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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104418
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】冷却構造体、及びバッテリーケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6554 20140101AFI20240729BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240729BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240729BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240729BHJP
【FI】
H01M10/6554
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008606
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松井 翔
(72)【発明者】
【氏名】富士本 博紀
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031KK01
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】製造及び解体が容易であり、かつ、バッテリー収納用のトレイ又はバッテリーとの密着性が良好な冷却構造体、及びこれを用いたバッテリーケースを提供する。
【解決手段】
本発明の一態様に係る冷却構造体は、溝部、及び、溝部の周囲に設けられた堤部を有する溝付き金属板と、溝付き金属板の溝部を覆う位置に重ねられた平板であって、平坦な冷却面を構成する平板状金属板と、平板状金属板と堤部との互いに対向する面同士を接合して、冷却液が流通可能な流路を形成する熱可塑性樹脂と、を備える。好ましくは、溝付き金属板及び平板状金属板の一方又は両方が、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム層を、少なくとも流路を形成する面に有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝部、及び、前記溝部の周囲に設けられた堤部を有する溝付き金属板と、
前記溝付き金属板の前記溝部を覆う位置に重ねられた平板であって、平坦な冷却面を構成する平板状金属板と、
前記平板状金属板と前記堤部との互いに対向する面同士を接合して、冷却液が流通可能な流路を形成する熱可塑性樹脂と、
を備える冷却構造体。
【請求項2】
前記平板状金属板および前記溝付き金属板は鋼板である
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項3】
前記平板状金属板が、前記熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム層を、少なくとも前記流路を形成する面に有するラミネート金属板である
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項4】
前記溝付き金属板が、前記熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム層を、少なくとも前記流路を形成する面に有するラミネート金属板である
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項5】
前記溝付き金属板が、前記樹脂フィルム層を両面に有する
ことを特徴とする請求項4に記載の冷却構造体。
【請求項6】
前記平板状金属板及び前記溝付き金属板の両方が、前記熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム層を、少なくとも前記流路を形成する面に有するラミネート金属板であり、
前記流路が、前記樹脂フィルム層によって覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項7】
前記溝付き金属板が、前記樹脂フィルム層を両面に有する
ことを特徴とする請求項6に記載の冷却構造体。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項9】
前記冷却構造体が、前記平板状金属板と前記溝付き金属板の前記堤部との互いに対向する面同士を接合する機械的接合構造をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項10】
前記機械的接合構造が、前記平板状金属板及び前記溝付き金属板を貫通しないメカニカルクリンチである
ことを特徴とする請求項9に記載の冷却構造体。
【請求項11】
前記メカニカルクリンチの間隔が、前記溝付き金属板の前記溝部に沿って150mm以下である
ことを特徴とする請求項10に記載の冷却構造体。
【請求項12】
前記溝付き金属板の端部の少なくとも一部は、前記平板状金属板を挟み込むように折り返されたヘミング構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項13】
前記平板状金属板の端部の少なくとも一部は、前記溝付き金属板を挟み込むように折り返されたヘミング構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項14】
前記溝付き金属板の端部、及び前記平板状金属板の端部の少なくとも一部は、前記溝付き金属板及び前記平板状金属板が重ねられた箇所において、両者が一体的に折り返されたヘミング構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項15】
前記溝付き金属板の前記端部、及び前記平板状金属板の前記端部の少なくとも前記一部が、前記溝付き金属板の側に折り返されている
ことを特徴とする請求項14に記載の冷却構造体。
【請求項16】
前記溝付き金属板の板厚が0.2~2.0mmである
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項17】
前記溝付き金属板の前記堤部及び前記溝部の断面が略円弧形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項18】
バッテリーを収納するトレイと、
前記トレイに接合された、請求項1~17のいずれか一項に記載の冷却構造体と、
を備えるバッテリーケース。
【請求項19】
前記冷却構造体が、前記トレイの内部に配されている
ことを特徴とする請求項18に記載のバッテリーケース。
【請求項20】
前記冷却構造体が、前記トレイの外部に配され、
前記トレイの底面と、前記平板状金属板とが、直接または熱伝導性物質を介して接合されている
ことを特徴とする請求項18に記載のバッテリーケース。
【請求項21】
前記バッテリーが、電気自動車用バッテリーである
ことを特徴とする請求項20に記載のバッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却構造体、及びバッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素排出量の削減のために、自動車のEV(Electric Vehicle)化が進んでいる。EVのバッテリーボックスでは、温度上昇によるバッテリーの劣化を防ぐために、冷却構造を設ける必要がある。これまで冷却構造は空冷式が主流であったが、近年では、バッテリーの大容量化に伴い、冷却能が高い水冷式が採用される例が増えてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、バッテリーの冷却構造体として、複数のバッテリーセルを収容する筐体内に、バッテリーモジュールの温度調節装置を備える構成が開示されている。この冷却構造体は、基体部と、板状部から突出しバッテリーセルの底面に面接触する複数の突出部を備えた金属製支持部材と、基体部と金属製支持部材との間に形成された冷却液(熱媒体)の流路と、を有している。ここで、基体部、及び金属製支持部材は、アルミニウム合金により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-123467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の構成においては、冷却構造体を構成する基体部と金属製支持部材とは、摩擦攪拌によって一体的に接合されている。特許文献1の記載の構成において、冷却媒体を流通させる流路を構成する部材に生じる変形や、これらの分解のしやすさは考慮されておらず、また、これらの事項を改善するための構成も開示されていない。
【0006】
冷却構造体を構成する部材同士を、溶接、及び摩擦攪拌接合等によって接合した場合、冷却構造体に変形が生じることがある。その結果、冷却構造体と、バッテリー収納用のトレイ又はバッテリーとの密着性が損なわれ、冷却液による冷却効率が低下してしまう可能性がある。
【0007】
さらに、溶接及び摩擦攪拌接合等の接合方法によって得られた接合部は、分解が容易ではない。このため、部材同士を溶接及び摩擦攪拌接合等によって接合した後は、部材同士を切り離して冷却構造体を解体するのが容易ではない。
【0008】
以上の事情に鑑みて、本発明は、製造及び解体が容易であり、かつ、バッテリー収納用のトレイ又はバッテリーとの密着性が良好な冷却構造体、及びこれを用いたバッテリーケースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0010】
(1)本発明の一態様に係る冷却構造体は、溝部、及び、前記溝部の周囲に設けられた堤部を有する溝付き金属板と、前記溝付き金属板の前記溝部を覆う位置に重ねられた平板であって、平坦な冷却面を構成する平板状金属板と、前記平板状金属板と前記堤部との互いに対向する面同士を接合して、冷却液が流通可能な流路を形成する熱可塑性樹脂と、を備える。
(2)上記(1)に記載の冷却構造体では、前記平板状金属板および前記溝付き金属板は鋼板であってもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の冷却構造体では、前記平板状金属板が、前記熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム層を、少なくとも前記流路を形成する面に有するラミネート金属板であってもよい。
(4)上記(1)~(3)の何れか一項に記載の冷却構造体では、前記溝付き金属板が、前記熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム層を、少なくとも前記流路を形成する面に有するラミネート金属板であってもよい。
(5)上記(4)に記載の冷却構造体では、前記溝付き金属板が、前記樹脂フィルム層を両面に有していてもよい。
(6)上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の冷却構造体では、前記平板状金属板及び前記溝付き金属板の両方が、前記熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム層を、少なくとも前記流路を形成する面に有するラミネート金属板であり、前記流路が、前記樹脂フィルム層によって覆われていてもよい。
(7)上記(6)に記載の冷却構造体では、前記溝付き金属板が、前記樹脂フィルム層を両面に有していてもよい。
(8)上記(1)~(7)のいずれか一項に記載の冷却構造体では、前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂からなっていてもよい。
(9)上記(1)~(8)のいずれか一項に記載の冷却構造体では、前記冷却構造体が、前記平板状金属板と前記溝付き金属板の前記堤部との互いに対向する面同士を接合する機械的接合構造をさらに備えていてもよい。
(10)上記(9)に記載の冷却構造体では、前記機械的接合構造が、前記平板状金属板及び前記溝付き金属板を貫通しないメカニカルクリンチであってもよい。
(11)上記(10)に記載の冷却構造体では、前記メカニカルクリンチの間隔が、前記溝付き金属板の前記溝部に沿って150mm以下であってもよい。
(12)上記(1)~(11)のいずれか一項に記載の冷却構造体では、前記溝付き金属板の端部の少なくとも一部は、前記平板状金属板を挟み込むように折り返されたヘミング構造を有していてもよい。
(13)上記(1)~(12)のいずれか一項に記載の冷却構造体では、前記平板状金属板の端部の少なくとも一部は、前記溝付き金属板を挟み込むように折り返されたヘミング構造を有していてもよい。
(14)上記(1)~(13)のいずれか一項に記載の冷却構造体では、前記溝付き金属板の端部、及び前記平板状金属板の端部の少なくとも一部は、前記溝付き金属板及び前記平板状金属板が重ねられた箇所において、両者が一体的に折り返されたヘミング構造を有していてもよい。
(15)上記(14)に記載の冷却構造体では、前記溝付き金属板の前記端部、及び前記平板状金属板の前記端部の少なくとも前記一部が、前記溝付き金属板の側に折り返されていてもよい。
(16)上記(1)~(15)のいずれか一項に記載の冷却構造体では、前記溝付き金属板の板厚が0.2~2.0mmであってもよい。
(17)上記(1)~(16)のいずれか一項に記載の冷却構造体では、前記溝付き金属板の前記堤部及び前記溝部の断面が略円弧形状であってもよい。
【0011】
(18)本発明の別の態様に係るバッテリーケースは、バッテリーを収納するトレイと、前記トレイに接合された、上記(1)~(17)のいずれか一項に記載の冷却構造体と、を備える。
(19)上記(18)に記載のバッテリーケースでは、前記冷却構造体が、前記トレイの内部に配されていてもよい。
(20)上記(18)又は(19)に記載のバッテリーケースでは、前記冷却構造体が、前記トレイの外部に配され、前記トレイの底面と、前記平板状金属板とが、直接または熱伝導性物質を介して接合されていてもよい。
(21)上記(18)~(20)のいずれか一項に記載のバッテリーケースでは、前記バッテリーが、電気自動車用バッテリーであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造及び解体が容易であり、かつ、バッテリー収納用のトレイ又はバッテリーとの密着性が良好な冷却構造体、及びこれを用いたバッテリーケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】冷却構造体の断面図である。
図2】冷却構造体を、溝付き金属板側から平面視した図である。
図3】溝付き金属板の断面形状が波形である冷却構造体の断面図である。
図4】機械的接合構造として、メカニカルクリンチを備えた冷却構造体の平面図である。
図5】メカニカルクリンチの断面図である。
図6】ヘミング構造を備えた冷却構造体の断面図である。
図7】他のヘミング構造を備えた冷却構造体の断面図である。
図8】さらに他のヘミング構造を備えた冷却構造体の断面図である。
図9】冷却構造体をトレイの外部に配したバッテリーケースを示す断面図である。
図10】トレイの外部に配した冷却構造体とトレイの底面との間に熱伝導性物質を介在させたバッテリーケースを示す断面図である。
図11】冷却構造体をトレイの内部に配したバッテリーケースを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
(1.冷却構造体1)
まず、本発明の第一実施形態に係る冷却構造体1について説明する。本実施形態に係る冷却構造体1は、図1及び図2に示されるように、溝付き金属板11と、平板状金属板12と、熱可塑性樹脂13、14と、を有する。図1は、この冷却構造体1の断面図であり、図2は、この冷却構造体1を溝付き金属板11側から平面視した図である。
【0016】
(1.1 溝付き金属板11)
溝付き金属板11は、金属板をプレス成形することによって得られた部材であり、溝部111、及び、溝部111の周囲に設けられた堤部112を有する。金属板とは、例えばアルミ板、及び鋼板等である。図1において、溝付き金属板11の底部及びその周辺が溝部111であり、溝付き金属板11の頂部及びその周辺が堤部112である。
【0017】
(1.2 平板状金属板12)
平板状金属板12は、平坦な冷却面12fを構成する部材であり、平板形状を有し、溝付き金属板11の溝部111を覆う位置に重ねられている。平板状金属板12の平坦度が高いほど、平板状金属板12と冷却対象物との密着性が向上し、冷却性が高められるので好ましい。
【0018】
(1.3 熱可塑性樹脂13、14)
溝付き金属板11の堤部112と平板状金属板12との互いに対向する面同士は、熱可塑性樹脂13、14によって接合されている。これにより、熱可塑性樹脂13、14は、冷却液が流通可能な流路16を形成する。熱可塑性樹脂13、14は、比較的低い温度で金属板を接合することができる。熱可塑性樹脂13、14を用いた熱融着の際には、金属板の温度は200℃程度まで上昇するが、この温度は溶接、ろう接、及び摩擦攪拌接合等の接合手段よりもはるかに小さい。
【0019】
(作用効果)
第一実施形態に係る冷却構造体1では、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112を、熱可塑性樹脂13、14により熱融着している。熱融着は、従来の溶接やろう付けに対して、接合温度が低い。具体的には、溶接の際には、金属板の温度はその融点を超える範囲まで上昇する。ろう接の際には、金属板の温度はろう材の融点を超える範囲まで上昇する。例えばAlろう材を用いたろう接においては、ろう材の温度は約600℃まで上昇する。これにより、平板状金属板12が変形するおそれがある。しかしながら、熱可塑性樹脂13、14を用いた熱融着の場合、接合部の温度は約200℃までしか加熱されない。これにより、冷却構造体1を構成する平板状金属板12、及び溝付き金属板11の接合により生じる変形が抑制できる。そして、冷却面12fをなす平板状金属板12と、冷却対象物(例えばバッテリー収納用のトレイ22、又はバッテリー21)との密着性が向上し、冷却構造体1の冷却性能が向上する。
【0020】
また、熱可塑性樹脂13、14は、常温で固体状態であるため、冷却構造体1の組立時の取り扱いが容易である。例えば、熱可塑性樹脂13、14のシートを接合対象部に挟むように溝付き金属板11と平板状金属板12とを重ね合わせ、次いで接合対象部を加熱することにより、溝付き金属板11と平板状金属板12とを容易に熱融着することができる。従って、第一実施形態に係る冷却構造体1は、製造が容易である。
【0021】
加えて、熱可塑性樹脂13、14によって接合された平板状金属板12及び溝付き金属板11は、熱可塑性樹脂13、14を加熱して軟化させることにより、容易に分解することができる。また、冷却構造体1はバッテリーケース2とは独立した構造体であるため、例えば冷却構造体1が損傷した場合にバッテリーケース2から容易に分離、交換することができる。即ち、第一実施形態に係る冷却構造体1は、分解も容易である。
【0022】
一般に、接合強度の観点からは、熱可塑性樹脂13、14よりも熱硬化性樹脂のほうが有利であると考えられている。しかし本発明者らの検討結果によれば、熱可塑性樹脂13、14によっても、十分な液密性及び十分に長い使用寿命を有する冷却構造体1を得ることができると考えられる。また、製造及び分解の容易性を向上させる観点からは、熱硬化性樹脂よりも熱可塑性樹脂13、14のほうが有利である。
【0023】
さらに、熱可塑性樹脂13、14によれば、液密性の確保も容易である。例えばスポット溶接、及び機械的接合のような点接合によって平板状金属板12と溝付き金属板11とが接合されている場合、点接合の間の隙間から漏水するおそれがある。そのため、シーラーを用いて漏水を防止する必要が生じうる。一方、熱可塑性樹脂13、14は平板状金属板12と溝付き金属板11とを面接合するので、高い液密性を冷却構造体1にもたらす。さらに、前述の通りろう付けと比べて、低温で接合可能なため、加熱に要するコストを低く抑えることができる。
【0024】
(1.4 樹脂フィルム層13f、14f)
熱可塑性樹脂13、14は、少なくとも、溝付き金属板11の堤部112と平板状金属板12との互いに対向する面同士の間に配されていればよい。これにより、熱可塑性樹脂13、14は、冷却液が流通可能な流路16を形成可能である。一方、熱可塑性樹脂13、及び14が、溝付き金属板11及び/又は平板状金属板12の表面の一部または全部を覆う樹脂フィルム層とされていてもよい。例えば図1に例示される溝付き金属板11は、金属製の溝付き基板11mと、その表面に配された樹脂フィルム層13fとを有するラミネート金属板である。また、平板状金属板12も、平板状基板12mと、その表面に配された樹脂フィルム層14fとを有するラミネート金属板である。この場合、樹脂フィルム層13f、14fは、熱可塑性樹脂13、14からなる。
【0025】
平板状金属板12及び/又は溝付き金属板11は、樹脂フィルム層13f、14fを、少なくとも流路16を形成する面に有することが好ましい。これにより、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112との互いに対向する面同士は、樹脂フィルム層13fと樹脂フィルム層14fとを付き合わせた状態で、熱融着されている。これにより、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112との互いに対向する面同士は、熱可塑性樹脂13、14によって接合されている。
【0026】
平板状金属板12及び溝付き金属板11の少なくとも一方が、熱可塑性樹脂13、14からなる樹脂フィルム層13f、14fを、流路16を形成する面に有する場合、冷却構造体1の製造が一層容易となる。なぜなら、接合用の熱可塑性樹脂13、14を、接合部に配置する工程が不要となるからである。また、平板状金属板12及び溝付き金属板11の両方が、熱可塑性樹脂13、14からなる樹脂フィルム層13f、14fを、流路16を形成する面に有する場合、流路16の内壁が全面にわたって樹脂フィルム層13f、14fに覆われる。この場合、流路16の内壁の耐食性が飛躍的に高められる。
【0027】
平板状金属板12及び/又は溝付き金属板11が、樹脂フィルム層13f、14fを、その両面に有していてもよい。冷却構造体1の外面に設けられた樹脂フィルム層13f、14fは、冷却構造体1の耐食性を高める。例えば、冷却構造体1の用途が電気自動車のバッテリーモジュールの冷却である場合、溝付き金属板11の外面は、腐食環境である車体の底部に配置される。溝付き金属板11が、樹脂フィルム層13f、14fを両面に有する場合、冷却構造体1の寿命が飛躍的に高められる。
【0028】
(1.5 金属板の材質)
溝付き金属板11及び平板状金属板12の材料となる金属板は、特に限定されない。例えば金属板をアルミ板としてもよい。一方、剛性を高める観点から金属板をヤング率の高い鋼板としてもよい。また、プレス成形性を一層高めるために、金属板を引張強さ約270MPaの軟鋼板としてもよい。冷却構造体1の形状、及び用途に応じた種々の形態を、溝付き金属板11及び平板状金属板12を構成する溝付き基板11m、及び平板状基板12mに適用することができる。溝付き基板11m、及び平板状基板12mの具体例として、Ti、Nb、B等を添加したIF鋼、Al-k鋼、Cr添加鋼、ステンレス鋼、ハイテン(高張力)鋼、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼、合金鋼等が挙げられる。
【0029】
金属板が、めっき層を有していてもよい。この場合、熱可塑性樹脂13、14は、めっき層の表面に配されることとなる。めっき金属板の溶接の際には、めっきの剥離が生じうる。また、めっきがZnなどの低沸点金属である場合、めっき金属板の溶接の際にめっきが蒸発して、ブローホールが生じるおそれもある。しかし、本実施形態に係る冷却構造体1においては、部材が熱可塑性樹脂13、14によって接合されているので、めっきの剥離及びブローホールの発生のおそれはない。めっき金属板の例として、Al系めっき鋼板、Zn系めっき鋼板などが挙げられる。
【0030】
溝付き金属板11及び平板状金属板12は、同一の材質とされることが好ましい。例えば、溝付き金属板11及び平板状金属板12の両方を鋼板とすることが好ましい。これにより、異種金属接触腐食を防止することができる。異種金属接触腐食を防止する観点からは、冷却構造体1と組み合わせて用いられるバッテリーケース2も、溝付き金属板11及び平板状金属板12と同一の材質とされることが好ましい。
【0031】
溝付き金属板11及び平板状金属板12を構成する金属板の板厚は、0.2mm以上としてもよい。板厚を0.2mm以上とすることにより、プレス成形性が確保できる。さらに、剛性を確保することができ、組み立て時の取り扱いが容易になる。溝付き金属板11、及び平板状金属板12を構成する金属板の板厚を0.5mm以上、0.8mm以上、又は1.0mm以上としてもよい。溝付き金属板11、及び平板状金属板12を構成する金属板の板厚を大きくするほど、冷却構造体1の剛性が高められる。一方、溝付き金属板11、及び平板状金属板12を構成する金属板の板厚を、2.0mm以下としてもよい。溝付き金属板11の板厚を2.0mm以下とすることにより、冷却構造体1の冷却効率を一層向上させることができる。溝付き金属板11、及び平板状金属板12の板厚を1.6mm以下、1.2mm以下、又は1.0mm以下としてもよい。溝付き金属板11、及び平板状金属板12の板厚が異なっていてもよい。板厚が薄いほど冷却効率が高まるので、平板状金属板12は薄い方が好ましい。なお、溝付き金属板11及び平板状金属板12が樹脂フィルム層13f、14fを有する場合、これらの部材を構成する金属板の板厚には、樹脂フィルム層13f、14fの厚さは含まれない。即ち、上述した金属板の板厚の例は、溝付き基板11m、及び平板状基板12mに適用されるものである。なお、溝付き金属板の板厚は不均一であってもよい。この場合、プレス成形による板厚の変化が生じていない、溝付き金属板の平坦部の板厚が、上に例示された数値範囲内に入っていれば、好ましい効果が得られる。
【0032】
(1.6 溝付き金属板11の形状)
熱可塑性樹脂13、14が、平板状金属板12と堤部112との互いに対向する面同士を接合することで、平板状金属板12及び溝部111は、冷却液が流通可能な流路16を形成する。この流路16は、樹脂フィルム層13f、14fによって覆われていることが好ましい。
【0033】
図2の二点鎖線で示されるように、流路16は、冷却液入口163から導入されたLLC等の任意の冷却液を、冷却液出口164へと流通させることができる。これにより、冷却面12fである平板状金属板12、及び平板状金属板12と接触する任意の物体を冷却することができる。なお、図2では冷却液入口163および冷却液出口164が溝付き金属板11に取り付けられているが、平板状金属板12に取り付けられていてもよい。
【0034】
図2に示される流路16は、例えば、第1方向に沿って延びる複数の部分流路161と、第1方向と直交する第2方向に沿って延び、これらの部分流路161同士を連通する流路連通部162とを有する。第1方向とは、例えば、冷却構造体1の長手方向又は短手方向である。流路16の具体的な構成については、ここに示す構成に限らず、適宜他の構成とすることができる。
【0035】
堤部112及び溝部111の形状は特に限定されない。図1に例示される溝付き金属板11では、堤部112及び溝部111の断面が略矩形状(台形形状)とされている。一方、溝付き金属板11の堤部112及び溝部111の一方又は両方の断面形状が部分円形状、又は略円弧形状であってもよい。図3に示される、堤部112及び溝部111の両方の断面形状が部分円形状又は略円弧形状である溝付き金属板11は、波板構造、又はコルゲート構造と称される。コルゲート構造によれば、冷却構造体1の強度を一層高めることができる。また、コルゲート構造によれば、冷却液が平板状金属板12に接触する面積が増加するため、冷却能力も向上することができる。
【0036】
(1.7 熱可塑性樹脂13、14の構成)
溝付き金属板11、及び平板状金属板12を接合する熱可塑性樹脂13、14は、例えば、ポリオレフィン系樹脂である。より具体的には、熱可塑性樹脂13、14として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂13、14は、これらの共重合体や変性体であってもよい。
【0037】
熱可塑性樹脂13、14は、常温においては固体状態である。熱可塑性樹脂13、14は、その融点以上に加熱することにより溶融する。平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112との互いに対向する面同士を接合する際、熱可塑性樹脂13、14を、例えば200℃程度まで加熱する。これにより、熱可塑性樹脂13、14が溶融し、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112との互いに対向する面同士が、熱可塑性樹脂13、14によって熱融着される。このようにして、熱可塑性樹脂13、14を用いて熱融着する際の加熱温度は、溶接やろう接を行う温度域よりも遙かに低温である。
【0038】
熱可塑性樹脂13、14からなる樹脂フィルム層13f、14fの膜厚も特に限定されない。例えば、樹脂フィルム層13f、14fの膜厚を10μm以上、30μm以上、50μm以上、又は70μm以上としてもよい。樹脂フィルム層13f、14fの膜厚を200μm以下、150μm以下、120μm以下、又は100μm以下としてもよい。
【0039】
(1.8 機械的接合構造50)
図4図5に示されるように、冷却構造体1が、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112との互いに対向する面同士を接合する機械的接合構造50をさらに備えていてもよい。熱可塑性樹脂13、14による熱融着に加えて、機械的接合構造50を更に備えることで、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112とが、より強固に接合される。また、機械的接合構造50によれば、熱可塑性樹脂13、14を用いた熱融着の際に、熱融着の対象となる箇所を固定することが容易となる。
【0040】
機械的接合構造50としては、例えば、ボルト、リベット等を挙げることができる。また、本実施形態では、機械的接合構造50として、図5に示すような平板状金属板12及び溝付き金属板11を貫通しないメカニカルクリンチ51を用いるのが一層好ましい。メカニカルクリンチ51を形成するには、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112とを重ね合わせた状態で、平板状金属板12及び溝付き金属板11の一方の側にポンチを配し、他方の側にダイを配する。そして、プレス機で、ポンチとダイとで、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112を挟み込み、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112を塑性変形させることで、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112を機械的に接合する。なお、平板状金属板12の平坦度を確保する観点から、塑性変形によって形成されるメカニカルクリンチ51の突出部は、溝付き金属板11に設けることが好ましい。
【0041】
図4に示すように、メカニカルクリンチ51は、平板状金属板12と溝付き金属板11において、溝部111が延びる方向に間隔をあけて、複数個所に設けるのが好ましい。メカニカルクリンチ51の間隔Sは、溝付き金属板11の溝部111に沿って、例えば150mm以下とするのが好ましい。これにより、接合強度が一層高められる。
【0042】
機械的接合構造50として、メカニカルクリンチ51を用いる場合、ボルト、リベット等といった、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112を接合するための別部材が不要となる。これにより、部品点数の減少によるコスト低減、軽量化、及び作業工数の低減が可能となる。また、メカニカルクリンチ51は、平板状金属板12及び溝付き金属板11を貫通する孔を形成しないため、孔を起点とした、液漏れや亀裂の発生が抑えられる。また、メカニカルクリンチ51を複数個所に設ける場合、プレス機に複数のポンチを備えることで、複数個所のメカニカルクリンチ51を1回のプレス加工で同時に形成することができる。これにより、作業工数の大幅な低減を図ることができる。
【0043】
(1.9 ヘミング構造70A~70C)
また、図6に示すように、平板状金属板12の端部12sの少なくとも一部は、溝付き金属板11を挟み込むように折り返されたヘミング構造70Aを有していてもよい。このヘミング構造70Aは、溝付き金属板11よりも外方に延出させた平板状金属板12の端部12sを、溝付き金属板11を挟み込むように折り返すことで得られる。ヘミング構造70Aにおいては、平板状金属板12と、折り返した端部12sとで、溝付き金属板11の周縁部を挟み込む。冷却構造体1が、熱可塑性樹脂13、14による熱融着に加えて、ヘミング構造70Aを更に有することで、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112とが、より強固に接合される。また、ヘミング構造70Aは、冷却水が冷却構造体1の外部に漏出することを防止する働きも有する。
【0044】
ヘミング構造70Aは、平板状金属板12の外周縁部(端部12s)の全周にわたって形成してもよいが、平板状金属板12の外周縁部(端部12s)の周方向の一部にのみ形成してもよい。さらに、ヘミング構造70Aは、平板状金属板12の外周縁部(端部12s)に沿って適宜の間隔をあけて複数個所に設けるようにしてもよい。
【0045】
また、上記のヘミング構造70Aに代えて、図7に示すように、溝付き金属板11の端部11sの少なくとも一部を、平板状金属板12を挟み込むように折り返すことで、ヘミング構造70Bを形成してもよい。この構成によっても、接合強度の向上効果、及び液密性の向上が得られる。但しこの場合、折り返した溝付き金属板11の端部11sが、平板状金属板12の冷却面12fに重なることになる。このため、冷却面12fと、冷却対象となるバッテリー21やトレイ22との間に、折り返した溝付き金属板11の端部11sが挟み込まれる場合がある。このことは、冷却構造体1における冷却能力の低下に繋がる。このため、ヘミング構造70Bは、冷却対象となるバッテリー21やトレイ22と干渉しない位置に配置するのが好ましい。
【0046】
また、図8に示すように、溝付き金属板11の端部11s、及び平板状金属板12の端部12sの少なくとも一部は、溝付き金属板11及び平板状金属板12が重ねられた箇所において、両者が一体的に折り返されたヘミング構造70Cを形成してもよい。
【0047】
この場合も、溝付き金属板11の端部11s、及び平板状金属板12の端部12sの少なくとも一部は、溝付き金属板11の側に折り返すのが好ましい。これにより、折り返した溝付き金属板11の端部11s、及び平板状金属板12の端部12sが、バッテリー21やトレイ22と干渉することが抑えられる。
【0048】
(2.バッテリーケース2)
次に、本発明の第二実施形態に係るバッテリーケース2について説明する。本実施形態に係るバッテリーケース2は、図9図11に示されるように、バッテリー21を収容するトレイ22と、第一実施形態に係る冷却構造体1とを有する。
【0049】
冷却構造体1は、バッテリーケース2のトレイ22に接合されている。図9及び図10に示されるように、冷却構造体1は、トレイ22の外部に配されていてもよい。この場合、冷却構造体1は、平板状金属板12をトレイ22側に向けて配置される。トレイ22の底面22bと、平板状金属板12は、ボルト等によって、トレイ22の底面22bに接合されている。
【0050】
この場合、図10に示されるように、平板状金属板12とトレイ22とが、熱伝導性物質23を介して接合されていてもよい。何らかの原因(寸法精度の誤差、トレイ22に複雑な凹凸形状が形成されている等)によって、トレイ22と冷却構造体1の平板状金属板12とを隙間なく接合することが難しい場合がある。そのような場合に、熱伝導性物質23を用いることができる。熱伝導性物質23は、一般的に、樹脂に熱伝導性の高い顔料を含めたものである。熱伝導性物質23を異なる物質間に挿入することで、熱交換効率を向上させることができる。本実施形態では、熱伝導性物質23の熱伝導率が3.5W/m以上であることが好ましい。熱伝導性物質23の例として、信越シリコーン社製の「SDP-3540-A」が挙げられる。熱伝導性物質23の厚さは0.1mm~8.0mmであることが好ましく、0.5mm~3.0mmであることがさらに好ましい。一方、トレイの底面と平板状金属板との間に熱伝導性物質が配されていなくてもよい。即ち、トレイの底面と平板状金属板とが直接に接合されていてもよい。
【0051】
また、図11に示されるように、冷却構造体1を、トレイ22の内部に配してもよい。この場合、冷却構造体1は、トレイ22の底面22b上に配置される。冷却構造体1は、平板状金属板12をトレイ22に収容されるバッテリー21に向けるように、配置されてもよい。一方、溝付き金属板11の底部をバッテリー21に向けるように、冷却構造体1を配置してもよい。
【0052】
トレイ22の構成は特に限定されない。例えばトレイ22を略矩形状とし、その底面22bに冷却構造体1を接合する。また、平板状金属板12、及び溝付き金属板11を平板状基板12mとする場合、電触を抑えるため、トレイ22も、平板状基板12mと同材料で形成するのが好ましい。
【0053】
バッテリーケース2のトレイ22に収納されるバッテリー21の種類は特に限定されない。バッテリー21の好適な例は、電気自動車用バッテリー21である。即ち、バッテリーケース2の好適な用途は、電気自動車用バッテリーケースである。特に、溝付き金属板11が鋼板であり、溝付き金属板11の外面に樹脂フィルム層13fが配されている場合に、本実施形態に係るバッテリーケース2を、電気自動車用バッテリーケースとして好適に使用することができる。自動車の車体の底部は、腐食環境であり、また走行中に小石がぶつかる等の理由によって傷がつきやすい。しかし、溝付き金属板11を鋼板とすることにより、その強度を向上させ、かつ溝付き金属板11の表面に樹脂フィルム層13fを配することにより、その耐食性を向上させることができる。
【0054】
(3.冷却構造体1の製造方法)
次に、本発明の第三実施形態に係る冷却構造体1の製造方法について説明する。第三実施形態に係る冷却構造体1の製造方法は、金属板をプレス成形して溝付き金属板11を得る工程S1と、平板状金属板12と溝付き金属板11とを、熱可塑性樹脂13、14により熱融着する工程S2と、を備える。これら工程の詳細について、以下に説明する。この製造方法によれば、第一実施形態に係る冷却構造体1を好適に製造することができる。また、上述した第一実施形態に係る冷却構造体1の諸態様を、第三実施形態に係る冷却構造体1の製造方に適用することもできる。ただし、以下の記載は、第一実施形態に係る冷却構造体1の製造方法を限定するものではない。
【0055】
(S1 プレス成形)
本実施形態にかかる冷却構造体1の製造方法では、まず、金属板をプレス成形する。これにより、溝部111、及び、溝部111の周囲に設けられた堤部112を有する溝付き金属板11を得る。プレス成形に供される金属板は、樹脂フィルム層13fを有したラミネート金属板とすることが好ましい。
【0056】
(S2 熱融着)
次に、平板である平板状金属板12を、溝付き金属板11の溝部111を覆う位置に重ねる。この際に、平板状金属板12と溝付き金属板11の堤部112との間に、熱可塑性樹脂13、14を配置する。そして、熱可塑性樹脂13、14を例えば200℃程度まで加熱し、熱可塑性樹脂13、14を軟化させる。さらに、熱可塑性樹脂13、14の温度を低下させることにより、平板状金属板12と溝付き金属板11とを熱融着させる。これにより、冷却液が流通可能な流路16を有する冷却構造体1を得る。
【0057】
熱可塑性樹脂13、14が、ホットメルト接着剤である場合、平板状金属板12と溝付き金属板11とを重ね合わせる前に、溝付き金属板11の堤部112、又は平板状金属板12における堤部112と接合される箇所に、加熱されて軟化したホットメルト接着剤を塗布する。この場合、平板状金属板12及び溝付き金属板11を加熱することは必須ではない。あらかじめ加熱されたホットメルト接着剤を平板状金属板12及び溝付き金属板11に塗布することにより、熱融着を実施することができる。また、ホットメルト接着剤を塗布した後、冷却により接合前に接着剤が固まってしまった場合でも、溝付き金属板11と平板状金属板12を重ね合わせて接合箇所およびホットメルト接着剤を加熱すれば熱融着を実施することができる。
【0058】
熱可塑性樹脂13、14が、金属板と別体に形成された樹脂シートである場合、平板状金属板12と溝付き金属板11とを重ね合わせる際に、これらの間に樹脂シートを挟み込む。そして、平板状金属板12及び溝付き金属板11を加熱することによって、樹脂シートを溶融させ、熱融着させる。熱可塑性樹脂13、14を、金属板と別体に形成された樹脂シートとした場合、熱可塑性樹脂13、14を配置する工程において高温の物体を扱う必要がないので、製造効率が一層向上する。
【0059】
熱可塑性樹脂13、14が、ラミネート金属板の表面に設けられた樹脂フィルム層13f、14fである場合、平板状金属板12と溝付き金属板11との間に熱可塑性樹脂13、14を配置する工程を省略することができる。ラミネート金属板を他の金属板と重ね合わせ、次いで加熱することにより、両者の熱融着を容易に実施することができる。従って、熱可塑性樹脂13、14を、ラミネート金属板の表面に設けられた樹脂フィルム層13f、14fとすることにより、製造効率が一層向上する。
【0060】
溝付き金属板11の複数の堤部112が同一平面上にある場合、堤部112と平板状金属板12との接合を容易に行うことができる。一方、接合作業の前の段階において、溝付き金属板11に若干の反りがあり、溝付き金属板11の複数の堤部112が同一平面上になくてもよい。この場合、溝付き金属板11の堤部112を平板状金属板12に押し付けることにより、接合不良を回避することができる。この場合、溝付き金属板11の堤部112と平板状金属板12とを熱融着する前に、溝付き金属板11の堤部112と平板状金属板12とを機械的接合構造50によって接合することが好ましい。この場合、機械的接合構造50によって溝付き金属板11の堤部112が平板状金属板12に押し付けられる。そのため、溝付き金属板11の堤部112を平板状金属板12に押し付ける作業が不要となる。さらに、熱融着を一層強固なものとすることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 冷却構造体
2 バッテリーケース
11 溝付き金属板
11m 溝付き基板
11s 端部
12 平板状金属板
12f 冷却面
12m 平板状基板
12s 端部
13、14 熱可塑性樹脂
13f、14f 樹脂フィルム層
16 流路
161 部分流路
162 流路連通部
21 バッテリー
22 トレイ
22b 底面
23 熱伝導性物質
50 機械的接合構造
51 メカニカルクリンチ
70A~70C ヘミング構造
111 溝部
112 堤部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11