(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104396
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】リリーフ設定圧調整システム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/02 20060101AFI20240729BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240729BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F15B11/02 F
E02F9/26 A
E02F9/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008580
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】酒向 志乃
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB07
2D003BA02
2D003BA06
2D003BB03
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D015HA03
3H089AA74
3H089BB15
3H089CC01
3H089CC08
3H089CC12
3H089DA03
3H089DA13
3H089DB43
3H089DB46
3H089DB49
3H089EE04
3H089EE36
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】コントロールバルブから油圧アクチュエータに至るアクチュエータラインから分岐形成されたラインリリーフ油路に、手動操作によりリリーフ設定圧を調整する手動式のラインリリーフ弁が配された油圧システムにおいて、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整作業を、単独で精度良く行えるようにする。
【解決手段】ラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧調整作業を補佐する制御を行うコントローラ20に、リリーフ設定圧調整作業時のポンプ流量を制御するポンプ流量制御手段と、手動操作によるリリーフ設定圧調整作業の実行を指示する指示指令出力手段54と、リリーフ設定圧調整作業時に圧力センサ31により検出されたポンプ圧が目標リリーフ設定圧の所定範囲内になったことを報知する報知指令出力手段55とを設けた。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型の油圧ポンプと、該油圧ポンプを油圧供給源とする油圧アクチュエータと、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの油供給油路に配されて油圧アクチュエータへの油供給を制御するコントロールバルブと、該コントロールバルブから油圧アクチュエータに至るアクチュエータラインから分岐形成されて油タンクに至るラインリリーフ油路に配され、手動操作によりリリーフ設定圧を調整できる手動式のラインリリーフ弁とを備えてなる作業機械の油圧システムにおいて、前記手動操作によるラインリリーフ弁のリリーフ設定圧の調整作業を補佐する制御を行う制御装置と、油圧ポンプのポンプ圧を検出して該検出されたポンプ圧を制御装置に出力するポンプ圧検出手段とを設けるとともに、前記制御装置は、ラインリリーフ弁の目標リリーフ設定圧および目標流量を設定する目標値設定手段と、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整作業時に前記目標流量をラインリリーフ弁から流出させるべく油圧ポンプのポンプ流量を制御するポンプ流量制御手段と、手動操作によるラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整作業の実行を指示する指示指令出力手段と、リリーフ設定圧調整作業時にポンプ圧検出手段から入力されるポンプ圧が前記目標リリーフ設定圧の所定範囲内になったことを報知する報知指令出力手段とを備えることを特徴とするリリーフ設定圧調整システム。
【請求項2】
請求項1において、作業機械の油圧システムは、さらに、油圧ポンプからコントロールバルブに至るポンプ油路から分岐形成されて油タンクに至るメインリリーフ油路に配されるメインリリーフ弁を備えるとともに、制御装置は、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整作業時におけるメインリリーフ弁のリリーフ設定圧を、ラインリリーフ弁の目標リリーフ設定圧よりも所定圧以上高くするための制御を行うメインリリーフ弁制御手段を備えることを特徴とするリリーフ設定圧調整システム。
【請求項3】
請求項1において、制御装置は、油圧ポンプのポンプ容量を制御するポンプ容量制御手段と、油圧ポンプの駆動源となるエンジンの回転数を制御するエンジン回転数制御手段とを備えるとともに、ポンプ流量制御手段は、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整作業時に油圧ポンプの容量を最低容量に固定した状態でエンジン回転数制御手段によりエンジン回転数を調整することで油圧ポンプのポンプ流量を制御することを特徴とするリリーフ設定圧調整システム。
【請求項4】
請求項1において、作業機械の油圧システムは、複数の油圧ポンプを備えるとともに、制御装置は、ラインリリーフ弁毎に設定された目標流量に応じて、リリーフ設定圧調整作業の実行時にラインリリーフ弁に複数の油圧ポンプのポンプ流量を合流して供給する制御を行うことを特徴とするリリーフ設定圧調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械の油圧システムに設けられるラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の作業機械の油圧システムには、油圧ポンプ、該油圧ポンプを油圧供給源として駆動する油圧アクチュエータ、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの油供給油路に配されて油圧アクチュエータへの油供給を制御するコントロールバルブ等が設けられるが、さらに、個々の油圧アクチュエータにかかる最大圧力を制限するべく、コントロールバルブから油圧アクチュエータに至るアクチュエータラインからラインリリーフ油路を分岐形成し、該ラインリリーフ油路にラインリリーフ弁を配設することが一般的に行われている。このものでは、個々の油圧アクチュエータが許容できる最大圧力に応じてラインリリーフ弁のリリーフ設定圧が設定されるが、初期に設定したリリーフ設定圧は、ラインリリーフ弁を構成する弁体の摩耗やスプリングのへたり等の経年変化により低下してしまうことがある。ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧が低下すると、油圧アクチュエータの圧力が低下して作業効率が悪くなるため、経年等に応じてラインリリーフ弁のリリーフ設定圧を調整する必要がある。
そこで従来、ポンプ油路の最大圧力を制限するリリーフ弁の経年変化によるリリーフ設定圧の低下に対応するために、リリーフ弁に調圧ピストンを具備するとともに、コントローラから出力される制御指令に基づいて調圧ピストンに制御圧を供給する電磁比例弁を設けて、リリーフ状態でのポンプ油路の圧力が初期のリリーフ設定圧と異なるときに、電磁比例弁から調圧ピストンに制御圧を供給することでリリーフ弁のリリーフ設定圧を調整できるようにした技術がある(例えば、特許文献1参照)。
また、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧を容易に変更できるようにするために、ラインリリーフ弁にリリーフ圧可変シリンダを具備するとともに、コントローラから出力される制御指令に基づいてリリーフ圧可変シリンダに制御圧(設定変更圧)を供給する電磁比例弁を設けて、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧を変更する場合に、電磁比例弁からリリーフ圧可変シリンダに制御圧を供給することでラインリリーフ弁のリリーフ設定圧を変更できるようにした技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
一方、ラインリリーフ弁として、コントローラから供給される電流に応じてリリーフ設定圧を可変できる電磁式リリーフ弁を用いた技術も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-94105号公報
【特許文献2】特開2003-185042号公報
【特許文献3】特許第6347936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1、2のものは、何れも、リリーフ弁あるいはラインリリーフ弁として、制御圧により作動する調圧ピストンあるいはリリーフ圧可変シリンダを備えた特殊な構造のものが用いられているとともに、コントローラから出力される制御指令に基づいて調圧ピストンやリリーフ圧可変シリンダに制御圧を供給する電磁比例弁が設けられている。また、特許文献3のものは、コントローラから出力される制御指令に基づいてリリーフ設定圧を可変できる電磁式リリーフ弁が用いられている。つまり、特許文献1~3のものは、何れも、コントローラにより制御される電磁弁が用いられている。
しかるに、特にラインリリーフ弁においては、コスト的に有利である手動式のリリーフ弁(手動操作で調整ハンドルを回してスプリング力を調整することでリリーフ設定圧を変更できるリリーフ弁)が多く採用されている。このような手動式のリリーフ弁においては、前述した特許文献1~3のようにコントローラからの制御指令に基づいてリリーフ設定圧の調整を行うことができないため、リリーフ設定圧を調整する場合には、コントロールバルブから油圧アクチュエータに至るアクチュエータラインを油圧アクチュエータ用操作具の操作でリリーフ状態にした状態で、手動操作によりリリーフ設定圧を調整しなければならず、このため少なくとも二人以上の人員が必要であるうえ、リリーフ状態にする場合にリリーフ弁への供給流量を正確に制御することが難しいという問題がある。このため、ラインリリーフ弁として手動式のリリーフ弁が用いられている場合であっても、容易かつ正確にリリーフ設定圧の調整を行えるようにしたいという要望があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、可変容量型の油圧ポンプと、該油圧ポンプを油圧供給源とする油圧アクチュエータと、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの油供給油路に配されて油圧アクチュエータへの油供給を制御するコントロールバルブと、該コントロールバルブから油圧アクチュエータに至るアクチュエータラインから分岐形成されて油タンクに至るラインリリーフ油路に配され、手動操作によりリリーフ設定圧を調整できる手動式のラインリリーフ弁とを備えてなる作業機械の油圧システムにおいて、前記手動操作によるラインリリーフ弁のリリーフ設定圧の調整作業を補佐する制御を行う制御装置と、油圧ポンプのポンプ圧を検出して該検出されたポンプ圧を制御装置に出力するポンプ圧検出手段とを設けるとともに、前記制御装置は、ラインリリーフ弁の目標リリーフ設定圧および目標流量を設定する目標値設定手段と、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整作業時に前記目標流量をラインリリーフ弁から流出させるべく油圧ポンプのポンプ流量を制御するポンプ流量制御手段と、手動操作によるラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整作業の実行を指示する指示指令出力手段と、リリーフ設定圧調整作業時にポンプ圧検出手段から入力されるポンプ圧が前記目標リリーフ設定圧の所定範囲内になったことを報知する報知指令出力手段とを備えることを特徴とするリリーフ設定圧調整システムである。
請求項2の発明は、請求項1において、作業機械の油圧システムは、さらに、油圧ポンプからコントロールバルブに至るポンプ油路から分岐形成されて油タンクに至るメインリリーフ油路に配されるメインリリーフ弁を備えるとともに、制御装置は、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整作業時におけるメインリリーフ弁のリリーフ設定圧を、ラインリリーフ弁の目標リリーフ設定圧よりも所定圧以上高くするための制御を行うメインリリーフ弁制御手段を備えることを特徴とするリリーフ設定圧調整システムである。
請求項3の発明は、請求項1において、制御装置は、油圧ポンプのポンプ容量を制御するポンプ容量制御手段と、油圧ポンプの駆動源となるエンジンの回転数を制御するエンジン回転数制御手段とを備えるとともに、ポンプ流量制御手段は、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整作業時に油圧ポンプの容量を最低容量に固定した状態でエンジン回転数制御手段によりエンジン回転数を調整することで油圧ポンプのポンプ流量を制御することを特徴とするリリーフ設定圧調整システムである。
請求項4の発明は、請求項1において、作業機械の油圧システムは、複数の油圧ポンプを備えるとともに、制御装置は、ラインリリーフ弁毎に設定された目標流量に応じて、リリーフ設定圧調整作業の実行時にラインリリーフ弁に複数の油圧ポンプのポンプ流量を合流して供給する制御を行うことを特徴とするリリーフ設定圧調整システムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整作業を単独で容易に行えることになって、調整作業の作業効率向上に大きく貢献できるとともに、リリーフ設定圧調整の精度向上にも貢献できる。
請求項2の発明とすることにより、ラインリリーフ弁の設定圧調整作業時にメインリリーフ弁が前漏れしてしまう不具合を確実に回避できる。
請求項3の発明とすることにより、ポンプ流量制御を精度良く行えることになって、リリーフ設定圧調整の精度向上に大きく貢献できる。
請求項4の発明とすることにより、油圧アクチュエータが複数の油圧ポンプからの圧油供給流量を必要とするものであっても、リリーフ設定圧調整作業を支障なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】作業機械の油圧システムの一部を示す概略油圧回路図である。
【
図3】コントローラの入出力を示すブロック図である。
【
図4】メインルーチンの手順を示すフローチャート図である。
【
図5】準備制御の手順を示すフローチャート図である。
【
図6】メインリリーフ設定圧変更制御の手順を示すフローチャート図である。
【
図7】ラインリリーフ設定圧調整制御の手順を示すフローチャート図である。
【
図8】第二の実施の形態におけるメインルーチンの手順を示すフローチャート図である。
【
図9】第二の実施の形態におけるメインリリーフ設定圧変更制御の手順を示すフローチャート図である。
【
図10】第二の実施の形態におけるメインリリーフ設定圧復帰制御の手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の作業機械の一例である油圧ショベル1の側面図であって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロント作業機4等の各部から構成されており、さらに該フロント作業機4は、基端部が上部旋回体3に上下揺動自在に支持されるブーム5、該ブーム5の先端部に前後揺動自在に支持されるスティック6、該スティック6の先端部に揺動自在に取付けられるバケット7等の各種部材を備えて構成されている。さらに、油圧ショベル1には、前記下部走行体2を走行せしめる左右の走行モータ(図示せず)、上部旋回体3を旋回せしめる旋回モータ(図示せず)、ブーム5を揺動させるべく伸縮作動するブームシリンダ8、スティック6を揺動させるべく伸縮作動するスティックシリンダ9、バケット7を揺動させるべく伸縮作動するバケットシリンダ10等の各種油圧アクチュエータが設けられている。
【0009】
図2に、前記油圧ショベル1に設けられる油圧システムの一部概略図を示すが、該
図2において、P1、P2はエンジンEにより駆動され、前記油圧ショベル1に設けられる各種油圧アクチュエータの油圧供給源となる可変容量型の油圧ポンプ、P1a、P2aは油圧ポンプP1、P2の容量可変手段、Tは油タンク、Aは前記各種油圧アクチュエータのうちの一例としての油圧アクチュエータ(例えば、スティックシリンダ9、バケットシリンダ10等)、11は油圧ポンプP1から油圧アクチュエータAへの圧油供給油路に配されて油圧アクチュエータAへの油供給を制御するコントロールバルブ、12~18は油圧ポンプP1、P2から他油圧アクチュエータ(前記各種油圧アクチュエータのうち油圧アクチュエータA以外の油圧アクチュエータ、
図2に図示せず)への油供給を制御する他油圧アクチュエータ用コントロールバルブである。
【0010】
前記コントロールバルブ11は、電磁式の方向切換弁であって、後述するコントローラ(本発明の制御装置に相当する)20からの制御指令に基づいて、油圧アクチュエータAへの油給排を行わない中立位置Nから、油圧アクチュエータAへの油給排を行う作動位置XまたはYに切換るように構成されている。尚、
図2では、コントロールバルブ11が作動位置Xに位置している状態を示している。また、他油圧アクチュエータ用コントロールバルブ12~18も同様に、コントローラ20からの制御指令に基づいて中立位置と作動位置とに切換る電磁式の方向切換弁であるが、
図2では簡略化して図示してある。
【0011】
さらに、前記
図2において、21、22は前記コントロールバルブ11から油圧アクチュエータAの入出力ポートAa、Abに至るアクチュエータラインであって、これらアクチュエータライン21、22には、油タンクTに至るラインリリーフ油路23、24が分岐形成されている。そして、これらラインリリーフ油路23、24には、アクチュエータライン21、22の最高圧力、つまり、油圧アクチュエータAへの最大供給圧力を制限するラインリリーフ弁25、26がそれぞれ配設されている。これらラインリリーフ弁25、26は、手動操作で調整ハンドルを回してスプリング力を調整することでリリーフ設定圧を変更できる手動式のリリーフ弁が用いられている。
尚、他油圧アクチュエータ用コントロールバルブ12~18から他油圧アクチュエータに至るアクチュエータラインにも同様にラインリリーフ油路が分岐形成され、該ラインリリーフ油路には手動式のラインリリーフ弁が配設されるが、
図2では省略してある。
【0012】
さらに、前記
図2において、27、28は油圧ポンプP1、P2の吐出油をコントロールバルブ11、他油圧アクチュエータ用コントロールバルブ12~18に供給するポンプ油路であって、該ポンプ油路27、28からは油タンクTに至るメインリリーフ油路29が分岐形成されている。そして、該メインリリーフ油路29には、ポンプ油路27、28の最高圧力を制限するメインリリーフ弁30が配設されている。該メインリリーフ弁30は、本実施の形態では、前記コントローラ20からの制御指令でリリーフ設定圧を変更できる電磁式のリリーフ弁が用いられている。また、
図2中、31はポンプ油路27の圧力(油圧ポンプP1のポンプ圧)を検出する圧力センサ(本発明のポンプ圧検出手段に相当する)である。
【0013】
さらに、前記
図2において、32はポンプ油路27、28同士を連通させる連通油路に配される電磁式の合流弁であって、該合流弁32は、前記コントローラ20からの制御指令に基づいて、油圧ポンプP1、P2の吐出油を遮断する遮断位置Nから、油圧ポンプP1、P2の吐出油を合流させる合流位置Xに切換るように構成されている。そして、該合流弁32が合流位置Xに位置している状態では、油圧ポンプP1、P2の吐出油は合流してコントロールバルブ11、他油圧アクチュエータ用コントロールバルブ12~18に供給されるようになっている。尚、該合流弁32は、後述するラインリリーフ設定圧調整時に必要に応じて合流位置Xに切換るように制御されるが、油圧ショベル1の通常作業時には、例えば走行モータと走行モータ以外の油圧アクチュエータとが同時に操作された場合の走行直進性を確保するため等に合流位置Nに切換るように制御される。
【0014】
一方、前記コントローラ20は、
図3に示す如く、入力側に、前記圧力センサ31、油圧アクチュエータA用操作具(操作レバーや操作ペダル、図示せず)の操作を検出する操作具操作検出手段33等が接続され、出力側に、前記油圧ポンプP1、P2の容量可変手段P1a、P2a、コントロールバルブ11、メインリリーフ弁30、合流弁32等が接続されており、さらに、エンジンEを制御するエンジンコントローラ40および後述するモニター装置41が入出力自在に接続されている。そして、該コントローラ20には、後述するラインリリーフ設定圧調整補佐制御部50が設けられているとともに、該ラインリリーフ設定圧調整補佐制御部50は、後述する目標リリーフ設定圧LRPtおよび目標流量Qtを設定する目標値設定手段51、油圧ポンプP1、P2のポンプ容量を制御するポンプ容量制御手段52、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段53、後述するモニター装置41にオペレータへの指示指令を出力する指示指令出力手段54、モニター装置41に報知指令を出力する報知指令出力手段55、メインリリーフ弁30にリリーフ設定圧変更の制御指令を出力するメインリリーフ弁制御手段56等の各種手段を備えて構成されており、これら各種手段51~56を用いて、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整作業を補佐する調圧補佐制御を行うように構成されている。尚、前記ポンプ容量制御手段52およびエンジン回転数制御手段53は、本発明のポンプ流量制御手段を構成する。また、コントローラ20は、前記他油圧アクチュエータや、該他油圧アクチュエータ用の操作具操作を検出する検出手段等にも接続されているが、
図3のブロック図では省略してある。また、
図3のブロック図には、コントローラ20の行う各種制御のうち、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整補佐制御に関する部分のみを示し、他の制御に関する部分は省略してある。
【0015】
前記モニター装置41は、本実施の形態では油圧ショベル1の運転室内に設けられており、各種情報やオペレータに対する指示等を表示する表示画面42、タッチ操作部や操作キー、操作ボタン等のモニター操作手段43、オペレータに報知するための音(音声を含む)や光等の報知手段44等を備えており、前記モニター操作手段43の一つとして、後述する調圧モード設定ボタン43a、完了ボタン43b等が設けられている。尚、前記表示画面42も報知手段44の一つとして機能する。
【0016】
前記コントローラ20に設けられるラインリリーフ設定圧調整補佐制御部50が行う調圧補佐制御について、前記
図2に示したラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧を調整する場合を例にとって
図4~
図7に基づいて説明する。
まず、前記調圧補佐制御のメインルーチンを
図4に示すが、該メインルーチンが開始すると、まず、調圧モード設定ボタン43aが「ON」か「OFF」かが判断される。該調圧モード設定ボタン43aは、前述したようにモニター装置41に設けられるモニター操作手段43の一つであって、オペレータがラインリリーフ設定圧調整作業を開始する場合に「ON」操作し、そして、調圧モード設定ボタン43aが「ON」操作されることで、コントローラ20は、調圧補佐制御を行うための調圧モードとなる。
そして、前記調圧モード設定ボタン43aが「ON」の場合には、まず、後述する『準備制御』を実行する。該『準備制御』の実行後は、続けて、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧MRPがラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtよりも予め設定される所定圧α(該所定圧αは、例えば、2~3MPa程度)以上高圧であるか否かが判断される。そして、「YES」、つまり所定圧α以上高圧の場合(MRP≧LRPt+α)には、後述する『ラインリリーフ設定圧調整制御』が実行される。一方、「NO」、つまり所定圧α以上高圧でない場合(MRP<LRPt+α)には、後述する『メインリリーフ設定圧変更制御』が実行され、その後に前記『ラインリリーフ設定圧調整制御』が実行される。該『ラインリリーフ設定圧調整制御』の実行後は、『終了制御』が行われてメインルーチンが終了する。
【0017】
次いで、前記『準備制御』について
図5に基づいて説明する。
該『準備制御』では、まず、コントローラ20(コントローラ20のラインリリーフ設定圧調整補佐制御部50)は、リリーフ設定圧調整作業を行うラインリリーフ弁の選択(本実施の形態ではラインリリーフ弁25)と、該ラインリリーフ弁25の目標とするリリーフ設定圧の値(目標リリーフ設定圧LRPt)の入力とをオペレータに指示する指示指令を、モニター装置41の表示画面42あるいは報知手段44に出力する(報知手段44に指示指令が出力された場合には、オペレータへの指示は音声により行われる。以下、同様)。
オペレータは、コントローラ20からの指示を受けて、モニター操作手段43を用いて、リリーフ設定圧調整作業を行うラインリリーフ弁25の選択と、目標リリーフ設定圧LRPtの値の入力とを行う。
一方、コントローラ20は、前記オペレータの操作に基づいてモニター装置41から入力される選択されたラインリリーフ弁25および目標リリーフ設定圧LRPtの値を読み込むとともに、目標リリーフ設定圧LRPtの設定を行う(ステップS2)。
続けて、コントローラ20は、選択されたラインリリーフ弁25に応じて予め設定された機体姿勢(リリーフ設定圧調整作業中に意図せずに油圧アクチュエータAが作動してしまうことを防止するためであって、例えば油圧アクチュエータAがバケットシリンダ10であり、ラインリリーフ弁25がバケットシリンダ10のヘッド側アクチュエータライン用のリリーフ弁である場合には、バケットシリンダ10を伸びエンドまで伸ばした姿勢)にするようオペレータに指示する指示指令を、モニター装置41の表示画面42あるいは報知手段44に出力する(ステップS3)。
オペレータは、コントローラ20から指示を受けて、油圧アクチュエータ用操作具を操作して前記予め設定された機体姿勢にした後、モニター操作手段43の一つである完了ボタン43bを「ON」操作する。
一方、コントローラ20は、完了ボタン43bの「ON」操作がモニター装置41から入力されたか否かを判断し(ステップS4)、「ON」操作が入力された場合には、続けて、油圧ポンプP1のポンプ流量が、ラインリリーフ弁25に応じて設定された目標流量Qtとなるように、油圧ポンプP1のポンプ容量およびエンジン回転数を制御する(ステップS5)。この場合、各ラインリリーフ弁毎に、該ラインリリーフ弁から流出させる目標流量Qtが決まっており、その情報が予めコントローラ20にインプットされている。また、該目標流量Qtとなるように制御するにあたり、コントローラ20は、油圧ポンプP1の可変容量手段P1aに対してポンプ容量を最低容量に固定するように制御指令を出力するとともに、ポンプ容量が最低容量のときにポンプ流量が前記目標流量Qtとなるエンジン回転数を演算し、該エンジン回転数となるようにエンジンコントローラ40に対して制御指令を出力する。さらにこの場合に、油圧ポンプP1のポンプ流量だけでは目標流量Qtに不足すると演算された場合には、油圧ポンプP1、P2の両方のポンプ流量を合流させて目標流量Qtを供給するべく、合流弁32に合流位置Xに切換わるよう制御指令を出力する。この場合には、油圧ポンプP1、P2の両方の容量可変手段P1a、P2aに対してポンプ容量を最低容量に固定するように制御指令が出力されるとともに、油圧ポンプP1、P2の両方のポンプ容量が最低容量のときにポンプ流量の合計が前記目標流量Qtとなるエンジン回転数を演算し、該エンジン回転数となるようにエンジンコントローラ40に対して制御指令が出力される。そして、このようにして油圧ポンプP1のポンプ流量、あるいは油圧ポンプP1、P2の合計ポンプ流量を目標流量Qtにする制御がなされることで『準備制御』は終了し、前述したようにメインリリーフ弁30のリリーフ設定圧MRPに応じて、『メインリリーフ設定圧変更制御』あるいは『ラインリリーフ設定圧調整制御』に移行する。
【0018】
次いで、前記『メインリリーフ設定圧変更制御』について
図6に基づいて説明する。該『メインリリーフ設定圧変更制御』は、前述したように、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧MRPがラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtよりも予め設定される所定圧α以上高圧でない場合(MRP<LRPt+α)、つまり、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧MRPとラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtとの差圧が所定圧α未満の場合(MRP-LRPt<α)に実行される制御であって、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧MRPとラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtとの差圧が小さすぎてラインリリーフ弁25の設定圧調整作業時にメインリリーフ弁30が前漏れしてしまう不具合を回避するために、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧MRPをラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtよりも予め設定される所定圧αだけ高圧にする制御である。
前記『メインリリーフ設定圧変更制御』では、まず、油圧ポンプP1、P2の全ポンプ流量がメインリリーフ弁30を経由して油タンクTに流れるように、ポンプ油路27、28に接続される各種バルブを制御する。前記
図2に示す概略油圧回路図では、コントロールバルブ11および他油圧アクチュエータ用コントロールバルブ12~18を中立位置Nに位置させることで、油圧ポンプP1、P2の全吐出流量がメインリリーフ弁30から流出するようになっているが、例えば、コントロールバルブがオープンセンター方式のものならばセンターラインを閉じるバルブを作動させるように制御する。そして、このようにして油圧ポンプP1、P2の全ポンプ流量をメインリリーフ弁30から流出させた状態で、圧力センサ31により検出されるポンプ圧を記録する(ステップS11)。
続けて、コントローラ20は、メインリリーフ弁30に対して、前記ラインリリーフ弁の目標リリーフ設定圧LRPtよりも所定圧α高いリリーフ設定圧になるようにリリーフ設定圧変更の制御指令を出力する(ステップ12)。
そして、圧力センサ31から入力されるポンプ圧の検出値が、ラインリリーフ弁の目標リリーフ設定圧LRPtよりも所定圧α高い圧力の所定範囲内(LRPt+α±β)に一定時間収まっているか否かを判断し(ステップ13)、収まっている場合には、『メインリリーフ設定圧変更制御』を終了して、『ラインリリーフ設定圧調整制御』に移行する。前記βは、例えば0.3MPa程度で、所定圧αの値に応じて予め設定される。
【0019】
次いで、前記『ラインリリーフ設定圧調整制御』について
図7に基づいて説明する。該『ラインリリーフ設定圧調整制御』では、まず、コントロールバルブ11を作動位置Xに切換えて油圧ポンプP1とラインリリーフ弁25とを接続し、油圧ポンプP1の全ポンプ流量がラインリリーフ弁25から油タンクTに流れるようにする(ステップS21)。この場合、油圧ポンプP1のポンプ流量は、前述した『準備制御』によって目標流量Qtとなるように制御されているから、該目標流量Qtがラインリリーフ弁25を通過して油タンクTに流出することになる。尚、合流弁32が合流位置Xに位置している状態では、油圧ポンプP1、P2の合計ポンプ流量がラインリリーフ弁25から油タンクTに流れるが、ここでは合流弁32が遮断位置Nに位置しているとして説明する。
続けてコントローラ20は、手動操作によるラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧の調整作業の実行をオペレータに指示する指示指令を、モニター装置41の表示画面42あるいは報知手段44に出力する(ステップS22)。
オペレータは、コントローラ20からの指示を受けて、手動操作で調整ハンドルを回してラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧を調整する。
一方、コントローラ20は、圧力センサ31の検出値をモニターして、ポンプ圧がラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtの所定範囲内(LRPt±γ)に入ったか否かを判断し(ステップ23)、所定範囲内に入った場合には、オペレータに報知するべく報知手段44に報知指令を出力する(ステップS24)。この場合の報知は、オペレータがモニター装置41から離れていてもわかるように、報知手段44による音や光で行われる。前記γは、例えば0.3MPa程度で、各ラインリリーフ弁に応じて予め設定される。
オペレータは、コントローラ20からの報知を受けた場合、ラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧の調整作業を停止する。
さらに、コントローラ20は、ポンプ圧が前記ラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtの所定範囲内(LRPt±γ)に一定時間収まっているか否かを判断し、収まっている場合には『ラインリリーフ設定圧調整制御』を終了して、『終了制御』に移行する。
【0020】
前記『終了制御』では、コントローラ20は、メインリリーフ弁30への制御指令、コントロールバルブ11、他油圧アクチュエータ用コントロールバルブ12~18への制御指令、油圧ポンプP1、P2の容量可変手段P1a、P2aへの制御指令、エンジンコントローラ40への制御指令等、調圧補佐制御において出力された全ての制御指令を解除して、調圧補佐制御を終了する。
【0021】
しかして、コントローラ20は、『準備制御』、『メインリリーフ設定圧変更制御』(必要な場合のみ)、『ラインリリーフ設定圧調整制御』、『終了制御』を順次行う一方、オペレータは、コントローラ20からの指示を受けて、ラインリリーフ弁25の選択と目標リリーフ設定圧LRPtの入力、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧変更作業(必要な場合のみ)、ラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧調整作業を行うことで、該ラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧調整作業を単独で精度良く行えることになる。
【0022】
叙述の如く構成された本実施の形態において、油圧ショベル1の油圧システムには、可変容量型の油圧ポンプP1と、該油圧ポンプP1を油圧供給源とする油圧アクチュエータAと、油圧ポンプP1から油圧アクチュエータAへの油供給油路に配されて油圧アクチュエータAへの油供給を制御するコントロールバルブ11と、該コントロールバルブ11から油圧アクチュエータAに至るアクチュエータライン21から分岐形成されて油タンクTに至るラインリリーフ油路23に配され、手動操作によりリリーフ設定圧を調整できる手動式のラインリリーフ弁25とが備えられているが、さらにこのものには、前記手動操作によるラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧の調整作業を補佐する制御を行うコントローラ20と、油圧ポンプP1のポンプ圧を検出して該検出されたポンプ圧をコントローラ20に出力する圧力センサ31とが設けられているとともに、前記コントローラ20には、ラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtおよび目標流量Qtを設定する目標値設定手段51と、ラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧調整作業時に目標流量Qtをラインリリーフ弁25から流出させるべく油圧ポンプP1のポンプ流量を制御するポンプ流量制御手段(ポンプ容量制御手段52およびエンジン回転数制御手段53)と、手動操作によるラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧調整作業の実行を指示する指示指令出力手段54と、リリーフ設定圧調整作業の実行時に圧力センサ31から入力されるポンプ圧が前記目標リリーフ設定圧LRPtの所定範囲内になったことを報知する報知指令出力手段55とが設けられている。
【0023】
このように、本実施の形態にあっては、手動操作によるラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧調整作業を補佐するコントローラ20が設けられており、該コントローラ20によって、リリーフ設定圧調整作業時にラインリリーフ弁25から流出される流量(目標流量Qt)の制御がなされるとともに、オペレータがコントローラ20の指示に従ってリリーフ設定圧調整作業を実行したときに、ポンプ圧が目標リリーフ設定圧LRPtの所定範囲内になったこと、つまり、ラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧の調整が完了したことがコントローラ20によって報知されることになる。この結果、ラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧調整作業を単独で容易に行えることになって、調整作業の作業効率向上に大きく貢献できるとともに、調整されたリリーフ設定圧は、オペレータによるバラツキがなく一様なものとなり、ラインリリーフ弁のリリーフ設定圧調整の精度向上に寄与できる。
【0024】
さらに、油圧ショベル1の油圧システムには、油圧ポンプP1からコントロールバルブ11に至るポンプ油路27から分岐形成されて油タンクTに至るメインリリーフ油路29に配されるメインリリーフ弁30が備えられているとともに、コントローラ20に設けられたメインリリーフ弁制御手段56によって、ラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧調整作業時におけるメインリリーフ弁30のリリーフ設定圧は、ラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPよりも所定圧α以上高くなるように制御されることになる。これにより、ラインリリーフ弁25の設定圧調整作業時に、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧とラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtとの差圧が小さすぎてメインリリーフ弁30が前漏れしてしまう不具合を、確実に回避できる。
【0025】
さらにこのものにおいて、コントローラ20は、油圧ポンプP1、P2のポンプ容量を制御するポンプ容量制御手段52と、油圧ポンプP1、P2の駆動源となるエンジンEの回転数を制御するエンジン回転数制御手段53とを備えるとともに、ポンプ流量制御手段は、ラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧調整作業時に油圧ポンプP1、P2の容量を最低容量に固定した状態でエンジン回転数制御手段53によりエンジン回転数を調整することで油圧ポンプP1、P2のポンプ流量を制御することになる。これにより、ラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧調整作業時においてラインリリーフ弁25から目標流量Qtを流出させるために行うポンプ流量制御を精度良く行えることになって、リリーフ設定圧調整の精度向上に大きく貢献できる。
【0026】
さらに、本実施の形態において、油圧ショベル1の油圧システムには、複数の油圧ポンプP1、P2(本実施の形態では二つの油圧ポンプ)が設けられているとともに、コントローラ20は、リリーフ設定圧調整作業時にラインリリーフ弁25から流出させる目標流量Qtに応じて、リリーフ設定圧調整作業時にラインリリーフ弁25に複数の油圧ポンプP1、P2のポンプ流量を合流して供給する制御を行うことになる。これにより、ラインリリーフ弁25から流出させる目標流量Qtが大きくても、リリーフ設定圧調整作業を支障なく行うことができる。
【0027】
尚、本発明は上記実施の形態(第一の実施の形態)に限定されないことは勿論であって、第一の実施の形態では、メインリリーフ弁として、コントローラからの制御指令でリリーフ設定圧を変更できる電磁式のリリーフ弁が用いられているが、ラインリリーフ弁と同様に手動操作でリリーフ設定圧を変更できる手動式のリリーフ弁がメインリリーフ弁として用いられている場合(第二の実施の形態)であっても、本発明を実施できる。
前記第二の実施で行われる調圧補佐制御のメインルーチンのフローチャート図を
図8に示すが、該第二の実施の形態のメインルーチンでは、『メインリリーフ設定圧変更制御』で行われる制御と、該『メインリリーフ設定圧変更制御』が実行された場合に、『終了制御』の実行前に『メインリリーフ設定圧復帰制御』を行う点が第一の実施の形態と異なり、他の『準備制御』、『ラインリリーフ設定圧調整制御』、『終了制御』は第一の実施の形態と同様であるため、以下、『メインリリーフ設定圧変更制御』および『メインリリーフ設定圧復帰制御』について説明する。
【0028】
前記第二の実施の形態の『メインリリーフ設定圧変更制御』について、
図9に基づいて説明する。該『メインリリーフ設定圧変更制御』は、前記第一の実施の形態の『メインリリーフ設定圧変更制御』と同様に、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧MRPをラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtよりも予め設定される所定圧αだけ高圧にするための制御であって、まず、コントローラ20は、第一の実施の形態の場合と同様に、油圧ポンプP1、P2の全ポンプ流量をメインリリーフ弁30から流出させた状態で、圧力センサ31により検出されるポンプ圧を記録する(ステップS31)。
続けて、コントローラ20は、手動操作によるメインリリーフ弁30のリリーフ設定圧の変更作業をオペレータに指示する指示指令を、モニター装置41の表示画面42あるいは報知手段44に出力する(ステップS32)。
オペレータは、コントローラ20からの指示を受けて、手動操作で調整ハンドルを回してメインリリーフ弁30のリリーフ設定圧を変更する。
一方、コントローラ20は、圧力センサ31の検出値をモニターして、ポンプ圧が、ラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtよりも所定圧α高い圧力の所定範囲内(LRPt+α±β)に入ったか否かを判断し(ステップ33)、所定範囲内に入った場合には、オペレータに報知するべく報知手段44に報知指令を出力する(ステップS34)。この場合の報知は、第一の実施の形態と同様に、オペレータがモニター装置41から離れていてもわかるように、報知手段44による音や光で行われる。
オペレータは、コントローラ20からの報知を受けた場合、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧の変更作業を停止する。
さらに、コントローラ20は、ポンプ圧の検出値が、前記ラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtよりも所定圧α高い圧力の所定範囲内(LRPt+α±β)に一定時間収まっているか否かを判断し、収まっている場合には『メインリリーフ設定圧変更制御』を終了する。
【0029】
次いで、第二の実施の形態の『メインリリーフ設定圧復帰制御』について
図10に基づいて説明する。該『メインリリーフ設定圧復帰制御』は、第二の実施の形態において前記『メインリリーフ設定圧変更制御』が実行された場合にのみ行われる制御であって、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧を『メインリリーフ設定圧変更制御』実行前のリリーフ設定圧に戻すために行われる。
前記『メインリリーフ設定圧復帰制御』では、『メインリリーフ設定圧変更制御』と同様に、まず、油圧ポンプP1、P2の全ポンプ流量をメインリリーフ弁30から流出させる制御を行う(ステップS41)。
続けて、コントローラ20は、手動操作によりメインリリーフ弁30のリリーフ設定圧を変更して、『メインリリーフ設定圧変更制御』実行前のリリーフ設定圧に戻す作業をオペレータに指示する指示指令を、モニター装置41の表示画面42あるいは報知手段44に出力する(ステップS32)。
オペレータは、コントローラ20からの指示を受けて、手動操作で調整ハンドルを回してメインリリーフ弁30のリリーフ設定圧を変更する。
一方、コントローラ20は、圧力センサ31の検出値をモニターして、ポンプ圧が、『メインリリーフ設定圧変更制御』のステップS31で記憶された圧力の所定範囲内(MRP±δ)に入ったか否かを判断し(ステップS43)、所定範囲内に入った場合には、オペレータに報知するべく報知手段44に報知指令を出力する(ステップS44)。前記δは、例えば0.3MPa程度で、メインリリーフ弁30に応じて予め設定される。
オペレータは、コントローラ20からの報知を受けた場合、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧の復帰作業を停止する。
さらに、コントローラ20は、ポンプ圧の検出値が、前記記憶された圧力の所定範囲内(MRP±δ)に一定時間収まっているか否かを判断し、収まっている場合には『メインリリーフ設定圧復帰制御』を終了する。
【0030】
そして、このように構成された第二の実施の形態のものは、メインリリーフ弁30が手動式のものであるため、ラインリリーフ弁25のリリーフ設定圧調整作業時におけるメインリリーフ弁30のリリーフ設定圧を変更する必要がある場合(メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧MRPがラインリリーフ弁25の目標リリーフ設定圧LRPtよりも所定圧α以上高くない場合)には、手動操作によりメインリリーフ弁30のリリーフ設定圧変更作業を行うことになるが、この場合であっても、コントローラ20からリリーフ設定圧変更作業の指示指令が出力されるとともに、メインリリーフ弁30のリリーフ設定圧変更が完了したことがコントローラ20によって報知されることになる。この結果、手動操作によるメインリリーフ弁30のリリーフ設定圧変更作業についても、単独で容易に行えることになる。
【0031】
またさらに、前記第一、第二の実施の形態のものでは、コントローラからオペレータに指示や報知を行う場合にはモニター装置41が用いられているが、オペレータが所持する携帯端末(スマホやタブレット、ノートパソコン等)をコントローラに無線あるいは有線で接続し、該携帯端末を介して指示や報知を行うようにすることもできる。さらにこの場合に、モニター操作手段に替えて、携帯端末からコントローラへの入力も行えるようにすることで、利便性が一段と向上する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械の油圧システムに設けられる手動式のラインリリーフ弁のリリーフ設定圧を調整する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 油圧ショベル
11 コントロールバルブ
20 コントローラ
21、22 アクチュエータライン
23、24 ラインリリーフ油路
25、26 ラインリリーフ弁
27、28 ポンプ油路
29 メインリリーフ油路
30 メインリリーフ弁
31 圧力センサ
32 合流弁
40 エンジンコントローラ
41 モニター装置
50 ラインリリーフ設定圧調整補佐制御部
51 目標値設定手段
52 ポンプ制御手段
53 エンジン回転数制御手段
54 指示指令出力手段
55 報知指令出力手段
56 メインリリーフ弁制御手段
P1、P2 油圧ポンプ
P1a、P2a 容量可変手段
T 油タンク
A 油圧アクチュエータ