(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104378
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】校正装置
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20240729BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F17C13/02 301A
F17C5/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008537
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大滝 勉
(72)【発明者】
【氏名】竹野 隆晃
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD03
3E172EA24
3E172KA03
3E172KA21
(57)【要約】
【課題】校正装置を経由して充填装置(例えば水素充填装置)から気体燃料を充填される機器(例えばFCVの水素タンク)に気体燃料(例えば水素)を充填する際に、多大な労力を要することなく、確実に通信充填を成立することが出来る校正装置の提供。
【解決手段】本発明の校正装置(10)は、流量計(1)と、(水素を)充填される側(FCV30)の情報を光信号として受信する通信入力部を有する充填ノズル(2)と、受診した信号を水素充填装置(20)の充填ノズル(21)側へ出力する車両通信出力部(3A:発光部)を有するレセプタクル(3)を有し、前記車両通信出力部(3A)はレセプタクル(3)に設けられた円環状部材(3B)で構成されており、当該円環状部材(3B)はその円周方向の所定範囲(例えば円周角が100°以上となる範囲)に光信号を発生する領域を設けている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量計と、充填される側の情報を光信号として受信する通信入力部を有する充填ノズルと、受診した信号を水素充填装置の充填ノズル側へ出力する車両通信出力部を有するレセプタクルを有し、
前記車両通信出力部は校正装置のレセプタクルに設けられた円環状部材で構成されており、
当該円環状部材はその円周方向の所定範囲に光信号を発生する領域を設けていることを特徴とする校正装置。
【請求項2】
前記円環状部材は装着部材によりレセプタクルに取り付けられ、調整部材により装着部材の中心軸方向に移動可能に構成されている請求項1の校正装置。
【請求項3】
前記円環状部材は、光信号が半径方向内方に向かって照射される様に構成されている請求項1の校正装置。
【請求項4】
前記通信入力部は受光部を有し、
当該受光部は、
充填される側のレセプタクルに設けられた発光素子から照射され且つ充填される側の情報を含む光信号を常に受信可能である位置に設けられている請求項1の校正装置。
【請求項5】
前記通信入力部では、前記受光部に接続されて受光した光信号を伝達する信号線が束を構成している請求項4の校正装置。
【請求項6】
通信充填が成立していることを示す報知手段を設けた請求項1~5の何れか1項の校正装置
【請求項7】
充填装置本体と校正装置を備え、
当該校正装置は、流量計と、充填される側の情報を光信号として受信する光通信入力部を有する充填ノズルと、受診した信号を充填装置本体の充填ノズル側へ出力する車両通信出力部を有するレセプタクルを有し、
前記車両通信出力部は前記校正装置のレセプタクルに設けられた円環状部材で構成されており、当該円環状部材はその円周方向の所定範囲に光信号を発生する領域を設けており、
前記校正装置の充填ノズルを充填される側のレセプタクルに接続し且つ水素充填装置本体の充填ノズルを前記校正装置のレセプタクルに接続することにより、気体燃料を充填しつつ水素充填装置の校正作業を行う機能を有しており、充填される側からの光信号を前記水素充填装置本体側の充填ノズルの通信入力部に信号伝達手段を介して通信充填を行うことを特徴とする水素充填装置。
【請求項8】
通信充填が成立していることを示す報知手段を設けた請求項7の水素充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水素の様な気体燃料を燃料電池車輌(FCV)に充填する充填装置の流量計の校正に用いられる校正装置であって、流量計(マスターメーター:コリオリ式流量計等)を有する校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の校正装置を示す
図14において、校正装置40(例えば特許文献1参照)は、流量計41(マスターメーター:コリオリ式流量計等)と、充填ノズル42と、レセプタクル43を有している。充填ノズル42は、FCV30(FCV)のレセプタクル31と接続可能である。レセプタクル43は、水素充填装置20の充填ノズル21と接続可能である。校正装置40は、充填ノズル42をFCV30のレセプタクル31に接続し、且つ、水素充填装置20の充填ノズル21を(校正装置40の)レセプタクル43に接続することにより、流量計41を介装した燃料配管44A、44B(例えば水素配管)を介してFCV30に水素等の気体燃料を充填しつつ、水素充填装置20(例えば、水素充填装置)の校正作業を行うことが出来る。
ここで、FCV30の燃料タンク(水素タンク:図示せず)への充填圧力は、通信充填の場合(82MPa)に比較して、非通信充填の場合(70MPa)は低圧である。そのため、非通信充填の場合は外気温によって充填量が制限され、FCV30の水素タンクは満充填にすることが出来ない場合がある。従って、校正装置40を経由して水素充填装置20からFCV30に水素充填する場合においても、通信充填が成立していることが望まれる。
通信充填を成立するためには、校正装置40の充填ノズル42から光ファイバーケーブル45を介して取得されるFCV側の情報に関する光信号であって、校正装置40のレセプタクル43に設けられた発光部(例えば光ファイバーの端部、図示しない)から照射される光信号を、水素充填装置20の充填ノズル21に設けられた受光素子(図示しない)が確実に受光出来る様に構成する必要がある。
【0003】
しかし、水素充填装置20の充填ノズル21は製造メーカー毎に、当該ノズルの半径方向及び円周方向における受光素子の位置が異なっており、校正装置40のレセプタクル43に水素充填装置20の充填ノズル21を接続しても、校正装置40のレセプタクル43の発光部から発信(照射)される光信号が、水素充填装置20の充填ノズル21の受光素子で受光出来ない場合が存在した。
レセプタクル43側から照射される光信号が充填ノズル21側の受光素子で確実に受光される様に、光信号を照射する発光部(例えば光通信用ケーブル端部)の位置を調整する治具をレセプタクル43側に設けることが可能である。しかしながら、充填ノズルのメーカー毎に異なる治具をレセプタクル43に設ける必要があり、且つ、治具の位置を調整するために高精度の作業を行う必要があるので、校正作業全体に多大な労力を要求することになる、という問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、校正装置を経由して充填装置(例えば水素充填装置)から充填される側の機器(例えばFCV)に気体燃料(例えば水素)を充填する場合において、多大な労力を要することなく確実に通信充填を成立することが出来る校正装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の校正装置(10)は、
流量計(1:マスターメーター:コリオリ式流量計等)と、(水素を)充填される側(30:例えばFCVの車載タンク側)の情報を光信号として受信する通信入力部を有する充填ノズル(2:校正装置の充填ノズル)と、受診した信号を水素充填装置(20)の充填ノズル(21)側へ出力(伝達)する車両通信出力部(3A:発光部)を有するレセプタクル(3:校正装置のレセプタクル)を有し、
前記車両通信出力部(3A)は校正装置(10)のレセプタクル(3)に設けられた円環状部材(3B)で構成されており、
当該円環状部材(3B)はその円周方向の所定範囲(円周方向の1/3以上の範囲、或いは円周角が100°以上となる範囲)に光信号を発生する領域を設けていることを特徴としている。
係る校正装置(10)は充填装置には包含されていない。
【0007】
本発明において、前記円環状部材(3B)は装着部材(3C)によりレセプタクル(3)に取り付けられ、調整部材(3D)により装着部材(3C)の中心軸方向に移動可能に構成されているのが好ましい。
そして本発明において、前記円環状部材(3B)は、光信号が半径方向内方に向かって照射される様に構成されているのが好ましい。
【0008】
また本発明において、前記通信入力部は受光部(2A)を有し、
当該受光部(2A)は、
充填される側(30:例えばFCVの水素タンク)のレセプタクル(31)に設けられた発光素子(31AA)から照射(出力)される光信号(例えば車載タンク内の圧力及び温度の情報を含む)を常に受信可能である位置に設けられているのが好ましい。
そして、前記通信入力部では、前記受光部(2A)に接続されて受光した光信号を伝達する信号線(5:光ファイバー)が束を構成しているのが好ましい。
【0009】
本発明の校正装置において、通信充填が成立していることを示す報知手段を(校正装置の充填ノズル或いは表示器に)設けることが出来る。
【0010】
また、本発明の水素充填装置(100)は、
水素充填装置(20)と校正装置(10)を備え、
当該校正装置(10)は、流量計(1)と、充填される側(30)の情報を光信号として受信する光通信入力部(2A)を有する充填ノズル(2)と、受診した信号を水素充填装置(20)の充填ノズル(21)側へ出力する車両通信出力部(3A)を有するレセプタクル(3)を有し、
前記車両通信出力部(3A)は前記校正装置(10)のレセプタクル(3)に設けられた円環状部材(3B)で構成されており、当該円環状部材(3B)はその円周方向の所定範囲(円周方向の1/3以上の範囲、或いは、円周角が100°以上となる範囲)に光信号を発生する領域を設けており、
前記校正装置(10)の充填ノズル(2)を充填される側(30)のレセプタクル(31)に接続し且つ水素充填装置(20)の充填ノズル(21)を前記校正装置(10)のレセプタクル(3)に接続することにより、気体燃料(例えば水素)を充填しつつ水素充填装置(20)の校正作業を行う機能を有しており、充填される側(30)からの光信号を前記水素充填装置(20)側の充填ノズル(21)の通信入力部に信号伝達手段を介して通信充填を行うことを特徴としている。
【0011】
ここで、本発明の(校正装置10を備える)水素充填装置(100)における校正装置(10)は、前記校正装置(請求項2~6の何れか1項の校正装置)により構成することが出来る。
また本発明の水素充填装置(100)において、通信充填が成立していることを示す報知手段を(後方設備に)設けることが出来る。
【発明の効果】
【0012】
上述の構成を具備する本発明によれば、当該円環状部材(3B)はその円周方向の所定範囲(円周角が100°以上となる範囲)に光信号を発生する領域(3A)を設けているので、水素充填装置(20)側の充填ノズル(21)の受光素子(21A)がどの位置で取り付けられても、円環状部材(3B)から照射される光信号は確実に、水素充填装置(20)側の充填ノズル(21)の円周方向における受光素子(21A)によって受光される。
その結果、FCVの様な水素を充填される側(30)の情報(例えば車載タンク内の圧力、温度の情報)を包含する光信号は、円環状部材(3B)から照射されて、水素充填装置(20)側の充填ノズル(21)の受光素子(21A)により確実に受光され、通信充填が成立する。
【0013】
また本発明において、前記円環状部材(3B)は装着部材(3C)によりレセプタクル(3)に取り付けられ、調整部材(3D)により装着部材(3C)の中心軸方向に移動可能に構成されている。車両通信出力部(3A)から照射される光信号の(円環状部材3Bの装着部材3Cの中心軸方向に対する)照射角度が一定であれば、水素充填装置(20)側の充填ノズル(21)端面との距離が変動すれば、光信号の照射位置の前記端面における半径方向位置も変動する(
図4参照)。
接続した充填ノズル(21)の位置は固定されるので、円環状部材(3B)の装着部材(3C)中心軸方向位置を調整すれば、円環状部材(3B)と充填ノズル(21)端面の距離も調整され、光信号の照射位置と前記充填ノズル(21)の受光素子(21A)の半径方向位置とを整合させることが出来る。
そのため、水素充填装置(20)側の充填ノズル(21)のメーカーにより変動する受光素子(21A)の半径方向位置に拘わらず、FCVの様な水素を充填される側(30)の情報(例えば車載タンク内の圧力、温度の情報)を包含する光信号は、車両通信出力部(3A)から照射されて、水素充填装置(20)側の充填ノズル(21)の受光素子(21A)により確実に受光され、通信充填が成立する。
すなわち本発明によれば、メーカー毎に円周方向位置及び/又は半径方向位置が異なる水素充填装置(20)側の充填ノズル(21)における受光素子(21A)に対して、充填される側(30)の情報を含む光信号を確実に照射して、当該情報を確実に水素充填装置(20)側に伝達することが出来る。
【0014】
本発明において、校正装置(10)の充填ノズル(2)に設けられた受光部(2A)が、充填される側(30:例えばFCV)のレセプタクル(31)に設けられた発光素子(31AA)から照射(出力)される光信号を受信可能である位置にあれば、通信充填が成立する。
この様に本発明によれば、校正装置(10)を経由して水素充填装置(20)から充填される側(30)に気体燃料を充填する場合に、特別な治具やその調整作業を行うことなく、容易且つ確実に通信充填を成立させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】図示の実施形態に係る流量式の校正装置の使用状態の説明図である。
【
図5】円環状部材における発光部の円周方向の配置を例示する説明図である。
【
図6】円環状部材における発光部の
図5で示す以外の配置を例示する説明図である。
【
図7】円環状部材における発光部の
図5、
図6で示す以外の配置を例示する説明図である。
【
図8】円環状部材と光ファイバーとの相対的な位置関係を説明するための分解説明図である。
【
図9】水素充填装置の充填ノズルと円環状部材との位置関係を示す説明図である。
【
図11】FCV側のレセプタクルの発光部を示す説明図である。
【
図12】校正装置の充填ノズルと受光部を示す説明図である。
【
図13】校正装置の充填ノズルにおける受光部と、円環状部材の発光部を接続する光ファイバーの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図13を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態では、(水素を充填される側の機器である水素タンクを有する)FCV30に対して、水素充填装置20(充填装置)から校正装置10を介して、水素(気体燃料)を充填する場合について示している。この場合、校正装置10は水素充填装置20とは別体である。一方、「水素充填装置20」が「校正装置10」を含む場合には、「水素充填装置100」と記載している。
校正装置10の使用状態を示す
図1において、校正装置10は、流量計1(マスターメーター:コリオリ式流量計等)、FCV30側(水素を充填される車載タンク側)に配置された充填ノズル2、水素充填装置20側に配置されたレセプタクル3、流量計1を介して充填ノズル2とレセプタクル3を接続する水素配管4A、4B、充填ノズル2の受光部2A、レセプタクル3の発光部3A(車両通信出力部)、受光部2Aと発光部3Aを接続して光信号の信号伝達系統を構成する光ファイバーケーブル5を有している。
校正装置10の充填ノズル2は、FCV30側のレセプタクル31と接続及び取り外し可能であり、校正装置10のレセプタクル3は水素充填装置20の充填ノズル21と接続及び取り外し可能に構成されている。
【0017】
校正装置10の充填ノズル2の受光部2Aは、レセプタクル31からFCV30側の情報(例えば車載タンク内の圧力及び温度)を光信号として受信する通信入力部を構成する。校正装置10の充填ノズル2の受光部2A(受光素子2AA:
図12)とFCV30側のレセプタクル31に設けられた発光部31A(
図11)の発光素子31AA(
図11)における光信号の授受については、
図11、
図12を参照して後述する。
校正装置10のレセプタクル3の発光部3Aは、校正装置10の充填ノズル2で受信した光信号(例えば車載タンク内の圧力及び温度に関する信号)を水素充填装置20の充填ノズル21に出力(伝達)する車両通信出力部を構成する。校正装置10のレセプタクル3の発光部3Aと水素充填装置20側の充填ノズル21の受光素子21A(
図4)における光信号の授受については、
図3、
図4を参照して後述する。
【0018】
図1において、校正装置10により校正をする場合には、水素は、水素充填装置20から充填ホース22、充填ノズル21、校正装置10側のレセプタクル3(レセプタクル3を構成する後述の装着部材3C)、水素配管4B、流量計1、水素配管4A、校正装置10側の充填ノズル2、FCV30側のレセプタクル31を介して、FCV30の車載タンク(水素タンク:図示せず)に充填される。流量計1においては充填された水素充填量を正確に計測する。それにより水素充填装置20内で水素を計測する流量計(図示せず)の精度を評価することが出来る。
その際に、FCV30の車載タンク内の情報(圧力、温度)は、図示しないセンサで検出され、FCV30側のレセプタクル31に設けられた発光部31A(
図11)の発光素子31AA(
図11)から、校正装置10の充填ノズル2の受光部2A(受光素子2AA、
図12)、光ファイバーケーブル5、校正装置10のレセプタクル3の発光部3A(
図4)、水素充填装置20の充填ノズル21の受光素子21A(
図4)を介して、水素充填装置20に伝達される。以て、通信充填が成立する。
【0019】
上述した様に、水素充填装置20の充填ノズル21における受光素子21Aの円周方向位置及び/又は半径方向位置は、メーカー毎に異なっている。
それに対して図示の実施形態では校正装置10のレセプタクル3の発光部3A(車両通信出力部)から光信号を確実に照射するため、円環状部材3Bは、調整部材3D(
図3参照)により、装着部材3Cの中心軸方向に移動可能となる様に構成されている。
円環状部材3B、装着部材3C、調整部材3Dの機能、作用を含め、校正装置10側の発光部3Aと充填ノズル21側の受光素子21Aにおける光信号の授受については、
図3、
図4等を参照して後述する。
明確には図示されていないが、通信充填が成立していることを示す報知手段が、校正装置10の充填ノズル2或いは表示器(図示せず)、或いは、後方設備に設けることが出来る。
これにより、通信充填成立が作業者により確実に確認され、充填圧力が昇圧し、満充填が確実に行われる。
図1を参照した説明では「水素充填装置20」の文言は、「校正装置10」を含まない意味で使用している。一方、「水素充填装置」が「校正装置10」を含む場合には、「水素充填装置100」と記載している。
【0020】
図示の実施形態に係る校正装置10を詳細に示す
図2において、校正装置10以外の部材、すなわち水素充填装置20の充填ノズル21と、FCV30のレセプタクル31は、それぞれ破線で示されている。
校正装置10のレセプタクル3の発光部3Aは円環状部材3Bに設けられており、円環状部材3Bは装着部材3Cによりレセプタクル3に取り付けられている。
図2において、矢印A2は発光部3Aから照射される光信号の方向を示している。
校正装置10の充填ノズル2の受光部2Aは、支持部材2Bにより充填ノズル2に固定される。そして、受光部2Aにおける受光素子2AAは、FCV30のレセプタクル31側の端部近傍に配置される。
【0021】
次に
図3~
図10を参照して、校正装置10のレセプタクル3に設けられた円環状部材3Bについて説明する。
図3は円環状部材3Bを水素充填装置の充填ノズル側から見た状態を示している。円環状部材3Bの外周縁部から半径方向内方の領域に、円環状に発光部3Aが示されている。
図3において、円環状部材3Bは、その外周部に円周方向等間隔に複数の調整用ボルト3D(調整手段:
図3では3個所)が配置されている。調整用ボルト3Dを締め込んで半径方向内方に移動させることにより、円環状部材3Bを装着部材3Cに対して固定して保持することが出来る
調整用ボルト3Dを緩めることにより、円環状部材3Bが装着部材3Cの中心軸方向に移動可能となる。
なお、装着部材3Cは中空に構成されており、その内部空間は水素流路を構成する。
【0022】
円環状部材3Bの作用を示す
図4において、2種類の充填ノズル21-1、21-2は、各々の受光素子21A-1、21A-2の半径方向位置が異なっている。
図4では、2種類の充填ノズル21-1、21-2と、円環状部材3Bとの相対的な位置が示されている。充填ノズル21-1とその受光素子21A-1は実線で示されており、充填ノズル21-2とその受光素子21A-2は破線で示されている。
図4において、光信号の信号伝達部材である多数の光ファイバーの束を構成する光ファイバーケーブル5(
図13参照)は、円環状部材3B内において、個々の光ファイバー5A(符号5Aで示す)として、円周方向の所定範囲(円周角が100°以上となる範囲)に配置され、レセプタクル3における光信号の発光部3Aを構成している。
【0023】
図4で示す様に、光ファイバー5Aは、円環状部材3B内において、充填ノズル21側(
図4では左方)が半径方向内方に位置して、充填ノズル21より離隔した側(
図4では右方)が半径方向外方に位置する様に配置されている。そのため、円環状部材3Bの発光部3Aから照射される光信号は、
図4の矢印A4で示す様に、充填ノズル21側(
図4の左方)に行くほど半径方向内方に向かう様に照射される。そして半径方向内方に向かって照射される光信号は、指向性が強いため、適宜調整することにより、水素充填装置20の充填ノズル21における受光素子21Aに対して確実に照射される。
校正装置10のレセプタクル3と接続したときの水素充填装置20側の充填ノズル21の位置は固定されるので、円環状部材3Bの装着部材3Cの中心軸3CC方向の位置を調整(矢印A5)することにより、円環状部材3Bと充填ノズル21端面の中心軸3CC方向距離も調整される。上述した様に、光信号が照射される方向は一定なので、円環状部材3Bと充填ノズル21端面の中心軸3CC方向距離を適宜調整すれば、円環状部材3Bの発光部3Aから照射される光信号の半径方向位置を移動させることが出来る。
その結果、水素充填装置20側の充填ノズル21の円周方向及び/又は半径方向における受光素子21Aの位置がメーカー毎に異なっていたとしても、円環状部材3Bから照射される光信号(例えば車載タンク内の圧力、温度の情報を包含する光信号)は、確実に水素充填装置20側の充填ノズル21の(メーカーにより変動する円周方向位置/又は半径方向位置の)受光素子21Aによって受光され、水素充填装置20からFCV30への通信充填が成立する。この調整に際しては特別な治具及び煩雑な治具調整作業を行う必要はなく、容易に通信充填を行うことが可能である。
【0024】
上述した様に、円環状部材3Bを装着部材3Cの中心軸3CC方向に動かして(矢印A5)、円環状部材3Bの位置を調節することにより、発光部3Aから照射される光信号が照射される半径方向位置は、充填ノズル21-1、21-2の何れの受光素子21A-1、21A-2の半径方向位置と等しくなる。
例えば、充填ノズル21-1と円環状部材3Bの中心軸3CC方向位置が、
図4の実線で示す様な相対位置であれば、円環状部材3Bの発光部3Aから照射される光信号は、充填ノズル21-1の受光素子21A-1の半径方向位置に対しても照射される。一方、充填ノズル21-2の受光素子21A-2と円環状部材3Bの発光部3Aの中心軸3CC方向の相対位置が、
図4の実線と破線で示す様な相対位置であれば、円環状部材3Bの発光部3Aから照射される光信号は、充填ノズル21-2の受光素子21A-2の半径方向位置に対しても照射される。
【0025】
円環状部材3Bにおける発光部3A、すなわち光ファイバー5Aの端部は、円環状部材3Bの充填ノズル21側(
図4では左側)の端面の円周方向全域に亘って配置する必要はない。
発明者の実験の結果、円環状部材3Bの充填ノズル21側(
図4では左側)の端面の円周方向において、発光部3Aは、その中心角が100°以上となる様な領域もしくは円周方向全域の1/3以上の領域に亘って配置されていれば、受光素子21Aがどの様な円周方向位置であっても、発光部3Aから照射される光信号を確実に受光することが分かった。すなわち、メーカー毎に充填ノズル21側の受光素子21Aの円周方向位置が異なっていたとしても、校正装置10側の発光部3Aが、円周角が100°以上となる様に配置されていれば、通信充填が成立する。
【0026】
図5は、円環状部材3Bの端面における発光部3Aの配置を例示している。発光部3Aは
図5(A)で示す様に、中心角θ(θ≧100°)に亘って連続して配置しても良いが、
図5(B)で示す様に、断続的に配置して、断続的に配置された発光部3A(1)、3A(2)、3A(3)、3A(4)の中心角θの合計が100°以上であれば、FCV30側から伝達された情報(車載タンク内の圧力及び温度)は確実に水素充填装置20側に伝達されて、通信充填が成立する。
【0027】
また、同様に円環状部材3Bの端面における発光部3Aは、任意の円環状部材3Bの同心円C6(
図6では一点鎖線で示す)と平行に配置することが出来る。しかし、平行に配置せず、
図6で示す様に、同心円C6に対して傾斜して配置しても良い。
さらに、
図7(A)で示す様に、円環状部材3Bの端面における発光部3Aの半径方向位置が漸次大きくなる、或いは発光部3Aが漸次半径方向外方に移動して、いわゆる「渦巻き状」となる様に、発光部3Aを配置しても良い。
それに加えて、
図7(B)で示す様に、円環状部材3Bの端面における発光部3Aの半径方向位置が任意に変化する様に、発光部3Aを配置することが可能である。
【0028】
図8を参照して円環状部材3B内における光ファイバー5A(光ファイバーケーブルを構成する個々の光ファイバー)の配置を説明する。
図8で示す様に、円環状部材3Bは外側部材3B1と内側部材3B2で構成されており、外側部材3B1の内周面と内側部材3B2の外周面は相補的な寸法、形状に設定されている。外側部材3B1の内周面と内側部材3B2の外周面は、
図4で示す様に、充填ノズル21側に近づく程(
図8で下方に近づく程)、半径方向寸法が小さくなる様に設定されている。それにより、
図4で説明した光信号の照射方向が定義される。
光ファイバー5Aを配置するに際して、外側部材3B1の内周面と内側部材3B2の外周面の間に光ファイバー5Aを位置させた状態で、外側部材3B1の内部空間に内側部材3B2を挿入する。これにより、個々の光ファイバー5Aを、円環状部材3Bの(水素充填装置20の充填ノズル21側)端面に配置することが出来る。
【0029】
図9で示す様に、校正装置10のレセプタクル3と水素充填装置20側の充填ノズル21と接続した際、円環状部材3Bと充填ノズル21の間には、装着部材3Cの中心軸3CC方向について隙間CLが形成される。この隙間CLから、太陽光等の、発光部3Aから充填ノズル21の受光素子21Aに伝達される光信号(矢印A9)に対する外乱要因が侵入する恐れがある。
それに対して図示の実施形態では、
図10で示す様に、隙間CLを覆う様に、概略円錐台形のカバー3Eを設けている。カバー3Eは、隙間CLからの太陽光等の侵入を効率的に回避する様に、その形状が設定されている。明示されてはいないが、カバー3Eは従来公知の方法で装着部材3Cに取り付けられる。
カバー3Eを設けることにより、隙間CLから太陽光等の外乱要因が侵入して、光信号が乱されることが防止される。
それと共に、充填ノズル21をレセプタクル3に接続する際に、カバー3Eは目印或いは案内部材として作用することが可能である。
【0030】
次に
図11、
図12を参照して、FCV30側のレセプタクル31から校正装置10の充填ノズル2に、FCV30の車載タンク内の圧力、温度の情報を包含する光信号を確実に受信させるためのメカニズムを説明する。
図11において、FCV30側のレセプタクル31には扇形或いは破断した円環状の発光部31Aが設けられ、発光部31Aには複数(実施形態では4箇所)の発光素子31AAが設けられている。
図11において、校正装置10側の充填ノズル2との(レセプタクル31における)接合部を符号31Bで示す。
通信充填に際して、FCV30側の情報(車載タンク内の圧力及び温度)を含む光信号が、レセプタクル31の発光素子31AAから、校正装置10側の充填ノズル2の受光素子2AAに伝達される。
図12で示す様に、校正装置10側の充填ノズル2には、支持部2Bを介して受光部2Aが取り付けられている。受光部2Aは、通信入力部を構成する。
受光部2Aは光ファイバーケーブル5を支持しており、光ファイバーケーブル5の端部(FCV30のレセプタクル31側の端部:
図12で右側端部)には受光素子2AAが配置されている。
図12において、充填ノズル2におけるレセプタクル31との接合部は、符号2Cで示されている。
【0031】
ここで、
図11、
図12において、受光部2A及び支持部2Bの形状及び寸法の設定、受光部2Aの受光素子2AAの配置は、受光素子2AAの位置がFCV30側のレセプタクル31の(4箇所の)発光素子31AAの何れから照射される光信号(FCV30側の情報、車載タンクの圧力、温度)が、常に受信可能である位置(発光素子31AAと少なくとも部分的に整合する位置)となる様に設定されている。
そのため、FCV30の情報を含む光信号は、校正装置10の充填ノズル2の受光部2Aにより確実に受光される。
【0032】
FCV30側のレセプタクル31の(4箇所の)発光素子31AAの何れから照射される光信号(FCV30側の情報、車載タンクの圧力、温度)が、受光素子2AAにより常に受信可能である様にするためには、水素充填の規格(SAE J2799[2014])に沿って、受光素子2AAを配置する必要がある。より具体的には、SAE J2799[2014]の4.2.1.1~4.2.1.6、4.2.2.1~4.2.2.5の内容を充足する必要がある。
【0033】
次に
図13を参照して、光ファイバーケーブル5について説明する。
図13において、光ファイバーケーブル5は多数の光ファイバーの束により構成されており、当該束は、校正装置10側の充填ノズル2に支持部2Bに支持されている。なお、
図13では、光ファイバーケーブル5を説明するため、光ファイバー5A、光ファイバーケーブル5を、充填ノズル2、支持部2Bに比較して大きく示している。
光ファイバーケーブル5における充填ノズル2側端部(
図13の右側端部:FCV30のレセプタクル31側端部)は受光部2Aを構成しており、受光素子2AAが配置されている。
光ファイバーケーブル5における充填ノズル2とは反対側の端部(
図13で左側端部:水素充填装置20の充填ノズル21側)は、校正装置10の円環状部材3B(
図13では図示せず)に接続される。円環状部材3Bにおける充填ノズル21側の端面において、個々の光ファイバー5Aは、円環状部材3Bの円周方向に配置されて発光部23A(
図4)を構成している。
【0034】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では、充填される側の機器としてFCV、充填装置として水素充填装置、気体燃料として水素を用いる場合を例示しているが、充填される側の機器はFCVに限定される訳ではなく、また、充填される気体は水素に限定される訳ではない。そして、充填装置としては、その他の気体燃料を供給する機能を有する充填装置であっても、本発明は適用できる。
また本明細書において、水素充填装置は、「水素充填装置20」と表記する場合の様に校正装置10とは別体に構成しても良く、或いは、「水素充填装置100」と表記する場合の様に校正装置10を包含しても良い。
【符号の説明】
【0035】
1・・・流量計(マスターメーター:コリオリ式流量計等)
2・・・校正装置の充填ノズル
2A・・・受光部(通信入力部)
2AA・・・受光素子
3・・・校正装置のレセプタクル
3A・・・発光部(車両通信出力部)
3B・・・円環状部材
3C・・・装着部材
3D・・・調整部材
4・・・水素配管
5・・・光ファイバーケーブル
10・・・校正装置
20・・・水素充填装置(校正装置10等を含まない)
21・・・充填ノズル
21A・・・充填ノズルの受光素子
30・・・燃料電池自動車(FCV)
31・・・レセプタクル
31A・・・レセプタクルの発光部
31AA・・・レセプタクルの発光素子
100・・・水素充填装置(校正装置10等を含む)