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特開2024-104423情報処理装置及び建物の傾斜点検方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104423
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】情報処理装置及び建物の傾斜点検方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20240729BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G06T7/60 150Z
G01B11/26 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008614
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓久
(72)【発明者】
【氏名】矢田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山下 仁崇
(72)【発明者】
【氏名】東 智明
(72)【発明者】
【氏名】大澤 淳司
(72)【発明者】
【氏名】黒田 訓行
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 匠
(72)【発明者】
【氏名】安江 俊彦
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA32
2F065CC14
2F065FF04
2F065QQ31
2F065RR06
5L096BA03
5L096FA05
5L096FA62
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】より簡便な構成及び手順で建物の傾斜状態を点検することが可能な情報処理装置及び建物の傾斜点検方法を提供する。
【解決手段】本発明では、建物において鉛直方向に沿って延びている対象面を該対象面の正面から撮影した撮影画像を取得し、撮影画像に基づき、鉛直方向又は水平方向に延びた基準線と対象面内に設定された点との位置関係に応じた値を算出し、当該値に基づき、対象面の傾斜度合いを特定する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物において鉛直方向に沿って延びている対象面を該対象面の正面から撮影した撮影画像を取得する取得部と、
前記撮影画像に基づき、鉛直方向又は水平方向に延びた基準線と前記対象面内に設定された点との位置関係に応じた値を算出する算出部と、
前記値に基づき、前記対象面の傾斜度合いを特定する特定部と、を備える情報処理装置。
【請求項2】
第1時点に撮影された前記撮影画像から特定される前記傾斜度合い、及び、前記第1時点よりも後の第2時点に撮影された前記撮影画像から特定される前記傾斜度合いの双方を、該双方が対比可能な状態で出力する出力部をさらに備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
第1時点に撮影された前記撮影画像から特定される前記傾斜度合い、及び、前記第1時点よりも後の第2時点に撮影された前記撮影画像から特定される前記傾斜度合いの双方の差分を出力する出力部をさらに備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1時点は、前記建物の竣工時点である、請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記撮影画像に対して、前記対象面の法線方向から前記対象面を見た補正画像に変換する補正処理を実行する補正部をさらに備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記値として、水平方向に離れた複数の前記対象面の各々の前記点と水平方向に延びた前記基準線との間の距離を、前記対象面毎に算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記対象面を構成する部材の仕様に関する仕様情報を記憶部から読み出して、前記仕様情報に基づいて、前記対象面の撮影に関する支援情報をユーザに提示する提示部をさらに備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記対象面は、前記建物の外壁を構成する外壁パネルの外側表面である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
建物において鉛直方向に沿って延びている対象面を該対象面の正面から撮影した撮影画像を取得する処理と、
前記撮影画像に基づき、鉛直方向又は水平方向に延びた基準線と前記対象面内に設定された点との位置関係に応じた値を算出する処理と、
前記値に基づき、前記対象面の傾斜度合いを特定する処理と、
をプロセッサにより実施する建物の傾斜点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び建物の傾斜点検方法に係り、特に、建物の傾斜状態を点検する際に用いられる情報処理装置及び建物の傾斜点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経年変化及び地震等によって建物の傾斜状態が竣工時点から変化する場合があり、その変化に応じて適切な補修を行うために、ハウスメーカー等によって定期的に建物の傾斜状態の点検が実施されることがある。
建物の傾斜状態を点検する方法としては、例えば専門スキルを有する点検員が現地に出向き、レベル計等の専用機器を用いて点検する方法が挙げられる。
また、特許文献1には、建物の傾きを測定する傾斜センサを備えた管理システムが記載されており、この管理システムを利用すれば、建物の傾斜状態の変化をシステムの管理者又は住宅の居住者に把握させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-133571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物の傾斜状態の変化を監視する仕組みとしては、建物の利用者又は管理者等(以下、「ユーザ」とする)が一次診断を行い、例えば建物の傾斜状態が許容範囲を外れる場合に、点検員による詳細診断を実施することが考えられる。
しかしながら、ユーザは、点検員のように専門スキルを有しておらず、専用機器を用いた点検を適切に行うことはできない。
また、特許文献1に記載の管理システムを用いることにより、ユーザが専門スキルを有しなくても、建物の傾斜状態を把握することができる。しかしながら、傾斜センサ等の専用機器を建物の各所に設置する必要があり、センサの導入コストを要する。また、建物の建設地が、必ずしも傾斜センサの設置に適した立地環境であるとは限らない。以上の事情により、全てのユーザにとって、特許文献1に記載の管理システムが有効なものであるわけではない。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡便な構成及び手順により建物の傾斜状態を点検するための情報処理装置及び建物の傾斜点検方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、本発明の情報処理装置によれば、建物において鉛直方向に沿って延びている対象面を該対象面の正面から撮影した撮影画像を取得する取得部と、撮影画像に基づき、鉛直方向又は水平方向に延びた基準線と対象面内に設定された点との位置関係に応じた値を算出する算出部と、値に基づき、対象面の傾斜度合いを特定する特定部と、を備えることにより解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の情報処理装置では、対象面の撮影画像を取得することにより、撮影画像から得られる情報に基づいて対象面の傾斜度合いが特定され、特定された傾斜度合いから、建物の傾斜状態を把握することができる。このように、本発明の情報処理装置によれば、ユーザが通常の方法で撮影を行うことにより、建物の傾斜状態を点検することができ、言い換えると、専門的なスキル及び機器を必要とせず、簡便な構成及び手順により建物の傾斜状態を点検することができる。
【0008】
また、上記の情報処理装置では、第1時点に撮影された撮影画像から特定される傾斜度合い、及び、第1時点よりも後の第2時点に撮影された撮影画像から特定される傾斜度合いの双方を、双方が対比可能な状態で出力する出力部をさらに備えてもよい。
上記の構成によれば、出力部が、第1時点及び第2時点の双方の傾斜度合いを対比可能な状態で出力するので、ユーザは、両時点の傾斜度合いを把握することができる。これにより、ユーザは、建物の傾斜状態を適切に点検することができる。
【0009】
また、上記の情報処理装置は、第1時点に撮影された撮影画像から特定される傾斜度合い、及び、第1時点よりも後の第2時点に撮影された撮影画像から特定される傾斜度合いの双方の差分を出力する出力部をさらに備えてもよい。
上記の構成によれば、出力部が、第1時点及び第2時点の双方の傾斜度合いの差分を出力するので、ユーザは、両時点の傾斜度合いの差分を把握することができる。これにより、ユーザは、建物の傾斜状態を適切に点検することができる。
【0010】
また、上記の情報処理装置において、第1時点は、建物の竣工時点であってもよい。
上記の構成によれば、建物の傾斜度合いが初期状態にある時点すなわち、建物の竣工時点を基準として、対象面の傾斜度合いが特定されるので、ユーザは、建物の傾斜状態を適切に点検することができる。
【0011】
また、上記の情報処理装置は、撮影画像に対して、対象面の法線方向から対象面を見た補正画像に変換する補正処理を実行する補正部をさらに備えてもよい。
上記の構成によれば、補正処理が実行されることにより、対象面の傾斜度合いをより正確に特定することができるので、ユーザは、建物の傾斜状態を適切に点検することができる。
【0012】
また、上記の情報処理装置において、算出部は、上記の値として、水平方向に離れた複数の対象面の各々の点と水平方向に延びた基準線との間の距離を、対象面毎に算出してもよい。
上記の構成によれば、対象面の傾斜度合いを簡易な手法によって特定することができるので、ユーザは、建物の傾斜状態を適切に点検することができる。
【0013】
また、上記の情報処理装置は、対象面を構成する部材の仕様に関する仕様情報を記憶部から読み出して、その仕様情報に基づいて、対象面の撮影に関する支援情報をユーザに提示する提示部をさらに備えてもよい。
上記の構成によれば、ユーザは、支援情報に従って対象面を適切に撮影することができる。
【0014】
また、上記の情報処理装置において、対象面は、建物の外壁を構成する外壁パネルの外側表面であってもよい。
上記の構成によれば、寸法が既知である外壁パネルの外側表面を撮影することにより、撮影画像内における基準線と対象面の点との位置関係が明確となる。これにより、対象面の傾斜度合いをより正確に特定することができるので、ユーザは、建物の傾斜状態を適切に点検することができる。
【0015】
また、前述の課題は、本発明の建物の傾斜点検方法によれば、建物において鉛直方向に沿って延びている対象面を該対象面の正面から撮影した撮影画像を取得する処理と、撮影画像に基づき、鉛直方向又は水平方向に延びた基準線と対象面内に設定された点との位置関係に応じた値を算出する処理と、上記の値に基づき、対象面の傾斜度合いを特定する処理と、をプロセッサにより実施することで解決される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、専門的なスキル及び機器を必要とせず、簡便な構成及び手順により建物の傾斜状態を点検することが可能な情報処理装置及び建物の傾斜点検方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置を含む傾斜点検システムを示す図である。
図2】建物の傾斜状態の点検に際してユーザ端末に表示される確認画面の一例を示す図である。
図3】建物の傾斜状態の点検に際してユーザ端末に表示される設置例提示画面の一例を示す図である。
図4】建物の傾斜状態の点検に際してユーザ端末に表示される撮影例提示画面の一例を示す図である。
図5】建物の傾斜状態の点検に際してユーザ端末に表示される結果画面の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の機能を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る情報処理装置が対象面の傾斜度合いを特定する手順を説明する図である(その1)。
図9】本発明の一実施形態に係る情報処理装置が対象面の傾斜度合いを特定する手順を説明する図である(その2)。
図10】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の点検フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、以下の実施形態から変更又は改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0019】
本明細書において、「装置」という概念には、特定の機能を一台で発揮する単一の装置が含まれるとともに、分散して互いに独立して存在しつつ協働(連携)して特定の機能を発揮する複数の装置も含まれることとする。
【0020】
また、本明細書において、「ユーザ」は、本発明の情報処理装置を利用するユーザであり、特に、点検対象となる建物の居住者、利用者、管理者、又は所有者等とする。なお、これに限定されず、建物の施工会社や建設会社、あるいは建物の点検業者がユーザであってもよい。
「情報処理装置を利用する」とは、情報処理装置の機能を利用することであり、情報処理装置を直接操作することの他、情報処理装置の機能を他の機器(例えば、ユーザ端末)から利用することを含む。
【0021】
<傾斜点検システム>
図1を参照しつつ、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る情報処理装置(以下、情報処理装置10)を含む傾斜点検システムSについて説明する。
傾斜点検システムSは、建物20の傾斜状態を点検するために用いられる情報処理システムである。傾斜点検システムSを用いた建物20の傾斜状態の点検(以下、傾斜点検)では、図1に示すように、カメラを搭載するユーザ端末100によって建物20の対象面を撮影し、その結果得られた撮影画像を情報処理装置10によって解析することにより、建物20の傾斜状態が把握できる。
ここでいう「傾斜」とは、水平方向及び鉛直方向を基準(傾斜度0°)とした絶対的な傾斜を示し、例えば、その建物が建てられる地面、すなわちGL(グランドレベル)を基準とした相対的な傾斜ではない。
「対象面」とは、建物20の外観において視認することが可能な面であり、具体的には、外壁パネルの外側表面(図1に示す例では、外壁パネル21,22の外側表面21a,22a)である。
【0022】
傾斜点検システムSは、図1に示すように、サーバ1と、各ユーザが利用するユーザ端末100と、サーバ1とユーザ端末100とを接続するネットワーク11とによって構成されている。
【0023】
サーバ1は、傾斜点検システムSのプラットフォームをなすコンピュータであり、情報処理装置10を構成している。サーバ1は、クラウドサービス用のサーバ、具体的にはASP(Application Service Provider)、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、又はIaaS(Infrastructure as a Service)用のサーバコンピュータでもよい。
【0024】
ユーザ端末100は、ユーザが使用するコンピュータであって、具体的にはスマートフォン等のスマートデバイス、タブレット型端末、又はノート型PC(Personal Computer)等により構成される。ユーザ端末100は、プロセッサ、メモリ、及び通信用インターフェース等を備えている。ユーザ端末100には、情報処理装置10を利用するためのアプリケーションプログラム(以下、傾斜点検用アプリケーション)が格納されている。ユーザは、情報処理装置10の利用に際して、所定のWebサイトから傾斜点検用アプリケーションをダウンロードし、ユーザ端末100にインストールする。
【0025】
ユーザ端末100には、カメラが搭載されている。ユーザは、傾斜点検において、ユーザ端末100を用いて、建物20において鉛直方向に沿って延びている対象面を、当該対象面の正面から撮影することとなる。対象面は、建物20の外観に現れ、且つ建物20において鉛直方向に沿って延びている面である。本実施形態では、図1,3等に示すように、建物20の外壁を構成する外壁パネルのうち、窓又はドア等の開口部を挟んで隣り合う2つの外壁パネル21,22の各々の外側表面21a,22aが、対象面に設定されている。対象面である外側表面21a,22aは、平面視で矩形型の面である。
【0026】
傾斜点検にてユーザが実施する内容について、図2~5を参照しながら説明する。図2~5は、建物20の傾斜状態の点検に際してユーザ端末100に表示される各々の画面の一例を示す。
なお、以下では、ユーザ端末100がスマートフォンであるケースを想定して説明することとする。
【0027】
まず、ユーザは、ユーザ端末100に格納されている傾斜点検用アプリケーションを起動する。ユーザ端末100の画面は、傾斜点検用アプリケーションが起動した後、ユーザが所定の動作を行うことで、確認画面D1(図2参照)に遷移する。
なお、情報処理装置10は、あらかじめ設定した点検日のスケジュールに基づき、点検日のn日前(nは自然数であり、例えば1~3)になると、その旨をユーザ端末100の画面に表示させて、ユーザに対して傾斜点検用アプリケーションの起動を促してもよい。
【0028】
確認画面D1には、図2に示すように、建物20の平面図が表示され、その平面図の中には点検箇所が指示される。例えば、図2に示す例では点検箇所(1)~(4)が表示されている。点検箇所は、施工したメーカー等によって竣工時にあらかじめ設定されており、情報処理装置10が備える記憶装置10D(図6参照)に記憶されている。点検箇所の情報は、ユーザ端末100の画面が確認画面D1に遷移する段階で、記憶装置10Dから読み出され、その情報が示す点検箇所の位置が、確認画面D1に表示された平面図において指示される。
【0029】
点検箇所が複数ある場合、確認画面D1には、図2に示すように、複数の点検箇所のうち、今回点検を実施すべき箇所が分かるように表示される。図2に示す例では、今回点検を実施する箇所として点検箇所(1)が表示されている。複数の点検箇所の各々の点検日は、あらかじめ設定したスケジュールに従って決定されている。ユーザは、今回点検を実施すべき点検箇所(図2に示す例では、点検箇所(1))の位置を確認し、確認が完了した時点で、確認画面D1に表示された「確認」のアイコンをタッチする。
【0030】
確認画面D1において「確認」のアイコンがタッチされると、ユーザ端末100の画面が、図3に示す設置例提示画面D2に遷移する。設置例提示画面D2には、図3に示されるように、下げ振り23の設置例の画像が表示される。下げ振り23の設置例の画像は、例えば、施工したメーカー等によって竣工時点にあらかじめ撮影され、記憶装置10D(図7参照)に記憶されている。設置例提示画面D2への遷移時に、設置例の画像が記憶装置10Dから読み出され、設置例提示画面D2内に表示される。ユーザは、設置例提示画面D2に表示された設置例に倣って、対象面の一部又は対象面の周辺に下げ振り23を設置する。
【0031】
「下げ振り23」は、鉛直方向を確認するための器具であり、具体的には、図3に示すように、対象面の一部又は対象面の周辺に固定された固定部23aと、上端が固定部23aに取り付けられた糸23bと、糸23bの下端に取り付けられた錘23cとで構成されている。糸23bの延出方向は、鉛直方向に相当し、後工程の画像解析では、糸23bの延出方向に基づいて基準線V,H(図8,9参照)が撮影画像内に描画される。
「基準線」は、対象面の傾斜度合いを特定する際に基準となる仮想線であり、撮影画像内に設定される。基準線Vは、鉛直方向に延びる仮想線であり、基準線Hは、水平方向に延びる仮想線である。
ちなみに、図3に示す設置例では、下げ振り23は、水平方向に離れた外壁パネル21,22の間に挟まれた窓部に設置されている。
【0032】
なお、基準線V,Hを撮影画像内に設定する機能をあらかじめ搭載しているユーザ端末100を用いる場合、ユーザは、設置例提示画面D2を見て下げ振り23を設置する作業を省略してもよい。
【0033】
ユーザは、下げ振り23の設置作業を終えた時点で、設置例提示画面D2内に表示された「完了」のアイコンをタッチする。そして、ユーザ端末100の画面は、図4に示す撮影例提示画面D3に遷移する。ユーザは、撮影例提示画面D3に提示された撮影例に倣って対象面を撮影する。
【0034】
撮影例提示画面D3に提示された撮影例の画像は、施工したメーカー等によって竣工時にあらかじめ撮影された過去の画像である。撮影例提示画面D3は、対象面の4つの角部に対して4つのガイドオブジェクト(図4中、L字型の破線)を合わせるようにユーザに説明する画面であり、実際に撮影を行う前段階で表示される画面である。ユーザは、撮影例提示画面D3の撮影例を確認した後、撮影例提示画面D3に表示された「撮影開始」のアイコンをタッチする。これにより、ユーザ端末100の画面が、撮影例提示画面D3から実際に撮影を行う撮影モードの画面に遷移する。ユーザは、直前の画面にて確認した撮影例に従って、対象面の4つの角部を画面に表示された4つの破線に合わせて対象面を撮影する。これにより、2つの対象面、すなわち外側表面21a,22aが同じ撮影画角内に収まり、当該2つの対象面を同時に撮影することができる。なお、対象面の角部は、外壁パネル間に設けられた継ぎ目(目地)により認識可能であり、具体的には、鉛直方向に延びる目地と、水平方向に延びる目地とが交わる位置が角部となる。
【0035】
対象面が撮影されると、情報処理装置10が撮影画像に対して画像解析を実施する。より具体的には、まず、撮影画像が、対象面の法線方向から対象面を見た補正画像に射影変換等の補正処理によって変換される。次に、補正画像内の対象面、すなわち、2つの外側表面21a,22aの各々の領域が検出され、各々の領域の中心に点P1,P2(図8参照)が設定される。その後、点P1,P2の各々と水平方向に延びた基準線Hとの間の距離a,b、及び水平方向における点P1,P2の間の距離Lが算出される(図9参照)。そして、例えば、下記の式(f1)により傾斜度合いθを算出する。
θ=(a-b)/L (f1)
上記の式(f1)により算出された傾斜度合いθが、対象面の傾斜度合いに相当する。
対象面の傾斜度合いθは、図5に示すように、上記の画像解析の結果として結果画面D4に表示される。
【0036】
結果画面D4には、過去の点検における傾斜度合いθのデータが、今回の点検における傾斜度合いθのデータとともに表示される。過去の点検における傾斜度合いθのデータは、記憶装置10Dに記憶されており、ユーザ端末100の画面が結果画面D4に遷移する際に、記憶装置10Dから読み出される。
なお、図5に示す例のように、過去の各時点の傾斜度合いθは、今回時点の傾斜度合いθと対比可能な状態で出力されるとよい。図5に示す結果画面D4には、西暦2007年の竣工時点の傾斜度合いθ=+1/1000、竣工時点から5年後の西暦2012年の時点の傾斜度合いθ=+1/1000、竣工時点から10年後の西暦2017年の時点の傾斜度合いθ=+2/1000、及び竣工時点から15年後の今回時点(西暦2022年)の傾斜度合いθ=+10/1000が、時系列に確認できるように順に並べて表示される。ちなみに、図中の「+」という表記は、外側表面21aが外側表面22aよりも鉛直方向の上側に位置している場合を意味し、「-」という表記は、外側表面21aが外側表面22aよりも鉛直方向の下側に位置していることを意味する。
【0037】
また、結果画面D4には、点検を実施した各時点とその1つ前の時点との傾斜度合いθの変化量(差分)も表示される。図5に示す例においては、竣工時点(西暦2007年)とその5年後の時点(西暦2012年)との間の5年間における傾斜度合いθの差分0/1000、竣工時点から5年後の時点(西暦2012年)と10年後の時点(西暦2017年)との間の5年間における傾斜度合いθの差分+1/1000、及び竣工時点から10年後の時点(西暦2017年)と15年後の今回時点(西暦2022年)との間の5年間における傾斜度合いθの差分+8/1000が結果画面D4にそれぞれ表示される。
【0038】
ここで、図5に示す例では、竣工時点(西暦2007年)から10年後の時点(西暦2017年)までの5年毎の傾斜度合いθの変化量は+1/1000以下に保たれている。これに対して、竣工時点から10年後の時点(西暦2017年)と15年後の今回時点(西暦2022年)との間、すなわち直近5年間における傾斜度合いθの変化量は+8/1000となり、以前と比較して傾斜度合いθの変化量が格段に大きくなっており、建物20の傾斜状態が、直近5年の中で著しく変化したことが分かる。そのような場合には、図5に示すように、結果画面D4に、点検員による詳細診断を受けることを促すメッセージが表示されるとよい。これにより、ユーザは、結果画面D4の指示に従って、専門の点検員等に迅速に連絡を取って詳細診断を依頼することができる。
【0039】
以上のように、ユーザは、ユーザ端末100を通じて情報処理装置10を利用することにより、専門的なスキル及び機器を必要とせず、簡便な構成及び手順により建物20の傾斜状態を点検することができる。
【0040】
<情報処理装置>
次に、図6を参照しつつ、情報処理装置10の構成について説明する。
本実施形態において、情報処理装置10は、前述したように、サーバ1によって構成される。情報処理装置10を構成するコンピュータの台数は、1台でもよく、あるいは2台以上でもよい。情報処理装置10は、プロセッサと、プロセッサが実行可能なプログラムによって実現され、例えば汎用的なコンピュータによって構成される。
【0041】
情報処理装置10を構成するサーバ1は、図6に示すように、プロセッサ10A、メモリ10B、通信用インターフェース10C、及び記憶装置10D(記憶部)を備える。
【0042】
プロセッサ10Aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はTPU(Tensor Processing Unit)等によって構成される。
メモリ10Bは、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリによって構成される。
通信用インターフェース10Cは、例えば、ネットワークインターフェースカード又は通信インターフェースボード等によって構成される。
記憶装置10Dは、例えば、サーバ1に内蔵又は外付けされたストレージによって構成される。ただし、これに限定されず、サーバ1と通信可能な第3のコンピュータ(例えば、外部サーバ)が記憶装置10Dを構成してもよい。
【0043】
サーバ1には、サーバ1を本発明の情報処理装置として機能させるためのプログラム(以下、傾斜点検用プログラム)がインストールされている。傾斜点検用プログラムは、後述する点検フローにおける各工程のうち、情報処理装置10が担当する工程を、コンピュータに実行させるためのプログラムである。すなわち、プロセッサ10Aは、傾斜点検用プログラムを読み出して実行することにより、対象面の傾斜度合いを特定する一連の情報処理を実行する。
【0044】
傾斜点検用プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体から読み込むことで取得してもよいし、インターネット又はイントラネット等の通信回線を通じてダウンロードすることで取得してもよい。
【0045】
<情報処理装置に備えられる機能>
次に、情報処理装置10の構成について機能面から改めて説明する。
【0046】
情報処理装置10には、図7に示すように、取得部31、補正部32、算出部33、特定部34、出力部35、及び提示部36のそれぞれの機能部が備えられている。これらの機能部は、情報処理装置10を構成するサーバ1のハードウェア機器と、ソフトウェアとしての傾斜点検用プログラムとの協働によって実現される。
【0047】
取得部31は、ユーザが対象面を当該対象面の正面から撮影した際の撮影画像を取得する。詳しくは、図4に示す撮影例提示画面D3に表示された撮影例に倣い、ユーザ端末100に搭載されたカメラを用いてユーザが撮影を行うと、その撮影画像が、ユーザ端末100から送信され、取得部31は、ユーザ端末100から送信される撮影画像を、ネットワーク11を通じて取得(受信)する。ここで、取得部31が取得する撮影画像は、撮影例提示画面D3に表示された撮影例と略同様の構図の画像である。
【0048】
補正部32は、撮影画像に対して、対象面の法線方向から対象面を見た補正画像に変換する補正処理を実行する。ユーザが、対象面の法線方向から正確に対象面を撮影することは難しく、実際には法線方向に対して傾斜した方向から対象面を撮影することとなる。このような撮影画像では、対象面の傾斜度合いが正しく特定できない。そのため、補正部32が、取得部31が取得した撮影画像に対して補正処理を実行し、具体的には、撮影画像を、対象面の法線方向から対象面を見た補正画像に変換する。
【0049】
撮影画像に対する補正処理としては、例えば射影変換が挙げられ、具体的に射影変換による処理は、撮影画像内から特定される対象面の四角形状を、対象面の法線方向から対象面を見た際の四角形状に変形させることにより、撮影画像を補正画像に変換する。
図8に示す例では、補正部32は、2つの対象面のうちの一方、すなわち外側表面21a,22aのうちの一方を用いて、射影変換による処理を補正処理として実行する。より具体的には、補正部32は、撮影画像内から特定される外側表面21aの四角形状を、記憶装置10Dから読み出した外壁パネル21の仕様情報に基づいて、実際の外側表面21aの四角形状に変形させることにより、撮影画像を補正画像に変換する。外壁パネル21の仕様情報は、外壁パネル21の本来の外観に関する情報、具体的には、外側表面21aの型番、種類、形状、サイズ、外形寸法及び配置位置等を示す情報である。
【0050】
算出部33は、補正された撮影画像である補正画像に基づき、外側表面21a,22aの各々の領域を検出し、各々の領域の中心に点P1,P2を設定する。その後、算出部33は、図9に示すように、水平方向に延びた基準線Hと外側表面21a,22a内に設定された点P1,P2との位置関係に応じた値を算出する。
ここで、点P1,P2は、外側表面21a,22aの各々の中心に位置する点(中心点)であり、詳しくは、矩形面である外側表面21a,22aの各々における対角線の交点である。
【0051】
本実施形態において、基準線Hと点P1,P2との位置関係に応じた値は、図9に示すように、水平方向に離れた2つの外側表面21a,22aの各々の点P1,P2と、水平方向に延びた基準線Hとの間の距離a,bである。距離aは、点P1から基準線Hに垂下する線分の長さと同じであり、距離bは、点P2から基準線Hに垂下する線分の長さと同じである。なお、距離a,bの実際の寸法は、記憶装置10Dから読み出される外側表面21a,22aに関する情報、詳しくは、外側表面21a,22aの寸法、及び建物20における外側表面21a,22aの位置関係の情報に基づいて算出される。
また、算出部33は、図9に示すように、点P1,P2の水平方向における距離Lも特定する。距離Lの実際の寸法は、距離a,bと同様、記憶装置10Dから読み出される外側表面21a,22aに関する情報に基づいて算出される。
【0052】
特定部34は、基準線Hと点P1,P2との位置関係に応じた値に基づき、外側表面21a,22aの傾斜度合いθ(図5参照)を特定する。具体的には、特定部34は、上述した式f1に対して、距離a,b,Lを代入することにより、対象面である外側表面21a,22aの傾斜度合いθを特定する。
なお、傾斜度合いを示す指標としては、式f1から求められる傾斜度合いθに限定されず、その他、点検を実施した各時点における傾斜度合いを比較することができ、その際に傾斜度合いの変化が分かるものであれば、傾斜度合いを示す指標として利用可能である。
【0053】
出力部35は、過去の点検時の傾斜度合いθ、及び、今回の点検時の傾斜度合いθの双方を、当該双方が対比可能な状態で出力する。過去の点検時の傾斜度合いθは、第1時点に撮影された撮影画像から特定される傾斜度合いθに相当し、記憶装置10Dに保存されており、記憶装置10Dから読み出されることによって今回の点検時の傾斜度合いθとともに出力される。今回の点検時の傾斜度合いθは、第1時点よりも後の第2時点に撮影された撮影画像から特定される傾斜度合いθである。
図5に示す例では、出力部35は、今回の点検時から1つ前の点検時(西暦2017年)を第1時点として、第1時点における傾斜度合いθ=+2/1000のデータを記憶装置10Dから読み出して、ユーザ端末100の画面に出力している。また、出力部35は、西暦2022年である今回の点検時を第2時点として、第2時点における傾斜度合いθ=+2/1000を結果画面D4に出力している。また、出力部35は、図5に示すように、第1時点及び第2時点の双方の傾斜度合いθを、当該双方が対比可能な状態で出力する。
なお、出力部35は、過去に実施した点検時の傾斜度合いθのデータを全て結果画面D4に表示してもよい。具体的には、図5に示す例のように、西暦2007年の竣工時点の傾斜度合いθ=+1/1000、及び2012年の過去時点の傾斜度合いθ=+1/1000を、結果画面D4に表示してもよい。
【0054】
また、出力部35は、建物20の竣工時点(例えば、西暦2007年)を第1時点として規定し、毎回の点検時において、竣工時点の傾斜度合いθを対比する対象として結果画面D4に常に表示させて、最新の傾斜度合いθと竣工時点の傾斜度合いθとを対比できるように、両時点の傾斜度合いθを表示してもよい。
【0055】
また、出力部35は、過去の点検時の傾斜度合いθ、及び、今回の点検時の傾斜度合いθの双方の差分を結果画面D4に表示してもよい。具体的には、図5に示すように、今回の点検時(西暦2022年)から1つ前の点検時である第1時点(西暦2017年)と、今回の点検時である第2時点(西暦2022年)との傾斜度合いθの差分を求め、その差分(図5では、+8/1000)を結果画面D4に出力してもよい。
なお、出力部35は、過去に実施した点検時の傾斜度合いθの差分のデータを全て結果画面D4に表示してもよい。具体的には、図5に示すように、竣工時点(西暦2007年)とその5年後の時点(西暦2012年)との傾斜度合いθの差分である0/1000を、竣工時点から5年後の時点(西暦2012年)と10年後の時点(西暦2017年)との傾斜度合いθの差分である+1/1000を、それぞれ、結果画面D4に出力してもよい。
【0056】
提示部36は、対象面を構成する部材の仕様に関する仕様情報を記憶装置10D(記憶部)から読み出して、その仕様情報に基づいて、対象面の撮影に関する支援情報をユーザに提示する。本実施形態においては、「対象面を構成する部材」とは、外壁パネル21,22である。「支援情報」としては、例えば、確認画面D1における点検箇所の指示、設置例提示画面D2における下げ振り23の設置方法に関する情報、及び撮影例提示画面D3における撮影例の画像及びガイドオブジェクト等が挙げられる。
【0057】
<点検フローについて>
次に、図10を参照しつつ、情報処理装置10を用いた点検フローについて説明する。以下に説明する点検フローは、本実施形態に係る建物の傾斜点検方法によって建物の傾斜状態を点検するための一連の処理の流れである。
【0058】
点検フローは、ユーザがユーザ端末100にて傾斜点検用アプリケーションを起動し、点検フロー開始用の操作を行うことを契機として開始される。点検フローの開始に際しては、まず、確認画面D1が表示される。ユーザは、確認画面D1を見て、今回の点検箇所を確認する。その後、ユーザ端末100には、図3に示す設置例提示画面D2が表示され、ユーザは、設置例提示画面D2に提示された設置例に倣って、対象面の一部又は対象面の周辺に対して、下げ振り23を設置する。その後、ユーザ端末100には、図4に示すように撮影例提示画面D3が表示され、ユーザは、撮影例提示画面D3に提示された撮影例に倣って、点検箇所で対象面の正面位置に立ち、対象面をその正面から撮影する。この際、ユーザは、撮影用のガイドオブジェクトを利用することで、対象面が適切なサイズにて撮影されるように撮影画角と対象面との位置関係を調整することができる。
【0059】
以上までの操作をユーザが行うと、点検フローの各工程が順次実施される。具体的には、まず、対象面の撮影画像がユーザ端末100からサーバ1に向けてネットワーク11を経由して送信される(S001)。サーバ1のプロセッサ10Aは、ユーザ端末100から送信された撮影画像を取得する(S002)。その後、プロセッサ10Aは、取得した撮影画像に対して補正処理を実行し、撮影画像を、対象面の法線方向から対象面を見た補正画像に変換する(S003)。
【0060】
次に、プロセッサ10Aは、下げ振り23の糸23bの延出方向に基づいて、図8に示すように、補正画像内に基準線V,Hを設定する(S004)。そして、プロセッサ10Aは、補正画像中の対象面内に点P1,P2、より詳しくは、外側表面21a,22aの各々の中心に点P1,P2を設定する(S005)。
次に、プロセッサ10Aは、図9に示すように、補正画像中の点P1,P2と水平方向に延びた基準線Hとの間の距離a,bを算出する(S006)。また、プロセッサ10Aは、補正画像中の点P1,P2の水平方向における距離Lを算出する。そして、プロセッサ10Aは、上述の式f1に距離a,b,Lを代入することで、対象面の傾斜度合いθを特定する(S007)。
【0061】
次に、プロセッサ10Aは、建物20の竣工時点を含む各時点の傾斜度合いθを、傾斜度合いθ同士を対比できる態様で表示するためのデータを生成する(S008)。具体的には、プロセッサ10Aは、過去の検査時の傾斜度合いθのデータを記憶装置10Dから読み出し、今回の検査時の傾斜度合いθとともにユーザ端末100に表示する比較データを生成する。
その後、プロセッサ10Aは、生成された比較データをユーザ端末100に送信する(S009)。そして、ユーザ端末100は、受信した比較データが示す各検査時点の傾斜度合いθを結果画面D4中に表示する(S010)。結果画面D4では、図5に示すように、過去の傾斜度合いθと今回の傾斜度合いθとが対比可能な状態で表示される。以上のステップを経て、点検フローが終了する。
【0062】
<本実施形態の有効性について>
以上までに説明したように、情報処理装置10によれば、カメラが搭載されたユーザ端末100を用いて撮影画像を取得することにより、外壁パネル21,22の外側表面21a,22aの傾斜度合いθを特定し、建物20の傾斜状態を点検することができる。すなわち、情報処理装置10によれば、ユーザ端末100を用いた通常の撮影方法で外壁パネル21,22の外側表面21a,22aを撮影することにより、建物20の傾斜状態を点検することができる。このように、情報処理装置10によれば、専門的なスキル及び専門機器を必要とせず、簡便な構成及び手順により建物20の傾斜状態を点検することができる。
これにより、ユーザは、建物20の傾斜状態を自ら点検することができ、また、傾斜度合いθが許容範囲を超えた場合等には、専門の点検員に対して詳細診断を迅速に依頼することができる。
【0063】
また、情報処理装置10では、第1時点に撮影された撮影画像から特定される傾斜度合いθ、及び、第1時点よりも後の第2時点に撮影された撮影画像から特定される傾斜度合いθの双方を、双方が対比可能な状態で出力する出力部35を備える。
上記の構成によれば、出力部35が、図5に示すように、過去の点検時(図5に示す例では、西暦2017年)を第1時点として、第1時点における傾斜度合いθ=+2/1000のデータを記憶装置10Dから読み出してユーザ端末100の画面に出力する。そして、出力部35は、今回の点検時(図5に示す例では、西暦2022年)を第2時点として、第2時点における傾斜度合いθ=+10/1000を結果画面D4に出力する。これにより、ユーザは、過去の検査時の傾斜度合いθと今回の検査時の傾斜度合いθの双方を比較することができ、建物20の傾斜状態を適切に点検することができる。
【0064】
また、情報処理装置10は、第1時点に撮影された撮影画像から特定される傾斜度合いθ、及び、第1時点よりも後の第2時点に撮影された撮影画像から特定される傾斜度合いθの双方の差分を出力する出力部35を備える。
上記の構成によれば、出力部35が、図5に示すように、過去の点検時(第1時点)と、今回の点検時(第2時点)との間における傾斜度合いθの差分(図5に示す例では、+8/1000)を結果画面D4に出力する。これにより、ユーザは、両時点の傾斜度合いθの差分を把握し、建物20の傾斜状態を適切に点検することができる。
【0065】
また、情報処理装置10において、第1時点は、建物20の竣工時点であってもよい。
上記の構成によれば、建物20の傾斜度合いθが初期状態にある時点、すなわち建物20の竣工時点を基準として、外壁パネル21,22の外側表面21a,22aの傾斜度合いθが特定される。これにより、ユーザは、建物の傾斜状態を適切に点検することができる。すなわち、毎回の点検時において、ユーザ端末100の結果画面D4には竣工時点の傾斜度合いθが表示されるので、ユーザは、初期の傾斜度合いθに対する点検時からの傾斜度合いθの経時変化を、点検が実施される度に把握することができる。
【0066】
また、情報処理装置10は、撮影画像に対して、対象面の法線方向から対象面を見た補正画像に変換する補正処理を実行する補正部32を備える。
上記の構成によれば、撮影画像に対して補正処理が実行され、補正された撮影画像(補正画像)から外壁パネル21,22の外側表面21a,22aの傾斜度合いθを、より正確に特定することができる。この結果、ユーザは、建物20の傾斜状態を適切に把握することができる。
【0067】
また、情報処理装置10において、算出部33は、図9に示すように、傾斜度合いθを特定するために必要な値として、2つの外壁パネル21,22の外側表面21a,22aの各々の点P1,P2と水平方向に延びた基準線Hとの間の距離a,bを、対象面毎に算出する。
上記の構成によれば、対象面の傾斜度合いθが、対象面毎に算出された距離a,bを用いて簡易な手法により、例えば、上述の式f1に代入することによって特定されるので、ユーザは、建物20の傾斜状態を適切に把握することができる。
【0068】
また、情報処理装置10は、外側表面21a,22a(対象面)を構成する部材、すなわち、外壁パネル21,22の仕様に関する仕様情報を記憶装置10Dから読み出して、その仕様情報に基づいて、外側表面21a,22aの撮影に関する支援情報をユーザに提示する提示部36を備える。
上記の構成によれば、ユーザは、支援情報に従って外壁パネル21,22の外側表面21a,22aを適切に且つスムーズに撮影することができる。
【0069】
また、本実施形態では、対象面が、建物20の外壁を構成する外壁パネル21,22の外側表面21a,22aである。
上記の構成によれば、寸法が既知である外壁パネル21,22の外側表面21a,22aを撮影することにより、図9に示すように、撮影画像内における基準線Hと点P1,P2との位置関係、より具体的には距離a,b,Lの各々の数値が明確となる。これにより、対象面である外側表面21a,22aの傾斜度合いθが精度よく特定されるので、ユーザは、建物20の傾斜状態を適切に点検することができる。
【0070】
<その他の実施形態について>
上記の実施形態では、算出部33は、図9に示すように、水平方向に離れた外側表面21a,22aの各々の中心点P1,P2と水平方向に延びた基準線Hとの間の距離a,bを算出した。ただし、これに限定されず、算出部33は、鉛直方向に離れた外壁パネルの外側表面の各々の点と、鉛直方向に延びた基準線Vとの間の距離を算出してもよい。すなわち、本発明の情報処理装置は、ユーザ端末の撮影画角等に応じて、鉛直方向に離れた複数の対象面、例えば、1階及び2階の外壁パネルの双方の外側表面の撮影画像に基づいて、対象面の傾斜度合いを特定してもよい。
【0071】
また、上記の実施形態では、対象面に設定される点P1,P2が、図8に示すように、外側表面21a,22aの各々の中心点であることとした。ただし、これに限定されず、点P1,P2は、外側表面21a,22a内における各々の位置が同じであれば、中心以外に位置してもよい。具体的には、外側表面21a,22aの各々において、4つの角の頂点のうちの1つの頂点を座標平面の原点として設定し、水平方向をX座標とし、鉛直方向をY座標としたとき、外側表面21a,22a内に位置する点P1,P2のXY座標が同じであればよい。より具体的には、例えば、外側表面21a内における点P1のXY座標が(10,20)とした場合、外側表面22a内における点P2のXY座標も(10,20)であればよい。
また、外壁パネルの外側表面21a,22aの表面形状に特徴点がある場合には、点P1,P2は、その特徴点に設定されてもよい。
【0072】
また、固定部23aは、気圧センサを有していてもよい。気圧センサは、固定部23aの絶対高さ、すなわち、建物20が建てられる地面(GL)に対する高さを測定する。これにより、建物20の経年による沈下量を検査することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 サーバ
10 情報処理装置
10A プロセッサ
10B メモリ
10C 通信用インターフェース
10D 記憶装置
11 ネットワーク
20 建物
21,22 外壁パネル
21a,22a 外側表面
23 下げ振り
23a 固定部
23b 糸
23c 錘
31 取得部
32 補正部
33 算出部
34 特定部
35 出力部
36 提示部
100 ユーザ端末
D1 選択画面
D2 設置例提示画面
D3 撮影例提示画面
D4 結果画面
H,V 基準線
a,b,L 距離
P1,P2 点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10