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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104394
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】二重殻容器の漏れ検出装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/503 20190101AFI20240729BHJP
   B65D 88/78 20060101ALI20240729BHJP
   G01M 3/02 20060101ALI20240729BHJP
   G01M 3/04 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B65D90/503
B65D88/78 A
G01M3/02 K
G01M3/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008578
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮部 善和
(72)【発明者】
【氏名】小野林 稔
(72)【発明者】
【氏名】堤 英紀
(72)【発明者】
【氏名】川口 大輝
【テーマコード(参考)】
2G067
3E170
【Fターム(参考)】
2G067AA03
2G067BB02
2G067BB03
2G067CC02
2G067DD09
3E170AB01
3E170AB11
3E170BA07
3E170CA05
3E170CB10
3E170CC02
3E170GB01
3E170GB02
3E170GB04
3E170QA02
3E170RA01
3E170RA20
3E170VA20
3E170WB01
(57)【要約】
【課題】従来とは異なる構成により、二重殻容器から空間部への溶液の漏れを検出する。
【解決手段】干潟槽20は、外殻容器部21と内殻容器部22とを有し、両容器部21,22の間に空間部24が形成されている。外殻容器部21の空間部24とは反対側の面が、水を含む海水Saと接する。内殻容器部22の空間部24とは反対側の面が、水を含む湿泥33と接する。漏れ検出装置70は、空間部24を減圧する減圧手段71と、空間部24における湿度を検出する湿度センサ75と、減圧手段71により空間部24を減圧した状態で湿度センサ75により検出された温度と、減圧前の空間部24の温度と、を比較することによって、海水Sa又は湿泥33の漏れ判定を行うコントローラ60と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻容器部と内殻容器部とを有し、前記外殻容器部と前記内殻容器部との間に空間部が形成されている二重殻容器において、
前記外殻容器部の前記空間部とは反対側の面、及び/又は、前記内殻容器部の前記空間部とは反対側の面が、減圧で気化する溶媒を含む溶液と接する、二重殻容器の漏れ検出装置であって、
前記空間部を減圧する減圧手段と、
前記空間部における溶媒ガスの濃度を検出するガス濃度検出手段と、
前記減圧手段により前記空間部を減圧した状態で前記ガス濃度検出手段により検出された溶媒ガスの濃度と、減圧前の前記空間部の溶媒ガスの濃度と、を比較することによって、前記溶液の漏れ判定を行う制御装置と、
を備える、二重殻容器の漏れ検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二重殻容器の漏れ検出装置であって、
前記ガス濃度検出手段は、分散的に複数配置されており、
前記制御装置は、複数の前記ガス濃度検出手段による検出結果の比較によって漏れ箇所を特定する、二重殻容器の漏れ検出装置。
【請求項3】
外殻容器部と内殻容器部とを有し、前記外殻容器部と前記内殻容器部との間に空間部が形成されている二重殻容器において、
前記外殻容器部の前記空間部とは反対側の面、及び/又は、前記内殻容器部の前記空間部とは反対側の面が、減圧で気化する溶媒を含む溶液と接する、二重殻容器の漏れ検出装置であって、
前記空間部を減圧する減圧手段と、
前記空間部の温度を検出する温度検出手段と、
前記減圧手段により空間部を減圧した状態で前記温度検出手段により検出された温度と、減圧前の前記空間部の温度と、を比較することによって、前記溶液の漏れ判定を行う制御装置と、
を備える、二重殻容器の漏れ検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の二重殻容器の漏れ検出装置であって、
前記温度検出手段は、分散的に複数配置されており、
前記制御装置は、複数の前記温度検出手段による検出結果の比較によって漏れ箇所を特定する、二重殻容器の漏れ検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は二重殻容器の漏れ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二重殻タンクの漏洩を検出する二重殻タンクシステムが記載されている。従来の二重殻タンクシステムは、内部に液体を貯留する内殻タンクと、内殻タンクの外側に設けられた外殻タンクと、内殻タンクと外殻タンクとの間に形成された空間と、空間内の気体圧力を減圧又は加圧する気体圧力設定手段と、空間内の気体圧力を検出する圧力検出手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-113859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二重殻タンクシステムは、内殻タンクと外殻タンクとの間の空間の気体圧力を気体圧力設定手段で減圧又は加圧し、圧力検出手段により検出された気体圧力の変化に基づいて内殻タンク又は外殻タンクからの溶液の漏れを検出する。
【0005】
本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、従来とは異なる構成により、二重殻容器から空間部への溶液の漏れを検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本明細書が開示する技術は次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、外殻容器部と内殻容器部とを有し、前記外殻容器部と前記内殻容器部との間に空間部が形成されている二重殻容器において、前記外殻容器部の前記空間部とは反対側の面、及び/又は、前記内殻容器部の前記空間部とは反対側の面が、減圧で気化する溶媒を含む溶液と接する、二重殻容器の漏れ検出装置であって、前記空間部を減圧する減圧手段と、前記空間部における溶媒ガスの濃度を検出するガス濃度検出手段と、前記減圧手段により前記空間部を減圧した状態で前記ガス濃度検出手段により検出された溶媒ガスの濃度と、減圧前の前記空間部の溶媒ガスの濃度と、を比較することによって、前記溶液の漏れ判定を行う制御装置と、を備える、二重殻容器の漏れ検出装置である。
【0008】
第1の手段によると、二重殻容器の外殻容器部と内殻容器部との間の空間部を減圧手段により減圧させた減圧状態で、ガス濃度検出手段により空間部における溶媒ガスの濃度を検出する。制御装置は、ガス濃度検出手段により検出された溶媒ガスの濃度と、減圧前の空間部の溶媒ガスの濃度と、を比較することによって、溶液の漏れ判定を行う。仮に、外殻容器部及び/又は内殻容器部から空間部へ溶液が漏れた場合、空間部の減圧によって溶媒が気化されて溶媒ガスとなるため、溶媒ガスの濃度が高くなる。したがって、制御装置は、ガス濃度検出手段により検出された溶媒ガスの濃度が減圧前の溶媒ガスの濃度に比べ高い場合に、溶液の漏れ有りの判定を行う。よって、従来とは異なる構成により、二重殻容器から空間部への溶液の漏れを検出することができる。
【0009】
第2の手段は、第1の手段の二重殻容器の漏れ検出装置であって、前記ガス濃度検出手段は、分散的に複数配置されており、前記制御装置は、複数の前記ガス濃度検出手段による検出結果の比較によって漏れ箇所を特定する、二重殻容器の漏れ検出装置である。
【0010】
第2の手段によると、制御装置は、複数のガス濃度検出手段の検出結果の比較によって、溶媒ガスの濃度が高い所の近傍を漏れ箇所として特定する。空間部における溶媒ガスの濃度は、二重殻容器の漏れ箇所に近いほど高く、遠いほど低い。したがって、溶媒ガスの濃度が高い所の近傍を漏れ箇所として特定することができる。これにより、二重殻容器の漏れの修理を速やかに行うことができる。
【0011】
第3の手段は、外殻容器部と内殻容器部とを有し、前記外殻容器部と前記内殻容器部との間に空間部が形成されている二重殻容器において、前記外殻容器部の前記空間部とは反対側の面、及び/又は、前記内殻容器部の前記空間部とは反対側の面が、減圧で気化する溶媒を含む溶液と接する、二重殻容器の漏れ検出装置であって、前記空間部を減圧する減圧手段と、前記空間部の温度を検出する温度検出手段と、前記減圧手段により空間部を減圧した状態で前記温度検出手段により検出された温度と、減圧前の前記空間部の温度と、を比較することによって、前記溶液の漏れ判定を行う制御装置と、を備える、二重殻容器の漏れ検出装置である。
【0012】
第3の手段によると、二重殻容器の外殻容器部と内殻容器部との間の空間部を減圧手段により減圧させた減圧状態で、温度検出手段により空間部における温度を検出する。制御装置は、温度検出手段により検出された温度と、減圧前の空間部の温度と、を比較することによって、溶液の漏れ判定を行う。仮に、外殻容器部及び/又は内殻容器部から空間部へ溶液が漏れた場合、空間部の減圧によって溶媒が気化されるため、空間部の温度が高くなる。したがって、制御装置は、温度検出手段により検出された温度が減圧前の温度に比べ低い場合に、溶液の漏れ有りの判定を行う。よって、従来とは異なる構成により、二重殻容器から空間部への溶液の漏れを検出することができる。また、空間部の壁面部(外殻容器部の内壁部及び/又は内殻容器部の内壁部)の温度は、空間部の温度と同等の温度とみなすことができるため、温度検出手段は、空間部、外殻容器部の内壁部、内殻容器部の内壁部のうちの少なくとも1つの部位の温度を検出するものであればよい。
【0013】
第4の手段は、第3の手段の二重殻容器の漏れ検出装置であって、前記温度検出手段は、分散的に複数配置されており、前記制御装置は、複数の前記温度検出手段による検出結果の比較によって漏れ箇所を特定する、二重殻容器の漏れ検出装置である。
【0014】
第4の手段によると、制御装置は、複数の温度検出手段の検出結果の比較によって、温度が低い所の近傍を漏れ箇所として特定する。空間部における温度は、二重殻容器の漏れ箇所に近いほど低く、遠いほど高い。したがって、温度が低い所の近傍を漏れ箇所として特定することができる。これにより、二重殻容器の漏れの修理を速やかに行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示の技術によると、従来とは異なる構成により、二重殻容器から空間部への溶液の漏れを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1にかかる干潟槽の漏れ検出装置を備えた水上干潟を模式的に示す断面図である。
図2】実施形態2にかかる干潟槽の漏れ検出装置を備えた水上干潟を模式的に示す断面図である。
図3】実施形態3にかかる干潟槽の漏れ検出装置を備えた水上干潟を模式的に示す断面図である。
図4】実施形態4にかかる干潟槽の漏れ検出装置を備えた水上干潟を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本明細書に開示の技術を実施するための実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
(実施形態1)
本実施形態では、二重殻容器として水上干潟の干潟槽を例示し、その干潟槽の漏れ検出装置について説明する。
【0019】
(水上干潟)
図1は干潟槽の漏れ検出装置を備えた水上干潟を模式的に示す断面図である。図1に示すように、水上干潟10は、護岸に隣接する海域Sに浮上されている。水上干潟10は、水棲生物を飼育するための干潟を再現する設備である。水上干潟10は、干潟槽20、給水装置40及び排水装置50等を備えている。
【0020】
(干潟槽20)
干潟槽20は、上面を開口する槽状に形成されている。干潟槽20内には、底面上に層状に堆積された礫岩31、礫岩31上に層状に堆積された砂32、及び、砂32上に層状に堆積された湿泥33が収容されている。湿泥33は水を含む泥である。湿泥33の表面(上面)は、干潟槽20の波浪を受ける沖側(例えば、図1の紙面表裏方向の一側)から護岸側(同、他側)に向けて徐々に高くなるスロープ状に形成されている。また、干潟槽20内には、湿泥33の表面の少なくとも一部を覆う槽内水34が貯留されている。干潟槽20は、護岸、海底等に対して水平方向及び鉛直方向の移動を所定範囲内に拘束するチェーン、アンカー等の係留装置により係留されている。なお、干潟槽20は、海域の他、湖、河川などの水域に浮上されてもよい。
【0021】
干潟槽20は、外槽部を形成する外殻容器部21と、内槽部を形成する内殻容器部22と、を有する。外殻容器部21と内殻容器部22との間には、槽状の空間部24が形成されている。空間部24の上端開口部は上壁部23により閉鎖されている。外殻容器部21の底壁部21aと内殻容器部22の底壁部22aとの間には、分散的に配置された複数本(図1では2本を示す)の支柱25が架設されている。干潟槽20は本明細書でいう「二重殻容器」に相当する。
【0022】
上壁部23には、空間部24内外を連通する第1通気管26及び第2通気管27が設けられている。第1通気管26と第2通気管27とは、平面視で相反する位置関係をもって配置されている。図1では、第1通気管26が上壁部23の右端部に配置され、また第2通気管27は上壁部23の左端部に配置されている。
【0023】
(給水装置40)
給水装置40は、空間部24の一端側(図1において右端側)に設けられている。給水装置40は、給水ポンプ41及び給水側開閉弁42等を有する。給水ポンプ41はコントローラ60によって駆動制御される電動ポンプである。
【0024】
給水ポンプ41の吸入口に接続された給水側吸入管43は、外殻容器部21の底壁部21aに貫通されている。給水側吸入管43の先端部は海域S内に開放されている。給水側吸入管43の先端部には、海域Sの海水Saを濾過するフィルタ44が設けられている。また、給水ポンプ41の吐出口に接続された給水側吐出管45は、内殻容器部22の一方(図1において右側)の側壁部22bに貫通されている。給水側吐出管45の先端部は、干潟槽20内の礫岩31の層内に開放されている。
【0025】
給水側開閉弁42は給水側吐出管45に設けられている。給水側開閉弁42は、コントローラ60によって開閉制御される電磁弁である。
【0026】
コントローラ60は、プロセッサ、メモリ、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたマイクロコンピュータを含む構成のECU(Electronic Control Unit)からなる。コントローラ60は本明細書でいう「制御装置」に相当する。
【0027】
給水装置40において、給水側開閉弁42が開弁状態で給水ポンプ41が駆動されることにより、海水Saが干潟槽20内に給水される(図1中、矢印Y1参照)。給水側開閉弁42は、給水ポンプ41の駆動直前に開弁され、また、給水ポンプ41の停止直後に閉弁される。
【0028】
(排水装置50)
排水装置50は、空間部24の他端側(図1において左端側)に設けられている。排水装置50は、排水ポンプ51及び排水側開閉弁52等を有する。排水ポンプ51はコントローラ60によって駆動制御される電動ポンプである。
【0029】
排水ポンプ51の吸入口に接続された排水側吸入管53は、内殻容器部22の他方(図1において左側)の側壁部22bに貫通されている。排水側吸入管53の上端部は、干潟槽20内の槽内水34内に開放されている。また、排水ポンプ51の吐出口に接続された排水側吐出管54は、外殻容器部21の側壁部21bに貫通されている。排水側吐出管54の先端部は海域S内に開放されている。
【0030】
排水側開閉弁52は排水側吸入管53に設けられている。排水側開閉弁52は、コントローラ60によって開閉制御される電磁弁である。
【0031】
排水装置50において、排水側開閉弁52が開弁状態で排水ポンプ51が駆動されることにより、槽内水34が海域Sに排水される(図1中、矢印Y2参照)。排水側開閉弁52は、排水ポンプ51の駆動直前に開弁され、また、排水ポンプ51の停止直後に閉弁される。
【0032】
給水装置40及び/又は排水装置50の運転によって槽内水34の水量が増減される。これにより、潮の干満が人工的に形成される。
【0033】
(水上干潟10の背景)
水上干潟10すなわち水上に浮かべる浮体式干潟は、護岸化された干潟のない場所で干潟の復活には最適な形態である。また、水門の問題の解決の有効な一手段であるとも考えられる。水上干潟10を実現するには、湿泥33及び槽内水34等を収容(保持)する干潟槽20が必要である。
【0034】
二重殻容器である干潟槽20の空間部24に給水装置40及び排水装置50を配置することにより、それらの装置40,50を海水Saや風雨による腐食から保護することができる。また、仮に、内殻容器部22に穴やひび割れ等の破損が生じ、湿泥33が空間部24に漏れたとしても、外殻容器部21により湿泥33の海域Sへの漏れを抑制することができる。このことは、湿泥33による海域Sの汚染を抑制するに有効である。
【0035】
また、干潟槽20の内殻容器部22に穴やひび割れ等の破損が発生した場合、その破損個所から空間部24に湿泥33が漏れる。また、外殻容器部21に穴やひび割れ等の破損が発生した場合、その破損個所から空間部24に海水Saが漏れる。そうすると、干潟環境を長期に亘って維持することができない。
【0036】
そこで、干潟槽20の漏れを検出する漏れ検出装置が必要となる。漏れ検出装置により漏れが検出された際には、干潟槽20の破損個所を修理することによって、干潟環境を長期に亘って維持することが可能となる。
【0037】
干潟槽20において、外殻容器部21の空間部24とは反対側の面は海水Saと接する。海水Saは、減圧により気化する水(溶媒)を含む溶液である。また、内殻容器部22の空間部24とは反対側の面は湿泥33と接する。湿泥33は、減圧により気化する水(溶媒)を含む溶液である。
【0038】
(干潟槽20の漏れ検出装置)
漏れ検出装置70は、干潟槽20の外殻容器部21及び/又は内殻容器部22に穴あき、ひび割れ等の破損が生じ、空間部24に漏れた海水Sa又は湿泥33の漏れを検出する。漏れ検出装置70は、減圧手段71及び湿度センサ75等を備えている。
【0039】
減圧手段71は、真空ポンプ72、封止弁73及びコントローラ60等を有する。真空ポンプ72は第1通気管26に接続されている。真空ポンプ72は、コントローラ60によって駆動制御される電動ポンプである。また、封止弁73は第2通気管27に設けられている。封止弁73は、コントローラ60によって開閉制御される電磁弁である。封止弁73により第2通気管27が開閉される。
【0040】
封止弁73が閉弁状態で真空ポンプ72が駆動されることにより、空間部24が減圧される。また、封止弁73が開弁状態で真空ポンプ72が駆動されることにより、空間部24が通気される。
【0041】
湿度センサ75は第2通気管27に設けられている。湿度センサ75は、空間部24の湿度を検出する。湿度センサ75の検出信号はコントローラ60に入力される。湿度センサ75は、水蒸気の濃度を検出するものであり、本明細書でいう「ガス濃度検出手段」に相当する。
【0042】
コントローラ60は、湿度センサ75による検出信号いわゆる検出結果に基づいて、空間部24に湿泥33又は海水Saが漏れているか否かの漏れ判定を行う。
【0043】
(漏れ検出方法)
漏れ検出装置70による漏れ検出方法を説明する。なお、特段の記載が無い場合、コントローラ60が各制御を行っているものとする。また、漏れの検出は、定期的に実施される。
【0044】
まず、封止弁73が開弁された状態で真空ポンプ72が駆動されることにより、空間部24が通気される、すなわち空間部24に外気が通気される。これにより、空間部24内の湿度が外気の湿度と同等とされる。続いて、湿度センサ75により空間部24の湿度が減圧前の湿度として検出(計測)されてコントローラ60に入力される。
【0045】
空間部24内の湿度(減圧前の湿度)は外気の湿度と同等である。このため、コントローラ60により、護岸部に配置された湿度センサからの湿度情報、あるいは、気象庁または気象予報業務を行う事業者が無線通信システムあるいは有線通信システムを介して提供する地域の外気の湿度情報等を減圧前の湿度として入手してもよい。
【0046】
続いて、封止弁73を閉弁した状態で真空ポンプ72が駆動されることにより空間部24が減圧される。減圧状態での空間部24の湿度を湿度センサ75でモニターする。コントローラ60は、湿度センサ75による検出結果に基づいて算出処理した空間部24の湿度と減圧前の湿度(外気の湿度)とを比較することにより、干潟槽20の穴あき、ひび割れ等の破損による漏れ判定を行う。
【0047】
仮に、干潟槽20(外殻容器部21又は内殻容器部22)の穴あき、ひび割れ等の破損により海水Sa又は湿泥33が空間部24に漏れた場合、空間部24の減圧によって空間部24の海水Sa又は湿泥33の水(溶媒)が気化されることにより水蒸気となる。したがって、減圧後の空間部24の湿度は、減圧前の湿度(外気の湿度)よりも高くなる。また、干潟槽20に破損がない場合、減圧後の空間部24の湿度は、減圧前の湿度(外気の湿度)と同じか、減圧前の湿度よりも低くなる。水蒸気は本明細書でいう「溶媒ガス」に相当する。
【0048】
例えば、減圧前の湿度(外気の湿度)をHa、減圧後の空間部24の湿度をHbとしたとき、コントローラ60は、
Ha<Hb
の場合、漏れ有りすなわち干潟槽20の破損有りの故障判定を行う。この場合、コントローラ60は、ユーザーへアラートを発する。ユーザーは、アラートの発生を踏まえ、干潟槽20の修理を実施する。
【0049】
また、コントローラ60は、
Ha≧Hb
の場合、漏れ無しすなわち干潟槽20の破損無しの正常判定を行う。なお、大気が波浪等で高湿度時は漏れの検出を中止してもよい。
【0050】
(実施形態1の作用・効果)
漏れ検出装置70によると、仮に、外殻容器部21及び/又は内殻容器部22から空間部24へ海水Sa又は湿泥33が漏れた場合、空間部24の減圧によって水が気化されて水蒸気となるため、湿度が高くなる。したがって、コントローラ60は、湿度センサ75により検出された湿度が減圧前の湿度に比べ高い場合に、海水Sa又は湿泥33の漏れ有りの判定を行う。よって、従来とは異なる構成により、干潟槽20から空間部24への海水Sa又は湿泥33の漏れを検出することができる。このことは、水上干潟10の干潟環境を長期に亘って維持することに有効である。
【0051】
また、通常時に、封止弁73を開弁した状態で真空ポンプ72を駆動して空間部24の通気を行うことにより、給水ポンプ41、排水ポンプ51等の排熱による空間部24の温度上昇を抑制することができる。
【0052】
また、二重殻容器からの溶液の漏れを気体圧力の変化に基づいて検出する特許文献1において、溶液の粘度が高い場合、圧力変化が生じ難くなり、誤検出を行うおそれがある。これに対し、本実施形態は、二重殻容器からの溶液の漏れを湿度の変化に基づいて検出するため、誤検出を抑制することができる。
【0053】
[実施形態2]
実施形態2において、実施形態1(図1参照)と同一部位に同一符号を付して重複する説明を省略する。図2は干潟槽の漏れ検出装置を備えた水上干潟を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態では、干潟槽20に湿度センサ75が分散的に複数配置されている。例えば、空間部24の中央部の湿度を検出する湿度センサ75、及び、空間部24の給水ポンプ41側の上部の湿度を検出を検出する湿度センサ75が追加されている。
【0054】
コントローラ60は、複数(本実施形態では3個)の湿度センサ75の検出結果の比較によって漏れ箇所を特定する。すなわち、コントローラ60は、複数の湿度センサ75の検出結果の比較によって、湿度が高い所の近傍を漏れ箇所として特定する。空間部24における湿度は、干潟槽20の漏れ箇所に近いほど高く、遠いほど低い。したがって、湿度が高い所の近傍を漏れ箇所として特定することができる。これにより、干潟槽20の漏れの修理を速やかに行うことができる。
【0055】
[実施形態3]
実施形態3において、実施形態1(図1参照)と同一部位に同一符号を付して重複する説明を省略する。図3は干潟槽の漏れ検出装置を備えた水上干潟を模式的に示す断面図である。実施形態3にかかる部位には100番台の符号を付す。
【0056】
図3に示すように、漏れ検出装置170は、実施形態1(図1参照)における湿度センサ75に代えて、空間部24の温度を検出する温度センサ175が用いられている。なお、空間部24の壁面部(外殻容器部21の内壁部及び/又は内殻容器部22の内壁部)の温度は、空間部24の温度と同等の温度とみなすことができる。このため、温度センサ175は、空間部24、外殻容器部21の内壁部、内殻容器部22の内壁部のうちの少なくとも1つの部位の温度を検出するものであればよい。温度センサ175の検出信号はコントローラ60に入力される。温度センサ175は本明細書でいう「温度検出手段」に相当する。
【0057】
コントローラ60は、温度センサ175による検出信号いわゆる検出結果に基づいて、空間部24に湿泥33又は海水Saが漏れているか否かの漏れ判定を行う。
【0058】
(漏れ検出方法)
次に、漏れ検出装置170による漏れ検出方法を説明する。なお、特段の記載が無い場合、コントローラ60が各制御を行っているものとする。また、漏れの検出は、定期的に実施される。
【0059】
まず、封止弁73が開弁された状態で真空ポンプ72が駆動されることにより、空間部24の通気を行う。これにより、空間部24内の温度が外気の温度(外気温)と同等とされる。続いて、温度センサ175により空間部24の温度が減圧前の温度として検出(計測)されてコントローラ60に入力される。
【0060】
空間部24内の温度(減圧前の温度)は外気温と同等である。このため、コントローラ60により、護岸部に配置された温度センサからの温度情報、あるいは、気象庁または気象予報業務を行う事業者が無線通信システムあるいは有線通信システムを介して提供する地域の気温情報等を減圧前の温度として入手してもよい。
【0061】
続いて、封止弁73を閉弁した状態で真空ポンプ72を駆動して空間部24の減圧を行う。減圧状態での空間部24の温度を温度センサ175でモニターする。コントローラ60は、温度センサ175による検出結果に基づいて算出処理した空間部24の温度と減圧前の温度(外気温)とを比較することにより、干潟槽20の穴あき、ひび割れ等の破損による漏れ判定を行う。
【0062】
仮に、干潟槽20(外殻容器部21又は内殻容器部22)の穴あき、ひび割れ等の破損により海水Sa又は湿泥33が空間部24に漏れた場合、空間部24の減圧によって空間部24の水分が気化される。したがって、減圧後の空間部24の温度は、減圧前の温度(外気温)よりも低くなる。また、干潟槽20に破損がない場合、減圧後の空間部24の温度は、減圧前の温度(外気温)と同じか、減圧前の温度よりも高くなる。
【0063】
例えば、減圧前の温度(外気温)をTa、減圧後の空間部24の温度をTbとしたとき、コントローラ60は、
Ta>Tb
の場合、漏れ有りすなわち干潟槽20の破損有りの故障判定を行う。この場合、コントローラ60は、ユーザーへアラートを発する。ユーザーは、アラートの発生を踏まえ、干潟槽20の修理を実施する。
【0064】
また、コントローラ60は、
Ta≦Tb
の場合、漏れ無しすなわち干潟槽20の破損無しの正常判定を行う。なお、大気が波浪等で高温度時は漏れの検出を中止してもよい。
【0065】
(実施形態3の作用・効果)
漏れ検出装置170によると、仮に、外殻容器部21及び/又は内殻容器部22から空間部24へ海水Sa又は湿泥33が漏れた場合、空間部24の減圧によって水が気化されるため、温度が低くなる。したがって、コントローラ60は、温度センサ175により検出された温度が減圧前の温度に比べ低い場合に、海水Sa又は湿泥33の漏れ有りの判定を行う。よって、従来とは異なる構成により、干潟槽20から空間部24への海水Sa又は湿泥33の漏れを検出することができる。このことは、水上干潟10の干潟環境を長期に亘って維持することに有効である。
【0066】
[実施形態4]
実施形態4において、実施形態3(図3参照)と同一部位に同一符号を付して重複する説明を省略する。図4は干潟槽の漏れ検出装置を備えた水上干潟を模式的に示す断面図である。図4に示すように、本実施形態では、干潟槽20に温度センサ175が分散的に複数配置されている。例えば、空間部24の中央部の温度を検出する温度センサ175、及び、空間部24の給水ポンプ41側の上部の温度を検出を検出する温度センサ175が追加されている。
【0067】
コントローラ60は、複数(本実施形態では3個)の温度センサ175の検出結果の比較によって漏れ箇所を特定する。すなわち、コントローラ60は、複数の温度センサ175の検出結果の比較によって、温度が低い所の近傍を漏れ箇所として特定する。空間部24における温度は、干潟槽20の漏れ箇所に近いほど低く、遠いほど高い。したがって、温度が低い所の近傍を漏れ箇所として特定することができる。これにより、干潟槽20の漏れの修理を速やかに行うことができる。
【0068】
[他の実施形態]
本明細書に開示の技術は、前記した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施可能である。例えば、本明細書に開示の技術は、外殻容器部及び内殻容器部のうちの少なくとも一方の容器部に溶液が接する二重殻容器に適用してもよい。また、二重殻容器は、上面を開口する槽状の他、円筒形状、球形状等でもよい。また、減圧手段の真空ポンプ72は、エジェクタ、ブロワ等に代えてもよい。また、湿度センサ75は、干潟槽20の空間部24の湿度を検出可能であれば任意の位置に配置してよい。また、温度センサ175は、干潟槽20の空間部24の温度を検出可能であれば任意の位置に配置してよい。
【符号の説明】
【0069】
10 水上干潟
20 干潟槽(二重殻容器)
21 外殻容器部
22 内殻容器部
24 空間部
33 湿泥(溶液)
60 コントローラ(制御装置)
70 漏れ検出装置
71 減圧手段
75 湿度センサ(ガス濃度検出手段)
170 漏れ検出装置
175 温度センサ(温度検出手段)
S 海域
Sa 海水(溶液)
図1
図2
図3
図4