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  • 特開-電動弁及び電動弁ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104444
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】電動弁及び電動弁ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008648
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 聡
(72)【発明者】
【氏名】羽間 丈浩
(72)【発明者】
【氏名】望月 健一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕介
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB30
3H062BB31
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE07
3H062GG04
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
(57)【要約】
【課題】組付性を向上させ小型化を維持しつつ信頼性を向上できる電動弁及び電動弁ユニットを提供する。
【解決手段】電動弁は、弁室、前記弁室に連通し軸線方向に開口した端部開口および前記弁室に連通し軸線と交わる方向に開口した側部開口を有する弁本体と、少なくとも一部が前記端部開口内に配置されるとともに前記弁室側に弁座を備えたシート部材と、前記弁座に対して接近または離間する弁体と、ロータの回転移動を前記弁体の直線移動に変換する変換機構と、を有し、前記弁本体は、前記端部開口内で前記シート部材の前記弁室側への移動を規制する当接面を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室、前記弁室に連通し軸線方向に開口した端部開口および前記弁室に連通し軸線と交わる方向に開口した側部開口を有する弁本体と、
少なくとも一部が前記端部開口内に配置されるとともに前記弁室側に弁座を備えたシート部材と、
前記弁座に対して接近または離間する弁体と、
ロータの回転移動を前記弁体の直線移動に変換する変換機構と、を有し、
前記弁本体は、前記端部開口内で前記シート部材の前記弁室側への移動を規制する当接面を備えることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記弁本体が、第1流路及び第2流路を備えた流路ブロックに取り付けられた状態において、前記シート部材は、前記シート部材の上端側に設けられ、前記弁本体に当接する第1の当接面、および前記シート部材の下端に設けられ、前記流路ブロックに当接する第2の当接面を有することを特徴とする請求項1の電動弁。
【請求項3】
前記シート部材は前記端部開口に圧入されており、前記シート部材の外周面と前記端部開口の接触面が流体をシールするシール面となることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記第1の当接面と前記第2の当接面の少なくとも一方が流体をシールするシール面となることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項5】
弁室、前記弁室に連通し軸線方向に開口した端部開口および前記弁室に連通し軸線と交わる方向に開口した側部開口を有する弁本体と、
少なくとも一部が前記端部開口内に配置されるとともに前記弁室側に弁座を備えたシート部材と、
前記弁座に対して接近または離間する弁体と、
ロータの回転移動を前記弁体の直線移動に変換する変換機構と、を有し、
前記シート部材は、前記弁本体の一端側から前記弁室に向かって前記端部開口内に挿入されており、前記弁座の周囲で前記弁本体に対して全周で当接することを特徴とする電動弁。
【請求項6】
前記弁本体が、第1流路及び第2流路を備えた流路ブロックに取り付けられた状態において、前記シート部材は、前記シート部材の上端側に設けられ、前記弁本体に当接する第1の当接面、および前記シート部材の下端に設けられ、前記流路ブロックに当接する第2の当接面を有することを特徴とする請求項5の電動弁。
【請求項7】
前記シート部材は、前記端部開口に圧入されており、前記シート部材の外周面と前記端部開口の接触面が流体をシールするシール面となることを特徴とする請求項6に記載の電動弁。
【請求項8】
前記第1の当接面と前記第2の当接面の少なくとも一方が流体をシールするシール面となることを特徴とする請求項6に記載の電動弁。
【請求項9】
前記弁本体が流路ブロックに取り付けられた状態において、前記シート部材の下端は、前記弁本体の下端よりも前記流路ブロックの底面側に位置する、
ことを特徴とする請求項1または5に記載の電動弁。
【請求項10】
前記シート部材を組み付けた前記弁本体を、流路ブロックの底面に接近させたとき、前記弁本体の下端が前記底面に当接する前に、前記シート部材の下端が前記底面に当接する、
ことを特徴とする請求項1または5に記載の電動弁。
【請求項11】
請求項1に記載の電動弁と、前記電動弁を組付けた流路ブロックとを有することを特徴とする電動弁ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁及び電動弁ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動弁は、例えば流体の配管系統の途中に組み付けられて、流体の流路の開閉や流量制御を行うために使用されている。例えば、特許文献1に示すような電動弁においては、ステッピングモータの回転移動を弁体の軸線方向移動に変換して、精度良い流量制御を実現している。また、別なタイプの電動弁として、遊星歯車減速機構などを用いてステッピングモータのトルクを減速して弁体に伝達し、閉弁時の密封性を確保するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7048144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動弁においては、弁体が着座する筒状のシート部材が、弁室側から弁本体に圧入することにより取り付けられているが、その組付性が問題となっている。そこで、シート部材を端部から弁室側に向かって弁本体に圧入して組付けたいという要請がある。
【0005】
しかしながら、シート部材を端部から弁本体に組付けた場合、冷媒を高圧化したときに弁室と、シート部材内側の弁口との差圧により、シート部材が弁本体から抜け出る恐れがある。かかる不具合を回避するためには、弁本体に対するシート部材の圧入代(圧入部位の長さ)を増やす必要が生じ、それにより電動弁の大型化を招くという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、組付性を向上させ小型化を維持しつつ信頼性を向上できる電動弁及び電動弁ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動弁は、
弁室、前記弁室に連通し軸線方向に開口した端部開口および前記弁室に連通し軸線と交わる方向に開口した側部開口を有する弁本体と、
少なくとも一部が前記端部開口内に配置されるとともに前記弁室側に弁座を備えたシート部材と、
前記弁座に対して接近または離間する弁体と、
ロータの回転移動を前記弁体の直線移動に変換する変換機構と、を有し、
前記弁本体は、前記端部開口内で前記シート部材の前記弁室側への移動を規制する当接面を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の電動弁は、
弁室、前記弁室に連通し軸線方向に開口した端部開口および前記弁室に連通し軸線と交わる方向に開口した側部開口を有する弁本体と、
少なくとも一部が前記端部開口内に配置されるとともに前記弁室側に弁座を備えたシート部材と、
前記弁座に対して接近または離間する弁体と、
ロータの回転移動を前記弁体の直線移動に変換する変換機構と、を有し、
前記シート部材は、前記弁本体の一端側から前記弁室に向かって前記端部開口内に挿入されており、前記弁座の周囲で前記弁本体に対して全周で当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、組付性を向上させ小型化を維持しつつ信頼性を向上できる電動弁及び電動弁ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る電動弁の縦断面図である。
図2図2は、閉弁状態にある電動弁の下部を示す縦断面図である。
図3図3は、開弁状態にある電動弁の下部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電動弁の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書では、電動弁のロータ側を上方とし、それに対する流路ブロック側を下方として説明する。不思議遊星歯車減速機構は、遊星歯車減速機構の一タイプである。
【0012】
図1は、本実施形態に係る電動弁1の縦断面図であり、開弁状態で示している。図2は、閉弁状態にある電動弁1の下部を示す縦断面図であり、図3は、開弁状態にある電動弁1の下部を示す縦断面図である。
【0013】
本実施形態の電動弁1は、例えば冷凍サイクルにおいて冷媒(流体ともいう)の流量を調整するために用いられる。本実施形態の電動弁1は、流路ブロック100に取り付けられて使用される。電動弁1と流路ブロック100とで電動弁ユニットを構成する。電動弁1の軸線をLとする。
【0014】
有底円筒状の流路ブロック100は、軸線Lと同軸の第1流路101と、軸線Lに直交する軸線Oと同軸の第2流路102とを有する。第1流路101と第2流路102は、それぞれ流路ブロック100の外部と内部とを連通する。第1流路101には、不図示の低圧配管が接続され、第2流路102には、不図示の高圧配管が接続される。
【0015】
流路ブロック100の内側に、円筒状の下部内周面103と、下部内周面103よりも大径である円筒状の中間内周面104と、雌ねじ部105とが形成される。流路ブロック100の内部が弁室VCを構成する。下部内周面103と第1流路101との間には、軸線Lに直交する平面である底面106が形成されている。第2流路102は、下部内周面103を貫通して弁室VCに連通する。
【0016】
電動弁1は、流路ブロック100に取り付けられる弁本体2と、環状部材31を介して弁本体2に固着される金属製で有頂円筒形状のキャン3と、キャン3の外部に装備されるステータ50及びキャン3の内部に装備されるロータ57からなるステッピングモータと、ロータ57の回転トルクを減速して伝達する減速機構6と、シート部材21に接離して流体の通過量を制御する弁体41を含む弁体ユニット4と、減速機構6の出力ギヤの回転移動を、後述するねじ送り機構(変換機構)を介して直線移動に変換して弁体41を駆動するねじ駆動部材22と、から構成される。
【0017】
図1において、キャン3の外側において、それぞれ一対のヨーク51、ボビン52、及びステータコイル53が配置されてステータ50が形成され、その外側が樹脂モールドカバー58によって覆われている。ロータ57とステータ50とによりステッピングモータを構成している。樹脂モールドカバー58は、ステッピングモータを制御駆動するための回路基板等を内包したボックス59を有する。
【0018】
略円管状である弁本体2は、上端側より、第1外周部2aと、第1外周部2aよりも大径の第2外周部2bと、第2外周部2bよりも大径の第3外周部2cと、第3外周部2cよりも大径の第4外周部2dと、流路ブロック100の雌ねじ部105に螺合する雄ねじ部2eと、中間内周面104に嵌合する第5外周部2fと、下部内周面103に嵌合する第6外周部2gとを有する。第2外周部2bの外周に、環状部材31が溶接により固定されている。第3外周部2cと第4外周部2dとの間の段差面に、後述する樹脂モールドカバー58の円管状下端が突き当てられ、該円管状下端と第3外周部2cとの間に、防塵用O-リングOR4が配置され、両者間を封止している。
【0019】
また、弁本体2は、上端側より、雄ねじ部2eの上端近傍まで延在する第1内周部2hと、第1内周部2hよりも小径の第2内周部2iと、第2内周部2iよりも大径の第3内周部2jと、第3内周部2jよりも大径の第4内周部(以下、端部開口という)2kとを有する。第6外周部2gと端部開口2kは、弁本体2の下端2sに隣接する。下端2sは、軸線方向において側部開口2rに近い側の端部であり、弁本体2の上端は、側部開口2rから遠い端部である。第3内周部2jと端部開口2kとの間には、軸線Lに直交する受け面2qが形成されている。圧力キャンセルのため、第2内周部2iの内径は、シート部材21の弁座21dの内径と略等しくなっている。
【0020】
第5外周部2f(外周側)と第2内周部2i(内周側)とを連通するようにして、側部開口2rが形成されている。側部開口2rは、軸線L方向に見て例えば十字型に交差するようにして貫通しており、また側部開口2rの軸線は、図1において流路ブロック100の第2流路102の軸線Oと重なる。側部開口2rの内径は、第2流路102の内径と略等しいと好ましい。側部開口2rを十字型に形成することにより、弁本体2を流路ブロック100に取り付ける際に、軸線L回りの位相が第2流路102と完全に一致しない場合でも、第2流路102から弁室VCに流入する冷媒の量が制限されることを回避できる。
【0021】
側部開口2rの上方における第5外周部2fには、上下に並行して、第1周溝2mと第2周溝2nが形成されている。第1周溝2mには、第1のO-リングOR1が配置され、第2周溝2nには、第2のO-リングOR2が配置され、これらにより流路ブロック100と弁本体2との間を封止している。このようにO-リングを二重に配設する理由は、側部開口2rに高圧の冷媒が導入されることに対応してシールを強化し、電動弁1の外部への冷媒漏れを抑制するためである。
【0022】
また、第6外周部2gには第3周溝2pが形成され、第3周溝2pには第3のO-リングOR3が配置され、これにより流路ブロック100と弁本体2の下端との間を封止している。
【0023】
端部開口2kの径方向内側に、円管状のシート部材21が圧入により固定される。ただし、シート部材21の取り付けは、圧入に限られず、例えばねじ固定なども可能である。図2、3を参照して、金属製(例えばステンレス製)のシート部材21は、厚肉円筒部21aと、厚肉円筒部21aから上方に延在する薄肉円筒部21bとを連設してなる。厚肉円筒部21aと薄肉円筒部21bの内径は等しく、シート部材21の内側が弁口を形成し、薄肉円筒部21bの上端内周が、弁座21dを構成する。シート部材21は、少なくとも一部が端部開口2k内に配置されるとともに、弁室VC側に弁座21dを備えている。
【0024】
厚肉円筒部21aの外径は、圧入可能な程度に端部開口2kの内径よりわずかに大きく(両者間に隙間がなく)、薄肉円筒部21bの外径は、第3内周部2jの内径よりわずかに小さくなっている(両者間に隙間がある)。薄肉円筒部21bの上端は、軸線L方向において、側部開口2r(または第2開口102)の内周下端の位置と等しいか、または第1流路101に近い側に位置すると好ましい。軸線L方向における薄肉円筒部21bの上端の位置と、側部開口2rの内周下端の位置とを調整することで、開弁時の流量特性を調整できる。例えば、薄肉円筒部21bの長さを変えた複数種類のシート部材21を用意しておき、必要な特性に合致した薄肉円筒部21bの長さを持つシート部材21を選択して用いることができる。
【0025】
厚肉円筒部21aと薄肉円筒部21bの間に、軸線Lに直交する当接段差面21cが形成される。当接段差面21cは、端部開口2k内でシート部材21の弁室VC側への移動を規制する当接面となる。図2に示すように、軸線Lに沿って、端部開口2kの長さAは、厚肉円筒部21aの長さBより短くなっている。このため、シート部材21が弁本体2に取り付けられ、また弁本体2が流路ブロック100に取り付けられた状態では、シート部材21の下端21eが、流路ブロック100の底面106に当接し、弁本体2の下端2sと底面106との間には隙間(B-A)が形成されることとなる。換言すれば、シート部材21の下端21eは、弁本体2の下端2sよりも軸線L方向下方にはみ出している(底面106側に位置する)。この隙間(B-A)は、一般的な製造公差を考慮して負にならない値である。本実施形態では、シート部材21の下端21eが、差圧による押圧方向を向いて流路ブロック100の底面106に当接する第1の当接面、及び弁本体2の軸力を受けて底面106に当接する第2の当接面を構成する。
【0026】
図1において、キャン3の上端内側に、樹脂製の軸支持部81が取り付けられている。より具体的に、軸支持部81は、上端面をキャン3の下面に当接させた円筒部81aと、円筒部81aの周囲に配置されキャン3の内周に外周を当接させたフランジ部81bとを連設してなり、円筒部81aの下面中央には、貫通孔81cが軸線Lと同軸に形成されている。貫通孔81cの内径は、支持軸8の外径に略等しい。キャン3の内側に配置された円筒状のロータ57の上端に、軸支持部81に対向してロータ支持部材56が取り付けられて有頂円筒状を形成している。ロータ57の径方向内方に、減速機構6が配置されている。
【0027】
減速機構6は、ロータ57の内周側において、ロータ支持部材56に一体に形成された太陽歯車61と、弁本体2の上部に固着され上方に延在する薄肉筒状体66を介して固定された固定リング歯車62の上部と、太陽歯車61と固定リング歯車62との間に配置されてそれぞれに歯合する複数の遊星歯車63と、遊星歯車63を回転自在に支持するキャリア64と、遊星歯車63に歯合する歯を内周に備えた有底筒状の出力歯車部材65とを有し、これらにより不思議遊星歯車減速機構を構成する。固定リング歯車62の歯数は、出力歯車部材65の歯数とは異なるように設定されている。
【0028】
金属製の支持軸8は、ロータ支持部材56及び太陽歯車61を貫通して、これらと共に回転可能に保持されている。支持軸8の上端は、キャン3に取り付けられた軸支持部81の貫通孔81cに嵌合して支持されている。支持軸8の下端は、ねじ駆動部材22の上端に形成された袋穴22fに嵌合している。
【0029】
出力歯車部材65の底部中央には、円筒軸状のねじ駆動部材(出力軸)22の第1軸部22aが圧入により連結固定されており、出力歯車部材65とねじ駆動部材22とは一体的に回転する。ねじ駆動部材22は、第1軸部22aと、第1軸部22aよりも大径の第2軸部22bと、第2軸部22bよりも小径の第3軸部22cと、第3軸部22cよりも小径の第4軸部22dと、雄ねじ部22eとを有する。出力歯車部材65の底面は、第2軸部22bの上面に当接している。
【0030】
弁本体2の上端には、円管状の軸受保持部材23が取り付けられている。軸受保持部材23は、上方外周部23aと、上方外周部23aよりも大径の中間外周部23bと、中間外周部23bよりも小径の下方外周部23cとを有する。上方外周部23aと中間外周部23bとの段差に下端を突き当てつつ、上方外周部23aに嵌合するようにして、薄肉筒状体66が例えば溶接により固定されている。また、下方外周部23cと中間外周部23bとの段差に上端を突き当てつつ、下方外周部23cに第1内周部2hを嵌合させるようにして、弁本体2が例えば圧入により固定されている。
【0031】
また、軸受保持部材23は、上方内周部23dと、上方内周部23dよりも小径の下方内周部23eとを有する。上方内周部23dと下方内周部23eとの段差に下端を突き当てつつ、転がり軸受24の外輪が上方内周部23dに嵌合している。
【0032】
転がり軸受24の内輪は、その上端をねじ駆動部材22の第2軸部22bと第3軸部22cとの間の段差に当接させるようにして、第2軸部22bの外周に嵌合して取り付けられている。これにより、ねじ駆動部材22は、弁本体2に対して軸受保持部材23を介して軸線方向位置を固定されつつ、回転可能に保持されている。
【0033】
ねじ駆動部材22の雄ねじ部22eは、被駆動部材25の雌ねじ部25eに螺合している。被駆動部材25は、大円筒部25aと、大円筒部25aの下端から下方に突出する小円筒部25bと、大円筒部25aの上端から径方向外方に延在するフランジ部25cとを有する。フランジ部25cの外径は、第2内周部2iの内径より小さい。また、被駆動部材25は、軸線L方向に延在する貫通孔25dを有し、貫通孔25dの上部が雌ねじ部25eとなっている。大円筒部25aの下端近傍には、貫通孔25dと被駆動部材25の外周とを連通する連通孔25fが形成されている。
【0034】
出力歯車部材65の回転運動は、雄ねじ部22eと雌ねじ部25eとからなるねじ送り機構(変換機構)により、軸線Lに沿って直線運動に変換される。
【0035】
大円筒部25aと、弁本体2の第2内周部2iとの間に、略円管状のばね受け部材26が配置されており、その上端に形成された拡径部の下面を、第1内周部2hと第2内周部2iとの間の段差面に当接させることで、ばね受け部材26は弁本体2に対して固定されている。ばね受け部材26に対して大円筒部25aが摺動可能となっており、これにより被駆動部材25は、弁本体2に対して軸線L方向に移動可能である。
【0036】
大円筒部25aを内包するようにして、フランジ部25cの下面とばね受け部材26の上端との間にコイルばね27が配置され、弁本体2に対して被駆動部材25を上方に付勢している。コイルばね27は、雄ねじ部22eと雌ねじ部25eとのバックラッシを除去する機能を有する。
【0037】
被駆動部材25の下方には、保持リング28と、内部O-リングOR5と、例えばPTFE製の滑動リング29と、弁体41が取り付けられている。被駆動部材25と、保持リング28と、内部O-リングOR5と、滑動リング29と、弁体41とにより、弁体ユニット4を構成する。図示していないが弁体ユニット4は、ねじ駆動部材22と被駆動部材25との連れ回りを防止する機構を有する。ばね受け部材26と保持リング28との間における弁本体2と被駆動部材25との間の空間を背圧室BCとする。
【0038】
保持リング28は、その内周を小円筒部25bに嵌合させつつ、その上面を大円筒部25aと小円筒部25bとの段差面に当接させて固定され、内部O-リングOR5を保持する機能を有する。
【0039】
図2、3において、筒状の弁体41は、保持リング28の下面に上端を当接させた小径部41aと、小径部41aより大径の大径部41bと、大径部41bより大径の拡径隆起部41cとを有する。大径部41bは、弁本体2の第2内周部2iに摺動可能に嵌合する。拡径隆起部41cの下端が、軸線方向下方に向かうにつれて縮径するテーパ状の弁体部41dとなる。弁体部41dは、シート部材21の弁座21dに着座可能である。小径部41aの外周に、内部O-リングOR5が配置され、その外周に滑動リング29が配置されている。
【0040】
弁室VCに導入される高圧の冷媒の漏れを抑制するには、通常の圧力の冷媒を使用する場合に比べ、シール性を向上させるべく内部O-リングOR5の設定変形量を増大させなくてはならない。かかる場合、仮に滑動リング29がないとすると、内部O-リングOR5の外周が、弁本体2の内周に直接当接して大きな摩擦力を付与し、それにより弁体41の移動を阻害するおそれがある。そこで、内部O-リングOR5と弁本体2の内周との間に、低フリクション素材からなる滑動リング29を挿入することで、冷媒漏れを防ぎつつ弁体41のスムーズな移動を確保する。
【0041】
さらに弁体41は、軸線方向に貫通した形状を備え、該貫通孔の上端側において小円筒部25bが嵌合する嵌合部41eが形成され、該貫通孔の下端側において下方に向かうにつれて拡径する第1テーパ部41fおよび第2テーパ部41gが形成されている。軸線Lに対する第1テーパ部41fの傾き角は、第2テーパ部41gの傾き角より小さい。
【0042】
(電動弁の組立)
本実施形態の電動弁1を組み立てるときは、まず単体の弁本体2の下端側から、保持リング28と、内部O-リングOR5及び滑動リング29を取り付けた弁体41を挿入し、また弁本体2の上端側からばね受け部材26と、コイルばね27と、被駆動部材25を挿入し、小円筒部25bを保持リング28を通して嵌合部41eに圧入する。さらに、側部開口2rに向かって、弁本体2の下端側より端部開口2kにシート部材21を圧入する。シート部材21の弁本体2への挿入を、弁本体2の端部から行えるため、組付性が向上する。
【0043】
弁体ユニット4の被駆動部材25とねじ駆動部材22とを螺合させた後、軸支持部81、支持軸8、ロータ57、減速機構6、ねじ駆動部材22、転がり軸受24、軸受保持部材23等を組付ける。
【0044】
かかる状態で、弁本体2に対して軸受保持部材23を固定するとともに、環状部材31を介してキャン3を固定する。
【0045】
その後、弁本体2に対してO-リングを組付けたのち、流路ブロック100に挿入し、雄ねじ部2eと雌ねじ部105とを螺合させる。雌ねじ部105に対して雄ねじ部2eをねじ込んでゆくと、シート部材21の下端21eが、流路ブロック100の底面106に当接し、かつシート部材21の弁座21dの周囲で当接段差面21cが受け面2qに軸線回りに全周にわたって当接する。その後、キャン3の周囲にステータ50を装着する。以上により、電動弁ユニットが完成する。
【0046】
本実施形態において、弁本体2の端部開口2kにシート部材21を圧入するため、圧入面(シート部材21の外周面と端部開口2kの内周面の接触面)が、冷媒をシールするシール面となる。ただし、端部開口2kに対してシート部材21に圧入にならない(微小隙間を有する)寸法関係を持たせた上で、シート部材21を端部開口2kに挿入してもよい。かかる場合は、シート部材21における弁本体2側を向いた面である当接段差面21cが、シート部材21を弁本体2の一端側から側部開口2rに向かって挿入(圧入ではない)したときに、受け面2qに全周で当接する。
【0047】
一方、弁本体2を流路ブロック100に取り付けた(雄ねじ部2eをねじ込んで弁本体2に下方に向かう軸力を付与した)際に、シート部材21が受け面(第1の当接面)2qと流路ブロック(下端21eに当接する流路ブロック100の底面(第2の当接面)106)とに挟まれて圧縮されるように押圧される。このとき、シート部材21の軸線方向に対向する当接段差面21c及び下端21eが、冷媒をシールするシール面になる。ただし、下端21eよりも当接段差面21cの方が、当接面積が少なく強い面圧が付与されるため、シール面として好ましい。
【0048】
シート部材21の圧入面、当接段差面21c又は下端21eは、薄肉円筒部21bの外周と第3内周部2jの内周との間の隙間に進入する高圧の冷媒が、圧入面、当接段差面21c又は下端21eを超えて第1流路101側に漏れないようにシールする。段差面21cをシール面とする場合、雄ねじ部2eのねじ径が、当接段差面21cの外径より例えば1.5倍以上大きいため、当接段差面21cと受け面2qの面圧が高まる。このため、冷媒漏れを効果的に抑制できる。
【0049】
なお、シート部材21を弁本体2の端部開口2kに圧入した場合であっても、シート部材21の外周面に軸方向の溝がある場合は、当接段差面21cをシール面とすることができる。
【0050】
(電動弁の動作)
図2に示す閉弁状態では、弁体41の弁体部41dが弁座21dに着座しており、弁室VCから冷媒が弁口を介して第1流路101へと向かうことが阻止される。
【0051】
かかる閉弁状態では、シート部材21の弁口、弁体41の内部、連通孔25fを介して第1流路101の圧力が、被駆動部材25と弁体41の間の背圧室BCに伝達される。背圧室BCと側部開口2rとの間は、内部O-リングOR5により封止されている。このため、弁体41を挟んで軸線L方向両側の圧力が均一化され、開弁動作を妨げないようになっている。
【0052】
閉弁状態から、ステータ50に給電することにより発生した磁力により、ロータ57を回転駆動させると、ロータ57の回転トルクがロータ支持部材56を介して減速機構6の太陽歯車61に伝達され、所定の減速比で減速された回転トルクが出力歯車部材65から出力される。これにより、出力歯車部材65とともに、ねじ駆動部材22が回転する。
【0053】
ねじ駆動部材22の回転移動は、雄ねじ部22eと雌ねじ部25eとからなるねじ送り機構により直線移動に変換され、それにより被駆動部材25は、弁本体2に対して弁体41と共に軸線L方向に沿って上昇し、弁体部41dが弁座21dから離間して、図3に示す開弁状態となる。開弁状態では、弁体部41dと弁座21dとの隙間に応じた流量により、弁室VCからシート部材21の弁口および第1流路101に向かって流体が流れる。
【0054】
開弁状態から、ステータ50に逆特性の給電を行うことにより、ロータ57が逆方向に回転するため、上述とは逆の動作で弁体41を下降させ、弁体41の弁体部41dを弁座21dに着座させることにより閉弁状態とすることができる。
【0055】
図2に示すように、本実施形態によれば、弁本体2の下端2sと底面106との間に隙間(B-A)が形成されているため、流路ブロック100にねじ込むことにより発生する軸線L方向の弁本体2の軸力は、シート部材21の下端21eと流路ブロック100の底面106との間の環状当接領域Cによってすべて受けられる。また、厚肉円筒部21aを挟んで下端21eに対向する当接段差面21cが、弁本体2の受け面2qに環状当接領域Dで当接しているため、環状当接領域Cに生じた上向きの反力を環状当接領域Dで受けることができる。このため、シート部材21は軸線方向両側から押圧力を付与されて固定される。環状当接領域Dの面積は、環状当接領域Cの面積より小さいため、高い面圧を確保できシール性が向上する。なお、軸線方向に見て、環状当接領域Cは環状当接領域Dと一部が重なっていると好ましい。
【0056】
ここで、高圧の冷媒が導入される第2流路102と第1流路101との内圧差が大きいため、シート部材21には該内圧差に応じた軸線方向下向きの押圧力が作用することとなる。本実施形態によれば、シート部材21の下端21eが流路ブロック100の底面106に当接しているため、下向きの押圧力が作用してもシート部材21が弁本体2から抜け出すことがなく、環状当接領域Dのシール性が維持される。それにより弁本体2に対するシート部材21の圧入代を考慮する必要がなくなり、シート部材21をより小型化することができ、コンパクトかつ低コストである電動弁1を提供できる。
【0057】
この例では、第2流路102と第1流路101との内圧差によるシート部材21の押圧力、及び流路ブロック100に弁本体2をねじ込むことにより発生する軸線L方向の軸力が、主として環状当接領域Cで受けられる。
【0058】
なお、シート部材21の下端21eが、弁本体2の下端2sの位置と等しいか、それより上方に位置していた場合でも、例えば流路ブロック100の底面106を平面とする代わりにシート部材21に対応して環状に隆起させることで、本実施形態と同様な効果が得られる。流路ブロック100の底面106の隆起部が、弁本体2の下端2sと接することなくシート部材21の下端21eに当接するように構成することで、弁本体2の下端2sと底面106との間に、所定の隙間を形成することができる。
【0059】
(変形例)
また、上記実施形態とは逆に、第1流路101に高圧配管を接続して高圧側流路とし、第2流路102に低圧配管を接続して低圧側流路とした仕様でも、本実施形態の電動弁1は構成を共通としたまま使用可能となる。このとき閉弁状態において、環状当接領域Dを挟んで薄肉円筒部21bの径方向外側が低圧となり、厚肉円筒部21aの径方向外側が高圧となる。
【0060】
変形例の電動弁1において、開弁時に第1流路101から第2流路102に向かって冷媒が流れる以外、開閉弁動作も共通である。この例では、高圧の冷媒が導入される第1流路101と第2流路102との内圧差により、シート部材21には該内圧差に応じた軸線方向上向きの押圧力が作用するが、これは環状当接領域Dのシール性を高めることに貢献する。本変形例では、シート部材21の当接段差面21cが、シート部材21の挿入方向及び差圧による押圧方向を向いて弁本体2の受け面2qに当接する第1の当接面及びシール面を構成し、シート部材21の下端21eが、厚肉円筒部21aを挟んで当接段差面21cと軸線方向に対向して流路ブロック100に当接する第2の当接面を構成する。
【0061】
さらに、上記変形例において、第1流路101の内径を、シート部材21の外径以上に大きくすることもできる。このとき、シート部材21に対しては、冷媒の差圧により第1流路101側から弁室VC側に向かう押圧力が作用するため、当接段差面21cが弁本体2の受け面2qに当接する状態が維持され、第2の当接面がなくても弁本体2からシート部材21が抜け出ることがない。また、かかる構成により、流路ブロック100に弁本体2を取り付けたのちに、流路ブロック100の外側から第1流路101を通してシート部材21を弁本体2に圧入することもできる。この例では、シート部材21は、当接段差面21cとしての第1の当接面及びシール面を有するが、第2の当接面は有しない。
【0062】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上述の実施形態の任意の構成要素の変形が可能である。また、上述の実施形態において任意の構成要素の追加または省略が可能である。例えば減速機構として、遊星歯車減速機構の代わりに歯車対からなる減速機構を設けてもよい。また、本発明の電動弁は、例えばCOを含む高圧の流体の流量制御に使用することができる。
【0063】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(第1の形態)
弁室、前記弁室に連通し軸線方向に開口した端部開口および前記弁室に連通し軸線と交わる方向に開口した側部開口を有する弁本体と、
少なくとも一部が前記端部開口内に配置されるとともに前記弁室側に弁座を備えたシート部材と、
前記弁座に対して接近または離間する弁体と、
ロータの回転移動を前記弁体の直線移動に変換する変換機構と、を有し、
前記弁本体は、前記端部開口内で前記シート部材の前記弁室側への移動を規制する当接面を備えることを特徴とする電動弁。
【0064】
(第2の形態)
前記弁本体が、第1流路及び第2流路を備えた流路ブロックに取り付けられた状態において、前記シート部材は、前記シート部材の上端側に設けられ、前記弁本体に当接する第1の当接面、および前記シート部材の下端に設けられ、前記流路ブロックに当接する第2の当接面を有することを特徴とする請求項1の電動弁。
【0065】
(第3の形態)
前記シート部材は前記端部開口に圧入されており、前記シート部材の外周面と前記端部開口の接触面が流体をシールするシール面となることを特徴とする第2の形態の電動弁。
【0066】
(第4の形態)
前記第1の当接面と前記第2の当接面の少なくとも一方が流体をシールするシール面となることを特徴とする第2の形態の電動弁。
【0067】
(第5の形態)
弁室、前記弁室に連通し軸線方向に開口した端部開口および前記弁室に連通し軸線と交わる方向に開口した側部開口を有する弁本体と、
少なくとも一部が前記端部開口内に配置されるとともに前記弁室側に弁座を備えたシート部材と、
前記弁座に対して接近または離間する弁体と、
ロータの回転移動を前記弁体の直線移動に変換する変換機構と、を有し、
前記シート部材は、前記弁本体の一端側から前記弁室に向かって前記端部開口内に挿入されており、前記弁座の周囲で前記弁本体に対して全周で当接することを特徴とする。
【0068】
(第6の形態)
前記弁本体が、第1流路及び第2流路を備えた流路ブロックに取り付けられた状態において、前記シート部材は、前記シート部材の上端側に設けられ、前記弁本体に当接する第1の当接面、および前記シート部材の下端に設けられ、前記流路ブロックに当接する第2の当接面を有することを特徴とする請求項5の電動弁。
【0069】
(第7の形態)
前記シート部材は前記端部開口に圧入されており、前記シート部材の外周面と前記端部開口の接触面が流体をシールするシール面となることを特徴とする第6の形態の電動弁。
【0070】
(第8の形態)
前記第1の当接面と前記第2の当接面の少なくとも一方が流体をシールするシール面となることを特徴とする第6の形態の電動弁。
【0071】
(第9の形態)
前記弁本体が前記流路ブロックに取り付けられた状態において、前記シート部材の下端は、前記弁本体の下端よりも前記流路ブロックの底面側に位置する、
ことを特徴とする第1の形態~第8の形態のいずれかの電動弁。
【0072】
(第10の形態)
前記シート部材を組み付けた前記弁本体を、前記流路ブロックの底面に接近させたとき、前記弁本体の下端が前記底面に当接する前に、前記シート部材の下端が前記底面に当接する、
ことを特徴とする第1の形態~第9の形態のいずれかの電動弁。
【0073】
(第11の形態)
第1の形態~第8の形態のいずれかの電動弁と、前記電動弁を組付けた流路ブロックとを有することを特徴とする電動弁ユニット。
【符号の説明】
【0074】
1 電動弁
2 弁本体
2k 端部開口
2r 側部開口
2s 弁本体の端部
3 キャン
6 減速機構
8 支持軸
21 シート部材
21c 当接段差面
21d 弁座
21e シート部材の端部
22 ねじ駆動部材
23 軸受保持部材
24 転がり軸受
25 被駆動部材
26 ばね受け部材
27 コイルばね
41 弁体
41d 弁体部
50 ステータ
57 ロータ
81 軸支持部
100 流路ブロック
101 第1流路
102 第2流路
BC 背圧室
VC 弁室
図1
図2
図3