(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104415
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63J 2/10 20060101AFI20240729BHJP
B63B 3/48 20060101ALI20240729BHJP
B63B 3/52 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B63J2/10
B63B3/48
B63B3/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008603
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】敷根 宏章
(72)【発明者】
【氏名】前田 修平
(57)【要約】
【課題】通気及び換気のための開口を有した区画における作業員の作業性を向上することが可能な船舶を提供する。
【解決手段】船舶は、船体と、前記船体に設けられて、下方に第一区画を形成する第一甲板と、前記船体における前記第一甲板の上方に設けられて前記第一甲板と共に第二区画を形成する第二甲板と、前記第一甲板と前記第二甲板とを上下に接続することで前記第二甲板を下方から支持するとともに、上下にわたって延びる通風路を内部に有した筒状をなし前記通風路の下端が前記第一区画に連通された通風ピラー部と、前記第二区画の天井に設けられて、前記通風路の上端と前記第二区画とを連通させる連通口部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体に設けられて、下方に第一区画を形成する第一甲板と、
前記船体における前記第一甲板の上方に設けられて前記第一甲板と共に第二区画を形成する第二甲板と、
前記第一甲板と前記第二甲板とを上下に接続することで前記第二甲板を下方から支持するとともに、上下にわたって延びる通風路を内部に有した筒状をなし前記通風路の下端が前記第一区画に連通された通風ピラー部と、
前記第二区画の天井に設けられて、前記通風路の上端と前記第二区画とを連通させる連通口部と、
を備える船舶。
【請求項2】
前記連通口部は、
下方に向かって開口する開口部を有した連通口部本体と、
前記開口部を開閉可能な蓋部と、
を備える
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記第一甲板は、暴露甲板であり、
前記通風ピラー部は、前記船体の外舷から離間して設けられている
請求項1に記載の船舶。
【請求項4】
前記外舷に沿って並んで設けられ、前記第一甲板と前記第二甲板とを上下に接続することで前記第二甲板を下方から支持する複数のピラー部を更に備える
請求項3に記載の船舶。
【請求項5】
前記船体の外部と前記第一区画とを連通可能なダクトと、前記ダクトに設けられて送風可能なファンと、を有した換気駆動部を備え、
前記換気駆動部の前記ダクトは、
前記船体の船幅方向の中央よりも左方の左舷領域と、前記船幅方向の中央よりも右方の右舷領域との何れか一方で前記第一区画に連通され、
前記通風ピラー部は、
前記左舷領域と前記右舷領域との何れか他方と、前記船幅方向の中央との少なくとも一方にだけ設けられている
請求項3又は4に記載の船舶。
【請求項6】
前記ダクトは、前記第一区画と前記第二区画とを連通可能に形成されている
請求項5に記載の船舶。
【請求項7】
前記通風ピラー部は、ステンレス鋼からなる
請求項1から4の何れか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
揚錨機や係船機等の甲板機械を配置する係船甲板等の甲板の上方に更に甲板を備えた船舶が知られている。このような船舶では、係船甲板等の甲板と、その上方の甲板との間に複数のピラーを渡すことで、上方の甲板を下方から支持している。また、係船甲板等の甲板の直下には、舵取り機室等の船内区画が存在している場合がある。このような船内区画では通風や換気を行う必要があり、係船甲板等の甲板上のブルワークの近傍等に、船内区画に連通された通風筒を設置している。
つまり、係船甲板等の甲板上には、ピラー及び通風筒が配置されるため、使用可能なスペースが少ない。また、上記配置の通風筒は、ブルワークの近傍で作業を行う作業者の邪魔になる場合がある。
【0003】
特許文献1には、新鮮空気を機関室へ給気するために、ピラー内部の空洞を通風路として利用する技術が開示されている。この特許文献1では、ウィング部を下方から支持するウィングピラー部の内部空洞を通風路としている。特許文献1では、ウィングピラー部よりも下方の船内区画に給気管が設けられ、この給気管がウィングピラー部の下端に接続されている。そして、ウィングピラーの上部に開口する給気口から取り入れられた空気は、ウィングピラーと給気管とを経由して機関室へ供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された給気構造では、ウィングピラーの周面上部に空気を取り込む開口が形成されている。このような特許文献1のピラー構造を、上記の係船甲板等の甲板上に設けられたピラー構造として適用した場合、係船甲板等の甲板と、その上方の甲板との間の区画に、空気を取り込む開口が形成されることとなる。しかし、このような通気や換気をするための開口には、船舶構造規則により開閉装置を設ける必要がある。この開閉装置は、ピラーから側方に向かって突出してしまうため、上記区画で作業を行う作業者の邪魔になる可能性が有る。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、通気及び換気のための開口を有した区画における作業員の作業性を向上することが可能な船舶を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
本開示の第一態様に係る船舶は、船体と、前記船体に設けられて、下方に第一区画を形成する第一甲板と、前記船体における前記第一甲板の上方に設けられて前記第一甲板と共に第二区画を形成する第二甲板と、前記第一甲板と前記第二甲板とを上下に接続することで前記第二甲板を下方から支持するとともに、上下にわたって延びる通風路を内部に有した筒状をなし前記通風路の下端が前記第一区画に連通された通風ピラー部と、前記第二区画の天井に設けられて、前記通風路の上端部と前記第二区画とを連通させる連通口部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る船舶によれば、通気及び換気のための開口を有した区画における作業員の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る船舶の側面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る船舶の第二区画の平面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る船舶の第二甲板の平面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る通風ピラー部の軸線に沿う断面図である。
【
図5】
図2における通風ピラー部近傍の拡大図である。
【
図6】本開示の実施形態における連通口部の側面図である。
【
図7】本開示の実施形態における船舶の第一区画及び第二区画近傍の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の実施形態に係る船舶を図面に基づき説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る船舶の側面図である。
(船体の構造)
図1に示すように、本開示の実施形態の船舶1は、船体2と、艤装品(
図1において図示略)と、を備えている。船舶1の船種は、特定のものに限られない。船舶1の船種としては、例えば練習船、フェリー、RORO船(Roll-on/Roll-off船)、PCTC(Pure Car & Truck Carrier)等を例示できる。
【0011】
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底4と、複数の甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を有している。船底4は、これら舷側3A,3Bの下部同士を接続する船底外板を有している。本実施形態の船舶1の船尾2bは、左右舷側3A,3Bを接続する平板状のトランサムスターンである場合を例示しているが、トランサムスターンに限られない。
【0012】
複数の甲板5は、船底4よりも上方に、上下に間隔をあけて設けられている。本実施形態の船体2は、複数の甲板5として、少なくとも第一甲板5Aと、第二甲板5Bとを含んでいる。
【0013】
図2は、本開示の実施形態に係る船舶の第二区画の平面図である。
図1、
図2に示すように、本実施形態の第一甲板5Aは、揚錨機や係船機等の甲板機械7が配置されるいわゆる係船甲板である。係船甲板は、一般に、船首2aに隣接して設けられるものと、船尾2bに隣接して設けられるものとが知られているが、本実施形態では、第一甲板5Aとして、船尾2bに隣接して設けられた係船甲板を一例にして説明している。
【0014】
本実施形態の第一甲板5Aは、波風に晒される暴露甲板になっている。第一甲板5Aには、その外舷5eに沿ってブルワーク10Aが形成されている。第一甲板5Aは、下方に第一区画6を形成している。本実施形態の第一区画6は、船尾船底から下方に突出する舵板の上方に配置されているため、油圧等により舵板を揺動させる舵取機(図示せず)等を収容するいわゆる舵取機室となっている。第一区画6は、暴露では無く船内区画であり、通気及び換気が必要な区画である。
【0015】
図3は、本開示の実施形態に係る船舶の第二甲板の平面図である。
図1から
図3に示すように、第二甲板5Bは、第一甲板5Aの上方に設けられて第一甲板5Aと共に第二区画9を形成する。この第二甲板5Bは、第一甲板5Aと同様に、波風に晒される暴露甲板である。本実施形態の第二甲板5Bは、船尾2bに隣接する甲板5のうち最も上方に配置されている甲板5である。そして、第二甲板5Bには、外舷5eに沿ってブルワーク10Bが取り付けられている。第二甲板5Bには、例えば、練習生の集合場所やヘリポート等として利用可能な広い平坦なスペースが確保されている。
【0016】
図2に示すように、船舶1は、船体2に取り付けられる艤装品として、ピラー部15と、通風ピラー部16と、連通口部17と、換気駆動部18と、を備えている。なお、ピラー部15、通風ピラー部16は、艤装品の一部では無く船体2の一部であってもよい。
【0017】
ピラー部15及び通風ピラー部16は、第一甲板5Aと第二甲板5Bとを上下に接続することで第二甲板5Bを下方から支持している。ピラー部15及び通風ピラー部16は、第二区画9にそれぞれ設けられている。
【0018】
(ピラー部)
ピラー部15は、第二甲板5Bを下方から支持する強度部材であり、第一甲板5Aと第二甲板5Bとを接続している。ピラー部15は、例えば、断面H形、L形、円形、多角形等の柱状や、断面円形、断面多角形等の中空筒状に形成することができる。ピラー部15の上端は、第二甲板5Bの下面に溶接部(図示せず)を介して固定され、ピラー部15の下端は、第一甲板5Aの上面に溶接部(図示せず)を介して固定されている。ピラー部15は、少なくとも第二区画9の外舷5eに沿って間隔をあけて複数並んでいる。
【0019】
本実施形態のピラー部15は、第一甲板5A及び第二甲板5Bを貫通していない。つまり、ピラー部15は、第一甲板5Aによって第一区画6と隔てられている。本実施形態では、後述する換気駆動部18のダクト19が設けられている右舷領域22にも上記外舷5eに沿って設けられたピラー部15と同様の構造を有した他のピラー部15aが設けられている。他のピラー部15aと、後述する左舷領域21に設けられた他の通風ピラー部16aとは、左右対称に配置されている。ここで、右舷領域22とは、船体2の船幅方向Dwの中央(
図2中、一点鎖線で示す)よりも右舷側3Bに近い側の領域である。また、左舷領域21は、船体2の船幅方向Dwの中央よりも左舷3Aに近い側の領域である。本実施形態の第二区画9は、船首2aに近い側を側壁35により区画しているため、第二区画9の外舷5eは、第二区画9の接する左右舷側3A,3B及び船尾2bのみとなっている。船幅方向Dwとは、左右舷側3A,3Bを結ぶ方向であり、船首2a及び船尾2bとを結ぶ船首尾方向FA及び、船体2の上下方向の両方と垂直な方向である。
【0020】
(通風ピラー部)
図4は、本開示の実施形態に係る通風ピラー部の軸線に沿う断面図である。
通風ピラー部16は、ピラー部15と同様に、第二甲板5Bを下方から支持する強度部材である。通風ピラー部16は、上下にわたって延びる通風路25を内部に有した筒状をなしている。本実施形態の通風路25は、通風ピラー部16の長手方向の全域で一定の流路断面積を有した筒状をなしている。なお、通風ピラー部16が円筒状をなし、通風路25が断面円形をなす場合を例示したが、この形状に限られるものではない。例えば、通風ピラー部16が断面多角形の筒状をなし、通風路25が断面多角形をなしていてもよい。
【0021】
通風ピラー部16の通風路25の下端は、第一区画6に連通されている。具体的には、通風ピラー部16のすぐ下の第一甲板5Aに貫通孔26が形成され、この貫通孔26を介して第一区画6と通風路25とが連通されている。本実施形態の貫通孔26の開口面積は、通風路25の下端の流路断面積と同等の大きさとされている。なお、通風路25の流路断面積が一定の場合を例示したが、通風路25の流路断面積は、一定に限られない。
【0022】
通風ピラー部16の下端は、貫通孔26周囲の第一甲板5Aの上面に、溶接部(図示せず)を介して固定されている。通風ピラー部16の上端は、第二甲板5Bの下面に、溶接部(図示せず)を介して固定されている。本実施形態の通風ピラー部16は、その上端近傍に、通風路25の上端部と連通口部17とを連通させるための通風孔27を有している。なお、通風ピラー部16の上端の周囲にガーダー等の第二甲板5Bの強度部材が配置されている場合には、通風ピラー部16の上端を第二甲板5Bと強度部材との両方に固定してもよい。
【0023】
通風ピラー部16は、ステンレス鋼により形成されている。通風ピラー部16に用いるステンレス鋼は、鉄に10.5%以上のクロムを含有するものであれば良い。ステンレス鋼としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、二相(オーステナイト・フェライト)系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼、を例示できる。
【0024】
(連通口部)
図5は、
図2における通風ピラー部近傍の拡大図である。
連通口部17は、通風路25の上端部と第二区画9とを連通可能に構成されている。連通口部17は、第二区画9の天井に設けられている。
図4に示すように、本実施形態の連通口部17は、第二甲板5Bの下面に固定されている。なお、連通口部17は、第二甲板5Bから僅かに離間していてもよい。
【0025】
連通口部17は、連通口部本体23と、蓋部24と、を備えている。本実施形態では、一つの通風ピラー部16に対して、一つの連通口部17が設けられている。
図4、
図5に示すように、連通口部本体23は、下方に向かって開口する開口部28を有している。本実施形態の連通口部本体23は、平面視矩形の箱状に形成され、その下面に開口部28が形成されている。この連通口部本体23の内部には、上述した通風ピラー部16の上端が配置され、通風ピラー部16の周方向で通風孔27の配置されている側に開口部28が形成されている。連通口部本体23の開口部28は、当該連通口部本体23の内部に配置された通風ピラー部16よりも第一甲板5Aの外舷5eから離れた位置に配置されるとともに、通風ピラー部16の通風孔27の近傍に配置されるのが好ましい。このような配置にすることで、開口部28から海水が浸入することを抑制できるとともに、通風孔27から開口部28までの流路抵抗を低減できる。
【0026】
本実施形態では、平面視における開口部28と通風ピラー部16との距離が、通風ピラー部16の外径よりも短い場合を例示している。平面視における開口部28と通風ピラー部16との距離は、短いほど流路抵抗を低減できる点で有利となる。また、本実施形態では、連通口部本体23の上下方向の高さ寸法が、連通口部本体23の平面視矩形の一辺の長さよりも短い。このように連通口部本体23の上下方向の高さ寸法が連通口部本体23の平面視矩形の一辺の長さよりも短いことで、第一甲板5Aから連通口部本体23の蓋部24までの距離を稼ぐことができる。さらに、開口部28の開口面積は、通風路25の流路断面積、及び、通風孔27の開口面積よりも大きい。これにより、開口部28がボトルネックとなり気体の流路抵抗が増加することを抑制している。
【0027】
図6は、本開示の実施形態における連通口部単体の側面図である。
蓋部24は、開口部28を開閉可能に形成されている。
図6に示すように、本実施形態の蓋部24は、連通口部本体23に支持されている。蓋部24は、通常時は開放されており、例えば、火災など非常時に作業者の操作により閉塞可能とされている。開口部28の周囲にはパッキン29が取り付けられており、蓋部24を閉じることで開口部28の周囲と蓋部24とにパッキン29が挟まれ、これにより開口部28が密閉される。なお、パッキン29の配置は、開口部28の周囲に限られず、例えば、蓋部24に設けるようにしてもよい。
【0028】
本実施形態では、開口部28の周囲に間隔をあけて複数のボルト30が設けられる一方で、蓋部24にボルト30を挿通可能な孔31が形成されている。複数のボルト30は、蓋部24の開口部28にそれぞれ挿通されている。ボルト30の下部には蝶ナット32が取り付けられており、これにより蓋部24が開口部28から離間して対向した姿勢で支持されている。例えば、非常時に作業者が複数の蝶ナット32をねじ込むことで、蓋部24が上方に変位して開口部28が閉塞される。なお、蓋部24の開閉構造は、
図6に示す構造に限られず、例えば、ヒンジを介して蓋部24を開閉可能に支持するようにしてもよい。
【0029】
(換気駆動部)
図7は、本開示の実施形態における船舶の第一区画及び第二区画近傍の側面図である。
図2、
図7に示すように、換気駆動部18は、ダクト19と、ファン20と、を有している。換気駆動部18は、船体2の外部と第一区画6とを連通可能とされている。本実施形態の換気駆動部18は、船体2の外部として暴露甲板上の区画である第二区画9と、第一区画6とを連通可能にしている。
【0030】
ダクト19は、船体2の船幅方向Dwの中央よりも左方の左舷領域21と、船幅方向Dwの中央よりも右方の右舷領域22との何れか一方で第一区画6に連通されている。本実施形態のダクト19は、船体2の船幅方向Dw中央よりも左方の左舷領域21に連通されている場合を例示している。ダクト19は、ダクト用開口部36を介して第二区画9に連通されている。本実施形態のダクト用開口部36は、第二区画9を区画する船首2aに近い側の側壁35に形成されている。ダクト用開口部36には、ダクト用開口部36を開閉するためのダクト開閉部37が設けられている。
【0031】
ダクト開閉部37は、上述した蓋部24による開閉構造と同様に、通常時はダクト用開口部36を開放状態にしており、例えば、火災など非常時に作業者の操作により密閉可能とされている。ダクト開閉部37は、開閉可能なダクト蓋部38を備えている。本実施形態のダクト蓋部38は、ダクト用開口部36の上方に設けられたヒンジ(図示せず)により揺動可能とされている。ダクト蓋部38は、例えば、通常時はステー(図示せず)等によりダクト用開口部36から離間した状態で支持され、非常時に作業者がステー(図示せず)による支持を解除することで自重により揺動してダクト用開口部36を閉塞する。なお、ダクト蓋部38は、揺動により開閉するものに限られない。
【0032】
ファン20は、ダクト19に設けられている。ファン20は、ダクト19内の気体を送風可能とされている。より具体的には、ファン20は、第一区画6の通気、換気を行うための送風を行う。本実施形態のファン20は、第一区画6内の気体を排気する排気ファンである場合を例示している。本実施形態のファン20は、第一区画6内に配置されたダクト19の下開口部39近傍に配置されている。なお、ファン20が排気ファンである場合を例示したが、第一区画6内に外気を取り入れる給気ファンであってもよい。また、ファン20の配置は、ダクト19を通じて第一区画6の通気、換気を可能な配置であればよく、上記の下開口部39近傍に配置される場合に限られない。
【0033】
(通風ピラー部の配置)
上述したように、換気駆動部18のダクト19は、左舷領域21と右舷領域22との何れか一方で第一区画6に連通されている。これに対し、通風ピラー部16は、左舷領域21と右舷領域22との何れか他方と、船幅方向Dwの中央と、にそれぞれ設けられている。これら複数の通風ピラー部16は、何れも第二区画9の外舷5eから離間した位置に配置されている。
【0034】
図2に示すように、本実施形態の船舶1では、換気駆動部18のダクト19が右舷領域22で第一区画6に連通されているため、右舷領域22には通風ピラー部16が配置されず、左舷領域21に一つの通風ピラー部16(以下、単に他の通風ピラー部16aと称する)が配置され、船幅方向Dwの中央に複数(例えば、3つ)の通風ピラー部16(以下、単に中央通風ピラー部16bと称する)が船首尾方向FAに間隔をあけて並んで配置されている。
図2、
図7に示すように、本実施形態では、船幅方向Dwの中央に配置された複数の中央通風ピラー部16bの間隔が不等間隔となっている。具体的には、これら複数の中央通風ピラー部16bの間隔は、船首2aから船尾2bに向かうにつれて次第に狭くなっている場合を例示している。
【0035】
なお、本実施形態の通風ピラー部16の配置や個数は、一例であって上記配置や個数に限られるものではない。例えば、左舷領域21と右舷領域22との何れか他方に二つ以上の他の通風ピラー部16aを設けたり、船幅方向Dwの中央に一つだけ中央通風ピラー部16bを設けたりしてもよい。また、船幅方向Dwの中央に配置された複数の中央通風ピラー部16bは、等間隔に配置してもよい。さらに、ダクト19の下開口部39を右舷領域22に配置する場合について説明したが、ダクト19の下開口部39を左舷領域21に配置してもよく、この場合、他の通風ピラー部16aは、右舷領域22に配置すればよい。
【0036】
(作用効果)
上記実施形態の船舶1は、下方に第一区画6を形成する第一甲板5Aと、第一甲板5Aの上方に設けられて第一甲板5Aと共に第二区画9を形成する第二甲板5Bと、を備えている。上記実施形態の船舶1は、更に、第一甲板5Aと第二甲板5Bとを上下に接続することで第二甲板5Bを下方から支持するとともに、上下にわたって延びる通風路25を内部に有した筒状をなし通風路25の下端が第一区画6に連通された通風ピラー部16と、第二区画9の天井に設けられて、通風路25の上端と第二区画9とを連通させる連通口部17と、を備えている。
これにより、第一区画6の通気及び換気するための通風筒を個別に設ける必要が無いため、第一甲板5A上における利用可能なスペースを拡大できると共に、ブルワークの近傍で行う作業を効率よく行うことが可能となる。また、通風路25の上端と第二区画9とを連通させる連通口部17を天井に設けているため、第二甲板5B上のスペースへの影響を抑制できる。さらに、連通口部17を天井に設けていることで、連通口部17が第二区画9で作業を行う作業者の邪魔になることを抑制して作業者の作業性を向上することができる。
【0037】
上記実施形態では、更に、連通口部17は、下方に向かって開口する開口部28を有した連通口部本体23と、開口部28を開閉可能な蓋部24と、を備えている。
このように開口部28が下方に向かって開口することで、開口部28からの海水の浸入を低減できる。さらに、連通口部17の蓋部24が第二区画9の天井に配置されるため、蓋部24が第二区画9における作業を妨げることを抑制できる。
【0038】
上記実施形態では、第一甲板5Aが暴露甲板であり、通風ピラー部16が、外舷5eから離間して設けられている。
これにより、通風ピラー部16が船体2の浮かぶ周囲の海水に接触する機会を低減できる。したがって、通風ピラー部16の腐食や、通風ピラー部16の通風路25を介して海水が第一区画6に侵入することを抑制できる。
【0039】
上記実施形態では、更に、第一甲板5Aと第二甲板5Bとを上下に接続することで第二甲板5Bを下方から支持する複数のピラー部15を備え、これら複数のピラー部15が、外舷5eに沿って並んで設けられている。
これにより、通風路25を有さないピラー部15によって外舷5eに沿う位置の第二甲板5Bを下方から支持することができる。したがって、第一区画6への海水の侵入を抑制しつつ、外舷5eに沿って第二甲板5Bを下方から支持することが可能となる。
【0040】
上記実施形態では、船体2外部であり暴露甲板上の第二区画9と船内区画である第一区画6とを連通可能なダクト19と、ダクト19に設けられて送風可能なファン20と、を有した換気駆動部18を備えている。そして、換気駆動部18のダクト19が、右舷領域22で第一区画6に連通され、通風ピラー部16が、左舷領域21と、船幅方向Dwの中央とにだけ設けられている。
つまり、他の通風ピラー部16aが、ダクト19と第一区画6との連通される同じ右舷領域22に設けられていない。そのため、第一区画6が通風路25と連通される箇所と、第一区画6がダクト19と連通される箇所とを離間させることができるため、第一区画6内でショートパスが生じることを抑制できる。したがって、第一区画6内の通気及び換気を効果的に行うことができる。
【0041】
さらに、上記実施形態のダクト19は、第一区画6と第二区画9とを連通可能に形成されている。第二区画9は、第一甲板5Aと第二甲板5Bとにより挟まれて、船幅方向Dw及び船首尾方向FAにのみ外部に開放された暴露区画であるため、例えば、上方に第二甲板5Bの配置されていない暴露甲板(図示せず)上の空間等と、第一区画6とをダクト19により連通させる場合と比較して、ダクト19を介して第一区画6に海水や雨水が浸入することを抑制できる。
【0042】
また、上記実施形態の通風ピラー部16は、ステンレス鋼からなる。
したがって、海水等の接触による腐食を低減することができるため、メンテナンス頻度を低減して作業者の負担を軽減することができる。
【0043】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、第一甲板5Aが暴露甲板である場合について説明したが、第一甲板5Aは、暴露甲板に限られない。例えば、第一甲板5Aと第二甲板5Bとによって区画された第二区画9は、船体2の外部と連通されている区画であればよい。例えば、第二区画9は、扉等により、通常時は開放されて非常時などに一時的に船体2の外部から隔てることが可能な区画であってもよい。
【0044】
上記実施形態では、通風ピラー部16とピラー部15との両方を備える場合について説明したが、通風ピラー部16のみを備えるようにしてもよい。
【0045】
上記実施形態では、通風ピラー部16が、左舷領域21と右舷領域22との何れか他方と、船幅方向Dwの中央とにだけ設けられる場合について説明した。しかし、通風ピラー部16は、例えば、左舷領域21と右舷領域22との何れか他方にだけ設けたり、船幅方向Dwの中央にだけ設けたりしてもよい。
【0046】
上記実施形態では、船尾2bに近い側の係船甲板である第一甲板5Aと、その上方の第二甲板5Bとにより区画される第二区画9を一例にして説明した。しかし、第一区画及び第二区画の配置は、上記配置に限られるものでは無い。第一区画及び第二区画の配置は、例えば、船首2aに近い側の係船甲板、暴露甲板等を第一甲板とし、その上方の甲板を第二甲板とする等、上記実施形態よりも船首2aに近い側であってもよい。
【0047】
上記実施形態では、複数の中央通風ピラー部16bが船幅方向Dw中央に配置されている場合を説明したが、中央通風ピラー部16bは、船幅方向Dw中央から僅かに外れた位置に配置されていてもよい。
【0048】
<付記>
実施形態に記載の船舶は、例えば以下のように把握される。
【0049】
(1)第1の態様によれば船舶は、船体2と、前記船体2に設けられて、下方に第一区画6を形成する第一甲板5Aと、前記船体2における前記第一甲板5Aの上方に設けられて前記第一甲板5Aと共に第二区画9を形成する第二甲板5Bと、前記第一甲板5Aと前記第二甲板5Bとを上下に接続することで前記第二甲板5Bを下方から支持するとともに、上下にわたって延びる通風路25を内部に有した筒状をなし前記通風路25の下端が前記第一区画6に連通された通風ピラー部16,16a,16bと、前記第二区画9の天井に設けられて、前記通風路25の上端と前記第二区画9とを連通させる連通口部17と、を備える。
第一甲板の例としては、係船甲板、暴露甲板が挙げられる。第二甲板の例としては、上甲板が挙げられる。
【0050】
これにより第一甲板5A上における利用可能なスペースを拡大できる。さらに、連通口部17が第二区画9で作業を行う作業者の邪魔になることを抑制して作業者の作業性を向上することができる。
【0051】
(2)第2の態様によれば船舶は、(1)の船舶であって、前記連通口部17は、下方に向かって開口する開口部28を有した連通口部本体23と、前記開口部28を開閉可能な蓋部24と、を備える。
これにより、開口部28が下方に向かって開口するため、開口部28からの海水の浸入を低減できる。さらに、蓋部24が第二区画9の天井に配置されるため、蓋部24によって第二区画9における作業が妨げられることを抑制できる。
【0052】
(3)第3の態様によれば船舶は、(1)又は(2)の船舶であって、前記第一甲板5Aは、暴露甲板であり、前記通風ピラー部16,16a,16bは、前記船体2の外舷5eから離間して設けられている。
これにより、海水に接触する機会を低減できるため、通風ピラー部16の腐食を抑制できる。さらに、通風ピラー部16,16a,16bの通風路25を介して海水が第一区画6に侵入することを抑制できる。
【0053】
(4)第4の態様によれば船舶は、(1)から(3)の何れか一つの船舶であって、前記外舷5eに沿って並んで設けられ、前記第一甲板5Aと前記第二甲板5Bとを上下に接続することで前記第二甲板5Bを下方から支持する複数のピラー部15を更に備える。
これにより、第一区画6への海水の侵入を抑制しつつ、外舷5eに沿って第二甲板5Bを下方から支持することが可能となる。
【0054】
(5)第5の態様によれば船舶は、(1)から(4)の何れか一つの船舶であって、前記船体2の外部と前記第一区画6とを連通可能なダクト19と、前記ダクト19に設けられて送風可能なファン20と、を有した換気駆動部18を備え、前記換気駆動部18の前記ダクト19は、前記船体2の船幅方向Dwの中央よりも左方の左舷領域21と、前記船幅方向Dwの中央よりも右方の右舷領域22との何れか一方で前記第一区画6に連通され、前記通風ピラー部16,16a,16bは、前記左舷領域21と前記右舷領域22との何れか他方と、前記船幅方向Dwの中央との少なくとも一方にだけ設けられている。
これにより、第一区画6が通風ピラー部16の通風路25と連通される箇所と、第一区画6がダクト19と連通される箇所とを離間させることができるため、第一区画6内でショートパスが生じることを抑制できる。したがって、第一区画6内の通気及び換気を効果的に行うことができる。
【0055】
(6)第6の態様によれば船舶は、(5)の船舶であって、前記ダクト19は、前記第一区画6と前記第二区画9とを連通可能に形成されている。
これにより、第二区画9とダクト19内とが連通される箇所の上方に第二甲板5Bが配置されているため、ダクト19を介して第一区画6に海水や雨水が浸入することを抑制できる。
【0056】
(7)第7の態様によれば船舶は、(1)から(6)の何れか一つの船舶であって、前記通風ピラー部16,16a,16bは、ステンレス鋼からなる。
これにより、メンテナンス頻度を低減して作業者の負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…船舶 2…船体 3A,3B…舷側 4…船底 5…甲板 5A…第一甲板 5B…第二甲板 5e…外舷 6…第一区画 7…甲板機械 8…舵板 9…第二区画 10A,10B…ブルワーク 15…ピラー部 15a…他のピラー部 16…通風ピラー部 16a…他の通風ピラー部 16b…中央通風ピラー部 17…連通口部 18…換気駆動部 19…ダクト 20…ファン 21…左舷領域 22…右舷領域 23…連通口部本体 24…蓋部 25…通風路 26…貫通孔 27…通風孔 28…開口部 29…パッキン 30…ボルト 31…孔 32…蝶ナット 35…側壁 36…ダクト用開口部 37…ダクト開閉部 38…ダクト蓋部 39…下開口部 Dw…船幅方向 FA…船首尾方向