IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特開2024-104401印刷装置、及び、印刷装置の制御方法
<>
  • 特開-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図1
  • 特開-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図2
  • 特開-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図3
  • 特開-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図4
  • 特開-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図5
  • 特開-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図6
  • 特開-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104401
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】印刷装置、及び、印刷装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/70 20060101AFI20240729BHJP
   B65H 23/34 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B41J11/70
B65H23/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008585
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩義
【テーマコード(参考)】
2C058
3F104
【Fターム(参考)】
2C058AB16
2C058AC06
2C058AE04
2C058AF06
2C058AF31
2C058AF51
2C058LA03
2C058LA24
2C058LA26
2C058LB09
2C058LB17
2C058LB36
2C058LC21
2C058LC28
3F104AA02
3F104HA05
(57)【要約】
【課題】搬送モーターの消費電力が大きくなるおそれがある。
【解決手段】印刷装置は、記録紙を搬送方向へ搬送するローラー、ローラーを回転させる搬送モーター、及び、搬送モーターを駆動する駆動回路を含む搬送部と、記録紙に印刷をするヘッドと、記録紙をカットするカッターと、制御部と、を備え、制御部は、カッターにより記録紙をカットするとき、駆動回路により搬送モーターをホールド状態にさせ、カッターにより記録紙をカットした後、駆動回路により搬送モーターをショートブレーキ状態にさせる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙を搬送方向へ搬送するローラー、前記ローラーを回転させる搬送モーター、及び、前記搬送モーターを駆動する駆動回路を含む搬送部と、
前記記録紙に印刷をするヘッドと、
前記記録紙をカットするカッターと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記カッターにより前記記録紙をカットするとき、前記駆動回路により前記搬送モーターをホールド状態にさせ、
前記カッターにより前記記録紙をカットした後、前記駆動回路により前記搬送モーターをショートブレーキ状態にさせる、印刷装置。
【請求項2】
前記カッターは、第2刃、及び、前記第2刃へ向かって移動可能な第1刃を含み、
前記第1刃には刃先が構成されていない部分が形成され、前記部分において、前記記録紙がカットされない切残りが形成される、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記記録紙はロール状に巻かれており、前記ヘッド及び前記ローラーに対し前記搬送方向の上流において、前記記録紙のカールを矯正可能なカール矯正部を備える、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記搬送モーターは直流モーターであり、
前記制御部は、前記搬送モーターをパルス幅変調方式により前記ホールド状態にさせる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
記録紙を搬送方向へ搬送するローラー、前記ローラーを回転させる搬送モーター、及び、前記搬送モーターを駆動する駆動回路を含む搬送部と、前記記録紙に印刷をするヘッドと、前記記録紙をカットするカッターと、を備える印刷装置の制御方法であって、
前記カッターにより前記記録紙をカットするとき、前記駆動回路により前記搬送モーターをホールド状態にさせ、
前記カッターにより前記記録紙をカットした後、前記駆動回路により前記搬送モーターをショートブレーキ状態にさせる、印刷装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、切断手段により記録媒体を切断した後、検出手段により記録媒体を検出しているときは、搬送手段のモーターの回転を停止させた状態で、モーターに通電するプリンターが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-118388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のプリンターは、検出手段が必要である上、検出手段により記録媒体を検出しているときには継続的にモーターに通電するため、消費電力が大きくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
印刷装置は、記録紙を搬送方向へ搬送するローラー、前記ローラーを回転させる搬送モーター、及び、前記搬送モーターを駆動する駆動回路を含む搬送部と、前記記録紙に印刷をするヘッドと、前記記録紙をカットするカッターと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記カッターにより前記記録紙をカットするとき、前記駆動回路により前記搬送モーターをホールド状態にさせ、前記カッターにより前記記録紙をカットした後、前記駆動回路により前記搬送モーターをショートブレーキ状態にさせる。
【0006】
記録紙を搬送方向へ搬送するローラー、前記ローラーを回転させる搬送モーター、及び、前記搬送モーターを駆動する駆動回路を含む搬送部と、前記記録紙に印刷をするヘッドと、前記記録紙をカットするカッターと、を備える印刷装置の制御方法であって、前記カッターにより前記記録紙をカットするとき、前記駆動回路により前記搬送モーターをホールド状態にさせ、前記カッターにより前記記録紙をカットした後、前記駆動回路により前記搬送モーターをショートブレーキ状態にさせる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】印刷装置の構成を示すブロック図。
図2】印刷装置の主要部を示す模式図。
図3】カッターの第1刃が第2刃へ向かって移動するときの模式図。
図4】カッターによりカットした記録紙を示す模式図。
図5】記録紙搬送のとき、及び、ホールド状態のときの搬送モーターの駆動回路を示す模式図。
図6】ショートブレーキ状態のときの搬送モーターの駆動回路を示す模式図。
図7】搬送部、カッターの制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
1-1.印刷装置の構成
以下、実施形態に係る印刷装置の構成について、図1図6を参照しながら説明していく。なお、図中における方向を、三次元座標系を用いて説明する。説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向、上方、又は単に上と称し、負方向を下方向、下方、又は単に下と称し、X軸の正方向を右方向、右方、又は単に右と称し、負方向を左方向、左方、又は単に左と称し、Y軸の正方向を前方向、前方、又は単に前と称し、負方向を後方向、後方、又は単に後と称して説明する。
【0009】
実施形態に係る印刷装置1は、例えば、POS(Point Of Sale)システムの印刷に使用される。
図1に示すように、印刷装置1は、制御部10、記憶部20、ヘッド30、搬送部40、カッター50を含んで構成される。
制御部10は、搬送部40により、後述の記録紙Pを搬送させ、ヘッド30を駆動して、記録紙Pに印刷させる。印刷された記録紙Pは、カッター50によりカットされ、レシートや伝票などとして発行される。
【0010】
制御部10は、印刷装置1の各部を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)、入出力を管理するUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、論理回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)などを含んで構成されている。CPUはプロセッサーともいう。
記憶部20は、書き換え可能な不揮発性メモリーであるフラッシュROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)、揮発性メモリーであるRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されている。
制御部10のCPUは、記憶部20の不揮発性メモリーに記憶されたファームウェアなどのプログラム、及び、設定情報等を読み出し、記憶部20のRAMを作業領域として用いて実行する。
【0011】
図2に示すように、搬送部40は、制御部10の制御の下、駆動回路45により搬送モーター41を駆動し、搬送ギア群44を介して減速しながらローラー42にトルクを伝達し回転させる。トルクが伝達されたローラー42は、反時計回りに回転して、記録紙Pを搬送方向FFへ搬送する。
ローラー42は、ゴムなどの可撓性のある樹脂などの材料で円柱形状に形成される。ローラー42は、記録紙Pを介してヘッド30に対向する位置にあり、プラテンともいう。
【0012】
回転検出部43は、ローラー42の回転速度を検出する、いわゆるロータリーエンコーダーである。
搬送モーター41は、例えば直流モーターである。制御部10は、回転検出部43の検出信号を入力してローラー42の回転速度を検出してフィードバックし、所定の回転速度にするように、搬送モーター41をパルス幅変調方式による制御である、PWM(Pulse Width Modulation)制御をする。なお、直流モーターはDCモーターともいう。
【0013】
記録紙Pは、例えば長尺状の感熱紙である。ヘッド30は、例えばラインサーマルヘッドである。ヘッド30は、記録紙Pを介してローラー42に対向する位置にある。ヘッド30は、ローラー42に向かって押圧する押圧機構(図示省略)を有する。
記録紙Pは、押圧機構によりヘッド30に接触されながら、ヘッド30の発熱により発色されて印刷が行われる。制御部10は、外部から受信した印刷データに基づき、ヘッド30を制御して印刷を行う。
【0014】
記録紙Pはロール状に巻かれたロール紙Rとして、印刷装置1に収納される。ローラー42の回転により、記録紙Pはロール紙Rから引き出されて、搬送方向FFへ搬送される。
記録紙Pはロール状に巻かれているため、カール(curl、巻き癖)が付いている。記録紙Pは、ロール紙Rの中心の近くに巻かれているほど、カールが強くなる。また、記録紙Pの厚さが厚いほど、カールが強くなる。
【0015】
ヘッド30及びローラー42に対して搬送方向FFの上流の位置に、記録紙Pに向かって突出する凸状の突起である、カール矯正部60が備えられる。カール矯正部60の接触面60aは、搬送される記録紙Pに接触しながら、記録紙Pをカールの逆方向から押して屈曲させ、カールを矯正させるように作用する。
図2では、ロール紙Rとローラー42との間にある記録紙Pが、前下方向へ向かうようにカールする。カール矯正部60は、前下方向の逆方向である、後上方向へ向かって記録紙Pを押すようにして、カールを矯正可能とする。
【0016】
なお、記録紙Pを介して、カール矯正部60の接触面60aに対向する位置に紙ガイド(図示省略)を備えることが好ましい。
記録紙Pは、記録紙Pのカールが強くなるに従って、接触面60aの搬送方向FFの上流及び下流において、接触面60aから離れる方向へ膨らむ傾向となる。これらの記録紙Pの膨らみを、紙ガイドで押えるようにし、効果的にカールを矯正することができる。
【0017】
ヘッド30及びローラー42に対して搬送方向FFの下流には、カッター50が備えられる。カッター50は、前後方向に移動可能な第1刃52、及び、印刷装置1のケース70に固定された第2刃53を有する。第1刃52はいわゆる可動刃とも称され、第2刃53はいわゆる固定刃とも称される。第1刃52及び第2刃53は、板形状をしている。第1刃52及び第2刃53の間には、記録紙Pが搬送可能である。
カッター50は、制御部10の制御の下、カッターモーター51が回転し、カッターギア群54を介して、第1刃52を前後方向へ移動させる。第1刃52は、第2刃53の下方において、第2刃53に擦るように移動し、記録紙Pをカットする。カッターモーター51は、例えば、直流モーターである。
【0018】
第1刃52は、第2刃53に向かう方向である、第1方向Fへ移動しながら、第2刃53と交差するカットポイントAにおいて、記録紙Pをカットする。カット後、第1刃52は、第2刃53から離れる方向である、第2方向Bへ移動し、退避する。
カッター50には、第1刃52の位置を検出する位置検出器55が備えられる。制御部10は、位置検出器55により第1刃52の位置を検出しながら、目標とする位置へ第1刃52を移動させることができる。位置検出器55は、機械式のスイッチやフォトセンサーなどで構成される。
【0019】
ケース70には、記録紙Pの排出口71が形成される。排出口71は、カッター50の搬送方向FFの下流に位置する。
ヘッド30により印刷された記録紙Pは、搬送部40により搬送方向FFへ搬送され、カッター50によりカットされ、排出口71から排出される。排出口71から排出された記録紙Pは、ユーザーの手Hにより取り出されることができる。
【0020】
図3に示すように、第1刃52には、左右の端から中央へ向かって、後方へ傾斜するようなV字形状の第1刃先52aが形成される。そして、第1刃52のV字形状の中央には、第1刃先52aが構成されていない部分である切欠き52bが形成される。切欠き52bは、矩形に切り欠いた形状をしている。一方、第2刃53は、左右方向に直線形状の第2刃先53aが形成される。
第1刃52が退避したとき、後方である位置Bにある。記録紙Pをカットするとき、第1刃52は、位置Bから、前方である第1方向Fへ移動していく。カットポイントAにおいて、第1刃52の第1刃先52aが、第2刃53の第2刃先53aに対して、左右の端から中央へ向かって交差していき、記録紙Pをカットしていくことができる。
【0021】
記録紙Pのカットが終了するとき、第1刃52は、第1方向Fへ最も移動した位置Fに至る。位置Fにおける第1刃先52aは、カットポイントAでもある第2刃先53aの位置を越えている。
しかし、このとき、第1刃52の切欠き52bは、第2刃先53aの位置を越えていない。すなわち、カットポイントAにおいて、切欠き52bは第2刃先53aと交差していないので、記録紙Pをカットしていない。
【0022】
この結果、図4に示すように、カットポイントAにおいて、記録紙Pがカットされたカット部Pa、及び、記録紙Pがカットされない部分である切残りPbが形成される。
すなわち、第1刃52の切欠き52bにより、記録紙Pに切残りPbが形成されることとなる。
カッター50が、切残りPbを形成するように、記録紙Pを部分的にカットすることを、いわゆるパーシャルカットと称する。パーシャルカットされた記録紙Pは、部分的に印刷装置1内の長尺状の記録紙Pに繋がっているので、排出口71から排出された後、仮にユーザーが取り出さなくても、散乱することがない。
【0023】
なお、第1刃52の切欠き52bが、第2刃先53aの位置を越えるように構成することもできる。この場合、切欠き52bを含む第1刃52は、切残りPbがないように、記録紙Pを完全にカットすることができる。
カッター50が、記録紙Pを完全にカットすることを、いわゆるフルカットと称する。フルカットされた記録紙Pは、ユーザーが取り出して顧客に渡し易い。
【0024】
ここで、図5及び図6を参照し、搬送モーター41を駆動する駆動回路45について説明する。なお、図中に示す駆動電圧+24Vを、以下では、単に24Vと称して説明する。
駆動回路45は、スイッチS1,S2,S3,S4を有し、いわゆるHブリッジ回路を構成する。駆動回路45はスイッチSPも有し、スイッチSPを介して搬送モーター41へ24Vを供給可能である。
なお、各スイッチは、バイポーラトランジスターやMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect)トランジスターなどのトランジスターにより構成することができる。各スイッチである各トランジスターのON及びOFFは、制御部10により制御される。便宜上、以下では、制御部10が各スイッチをON及びOFFするものとして説明する。
【0025】
図5に示すように、駆動回路45は、スイッチS2,S3をOFFにし、スイッチS1,S4をONにして、駆動電流CFを流すことを可能とする。
搬送モーター41を駆動して記録紙Pを搬送方向FFへ搬送しようとする場合、制御部10は、スイッチSPに第1パルスT1を印加する。第1パルスT1は、周期Tに対し、第1時間TON1に亘って、スイッチSPをONにする。
【0026】
このように、制御部10は、周期Tに対して所定のON時間である第1時間TON1を有するパルスにより、搬送モーター41への電力の供給を制御することができ、上述のPWM制御をすることができる。搬送モーター41には間欠的に駆動電流CFが流れる。
なお、このとき、制御部10は、回転検出部43の検出信号を入力してローラー42の回転速度を検出し、所定の回転速度で回転させるように、第1パルスT1の第1時間TON1の長さを制御することができる。
【0027】
この結果、搬送モーター41は記録紙Pを搬送させるトルクを発生させることができる。搬送モーター41に搬送ギア群44を介して連結されているローラー42は、所定の回転速度で回転することができ、記録紙Pを所定の速度で搬送させることができる。
【0028】
一方、搬送モーター41をホールド状態にする場合には、スイッチSPに、第1パルスT1に替えて、第2パルスT2を印加する。第2パルスT2は、周期Tに対し、第2時間TON2に亘って、スイッチSPをONにする。
第2時間TON2に亘って、スイッチSPを介して24Vが供給され、スイッチS1,S4を経由して、搬送モーター41に間欠的に駆動電流CFが流れる。
【0029】
第2時間TON2は、第1時間TON1より短く設定される。この結果、搬送モーター41には、記録紙Pを搬送させるトルクを発生させることはできないが、記録紙Pを保持させる程度のトルクを発生させることができる。また、搬送モーター41に第2パルスT2を印加するときの消費電力は、第1パルスT1を印加するときの消費電力に比べて少なくて済む。
そして、搬送モーター41に搬送ギア群44を介して連結されているローラー42は、記録紙Pを保持させることができる。
【0030】
ところで、ローラー42が記録紙Pを搬送する際、ローラー42の可撓性によりねじりたわみが発生しローラー42が変形する。ローラー42が記録紙Pを搬送する間は、ローラー42はヘッド30の押圧機構に押圧されて変形した状態のまま記録紙Pを搬送する。そして、ローラー42が記録紙Pの搬送を終えると、ローラー42は変形を元に戻そうとする。このとき、ローラー42には、搬送時と反対となる時計回りに回転させようとするような力が働く。搬送モーター41内でローラー42の位置を保持するように働くディテントトルク(Detent Torque)に対して、この力の方が大きくなると、ローラー42は時計回りに回転してしまう。ローラー42が時計回りに回転すると、記録紙Pが搬送方向FFとは反対の方向に搬送されてしまうこととなる。
この結果、記録紙Pの位置がずれるおそれがある。記録紙Pの位置がずれると、印刷品質が劣化するおそれがある。
【0031】
このため、制御部10は、カッター50を動作させて記録紙Pをカットするとき、上述のように、搬送モーター41をホールド状態にさせる。搬送モーター41をホールド状態にすることにより、ローラー42が変形を元に戻そうとし、時計回りに回転することが抑制される。
搬送モーター41をホールド状態にしない場合、記録紙Pが搬送方向FFとは反対の方向である下方に搬送されてしまい、記録紙Pの位置がずれてしまった状態で、カッター50が記録紙Pをカットするおそれがある。言い換えると、搬送モーター41をホールド状態にしない場合、印刷されカットされた伝票のフォーマットが崩れてしまう。
しかし、搬送モーター41をホールド状態にすることにより、ローラー42が回転することが抑制でき、記録紙Pの位置がずれることを抑制することができる。そして、記録紙Pの位置を保持させた状態で、カッター50が記録紙Pをカットすることができ、印刷品質の劣化を抑制することができる。
【0032】
また、上述のように、カール矯正部60は、ローラー42の上流において、記録紙Pに接触して屈曲させるので、記録紙Pが上方へ引っ張られる際、負荷として働くことができる。このため、カール矯正部60は、カッター50が記録紙Pをカットするとき、記録紙Pが引っ張られることを抑制することができる。
また、ホールド状態の搬送モーター41の消費電力は、記録紙Pを搬送するときの搬送モーター41の消費電力に比べて少なくて済む。
【0033】
図6に示すように、駆動回路45は、スイッチS1,S3をOFFにし、スイッチS2,S4をONにすることにより、ショートブレーキ電流CBが流せることができ、搬送モーター41をショートブレーキ状態にすることができる。ショートブレーキ電流CBは、スイッチS2,S4、搬送モーター41を循環可能な電流である。
スイッチS1,S3がOFFなので、搬送モーター41へは、24Vが供給されない。なお、このとき、スイッチSPをオフにしてもよい。また、スイッチS1,S3をONにし、スイッチS2,S4をOFFにしてもよい。
【0034】
スイッチS2,S4をONにすることにより搬送モーター41をショート(短絡)させることができる。この結果、搬送モーター41が発電機のように機能し、搬送モーター41を回転させようとする力に対して、ブレーキが掛かるように作用する。
すなわち、搬送モーター41を回転させようとすると、逆起電力が発生し、搬送モーター41にブレーキ(制動)が掛かる。このとき、ショートブレーキ電流CBが流れる。ショートブレーキ電流CBは、搬送モーター41の内部抵抗などにより消費される。
また、搬送モーター41に搬送ギア群44を介して連結されているローラー42にも、ショートブレーキ状態の搬送モーター41により、ローラー42を回転させようとする力に対して、ブレーキが掛かるように作用する。
【0035】
ところで、上述のように、ヘッド30により印刷され、カッター50によりパーシャルカットされた記録紙Pは、排出口71から排出される。このとき、排出された記録紙Pは、切残りPbにより、印刷装置1内にある長尺状の記録紙Pと部分的に繋がっている。
ユーザーの手Hにより、排出口71から排出された記録紙Pが取り出されるとき、切残りPbにより部分的に繋がっている印刷装置1内にある記録紙Pも、搬送方向FFである上方へ向かって一緒に引き出されるおそれがある。このとき、ヘッド30及びローラー42に挟まれている記録紙Pも上方へ引っ張られ、ローラー42を回転させようとする力が働く。
【0036】
このため、制御部10は、カッター50による記録紙Pのカットが終了し、ユーザーの手Hにより、排出口71から排出された記録紙Pが取り出されることができる状態となったとき、搬送モーター41をショートブレーキ状態にさせる。
上述のように、ユーザーの手Hにより、排出口71から排出された記録紙Pが取り出されるとき、ローラー42を回転するような力が掛かる。しかし、ショートブレーキ状態の搬送モーター41により、ローラー42を回転させようとする力に対して、ブレーキが掛かる。
【0037】
この結果、ローラー42が回転することが抑制される。すなわち、ヘッド30及びローラー42に挟まれている記録紙Pが、引き出されないように保持することができる。
このように、ショートブレーキ状態の搬送モーター41により、ローラー42を介して記録紙Pを保持させることができる。ユーザーの手Hにより、排出口71から排出された記録紙Pが取り出されるとき、切残りPbにより部分的に繋がっている印刷装置1内にある記録紙Pが、引き出されることを抑制することができる。
【0038】
また、上述のように、このときも、カール矯正部60は、ローラー42の上流において、記録紙Pに接触して屈曲させるので、記録紙Pが上方へ引っ張られる際、負荷として働くことができる。このため、ユーザーの手Hにより、排出口71から排出された記録紙Pが取り出されるとき、切残りPbにより部分的に繋がっている印刷装置1内にある記録紙Pが、引き出されることを抑制することができる。
また、上述のように、制御部10は、搬送モーター41をショートブレーキ状態にするとき、搬送モーター41へ24Vを供給しない。従って、制御部10が、継続的に搬送モーター41をショートブレーキ状態にしても、搬送モーター41に対する消費電力は発生しない。
【0039】
なお、駆動回路45のスイッチS1,S2,S3,S4を全てOFFにすると、搬送モーター41は保持する力が働かないフリー状態となり、ユーザーの手Hにより記録紙Pが自由に引き出されてしまうこととなる。
【0040】
1-2.印刷装置の制御方法
図7に示すように、制御部10は、印刷データに基づき印刷を行う際など、搬送部40により、記録紙Pの搬送を開始する(S100)。
具体的には、制御部10は、搬送部40の駆動回路45のスイッチS2,S3をOFFにし、スイッチS1,S4をONにし、スイッチSPに第1パルスT1を印加し、搬送モーター41に間欠的に駆動電流CFを流す、PWM制御を開始する。この結果、搬送モーター41は、記録紙Pを搬送させるトルクを発生させることができる。搬送モーター41は、搬送ギア群44を介して連結されているローラー42にトルクを伝達させ、記録紙Pの搬送を開始することができる。
【0041】
なお、制御部10は、記録紙Pの搬送を開始した後、回転検出部43の検出信号を入力してローラー42の回転速度を検出し、所定の回転速度で回転させるように、第1パルスT1の第1時間TON1の長さを制御する。
制御部10は、所定の速度で記録紙Pを搬送させつつ、印刷データに基づき、ヘッド30を制御して記録紙Pに印刷を行うことができる。
【0042】
制御部10は、印刷データに基づく印刷が終了するときなど、搬送部40により、記録紙Pの搬送を終了する(S101)。
制御部10は、搬送部40の駆動回路45のスイッチSPに第2パルスT2を印加し、搬送モーター41をホールド状態にする(S102)。この結果、搬送モーター41は、記録紙Pを保持させるトルクを発生させることができる。ホールド状態の搬送モーター41は、搬送ギア群44を介して連結されているローラー42にトルクを伝達させ、記録紙Pを保持することができる。
【0043】
次に、制御部10は、カッター50により、記録紙Pのカットを開始する(S103)。
カッター50の第1刃52が移動して記録紙Pをカットするとき、搬送モーター41はホールド状態となっている。第1刃52が移動するとき、ホールド状態の搬送モーター41により、ローラー42を介して、記録紙Pの位置がずれないように保持することができる。
また、ホールド状態の搬送モーター41の消費電力は、記録紙Pを搬送するときの搬送モーター41の消費電力に比べて少なくて済む。
【0044】
次に、制御部10は、カッター50により、記録紙Pのカットを終了する(S104)。
制御部10は、カッター50の位置検出器55により、第1刃52の位置を検出可能である。制御部10は、位置検出器55により、第1刃52が第2方向Bへ移動して退避したことを検出すると、第1刃52によるカットが終了したと判断することができる。
【0045】
次に、制御部10は、搬送モーター41をショートブレーキ状態にする(S105)。具体的には、制御部10は、駆動回路45のスイッチS1,S3をOFFにし、スイッチS2,S4をONにし、ショートブレーキ電流CBが流すことができるようにする。
この結果、ショートブレーキ状態の搬送モーター41により、ローラー42を回転させようとする力に対して、ブレーキが掛かり、記録紙Pを保持させることができる。
排出口71から排出された記録紙Pがユーザーの手Hにより取り出されるとき、印刷装置1内にある記録紙Pが、切残りPbにより引き出されることを抑制することができる。
また、制御部10が、継続的に搬送モーター41をショートブレーキ状態にしても、搬送モーター41に対する消費電力は発生しない。
【0046】
上述の実施形態による印刷装置1によれば、制御部10は、カッター50により記録紙Pをカットするとき、駆動回路45により搬送モーター41をホールド状態にさせ、カッター50により記録紙Pをカットした後、駆動回路45により搬送モーター41をショートブレーキ状態にさせる。
【0047】
この結果、制御部10が、継続的に搬送モーター41をショートブレーキ状態にしても、搬送モーター41に対する消費電力を抑制することができる。また、ホールド状態の搬送モーター41の消費電力は、記録紙Pを搬送するときの搬送モーター41の消費電力に比べて少なくて済む。
さらに、制御部10は、カットするとき記録紙Pの位置がずれることを抑制することができ、また、カットした後記録紙Pが引き出されることを抑制することができる。
カッター50により記録紙Pをカットした後、記録紙Pを検出するための検出手段も不要である。
【0048】
以上、実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0049】
ヘッド30は、サーマルヘッドの例で説明したが、印刷方式は問わない。例えば、ヘッド30はインクジェットヘッドでもよい。この場合、インクジェットヘッドはローラー42に接触して記録紙Pを挟むことができないので、ローラー42に対向して記録紙Pを挟む従動ローラーを、ケース70に搭載すればよい。
【0050】
カッター50は、第1刃52がV字形状の例で説明したが、パーシャルカットが可能であれば、刃の形状やカッター方式は問わない。支点を中心に可動刃が回転する、いわゆるハサミ方式でもよく、ロータリーカッター方式でもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…印刷装置、10…制御部、20…記憶部、30…ヘッド、40…搬送部、41…搬送モーター、42…ローラー、45…駆動回路、50…カッター、52…第1刃、52a…第1刃先、52b…切欠き、53…第2刃、60…カール矯正部、70…ケース、71…排出口、FF…搬送方向、P…記録紙、Pb…切残り、R…ロール紙、S1,S2,S3,S4,SP…スイッチ、T1…第1パルス、T2…第2パルス、TON1…第1時間、TON2…第2時間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7