体を管理する管理システムであって、
複数の移動体の各々の走破能力と前記走行領域の路面の状態である路面状態とに基づいて前記複数の移動体の作業計画を作成する作業計画作成装置を含む管理システム。
【請求項2】
前記作業計画作成装置が、前記複数の移動体の各々の走破能力が、前記路面状態で要求される走破能力より高くなるように、前記複数の移動体の走行順序を決定するものである請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記作業計画作成装置が、前記複数の移動体の走破能力の前記路面状態に対する余裕代が設定余裕代より小さい状態で、前記複数の移動体の走行順序を決定するものである請求項1または2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記複数の移動体が、第1移動体と、前記第1移動体より重量が大きい第2移動体とを含み、
前記作業計画作成装置が、前記走行領域を前記第1移動体が前記第2移動体より先に走行するよう、前記複数の移動体の走行順序を決定するものである請求項1または2に記載の管理システム。
【請求項5】
前記作業計画作成装置が、予め定められた作業量の作業が終了するまでに、前記複数の移動体のうちの少なくとも1台が前記走行領域を走破不能になると推定された場合に、前記路面の補修が行われるように前記作業計画を作成する請求項1または2に記載の管理システム。
【請求項6】
前記作業計画作成装置が、予め定められた作業量の作業が終了するまでに、設定時間の間に設定台数以上の移動体の走行が要求される場合に、前記路面の補修が行われるように前記作業計画を作成する請求項1または2に記載の管理システム。
【請求項7】
前記作業計画作成装置が、前記走行領域の前記路面状態を、1台の前記移動体の走行により前記路面に与えるダメージを累積することにより取得する請求項1または2に記載の管理システム。
【請求項8】
1台の前記移動体の走行により前記路面に与えるダメージが、イベントが起きた場合には前記イベントが起きない場合より大きい値として決定される請求項7に記載の管理システム。
【請求項9】
前記移動体の各々の走破能力が、イベントが起きた場合には前記イベント起きない場合より低い値に決定される請求項1または2に記載の管理システム。
【請求項10】
前記イベントが、降雨、降雪、散水のうちの1つである請求項8に記載の管理システム。
【請求項11】
前記イベントが起きた後の前記走行領域の走破能力が、前記イベントが起きた後の気象情報に基づいて決まる請求項8に記載の管理システム。
【請求項12】
前記作業計画作成装置が、イベントが起きた後、設定時間が経過するまでの間、重量が重量しきい値より大きい移動体の走行を制限して、前記作業計画を作成する請求項1または2に記載の管理システム。
【請求項13】
前記作業計画作成装置が、前記走行領域の前記路面状態を、1台の前記移動体の走行により前記路面に与えるダメージを累積することにより取得し、前記複数の移動体の各々の走破能力が、前記取得した路面状態で要求される走破能力より高くなるように、前記複数の移動体の走行順を決定するとともに、
(i)前記1台の移動体の走行により前記路面に与えるダメージが、イベントが起きた場合には前記イベントが起きない場合より大きい値として決定されることと、(ii)前記移動体の各々の走破能力が、イベントが起きた場合には前記イベントが起きない場合より低い値として決定されることとの少なくとも一方とする請求項1に記載の管理システム。
【請求項14】
移動体の走行を制御する走行制御システムであって、
前記移動体の走破能力と前記移動体の前方に位置する走行領域の路面状態とに基づいて、前記移動体が前記走行領域を走破不能である場合に、前記移動体が前記走行領域を走行しないようにする走行制御装置を含む走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動体を管理する管理システム、移動体の走行を制御する走行制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、舗装道路を走行する車両の挙動に基づいて路面の状態としての凹凸(ポットホール)が取得されること、路面の劣化の程度に応じて道路の補修が行われることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-013537号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、移動体が立ち往生し難くすることである。
【課題を解決するための手段、作用および効果】
【0005】
本発明によれば、走行領域の路面の状態と移動体が有する走破能力とに基づいて、移動体の走行領域への走行が制御されたり、作業計画が作成されたりする。その結果、移動体が走行領域において立ち往生し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施例1に係る管理システム全体を概念的に示す図である。本管理システムは、本発明の実施例1に係る走行制御システムでもある。
図2】上記管理システムによって管理される移動体(走行制御システムにおける制御対象である移動体)の各々が路面に与えるダメージ、走破能力を概念的に示す図である。
図3】上記移動体が走行する走行領域のダメージの累積値と移動体の走破能力との関係を示す図である。
図4】上記移動体が走行する走行領域のダメージの累積値と移動体の走破能力との別の関係を示す図である。
図5】上記移動体が走行する走行領域のダメージの累積値と移動体の走破能力とのさらに別の関係を示す図である。
図6】上記移動体が走行する走行領域のダメージの累積値に対する走破能力の余裕代の時間に対する変化態様の一例を示す図である。
図7】上記移動体が走行する走行領域のダメージの累積値に対する走破能力の余裕代の時間に対する別の変化態様を示す図である。
図8】上記管理システムの管理ECUの記憶部に記憶された作業計画作成プログラムを表すフローチャートである。
図9】上記移動体が走行する走行領域のダメージの累積値と移動体の走破能力との別の関係を示す図である。
図10】上記管理システムに含まれる中央管制装置の管制ECUに記憶された設定時間決定プログラムを表すフローチャートである。
図11】走破能力決定マップである。
図12】路面が受けるダメージの決定マップである。
図13】本発明の実施例2に係る走行制御システムの複数の移動体を概念的に示す図である。
図14】上記走行制御システムを概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態に係る管理システムについて図面に基づいて説明する。本管理システムは、本発明の一実施形態に係る走行制御システムでもある。
【実施例0008】
本実施例に係る管理システムは、図1に示すように、例えば、鉱山等で作業を行う複数の移動体Vと通信可能な管制装置としての中央管制装置S、1つ以上のアンテナA等を含む。これら複数の移動体Vと中央管制装置Sとは、直接またはアンテナAを介して無線の通信を行う。
【0009】
複数の移動体Vは、例えば、図2に示すように、1台以上の大型移動体(例えば、重機、大型ダンプトラック)HV、1台以上の中型移動体(例えば、中型ダンプトラック)MV,1台以上の小型移動体(例えば、小型トラック)LV等を含む。本実施例において、これら大型移動体HV、中型移動体MV,小型移動体LV等を総称して、または、区別することなく個別に単に移動体Vと称する場合がある。
【0010】
大型移動体HVは、例えば、移動体Vの重量(移動体自体の重量と積載重量との和である総重量または移動体自体の重量をいう。以下、同様とする。)が第1設定重量より大きい移動体とし、中型移動体は、第1設定重量以下、第1設定重量より小さい第2設定重量より大きい移動体とし、小型移動体は、第2設定重量以下の移動体とすることができる。
【0011】
大型移動体HV,中型移動体MV,小型移動体LVの各々は、それぞれ、中央管制装置Sからの指令に基づいて走行等させられる自動走行移動体Vであっても、運転者による運転操作により走行可能なマニュアル運転移動体Vであってもよい。
【0012】
複数の移動体Vは、作業において予め定められた領域を走行するものであるが、走行領域とは、上述の予め定められた領域全体であっても、上述の予め定められた領域の一部であってもよい。
【0013】
複数の移動体Vの各々は、それぞれ、図1に示すように、移動体Vを駆動する駆動装置D、移動体Vを制動する制動装置B、移動体Vの操舵輪を転舵する転舵装置T、GPS(Global Positioning System)受信機10、周辺情報取得装置12、移動体通信装置14、移動体ECU20等を含む。
【0014】
駆動装置Dは、例えば、複数の車輪28のうちの複数の駆動輪に連結された駆動源としての電動機を含むものとすることができる。また、電動機に対応して駆動回路(例えば、インバータ)が設けられるが、駆動回路の制御により、複数の駆動輪に加えられる駆動力が制御され、移動体Vに加えられる駆動力が自動で制御される。
【0015】
なお、駆動装置Dは、電動機に加えて、または、電動機に代えてエンジン等を含むものとすることもできる。
【0016】
制動装置Bは、例えば、複数の車輪28(図2参照)の各々に対応して設けられ、摩擦係合部材を車輪28と一体的に回転可能なブレーキ回転体に押し付けることにより車輪28の回転を抑制する摩擦ブレーキと、複数の摩擦ブレーキの各々の押付力を制御可能な押付力制御アクチュエータとを含むものとすることができる。押付力制御アクチュエータの制御により、複数の車輪28の各々に設けられた摩擦ブレーキの押付力が制御され、複数の車輪28の各々に加えられる制動力が制御され、移動体Vに加えられる制動力が自動で制御される。なお、車輪28には、駆動装置Dに含まれる電動機の制動による回生制動が加えられる場合もある。
【0017】
転舵装置Tは、複数の車輪28のうちの操舵輪を転舵するものである。転舵装置Tは、例えば、左右に位置する操舵輪の各々に連結された一対のタイロッドおよび一対のタイロッドを連結する転舵ロッド、転舵ロッドに設けられた転舵アクチュエータ等を含む。転舵アクチュエータにより転舵ロッドが車両の軸方向に移動させられることにより、左右の操舵輪が自動で転舵される。
【0018】
GPS受信機10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の一例であるGPSからの信号(例えば、GPS信号)を受信するものであり、GPS信号に基づいて、移動体V自身である自移動体Vの位置が取得される。GPS信号に基づいて、自移動体Vの緯度、経度、高度の3次元の位置が取得されるようにしても、緯度、経度の2次元の位置が取得されるようにしてもよい。
周辺情報取得装置12は、複数のカメラ、ライダ等を含み、移動体Vである自移動体Vの周辺の物体を認識するとともに、その物体と自移動体Vとの相対位置関係等を取得する。
【0019】
移動体通信装置14は、移動体ECU20において作成された移動体情報を無線で送信したり、中央管制装置Sから無線で送信された情報である管制情報を受信したりするものである。
【0020】
移動体ECU20は、コンピュータを主体とするものである。移動体ECU20には、これら駆動装置Dの駆動回路、制動装置Bの押付力制御アクチュエータ、転舵装置Tの転舵アクチュエータ、GPS受信機10、周辺情報取得装置12、移動体通信装置14等が接続される。また、移動体ECU20は、識別情報等記憶部22、移動体情報作成部24、走行制御部26等を含む。
【0021】
識別情報等記憶部22は、移動体Vである自移動体Vに設定された識別情報等を記憶するものである。複数の大型移動体HV,中型移動体MV,小型移動体LVの各々は、互いに異なる識別情報が付与されている。
【0022】
移動体情報作成部24は、GPS信号に基づいて取得された自移動体Vの位置を表す移動体位置情報、自移動体Vの識別情報等を含む移動体情報を作成する。作成された移動体情報は、移動体通信装置14に出力される。移動体通信装置14は移動体情報を送信する。
【0023】
走行制御部26は、駆動装置D,制動装置B,転舵装置Tを制御することにより、自移動体Vの走行を制御するものである。本実施例において、走行制御部26は、移動体通信装置14において受信された中央管制装置Sから送信された管制情報に含まれる制御指令等に基づいて、駆動装置D,制動装置B,転舵装置T等を制御する。
【0024】
中央管制装置Sは、コンピュータを主体とする管制ECU40と管制ECU40に接続された管制通信装置42とを含む。管制ECU40は、作業計画作成部50、管制情報作成部56等を含む。作業計画作成部50は、路面状態推定部52、走破能力決定部54等を含む。
【0025】
管制通信装置42は、管制情報作成部56によって作成された管制情報を無線で送信したり、移動体Vから無線で送信された移動体情報を受信したりするものである。
【0026】
管制情報作成部56は、移動体Vへの制御指令情報と、制御対象移動体Vを表す識別情報とを含む管制情報を作成するものである。作成した管制情報は、管制通信装置42に出力され、管制通信装置42が無線で送信する。
【0027】
作業計画作成部50は、複数の移動体Vの各々についての作業計画のうちの運行計画を作成するものである。運行計画には、複数の移動体Vの各々の走行順序(出発順序)、路面補修のタイミング等が含まれる。作業計画作成部50において、路面状態推定部52によって推定された走行領域の路面の状態である路面状態と、走破能力決定部54によって決定された複数の移動体Vの各々の走破能力等とに基づいて、運行計画が作成される。
【0028】
路面状態推定部52は、複数の移動体Vが走行する走行領域の路面の状態である路面状態を推定するものである。走行領域は、前述のように、複数の移動体Vが作業において走行する領域を複数の部分に仕切った場合の、各々の部分であっても、作業において走行する領域全体であってもよい。
路面状態には、路面の凹凸の状態と、路面に含まれる水分量に関する状態(路面が乾燥した状態にあるか湿った状態にあるか)とが含まれる。路面の凹凸の状態は、移動体Vの走行に伴って悪化する。走行領域がダート路である場合には、移動体Vの走行に伴って轍、すなわち、凹凸が生成される。凹凸は、重量が設定重量(一般的に、ある大きさの重量の意味であり、前述の第1設定重量としたり、第2設定重量としたり、それ以外の量としたりすること等ができる。以下、同様とする)より大きい移動体が走行した場合には小さい移動体が走行した場合より大きくなり、走行する移動体Vの数の増加に伴って大きくなる。凹凸が大きいとは、例えば、凹凸の高低差が大きいこと(例えば、凹部が深くなることと凸部が高くなることとの少なくとも一方をいう。)をいう。ダート路とは、路面が土、泥等から成る領域をいう。
【0029】
本実施例において、1台の移動体Vの走行によって路面に生成される凹凸の程度を、「(1台の移動体Vによって)路面が受けるダメージの大きさ」、または、「1台の移動体Vが路面に与えるダメージの大きさ」と称する。1台の移動体によって路面が受けるダメージの大きさは、例えば、移動体Vの重量と路面の水分量に関する状態とに基づいて決定される。
【0030】
具体的には、1台の移動体Vの走行により路面に与えるダメージの大きさは、移動体Vの重量が設定重量より大きい場合は小さい場合より大きくなる。また、路面に含まれる水分量が設定量より多い場合は少ない場合より大きくなる。すなわち、路面が湿って(ぬかるんで)いる場合には乾いている場合より、重量が同じ移動体Vが走行した場合に、1台の移動体によって路面が受けるダメージが大きくなるのである。例えば、降雨、降雪、砂埃を抑制するために行われた散水等のイベントが実行された場合には、イベントが実行される前より、1台の移動体Vによって路面が受けるダメージが大きくなる。また、降雨、降雪の後に天候が回復した場合、散水の後には、路面が徐々に乾燥するため、1台の移動体によって路面が受けるダメージは、徐々に小さくなる。なお、散水は、予め定められた散水条件が成立した場合、例えば、定期的に、路面の乾燥の程度が設定程度より高くなった場合等に、行われることが多い。
【0031】
路面に含まれる水分量に関する状態は、散水、降雨、降雪等のイベントの状況、イベント実行後の気象情報(気象予報による情報を含む)等に基づいて推定される。例えば、イベントが有った場合はイベントがない場合より水分量は多くなる。また、イベントが有った後の水分量は、気象情報に基づいて決まる。例えば、気温が高い場合、風量が多い場合には、それぞれ、気温が低い場合、風量が少ない場合より、路面に含まれる水分量が早期に少なくなる。本実施例において、路面状態推定部52は、「路面に含まれる水分量に関する状態」として路面に含まれる水分量自体を推定するものとすることができるが、それに限らない。例えば、路面状態推定部52は、路面の状態が、水分量が設定量より多い状態であるか、水分量が設定量以下の状態であるかを推定するものとすることができる。例えば、イベントがない場合には、水分量が設定量以下の状態であり、イベントが有った場合には、水分量が設定量より多い状態であると推定することができる。
【0032】
本実施例においては、図2に示すように、移動体Vの各々について、1台の移動体Vが走行領域の路面に与えるダメージの大きさは予め決定される。例えば、小型移動体LVが走行した場合には、中型移動体MV,大型移動体HVが走行した場合より、ダメージ(a<b<c)が小さくなる。また、路面が湿っている場合(水分量が設定量より多い状態)には乾いた状態(水分量が設定量以下の状態)にある場合より、1台の移動体が路面に与えるダメージが大きくなる(a<a*、b<b*、c<c*)。
【0033】
そして、走行領域における路面の凹凸の状態は、図3,4に示すように、路面が乾いている場合と路面が湿っている場合との各々において、1台の移動体Vによって路面が受けるダメージが累積される(加算される)ことにより推定される。走行領域における凹凸は、移動体Vの走行に伴って悪化するからである。
また、図4に示すように、散水等により、路面が湿っている状態にある場合に乾いている状態にある場合より、1台の移動体Vによって路面が受けるダメージ(b*)が大きくなる(b*>b)。そのため、実線(路面が湿っている場合の路面が受けるダメージの累積値を示す)と、一点鎖線(路面が乾いている場合の路面が受けるダメージの累積値を示す)とを比較することにより明らかなように、散水等のイベント実行された場合にはイベントが実行されない場合に比較して、路面が受けるダメージの累積値の増加勾配が大きくなり、路面の凹凸の状態の悪化勾配が大きくなる。
【0034】
走破能力決定部54は、複数の移動体Vの各々における走破能力を決定するものである。走破能力とは、凹凸を有する悪路(ダート路)を立ち往生することなく走行して通過できる特性である。走破能力は、例えば、移動体Vの各々の特性と路面の水分量に関する状態とに基づいて決まる。
【0035】
移動体Vの各々の特性として移動体Vの重量、移動体Vが有する駆動装置Dの能力,移動体Vの剛性(強度)、移動体Vの車高、車輪28の大きさ等が該当する。例えば、重量が(設定重量より)大きい移動体Vは重量が小さい(設定重量以下の)移動体Vより走破能力が高くなる。また、車高が(設定車高値より)高い移動体V、車輪28が大きい(車輪28の直径が設定直径値より大きい)移動体Vは、それぞれ、車高が低い(設定車高値以下の)移動体V,車輪28が小さい(直径が設定直径値以下の)移動体Vより走破能力が高くなる。さらに、駆動装置Dの出力が(設定出力より)大きい場合は出力が小さい(設定出力以下の)場合より走破能力が高くなり、4輪駆動の場合は2輪駆動の場合より走破能力が高くなる。いずれの場合であっても、走破能力が高い移動体は低い移動体より、路面状態が悪い(例えば、凹凸が大きい)走行領域を走破することができる。
【0036】
走破能力は、図2に示すように、大型移動体HV,中型移動体MVについては小型移動体LVより高くなる(d<e<f)。また、路面が湿った状態にあり、路面の摩擦係数が低い場合は、乾燥した状態にあり、摩擦係数が高い場合より、走破能力は低くなる(d>d´、e>e´、f>f´)。
このように、本実施例において、複数の移動体Vの各々について、路面が湿った状態にある場合、乾燥した状態にある場合の各々における走破能力は予め取得されて記憶されている。そのため、移動体Vの走破能力が、路面が湿った状態における走破能力と、乾燥した状態における走破能力とのいずれかに、路面の水分量等に基づいて選択されて決定されることになる。
【0037】
また、相対的に、移動体Vの重量が大きい場合は小さい場合より、移動体Vについての走破能力が高くなり、1台の移動体Vが路面に与えるダメージが大きくなる。そのため、一般的に、高い走破能力を有する移動体は、路面に与えるダメージが大きくなり、低い走破能力を有する移動体は、路面に与えるダメージが小さくなる傾向がある。
【0038】
走破能力は、例えば、走破可能な路面状態で表すことができる。走破能力が、走行領域の路面状態を走破するために要する走破能力より高い場合、換言すると、走破能力により走破可能な路面状態の悪化のレベルが、走行領域の路面状態の悪化のレベルより高い場合には、移動体Vはその走行領域を走破することができる。
路面が乾燥している場合と湿っている場合との各々において(路面に含まれる水分量が決まっている場合には)、走破能力は、路面が受けるダメージの累積値(路面の凹凸の状態)で表すことができる。走破能力が、走行領域の路面が受けるダメージの累積値より高い場合には、その移動体Vは、走行領域を走破可能であると推定することができる。
そして、作業計画のうちの運行計画(走行順序、路面補修タイミング)は、路面補修が行われる前に、できる限り多くの移動体Vが走行領域を走破可能なように作成される。
【0039】
例えば、図3~5,9において、実線のブロックは走破能力を表す。破線のブロックの各々は1台の移動体Vによって路面が受けるダメージを表し、積み上げたブロックの全体が、路面が受けたダメージの累積値を表す。
図3に示す場合においては、走破能力が路面が受けたダメージの累積値より大きい移動体V1~V10はその走行領域を走破可能である。
【0040】
図4に示す場合においては、時間T1においてイベント(例えば、降雨または散水)が起きた。そして、イベントにより、路面が湿った状態になるため、イベントが起きない場合に比較して、路面が受けるダメージが大きくなるとともに、移動体Vの走破能力が低下する。一点鎖線が、イベントが起きない場合のダメージの累積値の変化を示し、実線がイベントが起きた場合のダメージの累積値の変化を示す。図4から、イベントが起きた場合の方が、ダメージの累積値の増加勾配が大きくなることが明らかである。また、走行領域を走破可能な移動体(走破能力がダメージの累積値より大きい移動体)V1~V8の台数は、イベントが起きない場合より少なくなる。
【0041】
また、予め定められた路面補修条件が成立した場合に、路面補修専用車(グレーダ)により路面の補修が行われ、凹凸が均される。路面補修条件は、例えば、路面状態を走破可能な走破能力を有する移動体Vが存在しないと推定された場合とすることができる。例えば、図3に示す場合には、時間T2に路面補修条件が成立し、図4に示す場合には、時間T3に路面補修条件が成立する。
また、路面補修条件は、例えば、設定時間内に設定台数以上の移動体Vを走行させる要求がある場合とすることができる。図5に示す場合には、時間T4において、路面補修条件が成立する。移動体Vが高い頻度で走行する前に、路面補修が行われることにより、作業効率の低下を良好に抑制することができる。
【0042】
走破能力と路面のダメージの累積値との差を、移動体Vが走破領域を走破可能な場合の余裕代R(図3,4等参照)と称する。運行計画のうちの複数の移動体の出発順序(走行順序)は、路面が乾いた状態にある場合と路面が湿った状態にある場合との各々において、走破能力が路面の凹凸の状態に対して過大にならないようにすることが望ましい。換言すると、余裕代Rが設定余裕代より小さくなるように、運行計画が作成されるようにすることが望ましい。
例えば、図6に示すように、走行開始当初において余裕代Rが大きい移動体Vが走行した場合、換言すると、路面の凹凸の状態に対して走破能力が過大である移動体Vが走行した場合には、路面の凹凸の状態の悪化勾配(ダメージの累積値の増加勾配)が大きくなる。そのため、例えば、走破可能な移動体Vが存在しない場合等の路面補修条件が成立する時期が早くなり、望ましくない。
【0043】
それに対して、図7に示すように、余裕代Rが設定余裕代より小さい状態で、換言すると、走破能力が路面状態に対して過大にならない状態で、運行計画が作成された場合には、路面の補修を行う前に、多くの移動体Vが走行領域を走破可能となる。
なお、図3,4に示す場合においては、余裕代Rが減少した後増加する場合があるが、その増加した余裕代Rも設定余裕代以下になると考えられる。
【0044】
また、本実施例においては、小型移動体LVが大型移動体HVより、先に走行するように運行計画が作成される。路面のダメージの累積値の増加勾配を抑制し、累積値が小さい状態を長い間維持可能となる。その結果、多くの移動体Vを走破させることが可能となるからである。
【0045】
作業計画作成部50において、図8のフローチャートで表される作業計画作成プログラムが実行される。
ステップ1(以下、単にS1と略称する。他のステップについても同様とする)において、複数の移動体Vの各々について、移動体Vの各々により路面が受けるダメージが取得される。S2において、複数の移動体Vの各々の走破能力が決定され、S3において、これらに基づいて運行計画(走行順序、路面補修のタイミング等を含む)が作成される。そして、予め定められた設定時間内に予め決まった作業量の作業(例えば、予め決まった数の移動体Vが走行する等)が終了することを前提として、推定された路面状態と、決定された走破能力等とに基づいて運行計画(走行順序、路面補修のタイミング等)の最適解が得られる。この最適解は、例えば、物流業界等において広く使われる手法を用いて取得することができる。
【0046】
本実施例においては、小型移動体LVが、中型移動体MV,大型移動体HVより先に走行する。そのため、路面が受けるダメージの累積値が小さい状態で、多くの移動体Vが走行し得る。路面補修の機会を少なくすることができ、作業効率を向上させることができる。
また、移動体Vが走行領域において立ち往生し難くすることができる。その結果、複数の移動体Vの走行をスムーズに行うことが可能となる。
さらに、路面状態と走破能力とに基づいて運行計画が作成されるため、路面補修のタイミングを適切に決定することができる。
【0047】
なお、図9に示すように、散水、降雨等のイベントが実行された後(T5)、設定時間Tcが経過するまでの間、大型移動体HVの走行が禁止(制限の一態様である)されるようにすることができる。散水、降雨等により路面が受けるダメージが大きくなった状態で、大型移動体HVが走行すると、路面状態の悪化勾配が大きくなる。そのため、イベントが起きた後、設定時間Tcが経過するまでの間、大型移動体HVの走行が禁止されるのである。本実施例において、大型移動体HVは、重量が特許請求の範囲に記載の重量しきい値としての第1設定重量より大きい移動体であり、路面に与えるダメージが設定レベルより大きく、走破能力が設定能力レベルより大きいものである。
【0048】
また、散水、降雨後、設定時間Tcが経過すれば、路面が乾き、路面が受けるダメージが小さくなるため、大型移動体HVの走行が許可されるようにすることができる。設定時間Tcは、例えば、イベントの実行後、路面がほぼ乾いた状態になると推定される時間とすることができる。設定時間Tcは、予め定められた時間としたり、散水、降雨等のイベントが起きた後の気象情報に基づいて決まる時間としたりすること等ができる。前者の場合には、気象予報に基づいて予め決めておくことも含まれる。また、イベントの実行、設定時間Tcを考慮して、運行計画が作成される。
【0049】
気象情報には、気温、湿度、風速等が該当し、例えば、イベントが起きた後(散水が終了した後、雨が止んだ後)、気温が高い場合、湿度が低い場合、風速が早い(風量が多い)場合には、それぞれ、気温が低い場合、湿度が高い場合、風速が遅い(風量が少ない)場合より、設定時間Tcを短くすることができる。
【0050】
作業計画作成部50において、図10のフローチャートで表される設定時間決定ルーチンが実行される。本ルーチンは作業計画作成プログラムの一部である。
S11において、イベントとしての散水が行われるか否かが判定される。判定がYESである場合には、S12において、気象予報の情報が、図示しない外部情報発信装置から発信されて管制通信装置42において受信されることにより取得される。そして、S13において、予報された気象情報に基づいて設定時間Tcが決定される。そして、散水が実行された後、設定時間Tcが経過するまでの間、大型移動体HVの走行が禁止されるように運行計画が作成される。
【0051】
以上のように、上記実施例において、作業計画作成部50等が作業計画作成装置に対応する。作業計画作成部50は走行制御装置であると考えることができる。
【0052】
また、イベントが実行された後の気象情報(予報された気象情報も含む)に基づいて、路面に含まれる水分量に関する状態が推定され、それにより、1台の移動体Vが路面に与えるダメージの大きさ、移動体Vの各々の走破能力が決定されるようにすることができる。図11,12に示すように、走破能力、1台の移動体が路面に与えるダメージの大きさは、路面が乾くにつれて、イベントが起きる前のレベルに戻る。走破能力が大きくなり、1台の移動体Vが路面に与えるダメージの大きさが小さくなるのである。
また、これら走破能力、路面に与えるダメージの大きさの回復速度も気象情報に基づいて決まる。気温が高い場合、湿度が低い場合、風速が大きい場合には、それぞれ、気温が低い場合、湿度が高い場合、風速が小さい場合より回復速度が速くなる。
例えば、設定時間Tcの間、走破能力、1台の移動体が路面に与えるダメージの大きさが、路面の乾燥の程度に応じて連続的、または、段階的に変化するようにすることができる。
【0053】
さらに、路面状態としての路面の凹凸の状態は、路面の水分量を推定することなく、1台の移動体Vにより路面が受けるダメージを累積することにより、推定することもできる。
【実施例0054】
なお、中央管制装置Sは不可欠ではない。
その場合の一例を図13,14に示す。図14に示すように、移動体Vcの各々は、周辺情報取得装置12c、移動体通信装置14c、移動体ECU20c、GPS受信機10c、駆動装置Dc,制動装置Bc,転舵装置Tc、路面センサ70c等を含む。移動体ECU20cは、識別情報等記憶部22c、移動体情報作成部24c、走行制御部26cに加えて、走破可否判定部72cを含む。移動体通信装置14c、GPS受信機10c、駆動装置Dc,制動装置Bc,転舵装置Tc、識別情報等記憶部22c、走行制御部26c等は、実施例1におけるそれらと同様のものであるため、説明を省略する。
【0055】
周辺情報取得装置12cは、周辺情報取得装置12cを有する移動体である自移動体Vcの周辺の路面の凹凸の状態等を、カメラの撮像画像等に基づいて取得する。
路面センサ70cは、車輪28のタイヤに装着されるものであり、路面の湿度(路面に含まれる水分量)等を取得する。路面センサ70cによって検出された路面の状態は、通信装置(路面センサ70cが有する通信装置、または、路面センサ70cとは別にタイヤに設けられた通信装置)を介して、車体側に向かって送信され、移動体通信装置14cにおいて受信される。
【0056】
走破可否判定部72cは、自移動体Vcが、自移動体Vcの前方の走行領域を走破可能であるか否かを、自移動体Vcの走破能力と前方に位置する走行領域の路面状態とに基づいて判定するものである。
移動体情報作成部24cは、自移動体Vcの位置を表す移動体位置情報と、自移動体Vcが走行する走行領域Pの路面状態を表す路面状態情報とを含む移動体情報を作成する。
【0057】
例えば、図13に示すように、自移動体Vcyは、自移動体Vcyの前方を走行する先行移動体Vcxから送信された移動体情報を受信し、自移動体Vcyの前方の移動体Vcxが位置する走行領域Pxの路面状態を取得する。
そして、走行領域Pxの路面状態と自移動体Vcyの走破能力とに基づいて、自移動体Vcyが走行領域Pxを走破可能であるか否かを判定する。走破可能であると判定した場合には、前方の走行領域Pxを走行し、走破不能であると判定された場合には、制動装置B,転舵装置Tc等の制御により、走行領域Pxの手前で停止したり、迂回したりすること等ができる。
【0058】
本実施例においても、移動体Vcyが走行領域Pxにおいて立ち往生し難くすることができる。
【0059】
本実施例においては、走破可否判定部72c、走行制御部26c等により走行制御装置が構成され、走行制御装置、移動体通信装置14c、移動体情報作成部24c等により走行制御システムが構成される。
【0060】
なお、路面状態、気象情報は、図示しない外部情報発信装置から送信されるようにすることができる。その場合には、移動体情報に、移動体Vcxについて定められた、移動体Vcxが路面に与えるダメージの大きさを表すダメージ情報が含まれるようにすることができる。移動体Vcyは、外部情報発信装置から発進される走行領域Pxの路面状態と、気象情報と、移動体Vcxが路面に与えるダメージとに基づいて、自移動体Vcyが走行する走行領域Pxの路面状態を取得することができる。移動体Vcyは、自移動体Vcyが走行領域Pxを走破可能であるか否かを判定することができる。
【0061】
また、移動体Vcyにおいて、自移動体Vcyの周辺情報取得装置12cによって取得された前方の路面の状態と、自移動体Vcyの走破能力とに基づいて、前方の走行領域を走破可能であるか否かが判定されるようにすることができる。例えば、判定がNOである場合には、前方の走行領域を迂回して走行し、判定がYESである場合には、前方の走行領域を走行するように、駆動装置Dc等が制御されるようにすることができる。
【0062】
その他、本発明は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
10,10c:GPS受信機 12,12c:周辺情報取得装置 14,14c:移動体通信装置 20,20c:移動体ECU 24,24c:移動体情報作成部 26,26c:走行制御部 40:管制ECU 42:管制通信装置 50:作業計画作成部 52:路面状態推定部 70c:路面センサ 72c:走破可否判定部 S:中央管制装置 V:移動体
【特許請求可能な発明】
【0064】
以下の各項に、特許請求可能な発明を記載する。
【0065】
(1)走行領域を走行する複数の移動体を管理する管理システムであって、
複数の移動体の各々の走破能力と前記走行領域の路面状態とに基づいて前記複数の移動体の作業計画を作成する作業計画作成装置を含む管理システム。
【0066】
本項に記載の作業計画作成装置は、作業計画のうちの運行計画を作成する。作業計画は、例えば、複数の移動体のうちのできる限り多くの移動体が走行領域を走破できるように作成されるようにすることができる。
【0067】
(2)前記作業計画作成装置が、前記走行領域の路面状態を、1台の前記移動体の走行により前記路面に与えるダメージを累積することにより取得する(1)項に記載の管理システム。
【0068】
本項に記載の路面状態は、路面の凹凸の状態であると考えたり、路面の凹凸の状態と路面に含まれる水分量に関する状態とを含む状態であると考えたりすること等ができる。
例えば、「1台の移動体の走行により路面に与えるダメージが、路面に含まれる水分量に関する状態(路面が乾いている状態と湿っている状態と)に基づいて決まる大きさである場合において、その決定された1台の移動体の走行により路面に与えるダメージが累積されることにより路面の凹凸の状態が推定される場合には、路面に含まれる水分量に関する状態も推定されると考えることができる。
【0069】
(3)前記1台の移動体の走行により路面に与えるダメージが、前記移動体の重量が大きい場合は小さい場合より大きく、路面に含まれる水分量が多い場合は少ない場合より大きい値として決定される(2)項に記載の管理システム。
【0070】
例えば、1台の移動体の走行により路面に与えるダメージは、移動体の重量が設定重量より大きい場合は設定重量以下である場合より大きく、路面に含まれる水分量が設定水分量より多い場合は設定水分量以下である場合より大きい値として決定される。
【0071】
(4)前記複数の移動体の各々の走破能力が、前記移動体の重量が(設定重量より)大きい場合は小さい(設定重量以下である)場合より高く、前記路面の摩擦係数が(設定値より)高い場合は低い(設定値以下である)場合より高い値として決定される(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の管理システム。
【0072】
例えば、移動体の走破能力は、移動体の重量が設定重量より大きい場合は設定重量以下である場合より高くなる。また、路面の摩擦係数が設定値より高い場合は設定値以下である場合より高くなる。なお、路面に含まれる水分量が多い場合は路面の摩擦係数が低くなるのが普通である。
【0073】
(5)前記作業計画作成装置が、前記複数の移動体の各々の走破能力が、前記路面状態で要求される走破能力より高くなるように、前記複数の移動体の走行順序を決定するものである(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の管理システム。
【0074】
走破能力は、走破可能な路面状態で表すことができる。そのため、走破能力が、路面状態で要求される走破能力より高い場合には、その走行領域を走破可能であると考えることができる。例えば、走破能力が低い移動体から順番に走行するように、走行(出発)順序を決定することができる。
換言すると、走行領域を、走破能力が低い移動体が走破能力が高い移動体より先に走行するように走行順序が決定されるようにしたり、路面が受けるダメージが小さい移動体が大きい移動体より先に走行するように走行順序が決定されるようにしたりすること等ができる。
【0075】
(6)前記作業計画作成装置が、前記複数の移動体の各々の走破能力が、それぞれ、前記路面状態に対して過大にならない状態で、前記複数の移動体の走行順序を決定するものである(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の管理システム。
【0076】
(7)前記作業計画作成装置が、前記複数の移動体の走破能力の前記路面状態で要求される走破能力に対する余裕代が設定余裕代より小さい状態で、前記複数の移動体の走行順を決定するものである(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の管理システム。
【0077】
(8)前記複数の移動体が、第1移動体と、前記第1移動体より重量が大きい第2移動体とを含み、
前記作業計画作成装置が、前記第1移動体が前記第2移動体より先に走行する状態で、前記複数の移動体の走行順を決定するものである(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の管理システム。
【0078】
第1移動体が、小型移動体に対応し、第2移動体が中型移動体、大型移動体に対応すると考えても、第1移動体が、小型移動体、中型移動体に対応し、第2移動体が大型移動体に対応すると考えてもよい。
【0079】
(9)前記作業計画作成装置が、予め定められた作業量の作業が終了するまでに、前記複数の移動体のうちの少なくとも1台が前記走行領域を走破不能になると推定された場合に、前記路面の補修が行われるように前記作業計画を作成する(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の管理システム。
【0080】
作業計画は、通常、設定時間の間に予め定められた作業量の作業が終了する(複数の移動体の走行が終了する)ことを前提として、作成される。
【0081】
(10)前記作業計画作成装置が、予め定められた作業量の作業が終了するまでに、設定時間の間に設定台数以上の移動体の走行が要求される場合に、前記路面の補修が行われるように前記作業計画を作成する(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の管理システム。
【0082】
路面補修条件は、複数の移動体のうちの少なくとも1台の走破能力が、その時点の路面状態で要求される走破能力より低い場合に、成立する条件としたり、高い作業性が要求された場合に成立する条件としたりすること等ができる。
【0083】
(11)1台の前記移動体の走行により前記路面に与えるダメージが、イベントが起きた場合には、イベントが起きない場合より大きい値として決定される(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の管理システム。
【0084】
(12)前記イベントが、降雨、降雪、散水のうちの1つである(11)項に記載の管理システム。
【0085】
降雨、降雪が起きるか否かは、予報される気象情報に基づいて推定することができる。いずれにしても、これらイベントが起きた場合にはイベントが起きる前より、路面に含まれる水分量が多くなり、路面が湿った状態になる。
【0086】
(13)当該管理システムが、イベントが起きた後の、前記走行領域の前記走破能力を、前記イベントが起きた後の気象情報に基づいて取得する(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の管理システム。
【0087】
降雨、降雪、散水後の路面の乾き具合は、気象情報(気象予報)に基づいて決まる。
また、イベントが起きた後の、1台の移動体が路面に与えるダメージの大きさ、移動体の走破能力は、路面の乾き具合で決まるため、気象情報に基づいて決まると考えることができる。
例えば、1台の移動体が路面に与えるダメージの大きさ、移動体の走破能力は、路面が乾くにつれて、イベントが起きる前のレベルに回復する。この場合の回復速度は、例えば、気温が高い場合、湿度が低い場合、風速が大きい場合は、気温が低い場合、湿度が高い場合、風速が小さい場合に比較して速くなる。
【0088】
(14)当該管理システムが、イベントが起きた後、設定時間が経過するまでの間、重量が重量しきい値より大きい移動体の走行を制限する(1)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の管理システム。
【0089】
設定時間は、予め定められた設定時間としたり、気象情報に基づいて決まる時間としたりすること等ができる。後者の場合には、気象予報の情報に基づいて予め決めても、イベントが起きた後の実際の気象情報に基づいてその都度決めてもよい。設定時間が、予め決まる場合には、このこと(イベントの実行後設定時間の間、重量が設定重量より大きい移動体の移動が制限されること)を考慮して散水の実行タイミング等が決定され、作業計画が作成されるようにすることができる。
重量しきい値は、上記実施例における第1設定重量としたり、第2設定重量としたり、それ以外の大きさの値としたりすること等ができる。
【0090】
また、設定時間は、気温が高い場合、湿度が低い場合、風速が大きい場合は、それぞれ、気温が低い場合、湿度が高い場合、風速が小さい場合に比較して短い時間に設定することができる。1台の移動体が路面に与えるダメージ、走破能力が、イベントが起きる前のレベルに回復する時間が短くなる。
【0091】
(15)移動体の走行を制御する走行制御システムであって、
前記移動体の走破能力と前記移動体の前方に位置する走行領域の路面状態とに基づいて、前記移動体が前記走行領域を走破不能である場合に、前記移動体が前記走行領域を走行しないようにする走行制御装置を含む走行制御システム。
【0092】
移動体は、走行領域の手前で停止したり、走行領域を迂回して走行したりすること等ができる。本項に記載の走行制御システムには、(1)項ないし(14)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
【0093】
(16)前記走行制御装置が、前記移動体である自移動体の前方に位置する走行領域の路面状態を、前記自移動体の前を走行する移動体である先行移動体が前記走行領域を走行する前の路面状態と、前記先行移動体の走行により路面が受けるダメージとに基づいて、前記自移動体が走行する前記走行領域の路面状態を取得するものである(15)項に記載の走行制御システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14