(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104461
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】包装容器の製造方法および包装容器
(51)【国際特許分類】
B31B 70/84 20170101AFI20240729BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20240729BHJP
B31B 160/20 20170101ALN20240729BHJP
【FI】
B31B70/84
B65D33/38
B31B160:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008674
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田窪 陽子
(72)【発明者】
【氏名】登尾 英浩
【テーマコード(参考)】
3E064
3E075
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064BA17
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA38
3E064BA40
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC01
3E064BC08
3E064BC13
3E064BC18
3E064EA07
3E064FA04
3E064GA01
3E064HA06
3E064HB03
3E064HB04
3E064HM01
3E064HN65
3E064HS04
3E075AA08
3E075BA47
3E075DD12
3E075DD47
3E075DE03
3E075GA05
(57)【要約】
【課題】口部材の強度を向上させる。
【解決手段】本開示に基づく包装容器の製造方法において、金型5は、開口端部111の開口から胴部10内に挿入される内金型51と、内金型51ととともに開口端部111を挟み込む外金型52とを有している。内金型51は、底部12から開口端部111に向かう方向である開口方向DOにおいて開口端部111を受ける受け部511と、開口方向DOにおいて受け部511から窪んでいる凹部512とを有している。配置工程S2では、開口端部111のうちサイドシール部Sを構成する部分であるシール端部111Sを、凹部512と対向するように配置する。成形工程D3では、シール端部111Sと対向した状態の凹部512に樹脂が供給されるように樹脂を射出する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口端部を有する胴部および該胴部の開口端部側とは反対側に位置する底部を有し、前記胴部は、互いに対向する一対のシートが互いに接合されることで形成され、前記一対のシートが互いに接合してなる部分を含むサイドシール部を有する、包装袋と、前記開口端部に接続された口部材とを備える包装容器の製造方法であって、
前記包装袋を準備する工程と、
前記開口端部を金型内に配置する工程と、
前記開口端部が前記金型内に配置された状態で前記金型内に樹脂を射出することで前記口部材を成形する工程とを備え、
前記金型は、前記開口端部の開口から前記胴部内に挿入される内金型と、前記内金型ととともに前記開口端部を挟み込む外金型とを有し、
前記内金型は、前記底部から前記開口端部に向かう方向である開口方向において前記開口端部を受ける受け部と、前記開口方向において前記受け部から窪んでいる凹部とを有し、
前記配置工程では、前記開口端部のうち前記サイドシール部を構成する部分であるシール端部を、前記凹部と対向するように配置し、
前記成形工程では、前記シール端部と対向した状態の前記凹部に前記樹脂が供給されるように前記樹脂を射出する、包装容器の製造方法。
【請求項2】
前記配置工程では、前記開口方向から見て、前記開口端部に内接する仮想円の直径の寸法に対する、前記仮想円と前記シール端部との離隔距離の寸法の比率が、0%超3%未満となるように、前記シール端部を配置する、請求項1に記載の包装容器の製造方法。
【請求項3】
開口端部を有する胴部および該胴部の開口端部側とは反対側に位置する底部を有する包装袋と、
前記開口端部に接続された口部材とを備え、
前記胴部は、互いに対向する一対のシートが互いに接合されることで形成され、前記一対のシートが互いに接合してなる部分を含むサイドシール部を有し、
前記口部材は、前記開口端部に接続された筒部と、前記筒部から径方向外向きに張り出している段部と、前記底部から前記開口端部に向かう方向である開口方向に沿って前記段部から突出する凸部とを有し、
前記凸部は、前記開口方向において前記サイドシール部と並んでいる、包装容器。
【請求項4】
前記開口端部は、前記筒部の径方向外側に位置し、
前記口部材は、前記開口端部のうち前記サイドシール部を構成する部分であるシール端部の端縁に沿って略L字状に延びている延出部をさらに有する、請求項3に記載の包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包装容器の製造方法および包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
包装容器の製造方法および包装容器を開示した文献として、特開2022-106123号公報(特許文献1)がある。特許文献1に開示された包装容器は、自立可能な包装袋と、口部材と、を備える。包装袋は、一対のサイドシール部を有する。口部材は、開口部を開いた状態に保持するように開口部に接続された筒部と、サイドシール部の表面が収容部の外周面から離間するようにサイドシール部を保持する保持部と、を有する。
【0003】
包装容器は、コアおよびキャビティを用いて射出成形により形成される。具体的には、まず、コアに包装袋が取り付けられ、そのコアに対してキャビティがセットされる。この状態において、コアおよびキャビティ間に挟まれた開口部の周囲に口部材を構成する樹脂材料が充填される。これにより、包装袋の開口部に口部材が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
口部材のうち、包装袋の開口方向においてサイドシール部と並ぶ部位は比較的強度が低い。
【0006】
本開示は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、口部材の強度が向上した包装容器およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に係る包装容器の製造方法は、開口端部を有する胴部および該胴部の開口端部側とは反対側に位置する底部を有し、胴部は、互いに対向する一対のシートが互いに接合されることで形成され、一対のシートが互いに接合してなる部分を含むサイドシール部を有する、包装袋と、開口端部に接続された口部材とを備える包装容器の製造方法である。当該包装容器の製造方法は、包装袋を準備する工程と、開口端部を金型内に配置する工程と、開口端部が金型内に配置された状態で金型内に樹脂を射出することで口部材を成形する工程とを備えている。金型は、開口端部の開口から胴部内に挿入される内金型と、内金型ととともに開口端部を挟み込む外金型とを有している。内金型は、底部から開口端部に向かう方向である開口方向において開口端部を受ける受け部と、開口方向において受け部から窪んでいる凹部とを有している。配置工程では、開口端部のうちサイドシール部を構成する部分であるシール端部を、凹部と対向するように配置する。成形工程では、シール端部と対向した状態の凹部に樹脂が供給されるように樹脂を射出する。
【0008】
上記の包装容器の製造方法によれば、内金型の凹部に対応する凸部が口部材に形成される。凸部は、開口方向においてサイドシール部と並ぶように配置されるため、口部材が撓んだときなどに、口部材のうちサイドシール部と開口方向に並ぶ部位から口部材が破損することが抑制される。よって、口部材の強度が向上する。さらに、上記の包装容器の製造方法によれば、内金型の受け部により、金型に対して包装袋の開口方向における位置決めが容易になるとともに、シール端部が受け部より開口方向に突出した場合においても、シール端部が内金型の凹部に嵌まる。そして、凹部に対応するように形成された凸部によって、口部材からのシール端部の突き出しが抑制される。
【0009】
上記の包装容器の製造方法においては、配置工程で、開口方向から見て、開口端部に内接する仮想円の直径の寸法に対する、当該仮想円とシール端部との離隔距離の寸法の比率が、0%超3%未満となるように、シール端部を配置することが好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、開口端部の開口の形状が真円に近づく。これにより、略円環状の外形を有する口部材への接続が容易となる。一方で、開口端部の撓みは比較的大きくなり、配置工程においてシール端部が受け部より開口方向に突出しやすくなる。しかしながら、上記製造方法によれば、このようにシール端部が突出してもシール端部は凹部内に位置する。凹部に対応するように形成された凸部によって、口部材からのシール端部の突き出しは抑制される。
【0011】
本開示の他の局面に係る包装容器は、包装袋と、口部材とを備えている。包装袋は、開口端部を有する胴部および該胴部の開口端部側とは反対側に位置する底部を有している。口部材は、開口端部に接続されている。胴部は、互いに対向する一対のシートが互いに接合されることで形成され、一対のシートが互いに接合してなる部分を含むサイドシール部を有している。口部材は、開口端部に接続された筒部と、筒部から径方向外向きに張り出している段部と、底部から開口端部に向かう方向である開口方向に沿って段部から突出する凸部とを有している。凸部は、開口方向においてサイドシール部と並んでいる。
【0012】
上記の包装容器によれば、口部材が撓んだときなどに、凸部によって、口部材のうちサイドシール部と開口方向に並ぶ部位から口部材が破損する事が抑制される。よって、口部材の強度が向上する。
【0013】
上記の包装容器においては、開口端部が、筒部の径方向外側に位置し、口部材が、開口端部のうちサイドシール部を構成する部分であるシール端部の端縁に沿って略L字状に延びている延出部をさらに有することが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、前記シール端部の端縁に他の物体から外力が加わることが抑制される。シール端部を起点として口部材または包装袋が破損することがより抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、口部材の強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の一実施形態に係る包装容器の斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る包装容器の正面図および断面図である。
【
図3】
図2の領域IIIで示される範囲の拡大図である。
【
図4】包装容器の断面を示す部分的な斜視図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る包装容器の製造方法を示すフロー図である。
【
図6】開口端部が金型内に配置される直前の状態の包装袋を示す斜視図である。
【
図7】開口端部が金型内に配置されている途中の状態を示す斜視図である。
【
図8】
図7の領域VIIIで示される範囲を示す拡大図である。
【
図9】開口端部が金型内に配置された状態の包装袋を幅方向から示す側面図である。
【
図10】開口端部が金型内に配置された状態の包装袋を底方向から示す平面図である。
【
図11】
図10の包装袋および金型をXI-XI線矢印方向から見た断面図である。
【
図12】
図10の包装袋および金型をXII-XII線矢印方向から見た断面図である。
【
図13】
図12に示される領域XIIIの範囲を示す拡大断面図である。
【
図14】
図9の包装袋および金型をXIV-XIV線矢印方向から見た断面図である。
【
図15】
図14に示される領域XVの範囲を示す拡大断面図である。
【
図16】金型内に樹脂が射出されたときの包装袋および金型を示す部分断面図である。
【
図17】配置工程において、開口端部が変形例に係る金型内に配置される直前の状態の包装袋を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る包装容器および包装容器の製造方法について図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0018】
まず、本開示の一実施形態に係る包装容器について説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る包装容器の斜視図である。
図2は、本開示の一実施形態に係る包装容器の正面図および断面図である。
図3は、
図2の領域IIIで示される範囲の拡大図である。
図4は、包装容器の断面を示す部分的な斜視図である。なお、
図4においては、
図2と同様の断面が図示されている。
【0019】
図1から
図4に示すように、本開示の一実施形態に係る包装容器1は、包装袋10と、口部材20と、蓋部材30とを備えている。この包装容器1は、食品や化粧品、洗剤、芳香剤、消臭剤、その他日用品などの液体、粘体、ゲル状体、粒体、粉体の容器として好適である。
【0020】
包装袋10は、胴部11と、底部12とを有している。包装袋10は、所謂スタンディングパウチの形態で自立可能である。包装袋10は、胴部11と底部12とに囲まれた収容空間に内容物を収容可能に構成されている。
【0021】
胴部11は、筒状の外形を有している。胴部11は、開口端部111を有している。包装袋10が自立したときに、開口端部111は、包装袋10を上向きに開放する。開口端部111は、略円状の開口を有している。
【0022】
胴部11は、対向方向DCにおいて互いに対向する一対のシートST1,ST2が互いに接合されることで形成されている。具体的には、胴部11は、一対のシート(第1のシートST1、第2のシートST2)の幅方向DWにおける側縁部同士が、互いにヒートシールされることによって形成される。幅方向DWは、対向方向DCおよび後述する開口方向DOの両方に直交する方向である。
【0023】
胴部11は、サイドシール部Sを有している。サイドシール部Sは、上述のヒートシールにより、一対のシートST1,ST2が互いに接合してなる部分を含む。胴部11は、2つのサイドシール部Sを有している。2つのサイドシール部Sは、それぞれ胴部11の幅方向DWにおける両端にそれぞれ位置している。サイドシール部Sは、開口方向DOに沿って直線状に延びている。幅方向DWにおけるサイドシール部Sの寸法は、3mm~12mm程度に設定されることが好ましい。
【0024】
開口端部111は、シール端部111Sを含む。シール端部111Sは、開口端部111のうちサイドシール部Sを構成する部分である。開口端部111は、2つのシール端部111Sを含んでいる。2つのシール端部111Sは、それぞれ開口端部111の幅方向DWにおける両端にそれぞれ位置している。
【0025】
底部12は、胴部11の開口端部111側とは反対側に位置し、胴部11と接続されている。本明細書においては、底部12から開口端部111に向かう方向を開口方向DOといい、開口端部111から底部12に向かう方向を底方向DBという場合がある。底部12は、胴部11の内側(すなわち、一対のシートST1,ST2の間)に位置している。
【0026】
底部12は、第3のシートST3により構成されている。すなわち、底部12は、第3のシートST3の一方側が第1のシートST1と接合され、第3のシートST3の他方側が第2のシートST2と接合されることで形成されている。第3のシートST3は、開口方向DOに向かって山折された状態で一対のシートST1,ST2のそれぞれと接合される。具体的には、底部12は、第3のシートST3が一対のシートST1,ST2のそれぞれとヒートシールされることによって形成される。なお、底部12は、胴部11を筒状に開いたときに、開口端部111を円状の開口した直径と同程度に広がる寸法に形成できる。
【0027】
本実施形態において、サイドシール部Sは、上述のヒートシールにより、第3のシートST3が第1のシートST1および第2のシートST2に接合してなる部分を含む。このため、サイドシール部Sは、胴部11の底方向DBにおける端縁まで延びている。なお、第3のシートST3の幅方向DWにおける両端縁にはそれぞれ切り欠きSCが形成されている。サイドシール部Sにおいては、この切り欠きSCを介して、第1のシートST1および第2のシートST2が互いに接合されている(
図2参照)。2つのサイドシール部Sの間において、胴部11は、第3のシートST3が第1のシートST1および第2のシートST2の少なくとも一方に接合してなるボトムシール部SBを有している。第3のシートST3のうちボトムシール部SBに囲まれた領域が底部12となる。
【0028】
ボトムシール部SBは、第1のボトムシール部SB1と複数の第2のボトムシール部SB2とを有している。第1のボトムシール部SB1は、胴部11の底方向DBにおける端部に位置している。第1のボトムシール部SB1は、幅方向DWに沿って延びている。第2のボトムシール部SB2は、第1のボトムシール部SB1からサイドシール部Sまで延びている。第2のボトムシール部SB2は、サイドシール部Sに近づくに従って上方に向かうように傾斜している。
【0029】
各シートST1,ST2,ST3は、表層となる基材と内面にシーラント層を有する積層体で構成されている。基材は、例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等から形成される。基材としては、特にヒートシール時の耐熱性に優れ、強度を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム又は二軸延伸ポリアミドフィルムが好ましい。シーラント層は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレンエチレン共重合体等のプロピレン系樹脂からなるフィルムや、押出しラミネートからなりヒートシール性を有する樹脂層が使用できる。シーラント層としては、後述する口部材20がポリエチレン系樹脂の場合、特に口部材20との融着性、各シール部の強度、自立性に優れることから、厚さ70μm~150μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムが好ましい。また、基材とシーラント層との間に中間層としてガスバリアー層や補強層等を積層したものでも良い。ガスバリアー層としては、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン、ナイロンMXD6等のフィルムや樹脂層、シリカやアルミナ、アルミニウム等の金属等を蒸着したフィルム、アルミニウム箔等を使用することができる。各層は、ドライラミネート、サンドラミネート、押出しラミネート等の公知の方法で積層される。この積層体の総厚は、例えば80μm~200μmである。なお、全ての層を透明な材料で構成することにより内容物が視認可能になり、中間層にアルミニウム箔を用いることで遮光性、バリア性、自立性、保形性に優れた容器が得られる。また、基材には適宜、商品名や説明書き等が印刷される。上記では、各シートST1,ST2,ST3を別々の3枚のシートとして説明しているが、1枚のシートを折り畳むことで胴部11(第1のシートST1と第2のシートST2)と底部12(第3のシートST3)とし各シール部を形成してもよく、1枚のシートを折り曲げて胴部11(第1のシートST1と第2のシートST2)を形成し、その間に底部12となるシートST3を山折りで挟み込んで形成してもよい。
【0030】
口部材20は、開口端部111に接続されている。口部材20は、包装袋10よりも高い剛性を有しているため容易に変形しない。本実施形態では、口部材20は、樹脂からなる。口部材20は、射出成形により包装袋10と一体化されている。
【0031】
口部材20を構成する樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が使用できるが、ポリオレフィン樹脂が好ましく、特に包装袋10の一対のシートST1,ST2に使用されるシーラント層と同系種の樹脂が良く、たとえばシーラント層がポリエチレン系の場合は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが好ましく、シーラント層がポリプロピレン系の場合は、ポリプロピレンやプロピレンエチレン共重合体が好ましい。この理由は、口部材20を射出成形で一体化する際に、溶融した口部材の樹脂がシーラント層の露出部分に融着することによって互いに強固に接合されるためである。また、射出成形により溶融した樹脂が一対のシートST1,ST2に密着するため、口部材20が一対のシートST1,ST2から剥離し難く一体感が有る包装容器1が得られる。
【0032】
口部材20は、筒部21と、段部22と、凸部23と、延出部24と、フランジ部25と、被覆部26とを有している。
【0033】
筒部21は、開口端部111に接続されている。開口端部111は、筒部21によって、開口した状態に保持される。筒部21の径方向外側に、開口端部111が位置している。筒部21の厚さ(筒部21の内周面および外周面間の寸法)は、たとえば、0.3mm~3mm程度に設定されることが好ましく、0.5mm~2.0mmに設定されることがより好ましい。本実施形態では、筒部21は、円筒状に形成されている。ただし、筒部21中心軸と直交する平面(開口方向DOに直交する平面)での筒部21の断面は、楕円形や多角形等に形成されてもよい。
【0034】
段部22は、筒部21から径方向外向きに張り出している(
図2の正面図および
図3など参照)。段部22は、筒部21の開口方向DOにおける端部から張り出している。段部22の上面は、開口端部111の開口方向DOの端縁よりも、僅かに開口方向DO側に位置している。このため、段部22には、(シール端部111Sを含む)開口端部111の一部が埋没している。
【0035】
凸部23は、開口方向DOに沿って段部22および筒部21から突出している。凸部23の高さ(段部22から突出している高さ)は、例えば0.5~1.5mmであってよい。凸部23は、開口方向DOにおいてサイドシール部Sと並んでいる。なお、本実施形態では凸部23の上面(開口方向DO側の面)が平面(断面台形状)に形成されているが、凸部23の形状はこれに限らず、断面三角形状や半円状等であってよい。
【0036】
延出部24は、シール端部111Sの端縁に沿って略L字状に延びている。これにより、シール端部111Sの端縁に他の物体から外力が加わることが抑制される。そして、シール端部111Sを起点として口部材20または包装袋10が破損することがより抑制される。
【0037】
延出部24には、シール端部111Sの一部が埋没している。延出部24は、段部22より底方向DBに位置している。このため、延出部24の一部は、シール端部111Sの開口方向DOに面する端縁より底方向DBにおいて、幅方向DWに延びている。延出部24の他の一部は、シール端部111Sの開口方向DOに沿って延びる側端縁を覆いつつ、当該側端縁に沿って延びている。
【0038】
フランジ部25は、段部22からさらに外向きに張り出す形状を有している。すなわち、段部22は、筒部21の径方向において、筒部21とフランジ部25との間に位置している。フランジ部25には、シール端部111Sの一部が埋没している。本実施形態において、フランジ部25は、円環状に形成されている。フランジ部25の上面から、
図1~4等に示すように蓋部材30を螺合可能な雄ネジ状突起を有する突出部が設けられており、蓋部材30をフランジ部25に着脱可能に形成されている。なお、蓋部材30は、突出部の上面や突出部を設けないフランジ部25に直接シールするシール蓋であってもよい。
【0039】
被覆部26は、筒部21の外周面上に位置している。被覆部26は、シール端部111Sの内側縁に沿って延びている。この内側縁は、被覆部26に覆われている。これにより、シール端部111Sにおける一対のシートST1,ST2が互いに剥離することがより一層抑制される。シール端部111Sの内側縁とは、シール端部111Sの側縁のうち胴部11の幅方向DW中心を向く側縁である。
【0040】
次に、本開示の一実施形態に係る包装容器1の製造方法について説明する。
図5は、本開示の一実施形態に係る包装容器の製造方法を示すフロー図である。
図5に示すように、本開示の一実施形態に係る包装容器1の製造方法は、準備工程S1と、配置工程S2と、成形工程S3とを備えている。
【0041】
準備工程S1では、包装袋10を準備する。本実施形態において、包装袋10は、上述の通り各シートST1,ST2,ST3が互いにヒートシールにより接合されることで形成される。サイドシール部Sおよびボトムシール部SBのシールの順序は特に限定されない。
【0042】
配置工程S2では、包装袋10の開口端部111を金型内に配置する。
図6は、開口端部が金型内に配置される直前の状態の包装袋を示す斜視図である。
図7は、開口端部が金型内に配置されている途中の状態を示す斜視図である。
図8は、
図7の領域VIIIで示される範囲を示す拡大図である。
図9は、開口端部が金型内に配置された状態の包装袋を幅方向から示す側面図である。
図10は、開口端部が金型内に配置された状態の包装袋を底方向から示す平面図である。
図11は、
図10の包装袋および金型をXI-XI線矢印方向から見た断面図である。
図12は、
図10の包装袋および金型をXII-XII線矢印方向から見た断面図である。
図13は、
図12に示される領域XIIIの範囲を示す拡大断面図である。
【0043】
図6から
図13に示されるように、配置工程S2では、開口端部111を金型5内に配置する。以下、金型5を説明するための方向は、金型5内に開口端部111が配置された状態の包装袋10を基準にして説明される。
【0044】
金型5は、内金型51と、外金型52とを有している。本実施形態において、内金型51がいわゆるコアであり、外金型52がいわゆるキャビティである。
図6から
図8に示すように、配置工程S2では、まず、内金型51が、開口端部111の開口から胴部11内に挿入される。
【0045】
内金型51は、受け部511と、2つの凹部512(
図12参照)と、挿入部513とを有している。受け部511において底方向DBを向く面は、底方向DBに直交するように平面状に延びている。受け部511は、底方向DBから見て円環状に延びている。凹部512は、開口方向DOにおいて受け部511から窪んでいる。挿入部513は、受け部511から底方向DBに延出している。挿入部513は、底方向DBから見て、受け部511の外周縁より径方向内側に位置している。
【0046】
挿入部513は、大径部513aと、小径部513bと、縮径部513cとを有している。大径部513aは、円筒状の外形を有している。大径部513aは、受け部511から底方向DBに離隔している。小径部513bは、底方向DBに直交する断面の直径が大径部513aより小さい部分である。小径部513bは、受け部511と大径部513aとの間に位置している。縮径部513cは、大径部513aから見て小径部513bの反対側に位置している。縮径部513cは、底方向DBに直交する断面が、底方向DBに向かうに従って縮径するような外形を有している。
【0047】
配置工程S2では、開口端部111の開口から挿入部513を挿入する(
図6および
図7参照)。この後、受け部511は、開口方向DOにおいて開口端部111を受ける(
図8および
図11参照)。これに伴い、包装袋10の収容空間に挿入部513が配置される。大径部513aは、胴部11のうち開口端部111より底方向DBに位置する部分の収容部側に密着する。小径部513bは、シール端部111Sを含む開口端部111から離隔するように位置する(
図13参照)。そして、開口端部111のうちサイドシール部Sを構成する部分であるシール端部111Sが、凹部512と対向するように配置される(
図8、
図12および
図13参照)。
【0048】
図14は、
図9の包装袋および金型をXIV-XIV線矢印方向から見た断面図である。
図15は、
図14に示される領域XVの範囲を示す拡大断面図である。
図7および
図9から
図15に示すように、配置工程S2では、外金型52が、内金型51ととともに開口端部111を挟み込む。
【0049】
外金型52は、第1外金型52Aと第2外金型52Bとを有する。第1外金型52Aおよび第2外金型52Bは、対向方向DCにおいて互いに対向している。シール端部111Sは、第1外金型52Aと第2外金型52Bとよって、対向方向DCに挟み込まれる。
【0050】
配置工程S2では、開口方向DOから見て、開口端部111に内接する仮想円Cの直径Lに対する、仮想円Cとシール端部111Sとの離隔距離の寸法DSの比率が、0%超3%未満となるように、シール端部111Sを配置する(
図14および
図15参照)。なお、仮想円Cの直径Lは、挿入部513の大径部513aの底方向DBから見た時の直径と略等しくなる。また、外金型52(第1外金型52A、第2外金型52B)はシール端部111Sを配置可能な寸法DS分の空間が得られるように形成する。
【0051】
図16は、金型内に樹脂が射出されたときの包装袋および金型を示す部分断面図である。なお、
図16においては、
図13と同様の断面視にて図示している。
図13および
図16に示すように、成形工程S3では、開口端部111が金型5内に配置された状態で金型5内に樹脂を射出することで口部材20を成形する。そして、シール端部111Sと対向した状態の凹部512に樹脂が供給されるように、樹脂を射出する。これにより、内金型51の凹部512に対応する凸部23が口部材20に形成される。凸部23は、開口方向DOにおいてサイドシール部Sと並ぶように配置されるため、口部材20が撓んだときなどに、口部材20のうちサイドシール部Sと開口方向DOに並ぶ部位から口部材20が破損することが抑制される。さらに、上記の包装容器1の製造方法によれば、内金型51の受け部511により、金型5に対して包装袋10の開口方向DOにおける位置決めが容易になるとともに、シール端部111Sが受け部511より開口方向DOに突出した場合においても、シール端部111Sが内金型51の凹部512に嵌まる。そして、凹部512に対応するように形成された凸部23によって、口部材20からのシール端部111Sの突き出しが抑制される。ひいては、シール端部111Sやシール端部111S近傍の開口端部111と樹脂との間にわずかな隙間(破損や剥離)が生じたとしても、その隙間が段部22から露出することが、凸部23によって抑制される。よって、包装袋10に収容された内容物が上記隙間から漏れることも抑制される。
【0052】
特に包装袋10は、前記のように一対のシートST1,ST2の基材が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや二軸延伸ポリアミドフィルムとポリエチレン系樹脂のシーラント層からなり、ポリエチレン系樹脂からなる口部材20の樹脂を射出する場合に、耐熱性を有し口部材20と異なる樹脂からなる基材との間は、接着強度が弱くなり破損や剥離が起こりやすく、これにより生じた僅かな隙間に内容物(特に液体を含む場合)が浸透して漏洩(浸みだし漏出)することがあったが、このような場合でも、凸部23によって破損や剥離、内容物の漏出が抑制される。
【0053】
また、樹脂は、内金型51内に設けられ、小径部513b表面に射出口を有する樹脂流路(不図示)を通って射出される。流動する樹脂により開口端部111は僅かに移動するため、開口端部111と受け部511の隙間で開口端部111の開口方向DOの端縁を被覆するように流れるが、シール端部111Sは、剛性が有り樹脂の流れにより開口方向DOに移動した場合に受け部511を超えて突出しやすい。しかしながら、上述の凹部512に対応するように形成された凸部23によって、口部材20からのシール端部111Sの突き出しが抑制される。ただし、樹脂を射出するための、樹脂流路はこれに限定されるものではない。
【0054】
また、本実施形態に係る包装容器1の製造方法においては、開口方向DOから見て、開口端部111に内接する仮想円Cの直径Lに対する、仮想円Cとシール端部111Sとの離隔距離の寸法DSの比率が、0%超3%未満となるように、シール端部111Sが配置される(このように配置できるように、準備工程S1において、開口端部111の幅方向DW寸法を調整して包装袋10を作成する。)。これにより、開口端部111の開口の形状が真円に近づく。これにより、略円環状の外形を有する口部材20への接続が容易となる。(本実施形態においては、具体的には、円筒状の外形を有する筒部21と開口端部111との接続が容易となる。)一方で、開口端部111の撓みは比較的大きくなり、配置工程S2においてシール端部111Sが受け部511より開口方向DOに突出しやすくなる。しかしながら、上述の製造方法によれば、このようにシール端部111Sが突出してもシール端部111Sは凹部512内に位置する。凹部512に対応するように形成された凸部23によって、口部材20からのシール端部111Sの突き出しは抑制される。
【0055】
以上の製造方法により、本実施形態に係る包装容器1が製造される。なお、配置工程S2において、内金型51の挿入部513は、包装袋10の形状に合わせて様々な形状を有し得る。
【0056】
図17は、配置工程において、開口端部が変形例に係る金型内に配置される直前の状態の包装袋を示す斜視図である。
図17に示すように、挿入部513は、一対の側部513dをさらに有してもよい。一対の側部513dは、縮径部513cの対向方向DCにおける両側にそれぞれ位置している。一対の側部513dの各々は、縮径部513cとは反対側を向く面が、底方向DBに平行に延びている。これにより、本実施形態において、金型5内に開口端部111が配置されたとき、一対のシートST1,ST2の撓みが抑制され、ひいては、開口端部111の撓みも抑制される。開口端部111の撓みが抑制されることで、シール端部111Sが受け部511より開口方向DOに突出することも抑制される。
【0057】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0058】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 包装容器、10 包装袋、11 胴部、111 開口端部、111S シール端部、12 底部、20 口部材、21 筒部、22 段部、23 凸部、24 延出部、25 フランジ部、26 被覆部、30 蓋部材、5 金型、51 内金型、511 受け部、512 凹部、513 挿入部、513a 大径部、513b 小径部、513c 縮径部、513d 側部、52 外金型、52A 第1外金型、52B 第2外金型、S サイドシール部、SB ボトムシール部、SB1 第1のボトムシール部、SB2 第2のボトムシール部、ST1 第1のシート、ST2 第2のシート、ST3 第3のシート。