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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104463
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008676
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】舘林 優太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC07
2C056EC14
2C056EC28
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA10
2C056HA22
2C056HA37
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】 レイアウトの自由度を確保しつつ、ノズル列から吐出された光硬化性のインクの一部に所望の光照射がされないことによる印刷品質の低下を抑制する。
【解決手段】
インクジェットプリンタは、第1のノズル列NL1~NL4、及び第1のノズル列と第1の方向においてずらされて配置されている第2のノズル列NL5~NL9を備える印刷ヘッド12と、第1の方向において隣接する第1、第2の照射部Z1、Z2を含む光照射装置17と、吐出制御部24と、照射制御部と26と、を有し、第1のノズル列が、第1の方向において、第1、第2の照射部と重複する第1、第2の重複範囲AR1、AR2を備え、照射制御部が、第1、第2の各照射部Z1、Z2の照射態様を異ならせる制御を実施する場合には、吐出制御部は、第1のノズル列の第2の重複範囲AR2に含まれるノズルについてインク吐出禁止制御を実施する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアに光硬化性の第1のインクを吐出する第1のノズル列と、前記メディアに光硬化性の第2のインクを吐出すると共に、前記第1のノズル列と第1の方向においてずらされて配置されている第2のノズル列と、を備える印刷ヘッドと、
前記第1の方向において分割されて設けられる複数の照射部を備える光照射装置と、
前記印刷ヘッド及び前記光照射装置と、前記メディアと、を相対的に前記第1の方向、及び前記第1の方向に交差する第2の方向に移動させる移動機構と、
前記印刷ヘッドにおける、前記第1のノズル列における前記第1のインクの吐出、及び前記第2のノズル列における前記第2のインクの吐出を制御する吐出制御部と、
前記光照射装置の光照射を、前記複数の照射部の各々毎に制御可能な照射制御部と、
を有し、
前記光照射装置の前記複数の照射部は、前記第1の方向において隣接する第1の照射部、及び第2の照射部を含み、
前記第1のノズル列が、前記第1の方向において、前記第1の照射部と重複する第1の重複範囲と、前記第2の照射部と重複する第2の重複範囲とを備え、
前記第2のノズル列が、前記第1の方向において、前記第2の照射部と重複する第3の重複範囲を備え、
かつ、
前記照射制御部が、前記光照射装置の前記第1の照射部、及び前記第2の照射部の各々の照射態様を異ならせる制御を実施する場合には、
前記吐出制御部は、
前記第1のノズル列における、前記第2の重複範囲に含まれるノズルからの前記第1のインクの吐出を禁止するインク吐出禁止制御を実施する、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記印刷ヘッドは、第1のインクヘッドと第2のインクヘッドとを有し、
前記第1のノズル列は前記第1のインクヘッドに搭載され、前記第2のノズル列は前記第2のインクヘッドに搭載され、
前記第2のインクヘッドは、前記第2のノズル列が、前記第1のノズル列と前記第1の方向においてずらされて配置され、
前記吐出制御部によって、前記第1のノズル列における前記第2の重複範囲に含まれるノズルについての前記インク吐出禁止制御が実施されることで、
前記第1の照射部と、前記インク吐出禁止制御後の前記第1のノズル列との、前記第1の方向における照射部/第1のノズル列間の位置の整合性、
及び、
前記インク吐出禁止制御後の前記第1のノズル列と、前記第2のノズル列との、前記第1の方向における第1のノズル列/第2のノズル列間の位置の整合性が確保される、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記第1のインクは、前記第2のインクよりも先に前記メディアに塗布されるカラーインクであり、
前記第2のインクは、特殊インクである、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記第1のインクは、前記第2のインクよりも先に前記メディアに塗布される特殊インクであり、
前記第2のインクは、カラーインクである、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記第1のインクは、前記第2のインクよりも先に前記メディアに塗布される、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の少なくとも1つを含むカラーインクであり、
前記第2のインクは、印刷物に光沢感を与える特殊インクであり、
前記光照射装置は、前記第2の照射部を基準として、前記第1の方向における、前記第1の照射部とは反対の方向において第3の照射部を有し、
前記カラーインク上に塗布される前記特殊インクを、光沢のあるグロス調とする場合において、
前記照射制御部は、
前記第1の照射部を、第1の照射強度で点灯させ、
前記第2の照射部を、非点灯とする、あるいは、前記第1の照射強度よりも低い第2の照射強度で点灯させ、
前記第3の照射部を点灯させる、
請求項1又は請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記吐出制御部は、前記インク吐出禁止制御後の前記第1のノズル列における前記第1のインクを吐出するノズル数と、前記第2のノズル列から前記第2のインクを吐出するノズル数との比が整数となるように、前記第2のノズル列の一部のノズルからの前記第2のインクの吐出を禁止するインク吐出禁止制御を実施する、
請求項1又は請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ等に関する。
【背景技術】
【0002】
光照射装置が複数の分割領域を有し、分割領域毎に光の照射制御が実施される構成は、例えば、特許文献1、2に記載されている。
【0003】
特許文献1では、1つの印刷ヘッドに、光硬化性のカラーインクを吐出するノズル列、及び、光硬化性のクリアインク、プライマーインク、ホワイトインク等(特許文献1では、これらを総称して特殊インクと称している)の各々を吐出するノズル列が並置されている(例えば、図4、[0025]~[0028])。
【0004】
また、特許文献2では、カラーインクを吐出するヘッドと、クリアインクを吐出するヘッドが、所定方向にずらされて配置(いわゆるスタガ配置)されている(図1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7016994号公報
【特許文献2】特開2021-112868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討によって、以下の課題が明らかとされた。
光照射装置(例えばUVランプ)が、第1の方向(ここでは副走査方向とする)において隣接する第1、第2の照射部を有し、照射制御部が、第1、第2の各照射部の照射態様を異ならせる制御を実施する場合を想定する。
照射態様が異なる制御の一例としては、例えば、第1の照射部を第1の強度で点灯させ、第2の照射部を非点灯とする、あるいは、第1の強度よりも低い第2の強度で点灯させる場合を挙げることができる。
【0007】
一方、第1のインクを吐出する第1のノズル列と、第2のインクを吐出する第2のノズル列とが、第1の方向(副走査方向)にずらされて配置(スタガ配置)されている場合を想定する。
第1のノズル列から吐出される第1のインクとしては、例えばC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)等のカラーインクが想定され得る。また、第2のノズル列から吐出される第2のインクとしては、光沢があるグロス調に仕上げるクリアインク(特殊インクの一種)が想定され得る。
【0008】
ここで、第1、第2のノズル列とメディアとが相対的に、第1の方向と交差する(例えば直交する)第2の方向(ここでは主走査方向)に移動されながら、第1のノズル列から第1のインクがメディアに吐出されると、吐出直後の第1のインクは、第1の照射部の光照射(例えばUV光の照射)によって硬化する。
【0009】
次に、第1、第2のノズル列とメディアとが相対的に、第1の方向(副走査方向)に移動され(例えば、メディアが上流側から下流側に所定距離だけ搬送され)、第2のノズル列から第2のインク(クリアインク)が吐出されると、第1のインク(カラーインク)のドット上に第2のインク(クリアインク)が着弾する。
このとき第1、第2のノズル列とメディアとが相対的に第2の方向(主走査方向)に移動されており、第2の照射部は非点灯(あるいは、弱い点灯状態)であるため、第2のインクは硬化されない、あるいは、十分には硬化されない。
よって、第2のインク(クリアインク)は徐々に広がって平滑化される。その後、時間をおいて光が照射されることによって第2のインクは硬化する。これによって、凹凸が少なく、乱反射が抑制された平坦な面をもつ光沢層が形成される。
【0010】
以上が正常な印刷処理である。
上記の正常な印刷処理は、第1の方向(副走査方向)において、第1のノズル列が第1の照射部と重複するが、第2の照射部とは重複しない場合に実現される。
【0011】
ここで、例えば、第1のノズル列の端部付近のノズルが、第1の方向(副走査方向)において第2の照射部と重複する場合、言い換えれば、第1のノズル列の端部が、第1の方向(副走査方向)における第1、第2の照射部の境界を超えて、第2の照射部による照射範囲にまで延在する場合を想定する。
この場合は、その重複する範囲のノズルから吐出された第1のインク(カラーインク)は、第2の照射部が非点灯(あるいは弱い点灯状態)であることから硬化しない、あるいは十分に硬化しない。よって、例えば、第1のインク(カラーインク)の滲み等が生じ、印刷品質の低下の原因となり得る。
【0012】
このような問題を生じさせないためには、第1、第2のノズル列間の境界位置(第1の方向(副走査方向)における位置)と、光照射装置における第1、第2の照射部間の境界位置(第1の方向(副走査方向)における位置)とを一致させればよい。
このようにしておけば、第1のノズル列が、第1の方向(副走査方向)において第2の照射部と重複することはなく、上記の問題は生じない。
【0013】
しかし、この場合は、ノズル列や光照射装置のレイアウト(位置的な構成)の自由度がなく、また、レイアウト条件が厳格であるため、例えばノズル列及び光照射装置をキャリッジに取り付ける際の取り付けが困難化するのは否めない。
【0014】
このような課題については、特許文献1、2には記載がなく、その対策についても言及されていない。
【0015】
本発明の1つの目的は、ノズル列や光照射装置のレイアウトの自由度を確保しつつ、ノズル列から吐出された光硬化性のインクの一部に所望の光照射がされないことによる印刷品質の低下を抑制することである。
【0016】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
本発明に従う態様において、インクジェットプリンタは、メディアに光硬化性の第1のインクを吐出する第1のノズル列と、前記メディアに光硬化性の第2のインクを吐出すると共に、前記第1のノズル列と第1の方向においてずらされて配置されている第2のノズル列と、を備える印刷ヘッドと、前記第1の方向において分割されて設けられる複数の照射部を備える光照射装置と、前記印刷ヘッド及び前記光照射装置と、前記メディアと、を相対的に前記第1の方向、及び前記第1の方向に交差する第2の方向に移動させる移動機構と、前記印刷ヘッドにおける、前記第1のノズル列における前記第1のインクの吐出、及び前記第2のノズル列における前記第2のインクの吐出を制御する吐出制御部と、前記光照射装置の光照射を、前記複数の照射部の各々毎に制御可能な照射制御部と、を有し、前記光照射装置の前記複数の照射部は、前記第1の方向において隣接する第1の照射部、及び第2の照射部を含み、前記第1のノズル列が、前記第1の方向において、前記第1の照射部と重複する第1の重複範囲と、前記第2の照射部と重複する第2の重複範囲とを備え、前記第2のノズル列が、前記第1の方向において、前記第2の照射部と重複する第3の重複範囲を備え、かつ、前記照射制御部が、前記光照射装置の前記第1の照射部、及び前記第2の照射部の各々の照射態様を異ならせる制御を実施する場合には、前記吐出制御部は、前記第1のノズル列における、前記第2の重複範囲に含まれるノズルからの前記第1のインクの吐出を禁止するインク吐出禁止制御を実施する。
【0018】
本態様では、機械的な構成においては、第1の方向において、第1のノズル列の一部が第2の照射部と重複することを許容することとし、これによって、インクヘッドや光照射装置のレイアウト(位置的な構成)の自由度を向上させ、また、インクヘッド及び光照射装置をキャリッジに取り付ける際の取り付けを容易化する。
【0019】
一方、第1のノズル列の一部が第2の照射部と重複することによる印刷品質の低下の問題の対策として、第1のノズル列における、上記の重複範囲(第2の重複範囲)に含まれるノズルからの第1のインクの吐出を禁止するインク吐出禁止制御を実施する。
【0020】
すなわち、機械的な構成上は、第1のノズル列の一部が第2の照射部と重複することを許容するが、その重複する範囲のノズルについては、電気的な制御によってインク吐出を禁止し(つまり、電気的にマスキングし)、実質的にその重複範囲のノズルは無いものとして取り扱えるようにする。
【0021】
これにより、その重複範囲のノズルから吐出された第1のインクについて所望の態様の光照射が実施されないことによる第1のインクの滲み等の問題が抑制され、印刷品質の低下が抑制される。
【0022】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、インクジェットプリンタの構成の一例を示す図である。
図2図2は、プリンタの要部のシステム構成の一例を示す図である。
図3図3は、キャリッジを上方から見た場合の、第1、第2のインクヘッド(サブヘッド)、及び光照射装置(UVランプ)の構成と配置の例を示す透視平面図である。
図4図4は、光照射装置の複数の照射部の各々毎に照射態様(照射強度、点灯/非点灯)を制御する構成の一例を示す図である。
図5図5は、照射部毎に照射態様(照射強度、点灯/非点灯)を異ならせる場合の他の例を示す図である。
図6図6は、カラー印刷物に、グロス調のクリアインク層(光沢層)を形成する場合の照射制御例を示す図である。
図7図7は、変形例(特殊インクヘッドを上流側に設け、照射部毎に照射態様を制御する一例)を示す図である。
図8図8は、他の変形例(特殊インクヘッドを上流側に設け、照射部毎に照射態様を制御する他の例)を示す図である。
図9図9は、さらに他の変形例(特殊インクを吐出するノズルを第1のノズル列としてインク吐出禁止制御を実施する例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0025】
なお、本明細書において「インクジェットプリンタ」には、従来公知のインクジェット技術による印刷方法、例えば、2値偏向方式あるいは連続偏向方式等の連続方式や、サーマル方式、あるいは圧電素子方式等の各種のオンデマンド方式を利用したプリンタ全般を含めることができる。
【0026】
また、「プリンタ(インクジェットプリンタ)」には、2次元の画像を印刷する2Dプリンタと、3次元の造形物を造形する3Dプリンタ(3次元造形装置)とを含めることができる。
【0027】
また、「インク」という用語は広義に解釈することができる。例えば、「液体」と表現することもできる。例えば、「インクジェットプリンタ」という用語は、「液体吐出装置」と表現することも可能である。
【0028】
また、第1の方向(副走査方向)と交差する(好ましくは直交する)第2の方向(主走査方向)における、印刷ヘッドの1回の走査(1回の駆動)を「パス」と称する。例えばマルチパス方式の印刷では、複数のパスを用いて所定の印刷領域における印刷を完成させる。なお、パスが更新されると、例えば、メディアは、第1の方向(副走査方向)の下流側に所定の画素数分だけ移動される。
【0029】
また、仮にメディアが第1の方向に沿って移動(搬送)されることを想定したとき、メディアの搬送元の方向を「上流」とし、搬送先の方向を「下流」とすることができる。
【0030】
言い換えれば、移動機構によって、印刷ヘッドに対してメディアが第1の方向に沿って相対移動される場合には、メディアの「移動元」の方向を「上流側」、あるいは「一方側」とし、「移動先」の方向を、「下流側」、あるいは「他方側」としてもよい。
【0031】
また、例えば、移動機構によって、メディアに対して印刷ヘッドが第1の方向に沿って相対移動される場合には、印刷ヘッドの「移動先」の方向を「上流側」、あるいは「一方側」とし、「移動元」の方向を、「下流側」、あるいは「他方側」としてもよい。
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1を参照する。図1は、インクジェットプリンタの構成の一例を示す図である。図1のプリンタ(インクジェットプリンタ)1は、マルチパス方式の印刷に対応したプリンタであってもよい。
【0034】
インクジェットプリンタ(単にプリンタという場合がある)1は、2Dプリンタである。なお、以下の説明において、左、右、上、下とは、プリンタ1の正面にいるユーザ(プリンタ1の使用者)から見た左、右、上及び下をそれぞれ意味し、プリンタ1からユーザに近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。
【0035】
また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは各々、前(前方)、後(後方)、左、右、上、下を表す。プリンタ1の後方Rrは、メディア2とキャリッジ10が相対的に副走査方向に移動する場合における上流側に相当するため、図1では、「Rr(上流)」、「F(下流)」と表記されている。
【0036】
図中の符号Xは、第1の方向(副走査方向、あるいは前後方向)を表し、符号Yは、第1の方向に交差する(好ましくは直交する)第2の方向(主走査方向、あるいは左右方向)を表す。以下の説明では、「第1の方向(副走査方向)X」、「第1の方向X」と記載する場合があり、また、「第2の方向(主走査方向)Y」、「第2の方向Y」と記載する場合がある。
【0037】
また、符号Zは、上下方向を表す。なお、上下方向は、メディア(記録媒体)2、及びメディア2に形成される画像の厚み方向ということもできる。
【0038】
なお、以下に示されるメディア2とキャリッジ10とは、第1の方向(副走査方向)Xに関して、相対的に移動する。言い換えれば、メディア2が第1の方向Xに沿って上流側から下流側へと搬送されてもよく、あるいは、メディア2は移動せずに、キャリッジ10が第1の方向Xに沿って移動してもよい。
【0039】
以下の説明では、メディア2が第1の方向(副走査方向)Xに沿って搬送される例について説明する。
【0040】
図1のA-1、A-2に示されるプリンタ1は、プラテン3と、ガイドレール4と、操作パネル9と、キャリッジ10と、キャリッジ移動機構13と、印刷ヘッド12と、UVランプ17と、制御部(印刷制御装置)20と、を有する。
【0041】
操作パネル9には、操作状態等を表示する表示部と、ユーザによって操作される入力キー等と、が設けられている。ユーザは、操作パネル9を操作することで、各種の条件の設定等を行うことができる。
【0042】
なお、図1には示されていないが、プリンタ1にはホストコンピュータ(図2の符号100)が接続される。ユーザは、ホストコンピュータ100に備わる操作部(図2の102)を操作して、各種の条件の設定等を行ってもよい。
【0043】
プラテン3上には、メディア2が載置される。プラテン3の上方には、メディア2を上から押さえるピンチローラ5Aが設けられている。プラテン3におけるピンチローラ5Aと対向する位置には、グリッドローラ5Bが設けられている。グリッドローラ5Bは、フィードモータ(図1では不図示、図2の符号5C)に連結されている。フィードモータ5Cは、制御部20と電気的に接続されており、制御部20によって動作が制御される。
【0044】
グリッドローラ5Bは、フィードモータ5Cの駆動力を受けて回転可能に構成されている。ピンチローラ5Aとグリッドローラ5Bとの間にメディア2が挟まれた状態でグリッドローラ5Bが回転すると、メディア2が第1の方向(副走査方向)Xに搬送される。
【0045】
本実施形態では、ピンチローラ5Aとグリッドローラ5Bとフィードモータ5Cとが、メディア2を、第1の方向(副走査方向)Xに移動させる搬送機構11(図2参照)を構成する。
【0046】
図1のA-2に示されるように、ガイドレール4は、第2の方向(主走査方向)Yに延びている。ガイドレール4には、キャリッジ10がスライド可能に係合している。
【0047】
キャリッジ10には、印刷ヘッド12と、光照射装置19が搭載されている。光照射装置19は、一対の光照射装置(UVランプ)17、18を含む。
【0048】
一対の光照射装置(UVランプ)17、18の各々は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて分割された複数の照射部(例えば図4のZ1~Z4、Z5~Z8)を有し、照射部毎に点灯/非点灯、あるいは照射強度を制御可能である(この点については後述する)。
【0049】
キャリッジ10は、キャリッジ移動機構13(図2参照)によって第2の方向(主走査方向)Yに沿って移動可能である。
【0050】
キャリッジ移動機構13は、ガイドレール4の左右に配置されたプーリ6L、6Rと、このプーリ6L、6Rに巻き掛けられた無端状のベルト7と、プーリ6Rに連結されたキャリッジモータ8と、を備える。
【0051】
ここで、「メディア2を搬送する搬送機構11、及びキャリッジを移動させるキャリッジ移動機構13」は、「印刷ヘッド12及び光照射装置19と、メディア2と、を相対的に第1の方向(副走査方向)X、及び第1の方向に交差する第2の方向(主走査方向)Yに移動させる移動機構」を構成する。
【0052】
キャリッジ10は、ベルト7に固定されている。キャリッジモータ8は、制御部(印刷制御装置)20と電気的に接続されており、制御部20によって動作が制御される。
【0053】
キャリッジモータ8が駆動すると、プーリ6Rが回転してベルト7が走行する。これにより、キャリッジ10と、キャリッジ10に搭載されている印刷ヘッド12と光照射装置(UVランプ)19とが一体となって、ガイドレール4に沿って第2の方向(主走査方向)Yに移動する。
【0054】
印刷ヘッド12は、第1のインクヘッド121と、第2のインクヘッド122と、を有する。第1のインクヘッドは、第1のインクを吐出するインクヘッドである。例えば、カラー印刷に用いられる基本的な色(C、M、Y、K等)の光硬化性インク(以下、単に「カラーインク」と称する場合がある)を吐出するインクヘッドであってもよい。
【0055】
また、第2のインクヘッドは、第2のインクを吐出するインクヘッドである。例えば、光硬化性の特殊インク(以下、単に「特殊インク」と称する場合がある)を吐出するインクヘッドであってもよい。
【0056】
ここで、「特殊インク」は、広義には、上記のカラーインク以外のインクの総称であり、「特色インク」と称することもできる。
【0057】
「特殊インク(特色インク)」としては、具体的には、透明、または透明度が調整されたクリアインク(例えば、グロス調に仕上げることで印刷物に光沢感を与えることができるインク)、プライマーインク(例えば、素材や下地とインクとの密着性を向上させる効果をもつインク)、ホワイトインク(例えば、カラー画像を鮮やかにする効果をもつインク)等を挙げることができる。なお、本明細書では、オレンジインク、レッドインクも、特殊インク(特色インク)に含まれるものとして取り扱う。
【0058】
第1、第2の各インクヘッド121、122は、第2の方向(主走査方向)Yに沿って所定間隔をおいて並置されている。
【0059】
本実施形態において、第1、第2の各インクヘッド121、122は、キャリッジ10に搭載されている。ただし、各インクヘッド121、122は、別々のキャリッジに搭載されてもよい。
【0060】
次に、図2を参照する。図2は、プリンタの要部のシステム構成の一例を示す図である。制御部(印刷制御装置)20は、印刷データ受信部21と、メディア2の搬送を制御するフィード制御部22と、キャリッジ10の走査を制御するスキャン制御部23と、吐出制御部24と、照射制御部26と、記憶部(メモリ)28と、を有する。記憶部(メモリ)28には、印刷に必要なプログラムが記憶されている。
【0061】
制御部20は、ホストコンピュータ100(操作部102を有する)、又は操作パネル9から、各種のデータ等を受信することができる。
【0062】
吐出制御部24は、第1のインクヘッド121(例えばカラーインクヘッド)の各ノズルからの第1のインクの吐出を制御する第1の吐出制御部241と、第2のインクヘッド122(例えば特殊インクヘッド)の各ノズルからの第2のインクの吐出を制御する第2の吐出制御部242と、ノズル使用範囲設定レジスタ(ノズル使用範囲設定部)25と、を有する。
【0063】
ノズル使用範囲設定レジスタ(ノズル使用範囲設定部)25は、例えば、第1のインクヘッド121に備わるノズル列における複数のノズルのうち、どのノズルを使用し、どのノズルを使用禁止とするかを設定する制御データが登録される(あるいは、製品出荷時に初期登録されている)、一種の記憶装置である。なお、第1のインクヘッド121の他、第2のインクヘッド122においても、上記の制御データによる一部のノズルの使用禁止制御を実施してもよい(この点については後述する)。
第1の吐出制御部241は、上記の制御データを参照し、使用が禁止されているノズルからの第1のインクの吐出を禁止する「インク吐出禁止制御(インク吐出禁止処理、あるいは、電気的なマスキング処理)を実施する(この点の詳細については後述する)。
【0064】
照射制御部26は、光照射装置としてのUVランプの駆動電流を制御するランプ駆動電流制御部27を有する。UVランプの駆動電流は、分割された複数の照射部Z1~Z8の各々毎に制御可能であり、これによって、各照射部Z1~Z8の点灯/非点灯、あるいは照射強度が個別に制御される。なお、照射制御部26は、UVランプの駆動電圧を制御してもよい。
【0065】
また、グリッドローラ5B、及びフィードモータ5Cはメディア2を搬送する搬送機構11の構成要素である。フィードモータ5Cの動作は、制御部20におけるフィード制御部22によって制御される。
【0066】
キャリッジモータ8は、キャリッジ移動機構13の構成要素である。キャリッジモータ8の動作は、制御部20におけるスキャン制御部23によって制御される。
【0067】
印刷ヘッド12は、アクチュエータ16(第1のインクヘッド121を駆動するアクチュエータ16aと、第2のインクヘッド122を駆動するアクチュエータ16bと、を備える)と、第1のインクヘッド121と、第2のインクヘッド122と、を有する。アクチュエータ16a、16bの各動作は、第1、第2の吐出制御部241、242によってそれぞれ制御される。
【0068】
光照射装置(UVランプ)19は、一対の光照射装置(UVランプ)17、18を備える。図2では、光照射装置17は、第1の光照射装置と記載され、光照射装置18は、第2の光照射装置と記載されている。
【0069】
第1光照射装置17は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて分割された複数の照射部Z1~Z4を備える。また、第2の光照射装置18は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて分割された複数の照射部Z5~Z8を備える。
【0070】
次に、図3を参照する。図3は、キャリッジを上方から見た場合の、第1、第2のインクヘッド(サブヘッド)、及び光照射装置(UVランプ)の構成と配置の例を示す透視平面図である。図3において、前掲の図と共通する部分には同じ符号を付している。
【0071】
第1、第2の光照射装置(UVランプ)17、18は、上から見た平面視(透視平面視)で、第2の方向(主走査方向)Yにおいて、所定間隔をおいて配置されている。印刷ヘッド12は、一対の光照射装置(UVランプ)17、18の間に配置されている。印刷ヘッド12の右側に第1の光照射装置(UVランプ)17が配置され、左側に第2の光照射装置(UVランプ)18が配置されている。
【0072】
第1の光照射装置(UVランプ)17は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて分割された複数の照射部Z1~Z4を備える。第2の光照射装置(UVランプ)18は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて分割された複数の照射部Z5~Z8を備える。
【0073】
先に図2にて説明したように、制御部20における照射制御部26は、光照射装置(紫外線ランプ)17、18の光照射を、複数の照射部Z1~Z4、Z5~Z8の各々毎に制御可能である。
【0074】
なお、光照射装置17に関して、例えば、最上流側に位置する「照射部Z1」を「第1の照射部」と称する場合、光照射装置18においても、最上流側に位置する「照射部Z5」が「第1の照射部」となる。つまり、一対の光照射装置17、18は等価な構成を有するため、例えば、「第1の照射部」という場合、照射部Z1、Z5の2つが該当することになる。
【0075】
このような点を考慮して、以下の説明では、例えば、「第1の照射部Z1(Z5)」というように、他方の照射部をかっこ書きで記載する表記を採用する場合がある。但し、説明の簡略化の観点から、いずれか一方の照射部のみを記載する場合もあり得る。
【0076】
印刷ヘッド12は、第1のインクヘッド(第1のサブヘッド)121と、第2のインクヘッド(第2のサブヘッド)122とを備える。
【0077】
第1のインクヘッド121は、第1のインク(ここでは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色のカラーインクとする)を吐出する第1のノズル列(ここでは、C、M、Y、Kの各色のカラーインクを吐出する4本のノズル列NL1~NL4を総称して第1のノズル列と称する)を有する。
【0078】
C(シアン)色のカラーインクを吐出するノズル列NL1は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて配置された複数のノズルNC1~NCmを有する。ここで、mは、例えば「420」である。
【0079】
同様に、M(マゼンタ)色のカラーインクを吐出するノズル列NL2は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて配置された複数のノズルNM1~NMmを有する。同様に、Y(イエロー)色のカラーインクを吐出するノズル列NL3は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて配置された複数のノズルNY1~NYmを有する。同様に、K(ブラック)色のカラーインクを吐出するノズル列NL4は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて配置された複数のノズルNK1~NKmを有する。
【0080】
第2のインクヘッド122は、第2のインク(ここでは、クリアインクCL、プライマーインクPR、ホワイトインクW、オレンジインクOR、レッドインクRとする)を吐出する第2のノズル列(ここでは、CL、PR、W、OR、Rの各インクを吐出する5本のノズル列NL5~NL9を総称して第2のノズル列と称する)を有する。
【0081】
クリアインクCLを吐出するノズル列NL5は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて配置された複数のノズルNCL1~NCLnを有する。ここで、nは、例えば「420」である。
【0082】
すなわち、第2のノズル列におけるノズル数nは、第1のノズル列におけるノズル数m(=420)と同数に設定されている(但し、これは一例であり、これに限定されるものではない)。
【0083】
同様に、プライマーインクPRを吐出するノズル列NL6は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて配置された複数のノズルNPR1~NPRnを有する。同様に、ホワイトインクWを吐出するノズル列NL7は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて配置された複数のノズルNW1~NWnを有する。同様に、オレンジインクORを吐出するノズル列NL8は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて配置された複数のノズルNOR1~NORnを有する。同様に、レッドインクRを吐出するノズル列NL9は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて配置された複数のノズルNR1~NRnを有する。
【0084】
また、第1、第2のインクヘッド121、122は、第1の方向(副走査方向)Xにおいてずらされて配置(いわゆるスタガ配置)されている。なお、本実施形態では、第1、第2のインクヘッド121、122は、第1、第2のインクノズル列が第1の方向(副走査方向)Xにおいて数ノズル分(例えば6個のノズル)のみ重複するようにずらされて配置されている。
図3において、第1の方向(副走査方向)Xにおける距離d2に対応する、第1のノズル列NL1~NL4の各々の6個のノズル(NCi~NCm、NMi~NMm、NYi~NYm、NKi~NKm)と、第2のノズル列NL5~NL9の各々の6個のノズル(NCL1~NCLe、NPR1~NPRe、NW1~NWe、NOR1~NORe、NR1~NRe)と、が第1の方向(副走査方向)Xにおいて重複している。
この重複によって、第1のノズル列NL1~NL4と、第2のノズル列NL5~NL9との相対的な位置決めが容易化されると共に、各ノズル列間の相対的な位置の精度が向上する。
ただし、上記の例は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、第1、第2のインクヘッド121、122は、第1、第2のインクノズル列が第1の方向(副走査方向)Xにおいて重複しないようにずらされて配置されていてもよい。
【0085】
第1、第2のインクヘッド121、122がずれて配置(スタガ配置)されることにより、第1のノズル列(NL1~NL4)と、第2のノズル列(NL5~NL9)とは、同様に、第1の方向(副走査方向)Xにおいて、ずれて配置(スタガ配置)される。
【0086】
ここで、例えば、第1の光照射装置(UVランプ)17の複数の照射部Z1~Z4のうち、第1の方向において隣接して配置されている照射部Z1、Z2(ここでは、第1の照射部Z1、第2の照射部Z2とする)に着目する。
【0087】
なお、第2の光照射装置(UVランプ)18に関しては、第1の照射部はZ5、第2の照射部はZ6となる。但し、以下の説明では、説明を簡略化するために、第2の光照射装置(UVランプ)18における照射部Z5、Z6は記載せず、第1の照射部Z1、第2の照射部Z2のみに着目して説明する。
【0088】
照射制御部26は、第1の光照射装置17の第1の照射部Z1、及び第2の照射部Z2の各々の照射態様を異ならせる制御を実施するものとする。図3の例では、第1の照射部Z1は照射強度75%で点灯してUV光を照射し、第2の照射部Z2は非点灯(照射強度0%)である。
【0089】
また、第1のノズル列(NL1~NL4)は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて、第1の照射部Z1と重複する第1の重複範囲AR1と、第2の照射部Z2と重複する第2の重複範囲AR2とを備えている。重複範囲AR2は、第1の方向(副走査方向)Xにおける距離Dに対応する範囲である。
【0090】
また、第2のノズル列(NL5~NL9)は、第1の方向(副走査方向)Xにおいて、第2の照射部Z2と重複する第3の重複範囲AR3を備える。
【0091】
また、第1のインクヘッド121において、第2の重複範囲AR2に含まれるノズルは、NCh~NCm(例えば「120個」とする)、NMh~NMm、NYh~NYm、NKh~NKmである。
【0092】
図3の例では、吐出制御部24(第1の吐出制御部241)は、第1のノズル列における、第2の重複範囲AR2に含まれるノズル(NCh~NCm、NMh~NMm、NYh~NYm、NKh~NKm)からの第1のインク(C、M、Y、Kの各色のカラーインク)の吐出を禁止するインク吐出禁止制御(言い換えれば、電気的なマスキング処理)を実施する。
この結果、第1のノズル列NL1~NL4の各々において、実際に使用されるノズルは、NC1~NCg、NM1~NMg、NY1~NYg、NK1~NKgとなる。
【0093】
図3の例では、機械的な構成においては、第1の方向において、第1のノズル列(NL1~NL4)の一部が第2の照射部Z2と重複することを許容することとし(言い換えれば、第2の重複範囲AR2の存在を許容し)、これによって、インクヘッド121や光照射装置17のレイアウト(位置的な構成)の自由度を向上させ、また、インクヘッド121及び光照射装置17をキャリッジ10に取り付ける際の取り付けを容易化している。
【0094】
一方、第1のノズル列(NL1~NL4)の一部が第2の照射部Z2(非点灯)と重複することから、第2の重複範囲AR2におけるノズル(NCh~NCm、NMh~NMm、NYh~NYm、NKh~NKm)から吐出される各色のカラーインクは、吐出直後に光が照射されず硬化しないこととなり、インクの滲み等が生じてバンディング(横筋)の原因となる。
【0095】
このような印刷品質の低下の問題の対策として、図3の例では、第1のノズル列(NL1~NL4)における第2の重複範囲AR2に含まれるノズル(NCh~NCm、NMh~NMm、NYh~NYm、NKh~NKm)からの第1のインクの吐出を禁止するインク吐出禁止制御(電気的なマスキング処理)を実施する。
【0096】
すなわち、機械的な構成上は、第1のノズル列(NL1~NL4)の一部が第2の照射部Z2と重複することを許容するが、その重複する範囲のノズル(NCh~NCm、NMh~NMm、NYh~NYm、NKh~NKm)については、電気的な制御によってインクの吐出を禁止し(つまり、電気的にマスキングし)、実質的にその重複範囲(第2の重複範囲AR2)のノズルは無いものとして取り扱えるようにする。
【0097】
これにより、その重複範囲(第2の重複範囲AR2)のノズルから吐出された第1のインクについて所望の態様の光照射が実施されないことによる第1のインクの滲み等の問題が確実に抑制され、印刷品質の低下が抑制される。
【0098】
このように、インク吐出禁止制御(電気的なマスキング処理)によって、第1の光照射装置17と第1のインクヘッド121との間の、第1の方向(副走査方向)Xにおける位置の整合性が確保される。
【0099】
但し、位置の整合性は、第1のインクヘッド121(言い換えれば、第1のノズル列NL1~NL4)と第2のインクヘッド122(言い換えれば、第2のノズル列NL5~NL9)との間においても確保される必要がある。以下、この点について説明する。
【0100】
図3の例では、印刷ヘッド12は、第1のインクヘッド121と第2のインクヘッド122とを有し、第1のノズル列NC1~NC4は第1のインクヘッド121に搭載され、第2のノズル列NL5~NL9は第2のインクヘッド122に搭載される。
【0101】
先に説明したように、第1、第2のインクヘッド121、122は、第1の方向(副走査方向)Xにおいてスタガ配置されている。
【0102】
図3の例では、第2のインクヘッド122における第2のノズル列(NL5~NL9)の一部は、第1のインクヘッド121における第1のノズル列(NL1~NL4)の一部と第1の方向において重複している。
【0103】
ここで、インク吐出禁止制御(電気的なマスキング処理)が実施された後における、第1のノズル列(NL1~NL4)と、第2のノズル列(NL5~NL9)との間の第1の方向(副走査方向)Xにおける位置関係に着目する。
【0104】
図3の例において、第1のノズル列(NL1~NL4)における、使用可能なノズルのうちの最下流に位置するのは、ノズルNCg、NMg、NYg、NKgである。
【0105】
一方、第2のノズル列(NL5~NL9)における最上流のノズルは、NCL1、NPR1、NW1、NOR1、NR1である。
図3の例では、第1のノズル列(NL1~NL4)における、実際に使用される最下流のノズルNCg、NMg、NYg、NKgと、第2のノズル列(NL5~NL9)における最上流のノズルNCL1、NPR1、NW1、NOR1、NR1との間の、第1の方向(副走査方向)Xにおける距離(間隔)は、「d1」に設定されている。
距離d1の範囲に対応するノズルの数は、例えば「114」である。
言い換えれば、第1のノズル列(NL1~NL4)における、実際に使用される最下流のノズルNCg、NMg、NYg、NKgと、第2のノズル列(NL5~NL9)における最上流のノズルNCL1、NPR1、NW1、NOR1、NR1との間には、第1の方向(副走査方向)Xにおいて、114個のノズルに相当する間隔が設けられている。
このことは、第1、第2の各ノズル列間において、所定のオフセットを備える位置の整合が確保されている、ということである。
言い換えれば、第2のノズル列(NL5~NL9)は、第1のノズル列(NL1~NL4)を基準として、所定のオフセット量「d1」にて、位置的に整合している、ということになる。
なお、上記の例(位置の整合の例)は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、オフセットを無くして、第1のノズル列における実際に使用される最下流のノズルと、第2のノズル列における最上流のノズルが、第1の方向(副走査方向)Xにおける同じ位置に配置されてもよい。この場合は、各ノズルの位置が第1の方向(副走査方向)Xにおいて一致している。
すなわち、第1、第2の各ノズル列の位置が整合する場合としては、オフセットが有る場合、オフセットが無い場合の双方が含まれる。
【0106】
また、インク吐出禁止制御(電気的なマスキング処理)によって120個のノズルの使用が禁止されたとすると、全ノズル数が420個であることから、第1のノズル列(NL1~NL4)における使用可能なノズルの数は300(=420-120)個となる。
一方、上記のとおり、第2のノズル列(NL5~NL9)における全ノズル数も、420個に設定されている。
ここで、第1、第2の各ノズル列で使用するノズル数の比が整数でない場合、例えばメディアの搬送量の制御が複雑化することが想定され得る。
そこで、図3の例では、第2のノズル列(NL5~NL9)における使用可能なノズル数を、第1のノズル列における使用可能なノズル数と同数とするために、第2のノズル列の下流側120個のノズルの使用をインク吐出禁止制御によって禁止する。
具体的には、第2のノズル列(NL5~NL9)において、距離Dの範囲における下流側のノズル(NCLk~NCLn、NPRk~NPRn、NWk~NWn、NORk~NORn、NRk~NRn)についてのインク吐出禁止制御を実施することで、第2のノズル列におけるノズル数(実際に使用するノズル数)を、第1のノズル列におけるノズル数(実際に使用するノズル数)と整合させる。
なお、第2のノズル列でインク吐出禁止制御により使用を禁止するノズルの範囲は、下流側でなくてもよい。
例えば、第2のノズル列の上流側120個のノズルの使用を禁止してもよいし、第2のノズル列の上流側60個のノズルおよび下流側60個のノズルの使用を禁止してもよい。
また、第2のノズル列における使用可能なノズル数が、第1のノズル列における使用可能なノズル数の2倍や半分となるように第2のノズル列のノズルの使用を禁止してもよい。すなわち、第1のノズル列における使用可能なノズルの数と、第2のノズル列における使用可能なノズルの数との比が整数となるように、第2のノズル列の一部のノズルについてインク吐出禁止制御を実施する。
これにより、例えばメディアの搬送量を一定とすることができ、搬送量の制御が容易化される。
【0107】
このように、図3の例では、第1のノズル列(NL1~NL4)における第2の重複範囲AR2に含まれるノズルについてのインク吐出禁止制御が実施されることで、先に説明したように、第1の照射部Z1と、インク吐出禁止制御後の第1のノズル列(NL1~NL4)との、第1の方向(副走査方向)Xにおける、「照射部/第1のノズル列間の位置の整合性」が確保され、これに加えて、インク吐出禁止制御後の第1のノズル列(NL1~NL4)と、スタガ配置されている第2のノズル列(NL5~NL9)との、第1の方向(副走査方向)Xにおける、「第1のノズル列/第2のノズル列間の位置の整合性」も確保されることになる。
【0108】
このように、図3の例では、インク吐出禁止制御が実施された場合、「照射部と第1のノズル列間の位置の整合性」が確保されると共に、「第1のノズル列/第2のノズル列間の位置の整合性」も確保され、この結果、「光照射装置の照射部」、「第1のノズル列」、及び「第2のノズル列」の3つの部材の位置の整合が一挙に実現される。よって、インク吐出禁止制御後において、適正な印刷を実施することが可能である。
【0109】
また、図3の例では、第1のノズル列(NL1~NL4)から吐出される第1のインクは、第2のノズル列(NL5~NL9)から吐出される第2のインクよりも先にメディア2に塗布されるカラーインク(C、M、Y、Kの各色のカラーインク)であり、第2のノズル列(NL5~NL9)から吐出される第2のインクは、特殊インク(クリアインクCL、プライマーインクPR、ホワイトインクW、オレンジインクOR、レッドインクRの少なくとも1つ)である。但し、これらは例示であり、この例に限定されるものではなく、例えば、特殊インクとして、他のインク(液体)を使用してもよい。
【0110】
図3の例では、第1のインクとしてのカラーインク(C、M、Y、Kの各色のカラーインク)を先にメディア2に塗布して、例えば塗布直後に第1の照射部Z1の光照射によってカラーインクを硬化させ、その後、特殊インク(例えばクリアインクCL)を、カラーインクのドット上に塗布し、第2の照射部Z2では、第1の照射部Z1とは異なる態様の照射制御によって、例えば、特殊インク(クリアインクCL)については塗布直後の照射は実施しない等の処理を実施し、その後、時間をおいて他の照射部(例えば、図6における第3の照射部Z4)を用いて光の照射を実施し、特殊インク(クリアインクCL)を硬化させる、といった処理を実現できる。これにより、例えば、カラーインク上に、グロス調のクリアインク層(光沢層)を形成することができる。
【0111】
なお、「特殊インク」は、例えば、カラーインクの下地への塗布を意図する下地塗布型の特殊インクと、カラーインクや基材(メディア)の上への塗布を意図するコーティング型の特殊インクとに分類され得る。
【0112】
下地塗布型の特殊インクの例としては、例えば、カラーインクの下地にあらかじめ塗布して、カラーインクと下地となる基材(例えばメディア)との密着性を確保するために使用される「プライマーインク」やカラーインクの下地となる画像を形成するための「ホワイトインク」をあげることができる。プライマーインクは有色であっても、無色であってもよい。
【0113】
また、コーティング型の特殊インクとしては、カラーインクや基材(メディア)上に塗布して表面光沢を確保するために使用される「グロスインク」やカラーインク上に塗布する画像を形成するための「ホワイトインク」をあげることができる。グロスインクは無色であることが好ましい。
【0114】
(第2の実施形態)
図4図6を用いて、主要な印刷態様(原則的な印刷態様)について説明する。図4図6図7図9も同様)では、前掲の図と共通する部分には同じ符号を付しているが、構成を簡略して示している。
【0115】
図4図6図7図9も同様)では、ノズル列については、第1の方向(副走査方向)Xに沿って延在する直線にて示し、各ノズル列には符号は付していない。但し、各ノズル列が吐出するインクの種類がわかるように、第1のノズル列については、対応するノズル列にC、M、Y、Kの符号を付し、また、第2のノズル列については、CL、PR、W、OR、Rの少なくとも1つの符号を付している。
【0116】
次に、図4を参照する。図4は、光照射装置の複数の照射部の各々毎に照射態様(照射強度、点灯/非点灯)を制御する構成の一例を示す図である。
【0117】
図4の例では、光照射装置(UVランプ)17の照射部(照射領域)Z1~Z4、及び、光照射装置(UVランプ)18の照射部(照射領域)Z5~Z8の各々を、同じ強度(ここでは40%の照射強度)で点灯させる。
【0118】
このような照射パターンは、例えば、「C、M、Y、Kの各カラーインクのみを吐出して印刷する場合」、又は、「C、M、Y、Kの各カラーインクに加えて、レッドインク及びオレンジインクの少なくとも一方を吐出する場合」、あるいは、「C、M、Y、Kの各カラーインクに加えて、ホワイトインクを吐出する場合」、若しくは、「C、M、Y、Kの各カラーインクに加えて、クリアインクを吐出してマット調(光沢を抑制したモード)とする場合」、若しくは、「プライマーインクのみを吐出する場合」等において有効である。
なお、このような照射パターンにおいては、第1、第2のノズル列に対して、インク吐出禁止制御を実施しない。すなわち、第1、第2のノズル列はそれぞれ全てのノズル(420個のノズル)を使用する。
【0119】
また、照射部Z1~Z8の照射強度は、例えば、40%、50%、60%、75%のいずれかに設定することができ、どの照射強度を採用するかは、印刷モードによって決定される。各パスでのインク吐出量が少ないモードであれば、照射強度は弱く設定され、また、各パスでのメディアの搬送量が小さいモードであれば、照射強度は弱く設定される。
【0120】
次に、図5を参照する。図5は、照射部毎に照射態様(照射強度、点灯/非点灯)を異ならせる場合の他の例を示す図である。
【0121】
図5の例では、光照射装置17、18において、最下流に位置する照射部(照射領域)Z4、Z8のみが、例えば照射強度75%で点灯する。このような照射態様は、例えば、第2のインクヘッド122のノズル列から、クリアインクCLのみを吐出し、そのクリアインクをグロス調(光沢のあるモード)にする場合に有効である。
この場合、クリアインクCLのノズル列に対して、インク吐出禁止制御を実施しない。すなわち、クリアインクCLのノズル列の全てノズル(420個のノズル)を使用する。
【0122】
次に、図6を参照する。図6は、カラー印刷物に、グロス調のクリアインク層(光沢層)を形成する場合の照射制御例を示す図である。図6の例では、先に示した図3の構成が採用されている。図6において、図3と共通する部分には、同じ符号を付している。
【0123】
図6の例では、第1のインクヘッド121のノズル列から吐出される第1のインクは、第2のインクヘッド122のノズル列から吐出される第2のインクよりも先にメディア2に塗布されるカラーインクである。
【0124】
カラーインクは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の少なくとも1つを含む。また、第2のインクは、印刷物に光沢感を与える特殊インクとしてのクリアインクである。
【0125】
光照射装置17(18)は、第2の照射部Z2(Z6)を基準として、第1の方向(副走査方向)Xにおける、第1の照射部Z1(Z5)とは反対の方向(すなわち下流側)において第3の照射部Z4(Z8)を有する。
【0126】
そして、カラーインク上に塗布される特殊インク(クリアインク)を、光沢のあるグロス調とする場合において、照射制御部26は、第1の照射部Z1(Z5)を、第1の照射強度(ここでは照射強度75%)で点灯させ、第2の照射部Z2(Z6)を、非点灯とする、あるいは、第1の照射強度(照射強度75%)よりも低い第2の照射強度(例えば照射強度40%)で点灯させる。
【0127】
また、照射制御部26は、第3の照射部Z4(Z8)を、例えば、第1の照射強度(照射強度75%)で点灯させる。但し、第3の照射部Z4(Z8)の照射強度を、第1の照射強度とは異なる値に設定してもよい。
【0128】
先に説明したように、特殊インク(クリアインク)をグロス調に仕上げる場合は、特殊インク(クリアインク)の塗布直後は、第2の照射部Z2からの光照射は実施しない、あるいは、低い照射強度とされる。但し、その後、時間をおいて特殊インク(クリアインク)を硬化する必要がある。
【0129】
この点を考慮して、図6の例では、第2の照射部Z2(Z6)を基準として、第1の方向(副走査方向)Xにおける、第1の照射部Z1(Z5)とは反対の方向(言い換えれば下流側)において第3の照射部Z4(Z8)を設け、この第3の照射部Z4(Z8)による光照射によって、平滑化された後の特殊インク(クリアインク)を硬化させることとした。
【0130】
これにより、例えば、カラーインク上に、グロス調のクリアインク層(光沢層)を形成することができる。
【0131】
(第3の実施形態)
図7図9を用いて、変形例(例外的な印刷態様)について説明する。図7図9の例においても、本発明の技術思想を適用可能であるが、図7図9の例では、第1のインクヘッドが第2のインクヘッドよりも下流に位置したり、あるいは、第1のインクヘッドにおける第1のノズル列の上流側のノズルに対してインク吐出禁止制御を実施したりする等、先に示した図3図6の主要な例とは、若干異なる印刷態様(すなわち、例外的な印刷態様)となる。
【0132】
図7を参照する。図7は、変形例(特殊インクヘッドを上流側に設け、照射部毎に照射態様を制御する一例)を示す図である。
【0133】
第1のインクヘッド(カラーインクヘッド)121が下流側に位置し、第2のインクヘッド(特殊インクヘッド)122が上流側に位置し、かつ、第1のノズル列におけるインク吐出禁止制御(インク吐出禁止処理)の対象となるノズルは、第1のノズルの上流側のノズルである。
【0134】
図7の例は、例えば、密着性向上のためにプライマーインクPRを先にメディア2に吐出し、塗布直後は光を照射せずに平滑化し、その後、C、M、Y、K各色のカラーインクを吐出し、吐出直後に光を照射して硬化させる、という印刷処理を実施する場合に有効である。
【0135】
図7の例では、技術思想としては図3と同様であるが、図7図3では、上流側のインクヘッドと下流側のインクヘッドが逆になっている。また、照射部Z5、Z6(Z1、Z2)は非点灯であり、照射部Z7、Z8(Z3、Z4)は照射強度75%で点灯とする。このことを考慮すると、実質的に、光照射装置(UVランプ)17(及び18)における、照射部Z7(Z3)が、先に説明した第1の照射部に該当し、照射部Z6(Z2)が、先に説明した第2の照射部に該当する。
【0136】
図7の例においても、ノズル列について、第1~第3の重複範囲AR1~AR3を設定することができる。カラーインクを吐出するノズル列の、第1の方向(副走査方向)Xにおける照射部Z7(Z3)との重複範囲を第1の重複範囲AR1とし、照射部Z6(Z2)との重複範囲を第2の重複範囲AR2とし、特殊インクを吐出するノズル列の、第1の方向(副走査方向)Xにおける照射部Z6(Z2)との重複範囲を第3の重複範囲AR3とする。
【0137】
C、M、Y、Kの各色のインクは、吐出直後に光照射によって硬化されるが、第2の重複範囲AR2に含まれるノズルから吐出されるインクは、照射部Z6(Z2)が非点灯であることから硬化せず、カラーインクの滲み等の原因となる。
【0138】
そこで、第2の重複範囲AR2に含まれるノズルについては、インク吐出禁止制御(電気的なマスキング処理)によって、インクの吐出を禁止する。これによって、カラーインクの滲み等による印刷品質の低下を抑制することができる。
なお、特殊インクを吐出するノズル列の使用可能なノズル数と、カラーインクを吐出するノズル列において使用可能なノズル数との比を整数とするために、特殊インクを吐出するノズル列についてもインク吐出禁止制御を実施してもよい。
【0139】
次に、図8を参照する。図8は、他の変形例(特殊インクヘッドを上流側に設け、照射部毎に照射態様を制御する他の例)を示す図である。
【0140】
図8の例においても、図7と同様に、特殊インクを吐出するノズルを有する第2のインクヘッド122が上流側に位置し、C、M、Y、Kの各色のカラーインクを吐出する第1のインクヘッド121が下流側に位置する。
【0141】
図8の例においても、図7と同様に、密着性向上のためにプライマーインクPRを先にメディア2に吐出し、塗布直後は光を照射せずに平滑化し、その後、C、M、Y、K各色のカラーインクを吐出し、吐出直後に光を照射して硬化させる、という印刷処理を実施するものとする。
【0142】
但し、図8では、非点灯となる照射部は、Z5(Z1)であり、Z6~Z8(Z2~Z4)は、照射強度75%で点灯とする。この点、図7と異なる。
【0143】
図8の例においても、ノズル列について、第1~第3の重複範囲AR1~AR3を設定することができる。特殊インクを吐出するノズル列の、第1の方向(副走査方向)Xにおける照射部Z1(Z5)との重複範囲を第1の重複範囲AR1とし、照射部Z2(Z6)との重複範囲を第2の重複範囲AR2とし、カラーインクを吐出するノズル列の、第1の方向(副走査方向)Xにおける照射部Z6(Z2)との重複範囲を第3の重複範囲AR3とする。
【0144】
図8では、第2の重複範囲AR2に含まれるノズルから特殊インク(プライマーインク)を吐出させてしまうと、本来は吐出直後には光を照射せずに平滑化すべきであるが、照射部Z2(Z6)が点灯していることから、特殊インク(プライマーインク)が硬化してしまい、密着性の低下が生じる場合がある。
【0145】
そこで、図8では、第2の重複範囲AR2に含まれるノズルについてインク吐出禁止制御(電気的なマスキング処理)を実施し、そのノズルからは特殊インク(プライマーインク)が吐出されないようにする。これにより、印刷品質の低下が抑制される。
なお、カラーインクを吐出するノズル列の使用可能なノズル数と、特殊インクを吐出するノズル列において使用可能なノズル数との比を整数とするために、カラーインクを吐出するノズル列についてもインク吐出禁止制御を実施してもよい。
【0146】
次に、図9を参照する。図9は、さらに他の変形例(特殊インクを吐出するノズルを第1のノズル列としてインク吐出禁止制御を実施する例)を示す図である。
【0147】
図9では、カラーインクを吐出する第1のインクヘッド121が上流側に位置し、特殊インク(ここでは、クリアインクとする)を吐出する第2のインクヘッド122が下流側に位置する。
【0148】
図9では、複数の照射部のうち、非点灯となるのは、照射部Z7(Z3)であり、その他の照射部Z5(Z1)、Z6(Z2)、Z8(Z4)は照射強度75%で点灯する。
【0149】
図9の例では、C、M、Y、Kの各色のカラーインクを吐出し、その直後に、照射部Z1(Z5)、Z2(Z6)から光を照射してカラーインクを硬化させる。
【0150】
次に、カラーインクの上に特殊インク(クリアインク)を塗布し、照射部Z7(Z3)は非点灯として、塗布直後には光を照射せず、これによって特殊インク(クリアインク)を平滑化する。
【0151】
その後、時間をおいて、特殊インク(クリアインク)に、照射部Z8(Z4)から光を照射して特殊インク(クリアインク)を硬化させる。
【0152】
図9では、照射部Z7(Z3)が第1の照射部に該当し、照射部Z6(Z2)が第2の照射部に該当するとみることができる。
【0153】
この場合、特殊インクを吐出するノズル列の、第1の方向(副走査方向)Xにおいて、照射部Z7(Z3)と重複する範囲を第1の重複範囲AR1とし、照射部Z6(Z2)と重複する範囲を第2の重複範囲AR2とすることができる。また、カラーインクを吐出するノズル列の、第1の方向(副走査方向)Xにおいて照射部Z6(Z2)と重複する範囲を第3の重複範囲AR3とすることができる。
【0154】
特殊インク(クリアインク)は、本来は、塗布直後は光を照射せずに平滑化させるのであるが、第2の重複範囲AR2に含まれるノズルから吐出された特殊インク(クリアインク)は、照射部Z6(Z2)が75%の照射強度で点灯していることから、光の照射を受けて硬化し、よってグロス調に仕上げることができない。このことは、印刷品質の低下の原因となり得る。
【0155】
よって、第2の重複範囲AR2に含まれるノズルについて、インク吐出禁止制御(インク吐出禁止処理)を実施し、特殊インク(クリアインク)の吐出ができないようにする。これによって、印刷品質の低下が抑制される。
なお、カラーインクを吐出するノズル列の使用可能なノズル数と、特殊インクを吐出するノズル列において使用可能なノズル数との比を整数とするために、カラーインクを吐出するノズル列についてもインク吐出禁止制御を実施してもよい。
【0156】
以上の説明のとおり、本実施形態には、以下の態様が含まれる。
本実施形態の第1の態様では、メディアに光硬化性の第1のインクを吐出する第1のノズル列と、前記メディアに光硬化性の第2のインクを吐出すると共に、前記第1のノズル列と第1の方向においてずらされて配置されている第2のノズル列と、を備える印刷ヘッドと、前記第1の方向において分割されて設けられる複数の照射部を備える光照射装置と、前記印刷ヘッド及び前記光照射装置と、前記メディアと、を相対的に前記第1の方向、及び前記第1の方向に交差する第2の方向に移動させる移動機構と、前記印刷ヘッドにおける、前記第1のノズル列における前記第1のインクの吐出、及び前記第2のノズル列における前記第2のインクの吐出を制御する吐出制御部と、前記光照射装置の光照射を、前記複数の照射部の各々毎に制御可能な照射制御部と、を有し、前記光照射装置の前記複数の照射部は、前記第1の方向において隣接する第1の照射部、及び第2の照射部を含み、前記第1のノズル列が、前記第1の方向において、前記第1の照射部と重複する第1の重複範囲と、前記第2の照射部と重複する第2の重複範囲とを備え、前記第2のノズル列が、前記第1の方向において、前記第2の照射部と重複する第3の重複範囲を備え、かつ、前記照射制御部が、前記光照射装置の前記第1の照射部、及び前記第2の照射部の各々の照射態様を異ならせる制御を実施する場合には、前記吐出制御部は、前記第1のノズル列における、前記第2の重複範囲に含まれるノズルからの前記第1のインクの吐出を禁止するインク吐出禁止制御を実施する。
【0157】
第1の態様では、機械的な構成においては、第1の方向において、第1のノズル列の一部が第2の照射部と重複することを許容することとし、これによって、インクヘッドや光照射装置のレイアウト(位置的な構成)の自由度を向上させ、また、インクヘッド及び光照射装置をキャリッジに取り付ける際の取り付けを容易化する。
【0158】
一方、第1のノズル列の一部が第2の照射部と重複することによる印刷品質の低下の問題の対策として、第1のノズル列における、上記の重複範囲(第2の重複範囲)に含まれるノズルからの第1のインクの吐出を禁止するインク吐出禁止制御を実施する。
【0159】
すなわち、機械的な構成上は、第1のノズル列の一部が第2の照射部と重複することを許容するが、その重複する範囲のノズルについては、電気的な制御によってインク吐出を禁止し(つまり、電気的にマスキングし)、実質的にその重複範囲のノズルは無いものとして取り扱えるようにする。
【0160】
これにより、その重複範囲のノズルから吐出された第1のインクについて所望の態様の光照射が実施されないことによる第1のインクの滲み等の問題が確実に抑制され、印刷品質の低下が抑制される。
【0161】
第1の態様に従属する第2の態様では、前記印刷ヘッドは、第1のインクヘッドと第2のインクヘッドとを有し、前記第1のノズル列は前記第1のインクヘッドに搭載され、前記第2のノズル列は前記第2のインクヘッドに搭載され、前記第2のインクヘッドは、前記第2のノズル列が、前記第1のノズル列と前記1の方向においてずらされて配置され、前記吐出制御部によって、前記第1のノズル列における前記第2の重複範囲に含まれるノズルについての前記インク吐出禁止制御が実施されることで、前記第1の照射部と、前記インク吐出禁止制御後の前記第1のノズル列との、前記第1の方向における照射部/第1のノズル列間の位置の整合性、及び、前記インク吐出禁止制御後の前記第1のノズル列と、前記前記第2のノズル列との、前記第1の方向における第1のノズル列/第2のノズル列間の位置の整合性が確保されてもよい。
【0162】
第2の態様では、第1のノズル列は第1のインクヘッドに搭載され、第2のノズル列は第2のインクヘッドに搭載され、第1、第2の各インクヘッドは、ずらされて配置(スタガ配置)されている。
【0163】
この構成において、第1のノズル列についてインク吐出禁止制御が実施されると、第1のノズル列に含まれる一部のノズルは使用できなくなり、第1のノズル列の実質的な長さが変更される。
【0164】
この第1のノズル列の実質的な長さの変更は、スタガ配置されている第1、第2のインクヘッドにおける第1、第2のノズル列間の、第1の方向における相対的な位置関係にも影響を与える。
【0165】
従って、第1のノズル列の一部のノズルについてインク吐出禁止制御が実施された後において、第1、第2のノズル列間の適正な位置関係が実現される必要がある。
【0166】
そこで、本態様では、インク吐出禁止制御によって使用できなくなるノズルの数を考慮して、第1、第2の各インクヘッドの、第1の方向における重複の程度を調整したり、あるいは、第2のインクヘッドに搭載される第2のノズル列の、第1の方向における位置を調整したり、若しくは、ノズル列におけるノズル数を調整したりしておく。
【0167】
これにより、第1のノズル列についてインク吐出禁止制御が実施された場合、その制御後の第1のノズル列と第2のノズル列との第1の方向における相対的な位置関係が所望の位置関係となる。
【0168】
すなわち、第1のノズル列についてのインク吐出禁止制御が実施されると、第1の態様で示したとおり、第1の照射部と、第1のインクヘッドにおけるインク吐出禁止制御後の第1のノズル列との、第1の方向における「照射部/第1のノズル列間の位置の整合性」が確保され、かつ、第2の態様では、それに加えて、インク吐出禁止制御後の第1のノズル列と第2のノズル列との、第1の方向における「第1のノズル列/第2のノズル列間の位置の整合性」も確保される。
【0169】
このように、本態様では、インク吐出禁止制御が実施された場合、「照射部と第1のノズル列間の位置の整合性」が確保されると共に、「第1のノズル列/第2のノズル列間の位置の整合性」も確保され、この結果、「光照射装置の照射部」、「第1のノズル列」、及び「第2のノズル列」の3つの部材の位置の整合が一挙に実現される。よって、インク吐出禁止制御後において、適正な印刷を実施することが可能である。
【0170】
第1、第2の態様に従属する第3の態様では、前記第1のインクは、前記第2のインクよりも先に前記メディアに塗布されるカラーインクであり、前記第2のインクは、特殊インクであってもよい。
【0171】
第3の態様によれば、例えば第1のインクとしてのカラーインクを先に塗布して、例えば塗布直後に第1の照射部の光照射によってカラーインクを硬化させ、その後、特殊インク(クリアインク)を、カラーインクのドット上に塗布し、第2の照射部では、第1の照射部とは異なる態様の照射制御によって、例えば、特殊インク(クリアインク)については塗布直後の照射は実施しない等の処理を実施し、その後、時間をおいて他の照射部を用いて照射を実施し、特殊インク(クリアインク)を硬化させる、といった処理を実現できる。
これにより、例えば、カラーインク上に、グロス調のクリアインク層(光沢層)を形成することができる。
【0172】
第1、第2の態様に従属する第4の態様では、前記第1のインクは、前記第2のインクよりも先に前記メディアに塗布される特殊インクであり、前記第2のインクは、カラーインクであってもよい。
【0173】
第4の態様によれば、第1のインクとしての特殊インク(例えば、密着性を向上させる効果をもつプライマーインク)を先に塗布し、例えば第1の照射部は非点灯として、塗布直後には特殊インク(プライマーインク)を平滑化し、その後、第2のインクとしてのカラーインクを特殊インク(プライマーインク)上に塗布し、第2の照射部では、第1の照射部とは異なる態様の照射制御によって、例えば、第2のインクとしてのカラーインクについては塗布直後に第2の照射部による照射を実施して、カラーインクを硬化させる、といった処理を実現することができる。
これにより、例えば、金属やガラス等のカラーインクが密着しにくいメディア上においても、平坦化されたプライマーインクを下地に設けることで、カラーインクとメディアとの密着性を向上させることができる。
【0174】
第1、第2の態様に従属する第5の態様では、前記第1のインクは、前記第2のインクよりも先に前記メディアに塗布される、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の少なくとも1つを含むカラーインクであり、前記第2のインクは、印刷物に光沢感を与える特殊インクであり、前記光照射装置は、前記第2の照射部を基準として、前記第1の方向における、前記第1の照射部とは反対の方向において第3の照射部を有し、前記カラーインク上に塗布される前記特殊インクを、光沢のあるグロス調とする場合において、前記照射制御部は、前記第1の照射部を、第1の照射強度で点灯させ、前記第2の照射部を、非点灯とする、あるいは、前記第1の照射強度よりも低い第2の照射強度で点灯させ、前記第3の照射部を点灯させてもよい。
【0175】
第5の態様は、先に第3の態様の説明にて例示した、カラーインク(C、M、Y、Kの少なくとも1つを含む)上に、グロス調の特殊インク(例えばクリアインクの光沢層)を形成する場合の構成を明確化している。
【0176】
先に説明したように、特殊インク(クリアインク)をグロス調に仕上げる場合は、特殊インク(クリアインク)の塗布直後は、第2の照射部からの光照射は実施しない、あるいは、低い照射強度とされる。但し、その後、時間をおいて特殊インク(クリアインク)を硬化する必要がある。
【0177】
この点を考慮して、第5の態様では、第2の照射部を基準として、第1の方向における、第1の照射部とは反対の方向において第3の照射部を設け、この第3の照射部による照射によって、特殊インク(クリアインク)を硬化させることとした。
これにより、例えば、カラーインク上に、グロス調のクリアインク層(光沢層)を形成することができる。
【0178】
第1、第2の態様に従属する第6の態様では、前記吐出制御部は、前記インク吐出禁止制御後の前記第1のノズル列における前記第1のインクを吐出するノズル数と、前記第2のノズル列から前記第2のインクを吐出するノズル数との比が整数となるように、前記第2のノズル列の一部のノズルからの前記第2のインクの吐出を禁止するインク吐出禁止制御を実施してもよい。
【0179】
第6の態様では、吐出制御部が、第1のノズル列における、第2の重複範囲に含まれるノズルからの第1のインクの吐出を禁止するインク吐出禁止制御を実施する際、第2のノズル列においても、第2のノズル列のノズル数を第1のノズル列のノズル数と整合させるためのインク吐出禁止制御を実施する。
言い換えれば、第1のノズル列については、印刷品質の低下を抑制するための「第1のインク吐出禁止制御」が実施され、第2のノズル列については、第1、第2の各ノズル列におけるノズル数を整合させるための「第2のインク吐出禁止制御」が実施される。
第2のインク吐出禁止制御による効果は、例えばメディアの搬送量を一定とすることができることである。
すなわち、各ノズル列で使用するノズル数の比が整数でない場合、例えばメディアの搬送量の制御が複雑化する。
基本的には、各ノズル列のノズル数を同数とすることが想定される。但し、これは、好ましい実施例の一つであり、これに限定されるものではない。例えば、第1、第2の各ノズル列におけるノズル数の比を、例えば1:2とする(言い換えれば、「ノズル数の比が整数」となるように調整する)ことも可能である。
【0180】
以上説明したように、本発明によれば、インクヘッドや光照射装置のレイアウトの自由度を確保しつつ、ノズル列から吐出された光硬化性のインクの一部に所望の光照射がされないことによる印刷品質の低下を抑制することができる。
【0181】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0182】
1・・・インクジェットプリンタ(プリンタ、印刷装置)、2・・・メディア(記録媒体)、3・・・プラテン、4・・・ガイドレール、5A・・・ピンチローラ、5B・・・グリッドローラ、5C・・・フィードモータ、6L、6R・・・プーリ、7・・・ベルト、8・・・キャリッジモータ、9・・・操作パネル(操作部)、10・・・キャリッジ、11・・・搬送機構(メディア移動機構)、12・・・印刷ヘッド、13・・・キャリッジ移動機構、16(16a、16b)・・・アクチュエータ、17、18・・・第1、第2の光照射装置(第1、第2のUVランプ)、19・・・光照射装置(UVランプ)、20・・・制御部(印刷制御装置)、21・・・印刷データ受信部、22・・・フィード制御部、23・・・スキャン制御部、24・・・吐出制御部、25・・・ノズル使用範囲設定レジスタ、26・・・照射制御部、27・・・ランプ駆動電流制御部、28・・・記憶部(メモリ)、100・・・ホストコンピュータ、102・・・操作部、121・・・第1のインクヘッド(カラーインクヘッド等)、122・・・第2のインクヘッド(特殊(あるいは特色)インクヘッド等)、241、242・・・第1、第2の吐出制御部、NLl~NL4・・・第1のノズル列、NL5~NL9・・・第2のノズル列、AR1・・・第1のノズル列NL1~NL4が第1の方向(X方向)において第1の照射部Z1と重複する第1の重複範囲、AR2・・・第1のノズル列NL1~NL4が第1の方向(X方向)において第2の照射部Z2と重複する第2の重複範囲、AR3・・・第2のノズル列NL5~NL9が、第1の方向(X方向)において、第2の照射部Z2と重複する第3の重複範囲、Z1~Z8・・・照射部(分割され、かつ照射を個別に制御可能な照射部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9