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特開2024-104449フィンチューブ熱交換器及び空気調和機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104449
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】フィンチューブ熱交換器及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/32 20060101AFI20240729BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240729BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F28F1/32 S
F28D1/053 Z
F25B39/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008654
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 佳憲
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA37
3L103BB42
3L103CC17
3L103CC18
3L103CC23
3L103DD08
3L103DD33
3L103DD82
3L103DD85
3L103DD97
(57)【要約】
【課題】フィンチューブ熱交換器の熱交換率の向上を図る。
【解決手段】実施形態に係るフィンチューブ熱交換器は、複数の平板フィンと、複数の伝熱管と、複数の切り起こし部と、備える。複数の平板フィンは、それぞれの厚さ方向に互いに間隔をあけて配置され、隣り合う二つの間を厚さ方向と交差する第1の方向に流体が流れる。複数の伝熱管は、厚さ方向に複数の平板フィンを貫通し、内部に冷媒が流れる。
複数の切り起こし部は、平板フィンから厚さ方向に突出している。複数の切り起こし部のうち、伝熱管を間に挟んで厚さ方向及び第1の方向と交差する第2の方向に間隔をあけて配置された二つの切り起こし部は、第1の方向に向かうにつれて互いに近づくように第1の方向に対して傾斜している。第2の方向に隣り合う二つの伝熱管の間に配置される二つの切り起こし部は、第2の方向に間隔をあけて配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの厚さ方向に互いに間隔をあけて配置され、隣り合う二つの間を前記厚さ方向と交差する第1の方向に流体が流れる複数の平板フィンと、
前記厚さ方向に前記複数の平板フィンを貫通し、内部に冷媒が流れる複数の伝熱管と、
前記平板フィンから前記厚さ方向に突出した複数の切り起こし部と、
を備え、
前記複数の切り起こし部のうち、前記伝熱管を間に挟んで前記厚さ方向及び前記第1の方向と交差する第2の方向に間隔をあけて配置された二つの前記切り起こし部は、前記第1の方向に向かうにつれて互いに近づくように前記第1の方向に対して傾斜し、
前記第2の方向に隣り合う二つの前記伝熱管の間に配置される二つの前記切り起こし部は、前記第2の方向に間隔をあけて配置された、
フィンチューブ熱交換器。
【請求項2】
前記平板フィンから前記厚さ方向に突出した突出部を備え、
前記突出部には、当該突出部を前記第1の方向に貫通した開口部が設けられた、
請求項1に記載のフィンチューブ熱交換器。
【請求項3】
前記突出部は、前記二つの前記伝熱管の間の前記二つの前記切り起こし部に対して前記第1の方向とは反対方向側に設けられた、
請求項2に記載のフィンチューブ熱交換器。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか一つに記載のフィンチューブ熱交換器を、室内熱交換器と室外熱交換器とのうち少なくとも一方に備えた空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、フィンチューブ熱交換器及び空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアコンディショナのような空気調和機においては、冷房運転や暖房運転時において、熱交換器において冷媒と空気との熱交換を行う。例えば、熱交換器としては、複数の平板フィンと、複数の平板フィンを貫通した複数の伝熱管と、を備えたフィンチューブ熱交換器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-309533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のフィンチューブ熱交換器では、熱交換率の向上を図ることができれば有益である。
【0005】
本発明が解決する課題の一例は、フィンチューブ熱交換器の熱交換率の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るフィンチューブ熱交換器は、それぞれの厚さ方向に互いに間隔をあけて配置され、隣り合う二つの間を前記厚さ方向と交差する第1の方向に流体が流れる複数の平板フィンと、前記厚さ方向に前記複数の平板フィンを貫通し、内部に冷媒が流れる複数の伝熱管と、前記平板フィンから前記厚さ方向に突出した複数の切り起こし部と、備え、前記複数の切り起こし部のうち、前記伝熱管を間に挟んで前記厚さ方向及び前記第1の方向と交差する第2の方向に間隔をあけて配置された二つの前記切り起こし部は、前記第1の方向に向かうにつれて互いに近づくように前記第1の方向に対して傾斜し、前記第2の方向に隣り合う二つの前記伝熱管の間に配置される二つの前記切り起こし部は、前記第2の方向に間隔をあけて配置されている。
【0007】
前記フィンチューブ熱交換器は、例えば、前記平板フィンから前記厚さ方向に突出した突出部を備え、前記突出部には、当該突出部を前記第1の方向に貫通した開口部が設けられている。
【0008】
前記フィンチューブ熱交換器では、例えば、前記突出部は、前記二つの前記伝熱管の間の前記二つの前記切り起こし部に対して前記第1の方向とは反対方向側に設けられている。
【0009】
本発明の実施形態に係る空気調和機は、前記フィンチューブ熱交換器を、室内熱交換器と室外熱交換器とのうち少なくとも一方に備える。
【0010】
以上のフィンチューブ熱交換器及び空気調和機によれば、例えば、フィンチューブ熱交換器の熱交換率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る冷房運転時の空気調和機を概略的に示す冷媒系統図である。
図2図2は、実施形態のフィンチューブ熱交換器と冷媒配管の一部とを概略的に示す正面図である。
図3図3は、実施形態のフィンチューブ熱交換器の一部を概略的に示す断面図である。
図4図4は、実施形態のフィンチューブ熱交換器の一部を概略的に示す斜視図である。
図5図5は、実施形態のフィンチューブ熱交換器の一部を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0013】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
図1は、実施形態に係る冷房運転時の空気調和機10を概略的に示す冷媒系統図である。空気調和機10は、例えば、家庭用のエアコンディショナである。なお、空気調和機10は、この例に限られず、業務用のエアコンディショナのような他の空気調和機であっても良い。
【0015】
図1に示されるように、空気調和機10は、室外機11と、室内機12と、冷媒配管13と、制御装置14とを有する。室外機11は、例えば、屋外に配置される。室内機12は、例えば、屋内に配置される。
【0016】
空気調和機10は、室外機11と室内機12とが冷媒配管13により接続された冷凍サイクルを備える。室外機11と室内機12との間で、冷媒配管13を通り、冷媒が流れる。また、室外機11と室内機12とは、例えば電気配線により互いに電気的に接続されている。
【0017】
室外機11は、室外熱交換器21と、室外送風ファン22と、圧縮機23と、アキュムレータ24と、四方弁25と、膨張弁26とを有する。室内機12は、室内熱交換器31と、室内送風ファン32とを有する。室外熱交換器21は、熱交換器の一例である。
【0018】
冷媒配管13は、例えば、金属で作られた管である。冷媒配管13は、二つの冷媒配管41,42を有する。冷媒配管41は、室内熱交換器31と室外熱交換器21とを接続する。圧縮機23、アキュムレータ24、及び四方弁25は、冷媒配管41に設けられている。冷媒配管42は、室外熱交換器21と室内熱交換器31とを接続する。膨張弁26は、冷媒配管42に設けられている。
【0019】
冷房運転において、冷媒は、冷媒配管41を通って室内熱交換器31から室外熱交換器21へ流れ、冷媒配管42を通って室外熱交換器21から室内熱交換器31へ流れる。図1の矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示す。暖房運転において、冷媒は、冷媒配管41を通って室外熱交換器21から室内熱交換器31へ流れ、冷媒配管42を通って室内熱交換器31から室外熱交換器21へ流れる。
【0020】
室外機11の室外熱交換器21は、冷房運転において凝縮器として冷媒の放熱を行い、暖房運転において蒸発器として冷媒の吸熱を行う。室外送風ファン22は、室外熱交換器21に向かって送風し、室外熱交換器21における冷媒と空気との熱交換を促進する。言い換えると、室外送風ファン22は、室外熱交換器21と熱交換する気流を生成する。
【0021】
圧縮機23は、吸入口23aと吐出口23bとを有する。圧縮機23は、吸入口23aから冷媒を吸入し、圧縮した冷媒を吐出口23bから吐出する。これにより、圧縮機23は、冷凍サイクルにおいて冷媒を圧縮するとともに、冷媒の循環を生じさせる。
【0022】
アキュムレータ24は、圧縮機23の吸入口23aに接続されている。アキュムレータ24は、気体状の冷媒と液体状の冷媒とを分離する。これにより、圧縮機23は、アキュムレータ24を通過した気体状の冷媒を吸入口23aから吸入することができる。アキュムレータ24は、圧縮機23と一体に構成されることで、圧縮機23の吸入口となることができる。
【0023】
四方弁25は、室外熱交換器21と、室内熱交換器31と、圧縮機23の吐出口23bと、アキュムレータ24(圧縮機23の吸入口23a)とに接続されている。四方弁25は、暖房運転時と冷房運転時とで、室外熱交換器21、室内熱交換器31、圧縮機23の吐出口23b、及びアキュムレータ24のそれぞれに接続されている流路を切り替え、冷媒が流れる方向を変更する。
【0024】
図1に実線で示されるように、冷房運転時において、四方弁25は、室外熱交換器21と圧縮機23の吐出口23bとを接続する。さらに、冷房運転時において、四方弁25は、室内熱交換器31とアキュムレータ24とを接続する。これにより、圧縮機23で圧縮された冷媒が室外熱交換器21へ流れ、室内熱交換器31で蒸発した冷媒がアキュムレータ24へ流れる。
【0025】
図1に破線で示されるように、暖房運転時において、四方弁25は、室外熱交換器21とアキュムレータ24とを接続する。さらに、暖房運転時において、四方弁25は、室内熱交換器31と圧縮機23の吐出口23bとを接続する。これにより、圧縮機23で圧縮された冷媒が室内熱交換器31へ流れ、室外熱交換器21で蒸発した冷媒がアキュムレータ24へ流れる。
【0026】
膨張弁26は、例えば、電磁膨張弁である。なお、膨張弁26は、他の膨張弁であっても良い。膨張弁26は、制御装置14により開度を制御されることで、当該膨張弁26を通過する冷媒の量を調節する。
【0027】
室内機12の室内熱交換器31は、冷房運転において蒸発器として吸熱し、暖房運転において凝縮器として放熱する。室内送風ファン32は、室内熱交換器31に向かって送風し、室内熱交換器31と空気との熱交換を促進する。言い換えると、室内送風ファン32は、室内熱交換器31と熱交換する気流を生成する。
【0028】
制御装置14は、例えば、室外制御装置14aと、室内制御装置14bとを有する。室外制御装置14aと室内制御装置14bとは、互いに電気配線により電気的に接続されている。室外制御装置14a及び室内制御装置14bのうち少なくとも一方は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はマイクロコントローラのような制御装置と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、フラッシュメモリのような記憶装置とを有するコンピュータである。なお、制御装置14は、この例に限られない。例えば、制御装置14は、室外制御装置14a及び室内制御装置14bのうち一方のみを有しても良い。
【0029】
室外制御装置14aは、室外機11の室外送風ファン22、圧縮機23、四方弁25、及び膨張弁26を制御する。室内制御装置14bは、室内機12の室内送風ファン32を制御する。
【0030】
制御装置14が室外機11及び室内機12を制御することで、空気調和機10は、冷房運転、暖房運転、除湿運転、及び他の運転を行う。室内制御装置14bは、例えば、リモートコントローラから信号を入力されても良いし、通信装置を通じてスマートフォンのような情報端末から信号を入力されても良い。
【0031】
図2は、実施形態のフィンチューブ熱交換器50と冷媒配管13の一部とを概略的に示す正面図である。室外熱交換器21と室内熱交換器31とのそれぞれは、フィンチューブ熱交換器50を有する。室外熱交換器21のフィンチューブ熱交換器50と、室内熱交換器31のフィンチューブ熱交換器50とは、大まかな構成が共通する。このため、以下のフィンチューブ熱交換器50についての説明は、室外熱交換器21のフィンチューブ熱交換器50と室内熱交換器31のフィンチューブ熱交換器50において概ね共通する。なお、室外熱交換器21のフィンチューブ熱交換器50と、室内熱交換器31のフィンチューブ熱交換器50とは、例えば、形状、大きさ、配置、伝熱管53の形状及び配置、又は、平板フィン54の形状及び配置等について、互いに異なっても良い。
【0032】
以下、便宜上、X軸、Y軸、及びZ軸が定義される。X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。X軸及びY軸は、水平に延びている。Z軸は、鉛直に延びている。なお、X軸、Y軸、及びZ軸は、水平方向及び鉛直方向に対して斜めに傾いていても良い。
【0033】
さらに、本明細書において、X方向、Y方向、及びZ方向が定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向と、X軸の矢印の反対方向である-X方向とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向とを含む。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向とを含む。例えば、+Z方向は上方向、-Z方向は下方向である。+Y方向は、第1の方向の一例であり、Z方向は、第2の方向の一例である。
【0034】
フィンチューブ熱交換器50は、二つのヘッダ51,52と、複数の伝熱管53と、複数の平板フィン54とを有する。
【0035】
二つのヘッダ51,52は、それぞれ、Z方向の延び、X方向に互いに離間している。ヘッダ51は、冷媒配管41に接続されている。ヘッダ52は、冷媒配管42に接続されている。ヘッダ51,52は、内部の流路に冷媒が流れる。例えば、冷房運転時においては、室外熱交換器21のフィンチューブ熱交換器50が凝縮器として機能する場合、室外熱交換器21の熱交換器20のヘッダ51には、気体状の高温の冷媒が流入する。ヘッダ51,52は、冷媒を複数の伝熱管53に分配、又は複数の伝熱管53から集約する流路の一種であり、上記形状に限られない。また、二つのヘッダ51,52の形状等は、互いに同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0036】
図3は、実施形態のフィンチューブ熱交換器50の一部を概略的に示す断面図である。図2及び図3に示されるように、平板フィン54は、Y-Z平面に沿って延びる平板状に形成されている。複数の平板フィン54は、それぞれの厚さ方向がX方向に沿う状態で、それぞれの厚さ方向すなわちX方向に互いに間隔をあけて並べられている。以後、特に言及しない限り、厚さ方向は、平板フィン54の厚さ方向である。隣り合う二つの平板フィン54の間を、厚さ方向すなわちX方向と交差する+Y方向(第1の方向)に向けて空気が流れる。換言すると、空気は、隣り合う二つの平板フィン54の間において、概ね+Y方向(第1の方向)へ流れる。空気は、室外熱交換器21の場合は、室外の空気(フィンチューブ熱交換器50に対する外気)であり、室内熱交換器31の場合は、室内の空気(フィンチューブ熱交換器50に対する外気)である。上記空気は、流体の一例である。平板フィン54は、例えば銅やアルミニウムのような金属によって作られている。
【0037】
図2に示されるように、複数の伝熱管53は、二つのヘッダ51,52の間に設けられて、X方向に延びている。複数の伝熱管53は、例えば、銅やアルミニウムのような金属で作られた管である。伝熱管53の断面は真円であってもよく、楕円や多角形状であっても良い。各伝熱管53の内部の流路には、ヘッダ51とヘッダ52とのうちの一方から流入した冷媒が流れ、当該冷媒はヘッダ51とヘッダ52とのうちの他方に流出する。各伝熱管53は、平板フィン54の厚さ方向すなわちX方向に平板フィン54を貫通するとともに、平板フィン54に接続されている。これにより、複数の平板フィン54が、複数の伝熱管53を流れる冷媒と空気(流体)との熱交換を促進する。
【0038】
図3に示されるように、複数の伝熱管53は、複数の列に並べられている。一例として、Z方向に互いに間隔をあけて並べられた複数の伝熱管53による列が、Y方向に間隔をあけて複数(一例として3つ)設けられている。各列における複数の伝熱管53の間隔は、等間隔であっても良いし等間隔でなくても良い。また、本実施形態では、各列が互い違いになるようにY方向に位置をずらして配置されている。なお、各列の配置は上記に限られない。
【0039】
また、平板フィン54には、複数の切り起こし部72A,72Bと、複数の突出部74と、が設けられている。以後、複数の切り起こし部72A,72Bの総称として切り起こし部72を用いる。平板フィン54と、当該平板フィン54に設けられた複数の切り起こし部72A及び複数の突出部74は、一つの部材71を構成している。部材71は、熱交換部材とも称される。
【0040】
切り起こし部72は、隣り合う二つの平板フィン54間を流れる空気を案内するものである。切り起こし部72は、平板フィン54に対して切り起こされることにより形成されている。具体的には、切り起こし部72は、部材71の素材に対する機械加工によって形成されている。切り起こし部72は、平板フィン54の一面54aから+X方向に突出している。切り起こし部72の+X方向の高さは、例えば、隣り合う二つの平板フィン54の間隔が2mmの場合、1mm~2mmであり、1.5mmが好適である。なお、切り起こし部72の高さは上記に限定されない。切り起こし部72は、帯板状である。平板フィン54における切り起こし部72A,72Bが切り起された部分には、開口部73A,73Bが形成されている。開口部73A,73Bは、平板フィン54の厚さ方向すなわちX方向に貫通したスリット(貫通孔)である。以後、複数の開口部73A,73Bの総称として開口部73を用いる。
【0041】
図4は、実施形態のフィンチューブ熱交換器50の一部を概略的に示す斜視図である。図3及び図4に示されるように、一つの平板フィン54において、伝熱管53ごとに二つの切り起こし部72A,72Bが設けられている。すなわち、二つの切り起こし部72A,72Bの間に、一つの伝熱管53が配置されている。詳細には、二つの切り起こし部72A,72Bは、対応する伝熱管53の中心よりも+Y方向すなわち空気の流れ方向の下流に配置されている。一つの伝熱管53を間にして配置された二つの切り起こし部72A,72Bは、+Y方向に向かうにつれて互いに近づくように+Y方向に対して傾斜している。上記構成では、図3に示されるように、Z方向(第2の方向)に間隔をあけて配置された二つの伝熱管53の間に二つの切り起こし部72A,72Bが設けられている。当該二つの伝熱管53の間の二つの切り起こし部72A,72Bは、+Y方向すなわち空気の流れ方向の下流に向かうにつれて互いに離れるように+Y方向に対して傾斜している。すなわち、複数の切り起こし部72は、Z方向に間隔をあけて配置された二つの伝熱管53の間に配置された二つの切り起こし部72A,72Bを含む。
【0042】
図3に示されるように、突出部74は、二つの伝熱管53の間の二つの切り起こし部72A,72Bの組みに対して一つずつ設けられている。突出部74は、二つの伝熱管53の間の二つの切り起こし部72A,72Bに対して+Y方向とは反対方向すなわち-Y方向側(空気の流れ方向の上流側)に設けられている。
【0043】
図5は、実施形態のフィンチューブ熱交換器50の一部を概略的に示す断面図である。図5に示されるように、突出部74は、平板フィン54の一面54aから厚さ方向(一例として+X方向)に突出している。すなわち、突出部74は、平板フィン54の一面54aに設けられている。突出部74の+X方向の高さは、例えば、切り起こし部72よりも低い(例えば、1.5mm未満)。なお、突出部74の高さは上記に限定されない。なお、突出部74は、平板フィン54の一面54aに対する裏面(他面)に設けられて、裏面から厚さ方向(一例として-X方向)に突出していても良い。
【0044】
突出部74は、二つの突出壁74a,74bと、一つの接続壁74cと、を有する。二つの突出壁74a,74bは、互いにZ方向に間隔をあけて配置され、平板フィン54から厚さ方向(一例として+X方向)に突出している。接続壁74cは、二つの突出壁74a,74bにおける先端部(+X方向側の端部)を接続している。このような形状の突出部74には、開口部75が設けられている。開口部75は、開口部75は、突出壁74a,74bと接続壁74cとによって囲まれている。開口部75は、突出部74を+Y方向に貫通している。突出部74は、部材71の素材に対するプレス加工等によって形成されている。なお、平板フィン54には、開口部75と通じた貫通孔が形成されている。当該貫通孔は、平板フィン54の厚さ方向に平板フィン54を貫通している。
【0045】
上記の構成において、冷房運転や暖房運転時には、フィンチューブ熱交換器50のヘッダ51とヘッダ52との一方には、気体状や液体状の冷媒が流入する。ヘッダ51とヘッダ52との一方に流入した冷媒は、伝熱管53の内部を通り、ヘッダ51とヘッダ52との他方に流出する。この際、伝熱管53及び平板フィン54が、伝熱管53の内部を通る冷媒と、隣り合う平板フィン54間を通る空気との間の熱交換を行う。ここで、図3の矢印F1は、隣り合う平板フィン54間に向かう空気の流れを示す。空気は、室外送風ファン22や室内送風ファン32によって送風される。
【0046】
平板フィン54の面に沿って+Y方向に流れる空気は、伝熱管53の外側を通って流れる。このとき、伝熱管53を間にした二つ(一対)の切り起こし部72A,72Bは、空気が伝熱管53における+Y方向の端部53a(図3参照)側に空気を案内する。これにより、伝熱管53の側方(+Z方向側、-Z方向側)を流れた空気が伝熱管53の端部53a側に回りみやすくなり、空気が伝熱管53の端部53aに当たりやすくなる。これにより、伝熱管53における端部53aの+Y方向側に、空気が滞留する死水域が生じるのが抑制される。ここで、従来では、死水域は、例えば、複数の伝熱管53のうち空気の流れ方向の下流側(例えば、3列目の伝熱管53)に位置する程生じやすかった。これに対して、本実施形態では、3列目を含む複数の列の伝熱管53のそれぞれに対して二つの切り起こし部72A,72Bが設けられているので、3列目の伝熱管53であっても死水域が生じるのが抑制される。
【0047】
また、平板フィン54の面に沿って+Y方向に流れる空気は、突出部74の内側(開口部75)と外側を通る。この際、突出部74を介して空気と冷媒との熱交換が行われる。
【0048】
ここで、フィンチューブ熱交換器50において、単位時間あたりの伝熱量をQとし、熱通過率をKとし、平板フィン54の面積(伝熱面積)をAとし、冷媒と空気との温度差をΔTとすると、Qは次式によって表される。
Q=K・A・ΔT
【0049】
切り起こし部72を設けることによって、熱透過率(K)が改善する。本実施形態では、1列目、2列目、3列目のそれぞれで死水域の発生が抑制されるので、熱透過率(K)が大きく改善する。例えば、本実施形態の熱透過率(K)は、切り起こし部72が設けられていない構成に比べて、25%近く改善される。換言すると、実施形態では、切り起こし部72が設けられていない構成に比べて、熱透過率(K)が1.25倍になるので、フィンチューブ熱交換器50の熱交換能力を30%程上がる可能性がある。別の言い方をすると、フィンチューブ熱交換器50のサイズを75%程小さくすることが可能である。
【0050】
以上のように、本実施形態のフィンチューブ熱交換器50は、複数の平板フィン54と、複数の伝熱管53と、複数の切り起こし部72と、備える。複数の平板フィン54は、それぞれの厚さ方向(X方向)に互いに間隔をあけて配置され、隣り合う二つの間を厚さ方向と交差する+Y方向(第1の方向)に流体が流れる。複数の伝熱管53は、厚さ方向に複数の平板フィン54を貫通し、内部に冷媒が流れる。複数の切り起こし部72は、平板フィン54から厚さ方向に突出している。複数の切り起こし部72のうち、伝熱管53を間に挟んで厚さ方向及び+Y方向と交差するZ方向(第2の方向)に間隔をあけて配置された二つの切り起こし部72A,72Bは、+Y方向に向かうにつれて互いに近づくように+Y方向に対して傾斜している。Z方向に隣り合う二つの伝熱管53の間に配置される二つの切り起こし部72A,72Bは、Z方向に間隔をあけて配置されている。
【0051】
このような構成によれば、二つの切り起こし部72A,72Bが、Z方向に間隔をあけて配置された二つの伝熱管53の間に配置されているので、当該二つの伝熱管53の間に切り起こし部72が設けられていない構成、又は、切り起こし部72が一つしか設けられていない構成に比べて、フィンチューブ熱交換器50の熱交換率の向上を図ることができる。また、上記構成によれば、二つの伝熱管53の間に配置される二つの切り起こし部72A,72Bが干渉せずに間隔をあけて配置されることで、空気の流れが阻害されにくくなる。すなわち、空気の流れがスムーズになる。
【0052】
また、フィンチューブ熱交換器50は、平板フィン54から厚さ方向に突出した突出部74を備える。突出部74には、当該突出部74を+Y方向に貫通した開口部75が設けられている。
【0053】
このような構成によれば、平板フィン54の他に突出部74を介しても冷媒と流体との熱交換が行われるので、熱交換のための表面積が増え、フィンチューブ熱交換器50の熱交換率の向上を図ることができる。
【0054】
また、突出部74は、二つの伝熱管53の間の二つの切り起こし部72A,72Bに対して+Y方向とは反対方向側に設けられている。
【0055】
このような構成によれば、二つの切り起こし部72A,72Bの間に突出部74を設ける構成に比べて、突出部74のZ方向の幅の設定の自由度を大きくすることができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、室外熱交換器21と室内熱交換器31との両方がフィンチューブ熱交換器50を備えた例が示されたが、これに限定されない。例えば、室外熱交換器21と室内熱交換器31との一方がフィンチューブ熱交換器50を備え、室外熱交換器21と室内熱交換器31との他方が他の熱交換器を備えていても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、伝熱管53の列が3列の例が示されたが、これに限定されない。例えば、伝熱管53の列は、3列以外であっても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、平板フィン54に突出部74が設けられた例が示されたが、突出部74は設けられていなくても良い。
【0059】
以上の説明において、抑制は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10…空気調和機、21…室外熱交換器、31…室内熱交換器、50…フィンチューブ熱交換器、53…伝熱管、54…平板フィン、72,72A,72B…切り起こし部、74…突出部。
図1
図2
図3
図4
図5