(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104434
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】光通信照明システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/116 20130101AFI20240729BHJP
H04B 10/564 20130101ALI20240729BHJP
【FI】
H04B10/116
H04B10/564
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008632
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 賢二
(72)【発明者】
【氏名】片山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】東 真吾
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA21
5K102AH26
5K102AL23
5K102MA01
5K102MB02
5K102MC11
5K102PB02
5K102PH31
(57)【要約】
【課題】通信が阻害される機会を避けて、通信精度を向上させることができる光通信照明システムを提供する。
【解決手段】光通信照明システムは、光を投光する複数の光通信照明装置で光通信を行う。光通信照明装置Lは、光の色相および/または光量を変化させて投光する可変投光部11と、可変投光部11に送信させる信号を生成する信号生成部12と、可変投光部11から送信された信号を受信する受信部13と、時間を計測する内蔵タイマ14と、受信部13が受信した信号に基づいて、可変投光部11の出力を制御する制御部15とを有する。制御部15は、内蔵タイマ14で計測した時間に基づいて、可変投光部11に信号を送信させるタイミングを制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を投光する複数の光通信照明装置で光通信を行う光通信照明システムであって、
前記光通信照明装置は、
光の色相および/または光量を変化させて投光する可変投光部と、
前記可変投光部に送信させる信号を生成する信号生成部と、
前記可変投光部から送信された信号を受信する受信部と、
時間を計測する内蔵タイマと、
前記受信部が受信した信号に基づいて、前記可変投光部の出力を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記内蔵タイマで計測した時間に基づいて、前記可変投光部に信号を送信させるタイミングを制御すること
を特徴とする光通信照明システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光通信照明システムであって、
前記制御部は、前記受信部が受信した信号に基づいて、前記内蔵タイマのカウントをリセットさせ、それぞれの前記光通信照明装置における前記内蔵タイマがカウントするタイミングを同期させること
を特徴とする光通信照明システム。
【請求項3】
請求項1に記載の光通信照明システムであって、
前記可変投光部は、光の色相および/または光量が変化する変化タイミングからずらして、信号を送信すること
を特徴とする光通信照明システム。
【請求項4】
請求項3に記載の光通信照明システムであって、
前記制御部は、それぞれの前記光通信照明装置における前記変化タイミングを共有すること
を特徴とする光通信照明システム。
【請求項5】
請求項1に記載の光通信照明システムであって、
複数の前記光通信照明装置は、それぞれに対応する固有番号が割り当てられ、
前記可変投光部は、前記固有番号を含む信号を送信すること
を特徴とする光通信照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光を投光する複数の光通信照明装置で光通信を行う光通信照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明器具は、様々な場所に設置されている。近年では、可視光を通信媒体として用いる光通信が開発されており、照明光を変調することにより光通信を行うトンネル照明システムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトンネル照明システムは、トンネルに沿って配置される複数の照明器具と、照明器具を制御するコントローラとを備え、トンネル照明を制御するための制御情報を照明器具の可視光通信機能を用いて、トンネルの一方の杭口から他方の杭口にかけて順に伝送する構成になっている。
【0005】
上述したトンネル照明システムでは、制御情報等を順々に伝送していくので、伝送方向の末端に行くほど伝送遅延が大きくなるという課題がある。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、通信が阻害される機会を避けることができる光通信照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る光通信照明システムは、光を投光する複数の光通信照明装置で光通信を行う光通信照明システムであって、前記光通信照明装置は、光の色相および/または光量を変化させて投光する可変投光部と、前記可変投光部に送信させる信号を生成する信号生成部と、前記可変投光部から送信された信号を受信する受信部と、時間を計測する内蔵タイマと、前記受信部が受信した信号に基づいて、前記可変投光部の出力を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記内蔵タイマで計測した時間に基づいて、前記可変投光部に信号を送信させるタイミングを制御することを特徴とする。
【0008】
本開示に係る光通信照明システムでは、前記制御部は、前記受信部が受信した信号に基づいて、前記内蔵タイマのカウントをリセットさせ、それぞれの前記光通信照明装置における前記内蔵タイマがカウントするタイミングを同期させる構成としてもよい。
【0009】
本開示に係る光通信照明システムでは、前記可変投光部は、光の色相および/または光量が変化する変化タイミングからずらして、信号を送信する構成としてもよい。
【0010】
本開示に係る光通信照明システムでは、前記制御部は、それぞれの前記光通信照明装置における前記変化タイミングを共有する構成としてもよい。
【0011】
本開示に係る光通信照明システムは、複数の前記光通信照明装置は、それぞれに対応する固有番号が割り当てられ、前記可変投光部は、前記固有番号を含む信号を送信する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によると、信号を送信するタイミングを制御することで、通信が阻害される機会を避けて、通信精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施の形態に係る光通信照明システムの模式構成図である。
【
図2】光通信照明装置の基本構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】色相または光量の変化と信号との関係を示す説明図である。
【
図4】光通信照明装置における変化タイミングと信号との関係を示す説明図である。
【
図5】本開示の実施の形態に係る光通信照明システムの変形例の模式構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態に係る光通信照明システムについて、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本開示の実施の形態に係る光通信照明システムの模式構成図である。
【0016】
本開示の実施の形態に係る光通信照明システム1では、複数の光通信照明装置Lが、道路Rに沿って対向配列方式で配置されている。光通信照明装置Lは、光の色相および/または光量を変化させて投光する可変投光部11(
図2参照)を備えており、可変投光部11は、周囲を照らす照明として機能すると伴に、可変投光部11のうちの全部または一部を使用し、他の光通信照明装置Lへ向けた信号を送信して可視光通信を行う。通信仕様については、データ形式が「JEITA CP-1222準拠」とされ、送信変調方式が「サブキャリア 28.8kbps」とされ、通信速度が「4.8kbps」とされている。
【0017】
複数の光通信照明装置Lには、それぞれに対応する固有番号(ID)が割り当てられており、可変投光部11は、光通信を行う際、固有番号を含む信号を送信する。このように、各光通信照明装置Lに割り当てられた固有番号を用いて光通信を行うことで、混信を避けて誤動作を防ぐことができる。
図1に示す構成例では、配置されている順に沿って、「1」から「n」の固有番号が割り当てられており、この順に沿って、順々に信号を伝送している。また、以下では、複数の光通信照明装置Lを区別する際、割り当てられた固有番号に対応して、それぞれ異なる符号(光通信照明装置L1ないし光通信照明装置Ln)を用いて呼ぶことがある。
【0018】
図2は、光通信照明装置の基本構成を説明するためのブロック図である。
【0019】
光通信照明装置Lは、可変投光部11、信号生成部12、受信部13、内蔵タイマ14、および制御部15を有する。なお、
図2では、光通信照明装置Lのうち、要部を抜き出して示しており、他の部材を適宜備えていてもよい。
【0020】
可変投光部11は、複数の発光素子を備えるLEDとされており、光の色相および/または光量を変化させて投光する。具体的に、可変投光部11は、赤色、青色、緑色などの単色の発光素子および白色の発光素子を複数組み合わせて構成されており、電源から供給される電流によって調光率を制御して、光の色相や光量を変化させる。
【0021】
信号生成部12は、CPUやFPGAなどが搭載されており、光通信で送信する信号波形を生成し可変投光部11に出力させる。受信部13は、可変投光部11から投光される光を受光するフォトダイオードであって、光量を計測して信号を受信する。内蔵タイマ14は、時間を計測しており、制御部15からの指示によって、適宜カウントをリセットする。制御部15は、受信部13が受信した信号に基づいて、可変投光部11の出力を制御する。
【0022】
内蔵タイマ14は、光通信照明装置Lを起動した際にカウントを始めており、起動直後では、光通信照明装置L毎に、バラバラのタイミングでカウントを行っている。そして、制御部15からカウントをリセットする指令(同期制御指令)を受けると、内蔵タイマ14は、カウントをリセットし、複数の光通信照明装置Lでカウントタイミングが同期される。
【0023】
ところで、
図1に示すように、光通信照明システム1では、複数の光通信照明装置Lで順々に信号を伝送しており、伝送遅延が生じてしまう。伝送遅延が大きくなった際には、例えば、「一斉点滅」のような制御を行ったとしても、点滅タイミングがずれてしまい、「流れ点滅」のようになってしまう。
【0024】
これに対し、本実施の形態において、制御部15は、内蔵タイマ14で計測した時間に基づいて、可変投光部11に信号を送信させるタイミングを制御している。つまり、複数の光通信照明装置Lにおいて、それぞれでの伝送遅延を演算し、内蔵タイマ14のカウントタイミングを補正することで、内蔵タイマ14を同期させている。
【0025】
このように、信号を送信するタイミングを制御することで、通信が阻害される機会を避けて、通信精度を向上させることができる。そして、内蔵タイマ14を同期させることで、複数の光通信照明装置Lでの制御動作のズレを無くすことができる。例えば、複数の光通信照明装置Lを一斉に点滅させるといった制御を行う際、信号の伝送遅延を考慮して、点滅を開始するタイミングを揃えることができる。
【0026】
次に、可変投光部11の色相または光量の変化と、光通信における信号との関係について、
図3を参照して説明する。
【0027】
図3は、色相または光量の変化と信号との関係を示す説明図である。
【0028】
矢符Aで示すグラフは、可変投光部11の色相または光量の時間変化を示している。
図3に示す一例では、時間「T」において、色相または光量が急峻に変化している。なお、可変投光部11の出力においては、色相と光量とについて、いずれか一方だけを変化させてもよいし、両方を併せて変化させてもよい。
【0029】
矢符Bで示すグラフは、信号生成部12で生成した信号を示しており、信号は矩形波とされている。なお、
図3では、周期的に変動する信号を一例として示しているが、これに限定されず、信号の内容に応じて、値を増減させるタイミングをずらしてもよい。
【0030】
矢符Cで示すグラフは、可変投光部11の色相または光量の変化(矢符Aで示すグラフ)と、光通信の受信(矢符Bで示すグラフ)とが重なった状態を示している。光通信照明システム1において、可変投光部11の色相または光量の変化は、光通信における外乱ノイズとなる。
図3に示す一例では、時間「T」において、色相または光量が急峻に変化したことを受けて信号波形が崩れており、このことが光通信の阻害要因となっている。
【0031】
そこで、本実施の形態では、光の色相または光量が変化する変化タイミングからずらして、可変投光部11に信号を送信させてる。次に、信号を送信するタイミングをずらす動作について、
図4を参照して説明する。
【0032】
図4は、光通信照明装置における変化タイミングと信号との関係を示す説明図である。
【0033】
図4では、複数の光通信照明装置Lのそれぞれについて、色相または光量の変化と信号を送信するタイミングとの関係を、時間の経過に沿って示しており、ここでは、6つの光通信照明装置L(光通信照明装置L1ないし光通信照明装置L6)を備えた構成を一例として示している。
【0034】
光通信照明装置Lでは、制御部15から指示されたタイミングに、色相または光量を変化させる動作(変化動作HD)を実施している。
図4に示すように、光通信照明装置L1から光通信照明装置L2へは、いずれにおいても変化動作HDを実施していないタイミングに第1信号S1を送信している。また、光通信照明装置L2では、第1信号S1を受信した直後に第2信号S2を送信しようとすると、光通信照明装置L3が変化動作HDを実施している。そこで、変化動作HDと重なる時間では、調整時間CTを設けて第2信号S2の送信を遅らせている。他の光通信照明装置Lでも同じように動作しており、光通信照明装置L4から光通信照明装置L5へ第4信号S4を送信する際も、光通信照明装置L5の変化動作HDと重なるので、調整時間CTを設けて第4信号S4の送信を遅らせている。
【0035】
信号伝送における時間の調整については、例えば、次に示す計算式を用いて算出してもよい。なお、計算式においては、光通信1回あたりの伝送遅延時間をTdとし、タイミング調整1回あたりの遅延時間(調整時間CTに対応)をTmとし、光通信照明装置Lから次の光通信照明装置Lへ信号を伝送した回数をnとしている。そして、n+1回目の伝送遅延は、「Td×n+Σ(Tm)」という計算式となる。
【0036】
このように、光通信を行う際、色相変化・光量変化が発生するタイミングからずらすことで、通信を阻害する要因を回避することができ、通信精度を向上させることができる。
【0037】
また、それぞれの光通信照明装置Lにおける変化タイミングを共有させておくと、適切なタイミングに信号を送信することができる。
【0038】
光通信照明システム1では、1つの光通信照明装置Lから複数の光通信照明装置Lに信号を送信するようにしてもよい。次に、本開示の実施の形態に係る光通信照明システムの変形例について、図面を参照して説明する。
【0039】
図5は、本開示の実施の形態に係る光通信照明システムの変形例の模式構成図である。
【0040】
図5に示す変形例では、配置されている順に沿って、1つの光通信照明装置Lから複数の光通信照明装置Lに信号を送信している。受信側における複数の光通信照明装置Lでは、いずれか1つの光通信照明装置Lから信号を送信しており、残りの光通信照明装置Lは、信号を送信しない。
図5に示す変形例について詳しく説明すると、光通信照明装置L1は、2つの光通信照明装置L2および光通信照明装置L3に信号を送信する。そして、光通信照明装置L2は、信号を送信せず、光通信照明装置L3が、次に受信側となる光通信照明装置L4および光通信照明装置L5に信号を送信する。同様の動作を繰り返して、全ての光通信照明装置Lに信号を伝送していく。このように、複数の光通信照明装置Lを送信すると、光通信照明システム1全体での信号の伝送回数を減らして、伝送遅延を小さくすることができる。
【0041】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 光通信照明システム
L 光通信照明装置
11 可変投光部
12 信号生成部
13 受信部
14 内蔵タイマ
15 制御部