IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104398
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】マルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/72 20060101AFI20240729BHJP
   H03H 9/145 20060101ALI20240729BHJP
   H03H 9/70 20060101ALI20240729BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20240729BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H03H9/72
H03H9/145 Z
H03H9/70
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008582
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】中橋 憲彦
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097AA01
5J097BB14
5J097BB15
5J097CC05
5J097DD07
5J097EE08
5J097FF05
5J097GG03
5J097KK09
5J097KK10
5J108AA07
5J108BB07
5J108BB08
5J108CC04
5J108CC11
5J108EE03
5J108EE04
5J108EE13
5J108JJ01
(57)【要約】
【課題】通過特性が改善されたマルチプレクサを提供する。
【解決手段】マルチプレクサ1は、共通端子100、入出力端子110および120と、共通端子100と入出力端子110との間に接続され、第1周波数帯域を含む通過帯域を有するフィルタ10と、共通端子100と入出力端子120との間に接続され、第1周波数帯域よりも低周波側の第2周波数帯域を含む通過帯域を有するフィルタ20と、第1端が共通端子100に接続され、第2端が共通端子100と入出力端子110とを結ぶ経路のうちの共通端子100を除く経路に接続された付加回路30と、を備え、付加回路30は、圧電性を有する基板上に形成された複数のIDT電極を有する共振器を含み、上記複数のIDT電極のうち電極指ピッチが最も大きいIDT電極が共通端子100に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通端子、第1入出力端子および第2入出力端子と、
前記共通端子と前記第1入出力端子との間に接続され、第1周波数帯域を含む通過帯域を有する第1フィルタ回路と、
前記共通端子と前記第2入出力端子との間に接続され、前記第1周波数帯域よりも低周波側の第2周波数帯域を含む通過帯域を有する第2フィルタ回路と、
第1端が前記共通端子に接続され、第2端が前記共通端子と前記第1入出力端子とを結ぶ経路のうちの前記共通端子を除く経路に接続された付加回路と、を備え、
前記付加回路は、圧電性を有する基板上に形成された複数のIDT(InterDigital Transducer)電極を有する共振器を含み、
前記複数のIDT電極のうち電極指ピッチが最も大きいIDT電極が前記共通端子に接続されている、
マルチプレクサ。
【請求項2】
前記共通端子に接続された前記IDT電極の電極指ピッチの最小値は、前記複数のIDT電極のうち前記共通端子に接続されたIDT電極を除くIDT電極の電極指ピッチの最小値よりも大きい、
請求項1に記載のマルチプレクサ。
【請求項3】
前記付加回路の挿入損失が極小となる周波数において、前記第1端から前記付加回路を見た反射損失は、前記第2端から前記付加回路を見た反射損失よりも小さい、
請求項1または2に記載のマルチプレクサ。
【請求項4】
前記付加回路の挿入損失が極小となる周波数は、前記第1周波数帯域の低周波端よりも低周波側に位置する、
請求項1または2に記載のマルチプレクサ。
【請求項5】
前記第1周波数帯域は、アップリンク動作バンドであり、
前記第2周波数帯域は、ダウンリンク動作バンドである、
請求項1または2に記載のマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1周波数帯域を通過帯域とする送信側フィルタ(第1フィルタ)および第2周波数帯域を通過帯域とする受信側フィルタ(第2フィルタ)を備えるマルチプレクサの回路構成が開示されている。第1フィルタの入出力端子には、複数のIDT電極からなる共振器を含む付加回路が接続されている。付加回路の接続により、第1フィルタの所定の周波数帯域における減衰特性を改善できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-74539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたマルチプレクサにおいて、付加回路を構成する複数のIDT電極の設計パラメータにより、第2フィルタの通過特性が劣化するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、通過特性が改善されたマルチプレクサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るマルチプレクサは、共通端子、第1入出力端子および第2入出力端子と、共通端子と第1入出力端子との間に接続され、第1周波数帯域を含む通過帯域を有する第1フィルタ回路と、共通端子と第2入出力端子との間に接続され、第1周波数帯域よりも低周波側の第2周波数帯域を含む通過帯域を有する第2フィルタ回路と、第1端が共通端子に接続され、第2端が共通端子と第1入出力端子とを結ぶ経路のうちの共通端子を除く経路に接続された付加回路と、を備え、付加回路は、圧電性を有する基板上に形成された複数のIDT(InterDigital Transducer)電極を有する共振器を含み、当該複数のIDT電極のうち電極指ピッチが最も大きいIDT電極が共通端子に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通過特性が改善されたマルチプレクサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係るマルチプレクサおよびその周辺回路の回路構成図である。
図2A】実施例に係る第1フィルタ回路の回路構成図である。
図2B】実施例に係る第2フィルタ回路の回路構成図である。
図3A】実施例に係る各フィルタおよび付加回路を構成する弾性波共振子の第1例を模式的に表す平面図および断面図である。
図3B】実施例に係る各フィルタおよび付加回路を構成する弾性波共振子の第2例を模式的に表す断面図である。
図3C】実施例に係る各フィルタを構成する弾性波共振子の第3例を模式的に表す断面図である。
図4A】実施例に係る付加回路の通過特性を表すグラフである。
図4B】ノードN1から実施例に係る付加回路を見た反射特性を表すグラフである。
図4C】ノードN2から実施例に係る付加回路を見た反射特性を表すグラフである。
図5A】実施例および比較例に係る第1フィルタ回路および付加回路の通過特性を表すグラフである。
図5B】実施例および比較例に係る第2フィルタ回路の通過特性を表すグラフである。
図5C】実施例および比較例に係る第1フィルタ回路および第2フィルタ回路のアイソレーション特性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0010】
なお、各図は、本発明を示すために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではなく、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる場合がある。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡素化される場合がある。
【0011】
本開示の回路構成において、「AおよびBの間に接続される」とは、AおよびBの間でAおよびBの両方に接続されることを意味する。
【0012】
また、本開示の部品配置において、「部品Aが経路Bに直列配置される」とは、部品Aの信号入力端および信号出力端の双方が、経路Bを構成する配線、電極、または端子に接続されていることを意味する。
【0013】
また、「平行」および「垂直」などの要素間の関係性を示す用語、「矩形」などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の誤差をも含むことを意味する。
【0014】
(実施の形態)
[1.マルチプレクサの回路構成]
図1は、実施の形態に係るマルチプレクサ1およびその周辺回路の回路構成図である。同図には、本実施の形態に係るマルチプレクサ1と、アンテナ2と、インダクタ5とが示されている。
【0015】
マルチプレクサ1は、フィルタ10と、フィルタ20と、付加回路30と、インダクタ3および4と、共通端子100と、入出力端子110(第1入出力端子)および入出力端子120(第2入出力端子)と、を備える。
【0016】
フィルタ10は、第1フィルタ回路の一例であり、共通端子100と入出力端子110との間に接続されており、第1周波数帯域を含む通過帯域を有する。
【0017】
フィルタ20は、第2フィルタ回路の一例であり、共通端子100と入出力端子120との間に接続されており、第1周波数帯域よりも低周波側の第2周波数帯域を含む通過帯域を有する。
【0018】
インダクタ3は、入出力端子110とグランドとの間に接続されたインピーダンス整合用素子である。インダクタ4は、入出力端子120とフィルタ20とを結ぶ経路に直列配置されたインピーダンス整合用素子である。なお、インダクタ3は、入出力端子110とフィルタ10とを結ぶ経路に直列配置されてもよい。また、インダクタ4は、入出力端子120とグランドとの間に接続されてもよい。また、インダクタ3および4は無くてもよい。
【0019】
付加回路30は、入力端30a(第2端)および出力端30b(第1端)を有し、出力端30bがノードN1に接続され、入力端30aがノードN2に接続されている。ノードN1は、共通端子100およびフィルタ10を結ぶ経路上の接続点であり、ノードN2は、入出力端子110およびフィルタ10を結ぶ経路上の接続点である。なお、付加回路30の入力端30aは、共通端子100と入出力端子110とを結ぶ経路のうちの共通端子100を除く経路に接続されていてもよい。また、ノードN1とノードN2とは、異なる2つのノードである。異なる2つのノードとは、当該2つのノードがインピーダンス素子(インダクタ、キャパシタ、抵抗または共振子など)を介して接続されていることを意味する。
【0020】
付加回路30は、圧電性を有する基板上に形成された複数のIDT電極を有する共振器を含む。具体的には、付加回路30は、縦結合共振器31と、キャパシタ32と、を備える。縦結合共振器31は、弾性波共振子31aおよび31bで構成され、一端(弾性波共振子31a)がキャパシタ32に接続され、他端(弾性波共振子31b)が入力端30aを介してノードN2に接続されている。キャパシタ32は、弾性波共振子31aとノードN1との間に接続されている。
【0021】
弾性波共振子31aおよび31bのそれぞれは、圧電性を有する基板と、当該基板上に形成されたIDT電極と、を有している。弾性波共振子31aのIDT電極は、互いに対向する2つの櫛形電極で構成されており、一方の櫛形電極はキャパシタ32に接続され、他方の櫛形電極はグランドに接続されている。弾性波共振子31bのIDT電極は、互いに対向する2つの櫛形電極で構成されており、一方の櫛形電極は入力端30aに接続され、他方の櫛形電極はグランドに接続されている。弾性波共振子31aのIDT電極と弾性波共振子31bのIDT電極とは、弾性波伝搬方向に並置されている。
【0022】
なお、縦結合共振器31は、弾性波伝搬方向の両端に、反射器が配置されていてもよい。
【0023】
また、付加回路30は、弾性波共振子31aおよび31bの代わりに、2以上のIDT電極間での表面波の伝搬を利用して信号を伝達するトランスバーサル型の弾性波共振子を有していてもよい。
【0024】
上記構成によれば、付加回路30は、フィルタ10を通過する第1周波数帯域よりも高周波側または低周波側における所定の周波数帯域の成分に対して、当該所定の周波数帯域の成分と略同振幅かつ略逆位相の成分を生成する。これにより、フィルタ10における上記所定の周波数帯域における減衰特性を改善することが可能となる。
【0025】
ここで、付加回路30が有する複数のIDT電極のうち電極指ピッチ(波長λの1/2)が最も大きいIDT電極がノードN1(共通端子100)に接続されている。
【0026】
これによれば、付加回路30の挿入損失が極小となる周波数において、ノードN1(共通端子100)から付加回路30を見た反射損失は、ノードN2から付加回路30を見た反射損失よりも小さくなる。このため、フィルタ20への並接損が抑制されるので、フィルタ20の挿入損失の劣化を抑制できる。よって、フィルタ10および20の通過特性が改善されたマルチプレクサ1を提供することが可能となる。
【0027】
なお、縦結合共振器31は、3つ以上の弾性波共振子が弾性波伝搬方向に並置されている構成を有していてもよい。
【0028】
また、キャパシタ32は無くてもよく、弾性波共振子31aの一端がノードN1に直接接続されていてもよい。また、弾性波共振子31bの一端とノードN2との間にキャパシタが接続されていてもよい。
【0029】
[2.実施例に係るマルチプレクサ1]
次に、実施例に係るマルチプレクサ1について説明する。実施例に係るマルチプレクサ1は、図1に示す構成と同様の構成を有し、フィルタ10と、フィルタ20と、付加回路30と、インダクタ3および4と、共通端子100と、入出力端子110および120と、を備える。
【0030】
実施例に係るマルチプレクサ1は、実施の形態に係るマルチプレクサ1に対して、フィルタ10および20の具体的な回路構成例が示されている。
【0031】
図2Aは、実施例に係るフィルタ10の回路構成図である。
【0032】
フィルタ10は、第1フィルタ回路の一例であり、複数の弾性波共振子で構成されたラダー型の弾性波フィルタ回路であり、直列腕共振子11、12、13および14と、並列腕共振子16、17、18および19と、を備える。直列腕共振子11~14は、端子111と端子112とを結ぶ直列腕経路に配置されている。端子111は共通端子100に接続され、端子112は入出力端子110に接続されている。並列腕共振子16~19のそれぞれは、上記直列腕経路とグランドとの間に接続されている。直列腕共振子11~14および並列腕共振子16~19のそれぞれは、例えば、YカットのLiNbO圧電基板と、当該圧電基板上に形成されたIDT電極とで構成された、レイリー波を利用した弾性表面波共振子である。
【0033】
上記構成により、フィルタ10は、例えば、LTE(Long Term Evolution)のためのバンドB71または5G(5th Generation)-NR(New Radio)のためのバンドn71のアップリンク動作バンド(663-698MHz)を通過帯域(第1周波数帯域)とする。
【0034】
本実施例では、付加回路30の出力端30bは、ノードN1に接続され、付加回路30の入力端30aは、直列腕共振子13と直列腕共振子14との間のノードN2に接続されている。
【0035】
なお、本発明に係る第1フィルタ回路の回路構成は、図2Aに示されたフィルタ10の回路構成に限定されるものではない。
【0036】
図2Bは、実施例に係るフィルタ20の回路構成図である。
【0037】
フィルタ20は、第2フィルタ回路の一例であり、7個の弾性波共振子で構成された縦結合共振器26を備える弾性波フィルタ回路であり、縦結合共振器26と、直列腕共振子21、22および23と、並列腕共振子24および25と、を備える。
【0038】
縦結合共振器26は、弾性波共振子251、252、253、254、255、256および257で構成され、一端が直列腕共振子21および22を介して端子121に接続され、他端が直列腕共振子23を介して端子122に接続されている。端子121は共通端子100に接続され、端子122は入出力端子120に接続されている。
【0039】
弾性波共振子251~257のそれぞれは、圧電性を有する基板と、当該基板上に形成されたIDT電極と、を有している。弾性波共振子251~257のIDT電極は、互いに対向する2つの櫛形電極で構成されている。弾性波共振子251、253、255および257のそれぞれの一方の櫛形電極は直列腕共振子21および22を介して端子121に接続され、弾性波共振子251、253、255および257のそれぞれの他方の櫛形電極はグランドに接続されている。弾性波共振子252、254および256のそれぞれの一方の櫛形電極は直列腕共振子23を介して端子122に接続され、弾性波共振子252、254および256のそれぞれの他方の櫛形電極はグランドに接続されている。弾性波共振子251~257は、弾性波共振子251、252、253、254、255、256および257の順で、弾性波伝搬方向に沿って配置されている。
【0040】
直列腕共振子21、22および23は、端子121と122とを結ぶ直列腕経路に配置されている。並列腕共振子24および25のそれぞれは、上記直列腕経路とグランドとの間に接続されている。
【0041】
弾性波共振子251~257、直列腕共振子21~23および並列腕共振子24~25のそれぞれは、例えば、YカットのLiNbO圧電基板と、当該圧電基板上に形成されたIDT電極とで構成された、レイリー波を利用した弾性表面波共振子である。
【0042】
上記構成により、フィルタ20は、例えば、LTEのためのバンドB71または5G-NRのためのバンドn71のダウンリンク動作バンド(617-652MHz)を通過帯域(第2周波数帯域)とする。
【0043】
なお、本発明に係る第2フィルタ回路の回路構成は、図2Bに示されたフィルタ20の回路構成に限定されるものではない。
【0044】
なお、本実施例に係るマルチプレクサ1において、フィルタ10の通過帯域はフィルタ20の通過帯域よりも高周波側にあることが条件であるが、フィルタ10および20に適用されるバンドは、LTEのバンドB71または5G-NRのためのバンドn71には限定されない。
【0045】
また、フィルタ10および20が弾性表面波フィルタである場合、圧電性を有する基板はYカットのLiNbO圧電基板でありレイリー波を利用するものでなくてもよい。圧電性の基板は、例えばLiTaO圧電基板でありリーキー波を利用するものであってもよい。
【0046】
また、圧電性を有する基板は、高音速支持基板、低音速膜および圧電膜がこの順で積層された構造を有していてもよく、また、支持基板、エネルギー閉じ込め層および圧電膜がこの順で積層された構造を有していてもよい。
【0047】
また、本実施例において、フィルタ10はラダー型の弾性表面波フィルタであることに限定されず、ラダー型以外の弾性表面波フィルタであってもよい。さらに、フィルタ10は、インダクタおよびキャパシタを含んでもよい。また、フィルタ20は、縦結合型の弾性表面波フィルタであることに限定されず、縦結合型以外の構造であってもよく、また、バルク弾性波フィルタであってもよい。さらに、フィルタ20は、インダクタおよびキャパシタで構成されたLCフィルタであってもよい。
【0048】
また、付加回路30の縦結合共振器31を構成する弾性波共振子の数は3つ以上であってもよい。
【0049】
[3.弾性波フィルタの構造]
ここで、マルチプレクサ1を構成するフィルタ10、20および付加回路30が有する弾性波共振子の構造について例示する。
【0050】
図3Aは、実施例に係るフィルタ10、20および付加回路30の弾性波共振子の第1例を模式的に表す平面図および断面図である。同図には、フィルタ10、20および付加回路30を構成する弾性波共振子の基本構造が例示されている。なお、図3Aに示された弾性波共振子60は、弾性波共振子の典型的な構造を説明するためのものであって、電極を構成する電極指の本数および長さなどは、これに限定されない。
【0051】
弾性波共振子60は、圧電性を有する基板50と、櫛形電極60aおよび60bとで構成されている。
【0052】
図3Aの(a)に示すように、基板50の上には、互いに対向する一対の櫛形電極60aおよび60bが形成されている。櫛形電極60aは、互いに平行な複数の電極指61aと、複数の電極指61aを接続するバスバー電極62aとで構成されている。また、櫛形電極60bは、互いに平行な複数の電極指61bと、複数の電極指61bを接続するバスバー電極62bとで構成されている。複数の電極指61aおよび61bは、弾性波伝搬方向(X軸方向)と直交する方向に沿って形成されている。
【0053】
また、複数の電極指61aおよび61b、ならびに、バスバー電極62aおよび62bで構成されるIDT電極54は、図3Aの(b)に示すように、密着層540と主電極層542との積層構造となっている。
【0054】
密着層540は、基板50と主電極層542との密着性を向上させるための層であり、材料として、例えば、Tiが用いられる。主電極層542は、材料として、例えば、Cuを1%含有したAlが用いられる。保護層55は、櫛形電極60aおよび60bを覆うように形成されている。保護層55は、主電極層542を外部環境から保護する、周波数温度特性を調整する、および、耐湿性を高めるなどを目的とする層であり、例えば、二酸化ケイ素を主成分とする誘電体膜である。
【0055】
なお、密着層540、主電極層542および保護層55を構成する材料は、上述した材料に限定されない。さらに、IDT電極54は、上記積層構造でなくてもよい。IDT電極54は、例えば、Ti、Al、Cu、Pt、Au、Ag、Pdなどの金属または合金から構成されてもよく、また、上記の金属または合金から構成される複数の積層体から構成されてもよい。また、保護層55は、形成されていなくてもよい。
【0056】
次に、基板50の積層構造について説明する。
【0057】
図3Aの(c)に示すように、基板50は、高音速支持基板51と、低音速膜52と、圧電膜53とを備え、高音速支持基板51、低音速膜52および圧電膜53がこの順で積層された構造を有している。
【0058】
圧電膜53は、例えばθ°YカットX伝搬LiTaO圧電単結晶または圧電セラミックス(X軸を中心軸としてY軸からθ°回転した軸を法線とする面で切断したリチウムタンタレート単結晶、またはセラミックスであって、X軸方向に弾性表面波が伝搬する単結晶またはセラミックス)からなる。なお、各フィルタの要求仕様により、圧電膜53として使用される圧電単結晶の材料およびカット角θが適宜選択される。
【0059】
高音速支持基板51は、低音速膜52、圧電膜53ならびにIDT電極54を支持する基板である。高音速支持基板51は、さらに、圧電膜53を伝搬する表面波および境界波などの弾性波よりも、高音速支持基板51中のバルク波の音速が高速となる基板であり、弾性表面波を圧電膜53および低音速膜52が積層されている部分に閉じ込め、高音速支持基板51より下方に漏れないように機能する。高音速支持基板51は、例えば、シリコン基板である。
【0060】
低音速膜52は、圧電膜53を伝搬するバルク波よりも、低音速膜52中のバルク波の音速が低速となる膜であり、圧電膜53と高音速支持基板51との間に配置される。この構造と、弾性波が本質的に低音速な媒質にエネルギーが集中するという性質とにより、弾性表面波エネルギーのIDT電極外への漏れが抑制される。低音速膜52は、例えば、二酸化ケイ素を主成分とする膜である。
【0061】
なお、基板50の上記積層構造によれば、圧電基板を単層で使用している構造と比較して、共振周波数および反共振周波数におけるQ値を大幅に高めることが可能となる。すなわち、Q値が高い弾性波共振子を構成し得るので、当該弾性波共振子を用いて、挿入損失が小さいフィルタを構成することが可能となる。
【0062】
なお、高音速支持基板51は、支持基板と、圧電膜53を伝搬する表面波および境界波などの弾性波よりも、伝搬するバルク波の音速が高速となる高音速膜とが積層された構造を有していてもよい。この場合、支持基板には、サファイア、リチウムタンタレート、リチウムニオベイト、および水晶等の圧電体、アルミナ、マグネシア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、およびフォルステライト等の各種セラミック、ガラス等の誘電体、シリコンおよび窒化ガリウム等の半導体、ならびに樹脂基板等を用いることができる。また、高音速膜には、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、DLC膜、ダイヤモンド、これらの材料を主成分とする媒質、これらの材料の混合物を主成分とする媒質等、様々な高音速材料を用いることができる。
【0063】
また、図3Bは、実施例に係るフィルタ10、20および付加回路30の弾性波共振子の第2例を模式的に表す断面図である。図3Aに示した弾性波共振子60では、IDT電極54が、圧電膜53を有する基板50上に形成された例を示したが、当該IDT電極54が形成される基板は、図3Bに示すように、圧電体層の単層からなる圧電単結晶基板57であってもよい。圧電単結晶基板57は、例えば、LiNbOの圧電単結晶で構成されている。本例に係る弾性波共振子は、LiNbOの圧電単結晶基板57と、IDT電極54と、圧電単結晶基板57上およびIDT電極54上に形成された保護層58と、で構成されている。
【0064】
上述した圧電膜53および圧電単結晶基板57は、弾性波フィルタ装置の要求通過特性などに応じて、適宜、積層構造、材料、カット角、および、厚みを変更してもよい。上述したカット角以外のカット角を有するLiTaO圧電基板などを用いた弾性波共振子であっても、上述した圧電膜53を用いた弾性波共振子60と同様の効果を奏することができる。
【0065】
また、IDT電極54が形成される基板は、支持基板と、エネルギー閉じ込め層と、圧電膜がこの順で積層された構造を有していてもよい。圧電膜上にIDT電極54が形成される。圧電膜は、例えば、LiTaO圧電単結晶または圧電セラミックスが用いられる。支持基板は、圧電膜、エネルギー閉じ込め層、およびIDT電極54を支持する基板である。
【0066】
エネルギー閉じ込め層は1層または複数の層からなり、その少なくとも1つの層を伝搬するバルク弾性波の速度は、圧電膜近傍を伝搬する弾性波の速度よりも大きい。例えば、エネルギー閉じ込め層は、低音速層と、高音速層との積層構造となっていてもよい。低音速層は、圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも、低音速層中のバルク波の音速が低速となる膜である。高音速層は、圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも、高音速層中のバルク波の音速が高速となる膜である。なお、支持基板を高音速層としてもよい。
【0067】
また、エネルギー閉じ込め層は、音響インピーダンスが相対的に低い低音響インピーダンス層と、音響インピーダンスが相対的に高い高音響インピーダンス層とが、交互に積層された構成を有する音響インピーダンス層であってもよい。
【0068】
ここで、弾性波共振子60を構成するIDT電極の電極パラメータの一例について説明する。
【0069】
弾性波共振子の波長とは、図3Aの(b)に示すIDT電極54を構成する複数の電極指61aまたは61bの繰り返し周期である波長λで規定される。また、電極指ピッチは、波長λの1/2であり、櫛形電極60aおよび60bをそれぞれ構成する電極指61aおよび61bのライン幅をWとし、隣り合う電極指61aと電極指61bとの間のスペース幅をSとした場合、(W+S)で定義される。また、一対の櫛形電極60aおよび60bの交叉幅Lは、図3Aの(a)に示すように、電極指61aと電極指61bとの弾性波伝搬方向(X軸方向)から見た場合の重複する電極指の長さである。また、電極指61aおよび61bの総本数をNi本とした場合、IDT電極54の対数は、(Ni-1)/2で定義される。また、各弾性波共振子の電極デューティーは、複数の電極指61aおよび61bのライン幅占有率であり、複数の電極指61aおよび61bのライン幅とスペース幅との加算値に対する当該ライン幅の割合であり、W/(W+S)で定義される。また、櫛形電極60aおよび60bの高さをhとしている。以降では、波長λ、電極指ピッチ、交叉幅L、電極デューティー、IDT電極54の高さh等、弾性波共振子のIDT電極の形状に関するパラメータは、電極パラメータと定義される。
【0070】
なお、IDT電極54において、隣り合う電極指間の間隔が一定でない場合には、IDT電極54の電極指ピッチは、IDT電極54の平均電極指ピッチで定義される。IDT電極54の平均電極指ピッチは、IDT電極54に含まれる電極指61a、61bの総本数をNi本とし、IDT電極54の、弾性波伝搬方向における一方端に位置する電極指と他方端に位置する電極指との中心間距離をDiとすると、Di/(Ni-1)と定義される。
【0071】
また、図3Cは、実施例に係るフィルタ10および20の弾性波共振子の第3例を模式的に表す断面図である。図3Cには、フィルタ10および20の弾性波共振子として、バルク弾性波共振子が示されている。同図に示すように、バルク弾性波共振子は、例えば、支持基板65と、下部電極66と、圧電体層67と、上部電極68と、を有しており、支持基板65、下部電極66、圧電体層67、および上部電極68がこの順で積層された構成となっている。
【0072】
支持基板65は、下部電極66、圧電体層67、および上部電極68を支持するための基板であり、例えば、シリコン基板である。なお、支持基板65は、下部電極66と接触する領域に、空洞が設けられている。これにより、圧電体層67を自由に振動させることが可能となる。
【0073】
下部電極66は、支持基板65の一方面上に形成されている。上部電極68は、支持基板65の一方面上に形成されている。下部電極66および上部電極68は、材料として、例えば、Cuを1%含有したAlが用いられる。
【0074】
圧電体層67は、下部電極66と上部電極68との間に形成されている。圧電体層67は、例えば、ZnO(酸化亜鉛)、AlN(窒化アルミニウム)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、KN(ニオブ酸カリウム)、LN(リチウムニオベイト)、LT(リチウムタンタレート)、水晶、およびLiBO(ホウ酸リチウム)の少なくとも1つを主成分とする。
【0075】
上記積層構成を有するバルク弾性波共振子は、下部電極66と上部電極68との間に電気的なエネルギーを印加することで圧電体層67内にてバルク弾性波を誘発して共振を発生させるものである。このバルク弾性波共振子により生成されるバルク弾性波は、下部電極66と上部電極68との間を、圧電体層67の膜面に垂直な方向に伝搬する。つまり、バルク弾性波共振子は、バルク弾性波を利用した共振子である。
【0076】
[4.付加回路30の反射特性およびマルチプレクサ1の通過特性]
表1に、実施例にかかるマルチプレクサが有する付加回路30の電極パラメータを示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、弾性波共振子31aのIDT電極の波長λは、弾性波共振子31bのIDT電極の波長λよりも大きい。言い換えると、ノードN1(共通端子100)側に接続された弾性波共振子31aの電極指ピッチは、ノードN2側に接続された弾性波共振子31bのIDT電極の電極指ピッチよりも大きい。
【0079】
図4Aは、実施例に係る付加回路30の通過特性を表すグラフである。同図には、付加回路30単体のノードN2からノードN1の通過特性が示されている。付加回路30では、フィルタ20の通過帯域(第2周波数帯域)近傍の成分がフィルタ10にて抑制されるように、当該成分の振幅レベルおよび位相レベルが設定されている。本実施例では、フィルタ10の通過帯域よりも低周波側(第2周波数帯域近傍)で挿入損失が極小となる周波数は、608MHzとなっている。
【0080】
図4Bは、ノードN1から実施例に係る付加回路30を見た反射特性を表すグラフである。また、図4Cは、ノードN2から実施例に係る付加回路30を見た反射特性を表すグラフである。図4Bおよび図4Cの反射特性を比較すると、付加回路30の挿入損失が極小となる周波数(608MHz)近傍において、ノードN1(共通端子100)から付加回路30を見た反射損失(のリップル)は、ノードN2から付加回路30を見た反射損失(のリップル)よりも小さくなっている。
【0081】
図5Aは、実施例および比較例に係るフィルタ10および付加回路の通過特性を表すグラフである。同図には、フィルタ10、20および付加回路が共通端子100に接続された状態での、入出力端子110と共通端子100との間の通過特性が示されている。
【0082】
また、図5Bは、実施例および比較例に係るフィルタ20の通過特性を表すグラフである。同図には、フィルタ10、20および付加回路が共通端子100に接続された状態での、入出力端子120と共通端子100との間の通過特性が示されている。
【0083】
また、図5Cは、実施例および比較例に係るフィルタ10および20のアイソレーション特性を表すグラフである。同図には、フィルタ10、20および付加回路が共通端子100に接続された状態での、入出力端子110と入出力端子120との間の通過特性が示されている。
【0084】
なお、比較例に係るフィルタ10は実施例に係るフィルタ10と同じ回路構成を有し、比較例に係るフィルタ20は実施例に係るフィルタ20と同じ回路構成を有する。これに対して、比較例に係る付加回路は、実施例に係る付加回路30と比較して、ノードN1側に弾性波共振子31bが接続され、ノードN2側に弾性波共振子31aが接続されている点が異なる。つまり、比較例に係る付加回路において、ノードN1(共通端子100)側に接続された弾性波共振子の電極指ピッチは、ノードN2側に接続された弾性波共振子のIDT電極の電極指ピッチよりも小さい。
【0085】
図5Bに示すように、フィルタ20の通過帯域の低周波側(図5Bの破線丸内)において、実施例に係るフィルタ20の方が、比較例に係るフィルタ20と比較して挿入損失が減少している。言い換えると、実施例に係るフィルタ20の方が、比較例に係るフィルタ20と比較して、通過帯域幅が広くなっている。
【0086】
これは、実施例に係る付加回路30において、付加回路30の挿入損失が極小となる周波数(608MHz)近傍において、ノードN1(共通端子100)から付加回路30を見た反射損失がノードN2から付加回路30を見た反射損失よりも小さくなっていることに起因するものである。これによれば、挿入損失が極小となる周波数(608MHz)近傍の信号が共通端子100からフィルタ20へ入力される際に、当該信号が付加回路30に漏洩することが抑制される。つまり、フィルタ20への並接損が抑制される。よって、フィルタ20の挿入損失の増加を抑制できる。
【0087】
なお、図5Aに示すように、フィルタ10および付加回路の通過特性において、実施例は比較例と比較して、同等以上の通過特性となっている。また、図5Cに示すように、フィルタ10および20のアイソレーション特性において、実施例は比較例と比較して、同等以上のアイソレーション特性となっている。
【0088】
以上により、付加回路30において、ノードN1(共通端子100)側に接続された弾性波共振子の電極指ピッチをノードN2側に接続された弾性波共振子のIDT電極の電極指ピッチよりも大きくすることで、通過特性が改善されたマルチプレクサ1を提供することが可能となる。
【0089】
なお、実施例に係る付加回路30において、ノードN1(共通端子100)に接続された弾性波共振子のIDT電極の電極指ピッチの最小値は、ノードN1(共通端子100)に接続されたIDT電極を除くIDT電極の電極指ピッチの最小値よりも大きいことが望ましい。
【0090】
これによれば、付加回路30の挿入損失が極小となる周波数近傍において、ノードN1(共通端子100)から付加回路30を見た反射損失(のリップル)を、ノードN2から付加回路30を見た反射損失(のリップル)よりも、さらに小さくできる。よって、フィルタ20への並接損をより抑制でき、フィルタ20の挿入損失の増加をより抑制できる。
【0091】
[5.効果など]
以上のように、実施例1に係るマルチプレクサ1は、共通端子100、入出力端子110および120と、共通端子100と入出力端子110との間に接続され、第1周波数帯域を含む通過帯域を有するフィルタ10と、共通端子100と入出力端子120との間に接続され、第1周波数帯域よりも低周波側の第2周波数帯域を含む通過帯域を有するフィルタ20と、第1端が共通端子100に接続され、第2端が共通端子100と入出力端子110とを結ぶ経路のうちの共通端子100を除く経路に接続された付加回路30と、を備え、付加回路30は、圧電性を有する基板上に形成された複数のIDT電極を有する共振器を含み、上記複数のIDT電極のうち電極指ピッチが最も大きいIDT電極が共通端子100に接続されている。
【0092】
これによれば、付加回路30の挿入損失が極小となる周波数において、共通端子100から付加回路30を見た反射損失は、ノードN2から付加回路30を見た反射損失よりも小さくなる。このため、フィルタ20への並接損が抑制されるので、フィルタ20の挿入損失の劣化を抑制できる。よって、フィルタ10および20の通過特性が改善されたマルチプレクサ1を提供することが可能となる。
【0093】
また例えば、マルチプレクサ1において、共通端子100に接続されたIDT電極の電極指ピッチの最小値は、共通端子100に接続されたIDT電極を除くIDT電極の電極指ピッチの最小値よりも大きい。
【0094】
これによれば、付加回路30の挿入損失が極小となる周波数近傍において、共通端子100から付加回路30を見た反射損失(のリップル)を、ノードN2から付加回路30を見た反射損失(のリップル)よりも、さらに小さくできる。よって、フィルタ20への並接損をより抑制でき、フィルタ20の挿入損失の増加をより抑制できる。
【0095】
また例えば、マルチプレクサ1において、付加回路30の挿入損失が極小となる周波数において、共通端子100から付加回路30を見た反射損失は、ノードN2から付加回路30を見た反射損失よりも小さい。
【0096】
また例えば、マルチプレクサ1において、付加回路30の挿入損失が極小となる周波数は、第1周波数帯域の低周波端よりも低周波側に位置する。
【0097】
これによれば、フィルタ10の通過帯域(第1周波数帯域)よりも低周波側帯域において、フィルタ10の減衰特性を改善し、フィルタ20の通過特性を改善できる。
【0098】
また例えば、マルチプレクサ1において、第1周波数帯域は、アップリンク動作バンドであり、第2周波数帯域は、ダウンリンク動作バンドである。
【0099】
これによれば、フィルタ20の通過特性が改善されることにより受信感度の劣化を抑制できる。
【0100】
(その他の変形例など)
以上、マルチプレクサについて、実施の形態を挙げて説明したが、本発明の弾性波フィルタは、上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、上記実施の形態に係るマルチプレクサを内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0101】
また、例えば、マルチプレクサにおいて、各構成要素の間に、インダクタやキャパシタが接続されていてもかまわない。なお、当該インダクタには、各構成要素間を繋ぐ配線による配線インダクタが含まれてもよい。
【0102】
以下に、上記実施の形態および変形例に基づいて説明したマルチプレクサの特徴を示す。
【0103】
<1>
共通端子、第1入出力端子および第2入出力端子と、
前記共通端子と前記第1入出力端子との間に接続され、第1周波数帯域を含む通過帯域を有する第1フィルタ回路と、
前記共通端子と前記第2入出力端子との間に接続され、前記第1周波数帯域よりも低周波側の第2周波数帯域を含む通過帯域を有する第2フィルタ回路と、
第1端が前記共通端子に接続され、第2端が前記共通端子と前記第1入出力端子とを結ぶ経路のうちの前記共通端子を除く経路に接続された付加回路と、を備え、
前記付加回路は、圧電性を有する基板上に形成された複数のIDT(InterDigital Transducer)電極を有する共振器を含み、
前記複数のIDT電極のうち電極指ピッチが最も大きいIDT電極が前記共通端子に接続されている、マルチプレクサ。
【0104】
<2>
前記共通端子に接続された前記IDT電極の電極指ピッチの最小値は、前記共通端子に接続された前記IDT電極を除く前記IDT電極の電極指ピッチの最小値よりも大きい、<1>に記載のマルチプレクサ。
【0105】
<3>
前記付加回路の挿入損失が極小となる周波数において、前記第1端から前記付加回路を見た反射損失は、前記第2端から前記付加回路を見た反射損失よりも小さい、<1>または<2>に記載のマルチプレクサ。
【0106】
<4>
前記付加回路の挿入損失が極小となる周波数は、前記第1周波数帯域の低周波端よりも低周波側に位置する、<1>~<3>のいずれかに記載のマルチプレクサ。
【0107】
<5>
前記第1周波数帯域は、アップリンク動作バンドであり、
前記第2周波数帯域は、ダウンリンク動作バンドである、<1>~<4>のいずれかに記載のマルチプレクサ。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、マルチバンド化およびマルチモード化された周波数規格に適用できる、低損失および高減衰のマルチプレクサとして、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0109】
1 マルチプレクサ
2 アンテナ
3、4、5 インダクタ
10、20 フィルタ
11、12、13、14、21、22、23 直列腕共振子
16、17、18、19、24、25 並列腕共振子
26、31 縦結合共振器
30 付加回路
30a 入力端
30b 出力端
31a、31b、60、251、252、253、254、255、256、257 弾性波共振子
32 キャパシタ
50 基板
51 高音速支持基板
52 低音速膜
53 圧電膜
54 IDT電極
55、58 保護層
57 圧電単結晶基板
60a、60b 櫛形電極
61a、61b 電極指
62a、62b バスバー電極
65 支持基板
66 下部電極
67 圧電体層
68 上部電極
100 共通端子
110、120 入出力端子
111、112、121、122 端子
540 密着層
542 主電極層
N1、N2 ノード
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C