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特開2024-104420印刷装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104420
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】印刷装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 19/18 20060101AFI20240729BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B41J19/18 Z
B41J2/01 401
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008608
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】染矢 勝
【テーマコード(参考)】
2C056
2C480
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056EB11
2C056EB29
2C056EC11
2C056FA10
2C056HA36
2C480CA01
2C480CA30
2C480CA31
2C480CB31
2C480CB35
2C480CB45
(57)【要約】
【課題】エンコーダの検知精度の低下に起因した寿命の短縮化を抑制することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置10は、ヘッド20とキャリッジ41とエンコーダ60と測定センサ70と制御装置50とを備え、前記制御装置50は、前記エンコーダ60が出力する信号に基づいて前記キャリッジ41を移動させながら前記ヘッド20からインクを吐出させて、前記被印刷媒体Aに画像を印刷させる印刷動作と、前記エンコーダ60が出力する信号に基づいて前記キャリッジ41を移動させ、前記第2発光素子71により光を前記スケール61の測定位置に照射させると共に、前記測定位置からの反射光又は透過光を前記第2受光素子72により受光させる測定動作と、前記第2受光素子72の受光量に基づいて前記スケール61の寿命を演算する演算動作と、を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを被印刷媒体に吐出するヘッドと、
前記ヘッドを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジの移動方向に沿って延びるスケール、前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第1発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第1発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第1受光素子を有し、前記第1受光素子の受光量に応じた信号を出力するエンコーダと、
前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第2発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第2発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第2受光素子を有する測定センサと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させながら前記ヘッドからインクを吐出させて、前記被印刷媒体に画像を印刷させる印刷動作と、
前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させ、前記第2発光素子により光を前記スケールの測定位置に照射させると共に、前記測定位置からの反射光又は透過光を前記第2受光素子により受光させる測定動作と、
前記第2受光素子の受光量に基づいて前記スケールの寿命を演算する演算動作と、を実行する、
印刷装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記測定動作では、前記スケールにおける複数の測定位置からの反射光又は透過光を前記第2受光素子により受光させ、
前記演算動作では、前記第2受光素子の受光量に基づいて前記寿命を前記複数の測定位置のそれぞれについて演算する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記複数の測定位置についての前記寿命のうち、最短寿命と、前記最短寿命以外の他の寿命とを比較した結果に基づいて、前記複数の測定位置の中の一部の測定位置を前記測定動作の対象から除外する除外動作を実行する、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記演算動作では、
前記複数の測定位置のうちの第1測定位置について前記画像の印刷量に対する前記第2受光素子の受光量の第1変化曲線を演算し、
前記複数の測定位置のうちの第2測定位置について前記画像の印刷量に対する前記第2受光素子の受光量の第2変化曲線を演算し、
前記第1変化曲線における前記第2受光素子の受光量が閾値に達する第1寿命印刷量を演算し、
前記第2変化曲線における前記第2受光素子の受光量が前記閾値に達する第2寿命印刷量を演算し、
前記除外動作では、前記第1寿命印刷量が前記最短寿命を示すとき、
前記第1寿命印刷量に対する前記第2寿命印刷量の割合を演算し、
前記割合が第1所定値以上である場合、前記第2測定位置を前記測定動作の対象から除外する、
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記演算動作では、
前記複数の測定位置のうちの第3測定位置について前記画像の印刷量に対する前記第2受光素子の受光量の第3変化曲線を演算し、
前記複数の測定位置のうちの第4測定位置について前記画像の印刷量に対する前記第2受光素子の受光量の第4変化曲線を演算し、
前記第3変化曲線における前記第2受光素子の受光量が閾値に達する第3寿命印刷量を演算し、
前記第4変化曲線における前記第2受光素子の受光量が前記閾値に達する第4寿命印刷量を演算し、
前記除外動作では、前記第3寿命印刷量が前記第4寿命印刷量よりも少ないとき、
前記第3変化曲線の現印刷量における接線の傾きに対する、前記第4変化曲線の現印刷量における接線の傾きの割合を演算し、
前記傾きの割合が第2所定値以下である場合、前記第4測定位置を前記測定動作の対象から除外する、
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第3寿命印刷量は、前記最短寿命を示す、
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記演算動作では、
前記複数の測定位置のうちの第5測定位置について前記画像の印刷量に対する前記第2受光素子の受光量の第5変化曲線を演算し、
前記複数の測定位置のうちの第6測定位置について前記画像の印刷量に対する前記第2受光素子の受光量の第6変化曲線を演算し、
前記第5変化曲線における前記第2受光素子の受光量が閾値に達する第5寿命印刷量を演算し、
前記第6変化曲線における前記第2受光素子の受光量が前記閾値に達する第6寿命印刷量を演算し、
前記除外動作では、前記第5寿命印刷量が前記第6寿命印刷量よりも少ないとき、
前記印刷量をxとし、前記第2受光素子の受光量をyとし、前記第5変化曲線の式をy=aebxとした場合、前記第5変化曲線の式の係数bを演算し、
前記印刷量をxとし、前記第2受光素子の受光量をyとし、前記第6変化曲線の式をy=aebxとし、前記第6寿命印刷量が前記第5寿命印刷量に一致するように前記第6変化曲線を現印刷量から補正したときの前記第6変化曲線の補正式をy=aebx+cとした場合、前記補正式の補正係数bを演算し、
前記係数bに対する前記補正係数bの係数の割合を演算し、
前記係数の割合が第3所定値以上である場合、前記第6測定位置を前記測定動作の対象から除外する、
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第5寿命印刷量は、前記最短寿命を示す、
請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
情報を出力する出力装置を備え、
前記制御装置は、前記スケールの延命処理を前記出力装置に出力させる出力動作を実行する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項10】
インクを被印刷媒体に吐出するヘッドと、
前記ヘッドを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジの移動方向に沿って延びるスケール、前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第1発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第1発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第1受光素子を有し、前記第1受光素子の受光量に応じた信号を出力するエンコーダと、
前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第2発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第2発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第2受光素子を有する測定センサと、
を備える印刷装置の制御方法であって、
前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させながら前記ヘッドからインクを吐出させて、前記被印刷媒体に画像を印刷させる印刷動作と、
前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させ、前記第2発光素子により光を前記スケールの測定位置に照射させると共に、前記測定位置からの反射光又は透過光を前記第2受光素子により受光させる測定動作と、
前記第2受光素子の受光量に基づいて前記スケールの寿命を演算する演算動作と、を実行させる、
印刷装置の制御方法。
【請求項11】
インクを被印刷媒体に吐出するヘッドと、
前記ヘッドを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジの移動方向に沿って延びるスケール、前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第1発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第1発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第1受光素子を有し、前記第1受光素子の受光量に応じた信号を出力するエンコーダと、
前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第2発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第2発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第2受光素子を有する測定センサと、
を備える印刷装置のコンピュータに、
前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させながら前記ヘッドからインクを吐出させて、前記被印刷媒体に画像を印刷させる印刷動作と、
前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させ、前記第2発光素子により光を前記スケールの測定位置に照射させると共に、前記測定位置からの反射光又は透過光を前記第2受光素子により受光させる測定動作と、
前記第2受光素子の受光量に基づいて前記スケールの寿命を演算する演算動作と、を実行させる、
プログラム。
【請求項12】
インクを被印刷媒体に吐出するヘッドと、
前記ヘッドを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジの移動方向に沿って延びるスケール、前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する受光素子を有し、前記受光素子の受光量に応じた信号を出力するエンコーダと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させながら前記ヘッドからインクを吐出させて、前記被印刷媒体に画像を印刷させる印刷動作と、
前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させ、前記発光素子により光を前記スケールの測定位置に照射させると共に、前記測定位置からの反射光又は透過光を前記受光素子により受光させる測定動作と、
前記受光素子の受光量に基づいて前記スケールの寿命を演算する演算動作と、を実行する、
印刷装置。
【請求項13】
前記制御装置は、
前記測定動作では、前記スケールにおける複数の測定位置からの反射光又は透過光を前記受光素子により受光させ、
前記演算動作では、前記受光素子の受光量に基づいて前記寿命を前記複数の測定位置のそれぞれについて演算する、
請求項12に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記複数の測定位置についての前記寿命のうち、最短寿命と、前記最短寿命以外の他の寿命とを比較した結果に基づいて、前記複数の測定位置の中の一部の測定位置を前記測定動作の対象から除外する除外動作を実行する、
請求項13に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記制御装置は、
前記演算動作では、
前記複数の測定位置のうちの第1測定位置について前記画像の印刷量に対する前記受光素子の受光量の第1変化曲線を演算し、
前記複数の測定位置のうちの第2測定位置について前記画像の印刷量に対する前記受光素子の受光量の第2変化曲線を演算し、
前記第1変化曲線における前記受光素子の受光量が閾値に達する第1寿命印刷量を演算し、
前記第2変化曲線における前記受光素子の受光量が前記閾値に達する第2寿命印刷量を演算し、
前記除外動作では、前記第1寿命印刷量が前記最短寿命を示すとき、
前記第1寿命印刷量に対する前記第2寿命印刷量の割合を演算し、
前記割合が第1所定値以上である場合、前記第2測定位置を前記測定動作の対象から除外する、
請求項14に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記制御装置は、
前記演算動作では、
前記複数の測定位置のうちの第3測定位置について前記画像の印刷量に対する前記受光素子の受光量の第3変化曲線を演算し、
前記複数の測定位置のうちの第4測定位置について前記画像の印刷量に対する前記受光素子の受光量の第4変化曲線を演算し、
前記第3変化曲線における前記受光素子の受光量が閾値に達する第3寿命印刷量を演算し、
前記第4変化曲線における前記受光素子の受光量が前記閾値に達する第4寿命印刷量を演算し、
前記除外動作では、前記第3寿命印刷量が前記第4寿命印刷量よりも少ないとき、
前記第3変化曲線の現印刷量における接線の傾きに対する、前記第4変化曲線の現印刷量における接線の傾きの割合を演算し、
前記傾きの割合が第2所定値以下である場合、前記第4測定位置を前記測定動作の対象から除外する、
請求項14に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記第3寿命印刷量は、前記最短寿命を示す、
請求項16に記載の印刷装置。
【請求項18】
前記制御装置は、
前記演算動作では、
前記複数の測定位置のうちの第5測定位置について前記画像の印刷量に対する前記受光素子の受光量の第5変化曲線を演算し、
前記複数の測定位置のうちの第6測定位置について前記画像の印刷量に対する前記受光素子の受光量の第6変化曲線を演算し、
前記第5変化曲線における前記受光素子の受光量が閾値に達する第5寿命印刷量を演算し、
前記第6変化曲線における前記受光素子の受光量が前記閾値に達する第6寿命印刷量を演算し、
前記除外動作では、前記第5寿命印刷量が前記第6寿命印刷量よりも少ないとき、
前記印刷量をxとし、前記受光素子の受光量をyとし、前記第5変化曲線の式をy=aebxとした場合、前記第5変化曲線の式の係数bを演算し、
前記印刷量をxとし、前記受光素子の受光量をyとし、前記第6変化曲線の式をy=aebxとし、前記第6寿命印刷量が前記第5寿命印刷量に一致するように前記第6変化曲線を現印刷量から補正したときの前記第6変化曲線の補正式をy=aebx+cとした場合、前記補正式の補正係数bを演算し、
前記係数bに対する前記補正係数bの係数の割合を演算し、
前記係数の割合が第3所定値以上である場合、前記第6測定位置を前記測定動作の対象から除外する、
請求項14に記載の印刷装置。
【請求項19】
前記第5寿命印刷量は、前記最短寿命を示す、
請求項18に記載の印刷装置。
【請求項20】
情報を出力する出力装置を備え、
前記制御装置は、前記スケールの延命処理を前記出力装置に出力させる出力動作を実行する、
請求項12に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置として、例えば、下記特許文献1の記録装置が知られている。この記録装置は、シートにインクを吐出する記録ヘッド、及び、記録ヘッドをX方向に移動させるキャリッジを備えており、キャリッジにはエンコーダセンサが搭載されている。記録装置は、このエンコーダセンサからの検知信号に基づいて、キャリッジにより記録ヘッドを移動させながら、インクを記録ヘッドからシートに吐出させることにより、画像をシートに印刷している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-164432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の記録装置では、X方向に延びるエンコーダスケールの透過部及び遮光部がエンコーダセンサにより検知され、この検知結果に基づいてキャリッジの移動動作及びインクの吐出動作が制御されている。しかしながら、記録ヘッドは移動しながらインクを吐出するため、インクのミストが浮遊してエンコーダスケールに付着することがある。このような場合には、エンコーダセンサの検知精度が低下するため、インク滴の着弾位置がずれ、インクにより印刷された画像に白筋などの不具合が発生し、記録装置の寿命が縮まる課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、エンコーダの検知精度の低下に起因した寿命の短縮化を抑制することができる印刷装置、その制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る印刷装置は、インクを被印刷媒体に吐出するヘッドと、前記ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジの移動方向に沿って延びるスケール、前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第1発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第1発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第1受光素子を有し、前記第1受光素子の受光量に応じた信号を出力するエンコーダと、前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第2発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第2発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第2受光素子を有する測定センサと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させながら前記ヘッドからインクを吐出させて、前記被印刷媒体に画像を印刷させる印刷動作と、前記エンコーダが出力する信号に基づいて、前記キャリッジを移動させ、前記第2発光素子により光を前記スケールの測定位置に照射させると共に、前記測定位置からの反射光又は透過光を前記第2受光素子により受光させる測定動作と、前記第2受光素子の受光量に基づいて前記スケールの寿命を演算する演算動作と、を実行する。
【0007】
本開示に係る印刷装置の制御方法は、インクを被印刷媒体に吐出するヘッドと、前記ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジの移動方向に沿って延びるスケール、前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第1発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第1発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第1受光素子を有し、前記第1受光素子の受光量に応じた信号を出力するエンコーダと、前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第2発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第2発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第2受光素子を有する測定センサと、を備える印刷装置の制御方法であって、前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させながら前記ヘッドからインクを吐出させて、前記被印刷媒体に画像を印刷させる印刷動作と、前記エンコーダが出力する信号に基づいて、前記キャリッジを移動させ、前記第2発光素子により光を前記スケールの測定位置に照射させると共に、前記測定位置からの反射光又は透過光を前記第2受光素子により受光させる測定動作と、前記第2受光素子の受光量に基づいて前記スケールの寿命を演算する演算動作と、を実行させる。
【0008】
本開示に係るプログラムは、インクを被印刷媒体に吐出するヘッドと、前記ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジの移動方向に沿って延びるスケール、前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第1発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第1発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第1受光素子を有し、前記第1受光素子の受光量に応じた信号を出力するエンコーダと、前記キャリッジに搭載されて前記スケールに光を照射する第2発光素子、及び、前記キャリッジに搭載されて前記第2発光素子により照射された光のうち前記スケールにて反射又は透過された光を受光する第2受光素子を有する測定センサと、を備える印刷装置のコンピュータに、前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させながら前記ヘッドからインクを吐出させて、前記被印刷媒体に画像を印刷させる印刷動作と、前記エンコーダが出力する信号に基づいて前記キャリッジを移動させ、前記第2発光素子により光を前記スケールの測定位置に照射させると共に、前記測定位置からの反射光又は透過光を前記第2受光素子により受光させる測定動作と、前記第2受光素子の受光量に基づいて前記スケールの寿命を演算する演算動作と、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、エンコーダの検知精度の低下に起因した寿命の短縮化を抑制することができる印刷装置、印刷装置の制御方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態及びその変形例に係る印刷装置の構成を示す模式的平面図である。
図2図2は、印刷装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図3図3は、印刷量に対する受光量の変化曲線を示すグラフである。
図4図4は、第1測定位置の第1変化曲線及び第2測定位置の第2変化曲線を示すグラフである。
図5図5は、実施の形態に係る印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、寿命処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、変形例1に係る印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第3測定位置の第3変化曲線及び第4測定位置の第4変化曲線を示すグラフである。
図9図9は、変形例2に係る印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第5測定位置の第5変化曲線及び第6測定位置の第6変化曲線を示すグラフである。
図11図11は、変形例3に係る印刷装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<印刷装置>
本開示の一実施の形態に係る印刷装置10は、図1に示すように、インクジェットプリンタであって、インクを被印刷媒体Aにヘッド20のノズル21から吐出して、画像を被印刷媒体Aに印刷する装置である。被印刷媒体Aは、例えば、紙及び布等のシートである。
【0012】
印刷装置10は、シリアルヘッド方式であって、ヘッド20、プラテン11、タンク12、筐体13、搬送装置30、移動装置40及び制御装置50を備えている。移動装置40はヘッド20を搭載するキャリッジ41を有している。なお、以下では、キャリッジ41が移動する移動方向を左右方向と称する。キャリッジ41の移動方向に対して交差(例えば、直交)する方向であって、搬送装置30により被印刷媒体Aが搬送される方向を前後方向と称する。また、キャリッジ41の移動方向及び被印刷媒体Aの搬送方向に対して交差(例えば、直交)する方向を上下方向と称する。但し、印刷装置10の配置はこれに限定されない。
【0013】
筐体13は、ヘッド20、プラテン11、タンク12、搬送装置30、移動装置40及び制御装置50を収容している。プラテン11は、ヘッド20の下方に所定距離を隔てて位置している。プラテン11の平坦な上面は、ヘッド20の下面に対向して配置され、被印刷媒体Aを下方から支持する。
【0014】
ヘッド20は、複数のノズル21及び複数の駆動素子22(図2)を有している。ノズル21はヘッド20の下面に開口する。駆動素子22は、圧電素子、発熱素子及び静電式アクチュエータ等であって、ノズル21毎に設けられ、ノズル21からインクを吐出する圧力をヘッド20内のインクに付与する。
【0015】
タンク12は、ヘッド20に供給するインクを貯留する容器である。複数のタンク12は、例えば、互いに種類が異なるインク、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクをそれぞれ貯留している。各タンク12は、可撓性のチューブ14によってヘッド20に接続されている。タンク12からのインクはチューブ14を通じてヘッド20へ送られる。
【0016】
搬送装置30は、例えば搬送ローラ31、及び、搬送モータ32(図2参照)を有している。搬送ローラ31は左右方向に延びる軸を有し、搬送モータ32は搬送ローラ31の軸に接続されている。搬送モータ32が駆動すると、搬送ローラ31はその軸を中心に回転し、プラテン11上において被印刷媒体Aを前後方向へ搬送する。
【0017】
移動装置40は、キャリッジ41、2本のガイドレール42、無端ベルト43、及び、移動モータ44を有している。キャリッジ41は、箱型の筐体13であり、ヘッド20を搭載している。2本のガイドレール42は、直下に配置された状態のプラテン11上を横切るように左右に延び、全てのノズル21を間に挟むようにして前後に離れて配置されて、キャリッジ41を移動可能に支持している。無端ベルト43は、キャリッジ41と接続されると共に、ガイドレール42に設けられたプーリー45を介して移動モータ44の回転軸に接続されている。従って、移動装置40は、移動モータ44が回転駆動すると、無端ベルト43が走行し、キャリッジ41及びキャリッジ41に支持されているヘッド20をガイドレール42に沿って左右方向へ移動する。
【0018】
図2に示すように、印刷装置10は、制御装置50、並びに、この制御装置50に接続された通信インターフェース51、記憶装置52、ヘッド駆動回路53、搬送駆動回路54及び移動駆動回路55をさらに備えている。通信インターフェース51は、印刷装置10以外から独立して存在する外部機器Bに接続する接続装置である。外部機器Bとしては、コンピュータ、通信ネットワーク、記録媒体、ディスプレイ、及び他の印刷装置などが挙げられる。これにより、印刷装置10は、通信インターフェース51を介して外部機器Bから画像データを取得する。この画像データとしては、被印刷媒体Aに印刷される画像を示すラスタデータなどが例示される。
【0019】
記憶装置52は、制御装置50からアクセス可能なメモリであって、例えばRAM、ROM、E2PROM及びNVRAMなどを少なくとも1つを有している。記憶装置52は、制御装置50によるデータ処理に用いられる各種のデータ、及び、各種のデータ処理を行うためのコンピュータプログラムを記憶する。
【0020】
制御装置50は、コンピュータであって、例えば、CPUなどのプロセッサ、ASICなどの集積回路、又は、その両方の回路を含む。制御装置50は、記憶装置52に記憶されたデータを参照しつつコンピュータプログラムを実行することにより、印刷装置10の各部の動作を制御する。なお、制御装置50は、単独の装置により構成されていてもよく、又は、複数の装置が分散配置されていて、それらが協働して印刷装置10の動作を行うよう構成されていてもよい。
【0021】
ヘッド駆動回路53は、ヘッド20の駆動素子22と電気的に接続されている。制御装置50は、駆動素子22を駆動する制御信号を画像データなどに基づいて生成し、ヘッド駆動回路53はこの制御信号に基づいて駆動信号を生成する。そして、駆動素子22は、所定のタイミングで所定の吐出エネルギーをヘッド20内のインクに付与するように、駆動信号に基づいて駆動する。
【0022】
搬送駆動回路54は、搬送装置30の搬送モータ32と電気的に接続されている。制御装置50は、搬送モータ32を駆動する制御信号を画像データなどに基づいて生成し、搬送駆動回路54はこの制御信号に基づいて駆動信号を生成する。そして、搬送モータ32は、プラテン11上の被印刷媒体Aを前後方向へ間欠的又は連続的に搬送すると共に、プラテン11上の所定位置に被印刷媒体Aを停止させるように、駆動信号に基づいて駆動する。
【0023】
移動駆動回路55は、移動装置40の移動モータ44と電気的に接続されている。制御装置50は、移動モータ44を駆動する制御信号を画像データなどに基づいて生成し、移動駆動回路55はこの制御信号に基づいて駆動信号を生成する。そして、移動モータ44は、ヘッド20を支持するキャリッジ41を左右方向へ可変速度で移動させると共に、その可動範囲内の任意の位置にキャリッジ41を停止させるように、駆動信号に基づいて駆動する。
【0024】
さらに、印刷装置10は入力装置15及び出力装置16を備えており、入力装置15及び出力装置16は制御装置50に電気的に接続されている。入力装置15は、情報を制御装置50に入力する装置であって、例えば押しボタン及びポインティングデバイスなどが例示される。出力装置16は、制御装置50による制御に従って情報を出力する装置であって、情報を出力(表示)するディスプレイなどが例示される。
【0025】
さらに、図1及び図2に示すように、印刷装置10は、エンコーダ60及び測定センサ70を備えている。エンコーダ60は、スケール61、第1発光素子62及び第1受光素子63を有している。スケール61は、左右方向に延びる帯状であって、光が透過しない遮光部及び光が透過する透光部を有している。遮光部及び透過部は、左右方向において交互に並んでいる。例えば、スケール61には、透明な樹脂製テープに所定寸法の黒色の印刷部を左右方向に所定の間隔を空けて設けたものが用いられる。このスケール61において、印刷部が遮光部として利用され、互いに隣接する印刷部同士の間の透明な部分が透光部として用いられる。
【0026】
第1発光素子62及び第1受光素子63は、キャリッジ41に搭載されており、前後方向において、互いの間にスケール61を挟み、スケール61を介して互いに対向するように配置されている。第1発光素子62及び第1受光素子63は制御装置50に電気的に接続されており、第1発光素子62の駆動は制御装置50に制御されている。第1発光素子62は、例えば発光ダイオードであり、光をスケール61に向かって照射する。
【0027】
第1発光素子62から照射された光がスケール61の透光部を透過して第1受光素子63に受光されると、エンコーダ60は第1受光素子63の受光量に応じたエンコーダ信号を制御装置50に出力する。エンコーダ信号は、例えば受光量が所定量以上であって且つ透過部に対応するHレベル信号、及び、受光量が所定量未満であって且つ遮断部に対応するLレベル信号を含んでいる。制御装置50は、交互に出力されるHレベル信号とLレベル信号をカウントして、キャリッジ41の位置を取得し、キャリッジ41の速度及び位置並びにヘッド20からのインクの吐出タイミングを制御する。
【0028】
なお、上記エンコーダ60は透過型であるが反射型であってもよい。この反射型のエンコーダ60ではスケール61は遮光部及び反射部を有し、第1受光素子63は第1発光素子62により照射された光のうちスケール61の反射部にて反射された光を受光する。この場合も、エンコーダ60は、第1受光素子63の受光量に応じたエンコーダ信号を制御装置50に出力し、制御装置50はキャリッジ41の移動動作及びヘッド20の吐出動作を制御する。
【0029】
測定センサ70は、第2発光素子71及び第2受光素子72を有している。第2発光素子71及び第2受光素子72は、キャリッジ41に搭載されており、前後方向において、互いの間にスケール61を挟み、スケール61を介して互いに対向するように配置されている。第2発光素子71及び第2受光素子72は制御装置50に電気的に接続されており、第2発光素子71の駆動は制御装置50に制御されている。第2発光素子71は、例えば発光ダイオードであり、第1発光素子62と同じ波長帯の光をスケール61に向かって照射する。第2発光素子71から照射された光がスケール61の透光部を透過して第2受光素子72に受光されると、測定センサ70は第2受光素子72の受光量を制御装置50に出力する。制御装置50は、第2受光素子72の受光量に基づいてスケール61の寿命を演算する演算動作などを実行する。この演算動作の詳細は後述する。
【0030】
なお、上記測定センサ70は、透過型のエンコーダ60に応じて透過型であるが、反射型のエンコーダ60の場合には反射型が用いられる。この反射型の測定センサ70は、第2受光素子72は第2発光素子71により照射された光のうちスケール61の反射部にて反射された光を受光する。この場合も、測定センサ70は、第2受光素子72の受光量を制御装置50に出力し、制御装置50はこの受光量に基づいてスケール61の寿命を演算する。
【0031】
<印刷動作>
制御装置50は、画像データに基づいてインクをノズル21から被印刷媒体Aに吐出させて、画像を被印刷媒体Aに印刷する印刷動作を実行する。この印刷動作では、制御装置50はパス動作及び搬送動作を実行する。このパス動作では、制御装置50は、エンコーダ信号に基づいて、キャリッジ41を右又は左に移動させながら、ヘッド20からインクを被印刷媒体Aに吐出させる。また、搬送動作では、制御装置50は、被印刷媒体Aを前方へ搬送させる。このように、印刷装置10は、パス動作と搬送動作とを交互に繰り返し、印刷動作を進めていく。
【0032】
そして、制御装置50は、この印刷動作を実行する度に、左右方向における被印刷媒体Aの幅、及び印刷量を画像データに基づいて記憶装置52に記憶する。ここで、制御装置50は、今回の印刷動作の印刷量をその画像データに基づいて取得し、この今回の印刷量を前回の印刷動作までの印刷量に加えた和を印刷量として記憶装置52に記憶する。この印刷量は、印刷動作によって印刷される画像の量である。例えば、印刷量は、画像を印刷した被印刷媒体Aの枚数、被印刷媒体Aに印刷した画像の面積、及び、画像を印刷するために吐出したインクの量などが例示される。印刷量が被印刷媒体Aの枚数である場合には、所定サイズの被印刷媒体Aに印刷される画像の面積の比率を予め設定しておき、この比率に基づいて印刷画像の面積から換算した所定サイズの被印刷媒体Aの枚数が印刷量に用いられる。なお、被印刷媒体Aの幅は、この幅を検出するセンサの検出信号に基づいて取得されてもよい。
【0033】
<測定動作>
このような印刷動作ではキャリッジ41を移動しながらインクを吐出するため、インクのミストが浮遊してスケール61の透過部に付着することがある。このような場合、この透過光を受光するエンコーダ60の受光量が低下し、透過部に対応するエンコーダ信号のHレベル信号がエンコーダ60から出力されなくなる。そこで、制御装置50は、エンコーダ60が出力する信号に基づいて、キャリッジ41を移動させ、第2発光素子71により光をスケール61の測定位置に照射させると共に、測定位置からの透過光を第2受光素子72により受光させる測定動作を実行する。なお、反射型の測定センサ70の場合には測定位置からの反射光を第2受光素子72により受光する。
【0034】
具体的には、制御装置50は、ヘッド20からインクを吐出させずに、エンコーダ60からのエンコーダ信号に基づいてキャリッジ41を左又は右に移動させる。制御装置50は、このキャリッジ41の移動に伴って移動する測定センサ70の第2発光素子71から光を、スケール61における測定位置に照射させる。この測定位置からの透過光が第2受光素子72により受光されると、制御装置50はその受光量を第2受光素子72から取得する。また、測定位置はキャリッジ41の位置に対応するため、制御装置50は、スケール61の測定位置をエンコーダ信号に基づいて取得する。さらに、制御装置50は、受光量は印刷量が多くなるほど減少するため、現印刷量を記憶装置52から取得して、測定位置とその測定位置に対する受光量と印刷量とを対応付けて記憶装置52に記憶する。
【0035】
<演算動作>
このような測定動作によりスケール61における1つ又は複数の測定位置について受光量が取得される。そして、制御装置50は、演算動作では、この測定動作の測定位置からの透過光の第2受光素子72の受光量に基づいてスケール61の寿命を演算する。制御装置50は、測定位置毎に、現時点までに測定動作で測定した受光量、及び、その測定動作時の印刷量を記憶装置52から取得する。そして、制御装置50は、測定位置毎に取得した1つ又は複数の受光量と印刷量との対応データを、図3の例に示すように横軸を印刷量とし縦軸を受光量とするグラフにプロットする。
【0036】
そして、制御装置50は、この対応データにフィッティング関数を最小二乗法などによってフィッティングする。このフィッティング関数は、例えばy=aebxで表される指数関数など、所定の曲線関数である。この指数関数におけるyは受光量を示し、xは印刷量を示し、eはネイピア数を示し、a及びbはパラメータを示す。そして、制御装置50は、このカーブフィッティングによって、近似曲線を印刷量に対する受光量の変化曲線として演算し、また、変化曲線を規定するa及びbを演算する。制御装置50は、この演算されたa及びbでフィッティング関数を規定して変化曲線の式を取得し、変化曲線の式においてyが閾値に一致する場合のxを寿命印刷量(寿命)として演算する。この寿命印刷量は、変化曲線における第2受光素子72の受光量が閾値に達するときの印刷量である。
【0037】
この閾値は、例えば、Hレベル信号がエンコーダ60から出力されるなど、適切なエンコーダ信号がエンコーダ60から出力される場合の第2受光素子72の受光量として予め設定されている。そして、複数の測定位置がある場合には、制御装置50は、複数の測定位置のそれぞれの測定位置について、印刷量に対する受光量の変化曲線を演算し、変化曲線における受光量が閾値に達する印刷量を寿命として演算する。
【0038】
このように演算したスケール61の寿命に応じて、例えば、制御装置50は延命処理を実行することができる。この延命処理として、例えば、キャリッジ41の移動速度を低下する処理、キャリッジ41の移動速度の変化率(加減速)を低下する処理、ブラックインクに代えてシアンインク、イエローインク及びマゼンタインクを組み合わせたトリカラーブラックを用いる処理、顔料インクに代えて染料インクを用いる処理、印刷開始位置を左端と右端との間で変更する処理、及び、案内文を出力装置16に出力(表示)する処理などが例示される。この案内文には、例えば、被印刷媒体Aの配置場所を変更する、印刷装置10を買い替える、及び、印刷装置10の修理依頼を行うなどが例示される。この配置場所の変更には、例えば、被印刷媒体Aの配置場所を左右方向におけるプラテン11の中央から端に変更するなど、被印刷媒体Aの端がスケール61の受光量が低い位置を避けるような被印刷媒体Aの配置場所の変更が例示される。
【0039】
例えば、制御装置50は、出力動作を実行し、残寿命が所定の印刷量以下である場合に延命処理の選択肢を出力装置16に出力する。残寿命は、寿命印刷量(寿命)から現印刷量を引いた差である。複数の測定位置の寿命印刷量がある場合には、複数の寿命印刷量のうちの印刷量が最も少ない最短寿命が用いられてもよい。ここで、制御装置50は、寿命及び現印刷量、残寿命、又は、残寿命が少ないことを、選択肢と共に出力装置16に出力する。なお、この出力動作は、制御装置50は、演算したスケール61の寿命が所定の寿命よりも短いか否かを判定し、演算した寿命が所定の寿命よりも短い場合に実行されてもよい。
【0040】
ユーザは、これらの情報に基づいて延命処理を選択して入力装置15により制御装置50に入力する。例えば、この入力された選択肢がキャリッジ41の移動速度又はその変化率の低下である場合には、制御装置50はその選択肢に応じて移動モータ44を制御する。また、入力された選択肢がインクの変更である場合には、制御装置50はその選択肢に応じて駆動素子22を制御する。さらに、入力された選択肢が案内文である場合には、ユーザによりその案内文に従って被印刷媒体Aの配置場所の変更及び印刷装置10の修理などが行われる。これにより、スケール61が延命化し、エンコーダ60の検知精度の低下が抑制され、エンコーダ60の検知精度の低下に起因した印刷装置10の寿命の短縮化が抑制される。
【0041】
<測定動作の実行タイミング>
上述の通り、スケール61の寿命の演算は測定動作による受光量に基づくが、測定動作は時間を要するため、測定動作を寿命の演算の度に実行するとスケール61の寿命の演算に手間取る。このため、印刷量に応じた頻度で測定動作を実行してもよい。頻度が高いほど、連続して実行される測定動作同士の間隔の印刷量が少なく、ある印刷量の幅において実行される測定動作の回数が多い。
【0042】
例えば、図3のグラフには、印刷量が第1所定量未満の第1区間、印刷量が第1所定量以上且つ第1所定量よりも大きい第2所定量未満の第2区間、及び、印刷量が第2所定量以上の第3区間が設けられている。例えば、所定の寿命印刷量を100%とした場合、第1所定量は20%であり、第2処理量は80%である。なお、上記では印刷量は3つの区間を有しているが、この区間は3つよりも多くてもよい。
【0043】
印刷量に対する受光量の変化曲線における傾きは、第1区間が第2区間及び第3区間よりも大きい。このため、測定動作の実行頻度は、第1区間の第1頻度が第2区間の第2頻度及び第3区間の第3頻度よりも高い。また、第3区間は、残寿命が少なくないため、より正確な寿命を演算した方がよい。そこで、変化曲線の傾きは第2区間よりも第3区間で小さいが、第3頻度は第2頻度よりも高く、さらに第1頻度よりも高くてもよい。このように、印刷量に応じた頻度に従って測定動作を実行することにより、寿命の精度と演算手間の低減とのバランスをとることができる。
【0044】
<除外動作>
また、上述の通りに印刷量に応じて測定動作の実行頻度を調整するが、除外動作によって測定動作の対象の測定位置を除外することにより測定動作の実行回数を調整してもよい。すなわち、印刷動作では、キャリッジ41が左右方向に往復移動しながら、ヘッド20からインクを吐出する。このキャリッジ41が移動方向を右又は左に変える反転時に風が発生し、この風によってインクのミストが巻き上げられる。また、反転時の風が筐体13の内面に当たり反射した風によっても、インクのミストが巻き上げられる。これにより、キャリッジ41の移動範囲における中央よりも端の方が、スケール61に付着するインクの量が多くなる。このため、キャリッジ41の移動範囲のうちインクの付着量が多い端に対応するスケール61の位置が、測定動作の対象の測定位置となる。
【0045】
このキャリッジ41の移動範囲は左右方向における被印刷媒体Aの幅に対応しているため、被印刷媒体Aの幅と測定位置との対応関係が、記憶装置52に予め記憶されている。制御装置50は、この所定の対応関係に基づいて、印刷動作で印刷される被印刷媒体Aの幅に応じた測定位置を測定動作の対象として記憶装置52に記憶(登録)する。なお、被印刷媒体Aの幅に加えて、被印刷媒体Aにおける画像の印刷領域及び濃度などによってもスケール61におけるインクの付着量が異なる場合がある。この場合、制御装置50は、画像を印刷するための画像データに基づいた測定位置を測定動作の対象として記憶装置52に記憶(登録)してもよい。この画像データに基づいた被印刷媒体Aの幅、印刷率(印字デューティ)、解像度、ドット数、吐出したインク滴のサイズなどが測定位置と対応付けられて記憶装置52に予め記憶されている。
【0046】
例えば、印刷動作で印刷される被印刷媒体Aの幅が変更されると、それに伴い測定動作の測定位置が変更されて、複数の測定位置について寿命が演算される。この測定位置の寿命は、測定位置に対応する幅の被印刷媒体Aの印刷量が少ないと長くなる。このような測定位置まで測定動作を実行すると、測定動作に基づいた寿命演算に手間取ってしまう。そこで、制御装置50は、複数の測定位置についての寿命のうち、最短寿命と、最短寿命以外の他の寿命とを比較した結果に基づいて、複数の測定位置の中の一部の測定位置を測定動作の対象から除外する除外動作を実行する。
【0047】
例えば、複数の測定位置が第1測定位置及び第1測定位置とは異なる第2測定位置を含んでいる。この場合、演算動作において、制御装置50は、スケール61の第1測定位置について、これまで実行した測定動作による第2受光素子72の受光量、及び、その測定動作時の印刷量を記憶装置52から取得する。そして、制御装置50は、取得した1つ又は複数の受光量と印刷量との対応データを図4の例に示すグラフにプロットして、この対応データにカーブフィッティングを実行して近似曲線を第1変化曲線として演算し、第1変化曲線の受光量が閾値に一致するときの印刷量を第1寿命印刷量(寿命)として演算する。
【0048】
また、スケール61における第2測定位置についても、第1測定位置と同様に、受光量と印刷量との対応データを記憶装置52から取得して、この対応データにカーブフィッティングを実行して第2変化曲線を演算し、第2変化曲線の受光量が閾値に一致するときの印刷量を第2寿命印刷量(寿命)として演算する。図4の例では、第1寿命印刷量は、第2寿命印刷量よりも少なく、例えば複数の寿命印刷量のうち印刷量が最も少ない最短寿命である。
【0049】
除外動作において、制御装置50は、図4の例では、複数の寿命印刷量から最短寿命として第1寿命印刷量を取得し、複数の寿命印刷量から最短寿命以外の他の寿命として第2寿命印刷量を取得する。そして、制御装置50は、第2寿命印刷量を第1寿命印刷量で割った商を、第1寿命印刷量に対する第2寿命印刷量の割合として演算する。そして、制御装置50は、この寿命印刷量の割合が第1所定値以上である場合には、第2寿命印刷量が第1寿命印刷量からかけ離れているため、第2測定位置に対応するエンコーダ信号のカウント値(例えば、0~2000)を記憶装置52から消去することにより、第2測定位置を測定動作の対象から除外する。一方、制御装置50は、寿命印刷量の割合が第1所定値未満である場合には、第2寿命印刷量が最短寿命になる可能性があるため、第2測定位置を測定動作の対象として記憶装置52に記憶したままにしておく。
【0050】
<印刷装置の制御方法>
印刷装置10の制御方法は、例えば、図5の例に示すフローチャートに沿って制御装置50により実行される。この制御方法は、印刷動作時以外の所定のタイミングで実行される。まず、制御装置50は、スケール61の測定位置が測定動作の対象として既に記憶装置52に記憶(登録)されているか否かを判定する(ステップS1)。ここで、制御装置50は、測定位置が登録されていなければ(ステップS1:NO)、ステップS2の処理を実行する。一方、制御装置50は、測定位置が登録されていれば(ステップS1:YES)、ステップS5の処理を実行する。
【0051】
ステップS2では、制御装置50は測定動作を実行する。ここで、現時点までに印刷動作が実行されていなければ、制御装置50は所定の初期位置を測定位置と決定する。一方、現時点までに印刷動作が実行されていれば、制御装置50は、現時点までに実行した印刷動作の被印刷媒体Aの幅及び印刷量を記憶装置52から取得し、その被印刷媒体Aの幅に応じて測定位置を決定する。そして、制御装置50は、エンコーダ信号に基づきキャリッジ41を移動しながら、決定した測定位置に第2発光素子71から光を照射させて、測定位置からの透過光を第2受光素子72により受光させて、その受光量を取得する。
【0052】
そして、制御装置50は、測定動作にて測定した測定位置を、第2受光素子72の受光量及び現時点の印刷量と対応付けて測定動作の対象として記憶装置52に記憶(登録)する(ステップS3)。
【0053】
それから、制御装置50は、測定動作における第2受光素子72の受光量に基づきスケール61の寿命を演算する演算動作を実行する(ステップS4)。この演算動作において、制御装置50は、測定動作における測定位置、その受光量及び印刷量を記憶装置52から取得し、この印刷量と受光量との対応データにフィッティング関数(例えば、y=aebx)をフィッティングする。そして、制御装置50は、このカーブフィッティングにより取得した変化曲線において受光量が閾値に達するまでの印刷量をスケール61の寿命として演算する。
【0054】
また、ステップS5では、制御装置50は、測定動作の対象として既に登録されている1つ又は複数の測定位置を記憶装置52から取得する。そして、制御装置50は、印刷動作で印刷された被印刷媒体Aの幅を記憶装置52から取得する(ステップS6)。
【0055】
制御装置50は、ステップS6で取得した被印刷媒体Aの幅に応じた測定位置を、ステップS5で取得した測定位置から引いた差の絶対値を位置ズレとして演算する。そして、制御装置50は、この位置ズレが所定値未満であるか否かを判定する(ステップS7)。ここで、位置ズレが所定値以上であれば(ステップS7:NO)、被印刷媒体Aの幅に応じた測定位置を測定動作の対象として登録する(ステップS8)。
【0056】
ステップS7にて位置ズレが所定値未満である場合(ステップS7:YES)、及び、ステップS8にて被印刷媒体Aの幅に応じた測定位置が登録された場合、制御装置50は、測定動作の対象として登録されている1つ又は複数の測定位置から1つの測定位置を選択する(ステップS9)。そして、制御装置50は、選択した測定位置の寿命を取得する寿命処理を実行する(ステップS10)。
【0057】
寿命処理は、図6の例に示すフローチャートに沿って制御装置50により実行される。まず、制御装置50は、現印刷量を記憶装置52から取得する(ステップS21)。制御装置50は、現印刷量が第1所定量未満であるか否かを判定する(ステップS22)。現印刷量が第1所定量未満であれば(ステップS22:YES)、現印刷量は第1区間であるため、制御装置50は測定動作の実行頻度を第1頻度に決定する(ステップS23)。
【0058】
一方、制御装置50は、現印刷量が第1所定量以上であれば(ステップS22:NO)、現印刷量が第2所定量未満であるか否かを判定する(ステップS24)。現印刷量が第2所定量未満であれば(ステップS24:YES)、現印刷量は第2区間であるため、制御装置50は測定動作の実行頻度を第2頻度に決定する(ステップS25)。さらに、制御装置50は、現印刷量が第2所定量以上であれば(ステップS22:NO)、現印刷量は第2区間であるため、制御装置50は測定動作の実行頻度を第3頻度に決定する(ステップS26)。
【0059】
続いて、制御装置50は、例えば、決定した頻度の印刷量を前回の測定動作時の印刷量に加えて、頻度に応じて測定動作を実行する印刷量を演算する。そして、制御装置50は、現印刷量がこの頻度に応じた印刷量以上であるか否かを判定する(ステップS27)。現印刷量が頻度に応じた印刷量以上であれば(ステップS27:YES)、制御装置50は、図5のステップS9で選択した測定位置について測定動作を実行し(ステップS28)、その測定位置と測定した第2受光素子72の受光量と現印刷量とを対応付けて記憶装置52に記憶する。
【0060】
そして、制御装置50は、この印刷量と受光量との対応データにカーブフィッティングを実行することにより、印刷量に対する受光量の変化曲線の式を演算する。そして、制御装置50は、この変化曲線における受光量が閾値に達するときの印刷量を測定位置の寿命印刷量(寿命)として演算し(ステップS29)、寿命を測定位置と対応付けて記憶装置52に記憶する。
【0061】
これに対して、ステップS27において、現印刷量が頻度に応じた印刷量未満である場合には(ステップS27:NO)、制御装置50はステップS4又はS28において前回の演算動作で演算した寿命を記憶装置52から取得する(ステップS30)。このように、現印刷量が頻度に応じた印刷量に相当しない場合には、測定動作を実行せずに前回演算した寿命を用いることにより寿命の精度と演算手間の低減とのバランスをとることができる。
【0062】
そして、ステップS29又はステップS30の処理にて測定位置の寿命を取得すると、制御装置50は、図5のステップS10の処理に戻る。そして、制御装置50は、測定動作の対象として登録された測定位置のうちの全ての測定位置についてステップS10の寿命処理を実行したか否かを判定する(ステップS11)。ここで、測定動作の対象として登録された測定位置の中で寿命処理を実行していない測定位置があれば(ステップS11:NO)、制御装置50は、ステップS9の処理に戻り、寿命処理を実行していない測定位置から1つの測定位置を選択して、寿命処理を実行する(ステップS10)。
【0063】
一方、測定動作の対象として登録された測定位置のうちの全ての測定位置について寿命処理を実行していれば(ステップS11:YES)、制御装置50は、除外動作を実行する。この除外動作において、制御装置50は、スケール61における全ての測定位置の寿命から最短寿命及びこれ以外の他の寿命を演算し、他の寿命から最短寿命を引いた差を演算する。図4の例では、第1寿命印刷量が最短寿命であって、第2寿命印刷量がその他の寿命であり、第2寿命印刷量から第1寿命印刷量を引いた差が寿命の差として演算される。そして、制御装置50は、この寿命の差が第1所定値以上であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0064】
ここで、寿命の差が第1所定値未満である場合(ステップS12:NO)、第2寿命印刷量が第1寿命印刷量に近く最短寿命になる可能性があるため、制御装置50は第2寿命印刷量の第2測定位置を記憶装置52から削除せずに、第2測定位置を測定動作の対象として登録したまま記憶装置52に記憶させておく。一方、寿命の差が第1所定値以上である場合には(ステップS12:YES)、第2寿命印刷量が第1寿命印刷量から離れており最短寿命になる可能性がない又は低いため、制御装置50は第2測定位置を記憶装置52から削除し、その第2測定位置を測定動作の対象から除外する(ステップS13)。これにより、次回のステップS5の処理で演算される測定位置が減少し、ステップS10の寿命処理においてS28の処理で実行される測定動作の対象が少なくなる。このため、測定動作に基づいたスケール61の寿命の精度と演算手間の低減とのバランスをとることができる。
【0065】
そして、制御装置50は、ステップS10の寿命処理又はステップS4の演算動作で演算した寿命である寿命印刷量から現印刷量を引いた差である残寿命を演算し、残寿命が所定の印刷量以下であるか否かを判定する(ステップS14)。そして、制御装置50は、残寿命が所定の印刷量よりも多ければ(ステップS14:NO)、スケール61の延命処理を行わなくてもよいので、処理を終了する。一方、制御装置50は、残寿命が所定の印刷量以下であれば(ステップS14:YES)、出力動作を実行する(ステップS15)。
【0066】
この出力動作では、制御装置50は、延命処理を残寿命などと共に出力装置16に出力する。これにより、ユーザは、スケール61の寿命に応じてスケール61の延命処理を行えるため、スケール61を備えるエンコーダ60の検知精度の低下を抑制し、この検知精度の低下に起因した印刷装置10の寿命の短縮化を抑制することができる。
【0067】
<変形例1>
変形例1に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、制御装置50は、演算動作では、複数の測定位置のうちの第3測定位置について画像の印刷量に対する第2受光素子72の受光量の第3変化曲線を演算し、複数の測定位置のうちの第4測定位置について画像の印刷量に対する第2受光素子72の受光量の第4変化曲線を演算し、第3変化曲線における第2受光素子72の受光量が閾値に達する第3寿命印刷量を演算し、第4変化曲線における第2受光素子72の受光量が閾値に達する第4寿命印刷量を演算する。制御装置50は、除外動作では、第3寿命印刷量が第4寿命印刷量よりも少ないとき、第3変化曲線の現印刷量における接線の傾きに対する、第4変化曲線の現印刷量における接線の傾きの割合を演算し、傾きの割合が第2所定値以下である場合、第4測定位置を測定動作の対象から除外する。
【0068】
具体的には、変形例1に係る印刷装置10の制御方法は、例えば、図7の例に示すフローチャートに沿って制御装置50により実行される。この図7のフローチャートでは、図5のフローチャートにおけるステップS12の処理に代えて、ステップS16の処理が実行される。これ以外の図7のフローチャートにおける処理は、図5のフローチャートにおける処理と同様である。ただし、図7及び図5のフローチャートにおけるスケール61の測定位置及びその変化曲線は、その序数が説明の便宜上異なるが、この序数による順序などにより限定されるものではない。
【0069】
この図7のステップS10の寿命処理における図6のステップS29の演算動作では、制御装置50は、スケール61の第3測定位置について、これまで実行した測定動作による第2受光素子72の受光量、及び、その測定動作時の印刷量を記憶装置52から取得する。そして、制御装置50は、取得した1つ又は複数の受光量と印刷量との対応データを図8の例に示すグラフにプロットして、この対応データにカーブフィッティングを実行して近似曲線を第3変化曲線として演算し、第3変化曲線の受光量が閾値に一致するときの印刷量を第3寿命印刷量(寿命)として演算する。また、スケール61における第3測定位置とは異なる第4測定位置についても、第3測定位置と同様に、受光量と印刷量との対応データを記憶装置52から取得して、この対応データにカーブフィッティングを実行して第4変化曲線として演算し、第4変化曲線の受光量が閾値に一致するときの印刷量を第4寿命印刷量(寿命)として演算する。図8の例では、第3寿命印刷量は、第4寿命印刷量よりも少なく、例えば複数の寿命印刷量のうち印刷量が最も少ない最短寿命である。
【0070】
図7のステップS16の除外動作では、制御装置50は、図8の例における複数の寿命印刷量から最短寿命として第3寿命印刷量を取得し、複数の寿命印刷量から最短寿命以外の他の寿命として第4寿命印刷量を取得する。そして、制御装置50は、現印刷量における第3変化曲線の第3接線及びその第3接線の傾き、並びに、現印刷量における第4変化曲線の第4接線及びその第4接線の傾きを演算する。そして、制御装置50は、第4接線の傾きを第3接線の傾きで割った商を、第3接線の傾きに対する第4接線の傾きの割合として演算する。
【0071】
そして、制御装置50は、この傾きの割合が第2所定値以下であるか否かを判定する。ここで、傾きの割合が第2所定値以下である場合には(ステップS16:YES)、制御装置50は、第4寿命印刷量が第3寿命印刷量からかけ離れていき最短寿命になる可能性がない又は低いため、第4測定位置を記憶装置52から消去することにより、第4測定位置を測定動作の対象から除外する(ステップS13)。一方、傾きの割合が第2所定値よりも大きい場合には(ステップS16:NO)、制御装置50は、第4寿命印刷量が最短寿命になる可能性があるため、第4測定位置を測定動作の対象として記憶装置52に記憶したままにしておく。このように、測定動作の対象における測定位置を除外又は維持することにより、スケール61の寿命の精度の低下及び測定動作の手間を低減することができる。
【0072】
<変形例2>
変形例2に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、制御装置50は、演算動作では、複数の測定位置のうちの第5測定位置について画像の印刷量に対する第2受光素子72の受光量の第5変化曲線を演算し、複数の測定位置のうちの第6測定位置について画像の印刷量に対する第2受光素子72の受光量の第6変化曲線を演算し、第5変化曲線における第2受光素子72の受光量が閾値に達する第5寿命印刷量を演算し、第6変化曲線における第2受光素子72の受光量が閾値に達する第6寿命印刷量を演算する。制御装置50は、除外動作では、第5寿命印刷量が第6寿命印刷量よりも少ないとき、印刷量をxとし、第2受光素子72の受光量をyとし、第5変化曲線の式をy=aebxとした場合、第5変化曲線の式の係数bを演算し、印刷量をxとし、第2受光素子72の受光量をyとし、第6変化曲線の式をy=aebxとし、第6寿命印刷量が第5寿命印刷量に一致するように第6変化曲線を現印刷量から補正したときの第6変化曲線の補正式をy=aebx+cとした場合、補正式の補正係数bを演算し、係数bに対する補正係数bの係数の割合を演算し、係数の割合が第3所定値以上である場合、第6測定位置を測定動作の対象から除外する。
【0073】
具体的には、変形例2に係る印刷装置10の制御方法は、例えば、図9の例に示すフローチャートに沿って制御装置50により実行される。この図9のフローチャートでは、図5のフローチャートにおけるステップS12の処理に代えて、ステップS17の処理が実行される。これ以外の図9のフローチャートにおける処理は、図5のフローチャートにおける処理と同様である。ただし、図9及び図5のフローチャートにおけるスケール61の測定位置及びその変化曲線は、その序数が説明の便宜上異なるが、この序数による順序などにより限定されるものではない。
【0074】
この図9のステップS10の寿命処理における図6のステップS29の演算動作では、制御装置50は、スケール61の第5測定位置について、これまで実行した測定動作による第2受光素子72の受光量、及び、その測定動作時の印刷量を記憶装置52から取得する。そして、制御装置50は、取得した1つ又は複数の受光量と印刷量との対応データを、図10の例に示すグラフにプロットして、この対応データにカーブフィッティングを実行して近似曲線を第5変化曲線として演算し、第5変化曲線の受光量が閾値に一致するときの印刷量を第5寿命印刷量(寿命)として演算する。また、スケール61における第5測定位置とは異なる第6測定位置についても、第5測定位置と同様に、受光量と印刷量との対応データを記憶装置52から取得して、この対応データにカーブフィッティングを実行して第6変化曲線として演算し、第6変化曲線の受光量が閾値に一致するときの印刷量を第6寿命印刷量(寿命)として演算する。図10の例では、第5寿命印刷量は、第6寿命印刷量よりも少なく、例えば複数の寿命印刷量のうち印刷量が最も少ない最短寿命である。
【0075】
図9のステップS17の除外動作では、制御装置50は、図10の例における複数の寿命印刷量から最短寿命として第5寿命印刷量を取得し、複数の寿命印刷量から最短寿命以外の他の寿命として第6寿命印刷量を取得する。この図10のグラフにでは、その横軸が印刷量xを示し、縦軸が受光量yを示し、第5変化曲線及び第6変化曲線の式がy=aebxで表される。この式のeはネイピア数であり、a及びbはカーブフィッティングにより演算される。
【0076】
ここで、制御装置50は、第6変化曲線における第6寿命印刷量が第5変化曲線における第5寿命印刷量が一致するように、第6変化曲線を現印刷量から補正して、この補正した第6変化曲線である補正曲線を演算する。この補正曲線の補正式は、y=aebx+cで表され、第6変化曲線の式(y=aebx)、現印刷量と現印刷量における第6変化曲線の受光量との対応データ(点P1)、及び、第5寿命印刷量と閾値に相当する受光量との対応データ(点P2)に基づいて演算される。
【0077】
そして、制御装置50は、補正曲線の補正式におけるxの係数bである補正係数bを、第5変化曲線式におけるxの係数bで割った商を、係数bに対する補正係数bの係数の割合として演算する。そして、制御装置50は、この係数の割合が第3所定値以上であるか否かを判定する(ステップS17)。ここで、係数の割合が第3所定値以上である場合には(ステップS17:YES)、制御装置50は、第6寿命印刷量が第5寿命印刷量である最短寿命になる可能性がない又は低いため、第6測定位置を記憶装置52から消去することにより、第6測定位置を測定動作の対象から除外する(ステップS13)。一方、係数の割合が第3所定値未満である場合には(ステップS17:NO)、制御装置50は、第6寿命印刷量が最短寿命になる可能性があるため、第6測定位置を測定動作の対象として記憶装置52に記憶したままにしておく。このように、測定動作の対象における測定位置を除外又は維持することにより、スケール61の寿命の精度の低下及び測定動作の手間を低減することができる。
【0078】
<変形例3>
上記実施の形態及びその変形例1及び2に係る印刷装置10は、図2に示すようにエンコーダ60及び測定センサ70を備えていたが、変形例3に係る印刷装置10は、図11に示すように測定センサ70を備えずにエンコーダ60を備えていてもよい。この場合、エンコーダ60は測定センサ70としても用いられる。
【0079】
このエンコーダ60は、スケール61(図1)、発光素子64及び受光素子65を有している。この発光素子64は第1発光素子62と同様であり、受光素子65は第1受光素子63と同様である。このため、発光素子64及び受光素子65は、キャリッジ41(図1)に搭載されており、前後方向において、互いの間にスケール61を挟み、スケール61を介して互いに対向するように配置されている。発光素子64及び受光素子65は制御装置50に電気的に接続されており、発光素子64の駆動は制御装置50に制御されている。発光素子64は、例えば発光ダイオードであり、光をスケール61に向かって照射する。
【0080】
発光素子64から照射された光がスケール61の透光部を透過して受光素子65に受光されると、エンコーダ60は受光素子65の受光量に応じたエンコーダ信号を制御装置50に出力し、制御装置50はエンコーダ信号に基づいてキャリッジ41の速度及び位置並びにヘッド20からのインクの吐出タイミングを制御する。また、エンコーダ60は受光素子65の受光量を制御装置50に出力し、制御装置50はこの受光量に基づいてスケール61の寿命を演算する演算動作などを実行する。なお、上記エンコーダ60は透過型であるが反射型が用いられてもよい。この場合、受光素子65は、発光素子64により照射された光のうちスケール61の反射部にて反射された光を受光する。
【0081】
図5図7及び図9のステップS2及び図6のステップS28の測定動作では、制御装置50は、エンコーダ60が出力する信号に基づいてキャリッジ41を移動させ、発光素子64により光をスケール61の測定位置に照射させると共に、測定位置からの透過光を受光素子65により受光させる。図5図7及び図9のステップS4及び図6のステップS29の演算動作では、制御装置50は、測定位置での受光素子65の受光量に基づいてスケール61の寿命を演算する。そして、図5図7及び図9のステップS15の出力動作では、制御装置50は、スケール61の延命処理を出力装置16に出力する。
【0082】
この測定動作では、制御装置50は、スケール61における複数の測定位置からの透過光を受光素子65により受光させてもよい。この場合、演算動作では、制御装置50は、受光素子65の受光量に基づいて寿命を複数の測定位置のそれぞれについて演算する。そして、制御装置50は、複数の測定位置についての寿命のうち、最短寿命と、最短寿命以外の他の寿命とを比較した結果に基づいて、複数の測定位置の中の一部の測定位置を測定動作の対象から除外する除外動作を実行する。
【0083】
例えば、図5のステップS12及びS13における除外動作を実行する場合には、図6のS29の演算動作において、制御装置50は、複数の測定位置のうちの第1測定位置について画像の印刷量に対する受光素子65の受光量の第1変化曲線を演算し、複数の測定位置のうちの第2測定位置について画像の印刷量に対する受光素子65の受光量の第2変化曲線を演算し、第1変化曲線における受光素子65の受光量が閾値に達する第1寿命印刷量を演算し、第2変化曲線における受光素子65の受光量が閾値に達する第2寿命印刷量を演算する。
【0084】
そして、図5の除外動作において、制御装置50は、第1寿命印刷量が最短寿命を示すとき、第1寿命印刷量に対する第2寿命印刷量の割合を演算し、この寿命の割合が第1所定値以上であるか否かを判定する(ステップS12)。そして、寿命の割合が第1所定値以上である場合(ステップS12:YES)、制御装置50は、第2測定位置を測定動作の対象から除外する(ステップS13)。一方、寿命の割合が第1所定値未満である場合(ステップS12:NO)、制御装置50は、第2測定位置を測定動作の対象から除外せずに測定動作の対象として保持する。
【0085】
また、図7のステップS16及びS13における除外動作を実行する場合には、図6のS29の演算動作において、制御装置50は、複数の測定位置のうちの第3測定位置について画像の印刷量に対する受光素子65の受光量の第3変化曲線を演算し、複数の測定位置のうちの第4測定位置について画像の印刷量に対する受光素子65の受光量の第4変化曲線を演算し、第3変化曲線における受光素子65の受光量が閾値に達する第3寿命印刷量を演算し、第4変化曲線における受光素子65の受光量が閾値に達する第4寿命印刷量を演算する。この第3寿命印刷量は、第4寿命印刷量よりも少なく、例えば最短寿命である。
【0086】
そして、図7の除外動作において、制御装置50は、第3変化曲線の現印刷量における接線の傾きに対する第4変化曲線の現印刷量における接線の傾きの割合を演算し、傾きの割合が第2所定値以下であるか否かを判定する(ステップS16)。この傾きの割合が第2所定値以下である場合(ステップS16:YES)、制御装置50は第4測定位置を測定動作の対象から除外する(ステップS13)。一方、傾きの割合が第2所定値よりも大きい場合(ステップS16:NO)、制御装置50は第4測定位置を測定動作の対象から除外せずに保持する。
【0087】
また、図9のステップS17及びS13における除外動作を実行する場合には、図6のS29の演算動作において、制御装置50は、複数の測定位置のうちの第5測定位置について画像の印刷量に対する受光素子65の受光量の第5変化曲線を演算し、複数の測定位置のうちの第6測定位置について画像の印刷量に対する受光素子65の受光量の第6変化曲線を演算し、第5変化曲線における受光素子65の受光量が閾値に達する第5寿命印刷量を演算し、第6変化曲線における受光素子65の受光量が閾値に達する第6寿命印刷量を演算する。この第5寿命印刷量は、第6寿命印刷量よりも少なく、例えば最短寿命である。
【0088】
そして、図9の除外動作において、制御装置50は、印刷量をxとし、受光素子65の受光量をyとし、第5変化曲線の式をy=aebxとした場合、第5変化曲線の式の係数bを演算し、印刷量をxとし、受光素子65の受光量をyとし、第6変化曲線の式をy=aebxとし、第6寿命印刷量が第5寿命印刷量に一致するように第6変化曲線を現印刷量から補正したときの第6変化曲線の補正式をy=aebx+cとした場合、補正式の補正係数bを演算し、係数bに対する補正係数bの係数の割合を演算し、係数の割合が第3所定値以上であるか否かを判定する(ステップS17)。係数の割合が第3所定値以上である場合(ステップS17:YES)、制御装置50は第6測定位置を測定動作の対象から除外する(ステップS13)。一方、係数の割合が第3所定値未満である場合(ステップS17:NO)、制御装置50は第6測定位置を測定動作の対象から除外せずに保持する。
【0089】
なお、上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良及び他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更することができる。
【符号の説明】
【0090】
10 :印刷装置
20 :ヘッド
41 :キャリッジ
50 :制御装置
60 :エンコーダ
61 :スケール
62 :第1発光素子
63 :第1受光素子
64 :発光素子
65 :受光素子
70 :測定センサ
71 :第2発光素子
72 :第2受光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11