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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104458
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/06 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
F16K27/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008671
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】熊代 毅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純一
【テーマコード(参考)】
3H051
【Fターム(参考)】
3H051AA07
3H051BB05
3H051CC11
3H051FF02
(57)【要約】
【課題】圧力損失を低減できる弁装置を提供する。
【解決手段】
本発明にかかる弁装置1は、冷却液の流入口11aおよび流出口11bが形成されたハウジング11と、ハウジング11に収容されかつハウジング11内で回転することにより流入口11aと流出口11bとの連通状態を切り換える筒状の弁体12と、流入口11aに装着され、冷却液を弁体12の内部空間に供給するための流路として機能するフレーム17と、を備える。そして、フレーム17が、冷却液の流入方向を弁体12の回転軸に対して曲げることによって、冷却液を所望の方向へ誘導する少なくとも1つの整流部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液の流入口および流出口が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに収容されて前記ハウジング内で軸を中心に回転することにより前記流入口と前記流出口との連通状態を切り換える筒状の弁体と、
前記流入口に装着されるフレームと、
を備え、
冷却液は、前記フレームを通過して前記弁体の内部空間へ流入し、
前記フレームが、
前記流入口から流入した冷却液の流れる方向を前記軸に対して曲げる方向へ誘導する1または複数の整流部を有する、
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記フレームは、
前記流入口に取り付けられる環状の枠部と、
前記枠部の中心に形成された円筒部と、
を備え、
前記整流部の一端が前記枠部に接続し、他端が前記円筒部に接続している
ことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
冷却液の流入口および流出口が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに収容されて前記ハウジング内で軸を中心に回転することにより前記流入口と前記流出口との連通状態を切り換える筒状の弁体と、
を備え、
前記弁体の前記軸に沿う方向の一端に、冷却液を前記弁体の内部空間に取り込む導入口が形成され、
前記導入口に、
前記流入口から流入した冷却液の流れる方向を前記軸に対して曲げる方向へ誘導する1または複数の整流部が設けられる、
ことを特徴とする弁装置。
【請求項4】
前記整流部は、前記軸に対して傾斜するように設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の弁装置。
【請求項5】
前記整流部は、複数設けられ、複数の前記整流部は、全て同じ方向へ傾斜する
ことを特徴とする請求項4に記載の弁装置。
【請求項6】
前記整流部により、冷却液は前記弁体の内部空間において渦状の水流を形成しつつ前記流出口へ向かう
ことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の冷却回路において、流入する冷却液を所望の流路に放出する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の冷却回路(自動車用冷却液の循環システム)では、流入する冷却液を暖房熱交換器、オイルクーラ、ラジエータ等の各機器側へ分配するための弁装置が従来から使用されている。
【0003】
下記特許文献1には、自動車の冷却回路に使用される弁装置の一例として、ウォーターポンプの加圧によりシリンダヘッド側から供給された冷却液をラジエータ等へ分配するとともにその流量を制御する流量制御弁、が開示されている。
【0004】
具体的にいうと、特許文献1に記載された流量制御弁は、弁体収容部と、弁体収容部内において軸回転可能に支持された回転軸と、弁体収容部に収容されかつ回転軸に一体回転可能に取り付けられた弁体と、弁体(回転軸)を回転駆動させるための電動モータと、を主要な構成要素として含んでいる。
【0005】
そして、弁体収容部の外周には、ラジエータ等の配管と接続し冷却液を分配するための3つの連通口が突出形成されている。一方で、弁体収容部内で回転軸と一体的に軸回転する弁体は、軸方向の一端が、シリンダヘッド側から流入する冷却液を内部空間に取り込む流入口として開口形成され、他端が、端壁により閉塞されている。また、弁体の外周には、軸回転により各連通口と過不足なく重合するように、各連通口に対応して個別に形成された複数の弁孔が設けられている。
【0006】
すなわち、弁体に設けられた各弁孔は、軸回転に伴い、それぞれ対応する連通口と弁体の内部空間との連通状態が切り替わるように形成される。これにより、流入口を経由して弁体の内部空間に取り込まれた冷却液は、連通口と弁体の内部空間との連通状態に応じて適切に分配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-59615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の弁装置(特許文献1に記載された流量制御弁)において、弁体の内部空間に取り込まれた冷却液は、連通口と弁体の内部空間との連通状態に応じて分配される。
【0009】
しかしながら、シリンダヘッド側から弁装置へ流れ込む冷却液は、弁体の一端から内部空間に直線的に流入する。その流入した冷却液は、そのまま弁体の他端側の端壁に衝突し、弁体の内部空間で乱流を形成しつつ、弁体収容部の外周に形成された各連通口側(ラジエータ等の配管側)へと分配される。すなわち、従来の弁装置においては、弁体の内部空間における上記乱流により圧力損失が発生し、下流の冷却液の流量が減少してしまう、という問題があった。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、圧力損失を低減できる弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる弁装置は、冷却液の流入口および流出口が形成されたハウジングと、前記ハウジングに収容されて前記ハウジング内で軸を中心に回転することにより前記流入口と前記流出口との連通状態を切り換える筒状の弁体と、前記流入口に装着されるフレームと、を備え、冷却液は、前記フレームを通過して前記弁体の内部空間へ流入し、前記フレームが、前記流入口から流入した冷却液の流れる方向を前記軸に対して曲げる方向へ誘導する1または複数の整流部を有する。
【0012】
上記構成によれば、前記整流部により前記弁体の内部空間に冷却液の横向きの流れが形成される。これにより、弁体の一端から内部空間に流入した冷却液が弁体の弁孔から側方へ流出する際に、弁体の内部空間に乱流が形成されるのを抑制できる。
【0013】
また、前記フレームは、前記流入口に取り付けられる環状の枠部と、前記枠部の中心に形成された円筒部と、を備え、前記整流部の一端が前記枠部と接続し、他端が前記円筒部と接続していてもよい。このように、整流部を配置すると、整流部が枠部と円筒部とを繋いでフレームを補強できる。つまり、整流部に、整流用と、補強用の二つの機能を持たせることができる。
【0014】
また、本発明に係る弁装置は、冷却液の流入口および流出口が形成されたハウジングと、前記ハウジングに収容されて前記ハウジング内で軸を中心に回転することにより前記流入口と前記流出口との連通状態を切り換える筒状の弁体と、を備え、前記弁体の前記軸に沿う方向の一端に、冷却液を前記弁体の内部空間に取り込む導入口が形成され、前記導入口に、前記流入口から流入した冷却液の流れる方向を前記軸に対して曲げる方向へ誘導する1または複数の整流部が設けられる。
【0015】
上記構成によれば、前記整流部により前記弁体の内部空間に冷却液の横向きの流れが形成される。これにより、弁体の一端から内部空間に流入した冷却液が弁体の弁孔から側方へ流出する際に、弁体の内部空間に乱流が形成されるのを抑制できる。
【0016】
また、前記整流部は、前記軸に対して傾斜するように設けられていてもよい。このようにすると、整流部によって弁体の内部空間に冷却液の横向きの流れを形成できる。
【0017】
また、前記整流部は、複数設けられ、複数の前記整流部は全て同じ方向へ傾斜してもよい。このようにすると、整流部によって弁体の内部空間に、渦状の水流を形成できるので、冷却液の横向きの流れを確実に形成して、圧力損失をより確実に低減できる。
【0018】
また、前記整流部により、冷却液が前記弁体の内部空間において渦状の水流を形成しつつ前記流出口へ向かうようにしても良い。このようにすると、冷却液の横向きの流れを確実に形成して圧力損失をより確実に低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる弁装置によれば、圧力損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1の実施形態にかかる弁装置の断面図である。
図2図2は、図1の弁装置のフレームを示す図であり、(a)はフレームの外観を示す正面図であり、(b)は(a)に示すフレームのA’-A断面図である。
図3図3は、図1の弁装置内の冷却液の流れを模式的に示す説明図である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態にかかる弁装置の断面図である。
図5図5は、図4の弁装置内の冷却液の流れを模式的に示す説明図である。
図6図6は、本発明の第3の実施形態にかかる弁装置の弁体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる弁装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本願の明細書および図面において、同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の弁装置を示す断面図である。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、図1中上下を単に「上」「下」とする。
【0023】
本実施形態の弁装置1は、エンジン(シリンダヘッド側)から流出した冷却液がラジエータを経由してエンジン(シリンダブロック側)へ戻る冷却路と、エンジンから流出した冷却液がラジエータを経由せずに(迂回して)エンジンへ戻るバイパス路と、を備えた自動車の冷却回路(冷却液の循環システム)において使用される。そして、この弁装置1は、弁体に形成された弁孔を開閉制御することにより、エンジンを通り流入した冷却液を冷却路およびバイパス路へ向けてそれぞれ放出するとともに、その流量を制御する。
【0024】
<弁装置の基本構造>
本実施形態の弁装置1は、冷却液の流入口11aおよび複数の流出口11b(11b1,11b2)が形成されたハウジング11と、ハウジング11の内部空間に収容されかつ当該内部空間で軸(回転軸)を中心に回転可能な弁体12と、流出口11bに接続されるアダプタ13(131,132)と、弁体12に形成された弁孔12f(12f1,12f2)を通過してアダプタ13側に放出する冷却液の漏れを阻止するためのシール部材14(141,142)とを備える。この弁装置1は、車両に搭載された制御装置(図示せず)からの指示で弁体12の回転を制御することによって、冷却路およびバイパス路へ向けて冷却液を適切に放出する。
【0025】
以下、本実施形態の弁装置1の構造をさらに具体的に説明する。なお、本実施形態においては、弁体12の回転中心となる軸線に沿う方向を「軸方向」、軸線に直交する方向を「径方向」、軸線回りの方向を「周方向」と記述する。
【0026】
ハウジング11は、弁体12を収容する内部空間を有する本体部11cと、本体部11cの上部面との間に減速機15を収容するための空間を形成する有底形状の蓋部11dと、を備え、本体部11cの上部面に蓋部11dの開口端部(周縁)を取り付け、蓋部11dの内部空間を閉塞する。また、蓋部11dの空間に収容された減速機15は、複数の歯車を備え、制御装置からの指令により動作するモータ(図示せず)の回転を減速して弁体12へ伝える機能を有する。
【0027】
また、ハウジング11において、本体部11cの上部には、弁体12の回転軸として機能するシャフト12aを挿通させた状態で回転自在に支持する円筒状の挿通筒部11eが設けられる。挿通筒部11eの内周には、シャフト12aの上部を回転自在に支持する軸受け11fが設けられている。
【0028】
また、ハウジング11において、本体部11cの外周には、略円筒状の流出口11b(11b1,11b2)が、径方向外方へ突設されている。そして、図1に示す流出口11b1,11b2は、軸方向および周方向において、それぞれ異なる位置に設けられている。さらに、流出口11bには、上述した冷却路およびバイパス路と連通する円筒状のアダプタ13(131,132)がそれぞれ嵌挿され固定される。
【0029】
なお、図1(断面図)においては、本体部11cの2か所に流出口11bが設けられているが、これに限るものではなく、流出口11bについては、冷却液を放出する流路の数や方向に応じて、図1以外の位置にさらに形成されていてもよい。
【0030】
さらに、ハウジング11の下端には、シリンダヘッド側と連通して冷却液を弁体12側に取り込むための流入口11aが形成されている。そして、この流入口11aには、中心部に形成された円筒部17aでシャフト12aの下端を支持するフレーム17が装着されている。具体的には、このフレーム17は、流入口11aの周縁に沿ってハウジング11に取り付けられた環状の枠部17bと、枠部17bの中心部に形成された上記円筒部17aと、枠部17bの3か所(等間隔)と円筒部17aとをそれぞれ接続するフレーム強度補強用の3本の橋部17cと、を有する。冷却液は、このフレーム17を通過してハウジング11内へと流入できるようになっている。なお、本実施形態のフレーム17の詳細については後述する。
【0031】
弁体12は、回転軸として機能するシャフト12a、および外部との連通状態を切り替え可能な外壁を有しかつシャフト12aと一体回転可能に接合する弁本体12b、とを有する。このシャフト12aには、減速機15の構成部品としての歯車が一体的に取り付けられている。これにより、モータの駆動によって歯車が回転すると、これに連動して、弁体12(シャフト12a,弁本体12b)が一体的に回転する。
【0032】
また、弁体12において、弁本体12bには、中心部に、シャフト12aが貫通した状態でシャフト12aの外周部分と接合する接合部12cが設けられている。また、弁本体12bは、筒状で上下に開口を有しかつ外壁が球面形状を有する2つの弁部が上下に連設する。本実施形態においては、下部に形成された一方の弁部を第1弁部12b1とし、その上に形成された他方の弁部を第2弁部12b2とする。
【0033】
また、シャフト12aとハウジング11の挿通筒部11eとの間は、シールリング12dによって閉塞される。これにより、本体部11c内の冷却液が挿通筒部11eから蓋部11d内へ流入しない。また、第1弁部12b1の下端開口は、シリンダヘッド側からフレーム17(流入口11a)を介して流入する冷却液を弁体12の内部空間に取り込む導入口12eとして機能する。
【0034】
また、第1弁部12b1と第2弁部12b2には、それぞれ弁孔12f1と弁孔12f2が設けられている。弁孔12fは、第1弁部12b1および第2弁部12b2の肉厚を径方向に貫通する。弁体12が回転し、弁孔12fがシール部材14の開口と重なり合うと、この重なり合う部分から冷却液が流出する。このように、各弁孔12fは、シャフト12aの回転に連動して弁本体12bが回転することにより開閉し、この開閉動作によって流入口11aと流出口11b(11b1,11b2)との連通状態を切り換える。すなわち、弁体12に設けられた各弁孔12fは、回転に伴い、それぞれ対応する流出口11b(11b1,11b2)と弁体12の内部空間との連通状態が切り替わるように形成される。これにより、導入口12eを介して弁体12(第1弁部12b1,第2弁部12b2)の内部空間に取り込まれた冷却液は、各弁孔12fの開閉動作に応じて冷却路およびバイパス路へ向けて放出されるとともに、その流量が制御される。
【0035】
なお、本実施形態においては、一例として、流入口11aから(フレーム17を介して)流入した冷却液を冷却路およびバイパス路へ向けて放出する弁装置1について説明したが、弁装置1と連通する流路の接続構成についてはこれに限るものではなく、自動車の冷却回路(冷却液の循環システム)の仕様に応じて適宜変更可能である。
【0036】
また、本実施形態において、シール部材14(141,142)は、図1に示すようにコイルスプリングの付勢力により弁体12の外壁に押し付けられるが、これに限るものではなく、弁体12の弁孔12fを通過してアダプタ13側に放出する冷却液の漏れを阻止できればよく、その他の構造により実現することとしてもよい。
【0037】
<フレーム>
つづいて、フレーム17について詳細に説明する。図2は、図1の弁装置1のフレーム17を示す図であり、(a)はフレーム17の外観を示す正面図であり、(b)は(a)に示すフレーム17のA’-A断面図である。
【0038】
図2において、フレーム17は、上述したとおり、弁装置1(本体部11c)の下端に形成された流入口11aの内壁に取り付けられる環状の枠部17bと、枠部17bの中心に形成されかつ弁体12の回転軸として機能するシャフト12aの下端を支持する円筒部17aと、枠部17bの3か所(等間隔)と円筒部17aとをそれぞれ接続するフレーム強度補強用の3本の橋部17c(17c1,17c2,17c3)と、を有する。これにより、フレーム17は所望の強度を得ることができる。冷却液は、このフレーム17を通過してハウジング11内へ流入できる。なお、橋部17cの一端と枠部17bが接合する位置は、図2に示す3か所(等間隔)に限るものではなく、要求される強度に応じて、等間隔に2か所であってもよく、また、等間隔に4か所以上であってもよく、さらには、所望の強度が得られるのであれば等間隔でなくてもよい。
【0039】
さらに、フレーム17は、橋部17c間に形成された冷却液の流路に設けられ、かつこの流路を通過する冷却液を所望の方向へ誘導する、複数の整流部17d(17d1,17d2,17d3)を備える。具体的には、各整流部17dの一端が枠部17bと接続し、他端が円筒部17aと接続する。各整流部17dの形状は、長尺な略平板状で、弁体12の回転軸に対して所定の角度θをもって傾斜する。この傾斜により、フレーム17を通過して弁体12の内部空間へ流入する冷却液の流れを整流部17dの傾斜方向へ誘導する。すなわち、整流部17dは、水流を所望の方向へ案内するガイドとして機能する。なお、本実施形態では、整流部17dの傾斜角度θは約45度であるが、この傾斜角度θは任意に設定できる。また、整流部17dの形状も平板状に限られない。たとえば、整流部17dが三角柱状で、弁体12の回転軸に対して所定の角度θをもって傾斜する傾斜面を有してもよい。また、整流部17dが弁体12の回転軸に対して曲がるまたは傾斜する貫通孔またはスリットを有していてもよい。
【0040】
本実施形態においては、フレーム17を通過して流入する冷却液が、整流部17dによって弁体12の回転軸に対して曲がり、弁体12の内部空間において弁体12の回転軸の周りを回転するような、渦状の水流を形成しつつ各流出口11b1、11b2へ向かう。
【0041】
これにより、弁体12の内部空間で乱流が形成されることが抑制されて、冷却液が円滑に各流出口側へ向かうため、圧力損失を低減することができることから、下流側で冷却液の流量が不足するのを抑制できる。つまり、弁装置1は、冷却液を効率よく冷却路およびバイパス路へ放出することができる。
【0042】
また、橋部17cと整流部17dの両方を設けることにより、フレーム17のフレーム強度をさらに高めることが可能となる。なお、整流部17dのみでフレーム17の強度を確保できれば、橋部17cは、省略されてもよい。
【0043】
図3は、図1の弁装置1内の冷却液の流れを模式的に示す説明図である。本実施形態において、シリンダヘッドから流出した冷却液は、図3の流入方向から流入口11aへ入る。そして、この流入口11aに設けられた整流部17dによって誘導されて弁体12の回転軸に対して曲がるように流れる。これにより、弁体12の内部空間に横向きの冷却液の流れが形成される。弁孔12fは、弁体12の径方向(横方向)に貫通するので、流入口11aから各流出口11b1、11b2へ向けて冷却液が円滑に流れ、弁体12の内部空間で乱流が形成されることが抑制される。各流出口11b1、11b2を通過した冷却液は、冷却路またはバイパス路へ供給される(図3の矢印A、B参照)。
【0044】
また、本実施形態において、各整流部17dの傾斜角度θは同じである。このように、複数の整流部17dの傾斜方向が同じであるので、弁体12の内部空間に渦状の水流を形成できる。このため、弁体12の内部空間に横向きの冷却液の流れを形成しやすく、圧力損失を確実に低減できる。なお、整流部17dごとに傾斜角度θを変えてもよく、各整流部17dの傾斜方向が異なっていてもよい。また、整流部17dの数についても、図2に示す3つに限るものではなく、少なくとも1つの整流部17dが設けられていればよい。
【0045】
また、本実施の形態においては、各整流部17dの一端が枠部17bと接続し、他端が円筒部17aと接続する。このように整流部17dがフレーム17に放射状に配置されるので、弁体12の内部空間に冷却液の横向きの流れを形成しやすい。なお、整流部17dの両端が枠部に接続されてもよい。このように、整流部17dの形状、傾き、数および配置は、所望の方向へ冷却液を導けるように、適宜変更できる。
【0046】
<第2の実施形態>
また、上述したフレーム17は、フェールセーフ機能付きの弁装置においても上記弁装置1同様に適用可能である。以下、前述した図1の弁装置1と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0047】
図4は、第2の実施形態の弁装置を示す断面図である。図4に示す弁装置1aにおいて、本体部11cの外周には、略円筒状の流出口11b3(11b)が径方向外方へ突設されている。そして、この流出口11b3には、冷却路と連通する円筒状のアダプタ133(13)が嵌挿され固定される。
【0048】
図4に示す弁装置1aにおいては、故障等により弁体12を駆動できない場合や、冷却液が所定の温度に達した場合等に、流入口11aと流出口11b3とを連通するフェールセーフ部材30が設けられている。フェールセーフ部材30は、弁体12が故障等によって正常に動かない場合であっても、冷却液の供給路を確保するためのものである。
【0049】
フェールセーフ部材30は、サーモエレメント31と、弁プレート部材32と、コイルスプリング33とを備え、ワックス・ペレット型等のサーモスタットと同様の原理で作動する。
【0050】
そして、ハウジング11の本体部11cの内部空間には、フェールセーフ部材30のサーモエレメント31を収容するエレメント収容部34が形成されている。また、フェールセーフ部材30の弁プレート部材32によって閉塞されたエレメント収容部34の上方には、流出口11b3に連設する流路35が形成されている。
【0051】
エレメント収容部34は、弁プレート部材32の下方に大径収容空間34aを有し、さらに、エレメント収容部34の上端部には、徐々に縮径する縮径部34bが形成されている。そして、大径収容空間34aは、弁体連通部34cを介して流入口11aに連通している。
【0052】
フェールセーフ部材30において、弁プレート部材32は、コイルスプリング33により縮径部34b側に付勢されることによって縮径部34bに押し当てられるように配置される。これにより、大径収容空間34a側から流路35側への冷却液の通過を阻止している。
【0053】
サーモエレメント31は、内部にワックスが充填されており、エレメント収容部34内の冷却液の温度が所定温度を超えると、このワックスが膨張し、サーモエレメント31の軸心に沿って設けられたロッド31aが突出する。ロッド31aが突出することにより、ロッド31aに対して一体的に取り付けられた弁プレート部材32がコイルスプリング33の付勢力に抗して下方側に移動し、大径収容空間34a内の冷却液が流路35側へ自由に通過できるようになる。なお、上述した所定温度は、流入口11aと流出口11b3とをフェールセーフ部材30を介して連通させることが好ましい温度に予め設定されているものとする。
【0054】
また、本実施形態においては、フレーム17を通過して流入する冷却液が、図2に示す複数の整流部17d(17d1,17d2,17d3)によって渦状の水流(旋回流)を形成し、その一部がエレメント収容部34側(大径収容空間34a)に誘導される。
【0055】
図5は、図4の弁装置1a内の冷却液の流れを模式的に示す説明図である。本実施形態において、シリンダヘッドから流出した冷却液は、図5の流入方向から流入口11aへ入る。そして、この流入口11aに設けられた整流部17dによって誘導されて弁体12の回転軸に対して曲がるように流れる。これにより、弁体12の内部空間に横向きの冷却液の流れが形成される。エレメント収容部34は、弁体12の横側に位置するので、流入口11aからエレメント収容部34へ向けて冷却液が円滑に流れる。
【0056】
つまり、図4および図5に示す弁装置1aによれば、流入口11aからハウジング1の本体部11c内に流入した冷却液が、整流部17dによってエレメント収容部34側へ円滑に流れるため、フェールセーフ部材30における感温性能が向上する。なお、フェールセーフ部材30に関連する構成要素以外については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0057】
<第3の実施形態>
また、図6に示すように、上述した整流部17dは、弁体12の導入口12eに設けられてもよい。以下、前述した図1の弁装置1と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0058】
本実施形態の弁装置(図示せず)は、冷却液の流入口11aおよび流出口11b(11b1,11b2)が形成されたハウジング11と、ハウジング11に収容されてハウジング11内で軸(回転軸)を中心に回転することにより流入口11aと流出口11bとの連通状態を切り換える筒状の弁体12と、を備える。弁体12の回転軸に沿う方向の一端に、冷却液を弁体12の内部空間に取り込む導入口12eが形成される。この導入口12eに、流入口11aから流入した冷却液の流れる方向を回転軸に対して曲げる方向へ誘導する整流部17d(17d1,17d2,17d3)が設けられる。
【0059】
本実施の形態においても整流部17dは、回転軸に対して傾斜するように設けられている。また、整流部17dは、複数設けられ、複数の整流部17dが全て同じ方向へ傾斜する。これによる効果は、先に述べた通りであるが、整流部17dの形状、傾き、数および配置は、所望の方向へ冷却液を導けるように、適宜変更できる。また、整流部17dを有する弁体12は、第2の実施形態のように、フェールセーフ部材30を備えた弁装置1aに利用されてもよいのは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1,1a 弁装置
11 ハウジング
11a 流入口
11b,11b1,11b2,11b3… 流出口
11c 本体部
11d 蓋部
11e 挿通筒部
11f 軸受け
12 弁体
12a シャフト
12b 弁本体
12b1 第1弁部
12b2 第2弁部
12c 接合部
12d シールリング
12e 導入口
12f,12f1,12f2 弁孔
13,131,132,133… アダプタ
14,141,142… シール部材
15 減速機
17 フレーム
17a 円筒部
17b 枠部
17c 橋部
17d,17d1,17d2,17d3 整流部
30 フェールセーフ部材
31 サーモエレメント
31a ロッド
32 弁プレート部材
33 コイルスプリング
34 エレメント収容部
34a 大径収容空間
34b 縮径部
34c 弁体連通部
35 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6