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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104427
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240729BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240729BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 451
B41J2/165 211
B41J2/01 401
B41J2/165 101
B41J2/165 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008623
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】森園 和也
(72)【発明者】
【氏名】新井 章文
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB15
2C056EB34
2C056EB38
2C056EC07
2C056EC17
2C056EC18
2C056EC22
2C056EC24
2C056EC26
2C056EC35
2C056EC36
2C056EC67
2C056FA10
2C056JA04
2C056JA13
2C056JA17
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB35
(57)【要約】
【課題】圧力センサの正常検査の際のインク消費量を抑える。
【解決手段】圧力センサ66は、インクヘッド40に設けられたダンパー65のインク室68の圧力を検出する。制御装置90は、インク室68の現在圧力P1を圧力センサ66から取得する現在圧力取得部102と、現在圧力P1から所定の変化圧力P10を引いた値を閾値S1に設定する閾値設定部104と、ノズル46からダンパー45内のインクを排出してダンパー45のインク室68を減圧させる減圧処理を実行する減圧処理実行部108と、減圧処理の間におけるインク室68の減圧圧力P2を圧力センサ66から取得する減圧圧力取得部110と、減圧圧力P2が閾値S1以下であるか否を判定する判定部112と、減圧圧力P2が閾値S1以下であるとき、圧力センサ66が正常あると判断する正常判断部114とを備えた。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを有するインクヘッドと、
前記インクヘッドにインクを供給するインク供給機構と、
制御装置と、
を備え、
前記インク供給機構は、
インクが収容されたインク収容容器と、
一端が前記インク収容容器に接続されたインク供給路と、
前記インク供給路の他端、および、前記ノズルと連通し、かつ、インクが貯留されるインク室を有するダンパーと、
前記インク室の圧力を検出する圧力センサと、
を備え、
前記制御装置は、
前記ダンパーの前記インク室の現在圧力を前記圧力センサから取得する現在圧力取得部と、
前記現在圧力から所定の変化圧力を引いた値を閾値に設定する閾値設定部と、
前記ノズルから前記ダンパー内のインクを排出して前記ダンパーの前記インク室を減圧する減圧処理を実行する減圧処理実行部と、
前記減圧処理の間における前記インク室の減圧圧力を前記圧力センサから取得する減圧圧力取得部と、
前記減圧圧力が前記閾値以下であるか否を判定する判定部と、
前記判定部によって前記減圧圧力が前記閾値以下であると判定されたとき、前記圧力センサが正常あると判断する正常判断部と、
を備えた、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記判定部によって前記減圧圧力が前記閾値より大きいと判定された経過時間が、所定の基準時間以上であるか否かを判定する時間判定部と、
前記時間判定部によって前記経過時間が前記基準時間以上であると判定されたとき、前記圧力センサに不具合が発生している可能性があると判断する不具合判断部と、
を備えた、請求項1に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記不具合判断部によって前記圧力センサに不具合が発生している可能性があると判断されたとき、前記圧力センサに不具合が発生している可能性があることを通知する通知部を備えた、請求項2に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記ノズルを覆うように前記インクヘッドに装着されるキャップと、
前記インクヘッドに対して前記キャップを相対的に昇降させる昇降機構と、
前記キャップに接続された吸引ポンプと、
を備え、
前記インク供給機構は、前記インク供給路に設けられた送液ポンプを備え、
前記制御装置は、前記送液ポンプを駆動させる送液駆動制御部を備え、
前記減圧処理実行部は、前記送液駆動制御部による制御によって送液された後、前記減圧処理として、前記インクヘッドに前記キャップを装着した状態で前記吸引ポンプを駆動させる吸引処理を実行する、請求項1から3までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記不具合判断部によって前記圧力センサに不具合が発生している可能性があると判断されたとき、前記送液ポンプおよび前記吸引ポンプを停止し、かつ、前記閾値を印刷時に設定される所定の印刷閾値に設定する不具合停止処理を実行する不具合停止処理部を備えた、請求項4に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記制御装置は、前記不具合停止処理の後、所定の送液時間だけ前記送液ポンプを駆動させる送液処理を実行する不具合送液処理部を備えた、請求項5に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記吸引ポンプは、開閉式であり、
前記制御装置は、前記不具合停止処理の後、前記吸引ポンプを開放させる開放処理を実行する不具合開放処理部を備えた、請求項5に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記制御装置は、前記不具合停止処理の後、前記キャップを前記インクヘッドから離間させた状態で前記吸引ポンプを駆動させる空吸引処理を実行する不具合空吸引処理部を備えた、請求項5に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記インク供給機構は複数であり、
前記現在圧力取得部は、複数の前記インク供給機構のそれぞれの前記インク室の前記現在圧力を取得し、
前記閾値設定部は、複数の前記インク供給機構のそれぞれに対して前記閾値を設定し、
前記減圧処理実行部は、複数の前記インク供給機構のそれぞれに対して、前記インク室を減圧させ、
前記減圧圧力取得部は、複数の前記インク供給機構のそれぞれの前記インク室の前記減圧圧力を取得し、
前記判定部は、複数の前記インク供給機構のそれぞれに対して、前記減圧圧力が前記閾値以下であるか否かを判定し、
前記正常判断部は、前記判定部によって複数の前記インク供給機構の全てにおいて前記減圧圧力が前記閾値以下であると判定されたとき、前記圧力センサが正常であると判断する、請求項1に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記減圧処理実行部は、前記減圧処理として、前記ノズルからインクを吐出させるフラッシング処理を実行する、請求項1から3までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、インクを吐出するインクヘッドにインクを供給するインク供給システムと、キャッピング装置とを備えたプリンタが開示されている。インク供給システムは、インクが収容されたインク容器と、インク容器とインクヘッドを接続するインク流路と、インク流路とインクヘッドとの間に配置され、一時的にインクが貯留されるインク室を有するダンパーとを備えている。インク流路には、送液ポンプが設けられている。インク室の圧力は、フィラーの位置に基づいて圧力センサによって検出される。キャッピング装置は、インクヘッドに着脱可能に装着されるキャップと、キャップに接続された吸引ポンプを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-128074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に開示されたプリンタに対して、キャップをインクヘッドに装着した状態において、送液ポンプを停止させ、かつ、吸引ポンプを駆動させる、いわゆるチョーククリーニングが行われる。チョーククリーニングでは、吸引ポンプによってインク流路のインクが吸引される。吸引ポンプの駆動および停止のタイミングは、圧力センサによる、ダンパーのインク室の圧力の検出に基づいて決定される。例えばインク室の圧力が所定の閾値より大きいときには吸引ポンプが駆動され、閾値以下になったタイミングで吸引ポンプが停止される。
【0005】
ところで、本願発明者は、圧力センサとしてインク室の圧力を数値で測定できるセンサを使用することを検討している。このような圧力センサにおいて、不具合が発生することがあり得る。例えば圧力センサに不具合が発生すると、ダンパーのインク室の圧力が正確に検出することができないことがあり得る。仮に圧力センサに不具合が発生した状態で圧力センサが使用されると、必要以上にインク室にインクが貯留されたり、インク室に貯留されるインクに不足が生じたりするなどの不具合が発生するおそれがあり得る。
【0006】
そこで、圧力センサが正常であるか否かを検査(以下、圧力センサの正常検査ともいう。)するために、例えばキャップをインクヘッドに装着させた状態で吸引ポンプを駆動させる吸引処理を用いることが考えられる。例えば吸引処理の間、圧力センサによってインク室の圧力を検出し、正しく当該圧力を検出しているか否かを判断する。このとき、吸引処理によるインク消費量は出来るだけ少ない方が好ましい。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧力センサの正常検査の際のインク消費量を抑えることが可能なインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インクを吐出するノズルを有するインクヘッドと、前記インクヘッドにインクを供給するインク供給機構と、制御装置と、を備えている。前記インク供給機構は、インクが収容されたインク収容容器と、一端が前記インク収容容器に接続されたインク供給路と、前記インク供給路の他端、および、前記ノズルと連通し、かつ、インクが貯留されるインク室を有するダンパーと、前記インク室の圧力を検出する圧力センサと、を備えている。前記制御装置は、現在圧力取得部と、閾値設定部と、減圧処理実行部と、減圧圧力取得部と、判定部と、正常判断部とを備えている。前記現在圧力取得部は、前記ダンパーの前記インク室の現在圧力を前記圧力センサから取得する。前記閾値設定部は、前記現在圧力から所定の変化圧力を引いた値を閾値に設定する。前記減圧処理実行部は、前記ノズルから前記ダンパー内のインクを排出して前記ダンパーの前記インク室を減圧する減圧処理を実行する。前記減圧圧力取得部は、前記減圧処理の間における前記インク室の減圧圧力を前記圧力センサから取得する。前記判定部は、前記減圧圧力が前記閾値以下であるか否を判定する。前記正常判断部は、前記判定部によって前記減圧圧力が前記閾値以下であると判定されたとき、前記圧力センサが正常あると判断する。
【0009】
上記インクジェットプリンタによれば、減圧処理の間、インク室のインク量が減少してインク室が減圧し、インク室の圧力が閾値以下になる。そのため、圧力センサから取得された減圧圧力が閾値以下であるとき、圧力センサは正確にインク室の圧力を検出しているため、圧力センサは正常であると判断することができる。減圧処理によって排出されたインクは、廃棄されるものであるため、減圧処理によるインク消費量は、出来るだけ少ない方が好ましい。上記インクジェットヘッドによれば、圧力センサから取得された減圧圧力と比較する閾値を、現在圧力を基準にして設定しているため、減圧処理の間に減圧圧力が閾値以下になるまでに要する時間を短くすることができる。その結果、減圧処理によるインク消費量を抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧力センサの正常検査の際のインク消費量を抑えることが可能なインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るプリンタを示す正面図である。
図2】キャリッジおよびインクヘッドの底面の構成を模式的に示す底面図である。
図3】実施形態に係るプリンタのブロック図である。
図4】インクヘッドとインク供給機構との関係を示す概念図である。
図5】インクヘッドおよびインク供給機構の構成を示す模式図である。
図6】インクヘッド、インク供給機構およびキャップユニットを示す正面図であり、キャップがインクヘッドから離間している状態を示す図である。
図7】インクヘッド、インク供給機構およびキャップユニットを示す正面図であり、キャップがインクヘッドに装着されている状態を示す図である。
図8】圧力センサの正常検査の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0013】
以下、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタともいう。)10について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタ10を示す正面図である。図2は、プリンタ10のキャリッジ17およびインクヘッド40の底面の構成を模式的に示す底面図である。図3は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)する方向である。図面中の符号Zは、昇降方向である。本実施形態では、昇降方向Zは上下方向である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0014】
プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。プリンタ10は、図1に示す媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5は例えばロール状の記録紙であり、いわゆるロール紙である。しかしながら、媒体5は、ロール状の記録紙に限定されない。例えば媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。また、媒体5は、スマートフォンケースなどの立体物であってもよい。
【0015】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体11と、プラテン13と、搬送機構20と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、ヘッド移動機構30と、インクヘッド40(図2参照)と、インク供給機構50(図4参照)と、キャップユニット70(図6参照)と、制御装置90とを備えている。
【0016】
図1に示すように、プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プリンタ本体11は、脚12によって支持されている。脚12は、プリンタ本体11の底面に設けられ、当該底面から下方に延びている。
【0017】
プラテン13は、媒体5を支持する。ここでは、媒体5は、プラテン13の上面に載置されている。プラテン13上において媒体5に対して印刷が行われる。プラテン13の上面は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。
【0018】
プラテン13に支持された媒体5は、搬送機構20によって副走査方向Xに搬送される。搬送機構20の構成は、特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつガイドレール15よりも下方に設けられ、媒体5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ21は、平面視においてキャリッジ17よりも後方に配置されている。グリットローラ22は、プラテン13に設けられ、外周形状が円柱状の部材である。グリットローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン13に埋設されている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。フィードモータ23は、例えばグリットローラ22に接続されている。
【0019】
なお、図1では、ピンチローラ21が2つ配置されているが、実際には、複数(例えば3つ以上)のピンチローラ21が主走査方向Yに並んで配置されている。また、図1では、グリットローラ22も2つ配置されているが、実際には、ピンチローラ21の下方(例えば真下)に配置されるようにして、複数のグリットローラ22が主走査方向Yに並んで配置されている。複数のグリットローラ22は、例えば主走査方向Yに延びたシャフト(図示せず)に設けられて連結されている。複数のグリットローラ22のうちの1つのグリットローラ22、または、上記シャフトにフィードモータ23が接続されている。
【0020】
ここでは、ピンチローラ21とグリットローラ22との間に媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動する。フィードモータ23の駆動によって、上記シャフトとグリットローラ22が回転する。このことで、プラテン13に支持された媒体5は、副走査方向Xに搬送される。
【0021】
図1に示すように、ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に摺動可能に設けられ、主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0022】
ヘッド移動機構30は、プラテン13に支持された媒体5に対して、キャリッジ17およびインクヘッド40(図2参照)を主走査方向Yに相対的に移動させる機構である。ここでは、ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド40を主走査方向Yに移動させる。ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。
【0023】
本実施形態では、図1に示すように、ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、スキャンモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部の周囲に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部の周囲に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が取り付け固定されている。右のプーリ31bには、スキャンモータ33が接続されている。
【0024】
ここでは、スキャンモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド40は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
【0025】
図2に示すように、インクヘッド40は、キャリッジ17に設けられている。インクヘッド40は、その底面を露出するように、キャリッジ17に支持されている。インクヘッド40の数は特に限定されない。本実施形態では、インクヘッド40の数は2つである。2つのインクヘッド40は、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0026】
なお、以下の説明では、2つのインクヘッド40について、左のインクヘッド40を第1インクヘッド41と称し、右のインクヘッド40を第2インクヘッド42と称することとする。インクヘッド40は、第1インクヘッド41と、第2インクヘッド42とを有している。ここでは、第1インクヘッド41および第2インクヘッド42に対する共通の説明の場合には、インクヘッド40という文言を適宜使用することとする。
【0027】
本実施形態では、第1インクヘッド41と第2インクヘッド42との配置は、いわゆるスタガー配置である。第1インクヘッド41と第2インクヘッド42とは、副走査方向Xにズレて配置されている。ここでは、第1インクヘッド41は、第2インクヘッド42よりも前方に配置されている。第1インクヘッド41の前端は、第2インクヘッド42の前端よりも前方に配置され、第1インクヘッド41の後端は、第2インクヘッド42の後端よりも前方に配置されている。ただし、第1インクヘッド41は、第2インクヘッド42よりも後方に配置されていてもよい。また、第1インクヘッド41と第2インクヘッド42との配置は、スタガー配置でなくてもよく、第1インクヘッド41と第2インクヘッド42とにおける副走査方向Xの位置が揃っていてもよい。
【0028】
インクヘッド40(詳しくは第1インクヘッド41および第2インクヘッド42)は、ノズル面45を有している。ノズル面45は、インクヘッド40の底面を構成している。各ノズル面45には、インクを吐出するノズル46が形成されている。ノズル46は、第1ノズル46aと、第2ノズル46bと、第3ノズル46cと、第4ノズル46dとを有している。第1ノズル46aは、ノズル面45に複数形成されており、複数の第1ノズル46aは副走査方向Xに並んで配列されている。第2ノズル46bは、ノズル面45に複数形成されており、複数の第2ノズル46bは副走査方向Xに並んで配列されている。同様に、第3ノズル46cは、ノズル面45に複数形成されており、複数の第3ノズル46cは副走査方向Xに並んで配列されており、第4ノズル46dは、ノズル面45に複数形成されており、複数の第4ノズル46dは副走査方向Xに並んで配列されている。
【0029】
ここでは、副走査方向Xに並んだ複数のノズル46の列のことをノズル列48という。ノズル列48のうち、複数の第1ノズル46aの列のことを第1ノズル列48aといい、複数の第2ノズル46bの列のことを第2ノズル列48bという。また、ノズル列48のうち、複数の第3ノズル46cの列のことを第3ノズル列48cといい、複数の第4ノズル46dの列のことを第4ノズル列48dという。各インクヘッド40は、4つのノズル列48(詳しくは、第1ノズル列48aと、第2ノズル列48bと、第3ノズル列48cと、第4ノズル列48d)を有している。ここでは、第1インクヘッド41と第2インクヘッド42とを合わせた合計のノズル列48の数は、8つである。ただし、各インクヘッド40におけるノズル列48の数は、特に限定されず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0030】
図4は、インクヘッド40とインク供給機構50との関係を示す概念図である。インク供給機構50は、インクヘッド40(ここではノズル46)にインクを供給する機構である。インク供給機構50は、インクヘッド40のノズル46に接続されている。ここでは、インク供給機構50は、インクヘッド40の第1ノズル46aにインクを供給する第1インク供給機構51と、インクヘッド40の第2ノズル46bにインクを供給する第2インク供給機構52と、インクヘッド40の第3ノズル46cにインクを供給する第3インク供給機構53と、インクヘッド40の第4ノズル46dにインクを供給する第4インク供給機構54とを有している。インク供給機構51~54は、第1インクヘッド41に接続され、かつ、第2インクヘッド42に接続されている。第1インク供給機構51~第4インク供給機構54の数は、それぞれ第1ノズル列48a~第4ノズル列48dの数と同じ2つである。すなわち、1つのインクヘッド40に4つのインク供給機構50が接続されている。インク供給機構50の数は、8つである。本実施形態では、インク供給機構51~54の構成は同じである。ただし、インク供給機構51~54のうちの一部は、他の一部と構成が異なっていてもよい。
【0031】
図5は、インクヘッド40およびインク供給機構50の構成を示す模式図である。図5に示すように、インク供給機構50は、インクタンク61と、インク供給路62と、バルブ63と、送液ポンプ64と、ダンパー65と、圧力センサ66とを有している。インクタンク61は、インクが収容されるものである。インクタンク61は、インク収容容器の一例である。インクタンク61は、例えばインクカートリッジであってもよいし、パウチ状のものであってもよい。
【0032】
インクタンク61に収容されているインクは、例えばプロセスカラーインク、および、特色インクのうちの1つのインクである。ここで、プロセスカラーインクには、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどが含まれる。特色インクは、プロセスカラーインク以外の色のインクである。特色インクには、例えばホワイトインク、クリアインク、グロスインク、プライマーインク、蛍光インク、メタリックインク、オレンジインク、レッドインク、バイオレットインク、ブルーインク、グリーンインクなどが含まれる。ただし、インクタンク61に収容されているインクの色は特に限定されない。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、上記インクは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型インクなどであってもよい。
【0033】
本実施形態では、図5に示すように、インクタンク61は、第1インクタンク61aと、第2インクタンク61bと、第3インクタンク61cと、第4インクタンク61dとを有している。第1インクタンク61aは、第1インク供給機構51に備えられており、第1ノズル46aに接続される。第2インクタンク61bは、第2インク供給機構52に備えられており、第2ノズル46bに接続されている。同様に、第3インクタンク61cは、第3インク供給機構53に備えられており、第3ノズル46cに接続される。第4インクタンク61dは、第4インク供給機構54に備えられており、第4ノズル46dに接続されている。なお、複数のインクタンク61(ここでは第1インクタンク61a~第4インクタンク61d)に収容されているインクの色は、異なっていてもよいし、少なくとも一部が同じであってもよい。本実施形態では、第1インクタンク61a~第4インクタンク61dは、それぞれ2つ設けられているが、当該2つの第1インクタンク61a~第4インクタンク61dにおいて、収容されているインクの色は、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0034】
インク供給路62は、インクタンク61と、インクヘッド40のノズル46とを接続する流路である。インク供給路62の一端はインクタンク61に接続され、インク供給路62の他端はインクヘッド40のノズル46に接続されている。インク供給路62の構成は特に限定されないが、インク供給路62は、例えば可撓性を有するチューブによって構成されている。インクタンク61内のインクは、インク供給路62を流れてインクヘッド40のノズル46に供給される。
【0035】
本実施形態では、インク供給路62は、第1インク供給路62aと、第2インク供給路62bと、第3インク供給路62cと、第4インク供給路62dとを有している。第1インク供給路62a~第4インク供給路62dは、それぞれ第1インク供給機構51~第4インク供給機構54に備えられている。第1インク供給路62aにおいて、一端は第1インクタンク61aに接続され、他端は第1ノズル46aに接続されている。第2インク供給路62bにおいて、一端は第2インクタンク61bに接続され、他端は第2ノズル46bに接続されている。第3インク供給路62cにおいて、一端は第3インクタンク61cに接続され、他端は第3ノズル46cに接続されている。また、第4インク供給路62dにおいて、一端は第4インクタンク61dに接続され、他端は第4ノズル46dに接続されている。
【0036】
バルブ63は、インク供給路62を開閉するものであり、インク供給路62の途中部分に設けられている。バルブ63の種類は特に限定されないが、ここではいわゆる電磁式のバルブである。本実施形態では、バルブ63は、第1バルブ63aと、第2バルブ63bと、第3バルブ63cと、第4バルブ63dとを有している。第1バルブ63a~第4バルブ63dは、それぞれ第1インク供給機構51~第4インク供給機構54に備えられている。ここでは、第1バルブ63a~第4バルブ63dは、それぞれ第1インク供給路62a~第4インク供給路62dに設けられ、第1インク供給路62a~第4インク供給路62dを開閉する。
【0037】
送液ポンプ64は、インク供給路62に設けられている。ここでは、送液ポンプ64は、バルブ63よりも下流側、すなわちノズル46側におけるインク供給路62の途中部分に設けられている。送液ポンプ64は、インクタンク61に収容されたインクをノズル46に供給すると共に、ノズル46からの吐出に適した圧力に調整するためのポンプである。送液ポンプ64は、駆動時、インクタンク61からノズル46に向かってインクを送液する。なお、送液ポンプ64の種類は特に限定されないが、送液ポンプ64は、例えばダイヤフラムポンプやチューブポンプなどである。
【0038】
本実施形態では、送液ポンプ64は、第1送液ポンプ64aと、第2送液ポンプ64bと、第3送液ポンプ64cと、第4送液ポンプ64dとを有している。第1送液ポンプ64a~第4送液ポンプ64dは、それぞれ第1インク供給機構51~第4インク供給機構54に備えられている。第1送液ポンプ64aは、第1インク供給路62aに設けられており、第1インクタンク61aから第1ノズル46aに向かってインクを送液する。第2送液ポンプ64bは、第2インク供給路62bに設けられており、第2インクタンク61bから第2ノズル46bに向かってインクを送液する。同様に、第3送液ポンプ64cは、第3インク供給路62cに設けられており、第3インクタンク61cから第3ノズル46cに向かってインクを送液する。第4送液ポンプ64dは、第4インク供給路62dに設けられており、第4インクタンク61dから第4ノズル46dに向かってインクを送液する。
【0039】
ダンパー65は、インクの圧力変動を緩和して、ノズル46のインクの吐出を安定させるものである。例えばダンパー65に流入するインクの流量(言い換えると、ダンパー65内の圧力)に応じて、送液ポンプ64の駆動が制御される。ダンパー65は、インクヘッド40のノズル46に接続されている。ここでは、ダンパー65は、インクヘッド40の上部に設けられている。
【0040】
本実施形態では、ダンパー65は、第1ダンパー65aと、第2ダンパー65bと、第3ダンパー65cと、第4ダンパー65dとを有している。第1ダンパー65a~第4ダンパー65dは、それぞれ第1インク供給機構51~第4インク供給機構54に備えられている。第1ダンパー65a~第4ダンパー65dは、それぞれ第1ノズル46a~第4ノズル46dに接続されている。第1ダンパー65a~第4ダンパー65dは、インクヘッド40の上方において並んで配置されている。
【0041】
なお、ダンパー65の構成は特に限定されない。本実施形態では、ダンパー65は、インクが一時的に貯留されるインク室68を有している。インク室68は、例えば貯留されるインクの量に応じて伸縮するように構成されている。ここでは、インク室68では、貯留されるインクの量に応じて圧力が変化する。例えばインク室68のインクの量が多くなると、インク室68が大きくなり、圧力が大きくなる。一方、インク室68のインクの量が少なくなると、インク室68が小さくなり、圧力が小さくなる。インク室68は、インク供給路62およびノズル46に連通している。図示は省略するが、インク室68には、インク供給路62に接続される流入口、および、ノズル46に接続される流出口が形成されている。
【0042】
本実施形態では、インク室68は、第1インク室68aと、第2インク室68bと、第3インク室68cと、第4インク室68dとを有している。第1インク室68a~第4インク室68dは、それぞれ第1ダンパー65a~第4ダンパー65dに設けられている。第1インク室68aは、第1インク供給路62aおよび第1ノズル46aに連通し、第2インク室68bは、第2インク供給路62bおよび第2ノズル46bに連通している。同様に、第3インク室68cは、第3インク供給路62cおよび第3ノズル46cに連通し、第4インク室68dは、第4インク供給路62dおよび第4ノズル46dに連通している。
【0043】
なお、本実施形態では、複数のダンパー65のうちの一部のダンパー65が一体的に形成されている。詳しくは、第1ダンパー65aと第2ダンパー65bが一体的に形成されており、第3ダンパー65cと第4ダンパー65dが一体的に形成されている。ここでは、第1ダンパー65aおよび第2ダンパー65bにおいて、1つの第1ダンパー本体69aが設けられており、1つの第1ダンパー本体69aに、第1インク室68aおよび第2インク室68bが形成されている。同様に、第3ダンパー65cおよび第4ダンパー65dにおいて、1つの第2ダンパー本体69bが設けられており、1つの第2ダンパー本体69bに、第3インク室68cおよび第4インク室68dが形成されている。ただし、複数のダンパー65(ここでは第1ダンパー65a~第4ダンパー65d)は、別体に形成されていてもよい。
【0044】
圧力センサ66は、ダンパー65内の圧力を検出するものである。詳しくは、圧力センサ66は、ダンパー65のインク室68の圧力を検出する。圧力センサ66は、例えばインク室68の大きさ(例えば伸縮の程度)に基づいてダンパー65のインク室68の圧力を検出する。ここでは、圧力センサ66は、インク室68の圧力の値を検出、すなわち測定するものである。圧力センサ66は、インク室68の圧力の数値を検出する。
【0045】
本実施形態では、圧力センサ66は、第1圧力センサ66aと、第2圧力センサ66bと、第3圧力センサ66cと、第4圧力センサ66dとを有している。第1圧力センサ66a~第4圧力センサ66dは、それぞれ第1インク供給機構51~第4インク供給機構54に備えられている。第1圧力センサ66a~第4圧力センサ66dは、それぞれ第1インク室68a~第4インク室68dの圧力を検出する。
【0046】
次に、キャップユニット70について説明する。図6図7は、インクヘッド40、インク供給機構50およびキャップユニット70を示す正面図である。図6では、キャップ71がインクヘッド40から離間している状態が示されている。図7では、キャップ71がインクヘッド40に装着している状態が示されている。図6に示すように、キャップユニット70は、キャップ71と、昇降機構72と、吸引路73と、吸引ポンプ74と、廃液タンク75とを有している。
【0047】
図7に示すように、キャップ71は、ノズル46(詳しくは、第1ノズル46a~第4ノズル46d)を覆うようにインクヘッド40に装着されるものである。1つのキャップ71が装着されるインクヘッド40の数は1つである。キャップ71の数は、インクヘッド40の数と同じであり、2つである。ここでは、第1インクヘッド41に装着されるキャップ71が1つ存在し、かつ、第2インクヘッド42に装着されるキャップ71が1つ存在する。2つのキャップ71は、スタガー配置された第1インクヘッド41と第2インクヘッド42の位置関係に対応するように配置されている。キャップ71は、上部が開口した箱状の形状を有している。本実施形態では、キャップ71がインクヘッド40に装着されたとき、キャップ71の上端部がノズル面45と接触する。キャップ71は、弾性変形可能なものである。そのため、キャップ71は、その上端部がインクヘッド40のノズル面45に接触したときに弾性変形することがあり得る。なお、キャップ71を形成する具体的な材料は、特に限定されない。本実施形態では、キャップ71は、ゴム製である。具体的には、キャップ71は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)またはブチルゴムによって形成されている。
【0048】
キャップ71内には、吸収体77が設けられている。吸収体77は、キャップ71に収容されている。吸収体77は、インクヘッド40のノズル46からキャップ71内にインクが吐出(または排出)されたとき、当該インクを受ける部材である。吸収体77が受けたインクは、吸収体77に吸収される。吸収体77は、キャップ71の上端よりも下方に配置されている。吸収体77を形成する材料は、インクを吸収するものであれば特に限定されない。ここでは、吸収体77は、多孔質の材料によって形成されている。例えば吸収体77は、ポリビニルアルコールから形成されたスポンジ(PVAスポンジ)である。
【0049】
図6および図7に示すように、昇降機構72は、インクヘッド40に対してキャップ71を相対的に昇降させる機構である。昇降機構72は、キャップ71(ここでは2つのキャップ71)を昇降方向Z(図1参照)に昇降させるように構成されている。昇降機構72は、インクヘッド40に対してキャップ71を装着させたり、離間させたりする機構である。昇降機構72は、図7に示すように、例えばキャップ71を上昇させることでインクヘッド40に装着させ、図6に示すように、キャップ71を下降させることでインクヘッド40から離間させるように構成されている。なお、本実施形態では、昇降機構72は、2つのキャップ71を同時に昇降させるように構成されているが、2つのキャップ71を個別に昇降させるように構成されてもよい。
【0050】
昇降機構72の構成は特に限定されない。本実施形態では、昇降機構72は、支持部材78と、昇降モータ79を有している。支持部材78は、例えば主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がった板状の部材であり、キャップ71を下方から支持する。支持部材78は、1つであり、2つのキャップ71をまとめて支持してもよい。支持部材78は複数であり、1つのキャップ71につき、1つの支持部材78が支持してもよい。昇降モータ79は、支持部材78に接続されている。ここでは、昇降モータ79が駆動することで、支持部材78が昇降する。この支持部材78の昇降に伴い、キャップ71が昇降する。キャップ71が昇降することで、インクヘッド40に対してキャップ71を装着させたり、離間させたりすることができる。
【0051】
吸引路73は、キャップ71に接続されている。ここでは、吸引路73の一端は、キャップ71の底面に接続されており、キャップ71内と連通している。1つのキャップ71につき、1つの吸引路73が設けられている。そのため、ここでの吸引路73の数は、キャップ71の数と同じ2つである。吸引路73の構成は特に限定されないが、吸引路73は、例えば可撓性を有するチューブによって構成されている。
【0052】
吸引ポンプ74は、キャップ71に接続されている。ここでは、吸引ポンプ74は、吸引路73の途中部分に設けられており、吸引路73を介してキャップ71に接続されている。吸引ポンプ74は、接続されたキャップ71内のインクや、接続されたキャップ71に装着されたインクヘッド40内のインクを吸引する。ここでは、1つのキャップ71につき、1つの吸引ポンプ74が接続されている。そのため、吸引ポンプ74の数は、キャップ71の数と同じ2つである。吸引ポンプ74の種類は特に限定されないが、例えば真空ポンプである。また吸引ポンプ74は、開閉式のポンプである。
【0053】
廃液タンク75は、キャップ71から吸引されたインクが排出されるものである。廃液タンク75は、吸引路73の他端に接続されている。廃液タンク75は、例えば1つであり、複数の吸引路73の他端に接続されている。図7に示すように、例えばキャップ71がインクヘッド40に装着された状態で吸引ポンプ74が駆動すると、インクヘッド40に接続されたインク供給路62内およびインク室68内の負圧よりも低い負圧をキャップ71内に形成するように構成されている。このことで、ノズル46(ここでは第1ノズル46a~第4ノズル46d)からインクが吸い出され、インクヘッド40内のインクがキャップ71に排出される。吸引ポンプ74に吸引されたキャップ71内のインクなどは、吸引路73を通って廃液タンク75に排出される。
【0054】
本実施形態では、図1に示すように、プリンタ10のプリンタ本体11の右端部には、操作パネル80が設けられている。操作パネル80には、機器状態を表示する表示画面81と、ユーザによって操作される入力キー82などが設けられている。
【0055】
次に、制御装置90について説明する。制御装置90は、印刷に関する制御、および、インクヘッド40内のインクを吸引する制御などを行う装置である。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、を備えている。制御装置90は、プリンタ本体11の内部に設けられている。ただし、制御装置90は、プリンタ本体11の外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介してプリンタ10の制御基板(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0056】
本実施形態では、図3に示すように、制御装置90は、搬送機構20(詳しくはフィードモータ23)と、ヘッド移動機構30(詳しくはスキャンモータ33)と、インクヘッド40(詳しくは第1インクヘッド41および第2インクヘッド42)と、バルブ63(詳しくは第1バルブ63a~第4バルブ63d)と、送液ポンプ64(詳しくは第1送液ポンプ64a~第4送液ポンプ64d)と、圧力センサ66(詳しくは第1圧力センサ66a~第4圧力センサ66d)と、キャップユニット70の昇降機構72(詳しくは昇降モータ79)と、キャップユニット70の吸引ポンプ74と、操作パネル80(詳しくは表示画面81および入力キー82(図1参照))に通信可能に接続されている。制御装置90は、搬送機構20、ヘッド移動機構30、インクヘッド40、バルブ63、送液ポンプ64、圧力センサ66、昇降機構72、吸引ポンプ74および操作パネル80を制御する。
【0057】
ところで、図5に示すインク供給機構50の圧力センサ66(詳しくは第1圧力センサ66a~第4圧力センサ66d)に対して不具合が発生することがあり得る。例えば圧力センサ66に不具合が発生すると、圧力センサ66は、ダンパー65のインク室68の圧力を正確に検出することができないことがあり得る。本実施形態では、圧力センサ66によって検出されたインク室68の圧力の数値に応じて、送液ポンプ64の駆動のタイミングが制御される。仮に圧力センサ66に不具合が発生した状態で圧力センサ66が使用され続けると、必要以上にインク室68にインクが貯留されたり、インク室68に貯留されるインクに不足が生じたりするなどの不具合が発生するおそれがあり得る。そこで本実施形態では、印刷やインクヘッド40に対するクリーニングなどを実施する前に、圧力センサ66に不具合が発生しているか否か、すなわち圧力センサ66が正常であるか否かの検査(以下、圧力センサ66の正常検査ともいう。)を行う。
【0058】
本実施形態では、圧力センサ66の正常検査は、プリンタ10の制御装置90による制御によって自動で行われる。圧力センサ66の正常検査を行うために、図3に示すように、制御装置90は、記憶部100と、現在圧力取得部102と、閾値設定部104と、送液駆動制御部106と、減圧処理実行部108と、減圧圧力取得部110と、判定部112と、正常判断部114と、時間判定部116と、不具合判断部118と、通知部120と、正常停止処理部122と、不具合停止処理部124と、不具合送液処理部126と、不具合開放処理部128と、不具合空吸引処理部130とを備えている。なお、制御装置90の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置90の各部は、1つまたは複数のプロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0059】
次に、圧力センサ66の正常検査の手順について、図8のフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、圧力センサ66の正常検査は、インクヘッド40の単位で行うことが可能である。例えば第1インクヘッド41に対応する圧力センサ66(言い換えると、第1インクヘッド41に接続されたインク供給機構51~54の圧力センサ66a~66d)と、第2インクヘッド42に対応する圧力センサ66(言い換えると、第2インクヘッド42に接続されたインク供給機構51~54の圧力センサ66a~66d)との何れか一方、または、両方の圧力センサ66の正常検査を選択的に行うことが可能である。なお、第1インクヘッド41に対応する圧力センサ66の正常検査と、第2インクヘッド42に対応する圧力センサ66の正常検査とは、同じ手順である。そのため、以下では、第1インクヘッド41と第2インクヘッド42とを区別せずに、1つのインクヘッド40に対応する、第1インク供給機構51~第4インク供給機構54のそれぞれの圧力センサ66の正常検査の手順について説明する。なお、図8のステップS101が実行される前において、キャップ71はインクヘッド40に装着されている状態である。
【0060】
まず図8のステップS101では、図3の現在圧力取得部102は、ダンパー65のインク室68の現在圧力P1を取得する。現在圧力P1は、印刷、および、インクヘッド40に対するクリーニングが実施される前におけるインク室68の圧力のことである。現在圧力P1は、後述の減圧処理が実行される前のインク室68の圧力、ここでは送液ポンプ64および吸引ポンプ74が停止している状態におけるインク室68の圧力である。本実施形態では、現在圧力取得部102は、インク室68の現在圧力P1を圧力センサ66(図5参照)から取得する。ここでは、例えば現在圧力取得部102は、圧力センサ66に対して取得信号を送信する。取得信号を受信した圧力センサ66は、インク室68の現在圧力P1を測定して制御装置90に送信する。現在圧力取得部102は、圧力センサ66からの現在圧力P1を受信することで取得する。本実施形態では、現在圧力取得部102は、インクヘッド40に接続された複数のインク供給機構50のそれぞれのインク室68の現在圧力P1を圧力センサ66から取得する。詳しくは、現在圧力取得部102は、インクヘッド40に接続された第1インク供給機構51~第4インク供給機構54の第1インク室68a~第4インク室68dのそれぞれの現在圧力P1を、それぞれ第1圧力センサ66a~第4圧力センサ66dから取得する。なお、第1インク室68a~第4インク室68dのそれぞれの現在圧力P1の値は異なることがあり得る。現在圧力取得部102によって取得された現在圧力P1は、図3の記憶部100に記憶される。
【0061】
次に、図8のステップS103では、図3の閾値設定部104は、圧力センサ66の正常検査をするための閾値S1を設定する。閾値設定部104は、現在圧力P1に基づいて閾値S1を設定する。ここでは、閾値設定部104は、現在圧力P1から所定の変化圧力P10を引いた値を閾値S1に設定する。すなわち、閾値S1=現在圧力P1-変化圧力P10である。ここで、変化圧力P10は、固定の値であり、図3の記憶部100に予め記憶されている。変化圧力P10の具体的な数値は特に限定されないが、例えば0.5kPaである。なお、本実施形態では、閾値S1は、インクヘッド40に接続された複数のインク供給機構50のそれぞれに対して設定されるものである。すなわち、インクヘッド40に接続された第1インク供給機構51~第4インク供給機構54における第1圧力センサ66a~第4圧力センサ66dによって取得された現在圧力P1に対して、それぞれ変化圧力P10を引いた値を閾値S1に設定する。なお、閾値設定部104によって設定された閾値S1(ここでは、インク供給機構51~54のそれぞれに対応した閾値S1)は、図3の記憶部100に記憶される。
【0062】
次に、図8のステップS105では、図3の送液駆動制御部106は、送液ポンプ64の駆動を開始する。本実施形態では、送液駆動制御部106は、インクヘッド40に接続された複数のインク供給機構50の送液ポンプ64を駆動させる。詳しくは、送液駆動制御部106は、インクヘッド40に接続された第1インク供給機構51~第4インク供給機構54の第1送液ポンプ64a~第4送液ポンプ64dを同時に駆動させる。なお、ステップS105では、インクヘッド40に接続された複数のインク供給機構50のバルブ63(ここでは、第1バルブ63a~第4バルブ63d)(図5参照)は、開放された状態にする。送液駆動制御部106によって送液ポンプ64が駆動されることで、インク供給機構50においてインクタンク61に収容されたインクは、インク供給路62を通ってダンパー65のインク室68に流れることになる。そして、インク室68におけるインク量が増えるため、インク室68の圧力が徐々に大きくなる。
【0063】
次に、図8のステップS107では、図3の減圧処理実行部108は、減圧処理を開始する。ここでは、送液ポンプ64が駆動している状態、すなわちインクタンク61内のインクがインクヘッド40に向かって送液されている状態で、減圧処理が実行される。減圧処理実行部108は、ノズル46からダンパー65内のインクを排出して、ダンパー65のインク室68(ここでは、第1インク室68a~第4インク室68d)を減圧する減圧処理を実行する。
【0064】
本実施形態では、減圧処理実行部108は、減圧処理として吸引処理を実行することで、インク室68を減圧する。減圧処理実行部108は、送液駆動制御部106による制御の後(すなわち、送液ポンプ64の駆動を開始した後)、図7に示すように、インクヘッド40にキャップ71を装着した状態で、吸引ポンプ74を駆動させて吸引処理を実行する。ここでは、図6に示すように、例えばキャップ71がインクヘッド40から離間している場合には、昇降機構72によってキャップ71を上昇させるように昇降機構72を制御する。このことで、キャップ71がインクヘッド40に接近し、図7に示すように、ノズル46(ここでは、第1ノズル46a~第4ノズル46d)を覆うようにインクヘッド40に装着される。
【0065】
本実施形態では、減圧処理実行部108によって吸引処理が実行されることで、インク室68内のインクがノズル46から吸引され、キャップ71内に排出される。このように吸引ポンプ74によってインクが吸引されることで、インク室68に一時的に貯留されているインク量が減少するため、インク室68の圧力は徐々に小さくなる。なお、本実施形態では、図7に示すように、第1ノズル46a~第4ノズル46dがキャップ71で覆われた状態で、吸引ポンプ74が駆動されるため、吸引処理によって第1インク室68a~第4インク室68dのインク量が減少して、圧力が小さくなる。なお、本実施形態では、吸引処理によってインク室68の圧力が、閾値S1を下回ったときに、送液ポンプ64が駆動されて送液を行う。一方、インク室68の圧力が、閾値S1を上回ったときに、送液ポンプ64が停止する。
【0066】
このように減圧処理実行部108によって減圧処理(ここでは吸引処理)が実行されている間において、図8のステップS109が実行される。ステップS109では、図3の減圧圧力取得部110は、インク室68の減圧圧力P2を取得する。この減圧圧力P2とは、減圧処理(ここでは吸引処理)の間におけるインク室68の圧力のことである。減圧圧力取得部110は、インク室68の減圧圧力P2を圧力センサ66から取得する。なお、減圧圧力P2を圧力センサ66から取得する手順は、例えばステップS101において現在圧力P1を圧力センサ66から取得する手順と同じである。本実施形態では、減圧圧力取得部110は、インクヘッド40に接続された複数のインク供給機構50のそれぞれのインク室68の減圧圧力P2を圧力センサ66から取得する。詳しくは、減圧圧力取得部110は、インクヘッド40に接続された第1インク供給機構51~第4インク供給機構54の第1インク室68a~第4インク室68dの減圧圧力P2を、それぞれ第1圧力センサ66a~第4圧力センサ66dから取得する。なお、第1インク室68a~第4インク室68dのそれぞれの減圧圧力P2の値は異なることがあり得る。減圧圧力取得部110によって取得された減圧圧力P2は、図3の記憶部100に記憶される。
【0067】
次に、図8のステップS111では、図3の判定部112は、減圧圧力P2が閾値S1以下であるか否かを判定する。判定部112によって減圧圧力P2が閾値S1以下であると判定されたとき、ステップS113に進む。一方、判定部112によって減圧圧力P2が閾値S1よりも大きいと判定されたとき、ステップS117に進む。なお、本実施形態では、図4に示すように、インクヘッド40には、複数のインク供給機構50(詳しくは、第1インク供給機構51~第4インク供給機構54)が接続されている。この場合、判定部112は、複数のインク供給機構50のそれぞれに対して、減圧圧力P2が閾値S1以下であるか否かを判定する。ここでは、判定部112は、第1インク供給機構51~第4インク供給機構54のそれぞれに対して、減圧圧力P2が閾値S1以下であるか否かを判定する。そして、判定部112によって複数のインク供給機構50(第1インク供給機構51~第4インク供給機構54)の全てにおいて減圧圧力P2が閾値S1以下であると判定されたとき、図8のステップS113に進む。一方、判定部112によって、複数のインク供給機構50のうちの何れかの減圧圧力P2が閾値S1よりも大きいと判定されたときには、図8のステップS117に進む。
【0068】
ステップS113では、図3の正常判断部114は、圧力センサ66が正常であると判断する。ここでは、正常判断部114は、判定部112によって減圧圧力P2が閾値S1以下であると判定されたとき、圧力センサ66が正常であると判断する。上述のように、吸引処理が実行されるとインク室68からインクが吸引されるため、インク室68の減圧圧力P2が小さくなり、閾値S1以下となる。そのため、圧力センサ66が正常の場合には、減圧圧力P2を正確に検出することができるため、圧力センサ66から取得された減圧圧力P2は閾値S1以下になる。よって、圧力センサ66から取得された減圧圧力P2が閾値S1以下になることで、圧力センサ66が正常であると判断される。
【0069】
なお、本実施形態のように、インクヘッド40に複数のインク供給機構50が接続されている場合、正常判断部114は、複数のインク供給機構50(ここでは、第1インク供給機構51~第4インク供給機構54)の全てにおいて減圧圧力P2が閾値S1以下のとき、圧力センサ66(ここでは、第1圧力センサ66a~第4圧力センサ66d)が正常であると判断する。
【0070】
このように圧力センサ66が正常であると判断された後、図8のステップS115では、図3の正常停止処理部122は、正常停止処理を実行する。本実施形態では、正常停止処理部122は、正常停止処理として、吸引ポンプ74の駆動を停止することで吸引処理を終了することを行う。また、正常停止処理部122は、正常停止処理として、送液ポンプ64(ここでは、第1送液ポンプ64a~第4送液ポンプ64d)の駆動を停止する。このことで、インクタンク61内のインクの供給が停止する。なお、正常停止処理部122は、バルブ63(ここでは、第1バルブ63a~第4バルブ63d)を閉鎖するように制御してもよい。
【0071】
このように、正常停止処理が終了した後、圧力センサ66の正常検査が終了して、通常のプリンタ10の動作に移行される。例えば通常のプリンタ10の動作として、キャップ71をインクヘッド40に装着させた状態で、送液ポンプ64を駆動させずに吸引ポンプ74を駆動させるチョーククリーニングが実行される。
【0072】
上述のように、図8のステップS111において、判定部112によって減圧圧力P2が閾値S1よりも大きいと判定されたとき、ステップS117に進む。本実施形態のように、インクヘッド40に複数のインク供給機構50が接続されている場合には、判定部112によって、複数のインク供給機構50のうちの何れかの減圧圧力P2が閾値S1よりも大きい場合には、ステップS117に進む。ステップS117では、図3の時間判定部116は、判定部112によって減圧圧力P2が閾値S1よりも大きいと判定され続けた経過時間T1が、所定の基準時間T2以上であるか否かを判定する。ここで、経過時間T1とは、減圧圧力P2が閾値S1よりも大きいと判定されている間に、減圧処理(ここでは吸引処理)が実行されている時間のことである。経過時間T1とは、例えばステップS107において、吸引ポンプ74の駆動が開始されてからの経過時間のことである。本実施形態では、制御装置90は、吸引処理が実行されている経過時間T1を計測するように構成されている。
【0073】
上記の基準時間T2とは、固定された値であり、図3の記憶部100に予め記憶された数値である。基準時間T2とは、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断する基準となる時間である。基準時間T2は、減圧処理によってインク室68のインクが十分に排出されるために要する時間(ここでは、吸引処理によってインク室68のインクが十分に吸引されるために要する時間)であり、インク室68の大きさや、吸引ポンプ74の駆動力に応じて適宜に設定される値である。基準時間T2とは、減圧処理(ここでは吸引処理)によって、インク室68の圧力が、上記の閾値S1以下になるまでに要する時間を基準にして設定される値である。基準時間T2は、例えば吸引処理によって、インク室68の圧力が閾値S1以下になるまでに要する時間の1/2である。
【0074】
図8のステップS117において、時間判定部116によって、経過時間T1が基準時間T2未満である判定された場合、ステップS109に戻り、インク室68の減圧圧力P2を再び取得する。一方、ステップS117において、時間判定部116によって、経過時間T1が基準時間T2以上であると判定されたとき、図8のステップS119に進む。
【0075】
ステップS119では、図3の不具合判断部118は、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断する。不具合判断部118は、時間判定部116によって経過時間T1が基準時間T2以上であると判定されたとき、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断する。上述のように、吸引処理が実行されるとインク室68からインクが吸引されるため、インク室68の減圧圧力P2が小さくなり、閾値S1以下となる。ここで圧力センサ66に不具合が発生している場合には、減圧圧力P2を正確に検出することができないため、圧力センサ66から取得された減圧圧力P2は閾値S1よりも大きいままになる。よって、圧力センサ66から取得された減圧圧力P2が閾値S1よりも大きい状態で基準時間T2だけ経過した場合には、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断される。なお、ここで、「圧力センサ66に不具合が発生している可能性がある」としているのは、減圧圧力P2が閾値S1よりも大きい状態のままになる要因として、圧力センサ66の不具合の他に、例えば吸引ポンプ74の不具合による吸引不良が考えられるからである。
【0076】
なお、本実施形態のように、インクヘッド40に複数のインク供給機構50が接続されている場合、不具合判断部118は、複数のインク供給機構50(ここでは、第1インク供給機構51~第4インク供給機構54)のうち、減圧圧力P2が閾値S1よりも大きいと判定されたインク供給機構50の圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断する。
【0077】
このように圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断された後、図8のステップS121では、図3の不具合停止処理部124は、不具合停止処理を実行する。本実施形態では、不具合停止処理部124は、不具合停止処理として、吸引ポンプ74の駆動を停止することで吸引処理を終了することを行う。また、不具合停止処理部124は、不具合停止処理として、送液ポンプ64(ここでは、第1送液ポンプ64a~第4送液ポンプ64d)の駆動を停止する。このことで、インクタンク61内のインクの供給が停止する。更に、不具合停止処理部124は、不具合停止処理として、閾値S1を変更する。ここでは、不具合停止処理部124は、印刷時または印刷待機時に設定される所定の印刷閾値S2に、閾値S1を設定する。印刷閾値S2は、図3の記憶部100に予め記憶された値である。印刷閾値S2の具体的な数値は特に限定されないが、例えば-2.2kPa~-2.1kPaの範囲内の数値である。
【0078】
次に、図8のステップS123では、後処理が実行される。ここで、後処理とは、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断された後に行われる処理のことである。本実施形態では、後処理として、送液処理と、開放処理と、空吸引処理が実行される。
【0079】
ここでは、図3の不具合送液処理部126は、所定の送液時間T3だけ送液ポンプ64(具体的には、第1送液ポンプ64a~第4送液ポンプ64d)を駆動させる送液処理を実行する。不具合送液処理部126は、送液ポンプ64の駆動を開始し、所定の送液時間T3だけ待機する。送液時間T3だけ待機した後、不具合送液処理部126は、送液ポンプ64の駆動を停止する。送液時間T3は、図3の記憶部100に予め記憶された値であり、固定された値である。送液時間T3の具体的な数値は特に限定されないが、例えば5秒である。
【0080】
図3の不具合開放処理部128は、吸引ポンプ74を開放させる開放処理を実行する。図3の不具合空吸引処理部130は、キャップ71をインクヘッド40から離間させた状態で吸引ポンプ74を駆動させる空吸引処理を実行する。ここでは、空吸引処理を実行する前において、図7に示すように、キャップ71はインクヘッド40に装着された状態である。そのため、不具合空吸引処理部130は、キャップ71を下降させるように昇降機構72を制御する。このことによって、図6に示すように、インクヘッド40に対してキャップ71が下方に移動し、キャップ71がインクヘッド40から下方に離間した状態になる。このような状態で、不具合空吸引処理部130は、所定の吸引時間T4だけ、吸引ポンプ74を駆動する。吸引時間T4は、図3の記憶部100に予め記憶されており、固定された値である。吸引時間T4は、上記の送液時間T3よりも長い時間であり、例えば20秒である。吸引ポンプ74を駆動することで、キャップ71に排出されたインクが吸引される。吸引ポンプ74によって吸引されたインクは、吸引路73を通って廃液タンク75に排出される。吸引時間T4だけ吸引ポンプ74が駆動された後、不具合空吸引処理部130は、吸引ポンプ74の駆動を停止する。その後、不具合空吸引処理部130は、キャップ71を上昇させるように昇降機構72を制御して、図7に示すように、キャップ71をインクヘッド40に装着させる。
【0081】
なお、本実施形態では、後処理として、送液処理、開放処理、空吸引処理の順に実行されている。ただし、送液処理は、開放処理の後に実行されてもよいし、空吸引処理の後に実行されてもよい。開放処理は、空吸引処理の後に実行されてもよい。
【0082】
次に、図8のステップS125では、図3の通知部120は、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があることをユーザに通知する。ここでは、通知部120は、判定部112によって減圧圧力P2が閾値S1よりも大きいと判定されたときの減圧圧力P2を検出した圧力センサ66を特定して通知する。
【0083】
本実施形態では、通知部120は、操作パネル80の表示画面81(図1参照)に、圧力センサ66に不具合が発生している可能性がある旨のメッセージを表示することで、ユーザに通知してもよい。このとき、通知部120は、第1圧力センサ66a~第4圧力センサ66dのうちのどの圧力センサ66に不具合が発生している可能性があるかが分かるように通知してもよい。なお、通知部120がユーザに通知する具体的な方法は特に限定されない。例えばプリンタ10には、図示しないブザーが設けられており、通知部120は、ブザーを鳴らすように制御することで、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があることをユーザに通知してもよい。また例えばプリンタ10には、LEDなどの発光部(図示せず)が設けられており、通知部120は、発光部を発光させるように制御することで、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があることをユーザに通知してもよい。
【0084】
なお、通知部120によって通知された後、ユーザはサービスマンに連絡をし、サービスマンは、プリンタ10に対してメンテナンスを実施する。このとき、圧力センサ66に不具合が発生している場合には、サービスマンは、不具合が発生している圧力センサ66を交換する。このように、サービスマンによるメンテンナンスが実施された後、ユーザは、プリンタ10を使用して媒体5に印刷を行う。
【0085】
以上、本実施形態では、プリンタ10は、インクを吐出するノズル46を有するインクヘッド40(図2参照)と、インクヘッド40にインクを供給するインク供給機構50(図4参照)と、制御装置90(図1参照)とを備えている。図5に示すように、インク供給機構50は、インクが収容されたインクタンク61と、一端がインクタンク61に接続されたインク供給路62と、インク供給路62の他端、および、ノズル46と連通し、かつ、インクが貯留されるインク室68を有するダンパー65と、インク室68の圧力を検出する圧力センサ66とを備えている。図3に示すように、制御装置90は、現在圧力取得部102と、閾値設定部104と、減圧処理実行部108と、減圧圧力取得部110と、判定部112と、正常判断部114とを備えている。現在圧力取得部102は、図8のステップS101において、ダンパー65のインク室68の現在圧力P1を圧力センサ66から取得する。閾値設定部104は、図8のステップS103において、現在圧力P1から所定の変化圧力P10を引いた値を閾値S1に設定する。減圧処理実行部108は、図8のステップS107において、ノズル46からダンパー65(詳しくはインク室68)内のインクを排出してダンパー65のインク室68を減圧する減圧処理を実行する。減圧圧力取得部110は、図8のステップS109において、減圧処理の間におけるインク室68の減圧圧力P2を圧力センサ66から取得する。判定部112は、図8のステップS111において、減圧圧力P2が閾値S1以下であるか否を判定する。正常判断部114は、判定部112によって減圧圧力P2が閾値S1以下であると判定されたとき、図8のステップS113において、圧力センサ66が正常あると判断する。
【0086】
本実施形態では、減圧処理の間、インク室68のインク量が減少してインク室68が減圧し、インク室68の圧力が閾値S1以下になる。そのため、圧力センサ66から取得された減圧圧力P2が閾値S1以下であるとき、圧力センサ66は正確にインク室68の圧力を検出しているため、圧力センサ66は正常であると判断することができる。減圧処理によって排出されたインクは、廃棄されるものであるため、減圧処理によるインク消費量は、出来るだけ少ない方が好ましい。本実施形態では、圧力センサ66から取得された減圧圧力P2と比較する閾値S1を、現在圧力P1を基準にして設定しているため、減圧処理の間に減圧圧力P2が閾値S1以下になるまでに要する時間を短くすることができる。その結果、減圧処理によるインク消費量を抑えることができる。
【0087】
本実施形態では、プリンタ10は、図7に示すように、ノズル46を覆うようにインクヘッド40に装着されるキャップ71と、インクヘッド40に対してキャップ71を相対的に昇降させる昇降機構72と、キャップ71に接続された吸引ポンプ74と、を備えている。インク供給機構50は、インク供給路62に設けられた送液ポンプ64を備えている。制御装置90は、図8のステップS105において、送液ポンプ64を駆動させる送液駆動制御部106(図3参照)を備えている。減圧処理実行部108は、送液駆動制御部106による制御によって送液された後、減圧処理として、インクヘッド40にキャップ71を装着した状態で吸引ポンプ74を駆動させる吸引処理を実行する。このように、減圧処理として吸引処理を実行することで、インク室68内のインクが吸引ポンプ74によって吸引されるため、インク室68のインク量が減少して、インク室68の圧力が閾値S1以下になる。よって、減圧処理として吸引処理が実行されたときであっても、圧力センサ66から取得された減圧圧力P2が閾値S1以下であるとき、圧力センサ66は正確にインク室68の圧力を検出しているため、圧力センサ66は正常であると判断することができる。
【0088】
本実施形態では、図3に示すように、制御装置90は、時間判定部116と、不具合判断部118とを備えている。時間判定部116は、図8のステップS117において、判定部112によって減圧圧力P2が閾値S1より大きいと判定された経過時間T1が、所定の基準時間T2以上であるか否かを判定する。不具合判断部118は、時間判定部116によって経過時間T1が基準時間T2以上であると判定されたとき、図8のステップS119において、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断する。経過時間T1が長い程、減圧処理(ここでは吸引処理)の時間が長くなり、インク消費量が多くなる。そのため、経過時間T1が基準時間T2以上となったタイミングで、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断することで、圧力センサ66に不具合が発生している場合であっても、減圧処理のときのインク消費量を抑えることができる。
【0089】
本実施形態では、図4に示すように、インク供給機構50は複数である。現在圧力取得部102は、図8のステップS101において、複数のインク供給機構50のそれぞれのインク室68の現在圧力P1を取得する。閾値設定部104は、図8のステップS103において、複数のインク供給機構50のそれぞれに対して閾値S1を設定する。減圧処理実行部108は、図8のステップS107において、複数のインク供給機構50のそれぞれに対して、インク室68を減圧させる。減圧圧力取得部110は、図8のステップS109において、複数のインク供給機構50のそれぞれのインク室68の減圧圧力P2を取得する。判定部112は、図8のステップS111において、複数のインク供給機構50のそれぞれに対して、減圧圧力P2が閾値S1以下であるか否かを判定する。正常判断部114は、判定部112によって複数のインク供給機構50の全てにおいて減圧圧力P2が閾値S1以下であると判定されたとき、図8のステップS113において、圧力センサ66が正常であると判断する。このように、1つのインクヘッド40に対して複数のインク供給機構50が接続されている場合には、複数のインク供給機構50の全てにおいて減圧圧力P2が閾値S1以下のときに、全ての圧力センサ66が正常であると判断できる。そのため、1つのインクヘッド40に複数のインク供給機構50が接続されている場合であっても、圧力センサ66に不具合が発生している状態で通常の動作に移行することを防ぐことができる。
【0090】
本実施形態では、図3に示すように、制御装置90は、通知部120を備えている。通知部120は、不具合判断部118によって圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断されたとき、図8のステップS125のように、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があることを通知する。このように、通知部120によって、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があることを通知されることで、ユーザは、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があることを把握し易くすることができる。
【0091】
本実施形態では、図3に示すように、制御装置90は、不具合停止処理部124を備えている。不具合停止処理部124は、不具合判断部118によって圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断されたとき、図8のステップS121のように、送液ポンプ64および吸引ポンプ74を停止し、かつ、閾値S1を印刷時に設定される所定の印刷閾値S2に設定する不具合停止処理を実行する。このように、送液ポンプ64および吸引ポンプ74が停止されるため、圧力センサ66に不具合が発生している可能性があると判断された後におけるインク消費量を抑えることができる。
【0092】
本実施形態では、制御装置90は、不具合送液処理部126(図3参照)を備えている。不具合送液処理部126は、不具合停止処理の後、図8のステップS123の後処理として、所定の送液時間T3だけ送液ポンプ64を駆動させる送液処理を実行する。圧力センサ66の正常検査のとき、インク供給機構50のインク供給路62内のインクが吸引された状態になりうる。そのため、送液処理を実行することでインク供給路62にインクが満たされた状態にすることができる。
【0093】
本実施形態では、吸引ポンプ74は、開閉式である。制御装置90は、不具合開放処理部128(図3参照)を備えている。不具合開放処理部128は、不具合停止処理の後、図8のステップS123の後処理として、吸引ポンプ74を開放させる開放処理を実行する。圧力センサ66の正常検査のとき、吸引ポンプ74によってインクが吸引されることで、キャップ71内の圧力が想定以上に負圧状態になり、キャップ71がインクヘッド40から離間し難くなることがあり得る。そのため、開放処理を実行して吸引ポンプ74を開放させることで、キャップ71内の圧力を正常の値に戻すことができ、キャップ71をインクヘッド40から離間し易くすることができる。
【0094】
本実施形態では、制御装置90は、不具合空吸引処理部130(図3参照)を備えている。不具合空吸引処理部130は、不具合停止処理の後、図8のステップS123の後処理として、キャップ71をインクヘッド40から離間させた状態で吸引ポンプ74を駆動させる空吸引処理を実行する。圧力センサ66の正常検査のとき、インクヘッド40のノズル面45にインクが付着したり、キャップ71内にインクが溜まったりすることがあり得る。そのため、空吸引処理を実行することで、ノズル面45に付着したインクを除去したり、キャップ71内のインクを吸引したりすることができる。
【0095】
なお、本実施形態では、図8のステップS107において、減圧処理実行部108は、減圧処理として吸引処理を実行していた。しかしながら、減圧処理実行部108は、減圧処理としてフラッシング処理を実行してもよい。ここで、フラッシング処理とは、インクヘッド40のノズル46からインクを吐出させる処理のことをいう。ここでは、減圧処理実行部108は、ノズル46からキャップ71にインクを吐出させることでフラッシング処理を実行する。減圧処理実行部108は、インクヘッド40の真下にキャップ71が配置されている状態で、ノズル46からキャップ71にインクを吐出させる。なお、フラッシング処理におけるインクの吐出先は、キャップ71に限定されず、例えばキャップ71と異なる容器状のフラッシングステージ(図示せず)であってもよい。
【0096】
このように、減圧処理としてフラッシング処理を実行した場合、ノズル46からインクが吐出されることでインク室68のインク量が減少して、インク室68の圧力が閾値S1以下になる。よって、減圧処理としてフラッシング処理が実行されたときであっても、圧力センサ66から取得された減圧圧力P2が閾値S1以下であるとき、圧力センサ66は正確にインク室68の圧力を検出しているため、圧力センサ66は正常であると判断することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
40 インクヘッド
46 ノズル
50 インク供給機構
61 インクタンク
62 インク供給路
64 送液ポンプ
65 ダンパー
66 圧力センサ
68 インク室
70 キャップユニット
71 キャップ
72 昇降機構
74 吸引ポンプ
90 制御装置
102 現在圧力取得部
104 閾値設定部
106 送液駆動制御部
108 減圧処理実行部
110 減圧圧力取得部
112 判定部
114 正常判断部
116 時間判定部
118 不具合判断部
120 通知部
124 不具合停止処理部
126 不具合送液処理部
128 不具合開放処理部
130 不具合空吸引処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8