(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104377
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13363 20060101AFI20240729BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G02F1/13363
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008536
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】酒井 丈也
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
【Fターム(参考)】
2H149AA04
2H149AA06
2H149AA15
2H149AB05
2H149BA03
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA23
2H149DA27
2H149DA28
2H149DA32
2H149DB02
2H149EA02
2H149EA06
2H149EA17
2H149EA19
2H149FA23Y
2H291FA29X
2H291FA29Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA81Z
2H291FB05
2H291FC32
2H291FC33
2H291FD07
2H291HA06
2H291HA11
2H291LA25
2H291MA11
2H291NA43
2H291NA46
2H291PA04
2H291PA08
2H291PA59
2H291PA64
2H291PA82
(57)【要約】
【課題】反射型の液晶表示装置において液晶セルに起因する表示の視野角依存性を低減し、偏光板への光の斜め入射に起因する黒表示時の光漏れを抑制する。
【解決手段】
偏光分離素子と、反射型液晶セルと、前記偏光分離素子と前記液晶セルとの間に配置された光学補償素子とを備え、黒表示時に前記液晶セル中の液晶分子が垂直方向への配向性を示す反射型液晶表示装置において、前記光学補償素子が、2軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有する第1の位相差板と、1軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有し、面内に光学軸を有する第2位相差板とを含む、反射型液晶表示装置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光分離素子と、
反射型の液晶セルと、
前記偏光分離素子と前記液晶セルとの間に配置された光学補償素子とを備え、
黒表示時に前記液晶セル中の液晶分子が垂直方向への配向性を示す反射型液晶表示装置において、
前記光学補償素子が、2軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有する第1の位相差板と、
1軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有し、面内に光学軸を有する第2位相差板とを含む、
反射型液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型液晶表示装置において、
前記第1の位相差板は、垂直方向から入射する直線偏光が、該第1の位相差板、反射型の液晶セル、第1の位相差板の順に通って出射される偏光状態を、入射した直線偏光とほぼ同じ状態に変換する面内位相差と遅相軸方位を有し、
前記第2の位相差板は、垂直方向から入射する直線偏光に対し、位相差を与えない遅相軸方位を有する
反射型液晶表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の反射型液晶表示装置において、前記第1の位相差板および/または前記第2の位相差板が、感光性基を有する液晶性高分子を含む材料から構成されたものである、反射型液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型の液晶セルを備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶セルと、透過軸が互いに垂直に配置された二枚の偏光板を備え、液晶分子の配向性を電気的に制御することにより、文字や画像の表示を行っている。液晶表示装置には、光源を液晶セルの背面に置く透過型液晶表示装置と、前面もしくはサイド側に置かれた光源、または太陽光などの外光をとりこんで反射させる反射型液晶表示装置があり、後者はエネルギー効率向上の観点から着目されている。
【0003】
反射型液晶表示装置は、スマートフォン、タブレット、車載ディスプレイなど、多様な用途で用いられているが、それらの用途で視野角を固定することは困難である。そのため、なるべく広い視野角に対し良好な視認性を確保し得ることが求められる。しかし、一定の観察方向に対し、コントラスト最大となるように装置を制御した場合、これと異なる視野角で観察すると、液晶セルに起因する位相差の視野角依存性により、視認性の低下が生じる場合がある。そのため、液晶表示装置の画像コントラストの視野角依存性を低減し、広い視野角範囲での良好な視認性を確保するため、各種の光学補償手段が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、液晶層に電圧が印加されていない状態のときに液晶分子が基板面に対して略垂直に配向するVAN液晶を用いる反射型液晶表示素子において、無機材料を斜方蒸着することによってつくられ、前記液晶分子のプレチルトによって生じる位相差を補償可能な角度に表面に対して傾斜する光学軸を有する2軸性複屈折体(Oプレート)と、前記2軸性複屈折体とともに設けられ、表面に対して垂直な光学軸を有し、前記液晶層を斜めに透過する光の位相差を補償するとともに、前記2軸性複屈折体を透過することによる位相差を補償する1軸性複屈折体(Cプレート)と、を備えることを特徴とする反射型液晶表示素子を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、OプレートとCプレートの特性を有する光学補償素子を組み合わせることにより、液晶層内の液晶分子のプレチルトに起因する位相差を補償し、かつ、液晶層に斜めに入射する光の位相差を補償することでコントラストを改善し得ることを記載している。他方、偏光板に光が斜め入射する場合に、二枚の偏光板の透過軸(吸収軸)のなす角度が90°からずれ、光漏れが発生することも視認性低下の原因となっているが、特許文献1では反射型液晶表示素子の用途として、液晶プロジェクタを想定しており、直線偏光板に反射光が斜め入射した場合の光漏れについては検討されていない。また、特許文献1では、Oプレートとは別にCプレートを組み合わせることにより光学補償を行っているが、光学補償素子の構成はなるべく簡便なものとすることが好ましい。
【0007】
本発明は、反射型の液晶セルを備える液晶表示装置において、液晶セルに起因するコントラストの視野角依存性を低減し、かつ偏光板へ光が斜め入射することによる光漏れも抑制できる簡便な構成の光学補償素子を備え、視野角特性が改善された液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の構成は、
偏光分離素子と、
反射型の液晶セルと、
前記偏光分離素子と前記液晶セルとの間に配置された光学補償素子とを備え、
黒表示時に前記液晶セル中の液晶分子が垂直方向への配向性を示す反射型液晶表示装置において、
前記光学補償素子が、2軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有する第1の位相差板と、
1軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有し、面内に光学軸を有する第2の位相差板とを含む、
反射型液晶表示装置である。
【0009】
上記構成の液晶表示装置によれば、黒色表示時に、液晶分子の垂直配向の不完全性に起因するコントラストの低下、およびコントラストの視野角依存性を、第1の位相差板の面内位相差により抑制することができる。また、偏光板に対し光が斜め方向から入射した場合に生じる光漏れを、液晶セルと第1の位相差板の組み合わせにより調整される厚さ方向の位相差と、第2の位相差板の付与する位相差との組み合わせにより抑制することができる。
【0010】
前記の反射型液晶表示装置において、前記第1の位相差板は、垂直方向から入射する直線偏光が、前記第1の位相差板、反射型の液晶セル、第1の位相差板の順に通って出射される偏光状態を、入射した直線偏光とほぼ同じ状態に変換する面内位相差と遅相軸方位を有し、前記第2位相差板は、垂直方向から入射する直線偏光に対し、位相差を与えない遅相軸方位を有する、反射型液晶表示装置であってもよい。この構成によれば、コントラストを最適化できる。
【0011】
上記の反射型液晶表示装置において、前記第1の位相差板および/または前記第2の位相差板は、感光性基を有する液晶性高分子を含む材料から構成されたものであってもよい。これによって位相差板の光学特性制御の自由度が大きく、液晶セルの構成にあわせ、最適な位相差板を選択できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の反射型液晶表示装置によれば、液晶セルに起因するコントラストの低下、コントラストの視野角依存性、および偏光板へ光が斜め入射することに起因する光漏れを簡便な構成の光学補償素子で改善し、視野角特性および画像コントラストに優れた液晶表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる液晶表示装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の効果を検証するために用いた、反射型液晶表示装置を模した光学構造を示す概略図である。
【
図3】反射型の液晶セルがとり得る構成の一例を示す断面図である。
【
図4】反射型液晶表示装置の一例において、光学補償をともなわない場合の、VAタイプ液晶セルの黒表示のコントラストをシミュレーションした図である。
【
図5】反射型液晶表示装置の一例において、本発明に従って光学補償を行った場合の、VAタイプの液晶セルの黒表示のコントラストをシミュレーションした図である。
【
図6】反射型液晶表示装置の一例において、本発明に従って光学補償を行った場合の、TNタイプの液晶セルの明表示/黒表示のコントラストをシミュレーションした図である。
【
図7】反射型液晶表示装置の一例において、光学補償ともなわない場合の、TNタイプの液晶セルの明表示/黒表示のコントラストをシミュレーションした図である。
【
図8】本発明の効果を検証するために行った模擬実験で用いた光学構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の反射型液晶表示装置は、液晶セルと、入射光を特定の偏光に変換する偏光分離素子と、前記偏光分離素子と前記液晶セルとの間に配置された光学補償素子とを備え、
黒表示時に前記液晶セル中の液晶分子が垂直方向への配向性を示す反射型液晶表示装置において、前記光学補償素子が、2軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有する第1の位相差板と、1軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有し、面内に光学軸を有する第2位相差板とを含む、反射型液晶表示装置である。以下、図面を参照しながら、本発明の反射型液晶表示装置について説明する。なお、図面はいずれも説明のための概略図であり、各部の寸法比を反映するものではない。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかる、プロジェクタなどに用いられる反射型液晶表示装置の100の構成を示す概略断面図である。反射型液晶表示装置100は、偏光分離素子1と、反射型の液晶セル2と、偏光分離素子1と液晶セル2との間に配置された光学補償素子3を備えている。この実施形態では、偏光分離素子1は、入射光を偏光の振動方向により、透過光と反射光に分離する反射型の偏光分離素子である。本発明では、光学補償素子3は、2軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有する第1の位相差板3aと、1軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有し、面内に光学軸を有する第2位相差板3bとを含んでいる。
【0016】
光源5から偏光分離素子1に入射する光Liは、偏光分離素子1にランダム波L
1としして入光するが、偏光分離層1aを透過する際、一方向の偏光(例えばp波)のみが透過光L
2として透過し、他の一方向の偏光(例えばs波)は反射光L
3となる。偏光分離素子1を透過した光L
2は、出光後、液晶セル2にて反射されてくる。
黒表示時には、液晶セル2(および光学補償素子3)によって偏光の変調を受けないように設定される。この場合、液晶セル2で反射して偏光分離素子1に入光した光L
4は偏光分離層1aを透過し(L
5)、視認者方向へ光が反射しないため黒表示となる。
画像表示時には、液晶セル2(および光学補償素子3)によって偏光の変調を受けた反射光の偏光成分L
6が、偏光分離層1aによって視認者方向へ反射されるため、画像として認識されるようになる。
なお、
図1では、説明のため、L
1、L
2とL
4、L
5の光路は分離させているが、実際にはほぼ重なっていてもよい。
【0017】
図2は、本発明の効果を検証するために実施例で使用した、反射型液晶表示装置を模した光学構造を示す概略図である。反射型液晶表示装置100は、偏光分離素子10と、反射型の液晶セル2と、偏光分離素子10と液晶セル2との間に配置された光学補償素子3を備えている。この形態では、偏光分離素子10は、互いに重ならないように配置された、透過軸が互いに直交する二枚の偏光板10a、10bをそなえるものとしている。
【0018】
液晶セル2の内部構造としては、
図2に模式的に示すように、一般的な構造を採用できる。すなわち、液晶セル2は、液晶分子mを含む液晶層2aと、液晶層2aを挟む電極層2b、2cとを少なくとも備え、必要に応じ、フィルター層2d、保護層2e、2fなどをさらに備えてもよい。反射型の液晶セル2は、液晶層2aの背面側の電極層2cが反射層となるものであってもよいが、必要に応じ、液晶セル2の背面側に反射板4を配置してもよい。液晶セルは、複数の画素に分割されていてもよいが、これについては図示を省略する。
【0019】
図1、
図3を元に説明すると、光源5からの入射光Liは、偏光分離素子1を透過(L
2)して液晶セル2に入光し、装置構成に応じ、第2の電極層2cまたは反射板4(
図2)で反射され、液晶セル2を再度透過して出光し、偏光分離素子1に再度入光する(L
4)。反射型液晶表示装置100の液晶セル2がVA(Vertical Alignment)タイプの場合、電圧OFFの状態では液晶分子がほぼ垂直に配向し、反射光は偏光分離素子1を透過し(L
5)、視認者VE側には出光しないため画面(または特定の画素)は黒表示となる。これに対し、電圧が負荷された状態では、液晶分子mは電圧に応じて傾斜方向から水平方向に配向して反射光に面内位相差を付与し、偏光分離素子に入光した光L
4は、偏光分離層1aで、振動方向の異なる偏光成分からなる透過光L
5と反射光L
6に分離され、反射光L
6は視認者VE側に出光して視認される。
【0020】
図2と
図3を元に説明すると、光源5からの入射光Liは、第1の偏光板1aを透過して液晶セル2に入光し、装置構成に応じ、第2の電極層2cまたは反射板4(
図2)で反射され、液晶セル2を再度透過して出光し、光学補償素子3を透過し、第2の偏光板1bに入光する。反射型液晶表示装置100の液晶セル2がVA(Vertical Alignment)タイプの場合、電圧OFFの状態では液晶分子がほぼ垂直に配向し、反射光は第2の偏光板1bに吸収され、画面(または特定の画素)は黒表示となる。これに対し、電圧が負荷された状態では、液晶分子mは電圧に応じて傾斜方向から水平方向に配向して反射光に面内位相差を付与し、第2の偏光板2bを透過した反射光Lrが視認される。
【0021】
現在、VAタイプの液晶セルでは、電圧を印加した状態から電圧OFFとしたときの、液晶分子mの立ち上がり方向を揃えるために、液晶分子mは完全な垂直方向からある程度傾いた角度(プレチルト角)で配向している。その際、液晶層2aと電極層2b、2cの界面近傍では、液晶分子の配向方向がプレチルト角からさらにずれ、その部分が反射光に一定の位相差を付与し、コントラスト低下の原因となる。この位相差を解消するため、本発明では、所定の面内位相差と遅相軸方位を有する2軸性の屈折率楕円体(nx>ny>nz)からなる複屈折性を有する第1の位相差板3aを配置し、位相差を解消している。また、液晶分子mが略垂直に配向した液晶セル2は、ポジティブCプレートとしての光学機能を有し、反射光に位相差を付与するが、その成分は、第1の位相差板の付与する位相差により、ある程度打ち消される。
【0022】
他方、斜め入射する光に対し、入射側の第1の偏光板1aと、出射側の第2の偏光板1bのなす角度が90°からずれるために発生する光漏れの対策としては、ポジティブCプレートと、ポジティブAプレートの組み合わせによる光学補償を行うことが適切である。そのため、従来技術では、ポジティブCプレートと、Aプレートを液晶セルとは別に位相差板として配置し、光学補償を行っている。これに対し、本実施形態では、VAタイプの液晶セル2自体が反射光に付与する厚さ方向の位相差を利用し、これを上述のように、第1の位相差板3aが付与する厚さ方向の位相差で調整することにより、別にポジティブCプレートを設けることなく、光漏れを低減し得ることを見出した。つまり、本発明では、暗状態で、液晶分子が垂直に近いプレチルト角に配向した液晶セル2が有するポジティブCプレートとしての特性を、第1の位相差板3aが有するネガティブCプレート成分で調整し、これと1軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有し、面内に光学軸を有する第2位相差板3bが有するポジティブAプレートとしての特性と組み合わせることにより、暗状態(黒表示状態)での光漏れを抑制している。
【0023】
上記目的で、本発明では、液晶セル2の面内位相差と遅相軸方位に対し、第1の位相差板3aの面内位相差と遅相軸方位を所定範囲に調整している。すなわち、第1の位相差板は、垂直方向から入射する直線偏光が、第1の位相差板3a、反射型液晶セル2、第1の位相差板3aの順に通って出射される偏光状態を、入射した直線偏光とほぼ同じ状態に変換する面内位相差と遅相軸方位を有する。例えば、液晶セルの面内位相差をR1、遅相軸方位をθとするとき、第1の位相差板3aは、R2=R1±5nmの面内位相差R2を有し、第1の位相差板の遅相軸方位φは、φ-θ=85°~95°となることが好ましい。ここでR2は、R2=R1±3nmであることがさらに好ましく、最適値は、R2=R1である。またφは、φ-θ=89°~91°となることが好ましく、最適値はφ-θ=90°である。なお、第2の位相差板3bは、垂直方向から入射する直線偏光に対し、位相差を与えない遅相軸方位を有する。
【0024】
[第2実施形態]
上記では、本発明の一実施形態として、VAタイプの液晶セルを用いた液晶表示装置100について説明したが、本発明は、TN(Twisted Nematic)タイプの液晶セルを用いた液晶表示装置にも適用が可能である。VAタイプとTNタイプの相違は、使用する液晶分子によるものなので、装置の概略構造としては、
図1、2、3に例示したものを用いることができる。TNタイプの液晶セルでは、電圧OFFの場合に液晶分子mが液晶層2aと略平行となり、最大電圧印加すると液晶分子mが立ち上がって、黒表示となる。その際も、電極2b、2cの近傍では、分子のチルト角度が垂直に近い角度にはならないので、面内位相差が発生する。この面内位相差も、第1の位相差板3aにより補償し、視野角特性を改善することができる。さらに、黒表示時に、大部分の液晶分子mが垂直に近い角度に立ち上がった状態では、液晶セル2は、ポジティブCプレートに該当する光学特性を有するので、これを第1の位相差層3aが有する厚さ方向の位相差で調整し、さらに第2の位相差板3bと組み合わせることにより、偏光板10a、10bに光が斜め入射することによる光漏れも抑制することができる。
【0025】
[光学補償素子]
上記の本発明において使用される光学補償素子3は、所望の光学特性を有するものであるかぎり、限定されないが、例えば、感光性基を有する液晶性高分子を含む材料から構成されたものであってもよい。これにより、取り扱う液晶セル2の光学特性にあわせて、光学補償素子3の光学特性を簡易なプロセスで任意に調整することができる。
その場合、第1の位相差板3a、および第2の位相差板3bは個別に形成されてもよいが、第1の光学異方性層3Aと、第2の光学異方性層3Bからなる積層体として一体に形成されてもよい。
例えば、第1の位相差板3aを構成する第1の光学異方性層3Aは、感光性基を有し、かつ液晶構造を形成可能である側鎖構造を有する液晶性高分子を含み、重合体が側鎖に有する感光性基の光反応により分子配向が誘起される性質を有する材料から形成されたものであってもよい。光反応は、光二量化反応、光フリース転移反応、光異性化反応等が挙げられるが、好ましくは光二量化反応である。
【0026】
液晶性高分子が液晶構造を形成可能である場合、側鎖構造に液晶性を発揮する剛直な部位であるメソゲン基を有することにより液晶性を発現していてもよいし、または、他の重合体または同一重合体の他の側鎖等との水素結合による二量体を形成可能な構造を有しており、その二量化によりメソゲン構造を形成することにより、液晶性を発現していてもよい。
【0027】
メソゲン基またはメソゲン構造は、2つ以上の芳香族環または脂肪族環とこれを結合する連結基とで構成され、連結基は共有結合でも水素結合でもよい。
芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、複素環(例えば、フラン環、ピラン環等の酸素含有複素環;ピロール環、イミダゾール環等の窒素含有複素環)等が挙げられ、脂肪族環としては、シクロヘキサン環等が挙げられる。なお、これらの芳香族環または脂肪族環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、アルキルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
連結基としては、共有結合である場合、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-NO=N-、-C=C-、-C≡C-、-CO-C=C-、-CH=N-、アルキレン基等が挙げられる。水素結合である場合、カルボキシ基同士の水素結合等が挙げられる。
【0028】
感光性基としては、光エネルギーにより光反応を起こすことが可能な官能基であれば特に制限されず、例えば、カルコン基、クマリン基、シンナモイル基、シンナミリデン基、桂皮酸基、シンナミリデン酢酸基、ビフェニルアクリロイル基、フリルアクリロイル基、ナフチルアクリロイル基、アゾベンゼン基、ベンジリデンアニリン基またはこれらの誘導体等が挙げられ、好ましくは、シンナモイル基であってもよい。
【0029】
液晶性高分子は、繰り返し単位中に、感光性基および液晶構造を形成可能な構造の両方を有している側鎖構造を少なくとも有しているが、感光性基は、メソゲン基またはメソゲン構造とは、側鎖構造の中で独立に存在していてもよいし、化学構造を共有して複合的に存在していてもよい。
【0030】
液晶性高分子は、感光性基および液晶構造を形成可能な構造の両方を有している側鎖構造として、下記式(1)、(2)および(3)で表される側鎖構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有していてもよい。
【0031】
【0032】
(式中、tは1~3の整数であり、R1は水素原子、アルキル基(例えば、C1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C1-6アルキルオキシ基、好ましくはC1-4アルキルオキシ基)、アルケニル基(例えば、C1-6アルケニル基、好ましくはC1-4アルケニル基)、アルキニル基(例えば、C1-6アルキニル基、好ましくはC1-4アルキニル基)、およびハロゲン原子から選択される1種または2種以上を示す。)
【0033】
【0034】
(式中、kは0または1であり、kが0の場合、lは0、kが1の場合、lは1~12の整数;Xは、単結合、C1-3アルキレン基、-C=C-、-C≡C-、-O-、-N=N-、-COO-、または-OCO-;Wは、クマリン基、シンナモイル基、シンナミリデン基、ビフェニルアクリロイル基、フリルアクリロイル基、ナフチルアクリロイル基、ナフチルアクリル酸基、またはそれらの誘導体基;R2およびR3は、それぞれ同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C1-6アルキルオキシ基、好ましくはC1-4アルキルオキシ基)、アルケニル基(例えば、C1-6アルケニル基、好ましくはC1-4アルケニル基)、アルキニル基(例えば、C1-6アルキニル基、好ましくはC1-4アルキニル基)、カルボキシ基およびハロゲン原子から選択される1種または2種以上を示す。)
【0035】
【0036】
(式中、Yは、-C=C-、-N=N-、-CO-C=C-、-C=C-CO-、-CH=N-、または-N=CH-;R4およびR5は、それぞれ同一または異なって、水素原子、アルキル基(例えば、C1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基)、アルキルオキシ基(例えば、C1-6アルキルオキシ基、好ましくはC1-4アルキルオキシ基)、アルケニル基(例えば、C1-6アルケニル基、好ましくはC1-4アルケニル基)、アルキニル基(例えば、C1-6アルキニル基、好ましくはC1-4アルキニル基)、カルボキシ基およびハロゲン原子から選択される1種または2種以上を示す。)
【0037】
液晶性高分子は、好ましくは、上記式(1)で表される側鎖構造を少なくとも有していてもよく、より好ましくは上記式(1)中、tが1であり、R1が水素原子であってもよい。
【0038】
なお、上記式(1)、(2)および(3)で表される側鎖構造は、繰り返し単位における側鎖の末端の化学構造を表しており、これらの側鎖構造と主鎖構造との間に種々の化学構造を含んでいてもよい。
【0039】
液晶性高分子は、上記側鎖構造を含む同一繰り返し単位からなる単独重合体または上記側鎖構造を含む繰り返し単位以外に構造の異なる側鎖構造を含む繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。主鎖構造としては、炭化水素、アクリレート、メタクリレート、シロキサン、マレイミド、N-フェニルマレイミド等が重合して形成される構造が挙げられる。
【0040】
液晶性高分子は、光学異方性層に架橋性化合物が含まれる場合に、架橋性官能基を有する側鎖構造を有していてもよい。架橋性官能基とは、後述の架橋性化合物と架橋反応を起こす官能基であれば特に限定されないが、例えば、水酸基、カルボキシ基等が挙げられる。架橋性官能基を有する側鎖構造は、上記の感光性基を有し、かつ液晶構造を形成可能である側鎖構造を含む繰り返し単位に含まれていてもよく、当該繰り返し単位以外の繰り返し単位中に架橋性官能基を有していてもよい。
【0041】
液晶性高分子は、架橋性官能基を有する側鎖構造として、-(CH2)n-OH(式中、nは1~6の整数である)および-Ph-COOH(式中、Phは二価のフェニル基である)からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有していてもよい。なお、これらの側鎖構造は、繰り返し単位における側鎖の化学構造の少なくとも一部を表しており、これらの側鎖構造と主鎖構造との間に種々の化学構造を含んでいてもよい。
【0042】
液晶性高分子は、共重合体である場合、感光性基および/または液晶構造を形成可能な構造を有していない繰り返し単位を有していてもよい。
【0043】
第1の位相差板を構成する光学異方性層は、液晶性高分子の側鎖の配向性を促進するために、液晶性高分子とともに低分子化合物を含んでいてもよい。低分子化合物としては、メソゲン成分として知られているビフェニル、ターフェニル、フェニルベンゾエート、アゾベンゼン等の置換基を有し、このような置換基と、アリル、アクリレート、メタクリレート、桂皮酸基(またはその誘導体基)等の官能基を、スペーサー(例えば、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5)の(オキシ)アルキレン基等)を介して結合した液晶性を有するものが好ましく用いられる。これらの低分子化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。このような低分子化合物は、液晶性高分子に対して、5~50重量%含んでいてもよく、好ましくは10~30重量%の範囲内で含んでいてもよい。
【0044】
例えば、化学式(1)~(3)で示される液晶性高分子を含む材料を基材上に塗布後、傾斜方向、次いで法線方向から直線偏光紫外線を照射し、80~150℃、好ましくは100~140℃)で加熱、冷却することにより、2軸性の屈折率楕円体の光学特性を有する位相差板を製造できる(特開2003-075639号公報参照)。また、化学式(1)で示される液晶性高分子を含む材料を非プロトン性の極性溶媒に溶解して基材上に塗布付し、法線方向から直線偏光紫外線を照射、または傾斜方向から非偏光または直線偏光の紫外線を照射後、80~150℃(好ましくは100~140℃)で加熱・冷却することにより、2軸性の屈折率楕円体の光学特性を有する位相差板を製造することができる(特開2015-106018号公報参照)。使用する紫外線の波長は、200~400nm、好ましくは250~400nm程度であってもよい。照射エネルギーは、10~400mJ/cm2、好ましくは100~300mJ/cm2程度であってもよい。
【0045】
(第2の位相差板3bの形成)
第2の位相差板3bを構成する第2の光学異方性層3Bは、例えば、上記のようにして形成された第1の光学異方性層3A上に、重合性液晶性材料を溶媒に溶解し溶液として、塗布し、塗布後乾燥し、乾燥加熱処理を行うことにより重合性液晶性材料の配向を誘起させ、ついで、非偏光性の紫外線を照射することにより、この配向を固定して形成することができる。
【0046】
ここで、必要に応じ、重合性液晶性材料中に、液晶性を乱さない程度の量で感光性を有する化合物を添加することができる。この場合、感光性基は、前記光学異方性層を構成する液晶性材料の感光性基と化学構造が同一または類似するものを用いてもよい。
【0047】
(重合性液晶性材料)
重合性液晶性材料は、液晶性ポリマーからなるものであっても、液晶性モノマーからなるものであってもよい。光や熱により重合する官能基を有する重合性液晶性材料や、イソシアネート材料、エポキシ材料などの架橋剤により、液晶性を損なわない程度に架橋構造を導入した液晶性ポリマーであっても、液晶性モノマーであってもよい。また、低分子材料として下記の2官能性の低分子材料を加えて塗布し、重合性液晶性材料を配向させた後、重合させ架橋性ポリマーを含有するようにしてもよい。必要に応じ、光重合開始剤、熱重合開始剤や増感剤を混合してもよい。このような液晶化性材料を第1の光学異方性層上で配向させその配向を固定することにより、配向層上に第2の光学異方性層を形成できる。
【0048】
重合性液晶としては、シッフ塩基系、ビフェニル系、ターフェニル系、エステル系、チオエステル系、スチルベン系、トラン系、アゾキシ系、アゾ系、フェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系、トリメシン酸系、トリフェニレン系、トルクセン系、フタロシアニン系、ポルフィリン系分子骨格を有する液晶化合物、またはこれら化合物の混合物等が挙げられ、架橋性基の導入あるいは適宜な架橋剤のブレンドによって、液晶状態あるいは液晶転移温度以下に冷却した状態で、熱架橋あるいは光架橋等の手段により配向固定化できるものが含まれる。重合性液晶としては、ネマチック性の液晶相を示す化合物を用いることが好ましい。
【0049】
また、重合性液晶は、架橋性基の導入あるいは適宜な架橋剤のブレンドによって、液晶状態あるいは液晶転移温度以下に冷却した状態で、熱架橋あるいは光架橋等の手段により配向固定化できる液晶ポリマーでもよく、メソゲン形成性基で構成されたユニットを有する限り特に限定されない。前記ユニットを液晶ポリマーの主鎖に有していてもよく、側鎖に有していてもよい。主鎖型液晶ポリマーとしては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリウレタン系、ポリベンズイミダゾール系、ポリベンズオキサゾール系、ポリベンズチアゾール系、ポリアゾメチン系、ポリエステルアミド系、ポリエステルカーボネート系、ポリエステルイミド系の液晶ポリマー、またはこれらの混合物等が挙げられる。また側鎖型液晶性ポリマーとしては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマロネート系等の直鎖状又は環状構造の骨格鎖を有する高分子に側鎖としてメソゲン基が結合した液晶ポリマー、またはこれらの混合物等が挙げられる。液晶ポリマーとしては、ネマチック性の液晶相を示すポリマーを用いることが好ましい。
【0050】
架橋性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0051】
光重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン(株)製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学(株)製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬(株)製)、カヤキュアーUVI-6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP-152又はアデカオプトマーSP-170(以上、全て(株)ADEKA製)、TAZ-A、TAZ-PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)及びTAZ-104(三和ケミカル社製)など、市販の光重合開始剤も用いることができる。
【0052】
熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過酸化水素、過硫酸塩、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等が挙げられる。
重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物(または重合性液晶ポリマー)100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合、光増感剤を併用してもよい。光増感剤としては、例えば、キサントン及びチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等);アントラセン及びアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセン等)等のアントラセン化合物;フェノチアジン;ルブレン等が挙げられる。
【0053】
(重合性液晶性材料に含有される、第1の光学異方性層の感光性基と反応し得る感光性基)
重合性液晶性材料中に含有する、第1の光学異方性層3Aの感光性基と反応し得る感光性基を有する化合物は、(i)シンナモイル基、カルコン基、シンナミリデンキ基、ビフェニルアクリロイル基、フリルアクリロイル基、ナフチルアクリロイル基または、それらの誘導体などの感光性基である。このような感光性基を重合性液晶性材料に含有させる方法として、感光性基が重合性液晶性材料の分子構造に含まれていてもよく、あるいは該感光性基を有する化合物を添加してもよい。必要によって添加する化合物が重合性液晶性材料自体の重合性基と反応し得る反応性基を有していてもよい。更には、重合性液晶性材料の液晶性を損なわないことが望ましく、このような化合物として結晶性または液晶性を有する化合物が好適に用いられる。
【0054】
第1の光学異方性層3Aの感光性基と反応し得る、感光性基を有する化合物を、第2の光学異方性層3Bを形成する重合性液晶性材料に含有させることにより、両層の界面で双方の感光性基が反応して結合するため強固な密着性を得ることができる。この反応を進めるには、感光性基の部分が反応し得る波長の光の照射を要し、重合性液晶性材料の配向を固定するための光照射時に進めることもできる。感光性基の種類によっても異なるが、200~400nm、好ましくは250~400nm程度であってもよい。
第1の光学異方性層3Aの感光性基と反応し得る感光性基を有する化合物は、化学式4、5または6で示される構造を有する化合物が例示される。
【0055】
【0056】
【0057】
前記化学式4および化学式5のそれぞれにおいて、nは1~12、mは1~12の整数をそれぞれ示し、XまたはYは、none、-COO、-OCO-、-N=N-、-C=C-または-C6H4-をそれぞれ表し、W1およびW2はシンナモイル基、カルコン基、シンナミリデン基、ビフェニルアクリロイル基、フリルアクリロイル基、ナフチルアクリロイル基もしくはそれらの誘導体を表す。
【0058】
【0059】
化学式6において、sは0または1を表し、tは1~3の整数を表し、RはH、アルキル基,アルキルオキシ基またはハロゲンを表す。
【0060】
以上のようにして、第1の光学異方性層の感光性基と反応し得る感光性基を有する化合物を含有する重合性液晶性材料を配向させ、その配向を固定させるとともに、第1の光学異方性層と重合性液晶性材料を配向させた第2の光学異方性層の界面の密着性を確保した光学フィルム積層体を作製できる。
【0061】
例えば、第1の光学異方性層を形成する感光性基を有する液晶性材料の感光性基と第2の光学異方性層を形成する液晶性材料が含有あるいは添加される化合物の感光性基がシンナモイル基である場合には、一対のシンナモイル基のそれぞれの二重結合が開いてシクロブタン結合を形成することができることから(下記の化学式7参照)、両層間の界面においても同様な反応により二量化が起こり、界面において強固な密着を得ることができるものと考えられる。
【0062】
【0063】
(非偏光性の紫外線照射)
第1の光学異方性層上に重合性液晶性材料を配向させ第2の光学異方性層を形成した後、非偏光性の紫外線を照射するのが好ましい。非偏光性紫外線を照射すると、重合性液晶性材料中の重合性基が反応して配向が固定され、安定した配向層が形成されるともに、第1の光学異方性層における配向も固定される。また、第1の光学異方性層3Aと第2の光学異方性層3Bの、それぞれの層を形成している感光性基を有する液晶性材料と重合性液晶性材料中に含まれる感光性基間に光反応が生じ、両層間の高い密着性に寄与していると考えられる。
【実施例0064】
[実施例1]
本発明の効果をシミュレーションにより検証した。
図4は、黒表示時(電圧を印加しない状態)で、ポジティブCプレート成分の厚さ方向の位相差Rth=150nm、面内位相差16nmで、遅相軸の方位45°のVAタイプの液晶セルを有する、反射型液晶表示装置に、波長550nmの光を入射させ際の、黒表示時の輝度の視野依存性をシミュレーションしたものである。RGBスケールのコンターから読み取った反射率をもとに、
図4に境界を白線で示すように、領域をA,B,C,D,Eに分けると、A,Cでは反射率は0.04~0.05%程度、B,Dでは0.02~0.025程度、Eでは、0.025~0.04程度となり、直上から見た場合(円の中心)でも、光漏れがあること、光漏れに視野角依存性があることが確認される。
図5は、本発明の光学補償形態に従い、
図4の反射型液晶表示装置の液晶セル側から、第1の位相差板(面内位相差Re=16nm、遅相軸方位=135°、厚さ方向位相差Rth=75nm)と、第2の位相差板(面内位相差Re=68nm、厚さ方向位相差Rth=34nm)を装着した場合の輝度視野依存性をシミュレーションしたものである。領域Aでは、反射率は0.000~0.008%、領域Bでも反射率は0.008~0.018%程度であり、全体的に光漏れが低減され、広範囲な視野角で黒表示時の輝度を低減できていることが分かる。
【0065】
[実施例2]
図6は、TN型駆動方式の反射型液晶素子(セルギャップ:1.3μm、液晶層の複屈折Δn:0.146)に、本発明の光学補償素子(反射型液晶表示装置の液晶セル側から、第1の位相差板:面内位相差Re=25nm、遅相軸方位=103°、厚さ方向位相差Rth=100nm、第2の光学補償板:面内位相差Re=67nm、厚さ方向位相差Rth=50nm)を装着し、波長550nmの光を照射した場合のコントラストの視野角特性〔コントラスト=明表示時輝度(セル駆動電圧:0.9V)÷黒表示時輝度(セル駆動電圧:3.9V)〕をシミュレーションしたものである。光学補償素子を装着しなかった場合のシミュレーション結果を
図7に示す。シミュレーション結果はRGB表示されるので、赤色部をR、緑色部をG、青色部をBとして図中に示した。
図6と
図7の対比から、光学補償素子を装着することにより、広範囲な視野角でコントラストを高めることができていることが分かる。
【0066】
[実施例3]
図8に示すように、
図2のタイプの反射型液晶表示装置を模した光学構造を作製し、本発明の効果を検証した。VAタイプの液晶セルで電圧OFF時またはTNタイプの液晶セルで電圧印加時に、液晶分子が垂直配向した(黒表示状態の)液晶セルの代替品として、上述の液晶性高分子を含む材料から作製した光学異方性基板(Re=16nm、遅相軸方向=45°、Rth=150nm)20を準備し、これを反射ミラー40上に設置した。その上に、吸収軸が互いに直交する二枚の偏光板10a、10bを並べて配置し、光源40から入射側偏光板10aを介して光を照射し、出射側偏光板10bを観察すると、ある程度光漏れがあり、完全な黒表示とはならなかった。
ついで、光学補償素子として、上述の液晶性高分子を含む材料を用いて作製した第1の位相差板30a、および第2の位相差板30bを光学異方性基板20と出射側偏光板10bとの間に設置し、視認により、光漏れ低減の程度を確認した。なお、第1の位相差板30aとしては、厚さ方向位相差が異なるものを三種類用意した。光学異方性基板20および第1の位相差板、第2の位相差板の光学特性を下記の表に示す。
【0067】
【0068】
いずれの場合も、上述のR1=R2、φ-θ=90°との条件を充足しており、光漏れの低減(黒表示の改善)が観察された。
【0069】
本発明では、暗状態で、液晶分子が垂直に近いプレチルト角に配向した液晶セル2が有するポジティブCプレートとしての特性を、第1の位相差板3aが有するネガティブCプレート成分で調整し、これと1軸性の屈折率楕円体からなる複屈折性を有し、面内に光学軸を有する第2位相差板3bが有するAプレートとしての特性と組み合わせることにより、暗状態(黒表示状態)での光漏れを抑制している。例1、例2、例3を比較すると、例2の場合が最も暗くなっている、本発明の光学補償機構では、例2の組み合わせが、液晶セル2が有するポジティブCプレートとしての特性を、第1の位相差板3aが有するネガティブCプレート成分で調整する組み合わせとして適当であることを示している。
【0070】
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。