(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104402
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ロボット検査システムおよび位置決め方法
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20240729BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240729BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
G05D1/02 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008586
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】久保 達哉
(72)【発明者】
【氏名】漆間 正太
(72)【発明者】
【氏名】新藤 裕幸
【テーマコード(参考)】
3C707
5H301
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707BS15
3C707BS26
3C707CT05
3C707CV07
3C707CW07
3C707HS14
3C707HS27
3C707HT17
3C707HT20
3C707KT09
3C707MS15
3C707NS19
5H301AA02
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD05
5H301JJ10
5H301QQ01
(57)【要約】
【課題】優れた精度で検査を行うことができるロボット検査システムおよび位置決め方法を提供する。
【解決手段】ロボット検査システムは、ロボットを載置した載置台が接続される接続部と、前記ロボットの検査を行う検査部と、前記検査部と前記載置台との位置決めを行う位置決め機構と、を有する。また、前記位置決め機構は、前記検査部と前記載置台との鉛直方向の位置決めを行う鉛直方向位置決め部と、前記検査部と前記載置台との水平方向の位置決めを行う水平方向位置決め部と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを載置した載置台が接続される接続部と、
前記ロボットの検査を行う検査部と、
前記検査部と前記載置台との位置決めを行う位置決め機構と、を有することを特徴とするロボット検査システム。
【請求項2】
前記位置決め機構は、前記検査部と前記載置台との鉛直方向の位置決めを行う鉛直方向位置決め部と、前記検査部と前記載置台との水平方向の位置決めを行う水平方向位置決め部と、を有する請求項1に記載のロボット検査システム。
【請求項3】
前記鉛直方向位置決め部は、前記載置台を宙吊り状態で支持する肩部を有する請求項2に記載のロボット検査システム。
【請求項4】
前記水平方向位置決め部は、前記載置台を前記肩部から持ち上げて水平方向に移動できる状態とする移動許容機構を有する請求項3に記載のロボット検査システム。
【請求項5】
前記移動許容機構は、昇降するボールを備えるフローベアリングを有し、前記ボールを前記肩部よりも上側に上昇させることにより、前記載置台を前記肩部から持ち上げる請求項4に記載のロボット検査システム。
【請求項6】
前記載置台は、鉛直方向に延びるシャフトを有し、
前記水平方向位置決め部は、前記シャフトと当接する当接部を有する請求項2に記載のロボット検査システム。
【請求項7】
前記水平方向位置決め部は、前記載置台を前記当接部側に引き込んで、前記シャフトを前記当接部に押し付ける引き込み機構を有する請求項6に記載のロボット検査システム。
【請求項8】
前記水平方向位置決め部は、前記シャフトを前記当接部に押し付けた状態を維持する維持機構を有する請求項6に記載のロボット検査システム。
【請求項9】
前記載置台は、自動搬送車により前記接続部まで搬送される請求項1に記載のロボット検査システム。
【請求項10】
ロボットを載置した載置台と前記ロボットの検査を行う検査部との位置決め方法であって、
前記載置台を宙吊り状態で回転体上に載置し、水平方向へ移動できる状態とするステップと、
前記載置台を水平方向へ動かして、前記検査部と前記載置台との水平方向の位置決めを行うステップと、
前記回転体を下降させて前記載置台を宙吊り状態で肩部に載置することにより、前記検査部と前記載置台との鉛直方向の位置決めを行うステップと、を含むことを特徴とする位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット検査システムおよび位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、治具シャフトを用いて多関節型ロボットの原点校正を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では検査対象の多関節型ロボットが置かれた場所で校正や検査を行うため、多関節型ロボットが置かれた環境が校正や検査に影響する場合がある。そのため、校正や検査の精度が変動したり、低下したりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のロボット検査システムは、ロボットを載置した載置台が接続される接続部と、
前記ロボットの検査を行う検査部と、
前記検査部と前記載置台との位置決めを行う位置決め機構と、を有する。
【0006】
本発明の位置決め方法は、ロボットを載置した載置台と前記ロボットの検査を行う検査部との位置決め方法であって、
前記載置台を宙吊り状態で回転体上に載置し、水平方向へ移動できる状態とするステップと、
前記載置台を水平方向へ動かして、前記検査部と前記載置台との水平方向の位置決めを行うステップと、
前記回転体を下降させて前記載置台を宙吊り状態で肩部に載置することにより、前記検査部と前記載置台との鉛直方向の位置決めを行うステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】好適な実施形態に係るロボット検査システムの構成図である。
【
図2】ロボット検査システムで検査されるロボットの一例を示す側面図である。
【
図3】載置台および自動搬送車を示す側面図である。
【
図5】載置台とロボットの位置決めを行う機構を示す上面図である。
【
図6】自動搬送車で載置台を持ち上げた状態を示す側面図である。
【
図8】載置台を凹部内に搬送した状態を示す側面図である。
【
図9】載置台を肩部に載置した状態を示す側面図である。
【
図10】フローベアリングで載置台を持ち上げた状態を示す側面図である。
【
図17】検査部と載置台との位置決め方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のロボット検査システムおよび位置決め方法を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、好適な実施形態に係るロボット検査システムの構成図である。
図2は、ロボット検査システムで検査されるロボットの一例を示す側面図である。
図3は、載置台および自動搬送車を示す側面図である。
図4は、載置台を示す背面図である。
図5は、載置台とロボットの位置決めを行う機構を示す上面図である。
図6は、自動搬送車で載置台を持ち上げた状態を示す側面図である。
図7は、ロボット検査システムの上面図である。
図8は、載置台を凹部内に搬送した状態を示す側面図である。
図9は、載置台を肩部に載置した状態を示す側面図である。
図10は、フローベアリングで載置台を持ち上げた状態を示す側面図である。
図11は、当接部を示す上面図である。
図12および
図13は、それぞれ、引き込み機構を示す上面図である。
図14および
図15は、それぞれ、維持機構を示す上面図である。
図16は、ロボット検査システムの上面図である。
図17は、検査部と載置台との位置決め方法を示すフローチャートである。
【0010】
なお、
図1、
図7ないし
図16に示すように、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸として図示している。また、以下では、X軸に沿う方向をX軸方向とも言い、Y軸に沿う方向をY軸方向とも言い、Z軸に沿う方向をZ軸方向とも言う。また、各軸の矢印側をプラス側とも言い、反対側をマイナス側とも言う。また、Z軸方向は、鉛直方向に沿っている。
【0011】
図1に示すロボット検査システム1は、載置台2に載置された状態で搬送されてきたロボット3に対して所定の検査を行う装置である。つまり、従来のように各ロボット3が設置された場所でロボット3毎に検査を行うのではなく、反対に、全てのロボット3をロボット検査システム1まで搬送して検査する。このようなシステムによれば、全てのロボット3を同じ場所、同じ環境で検査することができるため検査精度がばらつき難くなる。したがって、全てのロボット3について、安定した、かつ、高い精度の検査を行うことができる。
【0012】
以下、ロボット検査システム1について詳細に説明するが、それに先立って、検査対象であるロボット3と、ロボット3を載置する載置台2と、載置台2をロボット検査システム1まで搬送する自動搬送車4(AGV:Automatic Guided Vehicle)と、についてそれぞれ簡単に説明する。
【0013】
[ロボット3]
図2に示すように、ロボット3は、スカラロボット(水平多関節ロボット)であり、ベース30と、基端部がベース30に接続され、ベース30に対して鉛直方向に沿う第1回動軸J1まわりに回動する第1アーム31と、基端部が第1アーム31の先端部に接続され、第1アーム31に対して鉛直方向に沿う第2回動軸J2まわりに回動する第2アーム32と、を有する。
【0014】
また、ロボット3は、さらに、第2アーム32の先端部に配置された作業ヘッド33を有する。作業ヘッド33は、同軸的に配置されたスプラインナット331およびボールネジナット332と、スプラインナット331およびボールネジナット332に挿通されたスプラインシャフト333と、を有する。スプラインシャフト333は、第2アーム32に対して、その中心軸でありZ軸方向に沿う第3回動軸J3まわりに回転可能で、かつ、第3回動軸J3に沿って昇降可能である。
【0015】
また、ロボット3は、ベース30と第1アーム31とを連結し、ベース30に対して第1アーム31を第1回動軸J1まわりに回動させる第1関節駆動機構361と、第1アーム31と第2アーム32とを連結し、第1アーム31に対して第2アーム32を第2回動軸J2まわりに回動させる第2関節駆動機構362と、スプラインナット331を回転させてスプラインシャフト333を第3回動軸J3まわりに回転させる第1ヘッド駆動機構363と、ボールネジナット332を回転させてスプラインシャフト333を第3回動軸J3に沿った方向に昇降させる第2ヘッド駆動機構364と、を有する。
【0016】
また、ロボット3は、図示しないホストコンピューターからの位置指令に基づいて各駆動機構361、362、363、364を独立して制御するロボットコントローラー37を有する。ロボットコントローラー37は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサーと、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。
【0017】
以上、ロボット3について説明した。ただし、ロボット3の構成については、特に限定されない。例えば、スカラロボット以外のロボット、具体的には6軸多関節ロボット、双腕ロボット等であってもよい。
【0018】
[載置台2]
図3に示すように、載置台2は、ロボット3が載置、固定される天板部21と、天板部21の下側に位置する底板部22と、天板部21および底板部22を支持する4本の脚部23a、23b、23c、23dと、天板部21と底板部22との間に延びる一対のシャフト25a、25bと、を有する。4本の脚部23a、23b、23c、23dは、天板部21および底板部22の四隅に位置し、これらをバランスよく支持している。また、各脚部23a、23b、23c、23dの下端部にはキャスター24が取り付けられており、載置台2を自在に動かすことができる。
【0019】
また、
図4に示すように、シャフト25a、25bは、それぞれ、鉛直方向に延びた円柱状であり、載置台2の搬送方向前方側に横に並んで配置されている。また、天板部21は、脚部23a、23b、23c、23dに対して搬送方向両側に突出した一対のツバ部211、212を有する。シャフト25a、25bやツバ部211、212は、後述するように、ロボット検査システム1の検査部7と載置台2との位置決めに用いられる。このような載置台2は、例えば、ロボット3を組み立てるための作業台であってもよいし、ロボット3を所定箇所に設置するための設置台であってもよい。
【0020】
また、
図5に示すように、載置台2は、載置台2とロボット3との位置決めを行う位置決め機構29を有する。位置決め機構29は、天板部21に配置されたマーカーMを有する。一方、ロボット3のベース30には、貫通孔301が形成されている。貫通孔301とマーカーMとが重なった状態でロボット3を天板部21に固定することにより、載置台2の所定位置にロボット3が固定される。ただし、位置決め機構29の構成は、特に限定されない。例えば、突起にロボット3を押し当てることで位置決めする構成であってもよい。
【0021】
以上、載置台2について説明した。ただし、載置台2の構成としては、ロボット3を載置することができれば、特に限定されず、例えば、キャスター24を省略してもよい。また、シャフトの数や形状は、後述する位置決めを行うことができる限り、特に限定されない。また、例えば、搬送方向前方側の脚部23a、23bがシャフトを兼ねていてもよい。
【0022】
[自動搬送車4]
図3に示すように、自動搬送車4は、載置台2を載置する荷台41と、荷台41を昇降させる昇降装置42と、車輪43と、車輪43を駆動するモーター44と、モーター44の駆動を制御するコントローラー45と、を有する。
図6に示すように、自動搬送車4は、荷台41を下降させた状態で載置台2の底板部22の下方に潜り込み、その後、昇降装置42で荷台41を上昇させることにより、底板部22を下方から支持するようにして載置台2を持ち上げることができる。また、自動搬送車4は、図示しない管理装置から走行ルートの指示を受け取り、受け取った走行ルートに従って走行する。
【0023】
このような自動搬送車4を用いることにより、ロボット3を載置台2ごとロボット検査システム1まで自動的に搬送することができる。これにより、例えば、作業者が自ら載置台2を押してロボット検査システム1まで移動させる必要がなくなり、人力を削減することができると共にロボット3の検査をスムーズに行うことができる。
【0024】
以上、自動搬送車4について説明した。ただし、自動搬送車4の構成は、ロボット3を載置台2ごとロボット検査システム1まで搬送することができれば特に限定されない。また、自動搬送車4を省略し、作業者が自ら載置台2を押してロボット検査システム1まで搬送してもよい。
【0025】
[ロボット検査システム1]
図1に示すように、ロボット検査システム1は、所定環境に保たれた検査室10内に配置されている。これにより、複数のロボット3の検査を同じ環境で行うことができ、検査結果のばらつきが抑制される。また、検査室10の床面とロボット検査システム1との間に振動減衰部材11が配置されている。これにより、床面を介して外部からの振動がロボット検査システム1に伝わり難くなり、検査精度が向上する。なお、本実施形態では、振動減衰部材11として金属製の板材、特に鉄板が用いられている。また、この鉄板は、アンカーにより床面に固定され、ロボット検査システム1は、アンカーにより鉄板に固定されている。ただし、ロボット検査システム1の設置場所は、特に限定されない。また、振動減衰部材11を省略し、ロボット検査システム1を床面に直接設置してもよい。
【0026】
また、
図7に示すように、ロボット検査システム1は、載置台2が接続される接続部5と、載置台2を検査部7に対して位置決めする位置決め機構6と、ロボット3の検査を行う検査部7と、を有する。
【0027】
-接続部5-
接続部5は、載置台2が侵入する侵入口511を備える凹部51を有する。なお、本実施形態では、侵入口511が接続部5のY軸方向マイナス側に位置している。そして、凹部51の周囲に検査部7が配置されている。このように、接続部5の周囲に検査部7を配置することにより、ロボット3の検査を効率よく行うことができる。特に、ロボット3は、第1、第2アーム31、32が水平方向にだけ移動するため、凹部51の周囲に検査部7を平面的に配置することにより、ロボット3の可動範囲内に検査部7を効率的に配置でき、ロボット3に対する検査に特化させることができる。ただし、検査部7の配置は、特に限定されない。
【0028】
-位置決め機構6-
位置決め機構6は、検査部7と載置台2との位置決めを行う。これにより、載置台2を所定位置に配置することができる。前述したように、載置台2とロボット3とが位置決め機構29によって位置決めされているため、位置決め機構6によって検査部7と載置台2との位置決めを行うことにより、検査部7に対してロボット3が所定の位置に位置決めされる。そのため、ロボット3について高精度かつ安定した検査を行うことができる。このような位置決め機構6は、検査部7と載置台2とのZ軸方向つまり鉛直方向の位置決めを行う鉛直方向位置決め部6Aと、検査部7と載置台2との水平方向つまりX軸方向およびY軸方向の位置決めを行う水平方向位置決め部6Bと、を有する。これにより、載置台2を三次元的に位置決めすることができる。そのため、ロボット3について高精度かつ安定した検査を行うことができる。
【0029】
鉛直方向位置決め部6Aは、凹部51内に配置された一対の肩部611、612を有する。これら肩部611、612は、互いの間に載置台2が侵入可能となるようにX軸方向に離間して配置されており、それぞれ、Y軸方向に延在している。また、肩部611、612の上面は、平坦面で構成され、載置台2が載置される載置面となる。このような肩部611、612は、所定の高さに設置されている。
【0030】
図8に示すように、自動搬送車4は、ツバ部211、212を肩部611、612よりも上方に位置させた状態で載置台2を肩部611、612の間に搬送し、肩部611、612の直上にツバ部211、212を位置させる。そして、
図9に示すように、自動搬送車4の荷台41を下降させて、ツバ部211、212を肩部611、612上に載置する。これにより、検査部7と載置台2とがZ軸方向に位置決めされる。なお、この状態では、肩部611、612によってツバ部211、212が下方から支えられ、載置台2が宙吊り状態となる。つまり、脚部23が床面から浮遊した状態となる。これにより、載置台2のX軸方向およびY軸方向への移動が規制される。
【0031】
また、
図8に示すように、水平方向位置決め部6Bは、載置台2が肩部611、612上に載置されて宙吊りとなった状態から載置台2を持ち上げ、載置台2をX軸方向およびY軸方向に移動できる状態とする移動許容機構62を有する。このような移動許容機構62は、肩部611、612に併設されたフローベアリング621、622を有する。
【0032】
フローベアリング621は、肩部611のX軸方向マイナス側に併設されており、Y軸方向に並んだ複数のボール621aと、各ボール621aを回転自在に保持するボール受け621bと、を有する。同様に、フローベアリング622は、肩部612のX軸方向プラス側に併設されており、Y軸方向に並んだ複数のボール622aと、各ボール622aを回転自在に保持するボール受け622bと、を有する。これらフローベアリング621、622では、図示しないポンプによってボール受け621b、622b内に空気を導入することにより、各ボール621a、622aが上昇する。
【0033】
図9に示すように、ボール受け621b、622bに空気を導入せず、各ボール621a、622aを下降させたボール下降状態では、各ボール621a、622aは、その上端が肩部611、612の上面よりも下側に位置しており、ツバ部211、212と非接触である。そのため、この状態では、ツバ部211、212が肩部611、612に載置される。これに対して、
図10に示すように、ボール受け621b、622bに空気を導入し、各ボール621a、622aを上昇させたボール上昇状態では、各ボール621a、622aは、その上端が肩部611、612の上面よりも上側に位置し、ツバ部211、212を肩部611、612から上側に持ち上げることで、載置台2を肩部611、612から浮上させている。これにより、載置台2が水平方向に移動自在な状態となる。
【0034】
以上、移動許容機構62について説明した。ただし、移動許容機構62の構成は、特に限定されない。例えば、移動許容機構62は、肩部611、612に併設された一対のベアリングと、各ベアリングを昇降させる昇降装置と、を有する構成であってもよい。この場合、昇降装置でベアリングを昇降させることで、ボール下降状態とボール上昇状態とを切り替えることができる。
【0035】
また、
図11に示すように、水平方向位置決め部6Bは、さらに、載置台2のシャフト25a、25bと当接する当接部63を有する。当接部63は、凹部51のY軸方向プラス側に位置している。また、当接部63は、凹部51内に突出する第1当接部631および第2当接部632を有する。第1、第2当接部631、632は、X軸方向に並んで配置されている。また、第1当接部631は、その先端部に形成されたV字状の凹部631aを有する。シャフト25a、25bをY軸方向マイナス側から第1、第2当接部631、632に当接させると共に、凹部631aにシャフト25aを係合させることにより、載置台2のX軸方向およびY軸方向の位置決めが行われる。このような構成によれば、簡単な構成で、載置台2のX軸方向およびY軸方向の位置決めを行うことができる。
【0036】
以上、当接部63について説明した。ただし、当接部63の構成は、載置台2のX軸方向およびY軸方向の位置決めを行うことができれば特に限定さない。
【0037】
また、
図12に示すように、水平方向位置決め部6Bは、さらに、自動搬送車4によって凹部51内に搬送された載置台2をY軸方向プラス側に引き込んで、シャフト25a、25bを第1、第2当接部631、632に押し付ける引き込み機構64を有する。引き込み機構64は、肩部611の下方に配置された第1引き込み部641と、肩部612の下方に配置された第2引き込み部642と、を有する。
【0038】
第1引き込み部641は、Y軸方向に変位するピストンロッド641aを備えるエアシリンダー641bと、ピストンロッド641aに取り付けられたアーム641cと、アーム641cの先端部に配置されたX軸まわりに回転自在なローラー641dと、を有する。同様に、第2引き込み部642は、Y軸方向に変位するピストンロッド642aを備えるエアシリンダー642bと、ピストンロッド642aに取り付けられたアーム642cと、アーム642cの先端部に配置されたX軸まわりに回転自在なローラー642dと、を有する。なお、アーム641c、642cは、凹部51内への載置台2の搬送を邪魔しないように、使用しないときは退避することができる。
【0039】
図12に示すように、自動搬送車4によって載置台2が凹部51内に搬送されると、アーム641c、642cを脚部23a、23bの後方に突出させる。そして、
図13に示すように、エアシリンダー641b、642bによってアーム641c、642cをY軸方向プラス側へ動かし、ローラー641d、642dで脚部23a、23bをY軸方向プラス側へ付勢して載置台2をY軸方向プラス側に引き込み、シャフト25a、25bを第1、第2当接部631、632に押し付ける。このような構成によれば、簡単な構成で載置台2をY軸方向プラス側へ引き込むことができ、載置台2のX軸方向およびY軸方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0040】
ただし、引き込み機構64の構成は、特に限定されない。例えば、アーム641c、642cをY軸方向に移動させる機構は、エアシリンダーでなくてもよく、モーターを用いてもよい。また、引き込み機構64は、省略してもよい。
【0041】
また、
図14に示すように、水平方向位置決め部6Bは、さらに、シャフト25a、25bを第1、第2当接部631、632に押し付けた状態を維持する維持機構65を有する。維持機構65は、第1維持部651と、第2維持部652と、を有する。
【0042】
第1維持部651は、Y軸方向に変位するピストンロッド651aを備えるエアシリンダー651bと、ピストンロッド651aに取り付けられたアーム651cと、を有する。同様に、第2維持部652は、Y軸方向に変位するピストンロッド652aを備えるエアシリンダー652bと、ピストンロッド652aに取り付けられたアーム652cと、を有する。なお、アーム651c、652cは、凹部51内への載置台2の搬送を邪魔しないように、使用しないときは退避することができる。
【0043】
図14に示すように、引き込み機構64によってシャフト25a、25bを第1、第2当接部631、632に押し付けた状態で、アーム651c、652cを脚部23c、23dの後方に突出させる。そして、
図15に示すように、エアシリンダー651b、652bによってアーム651c、652cをY軸方向プラス側へ動かし、アーム651c、652cで脚部23c、23dをY軸方向プラス側へ付勢する。これにより、シャフト25a、25bが第1、第2当接部631、632に押し付けられた状態を維持することができる。このような構成によれば、簡単な構成で載置台2をY軸方向プラス側へ付勢することができ、載置台2の位置を維持することができる。
【0044】
なお、引き込み機構64によってもシャフト25a、25bが第1、第2当接部631、632に押し付けられた状態を維持することができるが、維持機構65をさらに用いることにより、より強い力でシャフト25a、25bを第1、第2当接部631、632に押し付けた状態を維持することができる。そのため、検査中のロボット3の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0045】
ただし、維持機構65の構成は、特に限定されない。例えば、アーム651c、652cをY軸方向に移動させる機構は、シリンダーでなくてもよく、モーターを用いてもよい。また、維持機構65は、省略してもよい。この場合は、引き込み機構64が維持機構65を兼ねることができる。
【0046】
検査部7は、接続部5に接続された載置台2上のロボット3に対して所定の検査を行う。なお、本願明細書中の「検査」は、検査の他、各種点検、各種メンテナンス、各種準備、各種測定、各種校正(キャリブレーション)等、ロボット3の設定、維持管理等に必要な全ての行為を含む意味である。
【0047】
また、検査部7は、ロボット3に対して所定の検査を行う。検査部7は、
図16に示すように、凹部51のY軸方向プラス側に位置する第1領域R1と、第1領域R1のX軸方向マイナス側に位置する第2領域R2と、第1領域R1のX軸方向プラス側に位置する第3領域R3と、を有する。
【0048】
各領域R1、R2、R3で実施される検査の内容としては、特に限定されず、ロボット3に求められる性能、特性等によって適宜設定することができる。本実施形態では、第1領域R1において、ロボット3の第1、第2回動軸J1、J2の原点校正(キャリブレーション)が行われる。また、第3領域R3において、ロボット3の第3回動軸J3の原点校正が行われる。また、第2領域R2において、第1、第3領域R1、R3での検査の準備が行われる。具体的には、スプラインシャフト333にロボット3の可搬重量に合わせた錘を取り付ける作業が行われる。なお、第1回動軸J1の原点校正とは、ロボットコントローラー37が記憶している第1回動軸J1の原点と、ロボットコントローラー37の制御により第1回動軸J1を理想原点に位置させたときの現実の原点と、を一致させる作業を言う。第2、第3回動軸J2、J3の原点校正についても同様である。
【0049】
以上、ロボット検査システム1について説明した。次に、載置台2と検査部7との位置決め方法について説明する。載置台2と検査部7との位置決め方法は、
図17に示すように、ロボット3が載置された載置台2を凹部51内に搬送する搬送ステップS1と、肩部611、612上に載置台2を載置して宙吊り状態とする宙吊りステップS2と、載置台2を肩部611、612から浮かせて水平方向に移動できる状態とする浮遊ステップS3と、載置台2を水平方向へ動かして水平方向の位置決めを行う水平方向位置決めステップS4と、載置台2を下降させて再び肩部611、612に載置して鉛直方向の位置決めを行う鉛直方向位置決めステップS5と、位置決め状態を維持する維持ステップS6と、を含む。
【0050】
[搬送ステップS1]
まず、
図8で示したように、自動搬送車4によって載置台2を凹部51内に搬送する。このとき、ツバ部211、212は、肩部611、612よりも上側に位置している。
【0051】
[宙吊りステップS2]
次に、
図9で示したように、自動搬送車4の荷台41を下降させて、載置台2のツバ部211、212を肩部611、612上に載置する。これにより、載置台2は、脚部23が床面から浮遊した宙吊り状態となる。なお、このとき、フローベアリング621、622は、ボール下降状態である。
【0052】
[浮遊ステップS3]
次に、
図10で示したように、フローベアリング621、622をボール上昇状態とし、各ボール621a、622aで載置台2を肩部611、612から持ち上げる。これにより、載置台2がボール621a、622aによって支持された状態となり、水平方向への移動が可能となる。なお、宙吊りステップS2を省略し、いきなり、ボール上昇状態としたフローベアリング621、622上に載置台2のツバ部211、212を載置してもよい。これにより、ステップ数を削減することができる。
【0053】
[水平方向位置決めステップS4]
次に、
図13で示したように、第1、第2引き込み部641、642のアーム641c、642cを突出させ、さらに、アーム641c、642cをY軸方向プラス側へ移動させることにより載置台2をY軸方向プラス側へ引き込み、シャフト25a、25bを第1、第2当接部631、632に押し付ける。これにより、載置台2の水平方向の位置が定まる。なお、少なくとも、維持ステップS6が終了するまでは、第1、第2引き込み部641、642によってシャフト25a、25bを第1、第2当接部631、632に押し付けた状態を維持する。
【0054】
[鉛直方向位置決めステップS5]
次に、フローベアリング621、622を再びボール下降状態とし、載置台2のツバ部211、212を肩部611、612上に載置する。これにより、載置台2の鉛直方向の位置が定まる。なお、前述したように、ローラー641d、642dが脚部23に当接しているため、載置台2の下降をスムーズに行うことができる。
【0055】
[維持ステップS6]
次に、
図15で示したように、第1、第2維持部651、652のアーム651c、652cを凹部51内に突出させ、さらに、アーム641c、642cをY軸方向プラス側へ移動させることにより載置台2をY軸方向プラス側へ付勢する。これにより、載置台2がより強固に固定され、検査中に加わる負荷等による載置台2の位置ずれが抑制される。
【0056】
以上により、載置台2と検査部7との位置決めが完了する。このような位置決め方法によれば、少ないステップ数で容易に載置台2の位置決めを行うことができる。
【0057】
以上、ロボット検査システム1について説明した。このようなロボット検査システム1は、前述したように、ロボット3を載置した載置台2が接続される接続部5と、ロボット3の検査を行う検査部7と、検査部7と載置台2との位置決めを行う位置決め機構6と、を有する。これにより、検査部7に対するロボット3の位置ずれが抑制され、各ロボット3について高精度な検査を行うことができる。
【0058】
また、前述したように、位置決め機構6は、検査部7と載置台2との鉛直方向つまりZ軸方向の位置決めを行う鉛直方向位置決め部6Aと、検査部7と載置台2との水平方向つまりX軸方向およびY軸方向の位置決めを行う水平方向位置決め部6Bと、を有する。これにより、検査部7と載置台2とを三次元的に位置決めすることができる。そのため、各ロボット3について高精度な検査を行うことができる。
【0059】
また、前述したように、鉛直方向位置決め部6Aは、載置台2を宙吊り状態で支持する肩部611、612を有する。このような構成によれば、肩部611、612上に載置台2を載置することにより、載置台2の鉛直方向の位置決めを簡単かつ精度よく行うことができる。
【0060】
また、前述したように、水平方向位置決め部6Bは、載置台2を肩部611、612から持ち上げて水平方向に移動できる状態とする移動許容機構62を有する。このような構成によれば、載置台2の水平方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0061】
また、前述したように、移動許容機構62は、昇降するボール621a、622aを備えるフローベアリング621、622を有する。そして、ボール621a、622aを肩部611、612よりも上側に上昇させることにより、載置台2を肩部611、612から持ち上げる。これにより、簡単な構成で、載置台2が水平方向に移動できる状態となる。
【0062】
また、前述したように、載置台2は、鉛直方向に延びるシャフト25a、25bを有し、水平方向位置決め部6Bは、シャフト25a、25bと当接する当接部63を有する。当接部63にシャフト25a、25bを押し付けることにより、簡単かつ精度よく、ロボット3の水平方向の位置が定まる。
【0063】
また、前述したように、水平方向位置決め部6Bは、載置台2を当接部63側に引き込んでシャフト25a、25bを当接部63に押し付ける引き込み機構64を有する。これにより、当接部63にシャフト25a、25bを押し付けることができ、簡単かつ精度よく、ロボット3の水平方向の位置が定まる。
【0064】
また、前述したように、水平方向位置決め部6Bは、シャフト25a、25bを当接部63に押し付けた状態を維持する維持機構65を有する。これにより、検査中に受ける力によるロボット3の位置ずれが抑制される。そのため、高い精度で検査を行うことができる。
【0065】
また、前述したように、載置台2は、自動搬送車4により接続部5まで搬送される。これにより、例えば、作業者が自ら載置台2を押してロボット検査システム1まで移動させる必要がなくなり、人力を削減することができると共にロボット3の検査をスムーズに行うことができる。
【0066】
また、前述したように、ロボット3を載置した載置台2とロボット3の検査を行う検査部7との位置決め方法は、載置台2を宙吊り状態で回転体であるボール621a、622a上に載置し、水平方向へ移動できる状態とする浮遊ステップS3と、載置台2を水平方向へ動かして、検査部7と載置台2との水平方向の位置決めを行う水平方向位置決めステップS4と、ボール621a、622aを下降させて載置台2を宙吊り状態で肩部611、612に載置することにより、検査部7と載置台2との鉛直方向の位置決めを行う鉛直方向位置決めステップS5と、を含む。このような方法によれば、少ないステップ数で容易に載置台2の位置決めを行うことができる。
【0067】
以上、本発明のロボット検査システムおよび位置決め方法を図示の実施形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではない。各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や他の任意の工程が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…ロボット検査システム、10…検査室、11…振動減衰部材、2…載置台、21…天板部、211…ツバ部、212…ツバ部、22…底板部、23a…脚部、23b…脚部、23c…脚部、23d…脚部、24…キャスター、25a…シャフト、25b…シャフト、29…位置決め機構、3…ロボット、30…ベース、301…貫通孔、31…第1アーム、32…第2アーム、33…作業ヘッド、331…スプラインナット、332…ボールネジナット、333…スプラインシャフト、361…第1関節駆動機構、362…第2関節駆動機構、363…第1ヘッド駆動機構、364…第2ヘッド駆動機構、37…ロボットコントローラー、4…自動搬送車、41…荷台、42…昇降装置、43…車輪、44…モーター、45…コントローラー、5…接続部、51…凹部、511…侵入口、6…位置決め機構、6A…鉛直方向位置決め部、6B…水平方向位置決め部、611…肩部、612…肩部、62…移動許容機構、621…フローベアリング、621a…ボール、621b…ボール受け、622…フローベアリング、622a…ボール、622b…ボール受け、63…当接部、631…第1当接部、631a…凹部、632…第2当接部、64…引き込み機構、641…第1引き込み部、641a…ピストンロッド、641b…エアシリンダー、641c…アーム、641d…ローラー、642…第2引き込み部、642a…ピストンロッド、642b…エアシリンダー、642c…アーム、642d…ローラー、65…維持機構、651…第1維持部、651a…ピストンロッド、651b…エアシリンダー、651c…アーム、652…第2維持部、652a…ピストンロッド、652b…エアシリンダー、652c…アーム、7…検査部、J1…第1回動軸、J2…第2回動軸、J3…第3回動軸、M…マーカー、R1…第1領域、R2…第2領域、R3…第3領域、S1…搬送ステップ、S2…宙吊りステップ、S3…浮遊ステップ、S4…水平方向位置決めステップ、S5…鉛直方向位置決めステップ、S6…維持ステップ