(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104454
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】空気制御システムおよび空気制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20240729BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20240729BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20240729BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/06 101
F24F11/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008659
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BF02
3L058BK09
3L260AB02
3L260AB16
3L260AB18
3L260BA09
3L260BA13
3L260BA31
3L260CB01
3L260CB52
3L260FB01
3L260FC02
3L260FC03
3L260FC22
3L260FC23
3L260JA23
(57)【要約】
【課題】全体として屋内空間が目的とする空気環境になるように空気制御を行う。
【解決手段】所定空間の空気に作用する第一機能および第二機能を有する第一機器と、第二機能と同等の第三機能を有する第二機器と、第一機器における機能の稼働状態を検出し、少なくとも第二機器において稼働する機能を制御する制御部10と、を備え、制御部は、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行することを検出した場合、第二機器に対して第三機能を稼働させる制御を行う、空気制御システムを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間の空気に作用する第一機能および第二機能を有する第一機器と、
第二機能と同等の第三機能を有する第二機器と、
前記第一機器における機能の稼働状態を検出し、少なくとも前記第二機器において稼働する機能を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行することを検出した場合、前記第二機器に対して第三機能を稼働させる制御を行う、
空気制御システム。
【請求項2】
一以上の前記第二機器が有する機能の情報を含む機器情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行することを検出した場合、前記記憶部から第三機能を有する前記第二機器を選択し、選択した前記第二機器に第三機能を稼働させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の空気制御システム。
【請求項3】
前記記憶部が記憶する機器情報は、前記第二機器が有する機能の情報と共にその機能の得意度を示す情報を含み、
前記制御部は、得意度を示す情報に基づいて前記第二機器を選択することを特徴とする請求項2に記載の空気制御システム。
【請求項4】
前記記憶部が記憶する機器情報は、前記第二機器における第三機能の動作状態情報をさらに含み、
前記制御部は、得意度を示す情報および動作状態情報に基づいて前記第二機器を選択することを特徴とする請求項3に記載の空気制御システム。
【請求項5】
前記記憶部が記憶する機器情報は、前記第二機器における第三機能の目的達成状況をさらに含み、
前記制御部は、得意度を示す情報、動作状態情報、および目的達成状況に基づいて前記第二機器を選択することを特徴とする請求項4に記載の空気制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第一機器が稼働する機能が第二機能から第一機能に移行することを検出し、前記記憶部から第三機能を有する前記第二機器が複数選択された場合、得意度が最も高い一の前記第二機器を選択することを特徴とする請求項3に記載の空気制御システム。
【請求項7】
前記第二機器は、第三機能以外の機能である第四機能を有し、
第四機能と同等の第五機能を有する第三機器をさらに備え、
前記制御部は、前記第二機器が第四機能で動作中であることにより第三機能を稼働させる前記第二機器が存在しない場合、前記第三機器に対して第五機能を稼働させ、前記第二機器に対して第四機能を停止させると共に第三機能を稼働させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の空気制御システム。
【請求項8】
前記第二機器は、第三機能以外の機能である第四機能を有し、
第四機能と同等の第五機能を有する第三機器をさらに備え、
前記制御部は、複数の前記第二機器が第四機能で動作中であることにより第三機能を稼働させる前記第二機器が存在しない場合であって、動作中の第四機能を前記第三機器の第五機能によって代替可能な前記第二機器が存在する場合、前記第三機器に対して第五機能を稼働させ、前記代替可能な前記第二機器に対して第四機能を停止させると共に第三機能を稼働させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の空気制御システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行した後に第二機能に戻る場合、前記第二機器に第三機能を停止させる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の空気制御システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行した後に第一機能を停止する場合、前記第二機器に第三機能を継続させる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の空気制御システム。
【請求項11】
所定空間の空気に作用する第一機能および第二機能を有する第一機器と、
第二機能と同等の第三機能を有する第二機器と、
を備える空気制御システムの空気制御方法であって、
前記第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行することを検出した場合、前記第二機器に対して第三機能を稼働させる制御を行う、
空気制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気制御システムおよび空気制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンジフードは近傍(主に下方)に設置された加熱調理器を使用した際に発生する汚染空気を屋外へ排気することが本来機能である。最近では、隣接するリビング空間でのCO2上昇を検知して排気運転をおこなったり、居室内の熱籠りを解消するために排気運転をおこなったりと、副次的機能の排気運転をおこなう機能が各種提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1は、キッチン以外の居住空間も含めた屋内の空気質の改善を図るためのレンジフードを含む換気システムを開示する。この換気システムは、屋内に設置されるレンジフードと、屋内に設置され、屋内の空気質条件を設定可能な空気質関連機器と、レンジフードと空気質関連機器の運転を制御する制御部と、屋内の空気質を検知する検知部と、屋外の空気質情報を取得する情報取得部と、を備える。制御部は、空気質関連機器の始動を制御する際、検知部が検知した空気質における屋内空気質状態と情報取得部が取得した空気質情報における屋外空気質状態とを比較し、屋内の空気質を空気質関連機器に設定された空気質条件に近づけるようにレンジフードの事前換気を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術の場合、副次的機能 の比較的小さな風量の排気運転を行っている場合に、加熱調理器の運転が開始された場合には、そのまま副次的機能の排気運転を継続するか、加熱調理器の運転状況に適合した比較的大きな風量での運転に調理器連動または手動操作によって変更されて排気運転を行う状況であった。
しかし、この場合、加熱調理器の運転が開始されても副次的機能の排気運転を継続した場合には、加熱調理の状況に対応した排気風量での運転ができないという問題がある。また、加熱調理器の運転状況に合わせた風量に変更された場合には、副次的機能の排気運転が行われなくなってしまい、居室空間等の空気環境が悪化してしまう恐れがある。
このように、機器の主機能とは異なる副次的機能運転時に、主機能運転に移行した場合には副次的機能が達成されなかったり、主機能運転に移行しない場合には主機能が達成されないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情を鑑みて考案されたものであり、屋内にある複数の空気制御機器を制御することで、空気制御システム全体として屋内空間が目的とする空気環境になるように空気制御を行う空気制御システムおよび空気制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、所定空間の空気に作用する第一機能および第二機能を有する第一機器と、第二機能と同等の第三機能を有する第二機器と、第一機器における機能の稼働状態を検出し、少なくとも第二機器において稼働する機能を制御する制御部と、を備え、制御部は、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行することを検出した場合、第二機器に対して第三機能を稼働させる制御を行う、空気制御システムが提供される。
これによれば、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行する場合に第二機器に対して第三機能を稼働させることで、中断される第二機能を第三機能として第二機器に引き継ぐように動作するため、屋内空間が当初目的とした空気環境になるように空気制御を行う空気制御システムを提供することができる。
【0008】
さらに、一以上の第二機器が有する機能の情報を含む機器情報を記憶する記憶部をさらに備え、制御部は、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行することを検出した場合、記憶部から第三機能を有する第二機器を選択し、選択した第二機器に第三機能を稼働させる制御を行うことを特徴としてもよい。
これによれば、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行する場合に、第二機器が有する機能の情報に基づき第二機器を選択することで、適切な機器を選択し当初目的とした空気環境になるように空気制御を行うことができる。
【0009】
さらに、記憶部が記憶する機器情報は、第二機器が有する機能の情報と共にその機能の得意度を示す情報を含み、制御部は、得意度を示す情報に基づいて第二機器を選択することを特徴としてもよい。
これによれば、第二機器が有する機能の情報とその得意度に基づき第二機器を選択することで、より適切な機器を選択し引き継ぐことができる。
【0010】
さらに、記憶部が記憶する機器情報は、第二機器における第三機能の動作状態情報をさらに含み、制御部は、得意度を示す情報および動作状態情報に基づいて第二機器を選択することを特徴としてもよい。
これによれば、さらに第三機能の動作状態情報に基づき第二機器を選択することで、より適切な機器を選択し引き継ぐことができる。
【0011】
さらに、記憶部が記憶する機器情報は、第二機器における第三機能の目的達成状況をさらに含み、制御部は、得意度を示す情報、動作状態情報、および目的達成状況に基づいて第二機器を選択することを特徴としてもよい。
これによれば、さらに第三機能の目的達成状況に基づき第二機器を選択することで、より適切な機器を選択し引き継ぐことができる。
【0012】
さらに、制御部は、第一機器が稼働する機能が第二機能から第一機能に移行することを検出し、記憶部から第三機能を有する第二機器が複数選択された場合、得意度が最も高い一の第二機器を選択することを特徴としてもよい。
これによれば、第二機器が複数選択された場合でも得意度が最も高い一つ第二機器を選択することで、より適切な機器を選択し引き継ぐことができる。
【0013】
さらに、第二機器は、第三機能以外の機能である第四機能を有し、第四機能と同等の第五機能を有する第三機器をさらに備え、制御部は、第二機器が第四機能で動作中であることにより第三機能を稼働させる第二機器が存在しない場合、第三機器に対して第五機能を稼働させ、第二機器に対して第四機能を停止させると共に第三機能を稼働させる制御を行うことを特徴としてもよい。
これによれば、第二機器が第四機能で動作中であることにより第三機能を稼働させる第二機器が存在しない場合、第二機器で稼働している機能を第三機器に引き継ぎ、中断される第二機能を第三機能として第二機器に引き継ぐように段階的に引き継ぎ動作を行うことで、屋内空間が当初目的とした空気環境になるように空気制御を行うことができる。
【0014】
さらに、第二機器は、第三機能以外の機能である第四機能を有し、第四機能と同等の第五機能を有する第三機器をさらに備え、制御部は、複数の第二機器が第四機能で動作中であることにより第三機能を稼働させる第二機器が存在しない場合であって、動作中の第四機能を第三機器の第五機能によって代替可能な第二機器が存在する場合、第三機器に対して第五機能を稼働させ、代替可能な第二機器に対して第四機能を停止させると共に第三機能を稼働させる制御を行うことを特徴としてもよい。
これによれば、複数の第二機器が第四機能で動作中であることにより第三機能を稼働させる第二機器が存在しないが、動作中の第四機能を第三機器の第五機能によって代替可能な第二機器が存在する場合、第二機器で稼働している機能を第三機器に引き継ぎ、中断される第二機能を第三機能として第二機器に引き継ぐように段階的に引き継ぎ動作を行うことで、屋内空間が当初目的とした空気環境になるように空気制御を行うことができる。
【0015】
さらに、制御部は、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行した後に第二機能に戻る場合、第二機器に第三機能を停止させる制御を行うことを特徴としてもよい。
これによれば、第一機器において第二機能から第一機能に移行した後に再び第二機能に戻る場合第二機器に第三機能を停止させることで、移行前の状態に戻り、ユーザーが認識していた運転状態とすることができ、移行前に目的としていた空気環境になるように空気制御を行うことができる。また、移行時機能を引き継いだ第二機器が停止するため、同一目的で重複運転する必要がなくなる。
【0016】
さらに、制御部は、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行した後に第一機能を停止する場合、第二機器に第三機能を継続させる制御を行うことを特徴としてもよい。
これによれば、第一機器において第二機能から第一機能に移行した後に停止する場合第二機器に第三機能を継続させることで、移行前に目的としていた空気環境になるように空気制御を行うことができる。
【0017】
上記課題を解決するために、所定空間の空気に作用する第一機能および第二機能を有する第一機器と、第二機能と同等の第三機能を有する第二機器と、を備える空気制御システムの空気制御方法であって、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行することを検出した場合、第二機器に対して第三機能を稼働させる制御を行う、空気制御方法が提供される。
これによれば、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行する場合に第二機器に対して第三機能を稼働させることで、中断された第二機能を第三機能として第二機器に引き継ぐように動作するため、屋内空間が当初目的とした空気環境になるように空気制御を行う空気制御方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、屋内にある複数の空気制御機器を制御することで、空気制御システム全体として屋内空間が目的とする空気環境になるように空気制御を行う空気制御システムおよび空気制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る第一実施例の空気制御システムのブロック構成図。
【
図2】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおいてレンジフードとエアコンを例にしたブロック構成図。
【
図3】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおける引継ぎ動作の概要説明図。
【
図4】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおけるレンジフードのメイン処理のフローチャート。
【
図5】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおけるレンジフードの機器状態確認処理のフローチャート。
【
図6】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおけるレンジフードの応答通知の例を示す図。
【
図7】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおけるレンジフードの機器状態変更処理のフローチャート。
【
図8】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおける制御装置のエアコンに対して送信される制御指令の例を示す図。
【
図9】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおけるレンジフードの空気状態制御処理のフローチャート。
【
図10】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおける制御装置のメイン処理のフローチャート。
【
図11】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおける制御装置の制御指令決定処理のフローチャート。
【
図12】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおける目的達成状況の例を示す図。
【
図13】本発明に係る第一実施例の空気制御システムに含まれる装置の機能例の一覧を示す図。
【
図14】本発明に係る第一実施例の空気制御システムに含まれる装置における主機能/副次的機能の例を示す図。
【
図15】本発明に係る第一実施例の空気制御システムに含まれる装置における得意度合いの例を示す図。
【
図16】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおけるレンジフードとエアコンの間で「常時換気」動作を引継ぐ場合のフローチャート。
【
図17】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおけるレンジフードとエアコンの間で「居室換気」動作を引継ぐ場合のフローチャート。
【
図18】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにおけるエアコンと換気扇/レンジフードの間で得意度合いを用いて「居室換気」動作を引継ぐ場合のフローチャート。
【
図19】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにレンジフード、エアコン、居室用換気扇、空気清浄機がある場合において、「居室換気」動作を引継ぐ場合の模式図(その1)。
【
図20】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにレンジフード、エアコン、居室用換気扇、空気清浄機がある場合において、「居室換気」動作を引継ぐ場合の模式図(その2)。
【
図21】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにレンジフード、エアコン、居室用換気扇、空気清浄機がある場合において、「居室換気」動作を引継ぐ場合の模式図(その3)。
【
図22】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにレンジフード、エアコン、居室用換気扇、空気清浄機がある場合において、「居室換気」動作を引継ぐ場合の模式図(その4)。
【
図23】本発明に係る第一実施例の空気制御システムにレンジフード、エアコン、居室用換気扇、空気清浄機がある場合において、「居室換気」動作を引継ぐ場合の模式図(その5)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1乃至
図23を参照し、本実施例における空気制御システム100を説明する。空気制御システム100は、
図1に示すように、レンジフード20、換気機能付きエアコン30、換気機能なしエアコン39、居室用換気扇40、空気清浄機50、加湿器60、扇風機70、サーキュレータ71などの、所定空間の空気に作用し得る装置、機械、器具などの機器と、これらの装置等で稼働する機能を制御する制御装置10(本明細書内ではコントローラとも称する)と、所定空間の空気の状態を検知するセンサ90と、外部と通信を行うための通信端末80と、を備える。なお、空気制御システム100に含まれる上記の機器群は例示であって、これらの機器をすべて含む必要はなく、所定空間の空気に作用し得る共通する機能を有する機器を少なくとも2以上含めばよい。
【0021】
なお、所定空間とは、一定の境界に仕切られ、所定空間外の空気との往来がある程度制限された空間であり、何も仕切りがない開放空間(たとえば屋外空間)を含むものではないが、所定空間外の空気との往来が一切ないというものではない。本明細書における所定空間とは、典型的には、壁、床、天井、窓などで屋外空間と仕切られた屋内空間や建物内部の空間を言うが、車両や船舶などの内部空間であってもよい。これらの空間は、意図的に設けた外部空間と連通する換気口や、意図的ではないが外部空間と連通する隙間等を有することが通常である。
【0022】
また、所定空間の空気に作用するとは、当該空間にある空気の温度、湿度、空気と言う混合気体に含まれる構成要素(浮遊粉塵等を含む)の割合に変化をもたらしたり、維持したり、また空気を移動させるために気流を発生させたりすることを言う。たとえば、キッチンで調理による油煙が増加した場合に屋外に排気したり、夏に居室が不快になった場合に温度と湿度を下げたり、室内で花粉を検知した場合にはそれを除去したり、体温を下げたり洗濯物を乾燥させるために室内で風を起こしたりすることである。典型的には、レンジフード20は油煙を空気と共に屋外に排気する機能、換気機能付きエアコン30は空気の温度と湿度を下げる機能、居室用換気扇40は屋内の空気を外部へ移動させるように気流を発生させる機能、空気清浄機50は花粉や粉塵を除去する機能、加湿器60は水蒸気を供給して湿度を上げる機能、扇風機70やサーキュレータ71は気流を発生させて風を起こす機能を有する物である。これらの物は、所定空間の空気に作用する機器である限り、この例示に限定されることはない。
【0023】
また、所定空間の空気の状態(本明細書で空気質とも言う)とは、その空気の温度、湿度、構成要素の割合の状態を言い、センサ90は、たとえば、これらを検知する温度計、湿度計、CO2センサ、煙センサなどである。なお、通信端末80は、制御装置10と近距離通信を行い、外部ネットワーク(公衆回線やインターネットなど)と通信を行う機能を有し、制御装置10が必要とする情報やデータを受信したり、逆に外部ネットワークに接続されたサーバに情報やデータを送信したりする。なお、本図では通信端末80は制御装置10とは別体として示しているが、制御装置10は内部に通信端末80の機能を含み、直接外部ネットワークと通信してもよい。また、通信端末はユーザーが所有するスマートフォンなどの携帯端末であってもよい。ユーザーの通信端末から制御装置に指令を送ることで機器の遠隔操作を行ったり、ユーザーの通信端末からセンサ情報を制御装置に送信したり、ユーザーの通信端末が外部ネットワークから取得した機器メーカーのアプリを介して機器のスペック情報等を取得し、これを制御装置に送信するようにしてもいい。
【0024】
空気制御システム100は、上述したように所定空間の空気に作用する機器を少なくとも2以上含む。これらの機器には様々な物があり得、例えば本図に示すように、多数の機能を有する換気群としてレンジフード20や居室用換気扇40、多数の機能を有する空調群として換気機能付きエアコン30や換気機能なしエアコン39、少数(単数)の機能を有する空調群として空気清浄機50や加湿器60、少数(単数)の機能を有する送風群として扇風機70やサーキュレータ71などの機器など、これら以外の機器を含め、様々な機能を有する機器が空気制御システム100には混在しうる。
【0025】
これらの機器は、所定空間の空気に作用する機能を備える点で共通するため、機器特有の固有の機能だけでなく、多くの場合同等の機能、すなわち機器間で重複する機能を有する。空気制御システム100は、含まれる機器が備える機能の内、その機器の主機能となる固有の機能を尊重しつつ、これらの機器間で重複する機能を利用し、同等の機能を備える機器間で運転する機能の補完・調整を図ることにより、所定空間において目的とする空気環境を実現しようとするものである。
【0026】
以下では、
図2等を参照し、空気制御システム100に含まれる機器としてレンジフード20と換気機能付きエアコン30を例に説明する。
図2に示す空気制御システム100は、所定空間の空気に作用する機能を備える機器としてレンジフード20および換気機能付きエアコン30と、これらの機器で運転される機能を調整し制御する制御装置10とを備える。レンジフード20は、調理時に発生する油煙等を大風量で空気と共に排気すること(調理換気機能)を主機能として設置されるが、この調理換気機能だけでなく、副次的機能として小風量での常時換気機能や給気も行う同時給排気機能も有する。換気機能付きエアコン30は、居室空気の温度や湿度を調節すること(空気調和機能)を主機能として設置されるが、この空気調和機能だけでなく、副次的機能として居室と外気の入れ替えを行う換気機能(居室換気機能)や気流を発生させる送風機能も有する。この空気制御システム100は、機器固有の機能としてレンジフード20の調理換気機能と換気機能付きエアコン30の空気調和機能を有する一方、これらの機器間に重複する機能としてレンジフード20の常時換気機能/同時給排気機能と換気機能付きエアコン30の居室換気機能を有することになる。
【0027】
なお、通常、レンジフード20はキッチンに、換気機能付きエアコン30は居室に設置されるところ、キッチン空間と居室空間は連通しているため、
図13に示すように、両方の機器が全体として、広い意味で、調理換気機能、常時換気機能、冷房機能(冷媒を用いて空気を冷却することだけでなく空気を入れ替えることで結果的に冷えた空気にする機能を含む)、居室換気機能、空気清浄機能を有していると言える。たとえば、レンジフード20は、建物内空間の熱籠りの際大風量の排気運転を行うことで開口部からより低い温度の空気を引き入れることにより結果的に建物内に冷えた空気を充満させる冷房機能を備えるとも言える。また、換気機能付きエアコン30は、所定のガス濃度を検知した場合などに換気運転を行うことで調理換気機能を補完すると言うことができる。
【0028】
ただし、これらの機能は、あくまでもそれぞれの機器にとって副次的な機能と言える。
図14に示すように、その機器の設置目的からすれば、レンジフード20は、調理換気機能を主機能として、常時換気機能、冷房機能、居室換気機能および空気清浄機能を副次的機能として備え、換気機能付きエアコン30は、冷房機能(暖房機能)を主機能として、調理換気機能、常時換気機能、居室換気機能および空気清浄機能を副次的機能として備えると言える。副次的機能において重複する機能を有するレンジフード20と換気機能付きエアコン30は、それぞれの固有の機能を果たしつつ、両機器間で重複する機能を補完することができる。
【0029】
なお、
図13 には所定空間の空気に作用し得る装置の機能種別(主機能、副次的機能)、機能と動作目的(例えば、レンジフードの調理換気という「機能」は調理ガス排気を「目的動作」としていること)、機能動作(ファン駆動風量等、当該機能において装置が具体的に行う動作や制御)、機能発動制御信号(機能動作がどのような制御信号を受けて発動するか)、説明の一例を記載している。特に言及がある場合を除き、本実施例で開示する装置の機能等はこの機能一覧表にもとづいて説明する。
【0030】
図3を参照し、レンジフード20と換気機能付きエアコン30の間で機能を補完し、所定空間おいて目的とする空気環境を達成する例を説明する。本図は、キッチン空間と居室空間が連続していて、キッチンにはレンジフード20(第一機器の例。ここでは同時給排機能付きレンジフードを例とする)が、居室には換気機能付きエアコン30(第二機器の例)が設置されていることを示す模式図である。上段の図は、レンジフード20が副次的機能である常時換気機能で運転されており、換気機能付きエアコン30は停止状態であることを示す。高い静圧を有するレンジフード20は、小風量でも確実に居室の壁面に設けられた給気口から外気を吸入し、それをキッチンの方へ吸引し、居室とキッチン全体(本図ではほぼ屋内全体)の換気を行っている状態である。この時点においてのこの空間における目的とする空気環境は、屋内全体の空気を新鮮な外気と入れ替える換気を行うことで屋内空気環境を屋外空気環境に近づけるというものである。
【0031】
ただ、常時換気(副次的機能)の運転時間が十分でない場合、居室の空気は十分には換気されず居室内の空気がそのまま滞留する。このような場合に、キッチンで調理が開始されると、レンジフード20は、大風量で主機能の調理換気機能を運転し始め、調理換気中は機械給気を行うためキッチン内で空気を循環させることになり、レンジフードから遠い位置にある居室給気口からの外気流入量が減少する。そうすると、居間では室内の空気が滞留したままとなり、目的とする空気環境を達成することはできない。
【0032】
空気制御システム100は、このような場合、レンジフード20が調理換気機能を運転するために停止した常時換気機能(副次的機能)に代わって、換気機能付きエアコン30の常時換気機能(副次的機能)の運転を開始させる。そうすると、換気機能付きエアコン30は、レンジフード20の常時換気機能(副次的機能)を引き継いで、滞留していた居室内の空気の換気を継続することで、目的としていた空気環境を達成することができる。
【0033】
図2に示すように、レンジフード20は、RH空気状態制御部21と、RH機器状態確認部22と、RH機器情報記憶部23と、RH情報通知部24と、RH制御指令受信部25と、を備える。換気機能付きエアコン30は、AC空気状態制御部31と、AC機器状態確認部32と、AC機器情報記憶部33と、AC情報通知部34と、AC制御指令受信部35と、を備える。制御装置10は、制御指令決定部11と、機器状態把握部12と、機器情報記憶部13と、通信部14と、を備える。制御装置10に備えられた機器情報記憶部13が、第二機器が有する機能の情報を含む機器情報を記憶する記憶部に対応するものである。なお、機器情報記憶部13の機能は、RH機器情報記憶部23やAC機器情報記憶部33がその機能を代替するものであってもいい。これらの各構成要素がどのように機能するかは、フローチャートを用いながら後述する。なお、AC空気状態制御部31、AC機器状態確認部32、AC機器情報記憶部33、AC情報通知部34、AC制御指令受信部35は、本明細書では詳しく説明しないが、それぞれ、RH空気状態制御部21、RH機器状態確認部22、RH機器情報記憶部23、RH情報通知部24、RH制御指令受信部25とほぼ同じ機能を有すると言ってよい。
【0034】
まず、
図4と
図10を参照し、レンジフード20と制御装置10のメインフローを説明する。なお、フローチャートにおけるSはステップを示す。レンジフード20のRH機器状態確認部22は、S100において、レンジフード20への運転入力、たとえば、レンジフード20に設けられた運転スイッチによる入力や近傍のコンロとの連動による信号入力の有無を確認する処理を行う。次いで、RH機器状態確認部22は、S102において、運転入力に対応する状態たとえばコンロに連動して運転を開始できるように機器状態を設定する。レンジフード20は、S100とS102により、調理換気機能の運転を開始可能な機器状態(例えば、電源ON状態、主機能状態)に設定する。なお、この運転入力がない場合は、停止状態のまま次ステップに進む。
【0035】
レンジフード20のRH制御指令受信部25は、S104において、制御装置10からの制御指令の信号を待ち受けており、制御指令の確認処理を行う。なお、この制御指令信号を受信しない場合は、次ステップに進む。RH機器状態確認部22は、S200において、レンジフード20自身の状態を確認すると共に制御装置10へ通知する機器状態および応答可/不可の通知を生成する。RH機器状態確認部22は、状態の確認をメインフローで定期的に行い、常に機器状態を制御装置10へ通知するが、これに限定されず、制御装置10からの要求があった場合に機器状態を確認し、返信するようにしてもよい。
【0036】
ここで、制御装置10のフローを説明すると、制御装置10の機器状態把握部12は、S500において、電源をオンされた時などに、接続された機器(本実施例ではレンジフード20と換気機能付きエアコン30)の状態を問い合わせる信号を通信部14を介して送信し、応答信号を受信したら機器情報記憶部13に機器の状態を格納する。なお、機器情報記憶部13は、空気制御システム100に含まれる機器(第一機器および第二機器)が有する一以上の機能の情報を含む機器情報を記憶すると共に、ある時点での稼働状況(停止中/運転中)、運転中の機能などの動作状態情報を記憶する。この問い合わせ信号は、レンジフード20のRH制御指令受信部25および換気機能付きエアコン30のAC制御指令受信部35により受信される(S104)。この問い合わせ信号に対応して、レンジフード20のRH機器状態確認部22および換気機能付きエアコン30のAC機器状態確認部32が機器状態と応答可/不可の通知を応答するので(S200)、制御装置10の機器状態把握部12は、S502において、レンジフード20と換気機能付きエアコン30からの応答通知を受信し、確認する。
【0037】
受信した機器状態に基づき、制御装置10の機器情報記憶部13は、S504において、既に記憶されている状態からの更新の有無を検査し、更新ある場合には記憶を更新し、最新の状態を記憶する。制御装置10の機器状態把握部12は、S506において、レンジフード20と換気機能付きエアコン30の最新の状態を把握する。制御装置10の制御指令決定部11は、S600において、レンジフード20および換気機能付きエアコン30に対する制御指令を決定する(詳細は後述する)。制御装置10の通信部14は、S508において、決定した制御指令をレンジフード20と換気機能付きエアコン30に通知するため制御指令信号を送信する。
【0038】
ここで、レンジフード20のフローに戻ると、レンジフード20のRH制御指令受信部25は、S300において、制御指令信号を受信し、RH機器状態確認部22は、その制御指令に基づき運転状態の変更をRH機器情報記憶部23に記憶する(詳細は後述する)。この制御指令は、通常副次的機能の運転の開始、継続、停止である。なお、機器状態設定処理(S102)は、機器への入力に基づくもの、機器状態変更処理(S300)は、制御装置10からの入力に基づくものとしている。レンジフード20のRH情報通知部24は、S106において、RH機器情報記憶部23に記憶された機器の状態を制御装置10に通知し、最新の機器状態を共有する。レンジフード20のRH空気状態制御部21は、S400において、運転スイッチなどによる運転入力または制御装置10からの制御指令にもとづき給排気ファンを駆動または停止するなどし、空気状態制御処理を行う(詳細は後述する)。
【0039】
S200の機器状態確認処理について、
図5を参照し、詳述する。RH機器状態確認部22は、S202において、レンジフード20自身の運転状態が主機能である調理換気機能を運転しているのか、副次的機能である常時換気機能などを運転しているのか、または、停止中であるのかなど、レンジフード20が今どのような状態であるのかを確認する。そして、RH機器状態確認部22は、S204において、確認したレンジフード20の状態をRH機器情報記憶部23に記憶する。次いで、RH機器状態確認部22は、S206において、確認した状態に基づき、制御装置10に対する応答通知の内容を生成する。
【0040】
図6は、その応答通知の例を示す。応答通知の内容には、通知ID、機種、応答可否、運転状態、動作状態、風量設定、照明、人感計測値、温度計測値、CO2濃度計測値、圧力計測値が含まれている。なお、本例におけるレンジフード20は、照明、人感センサ、温度計、CO2センサ、圧力センサを、内部にまたは別体として有し、それぞれの値をRH機器情報記憶部23に記憶しているものとする。RH機器状態確認部22は、たとえば通知IDがR00033の場合、その時点で常時換気機能などの副次的機能で運転中であり、キッチン内には人はいない状態で、CO2濃度は他の時点と比して高めであり、副次的機能が運転中であることから制御装置10の問い合わせに対して応答可能である旨が返答される。また、RH機器状態確認部22は、たとえば通知IDがR00055の場合、その時点では調理換気機能の主機能を運転中で、キッチン内には人は存在し調理中である状態であり、主機能が運転中であることから調理換気機能を優先するため制御装置10の問い合わせに対して応答不可である旨(主機能を継続する旨)が返答される。
【0041】
このように、RH機器状態確認部22は、レンジフード20自身の状態を確認すると共に制御装置10へ通知する機器状態および応答可/不可の通知を生成するが、レンジフード20が主機能を運転中の場合は応答不可の通知を生成するため、この通知を受信した制御装置10は、レンジフード20に対して制御指令を通知することはない。なお、制御装置10は、各機器から送られてきた動作情報をもとに機器の応答可/応答不可を判断してもよい。したがって、レンジフード20が主機能で運転している場合制御装置10から制御指令を受信しないため主機能を運転し続ける。一方、レンジフード20が副次的機能で運転している場合制御装置10から制御指令を受信し別の副次的機能に運転を切り替える場合がある。
【0042】
なお、制御装置10は、応答通知に含まれるセンサ情報に基づき目的とする空気環境の達成状況を監視することができるため、運転動作を継続するか否かの指標に使用できる。たとえば、要求しようとする副次的機能が冷暖房にかかわるものであれば、制御装置10は、レンジフード20の温度計測値を、キッチンの温度が下がっていないので運転を継続させる等の指標として使うことができる。
【0043】
S300の機器状態変更処理について、
図7を参照し、詳述する。レンジフード20のRH制御指令受信部25は、S302において、制御指令信号を受信したか否かを確認する。受信していなければ機器状態変更処理は終了する。制御指令信号を受信した場合、RH制御指令受信部25は、S304において、その制御指令が副次的機能の開始指令であるか否かを確認する。その制御指令が副次的機能開始指令であった場合、RH空気状態制御部21は、S306において、機器状態を常時換気機能などの副次的機能に設定する。
【0044】
なお、その制御指令が副次的機能開始指令でなかった場合、RH制御指令受信部25は、S310においてその制御指令が副次的機能の継続指令であるか否かを確認し、継続指令であった場合もS306において機器状態をその副次的機能に設定する。継続指令でもなかった場合、RH空気状態制御部21は、S312において、機器状態を目的動作停止状態に設定、すなわちレンジフード20が副次的機能を用いて目的とする空気環境を実現することを行わないこととする。S306およびS312の後、RH機器状態確認部22は、S308において、変更した機器状態、すなわち目的とする空気環境を実現するために副次的機能を動作するまたは動作しないことをRH機器情報記憶部23に記憶する。
【0045】
S400の空気状態制御処理について、
図9を参照し、詳述する。RH空気状態制御部21は、S402において、機器状態設定処理(S102)で設定された運転スイッチ等による主機能運転の指示、または、RH機器情報記憶部23に記憶された最新の機器状態に基づく副次的機能運転の指示について入力を受ける。RH空気状態制御部21は、S404において、その指示が運転停止指示か否かを確認する。運転停止指示であった場合、RH空気状態制御部21は、S406において、給排気ファンを停止し、運転を停止する。運転停止指示でなかった場合、RH空気状態制御部21は、S408において、その指示は主機能の排気運転の指示か否かを確認する。主機能の排気運転の指示であった場合、RH空気状態制御部21は、S410において、指示された風量(たとえば強中弱のいずれかの風量)で給排気ファンを制御・駆動する(調理換気機能)。
【0046】
主機能の排気運転の指示でなかった場合、RH空気状態制御部21は、S412において、その指示が副次的機能である常時換気運転の指示か否かを確認する。常時換気運転の指示であった場合、RH空気状態制御部21は、S414において、常時換気風量で排気ファンを制御・駆動する(常時換気機能)。常時換気運転の指示でなかった場合、RH空気状態制御部21は、S416において、指定風量で給気ファンを制御・駆動する。これは、他の副次的機能として、冷暖房時の外気の取入れや空気循環のために使用される。
【0047】
S600の制御指令決定処理について、
図11を参照し、詳述する。制御装置10の制御指令決定部11は、レンジフード20と換気機能付きエアコン30の最新の状態を把握した後(S506)、S602において、最新の機器状態が第一機器の機器状態の変更を示すものであるか否かを確認する。ここで、第一機器とは、空気制御システム100に含まれる機器群の内の1つの機器であって、制御装置10の制御指令によりある機能(第二機能)の稼働中に別の機能(第一機能)に移行する機器を言う。また、第二機器とは、空気制御システム100に含まれる機器群の内の1つの機器であって、制御装置10の制御指令により、その移行の際にある機能(第二機能)と同等の機能(第三機能)を稼働させ、第一機器から同等の機能を引き継ぐように動作する機器である。
【0048】
第一機器の機器状態の変更を示すものであった場合、制御指令決定部11は、S604において、機器状態の変更が副次的機能から主機能に変更するものであるか否かを確認する。機器状態の変更が副次的機能から主機能に変更するものであった場合、制御指令決定部11は、S606において引継ぎフラグをONにする。なお、引継ぎフラグとは、第一機器から第二機器へ目的動作を引き継ぐ必要のない通常の状態変更と区別するために用いられる。通常の状態変更とは、たとえば運転スイッチによる主機能を停止するとか、副次的機能(送風)を副次的機能(加湿)に変更することを言う。このような場合には、目的動作の引継ぎは行われないので、引継ぎフラグはOFFとなる。
【0049】
次いで、制御指令決定部11は、S700において、その時までの第一機器の副次的機能を用いた目的とする空気環境の達成状況を確認する。
図12を参照して、どのように確認するか詳述する。制御指令決定部11は、S702において、第一機器や第二機器がセンサを有している場合、当該機器から所定空間の空気質に関する情報を取得する。また、制御指令決定部11は、S704において、空気制御システム100内のセンサ90から所定空間の空気質に関する情報を取得する。制御指令決定部11は、S706において、取得した空気質の値が目標とする値の範囲内か否かを確認する。
【0050】
レンジフード20の機能における空気質の目標値の例を本図下表に示す。たとえば、調理換気機能の場合はCO濃度が9ppm以下であること、冷房機能の場合は目標設定値(多くの場合エアコンでの温度設定値)の±2℃以内であること、居室換気機能の場合CO2濃度が1000ppm以下であること、空気清浄機能の場合TVOCが400μg/m2以下であること、などとしてもよい。なお、本表では常時換気機能は目標値なしとしているが、別途独自の目標値を設定できるようにしてもよい。取得した空気質が目標とする値の範囲内にあった場合は、制御指令決定部11は、引継ぎ動作を実施しないこととし、範囲内になかった場合は、S708において引継ぎ動作を行うこととする。
【0051】
図11に戻り、引継ぎ動作を行うこととした場合、制御指令決定部11は、S608において、引継ぎ動作を行うことの可能な機器を空気制御システム100内の機器の中から検索する。検索は、
図14に示す各機器における主機能/副次的機能の対応表に基づき行われる。たとえば、レンジフード20が常時換気機能(副次的機能)から調理換気機能(主機能)に移行する場合、常時換気機能を引き継げるのは、換気機能付きエアコン30と居室用換気扇40なので、この中で検索する。制御指令決定部11は、S610において、検索した結果候補となる第二機器を後述する様々な判断基準により選択し、選択された機器への指令内容を生成する。なお、
図14に示す対応表は、空気制御システム100に含まれる機器が有する機能の情報を含む機器情報を記憶する機器情報記憶部13に格納されていることが好ましく、機器が空気制御システム100のネットワークに組み込まれる際に手動で登録してもよいし、所定のプロトコルにより自動で登録されるようにしてもよい。
【0052】
このように、制御指令決定部11は、レンジフード20(第一機器)において稼働する機能が副次的機能の常時換気機能(第二機能)から主機能の調理換気機能(第一機能)に移行することを検出した場合、機器情報記憶部13から常時換気機能(第三機能)を有する第二機器(
図14の例で言えば、換気機能付きエアコン30または居室用換気扇40のいずれか)を選択し、選択した第二機器に常時換気機能(第三機能)を稼働させる制御を行う。このように、レンジフード20において稼働する機能が副次的機能から主機能の調理換気機能に移行する場合に、空気制御システム100内に含まれる他の機器が有する機能の情報に基づき機器を選択することで、適切な機器を選択し当初目的とした空気環境になるように空気制御を行うことができる。
【0053】
生成する指令内容は、たとえば、
図8に示すように、換気機能付きエアコン30の常時換気機能の例として、指令ID、対象機種、指令内容、動作種類、風量を含む。たとえば、指令IDがCA00001では、対象機種を換気機能付きエアコン30、指令内容を副次的機能継続、動作種類を居室換気機能、風量を規定値として生成される。なお、第二機器の選択は、候補となる第二機器が複数ある場合、後述するように、候補となる第二機器の中から最も相応しい機器を選択するようにしてもよい。
【0054】
制御指令決定部11が生成した指令内容を、通信部14は、レンジフード20や他の機器に通知するため制御指令信号を送信し(S508)、受信した機器は、機器状態変更処理(S300)を行い、空気状態の制御処理(S400)を行う。このように、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行する場合に第二機器に対して第三機能を稼働させることで、中断される第二機能を第三機能として第二機器に引き継ぐように動作するため、屋内空間が当初目的とした空気環境になるように空気制御を行うことができる。
【0055】
なお、S602で第一機器の機器状態の変更を示すものでなかった場合、制御指令決定部11は、S612において、引継ぎフラグがONかつ第二機器の停止を示すものであるか否かを確認し、引継ぎフラグがONかつ第二機器の停止を示すものであった場合には目的達成状況の確認を行い(S700)、引継ぎフラグがONかつ第二機器の停止を示すものでなかった場合にはS614において所定の制御指令を生成する。ここで、S614の所定の制御指令を生成とは、例えば、レンジフード20が第一機器、換気機能付きエアコン30が第二機器として選択されている場合において、居室換気扇40に対して機器状態の変更が行われる場合などに行われる制御指令(例えば、居室換気扇40の副次的機能である居室換気の動作指令)が該当する。このような場合は第一機器、第二機器の引継ぎ動作に影響を与えない為、機器に対する変更指令通りの制御指令を所定の制御指令として生成する。なお、S614は、所定の制御指令を生成で終了しているが、ここで終了せずにS700の目的達成状況の確認を行ってシステム内にある空気制御機器を動員して目的とする空気環境になるように各機器の空気状態の制御処理を行うようにしてもよい。
【0056】
また、S604で機器状態の変更が副次的機能から主機能に変更するものでなかった場合、制御指令決定部11は、S616において、第一機器の機器状態の変更を示すものが主機能の終了を示すものかつ引継ぎフラグがONであるか否かを確認し、それが主機能の終了を示すものかつ引継ぎフラグがONでなかった場合、所定の制御指令を生成し(S624)、主機能の終了を示すものかつ引継ぎフラグがONであった場合、目的達成状況の確認を行う(S700)。ここで、S624の所定の制御指令を生成とは、例えば、第一機器の主機能中において制御装置10が通信端末80から第一機器の主機能の停止指示を受けて機器状態が変更になるとか、第一機器の機器状態が副次的機能である常時換気から副次的機能である居室換気に変更になる場合等が該当する。これはすなわち機器間で動作を引き継ぐ必要がない状態変更である。このような場合は、所定の制御指令として、指令通りに主機能の停止や副次的機能への変更が行われる。なお、S624は、所定の制御指令を生成で終了しているが、ここで終了せずにS700の目的達成状況の確認を行ってシステム内にある空気制御機器を動員して目的とする空気環境になるように各機器の空気状態の制御処理を行うようにしてもよい。
【0057】
次いで、制御指令決定部11は、S618において、たとえば目的達成状況と機器の仕様などに応じて、第一機器が副次的機能に復帰が必要か否か確認する。必要である場合には、制御指令決定部11は、S620において、第一機器の復帰指令をおよび第二機器の停止指令を生成する。また、必要でなかった場合、制御指令決定部11は、S626において、第二機器で稼働している機能の継続が必要か否かを確認する。必要である場合には、制御指令決定部11は、S628において、第二機器の継続指令を生成し、必要でなかった場合、S630において第二機器で稼働している機能を停止する指令を生成する。S620、S628、S630を行った後、制御指令決定部11は、S622において、引継ぎフラグをOFFにする。
【0058】
図16を参照し、レンジフード20と換気機能付きエアコン30の間で常時換気機能を引き継ぐ場合について詳述する。ガスコンロ連動機能を有しているレンジフード20が第一機器、換気機能付きエアコン30が第二機器である。空気制御システム100の作動開始時において、レンジフード20と換気機能付きエアコン30は、コントローラ(制御装置10)に対してその時点での機器の状態についての情報を通知する(R11、A11)。これにより、コントローラは、それぞれの機器の状態(レンジフード20、換気機能付きエアコン30とも動作していない状態)を把握する(C11)。また、コントローラは、センサ90から温度等の計測値(S11)を空気質として受信する(C12)。レンジフード20は、運転スイッチにより常時換気機能が起動され、ファンを150m
3/hで駆動制御する(R12)と共に、常時換気機能が稼働したことをコントローラに通知する。コントローラは、レンジフード20の状態(副次的機能である常時換気機能が稼働したこと)を把握する(C13)。
【0059】
このような状況で、ガスコンロが使用者により点火され、連動するレンジフード20に対して調理換気機能を稼働するように制御信号を出力する(G11)。レンジフード20は、その制御信号を受信すると、調理換気機能として給気しながら大風量(300m3/h)で排気するファンを駆動制御し、調理換気機能が稼働したことをコントローラに通知する(R13)。コントローラは、レンジフード20の状態(副次的機能である常時換気機能を終了し、主機能である調理換気機能が稼働したこと)を把握する(C14)。コントローラは、センサ90から温度等の計測値(S12)を空気質として受信する(C15)。コントローラは、目的達成状況を確認し、引き継ぎが必要か否かを判定する(C16)。ただし、本例では常時換気の場合は目標値を設定していないため、コントローラは、無条件で引き継ぐ判定を行う。
【0060】
コントローラは、換気機能付きエアコン30に対して常時換気機能の開始指令を送信する(C17)。その指令信号を受信した換気機能付きエアコン30は、常時換気機能を起動し、ファンを30m3/hで駆動制御する(A12)。このように、空気制御システム100は、調理換気機能(第一機能)と常時換気機能(第二機能)を有するレンジフード20(第一機器)と、第二機能と同等の常時換気機能(第三機能)を有する換気機能付きエアコン30(第二機器)と、レンジフード20における機能の稼働状態を検出し、少なくとも換気機能付きエアコン30において稼働する機能を制御する制御装置10と、を備え、制御装置10は、レンジフード20において稼働する機能が常時換気機能から調理換気機能に移行することを検出した場合、換気機能付きエアコン30に対して常時換気機能を稼働させる制御を行う。このように、レンジフード20において稼働する機能が常時換気機能から調理換気機能に移行する場合に換気機能付きエアコン30に対して常時換気機能を稼働させることで、中断される常時換気機能を換気機能付きエアコン30に引き継ぐように動作するため、屋内空間が当初常時換気機能により目的とした空気環境になるように空気制御を行うことができる。なお、本図の例ではレンジフード20の副次的機能を常時換気機能として説明したが、他の副次的機能(たとえば居室換気機能)であってもよい。
【0061】
使用者による料理が終わるとガスコンロが消火され(G12)、ガスコンロは、レンジフード20に対して調理換気機能を終了してもよい旨の制御信号を出力する。レンジフード20は、その制御信号を受信すると、調理換気機能を終了し、その旨をコントローラに通知する(R14)。コントローラは、レンジフード20の状態(主機能である調理換気機能が終了したこと)を把握する(C18)。コントローラは、センサ90から温度等の計測値(S13)を空気質として受信する(C19)。コントローラは、目的達成状況を確認し、引き継ぎが必要か否かを判定する(C1A)。ここでは、常時換気機能が目標とした空気環境に至っていないと判定し、レンジフード20における常時換気機能の復帰が必要と判定する。コントローラは、換気機能付きエアコン30に対して常時換気機能の終了指令を、レンジフード20に対して常時換気機能の開始指令を送信する(C1B)。このように、目的達成状況に基づいて引き継がせる第二機器を選択することが好ましく、これにより、適切な機器を選択しつつ当初の目的を達成できる。
【0062】
換気機能付きエアコン30は、その終了指令を受信すると常時換気機能を終了しファンを停止させ(A13)、コントローラに通知する。また、レンジフード20は、その開始指令を受信すると常時換気機能を開始しファンを150m3/hで駆動制御し(R15)し、コントローラに通知する。コントローラは、両方の機器から情報を受信し、機器の状態(レンジフード20の副次的機能である常時換気機能の復帰および換気機能付きエアコン30の副次的機能である常時換気機能の終了)を把握する(C1C)。コントローラは、レンジフード20(第一機器)において稼働する機能が常時換気機能(第二機能)から調理換気機能(第一機能)に移行した後に常時換気機能(第二機能)に戻る場合、換気機能付きエアコン30(第二機器)に常時換気機能(第三機能)を停止させてもよい。このように、レンジフード20において常時換気機能から調理換気機能に移行した後に再び常時換気機能に戻る場合換気機能付きエアコン30に常時換気機能を停止させることで、移行前の状態に戻り、ユーザーが認識していた運転状態とすることができ、移行前に目的としていた空気環境になるように空気制御を行うことができる。また、移行時機能を引き継いだ換気機能付きエアコン30が停止するため、同一目的で重複運転する必要がなくなる。
【0063】
なお、逆に、コントローラは、レンジフード20(第一機器)において稼働する機能が常時換気機能(第二機能)から調理換気機能(第一機能)に移行した後に調理換気機能(第一機能)を停止する場合、換気機能付きエアコン30(第二機器)に常時換気機能(第三機能)を継続させるように制御を行ってもよい。これによれば、レンジフード20(第一機器)において常時換気機能(第二機能)から調理換気機能(第一機能)に移行した後に停止する場合換気機能付きエアコン30(第二機器)に常時換気機能(第三機能)を継続させることで、移行前に目的としていた空気環境になるように空気制御を行うことができる。
【0064】
図17を参照し、レンジフード20と換気機能付きエアコン30の間で居室換気機能を引き継ぐ場合について詳述する。換気機能付きエアコン30が第一機器、レンジフード20が第二機器である。空気制御システム100の作動開始時において、レンジフード20と換気機能付きエアコン30は、コントローラ(制御装置10)に対してその時点での機器の状態についての情報を通知する(R21、A21)。これにより、コントローラは、それぞれの機器の状態(レンジフード20、換気機能付きエアコン30とも動作していない状態)を把握する(C21)。また、コントローラは、センサ90から温度やCO2濃度等の計測値(S21)を空気質として受信する(C22)。
【0065】
このような状況で、換気機能付きエアコン30は、使用者のスイッチ操作により居室換気機能を起動され、ファンを30m3/hで駆動制御し、居室換気機能が稼働したことをコントローラに通知する(A22)。コントローラは、換気機能付きエアコン30の状態(副次的機能である居室換気機能が稼働したこと)を把握する(C23)。次いで、換気機能付きエアコン30は、使用者のスイッチ操作により冷房機能を起動され、ファンを駆動し熱交換装置により室内空気の冷却を行い(A23)、冷房機能が稼働したことをコントローラに通知する。コントローラは、換気機能付きエアコン30の状態(副次的機能である居室換気機能を終了し、主機能である冷房機能が稼働したこと)を把握する(C24)。また、コントローラは、センサ90から温度やCO2濃度等の計測値(S22)を空気質として受信する(C25)。コントローラは、たとえば計測したCO2濃度がCO2濃度の目標値1000ppm以下であるか否かなどの目的達成状況を確認し、引き継ぎが必要か否かを判定する(C26)。
【0066】
引き継ぎが必要と判定した場合、コントローラは、レンジフード20に対して居室換気機能の開始指令を送信する(C27)。その指令信号を受信したレンジフード20は、居室換気機能を起動し、ファンを150または200m3/h以上で駆動制御する(R22)。このように、空気制御システム100は、冷房機能(第一機能)と居室換気機能(第二機能)を有する換気機能付きエアコン30(第一機器)と、第二機能と同等の居室換気機能(第三機能)を有するレンジフード20(第二機器)と、換気機能付きエアコン30における機能の稼働状態を検出し、少なくともレンジフード20において稼働する機能を制御するコントローラ(制御装置10)と、を備え、コントローラは、換気機能付きエアコン30において稼働する機能が居室換気機能から冷房機能に移行することを検出した場合、レンジフード20に対して居室換気機能を稼働させる制御を行う。これにより、中断される居室換気機能をレンジフード20に引き継ぐように動作するため、屋内空間が当初居室換気機能により目的とした空気環境になるように空気制御を行うことができる。
【0067】
換気機能付きエアコン30は、使用者のスイッチ操作により冷房機能が停止されるとファン駆動と冷却動作を停止し(A24)、冷房機能が終了したことをコントローラに通知する。コントローラは、換気機能付きエアコン30の状態(主機能である冷房機能が終了したこと)を把握する(C28)。コントローラは、センサ90からCO2濃度や温度等の計測値(S23)を空気質として受信する(C29)。コントローラは、目的達成状況を確認し、引き継ぎが必要か否かを判定する(C2A)。ここでは、居室換気機能が目標とした空気環境に至っていると判定し、レンジフード20における居室換気機能の復帰が不要と判定する。コントローラは、レンジフード20に対して居室換気機能の終了指令を送信する(C2B)。この終了指令を受信したレンジフード20は、居室換気機能を停止するためファン駆動制御を停止し(R23)、その旨の情報をコントローラに送信する。コントローラは、これを受信し、最新の機器状態(レンジフード20の副次的機能である居室換気機能の終了)を把握する(C2C)。
【0068】
なお、上述したことは、所定空間の空気に作用する第一機能および第二機能を有する第一機器と、第二機能と同等の第三機能を有する第二機器と、を備える空気制御システム100の空気制御方法でもある。この空気制御方法は、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行することを検出した場合、第二機器に対して第三機能を稼働させる制御を行う。これによれば、第一機器において稼働する機能が第二機能から第一機能に移行する場合に第二機器に対して第三機能を稼働させることで、中断された第二機能を第三機能として第二機器に引き継ぐように動作するため、屋内空間が当初目的とした空気環境になるように空気制御を行う空気制御方法を提供することができる。
【0069】
<得意度合いによる第二機器の選択>
制御指令決定部11が引継ぎ動作を行うことの可能な機器を空気制御システム100内の機器の中から検索した(S608)結果候補となる第二機器が複数あった場合、以下のように候補となる第二機器の中から最も相応しい機器を選択するようにしてもよい。
図14に示す対応表は、空気制御システム100に含まれる機器が有する機能の情報と共にその機能の得意度を示す情報を含む。得意度とは、機器が有する機能の中で他の機器に比べて得意としている程度を示すものである。本明細書(特に
図14と
図15)では、他の機器に比べて高い得意度はランクAと呼び、他の機器に比べて低い得意度はランクCと呼び、その中間程度の得意度はランクBと呼ぶ。
【0070】
機器固有の機能(主機能)が他の機器に比べて得意度が最も高いことは言うまでもないので、機器の主機能の得意度は、ランクAとしている。たとえば、調理換気機能においては、レンジフード20がランクA、居室用換気扇40がランクB、換気機能付きエアコン30がランクCとしている。調理換気機能においては排気能力が重要となるため、
図15に示すように、排気風量がレンジフード20に次いで大きい居室用換気扇40をランクBとし、次に大きい換気機能付きエアコン30をランクCとしている。また、室内の有害物質を継続的に排気する常時換気機能においては、居室用換気扇40が主機能でもあるのでランクAとし、一方キッチンにおいてはレンジフード20が重要な役割を果たすのでランクAとしている。換気機能付きエアコン30の換気能力はこれらに比し低いためランクBとしている。また、居室の汚染物質の排気する居室換気機能においては、居室用換気扇40が主機能でもあるのでランクAとし、一方キッチンにおいては居室からレンジフード20までの距離が大きいためランクBとしている。これらの得意度は、機器情報記憶部13に格納されていることが好ましく、機器が空気制御システム100のネットワークに組み込まれる際に手動で登録してもよいし、所定のプロトコルにより自動で登録される際に所定のルール(たとえば風量の大小や熱交換器の有無など)に基づいて自動で設定するようにしてもよい。
【0071】
制御指令決定部11は、複数の候補の中から1つの第二機器を選択する際(S610)、この得意度を示す情報に基づいて第二機器を選択することが好ましい。このように、第二機器が有する機能の情報とその得意度に基づき第二機器を選択することで、より適切な機器を選択し引き継ぐことができる。
図18を参照し、得意度に基づく目的動作の引き継ぎについて説明する。本図では、空気制御システム100に含まれる機器として、換気機能付きエアコン30と、居室用換気扇40と、レンジフード20が含まれており、換気機能付きエアコン30が第一機器、居室用換気扇40とレンジフード20が第二機器として機能する場面である。なお、居室換気機能においては、居室用換気扇40の得意度がランクA、レンジフード20の得意度がランクBとしている例である。
【0072】
換気機能付きエアコン30は、副次的機能動作として、居室換気機能を開始する(A31)。コントローラは、その機器の状態を把握する(C31)。その状況において、使用者によるスイッチ操作などにより、換気機能付きエアコン30は、主機能動作として冷房機能の運転を開始する(A32)。コントローラは、その機器の状態の更新を把握すると目的達成状況を確認(S700)した上で達成状況が不十分な場合、引継ぎ動作を行うことの可能な機器を空気制御システム100内の機器の中から検索し(S608)、引き継ぎ可能な機器を得意度を参照して把握する(C32)。このように、コントローラが得意度と目的達成状況に基づき引き継がせる機器を選択することで、より適切な機器を選択し引き継ぐことができる。
【0073】
この場合、引き継ぐ候補としては居室用換気扇40とレンジフード20の複数の機器があるが、居室用換気扇40の得意度がランクAであるため、コントローラは、居室用換気扇40を第二機器として選択し、居室換気機能の開始制御指令を生成して、送信する(C33)。居室用換気扇40は、その指令を受信すると副次的機能の居室換気機能を開始する(F31)。なお、居室用換気扇40においては、常時換気機能(24時間の連続換気)が主機能、居室換気機能を副次的機能としている(
図13)。このように、換気機能付きエアコン30(第一機器)が稼働する機能が居室換気機能(第二機能)から冷房機能(第一機能)に移行することを検出し、機器情報記憶部13から居室換気機能(第三機能)を有する第二機器が複数選択された場合、得意度が最も高い一の居室用換気扇40(第二機器)を選択することが好ましい。これによれば、第二機器が複数選択された場合でも得意度が最も高い一つ第二機器を選択することで、より適切な機器を選択し引き継ぐことができる。
【0074】
その後、しばらくして使用者の操作により居室用換気扇40は居室換気機能を停止したものとする(F32)。コントローラは、居室用換気扇40の状態の更新を把握すると目的達成状況を確認(S700)した上で達成状況が不十分なので、引継ぎ動作を行うことの可能な機器を空気制御システム100内の機器の中から検索し(S608)、引き継ぎ可能な機器を得意度を参照して把握する(C34)。この場合、レンジフード20の得意度が居室用換気扇40に次いでランクBであるため、コントローラは、レンジフード20を第二機器として選択し、居室換気機能を引き継がせるために当該機能の開始制御指令を生成して、送信する(C35)。レンジフード20は、その指令を受信すると副次的機能の居室換気機能を開始し(R31)、コントローラは、レンジフード20の状態の更新の通知を受ける。
【0075】
このような状況で、使用者の操作により換気機能付きエアコン30の冷房機能が停止されると(A33)、コントローラは、その情報の通知を受け、機器の状態を把握する(C36)。コントローラは、換気機能付きエアコン30の状態の更新を把握すると居室換気という当初の目的の達成状況を確認(S700)した上で達成状況が不十分な場合、このままレンジフード20で居室換気を行うのか、主機能を終了した換気機能付きエアコン30に居室換気を引き継がせるのか判断する。
【0076】
なお、引き継ぎ可能な機器を空気制御システム100内の機器の中から得意度に基づき検索すると、居室用換気扇40がランクAなので第一候補となり得るが使用者により居室換気機能は停止された後なので、第二候補としては居室換気機能におけるランクBの換気機能付きエアコン30とレンジフード20になる。たとえば、エネルギー消費量やキッチンの汚染度を考慮して、ここでは換気機能付きエアコン30に居室換気機能を復帰させるよりも、レンジフード20による居室換気を継続した方がよいと判断し、レンジフード20による居室換気を継続させるように制御指令を生成し、送信する(C37)。そうすると、換気機能付きエアコン30は居室換気機能を起動せず停止を維持し(A34)、レンジフード20は居室換気機能を継続運転する(R32)。このように、コントローラが得意度と機器の動作状態情報に基づき引き継がせる機器を選択することで、より適切な機器を選択し引き継ぐことができる。
【0077】
図19は、得意度が最も高い一つの第二機器を選択する例を模式的に記載したものである。本図は、空気制御システム100には、第一機器としてレンジフード20、第二機器として換気機能付きエアコン30と居室用換気扇40が含まれる例を示す。レンジフード20が副次的機能の居室換気機能を運転中に使用者が主機能の調理換気機能を開始させる際、運転停止中(スタンバイ状態)の換気機能付きエアコン30と居室用換気扇40があり、換気機能付きエアコン30の居室換気機能の得意度がランクB、居室用換気扇40のその得意度がランクAである場合、制御装置10は、換気機能付きエアコン30ではなく居室用換気扇40に居室換気機能を引き継がせるように制御する。このように、第二機器が候補として複数ある場合でも得意度が最も高い一つ第二機器を選択することで、より適切な機器を選択し引き継ぐことができる。
【0078】
図20は、得意度と動作状態情報から第二機器を選択する例を模式的に記載したものである。本図は、空気制御システム100には、第一機器としてレンジフード20、第二機器として、副次的機能(空気清浄機能)を動作させている換気機能付きエアコン30と、主機能(常時換気機能)を動作させている居室用換気扇40が含まれる例を示す。レンジフード20が副次的機能の居室換気機能を運転中に使用者が主機能の調理換気機能を開始させる際、引き継がせる候補として居室換気機能の得意度がランクBの換気機能付きエアコン30と、その得意度がランクAの居室用換気扇40があり、得意度だけを考慮すれば引き継ぐのは居室用換気扇40であることが好ましい。しかし、居室用換気扇40では主機能が動作しており、当該機器にとっての主機能を中断させることはできないため(応答不可を通知するため)、このような場合には、得意度ランクBの換気機能付きエアコン30の副次的機能(空気清浄機能)を中断させ、副次的機能の居室換気機能を引き継がせるように制御する。このように、得意度と第三機能の動作状態情報に基づき第二機器を選択することで、より適切な機器を選択し引き継ぐことができる。
【0079】
図21は、第二機器で動作していた副次的機能をさらに別の機器に動作させる例を模式的に記載したものである。本図は、空気制御システム100には、第一機器としてレンジフード20、第二機器として、副次的機能(空気清浄機能)を動作させている換気機能付きエアコン30と、主機能(常時換気機能)を動作させている居室用換気扇40と、さらに第三機器としてスタンバイ状態の空気清浄機50が含まれる例を示す。なお、第二機器は、第二機能と同等の第三機能以外の機能である第四機能(この例では換気機能付きエアコン30の副次的機能である空気清浄機能)を有し、第三機器は、第四機能と同等でありそれを引き継ぐことができる第五機能(この例では空気清浄機50の主機能である空気清浄機能)を有するものとする。
【0080】
レンジフード20が副次的機能の居室換気機能を運転中に使用者が主機能の調理換気機能を開始させる際、引き継がせる候補として居室換気機能の得意度がランクBの換気機能付きエアコン30と、その得意度がランクAの居室用換気扇40があり、得意度だけを考慮すれば引き継ぐのは居室用換気扇40であることが好ましい。しかし、居室用換気扇40では主機能が動作しており、当該機器にとっての主機能を中断させることはできないため、このような場合には、得意度ランクBの換気機能付きエアコン30の副次的機能(空気清浄機能)を中断させ、副次的機能の居室換気機能を引き継がせるように制御する。さらに、換気機能付きエアコン30で中断する空気清浄機能は、スタンバイ状態の空気清浄機50の主機能であるため空気清浄機50に引き継がせることが好ましい。
【0081】
このように、制御装置10は、換気機能付きエアコン30(第二機器)の第四機能(空気清浄機能)で動作中であることにより第三機能(居室換気機能)を稼働させる第二機器が存在しない場合(居室用換気扇40は主機能動作中)、空気清浄機50(第三機器)に対して空気清浄機能(第五機能)を稼働させ、換気機能付きエアコン30(第二機器)に対して空気清浄機能(第四機能)を停止させると共に居室換気機能(第三機能)を稼働させる制御を行うことが好ましい。このように、第二機器が第四機能で動作中であることにより第三機能を稼働させる第二機器が存在しない場合、第二機器で稼働している機能を第三機器に引き継ぎ、中断される第二機能を第三機能として第二機器に引き継ぐように段階的に引き継ぎ動作を行うことで、屋内空間が当初目的とした空気環境になるように空気制御を行うことができる。
【0082】
図22は、第二機器で動作していた副次的機能をさらに別の機器に動作させる例を模式的に記載したものである。本図は、空気制御システム100には、第一機器としてレンジフード20、第二機器として、副次的機能(空気清浄機能)を動作させている換気機能付きエアコン30と、副次的機能(居室換気機能)を動作させている居室用換気扇40と、さらに第三機器としてスタンバイ状態の空気清浄機50が含まれる例を示す。なお、第二機器は、第二機能と同等の第三機能以外の機能である第四機能(この例では換気機能付きエアコン30の副次的機能である空気清浄機能)を有し、第三機器は、第四機能と同等でありそれを引き継ぐことができる第五機能(この例では空気清浄機50の主機能である空気清浄機能)を有するものとする。
【0083】
レンジフード20が副次的機能の常時換気機能を運転中に使用者が主機能の調理換気機能を開始させる際、引き継がせる候補として常時換気機能の得意度がランクBの換気機能付きエアコン30と、その得意度がランクAの居室用換気扇40があり、得意度だけを考慮すれば引き継ぐのは居室用換気扇40であることが好ましい。しかし、居室用換気扇40で動作中の居室換気機能を引き継がせることができる他の機器が存在せず、一方換気機能付きエアコン30で動作中の空気清浄機能を引き継がせることができる空気清浄機50は存在する。このような場合には、換気機能付きエアコン30の副次的機能の空気清浄機能を中断させ、副次的機能の常時換気機能を引き継がせるように制御する。さらに、換気機能付きエアコン30で中断する空気清浄機能は、スタンバイ状態の空気清浄機50の主機能であるため空気清浄機50に引き継がせる。
【0084】
このように、制御装置10は、換気機能付きエアコン30と居室用換気扇40という複数の第二機器が、空気清浄機能と居室換気機能(第四機能)で動作中であることにより常時換気機能(第三機能)を稼働させる第二機器が存在しない場合であって、動作中の空気清浄機能(第四機能)を空気清浄機50(第三機器)の空気清浄機能(第五機能)によって代替可能な第二機器が存在する場合、空気清浄機50(第三機器)に対して空気清浄機能(第五機能)を稼働させ、代替可能な換気機能付きエアコン30(第二機器)に対して空気清浄機能(第四機能)を停止させると共に常時換気機能(第三機能)を稼働させる制御を行うことが好ましい。このように、複数の第二機器が第四機能で動作中であることにより第三機能を稼働させる第二機器が存在しないが、動作中の第四機能を第三機器の第五機能によって代替可能な第二機器が存在する場合、第二機器で稼働している機能を第三機器に引き継ぎ、中断される第二機能を第三機能として第二機器に引き継ぐように段階的に引き継ぎ動作を行うことで、屋内空間が当初目的とした空気環境になるように空気制御を行うことができる。
【0085】
図23は、得意度と動作状態情報と目的達成状況から第二機器を選択する例を模式的に記載したものである。本図は、空気制御システム100には、第一機器としてレンジフード20、第二機器として、主機能(冷房機能)を動作させている換気機能付きエアコン30と、副次的機能(居室換気機能)を動作させている居室用換気扇40が含まれ、基本的には主機能が稼働中の機器には主機能を中断しないように制御するがその例外を示す。レンジフード20が副次的機能の空気清浄機能を運転中に使用者が主機能の調理換気機能を開始させる際、空気清浄機能を引き継がせる候補として得意度がランクAの換気機能付きエアコン30と、得意度がランクBの居室用換気扇40があり、得意度を考慮すれば引き継ぐのは換気機能付きエアコン30であることが好ましい。
【0086】
しかし、換気機能付きエアコン30では主機能が動作しており、基本的には当該機器にとっての主機能を中断させることはできない(応答不可を通知する)。一方、制御装置10が目的達成状況を確認して目的が達成されていると確認された場合(たとえば冷房機能の目標値(たとえば目標設定値の±2℃以内)を満たしている場合)、このまま冷房機能を継続運転させることが不要であると判断できる。このような場合には、換気機能付きエアコン30の主機能(冷房機能)を中断させ、副次的機能の空気清浄機能を引き継がせるように制御することが好ましい。なお、第二機器における第四機能の目的達成状況は、その都度センサ90により所定空間の空気の温度を検出してもよいし、定期的に検出した検出値を機器情報記憶部13に記憶しておいてもよい。このように、得意度と、第三機能の動作状態情報と、第四機能の目的達成状況に基づき第二機器を選択することで、より適切な機器を選択し引き継ぐことができる。
【0087】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0088】
100 空気制御システム
10 制御装置
11 制御指令決定部
12 機器状態把握部
13 機器情報記憶部
14 通信部
20 レンジフード
21 RH空気状態制御部
22 RH機器状態確認部
23 RH機器情報記憶部
24 RH情報通知部
25 RH制御指令受信部
30 換気機能付きエアコン
31 AC空気状態制御部
32 AC機器状態確認部
33 AC機器情報記憶部
34 AC情報通知部
35 AC制御指令受信部
39 エアコン(換気機能なし)
40 居室用換気扇
50 空気清浄機
60 加湿器
70 扇風機
71 サーキュレータ
80 通信端末
90 センサ