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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104439
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008642
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】野中 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】徳永 行洋
(72)【発明者】
【氏名】壽 直樹
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056FA10
2C056HA29
2C056HA46
(57)【要約】
【課題】長孔の排気口から排出される空気によってインクを均等に乾燥させる。
【解決手段】インクジェットプリンタは、記録媒体に向けて風を送る乾燥装置を備える。乾燥装置の複数の排気口102bは、主走査方向Yに並んだ第1列の排気口群102G1と、第1列の排気口群102G1とは異なる副走査方向Xの位置に配置され、第1列の排気口群102G1に対して千鳥配置された第2列の排気口群102G2と、を含む。各排気口102bは、主走査方向Yに延びる矩形部分102b1と、矩形部分102b1の主走査方向Yの両端にそれぞれ接続された一対の半円部分102b2と、を備える。主走査方向Yに隣り合う第1列の排気口群102G1の排気口102bと第2列の排気口群102G2の排気口102bとは、主走査方向Yに関して、半円部分102b2の直径D1以下の所定の長さL3だけ重なっている。
【選択図】図11A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が載置されるプラテンと、
前記プラテンより上方に配置され、主走査方向に移動するキャリッジと、
前記キャリッジに搭載され、前記記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
前記プラテンに載置された前記記録媒体を前記主走査方向に直交する副走査方向に搬送する搬送装置と、
前記記録媒体が載置される上壁を有し、前記プラテンよりも前記副走査方向の下流に配置され、前記記録媒体の移動をガイドするガイド部材と、
前記ガイド部材の前記上壁に対向し、前記記録媒体に向けて風を送る乾燥装置と、を備え、
前記乾燥装置は、
前記ガイド部材の前記上壁に対向しかつ前記主走査方向および前記副走査方向に延びる対向壁を有する本体ケースと、
前記本体ケースの内部に形成され、その一部が前記対向壁により区画された空気室と、
前記本体ケースに形成され、前記本体ケースの外部と前記空気室とを連通させる吸気口と、
それぞれ前記対向壁に形成されかつ前記主走査方向に延びた長孔であって、前記本体ケースの外部と前記空気室とを連通させる複数の排気口と、
前記空気室に設けられ、前記空気室の外部の空気が前記吸気口から前記空気室に吸い込まれ、前記空気室の空気が前記複数の排気口から排出されるように、前記空気室の空気を送風する空気室ファンと、を備え、
前記複数の排気口は、
前記主走査方向に並んだ第1列の排気口群と、
前記第1列の排気口群とは異なる前記副走査方向の位置に配置され、前記主走査方向に関して前記第1列の排気口群に属する排気口同士の間に位置するように、前記主走査方向に並んだ第2列の排気口群と、を含み、
前記各排気口は、
前記主走査方向に延びる矩形の矩形部分と、
前記矩形部分の前記主走査方向の両端にそれぞれ接続され、前記主走査方向の輪郭線を構成する、それぞれ半円形の一対の半円部分と、を備え、
前記主走査方向に隣り合う前記第1列の排気口群の排気口と前記第2列の排気口群の排気口とは、前記主走査方向に関して、前記半円部分の直径以下の所定の長さだけ重なっている、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記第1列の排気口群の前記半円部分と、前記隣り合う第2列の排気口群の前記半円部分とは、前記主走査方向の位置が揃うように配置されている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記第1列の排気口群と前記第2列の排気口群との重なり部分から排気される空気の前記主走査方向の長さ当たりの風量は、前記第1列の排気口群の各排気口または前記第2列の排気口群の各排気口の前記主走査方向の中央部から排気される空気の前記主走査方向の長さ当たりの風量以下である、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記複数の排気口は、前記対向壁の前記副走査方向における中央よりも上流側に集中形成されている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記乾燥装置は、
前記空気室ファンを含む複数の空気室ファンと、
前記複数の空気室ファンの出口にそれぞれ設けられた複数のヒーターと、を備え、
前記複数の空気室ファンおよび前記複数のヒーターは、前記主走査方向に並んでいる、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット方式により記録媒体に印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。この種のインクジェットプリンタは、例えば、記録媒体が載置されるプラテンと、プラテンに載置された記録媒体にインクを吐出するインクヘッドとを備えている。また、使用するインクの種類によっては、記録媒体に吐出されたインクを乾燥させる乾燥装置を備えたインクジェットプリンタも存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、左右方向に並ぶ複数のファンを有する乾燥装置を備えたインクジェットプリンタが開示されている。上記乾燥装置は、前斜め下方に延びる下流側プラテン(以下、ガイド部材という)の手前に配置されている。上記乾燥装置は、ガイド部材に対向する対向板を有している。対向板には複数の排出孔が形成されており、ガイド部材上の記録媒体に対して、それら排出孔から風が吹き付けられる。これにより、記録媒体に吐出されたインクの乾燥を効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-159482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、円形の排出孔よりも少数の長孔を乾燥装置に形成することにより、乾燥装置の製作コストを削減することを考えた。しかし、排出孔を長孔とすると、多数の円形孔を設ける場合とは異なって、排出孔からの風量が多い領域と少ない領域との間の風量差が大きくなり、インクの乾燥ムラが発生することに本願発明者は気付いた。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、長孔の排気口から排出される空気によってインクを乾燥させるインクジェットプリンタであって、インクをより均等に乾燥させることができるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するインクジェットプリンタは、記録媒体が載置されるプラテンと、前記プラテンより上方に配置され、主走査方向に移動するキャリッジと、前記キャリッジに搭載され、前記記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、前記プラテンに載置された前記記録媒体を前記主走査方向に直交する副走査方向に搬送する搬送装置と、前記記録媒体が載置される上壁を有し、前記プラテンよりも前記副走査方向の下流に配置され、前記記録媒体の移動をガイドするガイド部材と、前記ガイド部材の前記上壁に対向し、前記記録媒体に向けて風を送る乾燥装置と、を備える。前記乾燥装置は、前記ガイド部材の前記上壁に対向しかつ前記主走査方向および前記副走査方向に延びる対向壁を有する本体ケースと、前記本体ケースの内部に形成され、その一部が前記対向壁により区画された空気室と、前記本体ケースに形成され、前記本体ケースの外部と前記空気室とを連通させる吸気口と、それぞれ前記対向壁に形成されかつ前記主走査方向に延びた長孔であって、前記本体ケースの外部と前記空気室とを連通させる複数の排気口と、前記空気室に設けられ、前記空気室の外部の空気が前記吸気口から前記空気室に吸い込まれ、前記空気室の空気が前記複数の排気口から排出されるように前記空気室の空気を送風する空気室ファンと、を備えている。前記複数の排気口は、前記主走査方向に並んだ第1列の排気口群と、前記第1列の排気口群とは異なる前記副走査方向の位置に配置され、前記主走査方向に関して前記第1列の排気口群に属する排気口同士の間に位置するように前記主走査方向に並んだ第2列の排気口群と、を含んでいる。前記各排気口は、前記主走査方向に延びる矩形の矩形部分と、前記矩形部分の前記主走査方向の両端にそれぞれ接続され、前記主走査方向の輪郭線を構成する、それぞれ半円形の一対の半円部分と、を備えている。前記主走査方向に隣り合う前記第1列の排気口群の排気口と前記第2列の排気口群の排気口とは、前記主走査方向に関して、前記半円部分の直径以下の所定の長さだけ重なっている。
【0008】
上記インクジェットプリンタによれば、千鳥状に配置され、主走査方向に隣り合う第1列の排気口群の排気口と第2列の排気口群の排気口とは、主走査方向に関して重なっている。そのため、第1列の排気口群の排気口とそれに隣り合う第2列の排気口群の排気口との間に空気が排出されない領域ができない。これにより、記録媒体上のインクの乾燥が部分的に特に遅くなることが防止される。かつ、第1列の排気口群の排気口とそれに隣り合う第2列の排気口群の排気口との重なり量は、排気口の半円部分の直径以下とされている。そのため、第1列の排気口群の排気口とそれに隣り合う第2列の排気口群の排気口との重なり部分から排気される空気量が他の部分よりも大きくなり過ぎることが抑制される。これにより、重なり部分におけるインクの乾燥が他の部分よりも特に早くなることが抑制される。その結果、インクをより均等に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】一実施形態に係るプリンタの正面図である。
図3図1のB-B線に沿う断面図である。
図4】乾燥装置の正面図である。
図5】乾燥装置の平面図である。
図6】乾燥装置の背面図である。
図7】乾燥装置の部分斜視図である。
図8】取付板の正面図である。
図9】整流板の正面図である。
図10】ガイド部材の一部を消去して示す斜視図である。
図11A】乾燥装置の加熱室排気口付近の背面図である。
図11B】重なり部分の長さが半円部分の直径に等しい場合の加熱室排気口の背面図である。
図12】乾燥装置の空気の流れを示す図である。
図13A】加熱室排気口からの風の風量分布を示す模式図である。
図13B】重なり部分が設けられない場合の加熱室排気口からの風の風量分布を示す模式図である。
図13C】重なり部分が長すぎる場合の加熱室排気口からの風の風量分布を示す模式図である。
図14】他の実施形態に係るインクジェットプリンタの断面図である。
図15】変形例に係るインクジェットプリンタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[インクジェットプリンタの構成]
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下単に「プリンタ」と称する)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。図2はプリンタ10の正面図である。なお、図2では、後述する非加熱室吸気口103aおよび非加熱室排気口103bの図示は省略している。プリンタ10は記録媒体5に印刷を行う。
【0012】
記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は記録紙に限定されない。記録媒体5には、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエステル等の樹脂材料から形成されたものや、アルミや鉄等から形成された金属板、ガラス板、木材板および段ボール等から形成されたものが含まれる。
【0013】
図3に示すように、プリンタ10は、記録媒体5が載置されるプラテン16と、プラテン16の真上に位置するインクヘッド35とを備える。本明細書では、プラテン16上において記録媒体5に印刷が行われるときに、プラテン16上で記録媒体5が搬送される方を前方とし、その逆方向を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。なお、作業者がプリンタ10の正面を向いているときに、プリンタ10の後部から作業者に向かう方向は前方となり、作業者からプリンタ10の後部に向かう方向は後方となる。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
【0014】
後述するキャリッジ30(図2参照)は、左方および右方に移動可能に設けられている。キャリッジ30は左右方向に移動可能である。プリンタ10の後側を上流側と称し、プリンタ10の前側を下流側としたとき、記録媒体5は上流側から下流側に向けて搬送される。前側は、記録媒体5の搬送方向の下流側に対応する。後側は、記録媒体5の搬送方向の上流側に対応する。本実施形態では、キャリッジ30の移動方向を主走査方向Yといい、記録媒体5の搬送方向を副走査方向Xという。ここでは、主走査方向Yは左右方向に対応し、副走査方向Xは前後方向に対応する。本実施形態では、副走査方向Xは、後述する下流側のガイド部材14の入口において下方に曲げられ、斜め前後方向に変化する。主走査方向Yと副走査方向Xとは直交している。ただし、主走査方向Yおよび副走査方向Xは特に限定される訳ではなく、プリンタ10の形態等に応じて適宜に設定可能である。
【0015】
図1に示すように、プリンタ10は、本体部10aと、脚11と、操作パネル12と、フロントカバー13と、を備えている。本体部10aは、主走査方向Yに延びたケーシングを有する。脚11は、本体部10aを支持するものであり、本体部10aの下面に設けられている。操作パネル12は、例えば本体部10aの右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル12の位置は特に限定されない。操作パネル12は、ユーザが印刷に関する操作を行うものである。フロントカバー13は、本体部10aに回動可能に設けられている。フロントカバー13は、キャリッジ30よりも前方に配置されている。フロントカバー13は、例えば、透明なアクリル樹脂で形成されている。なお、図2では、フロントカバー13の図示を省略している。
【0016】
図3に示すように、プリンタ10はプラテン16を備えている。プラテン16には、記録媒体5が載置される。記録媒体5への印刷は、プラテン16上で行われる。プラテン16は主走査方向Yに延びている。プラテン16の上面16Aは平坦状に形成されている。
【0017】
プリンタ10は、上流側のガイド部材17および下流側のガイド部材14を備えている。本実施形態では、ガイド部材14は、下流側ガイド部材18および補助ガイド部材15によって構成されている。上流側のガイド部材17は、プラテン16の後方に配置されている。上流側のガイド部材17は、プラテン16への記録媒体5の移動をガイドする。下流側のガイド部材14は、プラテン16の前方に配置されている。下流側のガイド部材14は、プラテン16からの記録媒体5の移動をガイドする。
【0018】
図2に示すように、プリンタ10は、インクを吐出するインクヘッド35を備えている。インクヘッド35は、記録媒体5に水性インクを吐出する。インクヘッド35は、プラテン16より上方に配置されている。インクヘッド35は、主走査方向Yに移動可能に設けられている。本実施形態では、インクヘッド35は、図示しないインク供給路によって、インクカートリッジ37と接続されている。
【0019】
水性インクとして、例えば、ラテックスインクを好ましく用いることができる。ラテックスインクは、溶媒、色材およびバインダ樹脂を含む。ラテックスインクにおいて、バインダ樹脂は、溶媒に分散または乳濁している。溶媒としては、例えば、水や水と均一に混合し得る水溶性有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。ラテックスインクは、ラテックスインクの全質量に対して50質量%以上90質量%以下の溶媒を含む。色材としては、ラテックスインク中に含まれる従来の色材を適宜選択することができる。色材としては、例えば、水溶性染料等の染料や顔料等が挙げられる。バインダ樹脂としては、ラテックスインク中に含まれる従来のバインダ樹脂を適宜選択することができる。
【0020】
図2に示すように、プリンタ10はヘッド移動機構31を備えている。ヘッド移動機構31は、プラテン16に載置された記録媒体5に対して、インクヘッド35を相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。本実施形態では、ヘッド移動機構31は、インクヘッド35を主走査方向Yに移動させる。ここでは、ヘッド移動機構31は、ガイドレール20と、第1プーリ21と、第2プーリ22と、無端状のベルト23と、第1駆動モータ24と、キャリッジ30と、を有している。ガイドレール20は、キャリッジ30の主走査方向Yへの移動をガイドするものである。図3に示すように、ガイドレール20は、プラテン16の上方に配置されている。図2に示すように、ガイドレール20は、主走査方向Yに延びている。第1プーリ21は、ガイドレール20の左端部分に設けられている。第2プーリ22は、ガイドレール20の右端部分に設けられている。ベルト23は、第1プーリ21と第2プーリ22とに巻き掛けられている。本実施形態では、第2プーリ22には、第1駆動モータ24が接続されている。ただし、第1駆動モータ24は、第1プーリ21に接続されていてもよい。第1駆動モータ24が駆動して、第2プーリ22が回転することで、第1プーリ21と第2プーリ22との間においてベルト23が走行する。
【0021】
図2に示すように、キャリッジ30はベルト23に取り付けられている。キャリッジ30は、プラテン16より上方に配置されている。図3に示すように、キャリッジ30は、ガイドレール20に係合しており、ガイドレール20に摺動自在に設けられている。キャリッジ30には、インクヘッド35が搭載されている。本実施形態では、ヘッド移動機構31は、第1駆動モータ24の駆動によってベルト23が走行して、キャリッジ30が主走査方向Yに移動することに伴い、キャリッジ30に搭載されたインクヘッド35を主走査方向Yに移動させる。
【0022】
プリンタ10は媒体搬送機構32を備えている。媒体搬送機構32は、プラテン16に載置された記録媒体5をインクヘッド35に対して副走査方向Xに相対的に移動させるものである。ここでは、媒体搬送機構32は、プラテン16に載置された記録媒体5を副走査方向Xに移動させる。なお、媒体搬送機構32の構成は特に限定されない。図3に示すように、本実施形態では、媒体搬送機構32は、グリットローラ25と、ピンチローラ26と、グリットローラ25を駆動する第2駆動モータ(図示せず)とを有している。グリットローラ25は、プラテン16に設けられている。ここでは、グリットローラ25の少なくとも一部はプラテン16に埋設されている。ピンチローラ26は、記録媒体5を上から押さえつけるものである。ピンチローラ26は、グリットローラ25の上方に配置されている。ピンチローラ26は、グリットローラ25と対向する位置に設けられている。ピンチローラ26は、上下方向に移動可能に構成されている。グリットローラ25とピンチローラ26との間に記録媒体5が挟まれた状態で、第2駆動モータが駆動してグリットローラ25が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。なお、グリットローラ25およびピンチローラ26のそれぞれの設置位置および数は特に限定されない。
【0023】
図1に示すように、プリンタ10は乾燥装置50を備えている。乾燥装置50は、記録媒体5に吐出されたインクを乾燥させる装置である。乾燥装置50は、プラテン16に載置された記録媒体5に向けて風を送る。また、乾燥装置50は、ガイド部材14によってガイドされる記録媒体5に向けて風を送る。以下では、プラテン16に載置された記録媒体5に風を送ることを初期乾燥と称する。ガイド部材14にガイドされる記録媒体5に風を送ることを完全乾燥と称する。
【0024】
図3に示すように、乾燥装置50は、プラテン16より前方に配置されている。乾燥装置50は、ガイド部材14に対向する。乾燥装置50の少なくとも一部は、平面視でガイド部材14と重なる。図2に示すように、乾燥装置50の少なくとも一部は、正面視でガイド部材14と重なる。乾燥装置50は、本体部10aに着脱可能に設けられている。
【0025】
図3に示すように、乾燥装置50の内部には、送風室101と加熱室102と非加熱室103とが設けられている。乾燥装置50は、左右方向に延びる本体ケース51と、本体ケース51の内部を送風室101と加熱室102とに仕切る仕切り壁111と、本体ケース51の内部を送風室101と非加熱室103とに仕切る仕切り壁112と、本体ケース51の内部を加熱室102と非加熱室103とに仕切る仕切り壁113と、を有している。また、乾燥装置50は、送風室101の内部を第1送風室121と第2送風室122とに仕切る仕切り壁114を有している。乾燥装置50は、加熱室102の内部を後述する加熱室ファン132が配置される上流室102Aと下流室102Bとに仕切る仕切り壁116と、加熱室102内で下流室102Bおよび上流室102Aから出口室102Cを区画する仕切り壁117および整流板127を有している。
【0026】
加熱室102は、仕切り壁111、仕切り壁113、および後壁51Bにより形成されている。仕切り壁111および仕切り壁113は屈曲板状に形成されている。上流室102Aは、仕切り壁111、仕切り壁116、および仕切り壁117により形成されている。下流室102Bは、仕切り壁111、仕切り壁113、仕切り壁116、整流板127、および後壁51Bにより形成されている。出口室102Cは、仕切り壁117、整流板127、および後壁51Bにより形成されている。下流室102Bの容積は上流室102Aの容積よりも大きく、上流室102Aの容積は出口室102Cの容積よりも大きい。加熱室102を流れる空気は、加熱室吸気口102aから上流室102Aに流入し、仕切り壁116に取り付けられた加熱室ファン132によって上流室102Aから下流室102Bに送られ、整流板127の貫通孔120hを通って下流室102Bから出口室102Cに流入し、加熱室排気口102bを通って出口室102Cから加熱室102の外部に排出される。上流室102Aの圧力は負圧に設定され、下流室102Bの圧力は正圧に設定され、出口室120Cの圧力は下流室102Bの圧力よりも低い正圧に設定される。図3に示すように、整流板127は加熱室ファン132よりも後方に配置されており、整流板127の貫通孔120hは、複数の加熱室ファン132の出口と対向する位置を避けて配置されている。整流板127には、下流室120Bを流れる空気を加熱室排気口102bへ向かわせる案内板117Aが設けられている。ここでは、案内板117Aは、仕切り壁117の一部により形成されている。すなわち、仕切り壁117の一部が案内板117Aを兼用している。ただし、案内板117Aの構成は何ら限定されず、案内板117Aは仕切り壁117と別体であってもよい。
【0027】
本体ケース51は、上方に延びる前壁51Fと、前壁51Fの上端51Ftから後方に延びる上壁51Uと、前壁51Fの下端51Fdから後方に延びる下壁51Dと、下壁51Dの後端51Dbから上方に延びる後壁51Bとを有している。下壁51Dは上壁51Uよりも下方に配置され、後壁51Bは前壁51Fよりも後方に配置されている。また、本体ケース51は、前壁51F、上壁51U、下壁51D、および後壁51Bの左方、右方にそれぞれ配置された左壁51L、右壁51Rを有している(図4参照)。なお、前壁51F、上壁51U、下壁51D、後壁51B、左壁51L、および右壁51Rは、平板状であってもよく、湾曲していてもよく、屈曲していてもよい。前壁51F、上壁51U、下壁51D、後壁51B、左壁51L、および右壁51Rは、単一の部材により形成されていてもよく、複数の部材が組み合わされることによって形成されていてもよい。前壁51F、上壁51U、下壁51D、後壁51B、左壁51L、および右壁51Rの少なくとも一つの一部または全部は、他の少なくとも一つの一部または全部と一体化されていてもよい。
【0028】
乾燥装置50は、下壁51Dまたは後壁51Bから下方に延びる延長壁119を有している。ここでは、延長壁119は下壁51Dに取り付けられている。延長壁119は、下壁51Dの下端から前方かつ下方に延びている。ただし、延長壁119の取付位置は特に限定されない。延長壁119は後壁51Bに取り付けられていてもよい。延長壁119は後壁51Bの下端から前方かつ下方に延びていてもよい。また、延長壁119は無くてもよい。
【0029】
図4は乾燥装置50の平面図である。本体ケース51の上壁51Uには、送風室吸気口101aが形成されている。送風室吸気口101aは、本体ケース51の外部と送風室101とを連通している。送風室吸気口101aは複数形成され、左右方向に並んでいる。
【0030】
図5は乾燥装置50の正面図である。本体ケース51の前壁51Fには、非加熱室吸気口103aが形成されている。図3に示すように、前壁51Fは、垂直壁51FAと、垂直壁51FAの下端から後方かつ下方に延びる傾斜壁51FBとを有している。本実施形態では、非加熱室吸気口103aは傾斜壁51FBに形成されている。本体ケース51の下壁51Dには、非加熱室排気口103bが形成されている。本実施形態では、下壁51Dは後方かつ下方に延びている。非加熱室吸気口103aおよび非加熱室排気口103bの各々は、本体ケース51の外部と非加熱室103とを連通している。非加熱室吸気口103aは、非加熱室排気口103bよりも前方に形成されている。非加熱室排気口103bは、後方かつ下方に延びる傾斜壁51FBに貫通形成されているので、前方かつ下方に向けて開口している。
【0031】
図6は乾燥装置50の背面図である。図7は、本体ケース51の後壁51Bの一部を拡大して示す斜視図である。後壁51Bには、第1送風室排気口121bおよび第2送風室排気口122bが形成されている。第1送風室排気口121bは、第1送風室121と本体ケース51の外部とを連通している。第2送風室排気口122bは、第2送風室122と本体ケース51の外部とを連通している。第1送風室排気口121bおよび第2送風室排気口122bは、スリット状に形成されており、左右方向に延びている。第1送風室排気口121bおよび第2送風室排気口122bは、本体ケース51の左右方向の全域にわたって形成されている。第2送風室排気口122bは、第1送風室排気口121bより下方に配置されている。
【0032】
図3に示すように、第1送風室121には、後方に行くほど上下幅が小さくなる排出流路121Aが形成されている。第1送風室排気口121bは、排出流路121Aに繋がっている。第1送風室排気口121bは、プラテン16に向けて開口している。ここでは、第1送風室排気口121bは、水平方向に沿って後方に開口している。
【0033】
後壁51Bは、後方かつ下方に延びる吹き出し壁122Bおよび122Cを含んでいる。吹き出し壁122Cは吹き出し壁122Bの上方に配置されており、吹き出し壁122Bと吹き出し壁122Cとの間に隙間が形成されている。この隙間により、第2送風室排気口122bが形成されている。第2送風室排気口122bは、ガイド部材14の上壁14Uに向けて後方かつ下方に開口している。
【0034】
図6に示すように、後壁51Bには、複数の加熱室吸気口102aおよび複数の加熱室排気口102bが形成されている。複数の加熱室排気口102bは、後壁51Bの副走査方向Xにおける中央よりも上流側に集中形成されている。加熱室吸気口102aは、本体ケース51の外部と加熱室102の上流室102A(図3参照)とを連通している。加熱室排気口102bは、加熱室102の下流室102Bと本体ケース51の外部とを連通している。加熱室吸気口102aおよび加熱室排気口102bは、それぞれ左右方向に並んでおり、本体ケース51の左右方向の全域にわたって形成されている。加熱室吸気口102aは第2送風室排気口122bより下方に配置されている。加熱室排気口102bは加熱室吸気口102aより下方に配置されている。各加熱室吸気口102aおよび各加熱室排気口102bの形状は特に限定されない。ここでは図7に示すように、各加熱室吸気口102aは縦長のスリット状に形成され、各加熱室排気口102bは横長のスリット状に形成されている。複数の加熱室排気口102bの配置、および、各加熱室排気口102bの形状の詳細については後述することとする。図3に示すように、加熱室吸気口102aおよび加熱室排気口102bは、ガイド部材14に向けて後方かつ下方に開口している。第1送風室排気口121bおよび第2送風室排気口122bは、加熱室排気口102bより後方に配置されている。
【0035】
図3に示すように、乾燥装置50は、少なくとも一部が本体ケース51の内部に配置された取付板115を有している。取付板115の一部は送風室101に配置され、他の一部は非加熱室103に配置されている。取付板115の一部は、送風室101の内部を吸気室123と第1送風室121とに仕切ると共に、吸気室123と第2送風室122とに仕切っている。図8に示すように、取付板115は左右方向および上下方向に延びる平板状に形成されている。取付板115には、それぞれ左右に並んだ複数の第1開口115a、複数の第2開口115b、および複数の第3開口115cが形成されている。第1開口115a、第2開口115b、および第3開口115cは、上下に並んでいる。ここでは、第2開口115bは第1開口115aの真下に配置されている。第3開口115cは第2開口115bの真下に配置されている。第1開口115a、第2開口115b、および第3開口115cは、前後に開口している。
【0036】
図3に示すように、乾燥装置50は、送風室101に設けられた複数の第1送風室ファン131Aおよび複数の第2送風室ファン131Bと、加熱室102に設けられた複数の加熱室ファン132と、非加熱室103に設けられた複数の非加熱室ファン133とを有している。第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bは、送風室101のうちの吸気室123に配置されている。加熱室ファン132は、加熱室102のうちの上流室102Aに配置されている。
【0037】
図8に示すように、第1送風室ファン131A、第2送風室ファン131B、および非加熱室ファン133は、取付板115に取り付けられている。複数の第1送風室ファン131A、複数の第2送風室ファン131B、および複数の非加熱室ファン133は、それぞれ左右に並んでいる。第1送風室ファン131A、第2送風室ファン131B、および非加熱室ファン133は、上下に一直線上に並んでいる。第2送風室ファン131Bは第1送風室ファン131Aの真下に配置され、非加熱室ファン133は第2送風室ファン131Bの真下に配置されている。第1送風室ファン131A、第2送風室ファン131B、および非加熱室ファン133は、それぞれ水平方向後向きに送風するように、互いに平行に配置されている。本実施形態では、第1送風室ファン131A、第2送風室ファン131B、および非加熱室ファン133は、軸流ファンにより構成されている。
【0038】
取付板115の第1開口115aは、吸気室123と第1送風室121とを連通している。第1送風室ファン131Aは、取付板115の第1開口115aに取り付けられている。第1送風室ファン131Aは、送風室吸気口101aから吸気室123に空気を取り入れ、第1開口115aを通じて吸気室123の空気を第1送風室121に送り、第2送風室121の空気を第1送風室排気口121bから排出させる。このように、第1送風室ファン131Aは、第1送風室121の空気を送風するように構成されている。第1送風室ファン131Aは、空気を水平方向後向きに送風するように配置されている。
【0039】
取付板115の第12開口115bは、吸気室123と第2送風室122とを連通している。第2送風室ファン131Bは、取付板115の第2開口115bに取り付けられている。第2送風室ファン131Bは、送風室吸気口101aから吸気室123に空気を取り入れ、第2開口115bを通じて吸気室123の空気を第2送風室122に送り、第2送風室122の空気を第2送風室排気口122bから排出させる。第2送風室ファン131Bは、第2送風室122の空気を送風するように構成されている。第2送風室ファン131Bは、空気を水平方向後向きに送風するように配置されている。
【0040】
第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bは、互いに同一仕様のファンであってもよく、異なる仕様のファンであってもよい。第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bの風量は、互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。ここでは、第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bは、第2送風室排気口122bの空気の吹き出し速度が第1送風室排気口121bの空気の吹き出し速度よりも大きくなるように設定されている。
【0041】
第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bは、送風室吸気口101aの真下に配置されていてもよいが、本実施形態では、送風室吸気口101aの真下からずれた位置に配置されている。第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bは、送風室吸気口101aよりも左方または右方に配置されている(図4参照)。これにより、送風室吸気口101aから異物が吸い込まれた場合であっても、第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bから左右方向にずれた位置に異物が落下する可能性が高いので、その異物が第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bに巻き込まれることを防止することができる。第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bの異物の巻き込みによる故障を防止することができる。
【0042】
非加熱室ファン133は、取付板115の第3開口115cに取り付けられている。非加熱室ファン133は、非加熱室吸気口103aから非加熱室103に空気を取り入れ、第3開口115cを通じて非加熱室103の空気を取付板115の前方から後方に送り、その空気を非加熱室排気口103bから排出させる。非加熱室ファン133は、非加熱室103の空気を送風するように構成されている。非加熱室ファン133は、前方から見て非加熱室吸気口103aと重なる位置に配置されていてもよいが、本実施形態では、非加熱室吸気口103aからずれた位置に配置されている。非加熱室ファン133は、非加熱室吸気口103aよりも左方または右方に配置されている(図5および図8参照)。これにより、非加熱室吸気口103aから異物が吸い込まれた場合に、非加熱室ファン133に異物が巻き込まれることを防止することができ、非加熱室ファン133の故障を防止することができる。
【0043】
図3に示すように、加熱室ファン132は仕切り壁116に取り付けられている。仕切り壁116には、第4開口116aが形成されている。第4開口116aは、加熱室102の上流室102Aと下流室102Bとを連通している。加熱室ファン132は、仕切り壁116の第4開口116aに取り付けられている。複数の加熱室ファン132は、主走査方向Yに並んで配置されている。加熱室ファン132は、加熱室吸気口102aから加熱室102に空気を取り入れ、第4開口116aを通じて上流室102Aの空気を下流室102Bに送り、下流室102Bの空気を加熱室排気口102bから排出させる。加熱室ファン132は、加熱室102の空気を送風するように構成されている。本実施形態では、加熱室ファン132は軸流ファンにより構成されている。なお、加熱室102における加熱室ファン132の下流側が加圧空間となるよう、加熱室排気口102bの総開口面積は、加熱室ファン132の流路断面積よりも小さくてもよい。
【0044】
乾燥装置50は、加熱室102に配置されたヒーター135を有している。複数のヒーター135は、複数の加熱室ファン132の出口にそれぞれ設けられ、主走査方向Yに並んでいる。複数の加熱室ファン132および複数のヒーター135は、互いに間隔を空けて並んでいる。ヒーター135は、加熱室ファン132によって送風される空気を加熱する。ヒーター135の構成は何ら限定されない。ここではヒーター135は、断面が八角形状の筒135Aと、筒135Aの内部に配置された図示しない電熱線とを有している。空気は、筒135Aの内部を通過するときに上記電熱線によって加熱される。加熱室102は、空気を加熱するように構成されている。
【0045】
図8に示すように、乾燥装置50は、第1送風室ファン131A、第2送風室ファン131B、および非加熱室ファン133に電線151を介して接続されたプリント基板150を有している。プリント基板150は、第1送風室ファン131A、第2送風室ファン131B、および非加熱室ファン133に電気を供給する。プリント基板150の個数は1つでも構わないが、本実施形態では乾燥装置50は、左右に並ぶ複数のプリント基板150を有している。プリント基板150は、取付板115に取り付けられている。すなわち、プリント基板150、第1送風室ファン131A、第2送風室ファン131B、および非加熱室ファン133は、共通の取付板115に取り付けられている。第1送風室ファン131A、第2送風室ファン131B、および非加熱室ファン133の近くにプリント基板150を配置することとすれば、第1送風室ファン131A、第2送風室ファン131B、および非加熱室ファン133をプリント基板150につなぐ電線151の長さを短くすることができ、好ましい。プリント基板150は、送風室101の吸気室123に配置されている。吸気室123には、第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bにより、気流が発生している。プリント基板150は、上記気流により冷却される。ただし、プリント基板150の配置は特に限定されない。プリント基板150は非加熱室103に配置されていてもよい。この場合、プリント基板150は、非加熱室ファン133によって形成される気流により冷却される。
【0046】
本実施形態では、仕切り壁112および仕切り壁114は鉄により形成されている。加熱室102を仕切る仕切り壁111および仕切り壁113は、ステンレスにより形成されている。仕切り壁111および仕切り壁113の熱伝導率は、仕切り壁112および仕切り壁114の熱伝導率よりも低い。加えて、加熱室102の熱が送風室101および非加熱室103に伝わることを更に抑制するために、仕切り壁111の送風室101側および仕切り壁113の非加熱室103側には、断熱材155が設けられている。本実施形態では、断熱材155は可撓性を有しており、変形容易である。
【0047】
取付板115は、前方から断熱材155に押し当てられている。取付板115は、断熱材155を介して仕切り壁111および仕切り壁113に押し当てられている。取付板115は、仕切り壁111および仕切り壁113に押し当てられることにより、所定の位置に位置決めされている。取付板115と仕切り壁111および仕切り壁113との間に断熱材155が介在しているので、取付板115に取り付けられたプリント基板150、第1送風室ファン131A、第2送風室ファン131B、および非加熱室ファン133が加熱室102の熱によって加熱されることを抑制することができる。
【0048】
ただし、仕切り壁111および仕切り壁113の材料は特に限定されない。断熱材155は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。
【0049】
第1送風室121および第1送風室排気口121bは左右方向に延びているが、第1送風室ファン131Aは左右方向に分散して配置されている(図8参照)。そこで、第1送風室121を流れる空気の速度分布を均一化させる整流部材を設けてもよい。例えば、整流部材として、図9に示すように、複数の貫通孔120hが形成された整流板120を設けてもよい。整流板120として、例えばパンチングメタルを好適に用いることができる。ここでは図3に示すように、第1送風室121の内部に、上記整流板120からなる第1整流板125が配置されている。第1整流板125は第1送風室排気口121bと同じように左右方向に延びており、本体ケース51の左右方向の全域にわたって延びている。
【0050】
同様に、第2送風室122および第2送風室排気口122bは左右方向に延びているが、第2送風室ファン131Bは左右方向に分散して配置されている。そこで、第2送風室122を流れる空気の速度分布を均一化させる整流部材を設けてもよい。ここでは、第2送風室122の内部に、整流板120(図9参照)からなる第2整流板126が配置されている。第2整流板126は、第2送風室排気口122bと同じように左右方向に延びており、本体ケース51の左右方向の全域にわたって延びている。
【0051】
加熱室102は左右方向に延び、加熱室排気口102bは左右方向の全域にわたって配置されているが、加熱室ファン132は左右方向に分散して配置されている。そこで、加熱室排気口102bから排出される空気の速度分布を均一化させる整流部材を設けてもよい。ここでは、加熱室102の下流室102Bに、整流板120(図9参照)からなる第3整流板127が配置されている。第3整流板127は、左右方向に延びており、本体ケース51の左右方向の全域にわたって延びている。整流効果を高めるために、第3整流板127は加熱室排気口102bに近い位置に配置することが好ましい。ただし、第3整流板127の位置は特に限定される訳ではない。また、特に限定される訳ではないが、ここでは第3整流板127の貫通孔の総開口面積は、加熱室排気口102bの総開口面積よりも大きい。
【0052】
次に、ガイド部材14について説明する。図3に示すように、ガイド部材14のケース14Xは、前方かつ下方に延びる上壁14Uを有している。ガイド部材14のケース14Xは左右方向に延設されている。図10は、上壁14Uおよび補助ガイド部材15を消去したガイド部材14の斜視図である。ガイド部材14は、後壁14Bと、上壁14Uから後方に延びる下壁14Dと、上壁14U、後壁14Bおよび下壁14Dの左方に配置された左壁14Lと、上壁14U、後壁14Bおよび下壁14Dの右方に配置された右壁14Rとを有している。
【0053】
下壁14Dには、流入口14aおよび流出口14bが形成されている。上壁14U、後壁14B、下壁14D、左壁14L、および右壁14Rにより、流入口14aから流出口14bに向かう空気流路14Eが形成されている。流入口14aは、ガイド部材14を左右方向に三等分したときの中央部分14CAに形成されている。流入口14aの数は1つであってもよく、複数であってもよい。ここでは、流入口14aは2つ形成されている。流入口14aは、左流入口14aLと、左流入口14aLの右方に形成された右流入口14aRとを含んでいる。流出口14bの数は1つであってもよく、複数であってもよい。ここでは、流出口14bは2つ形成されている。流出口14bは、左流出口14bLおよび右流出口14bRを含んでいる。左流出口14bL、右流出口14bRは、それぞれガイド部材14を左右方向に三等分したときの左側部分14LA、右側部分14RAに形成されている。左流入口14aLと右流入口14aRとの中心間の距離14LRは、左流入口14aLと左流出口14bLとの中心間の距離14LLよりも短く、右流入口14aRと右流出口14bRとの中心間の距離14RRよりも短い。
【0054】
ガイド部材14には、流入口14aから吸い込まれた空気が空気流路14Eを流れて流出口14bから流出するように、空気流路14Eに空気を流す冷却ファンが設けられている。冷却ファンは、上壁14Uにより区画された空気流路14Eに空気を流すことにより、上壁14Uを冷却する役割を果たす。ここでは、冷却ファンは、ガイド部材14の内部かつ流入口14aに接続された吸気ファン140Aと、ガイド部材14の内部かつ流出口14bに接続された排気ファン140Bとを含んでいる。吸気ファン140Aは、ガイド部材14の外部の空気を下方から空気流路14Eに吸い込む。排気ファン140Bは、空気流路14Eの空気を下方に向けてガイド部材14の外部に吐き出す。本実施形態では、吸気ファン140Aおよび排気ファン140Bは、軸流ファンにより構成されている。
【0055】
ガイド部材14の材料は熱伝導率が低い材料であることが好ましいが、熱伝導率の高い材料を用いつつ断熱材を付加してもよい。上壁14U、後壁14B、下壁14D、左壁14L、および右壁14Rは、例えば、ステンレスにより形成されていてもよく、断熱材が貼られた鉄製の板であってもよい。
【0056】
[加熱室排気口の詳細]
以下では、加熱室排気口102bの構成の詳細を説明する。図11Aは、乾燥装置50の加熱室排気口102b付近の背面図である。図11Aに示すように、複数の加熱室排気口102bは、それぞれ本体ケース51の後壁51Bに形成されている。各加熱室排気口102bは、主走査方向Yに延びた長孔であり、本体ケース51の外部と加熱室102とを連通させている。
【0057】
図11Aに示すように、複数の加熱室排気口102bは、副走査方向Xに並ぶ複数の列を形成している。各列内では、複数の加熱室排気口102bは、主走査方向Yに並んでいる。1つの列の加熱室排気口102bは、他の列の加熱室排気口102bとは異なる副走査方向Xの位置に配置されている。以下では、最も副走査方向Xの上流側の加熱室排気口102bの列を第1列とも呼び、第1列の複数の加熱室排気口102bを第1列の排気口群102G1とも呼ぶ。同様に、副走査方向Xの上流側から2番目の加熱室排気口102bの列を第2列とも呼び、第2列の複数の加熱室排気口102bを第2列の排気口群102G2とも呼ぶ。第3列の排気口群102G3および第4列の排気口群102G4についても同様である。ここでは、列の数は4つであるが、列の数は2以上であれば特に限定されない。
【0058】
本実施形態では、複数の加熱室排気口102bは全て同じ形状に形成されている。各列内では、複数の加熱室排気口102bは、主走査方向Yに等間隔に並んでいる。図11Aに示すように、第1列の排気口群102G1~第4列の排気口群102G4は、千鳥配置されている。ここでは、第2列の排気口群102G2は、主走査方向Yに関して、第1列の排気口群102G1に属する加熱室排気口102b同士の間に位置するように主走査方向Yに並んでいる。第3列の排気口群102G3は、主走査方向Yに関して、第2列の排気口群102G2に属する加熱室排気口102b同士の間に位置するように主走査方向Yに並んでいる。ここでは、第1列の排気口群102G1と第3列の排気口群102G3とは、主走査方向Yの位置が揃っている。第4列の排気口群102G4の主走査方向Yの位置は、第2列の排気口群102G2と揃っており、第1列の排気口群102G1および第3列の排気口群102G3とはずれている。
【0059】
主走査方向Yに隣り合う第1列の排気口群102G1の加熱室排気口102bと、第2列の排気口群102G2の加熱室排気口102bとは、主走査方向Yに関して一部重なっている。かかる重なりを実現するため、各列における複数の加熱室排気口102b同士の主走査方向Yの間隔L1は、加熱室排気口102bの長さL2よりも短く設定されている。第2列の排気口群102G2と第3列の排気口群102G3との関係、および、第3列の排気口群102G3と第4列の排気口群102G4との関係も同様である。
【0060】
図11Aに示すように、各加熱室排気口102bは、主走査方向Yに延びる矩形の矩形部分102b1と、矩形部分102b1の主走査方向Yの両端にそれぞれ接続された一対の半円部分102b2と、を備えている。一対の半円部分102b2は、それぞれ、半円形に構成され、加熱室排気口102bの主走査方向Yの輪郭線を構成している。
【0061】
主走査方向Yに隣り合う第1列の排気口群102G1の加熱室排気口102bと、第2列の排気口群102G2の加熱室排気口102bとは、主走査方向Yに関して、半円部分102b2の直径D1以下の所定の長さL3だけ重なっている。本実施形態では、第1列の排気口群102G1の加熱室排気口102bと、これに隣り合う第2列の排気口群102G2の加熱室排気口102bとは、主走査方向Yに関して、半円部分102b2の半径R1に等しい距離L3だけ重なっている。すなわち、第1列の排気口群102G1の半円部分102b2と、これに隣り合う第2列の排気口群102G2の半円部分102b2とは、主走査方向Yの位置が揃っている。第1列の排気口群102G1の矩形部分102b1と、第2列の排気口群102G2の矩形部分102b1とは、主走査方向Yに関して重なり合わず、ちょうど境界を接している。第2列の排気口群102G2と第3列の排気口群102G3との関係、および、第3列の排気口群102G3と第4列の排気口群102G4との関係も同様である。
【0062】
好ましくは、各加熱室排気口102bは、例えば、半円部分102b2の直径D1および矩形部分102b1の副走査方向Xの幅が3mm、矩形部分102b1の主走査方向Yの長さが12mmに設定されている。この場合、第1列の排気口群102G1と第2列の排気口群102G2との重なり部分P1(片側、図11Aのハッチング部分)の加熱室排気口102bに対する面積比率は約6%である。ただし、加熱室排気口102bの各部の寸法は特に限定されない。
【0063】
重なり部分P1の主走査方向Yの長さL3は、上記のように、特に好ましくは半円部分102b2の半径R1に等しいが、これには限定されない。重なり部分P1の主走査方向Yの長さL3は、好適には、半円部分102b2の直径D1以下であるとよい。図11Bは、重なり部分P1の長さL3が半円部分102b2の直径D1に等しい場合の加熱室排気口102bの背面図である。図11Bに示すように、この場合、重なり部分P1の面積は、半円部分102b2が2つ分、すなわち、半円部分102b2の半径R1を半径とする円の面積に等しい。例えば、半円部分102b2の直径D1および矩形部分102b1の副走査方向Xの幅が3mm、矩形部分102b1の主走査方向Yの長さが12mmの場合、重なり部分P1(片側)の加熱室排気口102bに対する面積比率は約16%である。
【0064】
主走査方向Yに隣り合う第1列の排気口群102G1の加熱室排気口102bと、第2列の排気口群102G2の加熱室排気口102bとに重なり部分P1を設けることにより、主走査方向Yに関して、加熱室排気口102bが途切れる箇所がなくなる。そのため、熱風が特に弱い箇所がなくなる。また、重なり部分P1の主走査方向Yの長さを上記したものとすることにより、重なり部分P1から排気される熱風の熱量が他よりも大きくなり過ぎて、インクに乾燥ムラが生じることや、記録媒体5に熱ダメージを与えることを抑制できる。加熱室排気口102bから排気される熱風の挙動については後述する。
【0065】
[乾燥装置の動作]
次に、乾燥装置50の動作について説明する。乾燥装置50は、記録媒体5に空気を吹き付けることにより、記録媒体5のインクの乾燥を促進するものである。詳しくは、乾燥装置50は、プラテン16上の記録媒体5に常温の空気を吹き付けることにより、インクの初期乾燥を促進する。加えて、乾燥装置50は、ガイド部材14上の記録媒体5に高温の空気を吹き付けることにより、インクの完全乾燥を促進する。図12は、乾燥装置50における空気の流れを示す図である。
【0066】
図12に示すように、本体ケース51の外部の空気は、第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bにより、送風室吸気口101aから吸気室123に吸い込まれる(矢印A123参照)。矢印A121に示すように、第1送風室ファン131Aは、吸気室123から第1送風室121に空気を送り、第1送風室排気口121bからプラテン16に向けて空気を排出する。第1送風室排気口121bから排出された常温の空気A121bは、プラテン16上の記録媒体5に吹き付けられ、記録媒体5のインクの乾燥を促進する。
【0067】
加熱室ファン132は、矢印A102aに示すように、加熱室吸気口102aから本体ケース51の外部の空気を吸い込み、上流室102Aから下流室102Bに送る。下流室102Bの空気はヒーター135によって加熱される。加熱後の空気の温度は特に限定されないが、例えば50℃~110℃とすることができる。加熱されて高温となった空気は、矢印A102bに示すように、加熱室排気口102bから排出される。加熱室排気口102bから排出された高温の空気は、ガイド部材14上の記録媒体5に吹き付けられ、記録媒体5のインクの乾燥を促進する。
【0068】
図13Aは、加熱室排気口102bからの風の風量分布を示す模式図である。比較用として、図13Bは、重なり部分P1が設けられない場合の加熱室排気口102bからの風の風量分布を示す模式図である。図13Cは、重なり部分P1が長すぎる場合の加熱室排気口102bからの風の風量分布を示す模式図である。図13A図13Cの矢印の長さは、主走査方向Yの長さ当たりの熱風の風量(以下、単に風量ともいう)を表している。図13Bに示すように、長孔状に構成された各加熱室排気口102bにおいて、風の風量は、主走査方向Yの中央部で大きく、端部で小さい。加熱室排気口102bの端部は半円形に構成されており、副走査方向Xの幅が狭まっているため、風量が小さい。また、加熱室排気口102bの端部付近は、加熱室排気口102bが形成されていない非形成部によって遮られた風が巻いているため、風量が小さい。さらに、加熱室排気口102bの直前にある出口室120C内の空気が加圧され、出口室120Cの圧力が正圧となっていることから、加熱室排気口102bから排出される風の風量は、抵抗の小さい主走査方向Yの中央部で大きく、抵抗の大きい端部で小さくなっている。
【0069】
長孔が千鳥配置された加熱室排気口102bにおいて重なり部分P1が設けられないと、図13Bに示すように、主走査方向Yに関して、加熱室排気口102bが形成されていない領域P2ができ、領域P2における熱風の風量が特に小さくなる。これにより、領域P2に対向する記録媒体5の場所におけるインクの乾燥が遅くなり、主走査方向Yに関してインクの乾燥ムラが発生する。
【0070】
一方、長孔が千鳥配置された加熱室排気口102bにおいて重なり部分P1の長さL3が長すぎると、図13Cに示すように、重なり部分P1における熱風の風量が大きくなり過ぎる。重なり部分P1の長さL3が長く、重なり部分P1が加熱室排気口102bの中央部に近づくほど、重なり量が多くなり、重なり部分P1の開口面積が大きくなる。その結果、重なり部分P1の風量が大きくなる。これにより、重なり部分P1に対向する記録媒体5の場所におけるインクの乾燥が重なり部分P1以外の場所と比べて早くなり、主走査方向Yに関してインクの乾燥ムラが発生する。また、記録媒体5の当該箇所に与えられる熱量が大きくなり過ぎ、記録媒体5の当該箇所が熱ダメージを受けるおそれも出る。少なくとも、重なり部分P1から排気される空気の風量が加熱室排気口102bの中央部の風量を越えることは好ましくない。重なり部分P1の風量が各加熱室排気口102bの中央部の風量を越えると、重なり部分P1の風量が加熱室排気口102bの中で最も大きくなる。重なり部分P1に隣接する各加熱室排気口102bの端部の風量は加熱室排気口102bの中では比較的小さい。そのため、両者の境界部で乾燥速度の差が大きくなって、乾燥ムラが顕著になる。
【0071】
本実施形態のように、重なり部分P1の長さL3を適切に設定すると、図13Aに示すように、重なり部分P1から排気される空気の風量を、各加熱室排気口102bの主走査方向Yの中央部から排気される空気の風量以下とすることができる。そのため、重なり部分P1に対向する記録媒体5の場所でのインクの乾燥ムラや、熱ダメージが抑制される。本願発明者の知見によれば、半円部分102b2の半径R1と等しいか、これに近い長さの重なり部分P1を設けることにより、重なり部分P1から排気される空気の風量を適切な風量とすることができる。
【0072】
ところで、加熱室102の空気は高温となるため、加熱室102と送風室101とを仕切る仕切り壁111は、加熱室102の空気によって暖められる。乾燥装置50の運転時間の経過と共に、仕切り壁111の温度は上昇する。そのため、送風室101の空気のうち、仕切り壁111と接触する空気は加熱されて温度が上昇する。このため、第2送風室122が設けられていない場合には、第1送風室121を流れる空気A121が、仕切り壁111により温められて、外気より高温となってしまう。この高温となった空気がプラテン16上に流出すると、画質形成の為の前処理剤が乾きすぎてしまい、インクとの反応を阻害してしまう場合がある。また、プラテン16上に流れ込んだ温風がインクシステム(キャップやワイパー等)側にも到達した場合は、インクシステムに付着したインクが乾燥しやすくなり、ノズルつまりの原因となる場合がある。しかし、本実施形態によれば、第1送風室121と加熱室102との間に第2送風室122が設けられている。第1送風室121の空気A121は、仕切り壁111と接触しない。そのため、第1送風室121の空気A121の温度上昇は抑制される。第2送風室122を流れる空気A122は、第1送風室121の空気A121の温度上昇を抑制する断熱機能を果たす。したがって、プラテン16上の記録媒体5に比較的高温の空気が吹き付けられることを防止することができる。なお、第2送風室122を流れる空気A122の温度は、第1送風室121を流れる空気A121の温度よりも高くなる。第2送風室排気口122bから排出される空気の温度は、例えば、第1送風室排気口121bから排出される空気の温度よりも10℃~20℃程度高くなる。
【0073】
第2送風室排気口122bは、第1送風室排気口121bの下方かつ加熱室吸気口102aの上方に配置されている。第2送風室排気口122bは、第1送風室排気口121bと加熱室吸気口102aとの間に配置されている。これにより、本体ケース51の後壁51Bとガイド部材14との間において、高温の空気が第1送風室排気口121bまで上昇することが抑制される。また、第2送風室排気口122bは、後方かつ下方に開口している。第2送風室排気口122bから排出された空気は、後壁51Bおよびガイド部材14に沿って下方に流れる(矢印AH参照)。そのため、第1送風室排気口121bから排出される常温の空気に高温の空気が混じってしまうことが抑制される。プラテン16上の記録媒体5に吹き付けられる空気の温度が上昇してしまうことを抑制することができる。
【0074】
本実施形態によれば、乾燥装置50は、下壁51Dまたは後壁51Bから前方かつ下方に延びる延長壁119を有している。そのため、高温の空気AHが後壁51Bから下壁51Dに回り込むことが抑制される。また、非加熱室ファン133は、非加熱室吸気口103aから非加熱室103に常温の空気を取り入れ、常温の空気を非加熱室排気口103bから吹き出す。仮に、高温の空気Ahが下壁51Dに回り込んだとしても、非加熱室排気口103bから吹き出された常温の空気A103により、高温の空気Ahが下壁51Dから前壁51Fに回り込むことは抑制される。すなわち、非加熱室排気口103bから吹き出された常温の空気A103は、高温の空気Ahの上昇を遮断する役割を果たす。したがって、本実施形態によれば、高温の空気Ahが前壁51Fに沿って上昇することが抑制される。前壁51Fの温度が高くなることは抑制される。なお、非加熱室排気口103bは、前方かつ下方に向けて開口している。本実施形態では、非加熱室排気口103bの向きと後壁51Bの向きとは平行である。これにより、後壁51Bに沿って下方に流れる高温の空気AHを、そのまま下方に向けてより遠くに拡散させることができる。
【0075】
本実施形態では、高温の空気Ahが前壁51Fに沿って上昇することが抑制されるので、送風室吸気口101aから高温の空気Ahが取り入れられることが抑制される。このことによっても、第1送風室排気口121bおよび第2送風室排気口122bから排出される空気の温度上昇を抑えることができるので、プラテン16上の記録媒体5に吹き付けられる空気の温度が上昇してしまうことを更に効果的に抑制することができる。
【0076】
前述したように、加熱室排気口102bから排出された高温の空気A102bは、ガイド部材14の上壁14U上の記録媒体5に吹き付けられる。ここで、記録媒体5は前斜め下方に移動するので、記録媒体5の同一部分が長時間にわたって加熱され続けることはない。一方、ガイド部材14の上壁14Uは、記録媒体5を介して、高温の空気A102bに長時間にわたって加熱され続ける。そのため、ガイド部材14の上壁14Uの温度が高くなってしまうおそれがある。しかし、本実施形態によれば、図10に示すように、ガイド部材14の内部に、空気が流れる空気流路14Eが形成されている。空気は流入口14aから空気流路14Eに吸い込まれ、空気流路14Eを流れた後、流出口14bから吐き出される。この空気は、空気流路14Eを流れるときに、上壁14Uを冷却する。そのため、上壁14Uの温度が高くなってしまうことが抑制される。
【0077】
ガイド部材14上の記録媒体5に吹き付けられた高温の空気AHは、後壁51Bとガイド部材14との間の空間を下方に向かって流れる。ところで、高温の空気AHは比重が小さいため、上昇する性質がある。高温の空気AHが本体ケース51の後壁51Bの下方に流れた後、下壁51Dから前壁51Fに回り込み、前壁51Fに沿って上昇する場合がある。その場合、前壁51Fは高温の空気により加熱されてしまい、前壁51Fの温度が高くなるおそれがある。前壁51Fは、プリンタ10のうち、プリンタ10の前で作業する作業者にとって最も近い部分である。そのため、作業者にとって、前壁51Fの温度が高くなることは好ましくない。
【0078】
[実施形態の作用効果]
次に、本実施形態に係るプリンタ10によってもたらされる様々な効果について説明する。
【0079】
本実施形態に係るプリンタ10は、記録媒体5が載置される上壁14Uを有しプラテン16よりも副走査方向Xの下流に配置されたガイド部材14と、ガイド部材14の上壁14Uに対向し記録媒体5に向けて風を送る乾燥装置50と、を備えている。乾燥装置50は、本体ケース51の外部と加熱室102とを連通させる複数の加熱室排気口102bと、加熱室102に設けられ複数の加熱室排気口102bから排出されるように加熱室102の空気を送風する加熱室ファン132と、を備えている。複数の加熱室排気口102bは、それぞれ、本体ケース51の後壁51Bに形成され、かつ主走査方向Yに延びた長孔である。
【0080】
複数の加熱室排気口102bは、主走査方向Yに並んだ第1列の排気口群102G1と、第1列の排気口群G1とは異なる副走査方向Xの位置に配置された第2列の排気口群102G2と、を含んでいる。第2列の排気口群102G2は、主走査方向Yに関して、第1列の排気口群102G1に属する加熱室排気口102b同士の間に位置するように主走査方向Yに並んでいる。
【0081】
各加熱室排気口102bは、主走査方向Yに延びる矩形の矩形部分102b1と、矩形部分102b1の主走査方向Yの両端にそれぞれ接続された一対の半円部分102b2と、を備えている。半円部分102b2は、加熱室排気口102bの主走査方向Yの輪郭線を構成している。主走査方向Yに隣り合う第1列の排気口群102G1の加熱室排気口102bと第2列の排気口群102G2の加熱室排気口102bとは、主走査方向Yに関して、半円部分102b2の直径D1以下の所定の長さL3だけ重なっている。
【0082】
かかるプリンタ10によれば、主走査方向Yに隣り合う第1列の排気口群102G1の加熱室排気口102bと第2列の排気口群102G2の加熱室排気口102bとに重なり部分P1が形成されるため、主走査方向Yに関し、空気が排出されない領域ができない。これにより、記録媒体5上のインクの乾燥が部分的に特に遅くなることが防止される。かつ、重なり部分P1の長さL3は、加熱室排気口102bの半円部分102b2の直径D1以下とされている。そのため、重なり部分P1から排気される空気量が他の部分よりも大きくなり過ぎることが抑制される。これにより、重なり部分P1におけるインクの乾燥が他の部分よりも特に早くなることが抑制される。その結果、インクをより均等に乾燥させることができる。
【0083】
本実施形態では、第1列の排気口群102G1の半円部分102b2と、これに隣り合う第2列の排気口群102G2の半円部分102b2とは、主走査方向Yの位置が揃うように配置されている。かかる構成によれば、重なり部分P1の長さL3が適切な長さであるため、風量が弱くなる加熱室排気口102bの端部の風量を確保しつつ、風量の大きい加熱室排気口102bの中央部よりも小さくすることができる。よって、重なり部分P1から排気される空気の風量と他の箇所から排気される空気の風量とのバランスがよい。よって、インクをより均等に乾燥させることができる。
【0084】
本実施形態では、重なり部分P1から排気される空気の主走査方向Yの長さ当たりの風量は、第1列の排気口群102G1の各加熱室排気口102bまたは第2列の排気口群102G2の各加熱室排気口102bの主走査方向Yの中央部から排気される空気の主走査方向Yの長さ当たりの風量以下とされている。かかる構成によれば、重なり部分P1の風量が各加熱室排気口102bの中央部の風量を越えないため、重なり部分P1に対向するインクの乾燥が特に早くなってインクの乾燥ムラができることを抑制できる。なお、重なり部分P1から排気される空気の風量を各加熱室排気口102bの中央部から排気される空気の風量以下とすることができれば、重なり部分P1の長さL3は特に限定されない。
【0085】
本実施形態では、複数の加熱室排気口102bは、本体ケース51の後壁51Bの副走査方向Xにおける中央よりも上流側に集中形成されている。かかる構成によれば、本体ケース51の後壁51Bとガイド部材14との間を搬送される記録媒体5上のインクを早い段階から乾燥させることができる。そのため、インクをより確実に乾燥させることができる。
【0086】
本実施形態では、加熱室ファン132は複数であり、複数のヒーター135が複数の加熱室ファン132の出口にそれぞれ設けられている。複数の加熱室ファン132および複数のヒーター135は、主走査方向Yに並んでいる。本実施形態では、インクは、ヒーター135によって加熱された風により乾燥される。そのため、重なり部分P1の長さL3を適度な長さに制限しなければ、記録媒体5の重なり部分P1に対向する場所に熱ダメージを与えるおそれがある。本実施形態によれば、そのような熱ダメージを抑制することができる。
【0087】
また、かかる構成によれば、複数の加熱室ファン132および複数のヒーター135を主走査方向Yに並べて配置することによっても、加熱室排気口102bから排出される空気の主走査方向Yの風量分布を均等化することができる。それに伴って、ガイド部材14上の記録媒体5に吹き付けられる空気の主走査方向Yの温度分布を均等化することができる。これにより、記録媒体5を均等に加熱することができる。
【0088】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他にも種々の形態で実施することができる。
【0089】
他の実施形態として、図14に示す構成を有するインクジェットプリンタ10に対して本発明を適用することも可能である。図示は省略するが、図14に示すインクジェットプリンタ10では、送風室吸気口101aは本体ケース51の右壁51Rに形成されている。図14に示すように、乾燥装置50は、吸気室123、第2送風室122、および第2送風室ファン131Bを有していなくてもよい。図14に示す構成において、加熱室排気口102bを後壁51Bの上下方向の中間よりも上方に配置するようにしてもよい。
【0090】
前述の実施形態では、送風室吸気口101aは、本体ケース51の上壁51Uに形成されていた(図3参照)。しかし、図15に示すように、送風室吸気口101aは、本体ケース51の前壁51Fの上部に形成されていてもよい。送風室吸気口101aが本体ケース51の上壁51Uに形成される場合は、落下物が送風室吸気口101aを介して本体ケース51の内部に侵入した場合に、落下物が第1送風室ファン131Aおよび第2送風室ファン131Bに巻き込まれないように、送風室吸気口101aの位置や範囲に制約が生じる。また、本体ケース51の上壁51Uに物を置いた場合は、送風室吸気口101aの一部がその物によって塞がれてしまい、本体ケース51内に取り入れられる空気量が変化する場合があり得る。送風室吸気口101aの塞がれる範囲が広いと、本体ケース51内に取り入れられる空気量を確保できない場合も生じ得る。これに対して、送風室吸気口101aが本体ケース51の前壁51Fに形成されている場合、上述した問題は生じない。一方で、送風室吸気口101aが配置される、本体ケース51の前壁51Fの上部は、送風室101の第2送風室122のうち前後方向に延びる部分と正面視で重なる部分であり、本体ケース51の最も高い位置に設定されている。よって、本体ケース51の前壁51Fであっても、本体ケース51の最も高い位置であれば、その部分に送風室吸気口101aを配置しても、送風室吸気口101aから取り入れられる空気の温度を適切に保つことができる。
【0091】
上述した実施形態の各種の吸気口および排気口の形状は何ら限定されない。吸気口および排気口は、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、スリット状などであってもよい。
【0092】
上述した実施形態では、ガイド部材14の下流側ガイド部材18と補助ガイド部材15とは別体に形成されていたが、下流側ガイド部材18と補助ガイド部材15とは一体に形成されていてもよい。また、プリンタ10は、補助ガイド部材15を備えていなくてもよい。
【0093】
プリンタ10は、プラテン16を加熱するプラテン用ヒーターを備えていてもよい。プリンタ10がプラテン用ヒーターを備える場合には、例えば、プラテン用ヒーターは、プラテン16の裏面に設けられる。また、プリンタ10は、下流側ガイド部材18を加熱する下流側ガイド部材用ヒーターを備えていてもよい。プリンタ10が下流側ガイド部材用ヒーターを備える場合には、例えば、下流側ガイド部材用ヒーターは、下流側ガイド部材18の裏面に設けられる。
【0094】
乾燥装置50が記録媒体5に高温の空気を吹き付ける必要が無い場合、加熱室102のヒーター135は無くてもよい。
【0095】
加熱室102の整流板127は無くてもよい。延長壁119は無くてもよい。
【0096】
第1送風室排気口121bは、必ずしも加熱室排気口102bよりも後方に配置されていなくてもよい。
【0097】
送風室101は、必ずしも第2送風室122を含んでいなくてもよい。この場合、第2送風室ファン131Bはなくてもよい。
【0098】
非加熱室103は必ずしも必要ではない。例えば、本体ケース51の前壁51Fが熱くならない場合に、非加熱室103を省略してもよい。
【0099】
インクは水性インクに限定されない。乾燥装置50によって乾燥することが好ましい各種のインクを用いることができる。
【符号の説明】
【0100】
5 記録媒体
10 インクジェットプリンタ
14 ガイド部材
16 プラテン
30 キャリッジ
32 媒体搬送機構(搬送装置)
35 インクヘッド
50 乾燥装置
51 本体ケース
51B 後壁(対向壁)
102 加熱室(空気室)
102a 加熱室吸気口(吸気口)
102b 加熱室排気口(排気口)
102b1 矩形部分
102b2 半円部分
102G1 第1列の排気口群
102G2 第2列の排気口群
102G3 第3列の排気口群
102G4 第4列の排気口群
132 加熱室ファン(空気室ファン)
135 ヒーター
P1 重なり部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15