(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010446
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20240117BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20240117BHJP
F24F 120/12 20180101ALN20240117BHJP
F24F 120/14 20180101ALN20240117BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F11/63
F24F120:12
F24F120:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111782
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薄田 健太
(72)【発明者】
【氏名】大石 剛久
(72)【発明者】
【氏名】新開 優美
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA02
3L260BA08
3L260CA02
3L260CB66
3L260CB67
3L260FA08
3L260FC15
3L260FC16
3L260HA01
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】センサの検知範囲内に戻ってきた生体に対し、望まれる態様で風を提供することが可能な空気調和機を提供する。
【解決手段】一つの実施形態に係る空気調和機は、室内機と、風向板と、センサと、制御部とを備える。前記風向板は、前記室内機に設けられ、前記室内機が吹き出す風をガイドするとともに、向きを変更可能である。前記センサは、前記室内機に設けられ、室内における生体を検知可能である。前記制御部は、前記室内機が吹き出す風が前記センサに検知された前記生体を避けるように、又は、前記室内機が前記センサに検知された前記生体に向けて風を吹き出すように、前記風向板の向きを制御する追跡制御モードで前記風向板を制御可能である。前記制御部は、前記追跡制御モードにおいて、前記センサが検知していた前記生体を検知しなくなった場合に、当該センサが前記生体を検知しなくなったときの前記風向板の向きを維持する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に風を吹き出す室内機と、
前記室内機に設けられ、前記室内機が吹き出す風をガイドするとともに、向きを変更可能な、風向板と、
前記室内機に設けられ、前記室内における生体を検知可能なセンサと、
前記室内機が吹き出す風が前記センサに検知された前記生体を避けるように、又は、前記室内機が前記センサに検知された前記生体に向けて風を吹き出すように、前記風向板の向きを制御する追跡制御モードで前記風向板を制御可能な、制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記追跡制御モードにおいて、前記センサが検知していた前記生体を検知しなくなった場合に、当該センサが前記生体を検知しなくなったときの前記風向板の向きを維持する、
空気調和機。
【請求項2】
前記制御部は、前記追跡制御モードがオフにされた場合に、前記追跡制御モードがオフにされたときの前記風向板の向きを維持する、
請求項1の空気調和機。
【請求項3】
前記制御部は、前記追跡制御モードがオフにされた場合に、前記風向板を所定の向きに配置し又は前記風向板をスイングする、
請求項1の空気調和機。
【請求項4】
前記制御部は、前記追跡制御モードにおいて、前記センサが検知していた前記生体を検知しなくなったときから所定の時間が経過した場合に、前記風向板を所定の向きに配置し又は前記風向板をスイングする、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つの空気調和機。
【請求項5】
前記制御部は、前記追跡制御モードにおいて、前記センサが検知していた前記生体を検知しなくなったときから所定の時間が経過した場合に、前記追跡制御モードをオフにする、
請求項1又は請求項3の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室内機は、室内に風を吹き出し、空気調和を行う。従来、室内における生体をセンサにより検知し、当該センサによる検知結果に応じた動作を行う空気調和機が知られる。例えば、検知された生体の位置に応じて、室内機が風を吹き出す向きが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体がセンサの検知範囲の外に出た後、センサの検知範囲内に戻ってくることがある。レーダーは、生体が検知範囲内に戻ってくる直前まで当該生体を検知していない。このため、生体がセンサの検知範囲内に戻ってきたとき、室内機は、望まれない態様で風を提供してしまう虞がある。
【0005】
本発明が解決する課題の一例は、検知された生体の位置に応じて室内機が風を吹き出す向きが制御されるモードにおいて、センサの検知範囲内に戻ってきた生体に対し、当該モードで望まれる態様で風を提供することが可能な空気調和機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態に係る空気調和機は、室内機と、風向板と、センサと、制御部とを備える。前記室内機は、室内に風を吹き出す。前記風向板は、前記室内機に設けられ、前記室内機が吹き出す風をガイドするとともに、向きを変更可能である。前記センサは、前記室内機に設けられ、前記室内における生体を検知可能である。前記制御部は、前記室内機が吹き出す風が前記センサに検知された前記生体を避けるように、又は、前記室内機が前記センサに検知された前記生体に向けて風を吹き出すように、前記風向板の向きを制御する追跡制御モードで前記風向板を制御可能である。前記制御部は、前記追跡制御モードにおいて、前記センサが検知していた前記生体を検知しなくなった場合に、当該センサが前記生体を検知しなくなったときの前記風向板の向きを維持する。
【0007】
上記空気調和機では、例えば、前記制御部は、前記追跡制御モードがオフにされた場合に、前記追跡制御モードがオフにされたときの前記風向板の向きを維持する。
【0008】
上記空気調和機では、例えば、前記制御部は、前記追跡制御モードがオフにされた場合に、前記風向板を所定の向きに配置し又は前記風向板をスイングする。
【0009】
上記空気調和機では、例えば、前記制御部は、前記追跡制御モードにおいて、前記センサが検知していた前記生体を検知しなくなったときから所定の時間が経過した場合に、前記風向板を所定の向きに配置し又は前記風向板をスイングする。
【0010】
上記空気調和機では、例えば、前記制御部は、前記追跡制御モードにおいて、前記センサが検知していた前記生体を検知しなくなったときから所定の時間が経過した場合に、前記追跡制御モードをオフにする。
【0011】
以上の空気調和機によれば、例えば、追跡制御モードにおいて、センサの検知範囲内に戻ってきた生体に対し、当該モードで望まれる態様で風を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る空気調和機の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の風向板が閉じ位置に位置する室内機を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の風向板が開き位置に位置する室内機を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の風向板が開き位置に位置する室内機を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の通風部材が閉じ位置に位置する室内機を概略的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の通風部材を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の無風感モードにおいて室内機が吹き出す風を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の室内機制御部を機能的に示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態のレーダー制御モードにおける室内機の制御の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第1の実施形態における室内機と室内に戻ってくる生体とを模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態における室内機と障害物の物陰から出てくる生体とを模式的に示す平面図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態における室内機とレーダーの検知範囲の外から検知範囲に戻ってくる生体とを模式的に示す平面図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態における室内機とレーダーの死角から検知範囲に戻ってくる生体とを模式的に示す平面図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態に係るレーダー制御モードにおける室内機の制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、
図1乃至
図13を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0014】
図1は、第1の実施形態に係る空気調和機1の構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、空気調和機1は、室内機10と室外機100とを有する。室内機10は、例えば、室内に配置される。室外機100は、例えば、屋外に配置される。
【0015】
本実施形態の空気調和機1の室内機10は、レーダー2と、複数の風向板25,29と、通風部材26と、室内機制御部80とを有する。言い換えると、レーダー2、風向板25,29、通風部材26、及び室内機制御部80は、室内機10に設けられる。レーダー2は、センサの一例である。風向板25,29及び通風部材26は、ルーバーとも称され得る。室内機制御部80は、制御部の一例である。
【0016】
室内機10は、レーダー2を用いて、室内機10が設置された室内に存在する検知対象の検知を行う。本実施形態において、検知対象は、生体CR、家具のような物体、及び壁を含む。このため、空気調和機1は、レーダー2によって、室内機10が設置されている部屋(室内)の容積及び形状も検知可能である。生体CRは、大人、子供、幼児、及び動物を含む。
【0017】
本実施形態において、空気調和機1は、レーダー2によって検知された検知対象のうち生体CRの有無、生体CRの数、及び生体CRの形状情報(例えば、大きさ)に関する情報を取得する。空気調和機1は、当該情報に基づき、室内に存在する生体CRに適した風(空調空気)を提供するように、制御態様を決定することができる。
【0018】
例えば、空気調和機1は、レーダー2の検知結果に基づき、室内で動く検知対象を生体CRと見なす(判定する)ことができる。空気調和機1は、検知対象が室内に進入してきた場合、その進入動作の検知により、当該検知対象を生体CRであると認識し、室内機10の制御に反映させることができる。
【0019】
空気調和機1は、検知対象が移動していなかった場合でも、検知対象が動いたときに当該検知対象を生体CRであると認識して室内機10の制御に反映させることができる。一方、空気調和機1は、家具及び壁のような継続的に静止状態を保つものは、非生体であると見なし、室内機10の制御の反映対象から除く。なお、生体CRか否かの判定は、この例に限られない。例えば、空気調和機1は、検知対象の形状や脈動に基づいて当該検知対象を生体CRと見なしても良い。また、空気調和機1は、赤外線センサのような他のセンサの検知結果と合わせて、検知対象が生体CRか否かの判定を行っても良い。
【0020】
空気調和機1の操作端末94aは、室内に存在する生体CRから操作指示を受け付け、受け付けられた操作指示に応じて、室内機10に指令を送信する。操作端末94aは、例えばリモートコントローラである。また、操作端末94aは、例えば、空気調和機1を制御するためのアプリケーションで動作するスマートフォンでも良い。
【0021】
室内機制御部80は、操作端末94aから受信された指令に応じて、空気調和処理を行うとともに、レーダー2を用いて検知された生体CRに応じた制御を行うことができる。空気調和機1は、レーダー2による検知結果に基づき実質的に室内機10を自動制御する「レーダー制御モード」と、レーダー2を利用せずにユーザが操作端末94aを用いた操作によって室内機10の制御(設定)を行う「通常制御モード」とを備える。レーダー制御モードは、追跡制御モードの一例である。
【0022】
レーダー制御モードにおいて、レーダー2は、室内機制御部80による制御の下、室内における検知対象(生体CR)の位置を連続的又は断続的に検知する。室内機制御部80は、検知される生体CRの位置を追跡しながら、生体CRに向かう風、又は逆に生体CRを避ける風を送るように、風向板25,29及び通風部材26を制御する。
【0023】
室内機制御部80は、室内機10が風(空調空気)を吹き出す向きの制御を風向板25,29の動作制御によって行う。これにより、空気調和機1は、室内機10が風を吹き出す方向を、室内に存在する生体CRの移動に応じて動的に変更することができるので、室内に存在する生体CRの快適性を動的に向上することができる。
【0024】
具体的には、室内機10は、室内から吸い込んだ空気に対して空気調和処理を行い、空気調和処理が施された空調空気(風)を室内に吹き出す。空気調和処理は、例えば、吸熱処理(冷房)、加熱処理(暖房)、除湿処理、加湿処理、送風処理、及び空気清浄処理等を含む。吸熱処理、加熱処理、除湿処理、加湿処理、送風処理、及び空気清浄処理のそれぞれは、空気調和機1の運転モード(主運転モード)としての、冷房運転モード、暖房運転モード、除湿運転モード、加湿運転モード、送風運転モード、及び空気清浄運転モードに対応する。
【0025】
主運転モードは、制御モード(レーダー制御モード、通常制御モード)と組み合わせられる。空気調和機1は、レーダー制御モードにおいて、冷房運転モード、暖房運転モード、除湿運転モード、加湿運転モード、送風運転モード、及び空気清浄運転モードのいずれのモードも選択し得る。通常制御モードについても同様である。
【0026】
空気調和機1は、補助運転モードとして、無風感モードを有する。無風感モードにおいて、空気調和機1は、室内機10が風を吹き出す際に二種類の流速の風を混在させることで広範囲に拡散する乱流を発生させて、放出される風を全体的に緩やかな風(いわゆる無風感(登録商標)の風)にする。補助運転モードは、制御モード及び主運転モードと組み合わせ可能である。
【0027】
空気調和機1は、主運転モードとして、自動運転モードを有しても良い。空気調和機1は、室温センサで室内の温度を検知する。空気調和機1は、自動運転モードにおいて、検知温度が設定温度より高ければ、暖房運転モードで動作し、検知温度が設定温度より低ければ、暖房運転モードで動作するようにしても良い。
【0028】
室内機10は、熱交換器22、ファン23、及び受信装置94をさらに有する。また、室内機10は、室内機制御部80によって制御される複数の駆動回路81~83及び複数のモータ84~87をさらに有する。
【0029】
室外機100は、熱交換器122、ファン123、四方弁124、圧縮機125、及び室外機制御部180を有する。また、室外機100は、室外機制御部180によって制御される複数の駆動回路181~183及び複数のモータ184~186をさらに有する。
【0030】
室内機10において、ファン23は、熱交換器22の近傍に位置する。ファン23は、室内機10の吸込み口を介して室内から吸い込んだ空気を熱交換器22へ導くとともに、熱交換器22で熱交換された空調空気を室内機10の吹出し口へ導く。室内機制御部80は、駆動回路81を制御することにより、ファン23を回転させるモータ84を駆動する。室内機制御部80は、ファン23の回転数を変更可能である。
【0031】
熱交換器22は、例えば冷媒配管と複数のフィンとを有する。熱交換器22は、当該熱交換器22の近傍を通る冷媒配管に熱的に接続される。熱交換器22は、室内から吸い込まれた空気と冷媒との間で熱交換を行う。
【0032】
室外機100において、ファン123は、熱交換器122の近傍に位置する。ファン123は、外気を吸い込んで熱交換器122へ導くとともに、熱交換器122で熱交換された外気を室外機100の外へ排出する。室外機制御部180は、駆動回路181を制御することにより、ファン123を回転させるモータ184を駆動する。室内機制御部80は、ファン123の回転数を変更可能である。
【0033】
熱交換器122は、例えば冷媒配管と複数のフィンとを有する。熱交換器122は、当該熱交換器122の近くを通る冷媒配管に熱的に接続される。熱交換器122は、外気と冷媒との間で熱交換を行う。
【0034】
四方弁124は、冷媒配管に設けられる。四方弁124は、室外機制御部180による制御に応じて、冷媒配管における冷媒の流路を冷房側と暖房側とで切り替え可能である。室外機制御部180は、駆動回路182を制御することにより、四方弁124を切り替えるモータ185を駆動する。室内機制御部80は、四方弁124を冷房側と暖房側とで切り替え可能である。
【0035】
圧縮機125は、冷媒配管に設けられ、冷媒を圧縮して冷媒配管に送り出す。室外機制御部180は、駆動回路183を制御することにより、圧縮機125に冷媒の圧縮サイクル動作を行わせるモータ186を駆動する。室内機制御部80は、室外機制御部180を介して、圧縮機125のサイクル数(単位時間当たりの圧縮サイクルの実行回数)を変更可能である。
【0036】
冷房運転モードの空気調和機1において、室内機制御部80は、室外機制御部180を介して、四方弁124を冷房側に切り替える。空気調和機1は、熱交換器22で吸熱処理を行い、室内の空気から冷媒に熱を吸収させ、吸熱された空調空気を室内へ吹き出す。さらに、空気調和機1は、熱交換器122で放熱処理を行い、冷媒に吸収された熱を外気へ放出させる。
【0037】
暖房運転モードの空気調和機1において、室内機制御部80は、室外機制御部180を介して、四方弁124を暖房側に切り替える。空気調和機1は、熱交換器122で吸熱処理を行い、外気から冷媒に熱を吸収させる。さらに、空気調和機1は、熱交換器22で加熱処理を行い、冷媒に吸収された熱で室内の空気を加熱し、加熱された空調空気を室内へ吹き出す。
【0038】
風向板25,29のそれぞれは、室内機10が吹き出す風をガイドする。風向板25,29のそれぞれは、例えば回転することで、向きを変更可能である。風向板25,29の向きが変更されることで、室内機10が風を吹き出す向き(以下、風向きと称する)が変更される。
【0039】
本明細書では、室内機制御部80は直接的には風向板25,29が向く方向を制御するが、風向板25,29が向く方向と風向きとは、おおむね一致するものとして説明する。すなわち、室内機制御部80は、風向板25,29の向きを調整することで、風向きを調整可能である。風向板25,29は、個別に回転させられることができる。これにより、室内機10は、一方向に風を吹き出すこともできるし、風向板25,29で区画される二つ以上の領域からそれぞれ異なる方向に風を吹き出すこともできる。
【0040】
風向板25は、風向きを上下方向に調整する。風向板29は、風向きを左右方向に調整する。風向板25は、閉じ位置と開き位置との間で回転可能である。閉じ位置に位置する風向板25は、室内機10の吹出し口を閉塞する。開き位置に位置する風向板25は、吹出し口を開放する。風向板25,29は、風向板25が開き位置に位置する状態で風向きを調整する。
【0041】
以下、
図2から
図7を用いて、室内機10のより具体的な構造を説明する。
図2は、第1の実施形態の風向板25が閉じ位置Pc1に位置する室内機10を概略的に示す断面図である。
図3は、第1の実施形態の風向板25が開き位置Po1に位置する室内機10を概略的に示す断面図である。
図4は、第1の実施形態の風向板25が開き位置Po1に位置する室内機10を示す斜視図である。
【0042】
各図面に示されるように、本明細書において、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、室内機10の幅に沿って設けられる。Y軸は、室内機10の奥行に沿って設けられる。Z軸は、室内機10の高さに沿って設けられる。
【0043】
さらに、本明細書において、X方向、Y方向及びZ方向が定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向と、X軸の矢印の反対方向である-X方向とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向とを含む。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向とを含む。本実施形態において、+Z方向は上方向であり、-Z方向は下方向である。
【0044】
図2に示すように、室内機10は、筐体21を有する。筐体21は、X方向に延びた略直方体状に形成される。なお、筐体21は、他の形状に形成されても良い。筐体21は、例えば、室内の壁に取り付けられる。筐体21は、上面21aと下面21bとを有する。上面21aは、筐体21の上方向の端部又はその近傍に設けられ、略上方向に向く。下面21bは、筐体21の下方向の端部又はその近傍に設けられ、略下方向に向く。
【0045】
筐体21に、通風路31、吸込み口32、及び吹き出し口33が設けられる。通風路31は、筐体21の内部に設けられる。吸込み口32は、例えば、筐体21の上面21aに開口する。吹き出し口33は、例えば、筐体21の下面21bに開口する。吸込み口32及び吹き出し口33は、筐体21の他の部分に開口しても良い。
【0046】
室内機10は、通風路31に風を通すことができる。吸込み口32は、通風路31の一方の端に設けられ、通風路31を室内機10の外部に連通する。吹き出し口33は、通風路31の他方の端に設けられ、通風路31を室内機10の外部に連通する。言い換えると、通風路31は、筐体21の内部において、吸込み口32と吹き出し口33との間に設けられる。
【0047】
熱交換器22は、通風路31に設けられる。熱交換器22は、通風路31において周囲の気体と熱交換を行う。これにより、熱交換器22は、冷房運転時に通風路31を流れる風を冷却し、暖房運転時に通風路31を流れる風を加熱する。
【0048】
ファン23は、通風路31に設けられる。ファン23は、X方向に延びる回転軸Axfまわりに回転することで、通風路31において吸込み口32から吹き出し口33へ風を送る。これにより、室内機10は、吸込み口32から室内の空気を通風路31へ吸い込み、吹き出し口33から通風路31の空気(風)を吹き出す。このため、本明細書では、通風路31において吸込み口32に近い側を上流、吹き出し口33に近い側を下流と称する。
【0049】
ファン23は、熱交換器22の下流に位置する。このため、ファン23が風を生じさせると、吸込み口32から吸い込まれた空気が熱交換器22のフィンを通過する。これにより、通風路31を流れる空気が熱交換器22と熱交換を行う。
【0050】
室内機10は、フィルタ24をさらに有する。フィルタ24は、吸込み口32、又は通風路31における吸込み口32の近傍に設けられる。フィルタ24は、熱交換器22の上流に位置する。
【0051】
フィルタ24は、筐体21の内部から吸込み口32を覆う。フィルタ24は、例えば、吸込み口32から吸い込まれた空気を濾過し、当該空気中の塵埃を捕捉する。フィルタ24は、HEPAフィルタを有しても良い。
【0052】
本実施形態の室内機10は、二つの風向板25(25A,25B)を有する。なお、風向板25の数は、この例に限られない。風向板25A,25Bのそれぞれは、風向きを上下方向に調整する部材であり、上下ルーバーとも称され得る。
【0053】
風向板25A,25Bのそれぞれは、軸部41と板部42とを有する。軸部41は、X方向に延びる略円柱状に形成される。軸部41は、X方向に延びる回転軸Axlまわりに回転可能に筐体21に支持される。なお、風向板25A,25Bはそれぞれ、個別の回転軸Axlを有する。板部42は、軸部41から回転軸Axlと略直交する方向に突出する。板部42は、X方向に延びる略矩形の板状に形成される。
【0054】
室内機制御部80は、
図1に示す駆動回路82を制御することにより、風向板25A,25Bを回転させるモータ85を駆動する。室内機制御部80は、風向板25A,25Bを
図2に示される閉じ位置Pc1と
図3に示される開き位置Po1との間で個別に回転させる。
【0055】
図3に示すように、開き位置Po1に位置する風向板25Aは、第1の流路C1を開放する。開き位置Po1に位置する風向板25Bは、第2の流路C2を開放する。第1の流路C1及び第2の流路C2のそれぞれは、吹き出し口33の一部である。すなわち、開き位置Po1に位置する風向板25A,25Bは、吹き出し口33の少なくとも一部を開放する。
【0056】
開き位置Po1は、風向板25A,25Bが吹き出し口33の一部を開放する種々の位置を含む。例えば、開き位置Po1は、
図3のように風向板25A,25Bが略水平方向に向く位置と、風向板25A,25Bが下方に向く位置と、これら二つの位置の間の複数の位置とを含む。すなわち、風向板25A,25Bは、略水平方向に向く位置と、下方に向く位置との間で回動可能である。
【0057】
開き位置Po1に位置する風向板25A,25Bは、当該風向板25A,25Bの向きにより、上下方向における風向きを調整する。すなわち、
図3のように風向板25A,25Bが略水平方向に向くことで、室内機10は略水平方向に風を吹き出す。一方、風向板25A,25Bが下方に向くことで、室内機10は下方向に風を吹き出す。
【0058】
図2に示すように、閉じ位置Pc1に位置する風向板25Aは、第1の流路C1を覆う。閉じ位置Pc1に位置する風向板25Bは、第2の流路C2を覆う。すなわち、閉じ位置Pc1に位置する風向板25A,25Bは、吹き出し口33の少なくとも一部を覆う。
【0059】
図4に示すように、室内機10は、複数の風向板29を有する。複数の風向板29のそれぞれは、例えば、略Z方向に延びる回転軸によって支持される。室内機制御部80は、
図1に示す駆動回路82を制御することにより、複数の風向板29を回転させるモータ86を駆動する。
【0060】
図4に示すように、複数の風向板29は、例えば、複数の風向板29-1~29-k,29-(k+1)~29-2kを含む。複数の風向板29-1~29-k,29-(k+1)~29-2kは、それぞれ、風向きを左右方向(-X方向、+X方向)に調整する部材であり、左右ルーバーとも称され得る。なお、-X側の風向板29-1~29-kと+X側の風向板29-(k+1)~29-2kとは、室内機制御部80により個別に回転させられても良い。
【0061】
-X側の風向板29-1~29-kは、共通の回転軸に連結される。室内機制御部80は、駆動回路82を介してモータ86を駆動することで、風向板29-1~29-kを一括して回転させる。
【0062】
+X側の風向板29-(k+1)~29-2kは、共通の回転軸に連結される。室内機制御部80は、駆動回路82を介してモータ86を駆動させ、風向板29-(k+1)~29-2kを一括して回転させる。
【0063】
図5は、第1の実施形態の通風部材26が閉じ位置Pc2に位置する室内機10を概略的に示す断面図である。風向板25Aが開き位置Po1に位置するとき、通風部材26は、
図5に示す閉じ位置Pc2と、
図2に示す開き位置Po2との間で移動可能である。
【0064】
図5に示すように、閉じ位置Pc2に位置する通風部材26は、開き位置Po1に位置する風向板25Aによって開放された吹き出し口33の少なくとも一部(第1の流路C1)を覆う。なお、通風部材26は、第2の流路C2を覆っても良い。
【0065】
図6は、第1の実施形態の通風部材26を示す斜視図である。
図6に示すように、通風部材26は、軸部51と板部52とを有する。軸部51は、X方向に延びる略円柱状に形成される。軸部51は、X方向に延びる回転軸Axcまわりに回転可能に筐体21に支持される。板部52は、軸部51から回転軸Axcと略直交する方向に突出する。板部52は、X方向に延びる略矩形の板状に形成される。
【0066】
室内機制御部80は、
図1に示す駆動回路83を制御することにより、通風部材26を回転させるモータ87を駆動する。室内機制御部80は、通風部材26を閉じ位置Pc2と開き位置Po2との間で移動(回転)させる。なお、通風部材26は、閉じ位置Pc2と開き位置Po2との間で平行移動しても良い。
【0067】
図5に示すように、板部52は、閉じ位置Pc2において通風路31に向く内面52aと、閉じ位置Pc2において外部に向く外面52bと、を有する。板部52に、内面52a及び外面52bに開口する少なくとも一つの通風口56が設けられる。本実施形態の板部52には、複数の通風口56が設けられる。
【0068】
通風部材26が閉じ位置Pc2に位置するとき、第1の流路C1を流れる風は、通風口56を通って吹き出し口33から吹き出される。すなわち、閉じ位置Pc2に位置する通風部材26は、第1の流路C1に挿入され、第1の流路C1の開口率を変更する。
【0069】
図3に示すように、開き位置Po2に位置する通風部材26は、第1の流路C1を開放する。すなわち、通風部材26が開き位置Po2に移動することで、第1の流路C1への通風部材26の挿入が解除され(例えば、第1の流路C1から退避され)、第1の流路C1の開口率が元に戻される。
【0070】
開き位置Po2に位置する通風部材26は、吹き出し口33の近傍に設けられた筐体21の窪み21cに収容される。窪み21cは、通風路31の一部を形成する筐体21の内面21dから窪んでいる。開き位置Po2に位置する通風部材26は、窪み21cに収容されることで、第1の流路C1を流れる風を妨げることを抑制される。
【0071】
室内機制御部80は、補助運転モードとしての無風感モードにおいて、通風部材26を閉じ位置Pc2に配置し、第1の流路C1の開口率を変更する。一方、通風部材26が存在しない第2の流路C2の開口率は元のまま維持される。
【0072】
室内機制御部80は、補助運転モードとしての無風感モードが解除されると、通風部材26を開き位置Po2に移動させる。これにより、通風部材26が第1の流路C1から退避し、第1の流路C1の開口率が元に戻される。
【0073】
図7は、第1の実施形態の無風感モードにおいて室内機10が吹き出す風を模式的に示す断面図である。
図7に示すように、通風部材26が閉じ位置Pc2に位置すると、第1の流路C1の開口率は、通風部材26が開き位置Po2に位置するときに比べて小さくなる。通風部材26が閉じ位置Pc2に位置するとき、ファン23によって通風路31内を移動する風は通風口56を通り、風W1aに変化する。
【0074】
一方、第2の流路C2には、通風部材26が設けられない。第2の流路C2の開口率は、元のまま維持されている。つまり、第2の流路C2から放出される風は、通風部材26を通過しない風W2aとなる。風W2aは、例えば、層流である。第1の流路C1に設けられた通風部材26を通過する風W1aと、通風部材26が設けられない第2の流路C2を通過した風W2aとは、隣接して形成される。
【0075】
第1の流路C1の開口率が小さくなったことに応じて、風W1aの流速が早くなる。このため、風W1aは、風W2aを引き込む。これにより、風W2aが風W1aに当たる。また、乱流に遷移した風W1aは拡散することで、当該風W1aに隣接して流れる風W2aに当たる。このように、流速や状態(層流又は乱流)が異なる風W1a及び風W2aは、隣り合って流れることで、互いに当たる。すなわち、通風部材26(通風口56)を通過しない風W2aと、通風部材26(通風口56)を通過した風W1aとが互いに干渉する。
【0076】
風W1aと風W2aとが互いに当たることで、例えば、風W1a及び風W2aの塊が砕かれ、乱流である風W1aが風W2aに運ばれる。風W1a及び風W2aは、このような種々の相互作用を生じて、広範囲に拡散する混合風Wsを発生させる。
【0077】
別の表現によれば、通風部材26が閉じ位置Pc2に位置するとき、室内機10は、吹き出し口33から通風口56を通って吹き出される風W1aと、吹き出し口33から通風口56と異なる第2の流路C2を通って吹き出される風W2aと、が混合される混合風Wsを室内に吹き出す。なお、室内機10が吹き出した風が混合風Wsになるのであれば、室内機10が吹き出した直後の風が混合風Wsでなくても良い。
【0078】
混合風Wsは、乱流である。室内機10から吹き出される混合風Wsは、吹き出し口33から放出された直後の風よりも自然の風(いわゆる、無風感の風)に近い状態になる。通風部材26は、第1の流路C1及び第2の流路C2のいずれか一方に設けられれば良いため、部品点数の増加、室内機10の構成の複雑化、コスト上昇を抑制することができる。また、通風部材26は、簡素な構造を有し、コストの上昇及び通風部材26の強度低下を抑制することができる。
【0079】
以上の例では、室内機10は、二つの風向板25、一つの通風部材26、及び複数の風向板29を有しているが、風向板25,29及び通風部材26は、この例に限られない。例えば、室内機10は、X方向に並べられた複数の風向板25と、X方向に並べられた複数の通風部材26と、X方向に並べられた複数の風向板29とを有しても良い。この場合、室内機制御部80は、複数の風向板25,29の向きを個別に制御することで、風向板25,29で区画される二つ以上の領域からそれぞれ異なる方向に風を吹き出すことができる。また、室内機制御部80は、複数の通風部材26の位置を個別に閉じ位置Pc2又は開き位置Po2に設定することで、それぞれが通風部材26に覆われ又は開放された二つ以上の領域から互いに異なる性質の風(層流又は無風感の風)を吹き出すことができる。
【0080】
図1に示すレーダー2は、室内における検知対象(例えば生体CR)の位置、移動速度、角度、及び形状を検知可能である。なお、レーダー2は、室内の全域において検知対象を検知可能でなくても良い。例えば、レーダー2は、当該レーダー2の最大検知距離よりも当該レーダー2から離れた検知対象、物陰に隠れた検知対象、及び当該レーダー2の死角に位置する検知対象を検知できなくても良い。
【0081】
レーダー2は、超音波レーダー、ミリ波レーダー、マイクロ波レーダー、又はドップラーLiDARのようなドップラーレーダである。なお、レーダー2は、この例に限られない。また、空気調和機1が備えるセンサは、レーダー2に限られず、光学センサ又は赤外線センサのような生体CRを検知可能な他のセンサであっても良い。
【0082】
レーダー2は、送信部2aと、受信部2bと、信号処理部2cとを有する。レーダー2は、ミリ波若しくはマイクロ波のような電磁波、音波、又は可視光、赤外線、若しくは紫外線のような光を信号処理部2cで生成して、送信部2aから室内に送信する。レーダー2は、室内に存在する検知対象(生体CR)によって反射した反射波を受信部2bで受信し、当該反射波に対応した信号を信号処理部2cから出力する。
【0083】
レーダー2は、例えば、室内機10の筐体21の前面のいずれかの位置、又は室内における検知対象(生体CR)の位置を検知しやすい他の位置に設けられる。レーダー2は、
図4に破線で示されように、筐体21の前方の部分におけるX方向中央近傍の位置に埋め込まれていても良い。送信部2a及び受信部2bは、筐体21の表面から露出する。
【0084】
図8は、第1の実施形態の室内機制御部80を機能的に示すブロック図である。室内機制御部80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はマイクロコントローラのような制御装置と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、フラッシュメモリのような記憶装置とを有するコンピュータである。なお、室内機制御部80は、この例に限られない。
【0085】
例えば、室内機制御部80のCPUは、ROM又は記憶装置にインストールされ記憶された制御プログラムを読み出し、当該プログラムに従って各種制御や演算処理を実行するモジュールを実現する。室内機制御部80は、運転モード制御部80a、駆動回路制御部80b、レーダー制御部80c、及び生体検知部80dのようなモジュールを備える。なお、これらの各モジュールは、ハードウェアにより実現されても良い。また、各モジュールは、機能毎に統合や分割されても良い。
【0086】
運転モード制御部80aは、室内機10の運転モードとして上述した制御モード(レーダー制御モード及び通常制御モード)、主運転モード(冷房運転モード、暖房運転モード、除湿運転モード、加湿運転モード、送風運転モード、及び空気清浄運転モード)、及び補助運転モード(無風感モード)のそれぞれの切り替えを行う。これらの切り替え動作は、ユーザが操作する操作端末94aからの指令信号に基づいて実行されたり、レーダー2の検知結果に基づいて自動的に行われたりする。
【0087】
駆動回路制御部80bは、運転モード制御部80aにおいて設定された主運転モード、制御モード、及び補助運転モードに基づき、駆動回路81~83を介してファン23、風向板25,29、及び通風部材26の動作制御を行う。通常制御モードにおいては、駆動回路制御部80bは、ユーザの操作に基づき、ファン23、風向板25,29、及び通風部材26の動作制御を行う。
【0088】
駆動回路制御部80bは、駆動回路82を介してモータ85を制御して風向板25の左右方向の位置制御を行う。また、駆動回路制御部80bは、駆動回路82を介してモータ86を制御して風向板29の上下方向の位置制御を行う。駆動回路制御部80bは、風向板25の方向制御と風向板29の方向制御とを組み合わせて行うことにより、吹き出し口33から吹き出される風の方向(到達位置)を適宜変更することができる。
【0089】
駆動回路制御部80bは、駆動回路81を介してモータ84を制御することでファン23の回転速度を変更し、室内機10が吹き出す風の流速を変更することができる。補助運転モードとしての無風感モードにおいて、駆動回路制御部80bは、駆動回路83を介してモータ87を制御し、通風部材26を閉じ位置Pc2に移動させる。これにより、無風感モードにおいて、室内機10は、乱流(いわゆる無風感の風)を吹き出し口33から吹き出すことができる。このように、駆動回路制御部80bは、室内機10が吹き出す風の質を変更することができる。
【0090】
レーダー制御部80cは、レーダー2(送信部2a、受信部2b)の送受信を制御するとともに、信号処理部2cから送信波及び受信波の解析結果(検知結果)を取得する。なお、レーダー2は、室内機10が操作端末94aの操作によって起動した後に検知処理を有効としても良いし、室内機10の起動にかかわらず、常時スタンバイモードで待機して、例えば室内で物体(検知対象)の移動(動き)を検知した場合、検知対象の有無、検知対象の数、検知対象の形状情報等を取得する通常起動するようにしても良い。
【0091】
生体検知部80dは、レーダー制御部80cが取得したレーダー2の検知結果に基づき、例えば、検知対象の中から生体CRを特定するとともに、特定した生体ごとにID(識別子)を付し、例えばRAM又は記憶装置に記憶する。なお、生体検知部80dは、例えば、動きによる変化量が所定の閾値以上の場合に検知対象を生体CRと見なし、その動きを検知したとき又は変化量が所定の閾値を超えたときにIDを生体CRに付す。また、例えば、室内に新たに進入してきた検知対象を生体CRと見なし、室内に進入したとき又はその直後にIDを生体CRに付す。以降、生体検知部80dは、例えば、生体CRが室内から退去したり室内に存在する死角に入ったりすることで生体CRを見失って所定期間が経過するまで、IDを維持し監視する。
【0092】
生体検知部80dは、室内に存在する有効なIDを追跡する。生体検知部80dは、追跡中の検知対象(生体CR、ID)が死角に入り、見失った場合は、所定期間(例えば30分)IDを維持し、同じ死角から現れた場合に同じIDを有効にするようにしても良い。この場合、室内機制御部80は、有効なIDを見失う直前の風の制御態様を継続するようにしても良い。また、生体検知部80dは、所定期間の経過後に死角から現れた検知対象(生体CR)に新たなIDを付しても良い。また、IDが付された検知対象(生体CR)が、室内の出入口(部屋の出入口)から退去した場合、生体検知部80dはIDを無効にしても良い。
【0093】
レーダー制御モードにおける駆動回路制御部80bは、レーダー2によって検知可能な室内における検知対象(生体CR)の位置に応じて、ファン23、風向板25,29、及び通風部材26を制御し、吹き出し口33から吹き出す風の方向や吹き出す風の質を制御する。なお、レーダー制御モードにおける駆動回路制御部80bは、生体CRの位置のみならず、他の条件に応じて、ファン23、風向板25,29、及び通風部材26を制御しても良い。
【0094】
本実施形態の空気調和機1は、複数のレーダー制御モードを備える。運転モード制御部80aは、複数のレーダー制御モードの中でレーダー制御モードを切り替え可能である。駆動回路制御部80bは、複数のレーダー制御モードのうち選択されたレーダー制御モードで、レーダー2により検知された生体CRに対する風向板25,29を制御する。
【0095】
複数のレーダー制御モードは、例えば、風当てモード及び風避けモードを含む。なお、レーダー制御モードは、この例に限られない。風当てモード又は風避けモードのそれぞれも、追跡制御モードの一例である。なお、レーダー制御モードは、他のモードを含んでも良い。
【0096】
風当てモードにおいて、駆動回路制御部80bは、例えば、レーダー2により検知されるとともに生体検知部80dによって追跡されている生体CRに向けて室内機10が風を吹き出すように、風向板25,29の向きを制御する。すなわち、駆動回路制御部80bは、生体CRに常に風が当たるように風向板25,29を制御する。風当てモードにおいて、空気調和機1は、例えば、冷房制御時の清涼感を向上させることができる。
【0097】
風避けモードにおいて、駆動回路制御部80bは、例えば、室内機10が吹き出す風がレーダー2により検知されるとともに生体検知部80dによって追跡されている生体CRを避けるように、風向板25,29の向きを制御する。言い換えると、駆動回路制御部80bは、生体CRが存在しない位置(不在領域)に向けて室内機10が風を吹き出すように風向板25,29を制御する。このため、風避けモードにおいて、空気調和機1は、生体CRに直接的に風が当たることを抑制し、生体CRの違和感を軽減させることができる。
【0098】
風当てモード及び風避けモードにおける風向板25,29の動作制御は、上述の例に限られない。例えば風当てモード又は風避けモードにおいて、駆動回路制御部80bは、周期的に風向きを変化させ、生体CRに風が当たる状態と風が当たらない状態を交互に生じさせても良い。
【0099】
図9は、第1の実施形態のレーダー制御モード(風当てモード又は風避けモード)における室内機10の制御の一例を示すフローチャートである。以下、
図9を参照して、レーダー制御モードにおける室内機10の制御の一例について説明する。なお、レーダー制御モードにおける室内機10の制御は、以下に説明される例に限られない。
【0100】
まず、例えばユーザの操作により運転モード制御部80aが制御モードをレーダー制御モードに設定すると、生体検知部80dは、生体CRが検知されたか否かを判定する(S101)。上述のように、生体検知部80dは、室内で動く検知対象が存在する場合、当該検知対象を生体CRと見なし、当該生体CRにIDを付して追跡する。一方、生体検知部80dは、継続的に移動しない検知対象については生体CRと見なさない。
【0101】
生体検知部80dがレーダー2により生体CRを検知した場合(S101:Yes)、駆動回路制御部80bは、駆動回路82を介してモータ85,86を駆動し、風向板25,29の向きを変更する(S102)。
【0102】
風当てモードにおいて、駆動回路制御部80bは、駆動回路82を介してモータ85,86を駆動し、風向板25,29を生体CRに向ける。風避けモードにおいて、駆動回路制御部80bは、駆動回路82を介してモータ85,86を駆動し、風向板25,29を生体CRが存在しない位置(不在領域)に向ける。
【0103】
次に、運転モード制御部80aは、レーダー制御モードをオフにする指令があったか否かを判定する(S103)。具体的には、運転モード制御部80aは、例えばユーザが操作する操作端末94aから、レーダー制御モードから他のモードに制御モードを切り替える指令信号を受信しているか否かを判定する。レーダー制御モードが終了せずに継続する場合(S103:No)、S101に戻る。
【0104】
S101において、生体検知部80dがレーダー2により生体CRを検知しなかった場合(S101:No)、駆動回路制御部80bは、風向板25,29の向きを維持する(S104)。すなわち、駆動回路制御部80bは、レーダー制御モードにおいて、レーダー2が検知していた生体CRを検知しなくなった場合に、当該レーダー2が生体CRを検知しなくなったときの風向板25,29の向きを維持する。
【0105】
次に、生体検知部80dは、最後に生体CRを検知したときから所定の時間が経過したか否かを判定する(S105)。最後に生体CRを検知したときから所定の時間が経過している場合(S105:Yes)、駆動回路制御部80bは、駆動回路82を介してモータ85,86を駆動し、所定の設定で風向板25,29を制御する(S106)。
【0106】
例えば、駆動回路制御部80bは、駆動回路82を介してモータ85,86を駆動し、風向板25,29を所定の方向に向ける。当該所定の方向は、空気調和機1の製造時に設定され、又はユーザが操作端末94aを操作することによって設定されて、例えば室内機制御部80の記憶装置に記憶されている。駆動回路制御部80bは、風向板25,29をスイングさせても良い。すなわち、駆動回路制御部80bは、レーダー制御モードにおいて、レーダー2が検知していた生体CRを検知しなくなったときから所定の時間が経過した場合に、風向板25,29を所定の向きに配置し、又は風向板25,29をスイングする。
【0107】
レーダー2が検知していた生体CRを検知しなくなったときから所定の時間が経過した場合、室内機制御部80は、さらに他の制御を行っても良い。例えば、運転モード制御部80aが、無風感モードをオフにしても良い。これにより、駆動回路制御部80bが駆動回路83を介してモータ87を駆動し、通風部材26を閉じ位置Pc2から開き位置Po2に移動させる。
【0108】
S106の後、運転モード制御部80aがS103の判定を行う。一方、S105において、最後に生体CRを検知したときから所定の時間が経過していない場合(S105:No)にも、運転モード制御部80aがS103の判定を行う。
【0109】
S103においてレーダー制御モードの終了指令があった場合(S103:Yes)、レーダー制御モードがオフにされ、駆動回路制御部80bが風向板25,29の向きを維持する(S107)。すなわち、駆動回路制御部80bは、レーダー制御モードがオフにされた場合に、レーダー制御モードがオフにされたときの風向板25,29の向きを維持する。
【0110】
図10は、第1の実施形態における室内機10と室内に戻ってくる生体CRとを模式的に示す平面図である。
図10に示すように、出入口Dがある場合、生体CRは、出入口Dから室外に出た後、多くの場合に当該出入口Dから室内に戻ってくる。
【0111】
例えば風当てモードにおいて、風向板25,29は生体CRに向く。生体CRが出入口Dから室外に出るとき、風向板25,29はほぼ出入口Dに向いている。生体CRが出入口Dから室外に出ると、生体検知部80dは、レーダー2により生体CRを検知しなくなる。この場合、上述のように、風向板25,29の向きは維持され、風向板25,29は出入口Dに向いている。
【0112】
生体CRが出入口Dから室内に戻ってくるときも、風向板25,29は出入口Dに向いている。このため、生体CRは、室内に戻る直前までレーダー2に検知されていないにもかかわらず、出入口Dから室内に戻ったときに直ちに風を受けることができる。一方、風避けモードにおいては、室内機10は出入口Dに向けて風を吹き出していないため、出入口Dから室内に戻った生体CRが直接的に風を受けずに済む。
【0113】
図11は、第1の実施形態における室内機10と障害物OBの物陰から出てくる生体CRとを模式的に示す平面図である。
図11に示すように、生体CRとレーダー2との間に家具や柱のような障害物OBが存在する場合、生体検知部80dは、レーダー2により生体CRを検知できないことがある。
【0114】
例えば風当てモードにおいて、風向板25,29は生体CRに向く。生体CRが障害物OBの物陰に入るとき、風向板25,29はほぼ障害物OBに向いている。生体CRが障害物OBの物陰に入ると、生体検知部80dは、レーダー2により生体CRを検知しなくなる。この場合、上述のように、風向板25,29の向きは維持され、風向板25,29は障害物OBに向いている。
【0115】
生体CRが障害物OBの物陰から出てくるときも、風向板25,29は障害物OBに向いている。このため、生体CRは、障害物OBの物陰から出る直前までレーダー2に検知されていないにもかかわらず、障害物OBの物陰から出たときに直ちに風を受けることができる。
【0116】
図12は、第1の実施形態における室内機10とレーダー2の検知範囲ARの外から検知範囲ARに戻ってくる生体CRとを模式的に示す平面図である。
図13は、第1の実施形態における室内機10とレーダー2の死角から検知範囲ARに戻ってくる生体CRとを模式的に示す平面図である。
【0117】
図12及び
図13に示すように、レーダー2から当該レーダー2の最大検知距離よりも離間した位置やレーダー2の死角が室内に存在することで、レーダー2の検知範囲ARの外となる部分が室内に存在することがある。このため、生体検知部80dは、レーダー2から当該レーダー2の最大検知距離よりも離れた生体CRや、レーダー2の死角に位置する生体CRをレーダー2により検知できないことがある。なお、空気調和機1は、レーダー2の死角を低減するように複数のレーダー2を有しても良い。
【0118】
一般的に、レーダー2の検知範囲ARは、室内の全て又はほとんどの範囲を占める。このため、レーダー2の検知範囲ARから外れた範囲は、室内において狭い範囲となる。従って、レーダー2から所定の距離よりも離れた生体CRや、レーダー2の死角に入った生体CRは、検知範囲ARから出るときとおおよそ同一の位置を通って検知範囲ARに戻ってくる。
【0119】
生体CRが検知範囲ARに戻ってくるとき、風向板25,29は、生体CRが検知範囲ARから出た位置に向いている。このため、生体CRは、検知範囲ARに戻ってくる直前までレーダー2に検知されていないにも関わらず、検知範囲ARに戻ってきたときに直ちに風を受けることができる。検知範囲ARから出るときと異なる位置を通って生体CRが検知範囲ARに戻ってきたとしても、風向板25,29が生体CRに向くまでの時間は短くなる。
【0120】
以上説明された第1の実施形態に係る空気調和機1において、室内機制御部80は、レーダー制御モードで風向板25,29を制御可能である。レーダー制御モードでは、室内機制御部80は、室内機10が吹き出す風がレーダー2に検知された生体CRを避けるように、又は、室内機10がレーダー2に検知された生体CRに向けて風を吹き出すように、風向板25,29の向きを制御する。室内機制御部80は、レーダー制御モードにおいて、レーダー2が検知していた生体CRを検知しなくなった場合に、レーダー2が生体CRを検知しなくなったときの風向板25,29の向きを維持する。例えば、出入口Dから室外に出たり障害物OBの物陰に入ったりしてレーダー2の検知範囲ARから外れた生体CRは、出入口Dのようなレーダー2の検知範囲ARから外れたときの位置と略同一の位置から、レーダー2の検知範囲AR内に戻ってくることが多い。この場合、風向板25,29の向きが維持されているため、室内機10はレーダー2の検知範囲AR内に戻ってきた生体CRに対し、レーダー制御モードで望まれる態様で風を提供することができる。すなわち、レーダー制御モードにおいて風が生体CRを避ける場合、レーダー2の検知範囲AR内に戻ってきた生体CRが直接的に風を受けることを抑制できる。一方、レーダー制御モードにおいて室内機10が生体CRに向けて風を吹き出す場合、レーダー2の検知範囲AR内に戻ってきた生体CRが直ちに風を受けることができる。
【0121】
室内機制御部80は、レーダー制御モードがオフにされた場合に、レーダー制御モードがオフにされたときの風向板25,29の向きを維持する。これにより、室内機は、レーダー制御モードがオフにされたときの態様で風を提供することができる。また、レーダー制御モードにおいて室内機10が生体CRに向けて風を吹き出す場合、ユーザは、風向板25,29の向きが所望の向きになるよう移動した後にレーダー制御モードをオフにすることで、風向板25,29の向きを容易に所望の向きに設定できる。
【0122】
室内機制御部80は、レーダー制御モードにおいて、レーダー2が検知していた生体CRを検知しなくなったときから所定の時間が経過した場合に、風向板25,29を所定の向きに配置し又は風向板25,29をスイングする。これにより、空気調和機1は、室内における温度の偏りを抑制できる。
【0123】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、
図14を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0124】
図14は、第2の実施形態に係るレーダー制御モード(風当てモード又は風避けモード)における室内機10の制御の一例を示すフローチャートである。第2の実施形態における室内機10の制御は、S106の代わりにS206を有し、S107の代わりにS207を有する。
【0125】
S105において最後に生体CRが検知されてから所定の時間が経過している場合(S105:Yes)、運転モード制御部80aは、レーダー制御モードをオフにする(S206)。すなわち、運転モード制御部80aは、レーダー制御モードにおいて、レーダー2が検知していた生体CRを検知しなくなった時から所定の時間が経過した場合に、レーダー制御モードをオフにする。
【0126】
また、S103において、レーダー制御モードの終了指令があり又はS206でレーダー制御モードがオフにされている場合(S103:Yes)、駆動回路制御部80bは、駆動回路82を介してモータ85,86を駆動し、所定の設定で風向板25,29を制御する(S207)。
【0127】
例えば、駆動回路制御部80bは、駆動回路82を介してモータ85,86を駆動し、風向板25,29を所定の方向に向ける。駆動回路制御部80bは、風向板25,29をスイングさせても良い。すなわち、駆動回路制御部80bは、レーダー制御モードがオフにされた場合に、風向板25,29を所定の向きに配置し、又は風向板25,29をスイングする。
【0128】
以上説明された第2の実施形態の空気調和機1において、室内機制御部80は、レーダー制御モードがオフにされた場合に、風向板25,29を所定の向きに配置し又は風向板25,29をスイングする。このため、レーダー制御モードにおいて風が生体CRを避ける場合、ユーザは、レーダー制御モードをオフにすることで、直接的に風を受けることができるようになる。一方、レーダー制御モードにおいて室内機10が生体CRに向けて風を吹き出す場合、ユーザは、レーダー制御モードをオフにすることで、直接的に風を受けることを避けることができる。
【0129】
室内機制御部80は、レーダー制御モードにおいて、レーダー2が検知していた生体CRを検知しなくなったときから所定の時間が経過した場合に、レーダー制御モードをオフにする。これにより、空気調和機1は、室内における温度の偏りを抑制できる。
【0130】
第1の実施形態及び第2の実施形態において、S105、S106、及びS206は、省略されても良い。この場合、最後に生体CRを検知したときから時間が経過したとしても、風向板25,29の向きは、レーダー2が生体CRを検知しなくなったときの向きに維持される。
【0131】
以上の実施形態において、制御部の一例としての室内機制御部80が室内機10に含まれる一方で、室外機制御部180が室外機100に含まれる。しかし、室内機制御部80と室外機制御部180とは、一体化されても良い。また、室内機制御部80と室外機制御部180との両方が、室内機10又は室外機100に設けられても良い。
【0132】
以上の説明において、抑制は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0134】
1…空気調和機、2…レーダー、10…室内機、25,25A,25B,29…風向板、80…室内機制御部、CR…生体。