(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104437
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】既設管切断除去装置及び既設管切断除去方法
(51)【国際特許分類】
F16K 43/00 20060101AFI20240729BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F16K43/00
F16L55/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008638
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】各務 修爾
(72)【発明者】
【氏名】山本 大介
(72)【発明者】
【氏名】杉本 翔太
【テーマコード(参考)】
3H066
【Fターム(参考)】
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】施工作業の効率を向上させる既設管切断除去装置を構成する。
【解決手段】密閉空間で既設管1の一部を切断する既設管切断除去装置であって、既設管1を収容して密閉空間を形成するハウジング10と、既設管1を切断する切断機構と、を備え、ハウジング10は、既設管1の切断箇所1sを視認可能な窓部110と、切断箇所1sに形成されたバリを除去するバリ除去機を挿入可能な挿入穴部120と、を有する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉空間で既設管の一部を切断する既設管切断除去装置であって、
前記既設管を収容して前記密閉空間を形成するハウジングと、
前記既設管を切断する切断機構と、を備え、
前記ハウジングは、前記既設管の切断箇所を視認可能な窓部と、前記切断箇所に形成されたバリを除去するバリ除去機を挿入可能な挿入穴部と、を有する既設管切断除去装置。
【請求項2】
前記窓部の近傍に配置され、前記切断機構によって切断されることにより発生した切粉に向けて流体を噴射可能なノズルを更に備える請求項1に記載の既設管切断除去装置。
【請求項3】
前記挿入穴部及び前記ノズルは、前記切断箇所に対して前記既設管の径方向外側に設けられる請求項2に記載の既設管切断除去装置。
【請求項4】
前記ハウジングに挿入される前記バリ除去機を更に備え、
前記バリ除去機は、軸が継ぎ足し自在に構成されている請求項1又は2に記載の既設管切断除去装置。
【請求項5】
密閉空間で既設管の一部を切断する既設管切断除去方法であって、
前記既設管の切断対象箇所を収容するようにハウジングを配置して前記密閉空間を形成するハウジング配置工程と、
前記既設管を切断機構で切断する切断工程と、
前記切断機構によって切断された前記既設管の切断箇所にバリが形成されているか否かを、前記ハウジングに形成された窓部を介して確認するバリ有無確認工程と、
前記バリ有無確認工程において、前記切断箇所に前記バリが形成されていることが確認されると、前記バリを除去するためのバリ除去機を前記ハウジングに形成された挿入穴部を介して前記ハウジングに挿入し、前記バリを除去するバリ除去工程と、を含む既設管切断除去方法。
【請求項6】
前記バリ有無確認工程及び前記バリ除去工程は、
前記切断機構によって切断されることにより発生した切粉に向けて流体をノズルから噴射する流体噴射工程を含む請求項5に記載の既設管切断除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管の一部を切断する既設管切断除去装置及び既設管切断除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体管に密封状に取付けられる筐体の内部で流体管を切断する切削装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の切削装置は、軸部材と、軸部材の下端部に接続されたエンドミルと、軸部材及びエンドミルを、流体管を横断するように平行移動させることが可能なハンドリング部とを備える。上記の切削装置は、流体管に向けて軸部材の軸方向に進行させることにより流体管の上端部の一部を所定量切断して貫通穿孔した後、作業者によるハンドリング部の操作によって流体管を横断するようにエンドミルが平行移動し、エンドミルの側面の切削刃により流体管を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される切削装置では、切削刃の平行移動方向と切削刃の回転方向が反対方向の場合、バリ等の切削残しが生じやすい。流体管に形成されたバリは、例えば、切削装置によって切削された箇所に弁体を送り込む作業等の施工作業の効率を低下させる虞がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、施工作業の効率を向上させる既設管切断除去装置及び既設管切断除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る既設管切断除去装置の特徴構成は、密閉空間で既設管の一部を切断する既設管切断除去装置であって、前記既設管を収容して前記密閉空間を形成するハウジングと、前記既設管を切断する切断機構と、を備え、前記ハウジングは、前記既設管の切断箇所を視認可能な窓部と、前記切断箇所に形成されたバリを除去するバリ除去機を挿入可能な挿入穴部と、を有する点にある。
【0008】
この特徴構成によると、切断箇所を視認可能な窓部と、切断箇所に形成されたバリを除去するバリ除去機を挿入可能な挿入穴部とがハウジングに形成されるため、ハウジングの外側からの作業によって既設管に形成されたバリを除去することができる。これにより、施工作業の効率を向上させることができる。
【0009】
他の構成として、前記窓部の近傍に配置され、前記切断機構によって切断されることにより発生した切粉に向けて流体を噴射可能なノズルを更に備えてもよい。
【0010】
この特徴構成によると、例えば、窓部からの視界が切粉によって遮られた場合であっても、ノズルにより切粉を移動させることができるため、施工作業の効率を向上させることができる。
【0011】
他の構成として、前記挿入穴部及び前記ノズルは、前記切断箇所に対して前記既設管の径方向外側に設けられてもよい。
【0012】
この特徴構成によると、バリ除去機が挿入される挿入穴部が、切断箇所に対して既設管の径方向外側に設けられるため、切断箇所に形成されたバリを効率よく除去することができる。また、切粉が他の箇所よりも多く発生しやすい切断箇所に対して既設管の径方向外側にノズルが設けられるため、切粉を効率よく移動(除去)することができる。この結果、施工作業の効率を向上させることができる。
【0013】
他の構成として、前記ハウジングに挿入される前記バリ除去機を更に備え、前記バリ除去機は、軸が継ぎ足し自在に構成されてもよい。
【0014】
例えば、軸を継ぎ足しするように構成されていない長尺のバリ除去機をハウジングに挿入及びハウジングから抜き出す際、長尺のバリ除去機の長さ分だけ、既設管の周りに作業空間が必要になる。しかしながら、本特徴構成によると、バリ除去機の軸が継ぎ足し自在に構成されているため、作業空間の省スペース化を図ることができる。
【0015】
本発明に係る既設管切断除去方法の特徴構成は、密閉空間で既設管の一部を切断する既設管切断除去方法であって、前記既設管の切断対象箇所を収容するようにハウジングを配置して前記密閉空間を形成するハウジング配置工程と、前記既設管を切断機構で切断する切断工程と、前記切断機構によって切断された前記既設管の切断箇所にバリが形成されているか否かを、前記ハウジングに形成された窓部を介して確認するバリ有無確認工程と、前記バリ有無確認工程において、前記切断箇所に前記バリが形成されていることが確認されると、前記バリを除去するためのバリ除去機を前記ハウジングに形成された挿入穴部を介して前記ハウジングに挿入し、前記バリを除去するバリ除去工程と、を含む点にある。
【0016】
この特徴構成によると、上記の既設管切断除去装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0017】
他の方法として、前記バリ有無確認工程及び前記バリ除去工程は、前記切断機構によって切断されることにより発生した切粉に向けて流体をノズルから噴射する流体噴射工程を含んでもよい。
【0018】
この特徴構成によると、例えば、窓部からの視界が切粉によって遮られた場合であっても、ノズルにより切粉を移動(除去)させることができるため、施工作業の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る弁設置装置の外観を示す図である。
【
図2】
図1に示す弁設置装置の内部構成を示す図である。
【
図3】
図2に示す既設管の一部を切断して引き上げた状態を示す図である。
【
図4】実施形態に係る切断機構の構成を示す図である。
【
図5】
図3に示す切除領域に開閉弁を送り込んだ状態を示す図である。
【
図7】
図3に示す切除領域に開閉弁が設置された状態を示す図である。
【
図8】実施形態に係る下部ケースを管軸芯に沿って見た図である。
【
図9】実施形態に係る下部ケースを鉛直方向に沿って見た図である。
【
図10】実施形態に係る下部ケースを水平方向に沿って見た図である。
【
図11】実施形態に係る窓部及びその近傍を拡大した図である。
【
図12】
図11に示す窓部の近傍に切粉が堆積した状態を示す図である。
【
図13】実施形態に係る窓部と流体噴射装置とを示す図である。
【
図14】実施形態に係る挿入穴部の構成を示す図である。
【
図15】実施形態に係る挿入穴部及びその近傍を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る既設管切断除去装置(既設管切断除去方法)の一例として弁設置装置について説明する。弁設置装置は、水道管等の既設管に流れる流体(本実施形態では、水)の流れを維持した状態で(流体の流れを遮断することなく)、既設管の所定の位置を切断して除去し、水の流れを遮断するための開閉弁を設置するための装置である。
【0021】
図1は、弁設置装置100の外観を示す図であり、
図2は、
図1に示す弁設置装置100の内部構成を示す図である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、既設管1を切断する施工では、準備作業が作業員によって行われる。この準備作業では、地面GLに埋設された既設管1の切断対象箇所(以下、「切断箇所1s」と称する)が露出するように地面GLが掘削されて作業空間Tが形成される。作業空間Tには、底壁にコンクリート面が設けられ、既設管1の切断箇所1sの外方にコンクリート製の支持壁Taが形成される。準備作業では、既設管1の切断箇所1sの外周面の錆、付着物等が除去され、既設管1の外周面を平滑に仕上げる作業も行われる。なお、以下、既設管1が延在する方向を水平方向とし、地面GLと直交する方向を鉛直方向とする。
【0023】
〔既設管切断除去装置〕
図1及び
図2に示すように、弁設置装置100は、既設管1を収容する本体部10(ハウジングの一例)と、本体部10の上部に配置される仕切弁ユニット20と、仕切弁ユニット20の上部に配置される筒状フレーム30とを備える。
【0024】
〔本体部〕
本体部10は、既設管1の外周に密封空間を形成する。本体部10は、既設管1の下側に配置される下部ケース11と、既設管1の上側に配置される上部ケース12とを有する。
【0025】
〔下部ケース〕
下部ケース11は、既設管1の下側を覆うように既設管1の外周に沿って配置される下部ケース本体11aと、上部ケース12との合わせ面に沿って延出する一対の下フランジ部11fとを有している。下部ケース本体11aは、既設管1の管軸芯Pに沿って見て半円弧状である(
図8参照)。
【0026】
〔上部ケース〕
上部ケース12は、既設管1の上側を覆うように既設管1の外周に沿って配置される上部ケース本体12aと、上部ケース本体12aの上側の中央から上方に向けて延出した筒状の中間ケース部12cと、下部ケース11との合わせ面に沿って延出する一対の上フランジ部12fとを有している。上部ケース12は、上フランジ部12fが下フランジ部11fと対向するように配置される。上フランジ部12fと下フランジ部11fとがボルト等によって連結されることにより、上部ケース12と下部ケース11とが既設管1の外周に沿う姿勢で固定される(下部ケース11と上部ケース12とが既設管1に装着される)。
【0027】
また、本体部10は、下部ケース11を下方から支持する支持部材15を更に備える。支持部材15は、下部ケース11の下フランジ部11fにボルト等で連結されて、下部ケース11を下方から支持する。下部ケース11と上部ケース12とは、支持部材15と下部ケース11との連結が解除されることにより、既設管1から取り外すことができる。
【0028】
〔仕切弁ユニット〕
図2に示すように、仕切弁ユニット20は、板状の弁体21と、弁体21を収容する弁箱22と、弁体21の位置を操作する操作部23とを備える。
【0029】
弁体21には、シール性を確保するためにシール材(不図示)が設けられている。弁体21は、水平方向に移動自在に弁箱22の内部に設けられる。
【0030】
操作部23は、弁箱22の外部に設けられ、操作部23が作業員によって操作されることにより、弁体21を閉じ位置と開き位置とに切り替えることができる。弁体21が閉じ位置にセットされると(
図3参照)、弁体21よりも上側の空間と、弁体21より下側の空間との間での流体の流れが遮断される。
【0031】
〔筒状フレーム〕
筒状フレーム30は、上部ケース12の中間ケース部12cを上方に延長した位置に配置される。筒状フレーム30は、筒状のフレーム本体部31と、フレーム本体部31の上側の開口を覆うフレーム蓋部32とを有する。フレーム蓋部32は、フレーム蓋部32を貫通するように設けられるスリーブ33を含む。
【0032】
〔切断機構〕
図3は、
図2に示す既設管1の一部を切断して引き上げた状態を示す図であり、
図4は、切断機構40の構成を示す図である。
図5は、
図3に示す既設管1を切断して除去した切除領域Rに水の流れを遮断するための開閉弁60を送り込んだ状態を示す図であり、
図6は、
図5に示す開閉弁60の構成を示す図である。本実施形態において、開閉弁60は、バタフライ弁である。
【0033】
図2~
図6に示すように、弁設置装置100は、既設管1を切断する切断機構40と、切断機構40で切断された既設管1の一部を引き上げる昇降駆動ユニット50と、既設管1が切断された領域(
図3に示す切除領域R)へ、昇降駆動ユニット50によって送りこまれる開閉弁60とを更に備える。なお、以下では、切断機構40によって切断された既設管1の部分を「切断除去管1k(
図2参照)」と称し、切断除去管1kに隣接する既設管1の部分を「残置管部1a」(
図2参照)と称する。
【0034】
図4に示すように、切断機構40は、回転中心が既設管1の管軸芯Pと同軸となるように配置される一対のホイール41、ホイール41に設けられる複数(本実施形態では、4つ)のバイト42、スプロケット431を有するギアケース43、及びホイール41が有するホイールスプロケット411とギアケース43のスプロケット431とに掛け渡されるチェーン44を備えている。
【0035】
バイト42は、既設管1の中心に向けて付勢されるようにホイール41に支持される。ギアケース43は、昇降駆動ユニット50が有する軸部51からの動力が入力される入力軸(不図示)を有する。入力軸(不図示)に動力が入力されると、その動力は、ギアケース43が有するベベルギア機構(不図示)を介してスプロケット431に伝達されてスプロケット431が回転する。スプロケット431が回転すると、動力がチェーン44を介してホイール41に伝達され、ホイール41が既設管1の管軸芯Pを中心に回転する。これにより、バイト42が既設管1の管軸芯Pを中心として既設管1の外周に沿って移動し、既設管1の外周が切断される。
図2に示すように、一対のホイール41は管軸芯Pに沿う方向で切断箇所1sを挟む位置、つまり、切断箇所1sの両端の2か所に配置されている。このため、既設管1の一部を切り出すことができる。なお、既設管1に変形等が生じている場合、バイト42によって既設管1を切断しきれず、既設管1の一部がバリB(
図15参照)として形成される場合がある。
【0036】
〔昇降駆動ユニット〕
図2に示すように、昇降駆動ユニット50は、棒状の軸部51に加え、軸部51に伝達する動力を発生する電動モータ等の駆動装置52と、切断除去管1k及び切断機構40を軸部51に連結させる連結部53とを有する。軸部51は、筒状フレーム30のスリーブ33を介して筒状フレーム30の外部と内部とに亘って延在するように配置され、スリーブ33によって回転自在及び昇降自在に支持される。筒状フレーム30の内部に位置する側の軸部51の端部には、連結部53が接続され、筒状フレーム30の外部に位置する側の軸部51の端部には、駆動装置52が接続される。
【0037】
図3に示すように、昇降駆動ユニット50は、軸部51に連結部53を介して連結された切断除去管1k及び切断機構40を筒状フレーム30の内部まで上昇させる。
【0038】
詳しくは、軸部51がクレーン操作によって上昇することにより、連結部53を介して軸部51の先端部に固定された切断除去管1k及び切断機構40が筒状フレーム30の内部まで移動する。切断除去管1k及び切断機構40が筒状フレーム30の内部まで移動した後、操作部23が操作されることにより、弁箱22の弁体21が閉じ位置にセットされる。その後、フレーム蓋部32が開放され、切断除去管1k及び切断機構40が筒状フレーム30の内部から作業員によって取り出される。
【0039】
その後、
図5に示すように、開閉弁60が軸部51の先端部に連結部53を介して固定される。開閉弁60が軸部51に連結された後、フレーム本体部31の上側の開口は、フレーム蓋部32によって覆われる。
【0040】
フレーム本体部31の上側の開口がフレーム蓋部32によって覆われた後、仕切弁ユニット20の操作部23が操作されることにより、弁箱22の弁体21が開き位置にセットされる。その後、軸部51がクレーン操作によって下降することにより、切除領域Rに開閉弁60が送り込まれる。
【0041】
図6に示すように、開閉弁60は、流体が流れる流路の開閉を可能にする弁本体61と、弁本体61から上方に突出する上部突出部62と、流体が流れる流路に沿う方向に延びる接続管63と、下方に突出する下部突出部64とを備えている。上部突出部62は、軸部51の先端部と連結部53を介して連結する。下部突出部64は、下部ケース本体11aの底部に設けられた凹部11dに嵌まる。開閉弁60を既設管1に接続する場合には、既設管1の切断断面と、開閉弁60の接続管63の断面とを同軸芯にセットした状態で、既設管1から接続管63に亘る領域に継輪3が配置される。
【0042】
開閉弁60の設置が完了した後、
図7に示すように、本体部10、仕切弁ユニット20及び筒状フレーム30が解体されて、押輪4の配置等、開閉弁60の管理に必要な処理が行われることにより施工が完了する。なお、
図7は、
図3に示す切除領域Rに開閉弁60が設置された状態を示す図である。
【0043】
上記のような施工作業では、切断機構40による既設管1の切断において、既設管1にバリBが形成されていると、施工作業の妨げになる虞がある。特に、
図2を参照して説明した既設管1の残置管部1aにバリBが形成されていると、仕切弁ユニット20の弁体21の送り込み作業の妨げとなる。また、切断除去管1kにバリBが形成されていると、切断除去管1kの上昇時に、弁設置装置100の他の部材(例えば仕切弁ユニット20の弁体21のシール材)を破損してしまう虞がある。このため、本実施形態では、バリBの除去作業(以下、「バリ除去作業」と称する)を効率よく実施できるように、下部ケース本体11aが以下のように構成されている。
【0044】
〔下部ケース本体〕
以下、
図8~
図10を参照して、下部ケース本体11aの構成について説明する。
図8は、下部ケース11を管軸芯Pに沿って見た図であり、
図9は、下部ケース11を鉛直方向に沿って見た図であり、
図10は、下部ケース11を水平方向に沿って見た図である。
【0045】
図8に示すように、下部ケース本体11aは、既設管1の切断箇所1sを視認可能な窓部110と、既設管1に形成されたバリBを除去するバリ除去機90を挿入可能な挿入穴部120と既設管1から本体部10に流出した流体(水)を外部へ排水する排水ドレイン部130とを有する。
【0046】
図9及び
図10に示すように、排水ドレイン部130は、下部ケース本体11aの周方向に沿って設けられる。排水ドレイン部130は、既設管1の切断箇所1sの下方、つまり、既設管1の切断箇所1s(2か所)に対して径方向外側の4か所に設けられる(
図9参照)。排水ドレイン部130には、切断機構40によって既設管1が切断されて発生した切粉d(
図12参照)の一部が、切粉dを吸着可能なマグネット(例えば、ハンドマグネット)によって誘導される。
【0047】
図8及び
図9に示すように、窓部110及び挿入穴部120は、それぞれ管軸芯Pを線対称として下部ケース本体11aに設けられる。
図9に示すように、本実施形態において、窓部110は、複数(本実施形態では6つ)設けられ、6つの窓部110のうちの3つの窓部110(以下、「窓群」と称する)が管軸芯Pを挟んで対称に設けられる。また、窓群を構成する3つの窓部110のうちの2つの窓部110は、既設管1の切断箇所1s(2か所)の下方、つまり、既設管1の切断箇所1s(2か所)に対して径方向外側に設けられ、残りの1つの窓部110は、当該2つの窓部110の間に設けられる。
【0048】
挿入穴部120は、複数(本実施形態では4つ)設けられ、4つの挿入穴部120のうちの2つの挿入穴部120(以下、「挿入穴群」と称する)が管軸芯Pを挟んで対称に設けられる。挿入穴群を構成する2つの挿入穴部120は、既設管1の切断箇所1s(2か所)の下方、つまり、既設管1の切断箇所1s(2か所)に対して径方向外側に設けられる。
【0049】
〔窓部〕
続いて、
図11~
図13を参照して、窓部110の構成について説明する。
図11は、窓部110及びその近傍を拡大した図である。
図12は、
図11に示す窓部110の近傍に切粉dが堆積した状態を示す図である。
図13は、窓部110が有する水密窓112と流体噴射装置113とを示す図である。
【0050】
図11に示すように、窓部110は、下部ケース本体11aに形成された第1開口部H1を覆うように設けられる窓筒部111と、窓筒部111の先端部(第1開口部H1との接続する端部とは反対側の端部)に設けられ、水密性を有する水密窓112と、水密窓112の近傍に設けられて流体を噴射する流体噴射装置113とを有する。なお、本明細書において、水密窓112の近傍とは、窓部110から下部ケース11の内部を除く作業員の手指が届く範囲をいう(
図15参照)。
【0051】
窓筒部111は、筒状であって第1開口部H1から下部ケース本体11aの外側へ突出する。水密窓112は、所定の水圧に耐え得る耐久性を有するガラス112a(又はアクリルガラス)と、ガラス112aを支持する枠部112bとを含む。枠部112bは、水密性が高くなるように、ガラス112aを包含し、本実施形態では3重に構成されている。
【0052】
流体噴射装置113は、鉛直方向に延在し、流体を噴射するノズル113aと、ノズル113aのノズル軸Z1(延在方向)に沿って回転自在に支持される被支持部113bと、作業員によって操作される操作部113cとを含む。ノズル113aの吐出圧は、既設管1の底部における圧力(水圧)と比べて高い圧力が設定されている。
【0053】
図12及び
図13に示すように、ノズル113aは、ノズル113aのノズル軸Z1に沿う軸方向と直交する方向に先端部分が折れ曲がっており、その先端には流体が噴射されるオリフィス(開口部)が形成されている。
【0054】
被支持部113bは、窓筒部111を構成する壁面の一部を鉛直方向に沿って貫通する第2開口H2に挿入される。被支持部113bは、流体噴射装置113がノズル113aのノズル軸Z1回りに回転自在となるように、窓筒部111によって支持される。なお、第2開口H2は、水密窓112と第1開口部H1との間において、窓筒部111の側面(下側の面)に設けられる。
【0055】
操作部113cは、作業員が把持するグリップ部113gを含む。作業員は、グリップ部113gを把持し、ノズル113aの先端の向きを所望の位置に変更することができる。例えば、
図12に示すように、切断機構40による既設管1の切断によって切粉dが発生して堆積することにより、窓部110からの作業員の視界が遮られる場合、作業員は、グリップ部113gを把持して、ノズル113aの先端の向きを、切粉dの堆積する箇所となるように変更し、流体を噴射させることができる。これにより、
図11に示すように、堆積した切粉dが除去されて、窓部110からの作業員の視界が良好となる。この結果、バリBの有無等、切断箇所1sの状態を作業員が確認することができる。
【0056】
〔挿入穴部〕
続いて、
図14及び
図15を参照して、挿入穴部120の構成について説明する。
図14は、挿入穴部120の構成を詳細に示す図である。
図15は、挿入穴部120及びその近傍を拡大した図である。
【0057】
図14に示すように、挿入穴部120は、下部ケース本体11aに形成される第3開口H3を覆うように設けられる挿入筒部121と、バリ除去機90を支持する除去機支持部122と、挿通穴121cからのバリ除去機90の脱落を防止する脱落防止部123とを有する。
【0058】
挿入筒部121の一方の端部121aは、第3開口H3と連通する開口が形成されており、他方の端部121bには、バリ除去機90が挿通可能な挿通穴121cが形成されている。
【0059】
除去機支持部122は、バリ除去機90を揺動自在、かつ、下部ケース本体11aに対して進退自在に支持する。また、除去機支持部122には、挿入筒部121に設けられた挿通穴121cから流体が流出することを防止するシール部材121dが設けられる。
【0060】
〔バリ除去機〕
バリ除去機90は、熊手のような形状を有する。詳しくは、バリ除去機90は、鈎状であって、先端部が折れ曲がる先端部材91と、先端部材91と連結する棒状の棒状部材92と、棒状部材92に継ぎ足し可能な継足部材93と含む。
【0061】
本実施形態において、継足部材93は、複数の棒状の部材で構成される。継足部材93は、継足係合部931と、継足被係合部932とを有し、一方の端部に継足係合部931が、他方の端部に継足被係合部932が設けられる。本実施形態では、継足係合部931は雄ネジで構成され、継足被係合部932は雌ネジで構成される。ある継足部材93の継足係合部931が、別の継足部材93の継足被係合部932に螺合されることにより連結(係合)可能である。つまり、複数の継足部材93が互いに連結可能であって、バリ除去機90は、複数の継足部材93を連結させる、あるいは、複数の継足部材93の連結を解除することにより、その軸Z2に沿った方向における長さ(全長)を調整可能である。なお、継足係合部931が雌ネジで構成され、継足被係合部932が雄ネジで構成されてもよい。あるいは、継足係合部931及び継足被係合部932ともに雌ネジで構成され、ネジ、ボルト等の締結部材によってある継足部材93と別の継足部材93とが連結可能に構成されてもよい。
【0062】
図15に示すように、作業員は、窓部110から既設管1の切断箇所1sを確認し、切断箇所1sにバリBが形成されていることを確認すると、まず、バリ除去機90(棒状部材92と連結した先端部材91)をその先端から挿通穴121cに挿入する。棒状部材92を所定の位置まで挿入した後、挿通穴121cに挿入された棒状部材92の棒状被係合部921に、ある継足部材93の継足係合部931を連結させる(
図14参照)。継ぎ足した継足部材93を所定の位置まで挿入してもなお、バリ除去機90の先端部材91と切断箇所1sのバリBが形成された位置までとの間に距離がある場合、更に、挿通穴121cに挿入された継足部材93の継足被係合部932に、別の継足部材93の継足係合部931を連結させるといった作業を繰り返す。これにより、バリ除去機90の長さを伸長させることができ、バリ除去機90の先端部材91を切断箇所1sのバリBが形成された位置まで到達させることができる。なお、作業員は、所望の長さに調整したバリ除去機90を揺動及び進退させることにより、切断箇所1sのバリBを除去する。
【0063】
〔既設管切断除去方法〕
続いて、
図1、
図2及び
図15を参照して既設管1を切断し除去する既設管切断除去方法について説明する。既設管切断除去方法では、ハウジング配置工程(01)、切断工程(02)、バリ有無確認工程(03)及びバリ除去工程(04)の各々の工程が、この順序で実行される。既設管切断除去方法は、ハウジング配置工程(01)と切断工程(02)とバリ有無確認工程(03)とバリ除去工程(04)とによって構成される。なお、ハウジング配置工程(01)の前には、
図1を参照した作業空間Tが形成されている。
【0064】
図1及び
図2に示すように、ハウジング配置工程(01)では、既設管1の切断箇所1sを収容しつつ、密閉空間を形成するように本体部10、仕切弁ユニット20及び筒状フレーム30が配置される。なお、上部ケース12と下部ケース11との連結前には、既設管1の切断箇所1sを切断できる位置に切断機構40が設置され、その後、本体部10の上部ケース12と下部ケース11とが、切断機構40を収容するように連結され、上部ケース12の上部に仕切弁ユニット20、仕切弁ユニット20の上部に筒状フレーム30が連結されるとともに、切断機構40が昇降駆動ユニット50の軸部51に固定されて、ハウジング配置工程が完了する。
【0065】
切断工程(02)では、切断機構40を駆動させることにより、既設管1が切断される。
【0066】
バリ有無確認工程(03)では、
図15に示すように、窓部110を介して作業員が既設管1の切断箇所1sにバリBが形成されているか否かを確認する確認作業が行われる。
【0067】
バリ除去工程(04)では、バリ有無確認工程(03)における確認作業により、バリBが形成されていることが確認されると、バリ除去機90が挿通穴121cを介して下部ケース本体11aに挿入される。作業員は、バリ除去機90を揺動、かつ、進退させることによりバリBを除去する。
【0068】
なお、バリ除去工程(04)では、切断機構40によって既設管1が切断されることにより発生した切粉dが作業員の視界を遮る位置に堆積した場合、切粉dへ向けて流体がノズル113aから噴射される(流体噴射工程(041))。
【0069】
その後、
図3~
図7を参照して説明したように、切断機構40及び切断除去管1kが昇降駆動ユニット50の上昇により撤去された後、切除領域Rに開閉弁60が挿入され、漏水を阻止する継輪3の配置、本体部10、仕切弁ユニット20及び筒状フレーム30の分解、撤去、押輪4の配置等を経てすべての工程が完了する。
【0070】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成してもよい(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0071】
(1)本実施形態では、切断除去管1kと開閉弁60とを交換する施工を例に説明したが、開閉弁60を省略した接続管63と切断除去管1kとを交換する施工にも本発明は適用可能である。
【0072】
(2)また、本実施形態では、開閉弁60がバタフライ弁である場合を説明したが、開閉弁60はバタフライ弁に限定されず、ボール弁、ゲート弁等、様々な弁であり得る。
【0073】
(3)また、本実施形態では、窓部110が流体噴射装置113(ノズル113a)を有する場合を説明したが、窓部110は、流体噴射装置113を省略してもよい。
【0074】
(4)また、本実施形態では、窓部110が切断箇所1sに対して既設管1の径方向外側に設けられたが、窓部110は、切断箇所1sに対して既設管1の径方向外側以外の切断箇所1sを視認できる位置に設けられてもよい。同様に、挿入穴部120も、バリ除去機90によって切断箇所1sに形成されたバリBを除去可能な位置であれば、切断箇所1sに対して既設管1の径方向外側以外の位置に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、既設管の一部を切断除去し切除箇所に仕切弁を設置する既設管切断除去装置及び既設管切断除去方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 :既設管
1s :切断箇所
10 :本体部(ハウジング)
40 :切断機構
90 :バリ除去機
100 :既設管切断除去装置(弁挿入装置)
110 :窓部
113a :ノズル
120 :挿入穴部
d :切粉
Z2 :軸