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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104430
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】熱加工装置および熱加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20240729BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20240729BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/142
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008627
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】米田 次郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝樹
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 真之
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 成敏
(72)【発明者】
【氏名】成田 竜一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 伸
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168AD11
4E168BA00
4E168CB03
4E168CB15
4E168FC04
4E168JA01
4E168JA17
4E168JA25
(57)【要約】
【課題】ワークが大きい、あるいは厚いとしても、熱加工に伴い発生する粉塵を効率よく回収することで加工効率の向上を図ること。
【解決手段】熱加工装置は、ワークの被加工部に熱エネルギーを与えることで、ワークに対する相対的な移動の方向である加工方向に沿って延びる溝をワークに形成可能に構成される熱エネルギー付与部と、加工方向における前側および後側の一方から被加工部にガスを吹き出す第1ノズルと、加工方向における前側および後側の前記一方および他方のうち、被加工部の他方における所定位置にガスを吹き出す第2ノズルと、ワークの熱加工に伴う生成物を集める集塵機構に接続され、被加工部と所定位置との間から生成物を含むガスを排気させる排気部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加熱して加工する熱加工装置であって、
前記ワークの被加工部に熱エネルギーを与えることで、前記ワークに対する相対的な移動の方向である加工方向に沿って延びる溝を前記ワークに形成可能に構成される熱エネルギー付与部と、
前記加工方向における前側および後側の一方から前記被加工部にガスを吹き出す第1ノズルと、
前記加工方向における前側および後側の前記一方および他方のうち、前記被加工部の前記他方における所定位置にガスを吹き出す第2ノズルと、
前記ワークの熱加工に伴う生成物を集める集塵機構に接続され、前記被加工部と前記所定位置との間から前記生成物を含むガスを排気させる排気部と、を備える、
熱加工装置。
【請求項2】
前記排気部は、前記生成物を受け入れて前記集塵機構に向けて排出させるダクトを含む、
請求項1に記載の熱加工装置。
【請求項3】
前記排気部は、前記ダクトおよび前記ワークの間に介在するシールを含む、
請求項2に記載の熱加工装置。
【請求項4】
前記溝の内側では、前記第1ノズルから流出するガスの流れが前記第2ノズルから流出するガスの流れと衝突する、
請求項1に記載の熱加工装置。
【請求項5】
前記第2ノズルから流出するガスの流速の加工方向成分は、前記第1ノズルから流出するガスの流速の加工方向成分以下である、
請求項1に記載の熱加工装置。
【請求項6】
前記第1ノズルから流出するガスの流れの方向は、前記加工方向の成分と、前記溝の深さの方向の成分と、を含み、
前記第2ノズルから流出するガスの流れの方向は、前記溝の深さの方向の成分を含む、
請求項1に記載の熱加工装置。
【請求項7】
前記ワークに対する前記熱エネルギー付与部の往復移動の往路において使用される往路用の前記第1ノズル、往路用の前記排気部、および往路用の前記第2ノズルと、
前記往復移動の復路において使用される復路用の前記第1ノズル、復路用の前記排気部、および復路用の前記第2ノズルと、
前記熱エネルギー付与部に設定される軸線を中心に、前記往路用の第1ノズル、前記往路用の排気部、前記往路用の第2ノズル、前記復路用の第1ノズル、前記復路用の排気部、および前記復路用の第2ノズルの全体を回転可能に構成される回転機構と、を備え、
前記復路用の第1ノズル、前記復路用の排気部、および前記復路用の第2ノズルは、前記往路用の第1ノズル、前記往路用の排気部、および前記往路用の第2ノズルに対して、前記軸線を中心として異なる位相に配置される、
請求項1に記載の熱加工装置。
【請求項8】
ワークを加熱して加工する熱加工装置であって、
前記ワークの被加工部に熱エネルギーを与えることで、前記ワークに対する相対的な移動の方向である加工方向に沿って前記被加工部を加工する熱エネルギー付与部と、
前記加工方向における前側および後側の一方から前記被加工部にガスを吹き出すノズルと、
前記ワークの熱加工に伴う生成物を集める集塵機構に接続され、前記加工方向における前側および後側の前記一方および他方のうち前記被加工部の前記他方であって前記被加工部の近傍から前記生成物を含むガスを排気させる排気部と、を備え、
前記排気部は、
前記生成物を受け入れて前記集塵機構に向けて排出させるダクトと、
前記ダクトおよび前記ワークの間に介在するシールと、を含む、
熱加工装置。
【請求項9】
前記ワークに対する前記熱エネルギー付与部の往復移動の往路において使用される往路用の前記ノズルおよび往路用の前記排気部と、
前記往復移動の復路において使用される復路用の前記ノズルおよび復路用の前記排気部と、
前記熱エネルギー付与部に設定される軸線を中心に、前記往路用のノズル、前記往路用の排気部、前記復路用のノズル、および前記復路用の排気部の全体を回転可能に構成される回転機構と、を備え、
前記復路用のノズルおよび前記復路用の排気部は、前記往路用のノズルおよび前記往路用の排気部に対して、前記軸線を中心として異なる位相に配置される、
請求項8に記載の熱加工装置。
【請求項10】
前記熱エネルギー付与部は、前記被加工部にレーザーを照射可能に構成される、
請求項1または8に記載の熱加工装置。
【請求項11】
前記ワークおよび前記熱エネルギー付与部の少なくとも一方を移動させる駆動部を備える、
請求項1から9のいずれか一項に記載の熱加工装置。
【請求項12】
少なくとも前記駆動部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記ワークの前記加工方向に区分される複数の被加工領域のそれぞれの加工開始位置に前記熱エネルギー付与部を移動可能であるとともに、
前記被加工領域のそれぞれにおける前記加工方向への前記熱エネルギー付与部の複数回の移動が可能に構成される、
請求項11に記載の熱加工装置。
【請求項13】
ワークを加熱して加工する熱加工装置であって、
前記ワークの被加工部に熱エネルギーを与えることで、前記ワークに対する相対的な移動の方向である加工方向に沿って前記被加工部を加工する熱エネルギー付与部と、
前記被加工部にガスを吹き出す吹出ノズルと、
前記ワークの熱加工に伴う生成物を集める集塵機構に接続され、前記被加工部の周囲から前記生成物を含むガスを排気させる排気室と、
前記被加工部の周囲に前記排気室を区画するカバーと、
前記ワークに対して前記熱エネルギー付与部を移動させる駆動部と、
少なくとも前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記駆動部は、
前記熱エネルギー付与部を移動可能に構成される第1駆動機構と、
前記第1駆動機構とは別の第2駆動機構と、を備え、
前記制御部は、
前記ワークの前記加工方向に区分される複数の被加工領域のそれぞれの加工開始位置に前記熱エネルギー付与部を移動可能であるとともに、
前記被加工領域のそれぞれにおける前記加工方向への前記熱エネルギー付与部の複数回の移動が可能に構成され、
前記カバーは、前記被加工領域における前記熱エネルギー付与部の移動範囲を実現する空隙を残して前記ワークを覆い、前記第2駆動機構により駆動される、熱加工装置。
【請求項14】
ワークを加熱して加工する熱加工方法であって、
前記ワークの被加工部に熱エネルギーを与える熱エネルギー付与部を前記ワークに対して加工方向に相対的に移動させることで、前記加工方向に沿って延びる溝を前記ワークに形成しながら、
前記加工方向における前側および後側の一方から第1ノズルにより前記被加工部にガスを吹き出しつつ、
前記加工方向における前側および後側の前記一方および他方のうち、前記被加工部の前記他方における所定位置に第2ノズルによりガスを吹き出し、かつ、
前記被加工部と前記所定位置との間から、前記ワークの熱加工に伴う生成物を集める集塵機構に向けてガスを排気させる、
熱加工方法。
【請求項15】
ワークを加熱して加工する熱加工方法であって、
前記ワークの被加工部に熱エネルギーを与える熱エネルギー付与部を前記ワークに対して加工方向に相対的に移動させながら、
前記加工方向における前側および後側の一方から前記被加工部にノズルによりガスを吹き出しつつ、
前記加工方向における前側および後側の前記一方および他方のうち前記被加工部の前記他方であって前記被加工部の近傍から、前記ワークの熱加工に伴う生成物を集める集塵機構に向けてガスを排気させ、
前記ガスの排気は、前記生成物を受け入れて前記集塵機構に向けて排出させるダクトと前記ワークとの間にシールを介在させた状態で行う、
熱加工方法。
【請求項16】
ワークを加熱して加工する熱加工方法であって、
前記ワークの被加工部に熱エネルギーを与える熱エネルギー付与部を前記ワークに対して加工方向に相対的に移動させながら、
前記被加工部に吹出ノズルによりガスを吹き出しつつ、
前記被加工部の周囲から、前記ワークの熱加工に伴う生成物を集める集塵機構に向けてガスを排気させ、
前記ワークに対する前記熱エネルギー付与部の移動は、
前記ワークの前記加工方向に区分される複数の被加工領域のそれぞれの加工開始位置に前記熱エネルギー付与部を順次移動させるとともに、前記被加工領域のそれぞれにおいて前記加工開始位置から前記加工方向へと前記熱エネルギー付与部を複数回に亘り移動させることで行われ、
前記ガスの排気は、
前記被加工領域における前記熱エネルギー付与部の移動範囲を実現する空隙を残して前記ワークを覆うとともに、前記熱エネルギー付与部を駆動する第1駆動機構とは別の第2駆動機構により駆動されるカバーにより、前記被加工部の周囲に排気室を区画しつつ行われる、
熱加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークを加熱しながら、切断、溶接等の熱加工(thermal processing)を行う熱加工装置および熱加工方法に関する。
【0002】
例えばレーザー光源等の熱源から発せられるビームによるワークの熱加工中は、ビームにより加熱されるワークの被加工部から、スパッタ、ヒューム等と呼ばれる粉塵が発生する。そうした粉塵の滞留、飛散による加工効率の低下や作業環境の悪化、機器の故障を避けるため、送風機等の集塵機構を用いて、レーザーヘッドの周りの粉塵を含む雰囲気を吸引して排出させるとともに、フィルタにより粉塵を捕集して回収する。
典型的な粉塵回収機構は、熱加工機に備わる機器とワークとを全体的に覆う壁体と、壁体の内側を吸引する集塵機とを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のレーザスパッタ集塵装置は、鋼板の表面に上方からレーザーを照射するレーザー光源と、鋼板におけるレーザーの照射部位(被加工部)に対して上方からエアを噴射するエアノズルと、鋼板の搬送方向における照射部位よりも上流または下流から粉塵を吸引する集塵機構とを備えている。集塵機構は、レーザーの光路の近傍に集塵口を向けて配置される集塵フードと、集塵フードの内側の雰囲気を吸引する吸引ポンプとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-075490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワークが例えば大型構造物等の部材であって、そのサイズが大きい場合は、熱加工機の機器とワークとの全体を壁体により覆ったとしても、壁体の所定位置に接続される集塵機構により壁体の内側の全体に亘り粉塵を吸引することが難しい。
また、複数回に亘る切断工程を要する厚いワークを切断する場合は、熱加工の進展により切断溝が深くなるにつれて、粉塵の発生する被加工部(切断溝の底)が集塵機構の吸入口から遠ざかるところ、切断のために被加工部に供給される気体の流れが、集塵機構に向かわずに切断溝の内側を吹き抜けてしまう。これによって集塵効率が低下する。
本開示は、熱加工の対象の部材(ワーク)が大きい、あるいは厚いとしても、熱加工に伴う生成物(粉塵)を効率よく回収することで加工効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ワークを加熱して加工する熱加工装置であって、ワークの被加工部に熱エネルギーを与えることで、ワークに対する相対的な移動の方向である加工方向に沿って延びる溝をワークに形成可能に構成される熱エネルギー付与部と、加工方向における前側および後側の一方から被加工部にガスを吹き出す第1ノズルと、加工方向における前側および後側の一方および他方のうち、被加工部の他方における所定位置にガスを吹き出す第2ノズルと、ワークの熱加工に伴う生成物を集める集塵機構に接続され、被加工部と所定位置との間から生成物を含むガスを排気させる排気部と、を備える。
【0007】
また、本開示は、ワークを加熱して加工する熱加工装置であって、ワークの被加工部に熱エネルギーを与えることで、ワークに対する熱エネルギー付与部の相対的な移動の方向である加工方向に沿って被加工部を加工する熱エネルギー付与部と、加工方向における前側および後側の一方から被加工部にガスを吹き出すノズルと、ワークの熱加工に伴う生成物を集める集塵機構に接続され、加工方向における前側および後側の一方および他方のうち被加工部の他方であって被加工部の近傍から生成物を含むガスを排気させる排気部と、を備える。排気部は、生成物を受け入れて集塵機構に向けて排出させるダクトと、ダクトおよびワークの間に介在するシールと、を含む。
【0008】
さらに、本開示は、ワークを加熱して加工する熱加工装置であって、ワークの被加工部に熱エネルギーを与えることで、ワークに対する相対的な移動の方向である加工方向に沿って被加工部を加工する熱エネルギー付与部と、被加工部にガスを吹き出す吹出ノズルと、ワークの熱加工に伴う生成物を集める集塵機構に接続され、被加工部の周囲から生成物を含むガスを排気させる排気室と、被加工部の周囲に排気室を区画するカバーと、ワークに対して熱エネルギー付与部を移動させる駆動部と、
少なくとも駆動部を制御する制御部と、を備える。
駆動部は、熱エネルギー付与部を移動可能に構成される第1駆動機構と、
第1駆動機構とは別の第2駆動機構と、を備える。
制御部は、ワークの加工方向に区分される複数の被加工領域のそれぞれの加工開始位置に熱エネルギー付与部を移動可能であるとともに、被加工領域のそれぞれにおける加工方向への熱エネルギー付与部の複数回の移動が可能に構成される。
カバーは、被加工領域における熱エネルギー付与部の移動範囲を実現する空隙を残してワークを覆い、第2駆動機構により駆動される。
【0009】
本開示は、ワークを加熱して加工する熱加工方法にも展開することができる。
【発明の効果】
【0010】
第1ノズルおよび排気部に加えて第2ノズルを備え、第1ノズルおよび第2ノズルからそれぞれ流出するガスの流れを溝の内側で衝突させることにより、被加工部の近傍に粉塵を留めつつ、粉塵を含むガスの排気部への排気を促進して、被加工部の近傍から局所的に効率よく粉塵を回収することができる。
または、ノズルと、排気ダクトおよびシールを含む排気部とを備えることによっても、排気ダクトにより被加工部の近傍を囲って排気し、かつ排気ダクトとワークとの間の隙間をシールにより塞ぐことで、被加工部の近傍から局所的に効率よく粉塵を回収することができる。
さらに、本開示の他の構成からすると、ワークの複数の被加工領域毎に複数回の加工が繰り返されることを前提として、吹出ノズルと、カバーにより区画される排気室とを備え、被加工領域における熱エネルギー付与部の移動範囲を実現する空隙を残してワークを覆うとともに、熱エネルギー付与部を駆動する第1駆動機構とは別の第2駆動機構により駆動されるカバーによって、被加工部の周囲に排気室を区画しつつ、ガスの排気が行われる。この構成によれば、第1駆動機構や熱エネルギー付与部にモーメントを加えることなく被加工部の周囲にカバーを備えて、被加工部の周囲から粉塵を漏れなく回収することができる。
【0011】
以上より、本開示によれば、従来のレーザー加工機のように閉空間内に機器全体を納める必要がなく、大型や厚肉のワークを加工する場合であっても、装置のコンパクト化および効率的な粉塵回収を実現するとともに、加工効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第1実施形態に係る熱加工機およびワークを示す模式図である。
図2図1の熱加工機における要部を示す斜視図である。
図3】(a)は、図1の熱加工機における要部を示す側面図である。(b)は、切断工程の進展によりワークに溝が形成されている状態を示す側面図である。
図4】(a)~(c)は、排気ダクトの形状の一例を示す平面図である。
図5】(a)は、各被加工領域における往復移動による複数パスを説明するための模式図である。(b)は、各被加工領域における一方向への移動による複数パスを説明するための模式図である。
図6】(a)は、往路におけるノズルおよびダクトの向きを示す側面図である。(b)は、復路におけるノズルおよびダクトの向きを示す側面図である。
図7】切断工程のフロー図である。
図8】本開示の第1変形例を示す斜視図である。
図9】第1変形例を示す模式図である。(a)は、往路におけるノズルおよびダクトの向きを示す平面図である。(b)は、往路から復路に折り返す際にノズルおよびダクトの回転動作を示す平面図である。(c)は、復路におけるノズルおよびダクトの向きを示す平面図である。(d)は、復路から往路に折り返す際にノズルおよびダクトの回転動作を示す平面図である。
図10】第2実施形態に係る熱加工機およびワークを示す模式図である。
図11】(a)は、図10の熱加工機における要部を示す斜視図である。(b)は、図10の熱加工機における要部の断面模式図である。
図12】本開示の第2変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。
[第1実施形態]
〔全体構成〕
図1に示すレーザー加工機1は、駆動部2と、ワーク3を支持するワーク支持部4と、駆動部2によりワーク3に対して相対的に移動され、ワーク3を加熱して加工する熱加工装置10と、駆動部2および熱加工装置10を制御する制御部5とを備えている。
第1実施形態のレーザー加工機1は、特に、大型で肉厚のワーク3を所定の形状に切断する加工に適する。レーザー加工機1は、レーザーを用いて、切断加工の他、溶接、孔あけ等の加工も可能である。
【0014】
〔ワークの構成〕
ワーク3は、熱加工装置10による熱加工の対象の部材に相当し、例えば、金属材料、樹脂材料、繊維強化樹脂等の適宜な材料から形成されている。ワーク3は、平面的な形状には限らず、三次元形状であってもよい。図示されているワーク3は、例えば、航空機や船舶の部材等、概ね板状であるが、三次元形状に形成される部材に相当し、ワーク支持部4に水平または略水平に支持されている。
ワーク3は、ワーク支持部4における所定位置に位置決めされる。
【0015】
〔駆動部の構成〕
駆動部2は、例えば、ガントリー21と、ガントリー21の部材に対して相対移動可能に支持されるヘッド駆動機構22とを備えている。
ガントリー21は、ベース210に鉛直方向(z方向)に立設される一対のコラムまたは支持壁211と、コラムまたは支持壁211に支持されて水平に延びるクロスレール212と、クロスレール212に支持されて水平方向に延在するステージ213とを備えている。ヘッド駆動機構22は、ステージ213に対して相対移動可能に設置されている。
【0016】
ヘッド駆動機構22は、6軸駆動機構であり、熱加工装置10のレーザーヘッド11を支持するとともに、x方向、y方向、z方向、x回転方向、y回転方向、およびz回転方向に移動可能に構成されている。ガントリー21は、3軸駆動機構であり、ヘッド駆動機構22およびレーザーヘッド11の全体をx方向、y方向、およびz方向に移動可能に構成されている。
【0017】
〔熱加工装置〕
熱加工装置10は、駆動部2により、所定位置に配置されているワーク3に対して、ワーク3を切断する方向(加工方向D1)に移動される。加工方向D1は、ワークの全体形状に依存し、必ずしも水平方向には相当しない。
【0018】
熱加工装置10は、図1図2、および図3(a)に示すように、ワーク3の被加工部31に熱エネルギーを与える熱エネルギー付与部としてのレーザーヘッド11と、加工方向D1における前側Fから被加工部31にガスを吹き出す前ノズル12(第1ノズル)と、被加工部31の近傍からガスを排気させる排気部13と、被加工部31の後側Rの所定位置141にガスを吹き出す後ノズル14(第2ノズル)とを備えている。
【0019】
前ノズル12、排気部13、および後ノズル14は、支持部15,16等を介してレーザーヘッド11と一体に組み付けることができる。駆動部2によりレーザーヘッド11をワーク3に対して加工方向D1に移動させると、前ノズル12、排気部13、および後ノズル14も、レーザーヘッド11と一体的にワーク3に対して移動される。
図2図3(a)、および図3(b)において、支持部15,16の図示は省略されている。
【0020】
(レーザーヘッド)
レーザーヘッド11は、レーザーが発せられる発振部と、レーザーを集光する光学系とを備え、ワーク3に向けてレーザービームBを出射する。発振部および光学系の図示は省略する。レーザービームBは、レーザーヘッド11の光学軸に相当する軸線B1の方向に出射される。
ヘッド駆動機構22がx回転方向およびy回転方向において中立位置にあるとき、レーザービームBは鉛直方向の下向きに出射される。
【0021】
被加工部31は、ワーク3におけるレーザービームBが照射される部位に相当する。レーザーヘッド11の移動に伴い、ワーク3における被加工部31は変位する。
レーザービームBの焦点fcは最もエネルギー密度が高い。そのため、切断加工が進展しても、焦点fcが溝32の底32Aまたはその近傍に位置しているように、本実施形態のヘッド駆動機構22は、切断加工の進展に伴い、レーザーヘッド11をワーク3の表面3Aからワーク3の板厚方向(溝32の深さ方向D2)に移動させる機構を備えていることが好ましい。この場合前ノズル12も、被加工部31を掃気するため、レーザーヘッド11に追従してヘッド駆動機構22により方向D2に移動されることが好ましい。
本実施形態のヘッド駆動機構22は、ワーク3が切断される過程において、ワーク3の厚さに相当する変位量でレーザーヘッド11および前ノズル12を方向D2に移動させるように構成されている。本実施形態の排気部13および後ノズル14は、レーザーヘッド11および前ノズル12の方向D2への変位には追従せず、切断過程に亘りワーク3の表面3Aに対する相対位置が維持される。
切断前におけるレーザーヘッド11および前ノズル12の初期位置(ワーク3の厚さ方向の位置)は、ワーク3の表面3Aから少なくともワーク3の厚さ以上離れた位置に設定されている。
【0022】
レーザービームBにより与えられる熱エネルギーにより、ワーク3の被加工部31は溶融、蒸発し、熱加工に伴う生成物である微細な粉塵は前ノズル12から供給されるガスにより被加工部31から除去される。そのため、ワーク3には、図2および図3(b)に示すように、表面3Aから掘り下げられ、加工方向D1に沿って延びる溝32が形成される。溝32の断面形状は、一例としてV字状であるが、これに限らず適宜な断面形状であって良い。なお、本実施形態の熱加工装置10は、切断加工に限らず、ワーク3に溝32を形成する加工にも適する。
【0023】
熱加工に伴って生成される生成物は、スパッタ、ヒューム等とも呼ばれ、液滴や、蒸発後に凝縮した固体粒子等を総称して「粉塵」と称するものとする。
こうした粉塵が光学系のレンズに付着したり、浮遊してレーザービームBの光路に存在していたりすると、加工効率が低下する。本実施形態は、粉塵を回収するため、前ノズル12および排気部13に加えて後ノズル14を備えている。
【0024】
(前ノズル)
前ノズル12は、図示しないガス供給源に接続されるとともに、支持部15(図1)により、ワーク3の表面3Aに対して傾斜した姿勢に支持されている。ガス供給源から前ノズル12に供給されるガスは、切断加工を行う場合は、例えば、空気、酸素ガス、あるいは窒素ガス等の不活性ガスである。行われる加工に応じて適切なガスが選択されるように構成されていてもよい。
【0025】
図1および図3(a)に示すように、被加工部31に向けて配置される前ノズル12の先端12A(吹出口)は、前ノズル12の基端12Bよりも後側R、かつワーク3の表面3Aに近接する側に位置している。そのため、前ノズル12から流出するガスの流れの方向は、加工方向D1の成分と、溝32の深さ方向D2の成分とを含む。前ノズル12は、ヘッド駆動機構22がx回転方向およびy回転方向において中立位置にあるとき、水平面に対して、例えば20~60°程度傾斜して配置されることが好ましい。
前ノズル12から被加工部31に吹き出されるガスにより、被加工部31が掃気され、被加工部31から粉塵が放射状に飛散する。
【0026】
前ノズル12は、例えば、断面形状が円形のノズルであってよい。前ノズル12は、高温のレーザービームBの熱により変形しない程度に、被加工部31に近づけて配置されることが好ましい
【0027】
(排気部)
排気部13は、図2および図3(a)に示すように、粉塵を集める集塵機構130にホース13Hを介して接続され、被加工部31の近傍であって、被加工部31と、後ノズル14から流出したガスが向かう所定位置141との間から、粉塵を含むガスを排気させる。排気部13は、粉塵を受け入れて集塵機構130に向けて排出させる排気ダクト131と、排気ダクト131およびワーク3の表面3Aとの間に介在するシール部材の一例としてのブラシシール132とを備えている。
集塵機構130は、ガスを吸引して排出可能に構成される図示しない送風機と、図示しないフィルタとを含んで構成される。
【0028】
排気ダクト131は、図2および図4(a)に形状の一例を示すように、前側Fと、ワーク3に対向する側とが開放された箱状に形成されている。排気ダクト131は、支持部16(図1)によりヘッド駆動機構22に支持されている。
【0029】
排気ダクト131は、側壁131A,131B,131Cと、後壁131Dとを備えている。ワーク3に対向する側壁131Bにおける後壁131Dの近傍のホース接続部131Eには、ホース13Hが接続されている。
熱加工に伴い被加工部31から飛散した粉塵は、集塵機構130により、前側Fの開口131Fおよびワーク3に対向する開口131Gから排気ダクト131の内側にガスと共に吸引され、フィルタに捕集されることで回収される。フィルタは、適時に洗浄、交換等のメンテナンスが行われる。
【0030】
排気ダクト131は、例えば、金属材料、樹脂材料等の適宜な材料から形成することができる。排気ダクト131を難燃材から形成することもできる。排気ダクト131は、レーザービームBの熱により排気ダクト131およびブラシシール132が変形しない程度に、被加工部31に近づけて配置されることが好ましい。
【0031】
被加工部31から放射状に飛散する粉塵を排気ダクト131により漏れなく回収するため、図4(b)または(c)に示すように、排気ダクト131の前側Fの開口131Fの幅wをワーク3の表面3Aに沿った方向に拡大することが好ましい。図4(b)に示す排気ダクト131-1は、ホース接続部131Eから開口131Fに向かうにつれて次第に幅が拡大する扇形状に形成されている。図4(c)に示す排気ダクト131-2は、ホース接続部131Eのホース接続部131Eの内径φが幅wと同等に設定されている。
【0032】
ガスがスムーズに開口131F,131Gから吸い込まれてホース13Hに流入するように、排気ダクト131,131-1,131-2の高さh(図2)や長さL1が決められる。高さhは、他の構成機器と干渉しない範囲において、例えば、ホース接続部131Eの内径φの例えば0.5~4倍に設定することができる。長さL1は、他の構成機器と干渉しない範囲において、例えば、ホース接続部131Eの内径φの例えば2~6倍に設定することができる。
【0033】
ブラシシール132は、開口131Gを囲む側壁131A,131Cおよび後壁131Dの3辺の端縁に沿って設けられている。ブラシシール132は、樹脂材料等から形成された柔軟で密な毛束からなる。毛束の長さL2は、ワーク3に対して排気ダクト131が移動する際に、毛束が変形しつつ、毛束の先端がワーク3に接触した状態を保つように、適宜な長さに決められる。
【0034】
排気部13は、ブラシシール132に代えて、排気ダクト131およびワーク3の間に介在する適宜な構成のシール部材を備えることができる。排気ダクト131とワーク3の表面3Aとの間をシール部材により塞ぐことで、集塵機構130による吸引効率を高めることが可能である。かかるシール部材は、ワーク3を傷付けないものであることが好ましく、また、排気部13を支持するレーザーヘッド11に極力モーメントを作用させない観点からワーク3に対して過大な摩擦を発生させないことが好ましい。当該シール部材は、ゴムシール等であってもよい。
【0035】
(後ノズル)
後ノズル14は、図示しないガス供給源に接続され、排気ダクト131の後側Rでワーク3に向けてガスを吹き出す。ガス供給源から後ノズル14に供給されるガスは、例えば、空気、酸素ガス、あるいは窒素ガス等の不活性ガスである。後ノズル14に接続されるガス供給源は、前ノズル12に接続されるガス供給源と同じであっても異なっていてもよい。
【0036】
後ノズル14は、排気ダクト131の後壁131Dに支持され、ワーク3に近づけて配置されている。なお、後ノズル14は、支持部16に支持されていてもよい。後ノズル14は、例えば、断面形状が円形のノズルであってよい。
【0037】
本実施形態の後ノズル14から流出するガスの流れの方向は、少なくとも、溝32の深さ方向D2の成分を含む。後ノズル14から所定位置141に向けて吹き出されたガスの流れは、図3(b)に示すように、溝32の内側で前ノズル12から流出したガスの流れと衝突し(衝突位置Cを参照)、粉塵を溝32から掬い上げつつ、排気ダクト131の開口131Gから集塵機構130により吸引されて排気される。後ノズル14から流出するガスにより、前ノズル12から流出するガスが溝32に沿って吹き抜けることが防止される。そうすると、前ノズル12から被加工部31に吹き付けられ、被加工部31から後側Rへ飛散した粉塵が、ガスの流れに従って排気ダクト131から排気されるので、粉塵の回収を促進することができる。
【0038】
加工が進展して溝32が深くなり、ホース接続部131Eの吸引口131Jが被加工部31(溝32の底32A)から遠ざかるにつれて、排気ダクト131の内側と溝32の内側とを合わせた容積が増加するので、吸引能力が低下して粉塵の集塵効率が低下する。そこで、例えば、排気ダクト131に対してホース13Hおよびホース接続部131Eを移動可能な機構を設けるとよい。かかる機構は、溝32が深くなるほど、つまり、ワーク3を複数回に亘り切断する場合のパスの回数を経るに従い、吸引口131Jの位置を溝32の底32Aに近接する向きに変位させる。
【0039】
本実施形態の後ノズル14は、レーザービームBと同様に、ヘッド駆動機構22がx回転方向およびy回転方向において中立位置にあるとき、鉛直方向の下方に向けて、溝32の深さ方向D2に沿って配置されている。
これに限らず、後ノズル14は、溝32の深さ方向D2に対して傾斜して配置されていてもよい。その場合は、後ノズル14の先端14A(吹出口)が、後ノズル14の基端14Bよりも前側F、かつワーク3の表面3Aに近接する側に位置するように傾斜していることが好ましい。この場合において、後ノズル14から流出するガスの流速の加工方向D1の成分(加工方向成分)は、前ノズル12から流出するガスの流速の加工方向D1の成分よりも小さいことが好ましい。後ノズル14から流出するガスの流れによって、前ノズル12から被加工部31に噴射されるガスの流れが妨げられないようにするためである。
【0040】
後ノズル14の設置角度は、前ノズル12および後ノズル14からそれぞれ流出するガスの流速の加工方向成分の比率の他、前ノズル12の先端12Aと後ノズル14の先端14Aとの距離等をも踏まえて設定される。
【0041】
(熱加工装置およびヘッド駆動機構の変形例)
ところで、熱加工装置10およびヘッド駆動機構22は、ワーク3を切断する過程において、排気部13および後ノズル14がレーザーヘッド11および前ノズル12と共に溝32の深さ方向D2に移動するように構成されていてもよい。この場合、ブラシシール132の毛束の長さL2は、少なくとも溝32の深さ(ワーク3の厚さ)の分だけ余裕を持たせた長さに設定され、排気ダクト131は、ブラシシール132の毛束を変形させつつワーク3の表面3Aに近接する。また、切断開始前における後ノズル14の初期位置は、最も下降した時に後ノズル14がワーク3と干渉しないように、ワーク3の表面3Aから少なくともワーク3の厚さ以上離れた位置に設定される。
【0042】
〔制御部〕
制御部5は、ワーク3の加工形状に基づき、レーザーヘッド11の移動経路を予め設定するとともに、図5(a)に示すように、移動径路を複数の被加工領域Aに分割する。
ワーク3の切断加工は、図5(a)に示すように、ワーク3において加工方向D1に区分される複数の被加工領域A毎に、レーザーヘッド11を加工方向D1に複数回移動させることで行われる。図5には、ワーク3の一部の被加工領域Aのみが示されている。
【0043】
制御部5は、複数の被加工領域Aのそれぞれの加工開始位置P1にレーザーヘッド11を移動可能に構成されるとともに、被加工領域Aのそれぞれにおけるレーザーヘッド11の複数回の移動が可能に構成される。加工開始位置P1は、各被加工領域Aにおける加工方向D1の一端に相当する。
【0044】
加工方向D1への「複数回の移動」は、図5(b)に示すように、被加工領域Aにおいて加工開始位置P1から一方向への移動を繰り返すこと、および、図5(a)に示す本実施形態のように、被加工領域Aにおいて加工開始位置P1から被加工領域Aの一端と他端とを往復移動することのいずれをも含む。
被加工領域Aにおける一端から他端までの加工を1回の「パス」と称する。図5(a)に示す例では、4回のパスによりワーク3が切断される。
【0045】
制御部5による駆動部2の制御により、一の被加工領域Aの加工開始位置P1から加工方向D1へ複数パスの加工を終えると、隣の被加工領域Aの加工開始位置P1にレーザーヘッド11を移動させ、当該被加工領域Aにおける複数パスの加工がなされる。これを全被加工領域Aに亘り順次繰り返すことにより、大型のワーク3でも、安定して母材から切り離しつつ切断加工することができる。
【0046】
〔回転機構〕
レーザーヘッド11を往復移動させる場合、熱加工装置10は、レーザーヘッド11に設定される軸線B1を中心に、レーザーヘッド11に対して前ノズル12、排気部13、および後ノズル14の全体を180°回転させる回転機構17(図1)を備えている。
【0047】
図6(a)は、レーザーヘッド11の往復移動の往路A1におけるノズル12,14および排気部13の向きを示し、図6(b)は、復路A2におけるノズル12,14および排気部13の向きを示している。図6(a)と図6(b)とでは、前側Fと後側Rとが入れ替わっている。
本実施形態は、加工方向D1を切り替える際に、レーザーヘッド11に設定される軸線B1を中心に、前ノズル12、排気部13、および後ノズル14の全体を回転機構17により180°回転させる。
【0048】
前ノズル12および後ノズル14が回転しても、前ノズル12および後ノズル14がそれぞれガス供給源に接続されている状態が保たれるように、図示しないバルブ等を含んでガス供給系統が構成されている。排気部13は、排気部13が集塵機構130に接続された状態を保って回転できるように、ホース13Hが伸縮可能かつ十分な長さに設定されている。
【0049】
〔切断工程のフロー〕
図7を参照し、レーザー加工機1によるワーク3の切断工程の一例を説明する。
まず、制御部5はワーク3の加工形状のデータをインプットする(ステップS01)。そして、ガントリー21のゼロ点調整(ステップS02)およびヘッド駆動機構22のゼロ点調整(ステップS03)を実施した後、制御部5は各被加工領域Aにおけるコンターデータ(contour data)をインプットし、切断を開始する(ステップS04)。図7では、被加工領域Aを「セット」と称する。
【0050】
ガントリー21により被加工領域Aの加工開始位置P1にレーザーヘッド11を移動させると(ステップS05)、熱加工装置10により、前ノズル12および後ノズル14に関するガスの供給系統、および排気部13に関するガスの排気系統を起動する(ステップS06)。そして、レーザーヘッド11を起動し、ヘッド駆動機構22によりレーザーヘッド11を移動させながら往路A1の切断加工を行う(ステップS07)。
往路A1の最後まで加工すると、レーザーヘッド11によるレーザービームBの出射を停止し、ガス供給系統のバルブの切替を行い(ステップS08)、さらに回転機構17によりノズルおよびダクトを回転させる(ステップS09)。
【0051】
復路A2では、レーザーヘッド11を起動して往路A1の切断加工を行い(ステップS10)、復路A2の最後まで加工すると、レーザービームBの出射を停止し、ガス供給系統のバルブの切替を行い(ステップS11)、さらに回転機構17によりノズルおよびダクトを回転させる(ステップS12)。
ステップS07からステップS12までの往路A1および復路A2の処理を予め設定されたパス数だけ繰り返すと(ステップS13でYes)、ガスの供給系統を停止し(ステップS14)、次の被加工領域Aが存在する場合は(ステップS15でNo)、ガントリー21によりレーザーヘッド11とノズル12,14や排気部13を次の被加工領域Aの加工開始位置P1に移動させる(ステップS05)。
全ての被加工領域Aの切断を終えたならば(ステップS15でYes)、熱加工装置10およびヘッド駆動機構22と、ガントリー21とをそれぞれ停止し(ステップS16,S17)、制御部5による制御を終了する(ステップS18)。
【0052】
〔本実施形態による作用効果〕
本実施形態によれば、前ノズル12および排気部13に加えて後ノズル14を備え、後ノズル14から排気部13の後側Rで被加工部31の後側Rの所定位置141にガスを吹き出すことにより、上述のように、前ノズル12から流出したガスの流れが溝32に沿って後側Rへ吹き抜けることが防止される。そのため、被加工部31の近傍に粉塵を留めつつ、粉塵を含むガスの排気部13への排気が促進されることにより、被加工部31の近傍から局所的に効率よく粉塵を回収することができる。
【0053】
したがって、従来のレーザー加工機のように閉空間内に機器全体を納める必要がないため、壁体で覆うことが現実的ではない大型のワーク3を加工することが可能であって、大型のワーク3や、加工に複数パスが必要な厚肉のワーク3を加工する場合であっても、装置のコンパクト化および効率的な粉塵回収を実現することができる。
粉塵が効率よく回収されるため、粉塵の飛散による装置の故障リスクを低減し、作業環境の改善を図るとともに、レーザービームBへの粉塵による干渉を防止して加工効率を向上させることができる。
【0054】
本実施形態の熱加工装置10の排気部13がブラシシール132を備えていることにより、排気ダクト131とワーク3との間の隙間をブラシシール132により塞ぎ、粉塵を含むガスの排気部13への排気を促進させることができる。そのため、溝32が形成される加工には限らず、溶接や孔あけ加工に関しても、被加工部31の近傍から局所的に効率よく粉塵を回収することができる。
【0055】
本実施形態は、既存の熱加工機への適用も可能である。例えば、前ノズル12および排気ダクト131を既に備えている熱加工機に後ノズル14およびブラシシール132の少なくとも一方を追加すると良い。
【0056】
[第1実施形態の変形例]
前ノズル12(第1ノズル)および後ノズル14(第2ノズル)は、部材相互の干渉等を考慮し、上記第1実施形態における位置関係とは逆に配置されて加工方向D1に対向していてもよい。つまり、加工方向D1における被加工部31の位置を基準として、第1ノズルが後側Rから被加工部31にガスを吹き出し、第2ノズルが被加工部31の前側Fにおける所定位置141にガスを吹き出すように構成されていてもよい。この場合も、排気部13は、被加工部31と所定位置141との間から粉塵を含むガスを排気させる。かかる変形例によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
[第1変形例]
図8および図9(a)~(d)に示す構成は、往路A1および復路A2の往復移動により行われる加工の時間短縮に関する。第1変形例の熱加工装置10-1は、レーザーヘッド11と、第1前ノズル12-1と、第1排気部13-1と、第1後ノズル14-1と、第2前ノズル12-2と、第2排気部13-2と、第2後ノズル14-2と、回転機構17-1とを備えている。往路A1には、第1前ノズル12-1、第1排気部13-1、および第1後ノズル14-1が用いられる。復路A2には、第2前ノズル12-2、第2排気部13-2、および第2後ノズル14-2が用いられる。
回転機構17-1は、レーザーヘッド11の軸線B1を中心に、第1前ノズル12-1、第1排気部13-1、第1後ノズル14-1、第2前ノズル12-2、第2排気部13-2、および第2後ノズル14-2の全体を回転可能に構成されている。
【0058】
第1前ノズル12-1、第1排気部13-1、および第1後ノズル14-1に対して、第2前ノズル12-2、第2排気部13-2、および第2後ノズル14-2は、軸線B1を中心として異なる位相に配置されている。
粉塵の吸引効率を上げるため、部材の干渉が生じないことを前提として、排気ダクト131を被加工部31に近づけることが好ましい。前ノズル12と排気部13との干渉を考慮し、第1前ノズル12-1の先端と第1後ノズル14-1の先端とを結ぶ第1ラインL-1と、第2前ノズル12-2の先端と第2後ノズル14-2の先端とを結ぶ第2ラインL-2とがなす角度θは、例えば、90~150°の範囲で定められることが好ましい。第1ラインL-1と第2ラインL-2との交点にレーザービームBが位置していることが好ましい。
排気部13の形状および寸法、ノズル12,14の設置角度等によっては、角度θが例えば160~180°の場合は、部材同士が干渉するため、排気部13が被加工部31から離れてしまう。
【0059】
第1前ノズル12-1、第1排気部13-1、第1後ノズル14-1、第2前ノズル12-2、第2排気部13-2、および第2後ノズル14-2は、組付体100として、一体的に組み付けられていることが好ましい。部材同士の干渉を避け、排気ダクト131を被加工部31に近づけて配置するため、第1前ノズル12-1は、第2排気部13-2の排気ダクト131に支持されている。第2前ノズル12-2は、第1排気部13-1の排気ダクト131に支持されている。
【0060】
第1前ノズル12-1、第1排気部13-1、および第1後ノズル14-1は、往路A1において使用される。第2前ノズル12-2、第2排気部13-2、および第2後ノズル14-2は、復路A2において使用される。
図9(a)に示すように、往路A1では、溝32が形成される切断線に第1ラインL-1を沿わせるように組付体100を回転させた状態で加工が行われる。往路A1から復路A2へと折り返す際は、図9(b)に示すように、組付体100を例えば反時計回りに回転機構17-1により回転させ、溝32が形成される切断線に第2ラインL-2を沿わせる。この状態で、図9(c)に示すように復路A2における加工が行われた後、復路A2から往路A1へと折り返す際は、図9(d)に示すように、組付体100を例えば時計回りに回転させ、切断線に第1ラインL-1を沿わせる。
【0061】
第1ラインL-1と第2ラインL-2とがなす角度θが例えば120°等、360°を割り切れる角度である場合は、回転機構17-1を一方向に回転させることで、第1前ノズル12-1、第1排気部13-1、第1後ノズル14-1、第2前ノズル12-2、第2排気部13-2、および第2後ノズル14-2を往路A1および復路A2におけるそれぞれの位置に配置することができる。
【0062】
レーザーヘッド11の軸線B1を中心に組付体100を回転させる角度θが第1実施形態におけるノズル12,14および排気部13の回転動作の角度よりも小さいことにより、回転動作の所要時間を第1実施形態よりも短縮することができる。角度θがより小さく、かつ回転機構17-1が正方向および逆方向に回転可能であるのならば、より時間短縮を図ることができる。
図7を参照して説明したように、被加工領域Aの数にパス数を乗じた回数だけ、往路A1と復路A2との切り替えに伴うノズルおよびダクトの回転動作が発生する。そのため、組付体100の回転動作に要する時間の短縮は、ワークの加工時間の短縮に大きく貢献する。
【0063】
[第2実施形態]
次に、図10および図11(a)、(b)を参照し、本開示の第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、説明を簡略化または省略する。
レーザー加工機1-2は、ガントリー21およびヘッド駆動機構22を含む駆動部2と、ワーク支持部4と、制御部5-1と、粉塵を集める集塵機構401に接続され、被加工部31の周囲から粉塵を含むガスを排気させる排気室40と、排気室40を区画するカバー41と、カバー41をステージ213に支持する支持部42と、熱加工装置10-2とを備えている。
【0064】
熱加工装置10-2は、被加工部31にガスを吹き出す吹出ノズル12-3を備えている。本実施形態の吹出ノズル12-3は、第1実施形態の前ノズル12と同様に構成され、被加工部31よりも前側Fから被加工部31に向けてガスを吹き出す。熱加工装置10-2は、第1実施形態と同様の排気部13および後ノズル14を備えていてもよい。
吹出ノズル12-3は、レーザービームBにほぼ沿って、被加工部31に対してほぼ垂直にガスを吹き出すものであってもよい。この場合、被加工部31から全方位的に粉塵が飛散するため、カバー41のホース接続部417は、被加工部31よりも後側Rには限らず、カバー41の任意の箇所に設けることができる。
【0065】
熱加工装置10-2は、排気部13および後ノズル14のうち、排気部13を備えているか、あるいは両方を備えていることにより、粉塵の回収効率がさらに向上する。
例えば、排気部13や後ノズル14がレーザーヘッド11に支持されているためにレーザーヘッド11が受けるモーメントが大きくなる場合や、粉塵の飛散量が少ない場合には、レーザー加工機1-2は、粉塵対策としてカバー41のみを備えることができる。
【0066】
カバー41は、被加工領域Aにおけるレーザーヘッド11の移動範囲Stを実現する開口410(空隙)を残してワーク3を覆い、ガントリー21により駆動される。カバー41は、難燃材であることが好ましいが、レーザービームBの熱に耐えることが確認できれば、材質を問わない。ここで、レーザーヘッド11の移動範囲Stは、被加工領域Aの一端から他端までの長さであって、レーザーヘッド11から出射されるレーザービームBの走査範囲に相当する。
【0067】
カバー41は、レーザーヘッド11の移動範囲Stを確保するために、移動範囲Stと同等以上の寸法の開口410が形成された例えば箱状の部材であり、ワーク3の表面3Aに対向する上壁411,412と、四方の側壁413~416と、集塵機構401に接続するためのホースが接続されるホース接続部417とを備えている。カバー41の内側に留められた粉塵は、ホース接続部417へと向かい、集塵機構401により回収される。
なお、ホース接続部417に接続されるホースは、排気部13が接続される集塵機構130に接続されていてもよい。
【0068】
支持部42は、カバー41をステージ213に支持している、そのため、カバー41は、レーザーヘッド11を移動させるヘッド駆動機構22とは別の駆動系であるガントリー21により移動される。カバー41は、ステージ213に限らず、レーザーヘッド11の駆動系とは別の駆動系に備わる他の部材に支持されていてもよい。
【0069】
ワーク3を加工する際は、ヘッド駆動機構22によりレーザーヘッド11を移動させることで、被加工領域A毎に複数パスによる切断加工を行うとともに、被加工領域Aの切断を終えると、ガントリー21によりレーザーヘッド11を移動させることで、次の被加工領域Aの加工開始位置P1に移動する。ここで、カバー41は、ガントリー21のステージ213に設置されているため、加工開始位置P1への移動時にのみ移動され、被加工領域Aを複数回レーザーヘッド11が移動する間は移動されない。被加工領域A内でレーザーヘッド11が移動する際、レーザーヘッド11はカバー41の開口410の範囲で移動するため、カバー41とは干渉しない。
【0070】
吹出ノズル12-3が被加工部31よりも前側Fから被加工部31にガスを吹き出す場合、ホース接続部417は、被加工部31から後側Rに飛散する粉塵を回収するため、被加工部31よりも後側Rに配置されることが好ましい。後ノズル14が設置されている場合、ホース接続部417は、後ノズル14から吹き出すガスの流れに影響を与えないように、後ノズル14からある程度離間していることが好ましい。
カバー41は、必ずしも一体に形成されている必要はない。例えば、上壁411,412は、側壁413~416に装着されるフィルムであってもよい。
【0071】
カバー41により、被加工部31の周囲に排気室40が区画される。排気室40には、吹出ノズル12-3およびホース接続部417が配置される。排気部13および後ノズル14を備えている場合は、それらも排気室40に配置される。カバー41の大きさは、移動範囲Stの確保、および、吹出ノズル12-3およびホース接続部417等が排気室40に配置されることを前提として、粉塵の分布状況を考慮して決めることができる。
【0072】
排気室40の容積が小さいほど、また、開口410が狭いほど、吸引効率を高めることができる。カバー41の高さh2は、一例としては、レーザービームBの出射部11Aの高さと同程度である。カバー41の高さh2は、カバー41の耐熱性および吸引効率を考慮して決められる。カバー41の耐熱性を確保することができれば、上壁411,412をx方向またはy方向にレーザーヘッド11に近づけて開口410を小さくすることができる。
【0073】
側壁413~416の端縁には、カバー41とワーク3との間の隙間を塞いで吸引効率を高めるため、ブラシシール418が設けられることが好ましい。ブラシシール418は、第1実施形態のブラシシール132と同様に構成することができる。
【0074】
後ノズル14や排気部13よりも大きい部材であるカバー41をヘッド駆動機構22またはレーザーヘッド11に設けるとすれば、それらの部材が受けるモーメントが大きくなる。本実施形態のようにカバー41がガントリー21に設置されることによれば、カバー41によりレーザーヘッド11およびヘッド駆動機構22にモーメントを加えることなく、被加工部31の周囲にカバー41を備えて、被加工部31の周囲から粉塵を漏れなく回収することができる。
【0075】
レーザービームBの移動経路がワーク3の平面視において曲線や斜めであったり、またワーク3の厚さ方向に対して傾斜していたりする場合に、第1実施形態の方策による粉塵回収効率が劣るとしても、第2実施形態によれば、被加工部31の周辺をカバー41により覆うため、効率が低下することなく粉塵を回収することができる。
【0076】
第2実施形態は、溝32が形成される加工には限らず、溶接や孔あけ加工に関しても、粉塵を効率よく回収することができる。
【0077】
[第2変形例]
図12に示す第2変形例の熱加工装置10-3は、レーザーヘッド11と、被加工部31よりも前側Fから被加工部31にガスを吹き出す前ノズル12と、被加工部31の近傍であって被加工部31の後側Rから粉塵を含むガスを排気させる排気部13とを備えている。
熱加工装置10-3は、後ノズル14を備えていなくても、排気ダクト131により被加工部31の近傍を囲って排気し、かつ排気ダクト131とワーク3との間の隙間を例えばブラシシール132等のシール部材により塞ぐことで、粉塵を含むガスの排気部13への排気を促進させることができる。そのため、被加工部31の近傍から局所的に効率よく粉塵を回収することができるので、大型のワーク3や、厚肉のワーク3を加工する場合であっても、装置のコンパクト化および効率的な粉塵回収を実現するとともに、レーザービームBへの粉塵による干渉を防止して加工効率を向上させることができる。
図12に示す熱加工装置10-3は、溝32が形成される加工には限らず、溶接や孔あけ加工に関しても、粉塵を効率よく回収することができる。
【0078】
第2変形例において、前ノズル12(ノズル)および排気部13は、部材相互の干渉等を考慮し、図12に示す位置関係とは逆に配置されていてもよい。つまり、加工方向D1における後側Rからノズルが被加工部31にガスを吹き出し、被加工部31の前側Fであって被加工部31の近傍から排気部13が粉塵を含むガスを排気させるように構成されていてもよい。この場合も、第2変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0079】
図8および図9を参照して説明した第1変形例の構成は、第1実施形態だけでなく、第2変形例にも適用することができる。その場合は、熱加工装置10-3は、レーザーヘッド11と、第1前ノズル12-1と、第1排気部13-1と、第2前ノズル12-2と、第2排気部13-2と、回転機構17-1とを備えている。
また、第1前ノズル12-1および第1排気部13-1に対して、第2前ノズル12-2および第2排気部13-2は、軸線B1を中心として異なる位相に配置されている。
【0080】
第1前ノズル12-1、第1排気部13-1、第2前ノズル12-2、および第2排気部13-2は、組付体として一体的に組み付けられていることが好ましい。
第1変形例の説明と同様に、レーザーヘッド11の軸線B1を中心に組付体を回転させる角度θが第1実施形態におけるノズル12,14および排気部13の回転動作の角度よりも小さいことにより、ワーク3の加工時間の短縮を図ることができる。
【0081】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本開示の熱加工装置は、上記各実施形態のレーザー加工機には限らず、ガスを燃焼させて切断、溶接等を行うガス加工機、あるいは、プラズマによる放電によりワーク3に熱エネルギーを与えることで切断や溶接を行うプラズマ加工機等にも適用することができる。
【0082】
[付記]
〔1〕ワーク(3)を加熱して加工する熱加工装置(10)であって、
前記ワーク(3)の被加工部(31)に熱エネルギーを与えることで、前記ワーク(3)に対する相対的な移動の方向である加工方向(D1)に沿って延びる溝(32)を前記ワーク(3)に形成可能に構成される熱エネルギー付与部(11)と、
前記加工方向(D1)における前側(F)および後側(R)の一方から前記被加工部(31)にガスを吹き出す第1ノズル(12)と、
前記加工方向(D1)における前側(F)および後側(R)の前記一方および他方のうち、前記被加工部(31)の前記他方における所定位置(141)にガスを吹き出す第2ノズル(14)と、
前記ワーク(3)の熱加工に伴う生成物を集める集塵機構(130)に接続され、前記被加工部(31)と前記所定位置(141)との間から前記生成物を含むガスを排気させる排気部(13)と、を備える、
熱加工装置(10)。
【0083】
〔2〕前記排気部(13)は、前記生成物を受け入れて前記集塵機構(130)に向けて排出させるダクト(131)を含む、
〔1〕項に記載の熱加工装置。
【0084】
〔3〕前記排気部(13)は、前記ダクト(131)および前記ワーク(3)の間に介在するシール(132)を含む、
〔2〕項に記載の熱加工装置。
【0085】
〔4〕前記溝(32)の内側では、前記第1ノズル(12)から流出するガスの流れが前記第2ノズル(14)から流出するガスの流れと衝突する、
〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の熱加工装置。
【0086】
〔5〕前記第2ノズル(14)から流出するガスの流速の加工方向成分は、前記第1ノズル(12)から流出するガスの流速の加工方向成分以下である、
〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の熱加工装置。
【0087】
〔6〕前記第1ノズル(12)から流出するガスの流れの方向は、前記加工方向(D1)の成分と、前記溝(32)の深さの方向(D2)の成分と、を含み、
前記第2ノズル(14)から流出するガスの流れの方向は、前記溝(32)の深さの方向(D2)の成分を含む、
〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載の熱加工装置。
【0088】
〔7〕前記ワーク(3)に対する前記熱エネルギー付与部(11)の往復移動の往路(A1)において使用される往路用の前記第1ノズル(12-1)、往路用の前記排気部(13-1)、および往路用の前記第2ノズル(14-1)と、
前記往復移動の復路(A2)において使用される復路用の前記第1ノズル(12-2)、復路用の前記排気部(13-2)、および復路用の前記第2ノズル(14-2)と、
前記熱エネルギー付与部(11)に設定される軸線(B1)を中心に、前記往路用の第1ノズル(12-1)、前記往路用の排気部(13-1)、前記往路用の第2ノズル(14-1)、前記復路用の第1ノズル(12-2)、前記復路用の排気部(13-2)、および前記復路用の第2ノズル(14-2)の全体を回転可能に構成される回転機構(17-1)と、を備え、
前記復路用の第1ノズル(12-2)、前記復路用の排気部(13-2)、および前記復路用の第2ノズル(14-2)は、前記往路用の第1ノズル(12-1)、前記往路用の排気部(13-1)、および前記往路用の第2ノズル(14-1)に対して、前記軸線(B1)を中心として異なる位相に配置される、
〔1〕から〔6〕のいずれか一項に記載の熱加工装置。
【0089】
〔8〕ワーク(3)を加熱して加工する熱加工装置(10-3)であって、
前記ワーク(3)の被加工部(31)に熱エネルギーを与えることで、前記ワーク(3)に対する相対的な移動の方向である加工方向(D1)に沿って前記被加工部(31)を加工する熱エネルギー付与部(11)と、
前記加工方向(D1)における前側(F)および後側(R)の一方から前記被加工部(31)にガスを吹き出すノズルと、
前記ワーク(3)の熱加工に伴う生成物を集める集塵機構(130)に接続され、前記加工方向(D1)における前側(F)および後側(R)の前記一方および他方のうち前記被加工部(31)の前記他方であって前記被加工部(31)の近傍から前記生成物を含むガスを排気させる排気部(13)と、を備え、
前記排気部(13)は、
前記生成物を受け入れて前記集塵機構(130)に向けて排出させるダクト(131)と、
前記ダクト(131)および前記ワーク(3)の間に介在するシール(132)と、を含む、
熱加工装置(10-3)。
【0090】
〔9〕前記ワーク(3)に対する前記熱エネルギー付与部(11)の往復移動の往路(A1)において使用される往路用の前記ノズル(12-1)および往路用の前記排気部(13-1)と、
前記往復移動の復路(A2)において使用される復路用の前記ノズル(12-2)および復路用の前記排気部(13-2)と、
前記熱エネルギー付与部(11)に設定される軸線を中心に、前記往路用のノズル(12-1)、前記往路用の排気部(13-1)、前記復路用のノズル(12-2)、および前記復路用の排気部(13-2)の全体を回転可能に構成される回転機構(17-1)と、を備え、
前記復路用のノズル(12-2)および前記復路用の排気部(13-2)は、前記往路用のノズル(12-1)および前記往路用の排気部(13-1)に対して、前記軸線(B1)を中心として異なる位相に配置される、
〔8〕項に記載の熱加工装置。
【0091】
〔10〕前記熱エネルギー付与部(11)は、前記被加工部(31)にレーザーを照射可能に構成される、
〔1〕から〔9〕のいずれか一項に記載の熱加工装置。
【0092】
〔11〕前記ワーク(3)および前記熱エネルギー付与部(11)の少なくとも一方を移動させる駆動部(2)を備える、
〔1〕から〔10〕のいずれか一項に記載の熱加工装置。
【0093】
〔12〕少なくとも前記駆動部を制御する制御部(5)を備え、
前記制御部(5)は、
前記ワーク(3)の前記加工方向(D1)に区分される複数の被加工領域(A)のそれぞれの加工開始位置(P1)に前記熱エネルギー付与部(11)を移動可能であるとともに、
前記被加工領域(A)のそれぞれにおける前記加工方向(D1)への前記熱エネルギー付与部(11)の複数回の移動が可能に構成される、
〔11〕項に記載の熱加工装置。
【0094】
〔13〕ワーク(3)を加熱して加工する熱加工装置(10-2)であって、
前記ワーク(3)の被加工部(31)に熱エネルギーを与えることで、前記ワーク(3)に対する相対的な移動の方向である加工方向(D1)に沿って前記被加工部(31)を加工する熱エネルギー付与部(11)と、
前記被加工部(31)にガスを吹き出す吹出ノズル(12-3)と、
前記ワーク(3)の熱加工に伴う生成物を集める集塵機構(130)に接続され、前記被加工部(31)の周囲から前記生成物を含むガスを排気させる排気室(40)と、
前記被加工部(31)の周囲に前記排気室(40)を区画するカバー(41)と、
前記ワーク(3)に対して前記熱エネルギー付与部(11)を移動させる駆動部(2)と、
少なくとも前記駆動部(2)を制御する制御部(5-1)と、を備え、
前記駆動部(2)は、
前記熱エネルギー付与部(11)を移動可能に構成される第1駆動機構(22)と、
前記第1駆動機構とは別の第2駆動機構(21)と、を備え、
前記制御部(5-1)は、
前記ワーク(3)の前記加工方向(D1)に区分される複数の被加工領域(A)のそれぞれの加工開始位置(P1)に前記熱エネルギー付与部(11)を移動可能であるとともに、
前記被加工領域(A)のそれぞれにおける前記加工方向(D1)への前記熱エネルギー付与部(11)の複数回の移動が可能に構成され、
前記カバー(41)は、前記被加工領域(A)における前記熱エネルギー付与部(11)の移動範囲(St)を実現する空隙(410)を残して前記ワーク(3)を覆い、前記第2駆動機構(22)により駆動される、熱加工装置(10-2)。
【0095】
〔14〕ワーク(3)を加熱して加工する熱加工方法であって、
前記ワーク(3)の被加工部(31)に熱エネルギーを与える熱エネルギー付与部(11)を前記ワーク(3)に対して加工方向(D1)に相対的に移動させることで、前記加工方向(D1)に沿って延びる溝(32)を前記ワーク(3)に形成しながら、
前記加工方向(D1)における前側(F)および後側(R)の一方から第1ノズル(12)により前記被加工部(31)にガスを吹き出しつつ、
前記加工方向(D1)における前側(F)および後側(R)の前記一方および他方のうち、前記被加工部(31)の前記他方における所定位置(141)に第2ノズル(14)によりガスを吹き出し、かつ、
前記被加工部(31)と前記所定位置(141)との間から、前記ワーク(3)の熱加工に伴う生成物を集める集塵機構(130)に向けてガスを排気させる、
熱加工方法。
【0096】
〔15〕ワーク(3)を加熱して加工する熱加工方法であって、
前記ワーク(3)の被加工部(31)に熱エネルギーを与える熱エネルギー付与部(11)を前記ワーク(3)に対して加工方向(D1)に相対的に移動させながら、
前記加工方向(D1)における前側(F)および後側(R)の一方から前記被加工部(31)にノズルによりガスを吹き出しつつ、
前記加工方向(D1)における前側(F)および後側(R)の前記一方および他方のうち前記被加工部(31)の前記他方であって前記被加工部(31)の近傍から、前記ワーク(3)の熱加工に伴う生成物を集める集塵機構(130)に向けてガスを排気させ、
前記ガスの排気は、前記生成物を受け入れて前記集塵機構(130)に向けて排出させるダクト(131)と前記ワーク(3)との間にシール(132)を介在させた状態で行う、
熱加工方法。
【0097】
〔16〕ワーク(3)を加熱して加工する熱加工方法であって、
前記ワーク(3)の被加工部(31)に熱エネルギーを与える熱エネルギー付与部(11)を前記ワーク(3)に対して加工方向(D1)に相対的に移動させながら、
前記被加工部(31)に吹出ノズルによりガスを吹き出しつつ、
前記被加工部(31)の周囲から、前記ワーク(3)の熱加工に伴う生成物を集める集塵機構(130)に向けてガスを排気させ、
前記ワーク(3)に対する前記熱エネルギー付与部(11)の移動は、
前記ワーク(3)の前記加工方向(D1)に区分される複数の被加工領域(A)のそれぞれの加工開始位置(P1)に前記熱エネルギー付与部(11)を順次移動させるとともに、前記被加工領域(A)のそれぞれにおいて前記加工開始位置(P1)から前記加工方向(D1)へと前記熱エネルギー付与部(11)を複数回に亘り移動させることで行われ、
前記ガスの排気は、
前記被加工領域(A)における前記熱エネルギー付与部(11)の移動範囲(St)を実現する空隙(410)を残して前記ワーク(3)を覆うとともに、前記熱エネルギー付与部(11)を駆動する第1駆動機構(22)とは別の第2駆動機構(21)により駆動されるカバー(41)により、前記被加工部(31)の周囲に排気室(40)を区画しつつ行われる、熱加工方法。
【符号の説明】
【0098】
1,1-2 レーザー加工機
2 駆動部
3 ワーク
3A 表面
4 ワーク支持部
5,5-1 制御部
10,10-2 ,10-3 熱加工装置
11 レーザーヘッド(熱エネルギー付与部)
11A 出射部
12 前ノズル(第1ノズル)
12A 先端
12B 基端
12-1 第1前ノズル(往路用の第1ノズル)
12-2 第2前ノズル(復路用の第1ノズル)
12-3 吹出ノズル
13 排気部
13-1 第1排気部(往路用の排気部)
13-2 第2排気部(復路用の排気部)
13H ホース
14 後ノズル(第2ノズル)
14-1 第1後ノズル(往路用の第2ノズル)
14-2 第2後ノズル(往路用の第2ノズル)
14A 先端
14B 基端
15,16 支持部
17,17-1 回転機構
21 ガントリー(第2駆動機構)
22 ヘッド駆動機構(第1駆動機構)
31 被加工部
32 溝
32A 底
40 排気室
41 カバー
42 支持部
100 組付体
130 集塵機構
131,131-1,131-2 排気ダクト(ダクト)
131A,131B,131C 側壁
131D 後壁
131E ホース接続部
131F,131G 開口
131J 吸引口
132 ブラシシール(シール)
141 所定位置
210 ベース
211 コラムまたは支持壁
212 クロスレール
213 ステージ
401 集塵機構
410 開口(空隙)
411,412 上壁
413~416 側壁
417 ホース接続部
418 ブラシシール(シール)
A 被加工領域
A1 往路
A2 復路
B レーザービーム
B1 軸線
C 衝突位置
D1 加工方向
D2 溝の深さ方向
fc 焦点
F 前側
h,h2 高さ
L1,L2 長さ
L-1 第1ライン
L-2 第2ライン
P1 加工開始位置
R 後側
St 移動範囲
w 幅
θ 角度
φ 内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12