(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104466
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240729BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/165 301
B41J2/165 211
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008680
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】四ノ宮 文二
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB21
2C056EB34
2C056EC20
2C056EC24
2C056EC32
2C056EC37
2C056EC53
2C056FA10
2C056JA13
2C056JB04
2C056JB15
2C056JC06
2C056KA01
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB13
2C056KB35
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】インクの吐出不良による印刷物の不良の発生を抑制する。
【解決手段】プリンタ10は、ノズル46を備えるインクヘッド40と、ダンパー54と、ノズル面45を覆うキャップ71と、制御装置90と、を備えている。制御装置90は、吸引処理と、ワイピング処理と、フラッシング処理と、を実行するときに、インクヘッド40のノズルの圧力を、画像形成時の圧力よりも高い圧力にする。ノズル46の圧力を、画像形成時の圧力よりも高い圧力としておくことで、ノズル面45に付着したゴミなどがノズル46に吸い込まれることが防がれる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが収容されたインク収容容器と、
前記インク収容容器に接続されたインク供給路と、
前記インク供給路に連通するノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、
前記インク供給路における前記インク収容容器と前記インクヘッドとの間に設けられ、前記インクが一時的に貯留される中間容器と、
前記インク供給路の圧力を検出する圧力検出装置を有し、前記中間容器内の圧力の制御を行う圧力制御機構と、
前記ノズル面を拭うワイパーと、前記ワイパーを支持し、前記ワイパーを前記ノズル面に接触させる位置、および前記ノズル面に接触しない位置に移動させるワイパー駆動装置と、を有するワイピング機構と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記圧力制御機構を制御する圧力制御部と、
前記ワイパーによって前記ノズル面をワイピングするように前記ワイピング機構または前記インクヘッドの移動を制御してワイピング処理を行うワイピング制御部と、を備え、
前記圧力制御部は、前記ワイピング処理の前に、前記中間容器の圧力を前記インクヘッドが印刷物にインクを吐出するときの所定の負圧である第1圧力よりも高い圧力である第2圧力に設定し、
前記ワイピング制御部は、前記圧力制御部が前記中間容器の圧力を前記第2圧力に設定した後に、前記ワイピング処理を行うように構成されている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記圧力制御機構は、前記インク供給路に設けられた送液ポンプを備える、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記圧力制御部は、前記ワイピング処理の実行後に、前記中間容器の圧力が前記第1圧力となるように前記圧力制御機構を制御するように設定されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記ノズルを覆うことができるキャップと、
前記キャップに接続され、前記キャップ内の前記インクを吸引する吸引ポンプと、を備え、
前記制御装置は、前記吸引ポンプを駆動し、前記ノズルから前記インクを吸引する吸引処理を行う吸引ポンプ制御部を備え、
前記圧力制御部は、前記吸引処理の前に、前記中間容器の圧力を前記第2圧力に設定するように構成されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記ワイピング制御部は、前記ワイピング処理を複数回実行するように設定されている請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記中間容器は、前記圧力検出装置に接続された接続部を有する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記第2圧力は、前記ノズルに形成された前記インクのメニスカスが壊れるときの圧力である第3圧力よりも低い圧力に設定されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記第2圧力は、前記第1圧力よりも大きく、大気圧よりも低い負圧である、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記第2圧力は、大気圧と等しい、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記第2圧力は、大気圧よりも大きい圧力である、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ノズルの目詰まりの解消やノズル面に付着した硬化したインクおよびゴミの除去のために、ノズルおよびノズル面のクリーニングを定期的に行うインクジェットプリンタが知られている。例えば、特許文献1には、ノズル面を有するインクヘッドと、インク供給路の圧力変動を緩和するダンパーと、インクヘッドに装着可能なキャップと、キャップに接続された吸引ポンプと、を備えたインクジェットプリンタが開示されている。特許文献1によれば、キャップをインクヘッドに装着し、吸引ポンプを駆動すると、インクヘッドのノズルからインクが吸引される。このことにより、インクの詰まりが防止される。その後、キャップを取り外し、ノズル面をワイピングすることで、ノズル面に付着していたインクやゴミが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなインクジェットプリンタでは、インク吐出時以外にノズルからインクが漏れないように、インク供給路の圧力が制御されている。ノズルに形成されるメニスカスがノズルの内側に引き込まれるように、インク供給路の圧力が負圧に保たれている。このことにより、ノズルからインクが漏れ出すことが防止されている。かかるインクジェットプリンタでは、インク供給路に設けられたダンパーが制御されることで、インク供給路が負圧に保たれる。ダンパーは、内部に貯留室を備えている。インク供給路の圧力が所望の圧力より大きくなっても、貯留室にインクを一時的に貯めることにより、インク供給路の負圧が維持される。
【0005】
ここで、ノズルおよびノズル面のクリーニングを実行する場合、吸引ポンプにより、インク供給路、ダンパーおよびインクヘッドの内部のインクを吸引する吸引動作が実行される。吸引動作が実行されるとき、まず、インクヘッドにキャップが装着される。次に、キャップに接続された吸引ポンプが駆動することにより、インク供給路、ダンパーおよびインクヘッドの内部のインクが吸引される。吸引動作が完了すると、キャップ内を外気と連通させ、キャップ内の圧力を大気圧の状態に戻す。このとき、インクヘッド内、ダンパー、およびインク供給路の圧力は負圧に保たれているため、インクヘッドのノズル面に付着しているインクは、ノズルの内部に吸い込まれる。ここで、硬化したインクやゴミがノズル面に付着していると、これらがノズル面に付着しているインクとともにノズルの内部に混入する可能性がある。硬化したインクやゴミがノズルの内部に混入すると、インクヘッドが所望のとおりインクを吐出することができず、印刷物に不良が生じる。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクの吐出不良による印刷物の不良の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるインクジェットプリンタは、インクが収容されたインク収容容器と、前記インク収容容器に接続されたインク供給路と、前記インク供給路に連通するノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、前記インク供給路における前記インク収容容器と前記インクヘッドとの間に設けられ、前記インクが一時的に貯留される中間容器と、前記インク供給路の圧力を検出する圧力検出装置を有し、前記中間容器内の圧力の制御を行う圧力制御機構と、前記ノズル面を拭うワイパーと、前記ワイパーを支持し、前記ワイパーを前記ノズル面に接触させる位置、および前記ノズル面に接触しない位置に移動させるワイパー駆動装置と、を有するワイピング機構と、制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記圧力制御機構を制御する圧力制御部と、前記ワイパーによって前記ノズル面をワイピングするように前記ワイピング機構または前記インクヘッドの移動を制御してワイピング処理を行うワイピング制御部と、を備えている。前記圧力制御部は、前記ワイピング処理の前に、前記中間容器の圧力を前記インクヘッドが印刷物にインクを吐出するときの所定の負圧である第1圧力よりも高い圧力である第2圧力に設定するように構成されている。前記ワイピング制御部は、前記圧力制御部が前記中間容器の圧力を前記第2圧力に設定した後に、前記ワイピング処理を行うように構成されている。
【0008】
上記インクジェットプリンタによれば、前記圧力制御部が、前記中間容器の圧力を、前記インクヘッドが印刷物にインクを吐出するときの所定の負圧である前記第1圧力よりも高い前記第2圧力となるように設定してから、前記ワイピング処理を実行する。したがって、ノズル面に付着している硬化したインクやゴミがノズルの内部に吸いこまれることが抑制される。このことにより、インクヘッドから所望のとおりインクを吐出できなくなる吐出不良が発生する可能性を低減することができる。よって印刷物の不良の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクの吐出不良による印刷物の不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るプリンタの正面図である。
【
図2】第1実施形態に係るインクヘッドの底面の構成を示す模式図である。
【
図3】インクヘッドおよびインク供給ユニットの構成を示す模式図である。
【
図4】キャリッジ、インクヘッドおよびキャップ機構を示す正面図であり、インクヘッドからキャップが離間している状態を示す図である。
【
図5】キャリッジ、インクヘッドおよびキャップ機構を示す正面図であり、インクヘッドにキャップが装着されている状態を示す図である。
【
図6】キャリッジ、ワイパーおよびワイピング機構を示す正面図である。
【
図7】第1実施形態に係るプリンタの制御装置のブロック図である。
【
図8】第1実施形態に係るクリーニング動作の手順を示したフローチャートである。
【
図9】第2実施形態に係るインクヘッドの底面の構成を示す模式図である。
【
図10】第2実施形態に係るプリンタの制御装置のブロック図である。
【
図11】第2実施形態に係るキャリッジおよびワイピング機構を模式的に表した平面図である。
【
図12】第2実施形態において、キャリッジおよびワイピング機構を模式的に示した右側面図であり、ワイパーが除去位置にいるときを示す図である。
【
図13】第2実施形態において、キャリッジおよびワイピング機構を模式的に示した右側面図であり、ワイパーがワイピング位置にいるときを示す図である。
【
図14】第2実施形態において、キャリッジおよびワイピング機構を模式的に示した右側面図であり、ワイパーが塗布位置にいるときを示す図である。
【
図15】第2実施形態に係るクリーニング動作の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。
図2は、プリンタ10のキャリッジ17およびインクヘッド40の底面の構成を模式的に示す底面図である。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは、主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Zは、昇降方向である。本実施形態では、昇降方向Zは上下方向である。
図2に示す符号Xは、副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)する方向である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体5に印刷を行う。記録媒体5は、例えば、長尺に形成され、ロール状に巻かれて用いられる。なお、記録媒体5は、シート状のものであってもよい。記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ接着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材等が含まれる。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体11と、プラテン13と、搬送機構20と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、ヘッド移動機構30と、インクヘッド40と、インク供給ユニット50と、制御装置90とを備えている。また、
図1において図示は省略するが、プリンタ10は、プリンタ本体11の右部11Rに、キャップ機構70(
図4および
図5参照)と、ワイピング機構140(
図6参照)と、を備えている。
【0015】
プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシング11Aを有している。プリンタ本体11は、脚12によって支持されている。脚12は、プリンタ本体11の下面に設けられ、当該下面から下方に延びている。
【0016】
プラテン13は、記録媒体5への印刷の際、記録媒体5を支持する部材である。プラテン13は、主走査方向Yに延びている。プラテン13には、記録媒体5が載置される。
【0017】
プラテン13に支持された記録媒体5は、搬送機構20によって副走査方向Xに搬送される。なお、搬送機構20の構成は、特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつガイドレール15よりも下方に設けられ、記録媒体5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ21は、平面視においてキャリッジ17よりも後方に配置されている。グリットローラ22は、プラテン13に設けられ、外周形状が円柱状の部材である。グリットローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン13に埋設されている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。グリットローラ22には、フィードモータ23が接続されている。ピンチローラ21とグリットローラ22との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことにより、プラテン13上の記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0018】
ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に摺動可能に設けられ、主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0019】
ヘッド移動機構30は、プラテン13に支持された記録媒体5に対して、キャリッジ17およびインクヘッド40を主走査方向Yに相対的に移動させる機構である。ここでは、ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド40を主走査方向Yに移動させる。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。
【0020】
本実施形態では、
図1に示すように、ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、スキャンモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部の周囲に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部の周囲に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が固定されている。右のプーリ31bには、スキャンモータ33が接続されている。
【0021】
ここでは、スキャンモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド40は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
【0022】
図1に示すように、インクヘッド40はキャリッジ17に設けられている。インクヘッド40は、その下面を露出するように、キャリッジ17に支持されている。インクヘッド40の数は特に限定されない。
図2に示すように、本実施形態では、インクヘッド40の数は4つである。4つのインクヘッド40は、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0023】
インクヘッド40は、ノズル面45を有している。ノズル面45は、インクヘッド40の底面を構成している。各ノズル面45には、ノズル46が形成されている。ノズル46は、記録媒体5にインクを吐出する微細な穴である。インクヘッド40において、複数のノズル46は、副走査方向Xに並ぶノズル列を形成している。ここでは、主走査方向Yに隣り合う2列のノズル列が形成されている。ノズル46の形成する2つの列をそれぞれノズル列46aとする。ここでは、各インクヘッド40におけるノズル列の数は2列であるが、これに限定されない。ノズル列の数は、1列でもよく、3列以上でもよい。また、
図2では、ノズル列を形成するノズル46の数は12個としているが、実際にはもっと多数(例えば200~300個程度)のノズル46が形成されている。ノズル列46aを形成するノズル46の数は限定されない。また、本実施形態では、インクヘッド40の数は4つだが、インクへッドの数は4つに限定されない。
【0024】
図3は、インクヘッド40およびインク供給ユニット50の構成を示す模式図である。インク供給ユニット50は、インク収容容器51と、インク供給路52と、バルブ53と、ダンパー54と、圧力制御機構55と、を有している。インク収容容器51は、インクが収容される容器である。インク収容容器51は、例えば、インクタンクやインクカートリッジであってもよいし、パウチ状のものであってもよい。圧力制御機構55は、送液ポンプ55aと、圧力センサ55bと、を有している。
【0025】
インク収容容器51には、例えばプロセスカラーインクおよび特色インク(例えばホワイトインク、クリアインクなど)のうちの1つのインクが貯留されている。ただし、インク収容容器51に貯留されるインクの色は特に限定されない。インクは、無色インクであってもよい。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、上記インクは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクなどであってもよい。
【0026】
インク供給路52は、インク収容容器51とインクヘッド40とを接続する流路である。インク供給路52の一端は、インク収容容器51に接続され、インク供給路52の他端は、インクヘッド40に接続されている。インク供給路52の構成は特に限定されないが、インク供給路52は、例えば可撓性を有するチューブによって構成されている。インク収容容器51内のインクは、インク供給路52を流れてインクヘッド40に供給される。
【0027】
バルブ53は、インク供給路52に配置されている。バルブ53は、インク収容容器51と送液ポンプ55aとの間に配置されている。バルブ53は、インク供給路52を開放または閉鎖可能に構成されている。すなわち、バルブ53が開放されると、インク供給路52が開放され、バルブ53が閉鎖されると、インク供給路52が閉鎖される。バルブ53がインク供給路52を開放することにより、インク収容容器51に収容されたインクをインクヘッド40に供給することができる。一方、バルブ53がインク供給路52を閉鎖することにより、インク収容容器51に収容されたインクをインクヘッド40に供給することができなくなる。バルブ53は、制御装置90によって制御される。
【0028】
ダンパー54は、インク供給路52を通るインクの圧力変動を緩和して、インクヘッド40のインクの吐出を安定させるものである。ダンパー54は、中間容器の一例である。例えば、ダンパー54内の圧力に応じて、送液ポンプ55aの駆動が制御される。ここでは、ダンパー54は、インクヘッド40の上部に設けられている。
【0029】
なお、ダンパー54の構成は特に限定されない。本実施形態では、ダンパー54は、インクが一時的に貯留されるインク室60を有している。図示は省略するが、インク室60の壁の一部は弾性膜によって形成されている。インク室60は、貯留されるインクの量に応じて伸縮する。インク室60は、インク供給路52およびインクヘッド40に連通している。図示は省略するが、インク室60には、インク供給路52に接続される流入口、および、インクヘッド40に接続される流出口が形成されている。また、インク室60には、インク供給路52に接続される循環用流出口が形成されている。、循環用流出口は、沈降が生じやすいインクであるホワイトインク等の路内循環を行うために使用されるものである。したがって、沈降が生じやすいホワイトインク等以外のインクを有するインク室60では、循環用流出口に栓が取り付けられている。
【0030】
圧力制御機構55は、ダンパー54の内部のインクの圧力を制御する。圧力制御機構55は、送液ポンプ55aと、圧力センサ55bと、を有している。
【0031】
送液ポンプ55aは、インク供給路52に設けられている。送液ポンプ55aは、インク収容容器51に収容されたインクをインクヘッド40に供給する。送液ポンプ55aは、駆動時、インク収容容器51からインクヘッド40に向かってインクを送液する。なお、送液ポンプ55aの種類は特に限定されないが、送液ポンプ55aは、例えばダイヤフラムポンプやチューブポンプなどである。
【0032】
圧力センサ55bは、ダンパー54内の圧力を検出するものである。圧力センサ55bは、圧力検出装置の一例である。ここで、「ダンパー54内の圧力」とは、ダンパー54を構成するインク室60内のインクの圧力のことを意味する。圧力センサ55bは、例えば、ダンパー54内のインクの圧力の大きさを電気信号により直接測定するセンサである。また、圧力センサ55bは、インク室60の大きさ(例えば伸縮の程度)に基づいてダンパー54内の圧力を検出するものであってもよい。本実施形態では、圧力センサ55bは、ダンパー54内の圧力を測定するため、接続部55cを介してインク室60と接続されている。
【0033】
次に、キャップ機構70について説明する。
図4および
図5は、キャリッジ17、インクヘッド40およびキャップ機構70を示す正面図である。
図4および
図5に示す状態では、キャリッジ17は、主走査方向Yにおいて、ガイドレール15の右端に位置している。
図4に示すように、キャップ機構70は、キャップ71と、昇降装置72と、吸引ポンプ73とを有している。
【0034】
キャップ71は、ノズル46(
図2参照)を覆うようにインクヘッド40に装着されるものである。1つのキャップ71が装着されるインクヘッド40の数は1つである。そのため、キャップ71の数は、インクヘッド40の数と同じ4つである。
【0035】
キャップ71内には、吸収体75が設けられている。吸収体75は、キャップ71に収容されている。吸収体75は、インクヘッド40からキャップ71内にインクが吐出(または排出)されたとき、当該インクを受ける部材である。吸収体75が受けたインクは、吸収体75に吸収される。吸収体75は、キャップ71の上端よりも下方に配置されている。吸収体75を形成する材料は、インクを吸収するものであれば特に限定されない。ここでは、吸収体75は、多孔質の材料によって形成されている。例えば吸収体75は、ポリビニルアルコールから形成されたスポンジ(PVAスポンジ)である。
【0036】
昇降装置72は、インクヘッド40に対してキャップ71を相対的に昇降させる装置である。ここでは、昇降装置72は、キャップ71を昇降させるように構成されている。昇降装置72は、インクヘッド40に対してキャップ71を装着させ、およびキャップ71を離間させる機構である。
図4は、インクヘッド40に対してキャップ71を離間させた状態を示している。
図5は、インクヘッド40に対してキャップ71を装着させた状態を示している。なお、昇降装置72の構成は特に限定されない。本実施形態では、昇降装置72は、支持部材77と、昇降モータ78とを有している。支持部材77は、例えば主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びる板状の部材であり、4つのキャップ71を支持する。昇降モータ78は、支持部材77に接続されている。昇降モータ78が駆動すると、支持部材77が昇降する。この支持部材77の昇降に伴い、4つのキャップ71は同時にまとめて昇降する。そして、4つのキャップ71が昇降することで、ノズル面45に対してキャップ71をまとめて装着させたり、離間させたりすることができる。
【0037】
吸引ポンプ73は、支持部材77の内部を通じてキャップ71に接続されている。吸引ポンプ73は、キャップ71内のインクや、キャップ71に装着されたインクヘッド40内のインクを吸引する。吸引ポンプ73の種類は特に限定されないが、例えばチューブポンプである。吸引ポンプ73は、チューブ79の途中部分に設けられている。チューブ79の一端はキャップ71に接続され、チューブ79の他端は廃液タンク(図示せず)に接続されている。廃液タンクの個数は、例えば1つである。廃液タンクは、チューブ79を介してキャップ71に接続されている。
図5に示すように、例えばキャップ71がインクヘッド40に装着された状態で吸引ポンプ73が駆動すると、キャップ71内に負圧が形成される。このことにより、ノズル46からインクが吸い出され、インクがキャップ71に排出される。吸引ポンプ73に吸引されたインクなどは、チューブ79を介して廃液タンクに排出される。
【0038】
次に、
図6に示すワイピング機構140について説明する。ワイピング機構140は、ガイドレール15の右端付近に設けられている。ワイピング機構140は、インクヘッド40のノズル面45を拭う機構であり、ノズル面45をクリーニング(換言すると、ワイピング)する機構である。ワイピング機構140はワイパー141を備えている。ワイパー141は、インクヘッド40のノズル面45を拭う部材である。ワイパー141は、前後方向および上下方向に延びる平板状の部材である。ワイパー141の前後方向の長さは、インクヘッド40の前後方向の長さよりも長く構成されている。ワイパー141は、例えば、ゴムで形成されている。
【0039】
ワイピング機構140は、ワイパー141に加えて、回転軸142と、洗浄液槽143と、ワイパー駆動装置144と、を備えている。回転軸142は、ワイパー141の一端を支持しており、ワイパー141の一端に接続されている。ワイパー141は、回転軸142を中心に回転可能である。回転軸142は、前後方向に延びている。回転軸142が回転すると、ワイパー141は上方または下方に移動する。ワイパー141が上方に移動すると、ワイパー141の端部は、インクヘッド40のノズル面45よりもわずかに高い位置に位置する。そこで、ワイパー141を上方に移動させた状態でキャリッジ17を右方に移動させると、ワイパー141によりインクヘッド40のノズル面45をワイピングすることができる。一方、ワイパー141は、下方に移動すると、洗浄液槽143中の洗浄液に浸漬される。ワイパー141のうち、少なくともノズル面45に接触した部分が、洗浄液槽143の中の洗浄液に浸漬される。ワイパー141が洗浄液に浸漬することによって、ワイパー141に付着した付着物が取り除かれる。ワイパー141は、ワイパー駆動装置144によって回転される。ワイパー141が、ワイパー駆動装置144によって回転されることにより、ワイパー141をインクヘッド40のノズル面45に接触させ、およびインクヘッド40のノズル面45から離間させることができる。
【0040】
本実施形態では、
図1に示すように、プリンタ本体11の右端部に、操作パネル80が設けられている。操作パネル80には、機器状態を表示する表示画面81と、ユーザによって操作される入力キー82などが設けられている。
【0041】
次に、制御装置90について説明する。制御装置90は、印刷に関する制御、および、インクヘッド40のクリーニングの制御などを行う装置である。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、を備えている。制御装置90は、プリンタ本体11の内部に設けられている。ただし、制御装置90は、プリンタ本体11の外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介してプリンタ10の制御基板(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0042】
本実施形態では、ノズル46およびノズル面45のクリーニングを実行するため、
図7に示すように、制御装置90は、圧力制御部91と、キャッピング制御部92と、吸引ポンプ制御部93と、ワイピング制御部94と、フラッシング制御部95と、を備えている。なお、上述した制御装置90の各部91~95は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置90の各部91~95は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0043】
圧力制御部91は、圧力制御機構55を制御することにより、ダンパー54内の圧力を制御する。圧力制御部91は、圧力センサ55bの測定値に基づいて送液ポンプ55aを適宜駆動することにより、ダンパー54内の圧力を制御することができる。圧力制御部91は、印刷を実行するときには、ダンパー54内の圧力を第1圧力に制御する。ダンパー54内の圧力が第1圧力のときには、インクヘッド40のノズル46の内側にメニスカスが引き込まれる。本実施形態では、例えば第1圧力の値は、-0.6kPaである。圧力制御部91は、送液ポンプ55aを駆動することにより、ダンパー54内の圧力を第1圧力から第2圧力に増加させることができる。第2圧力は、例えば正圧(大気圧よりも大きい圧力)である。ダンパー54内の圧力が正圧であるとき、ノズル46内の圧力も正圧である。そのため、ノズル46に形成されるメニスカスは、ノズル46の外側に張り出すように形成される。ノズル46に形成されるメニスカスが壊れるときの圧力を第3圧力とすると、第2圧力は第3圧力よりも小さく設定する。本実施形態では、例えば第2圧力の値は、1.0kPaであり、第3圧力は、3~4kPa程度である。圧力制御部91がダンパー54内の圧力を第2圧力に制御することにより、ノズル46の外側に張り出すようにメニスカスが形成される。
【0044】
キャッピング制御部92は、インクヘッド40にキャップ71を脱着させるキャッピング処理を行う。インクヘッド40にキャップ71を装着させるとき、キャッピング制御部92は、昇降装置72を制御する。キャッピング制御部92は、キャップ71の真上にインクヘッド40が配置されるように、ヘッド移動機構30を制御する。その後、キャッピング制御部92は、キャップ71を上昇させるように昇降装置72の昇降モータ78を駆動させる。インクヘッド40に、4つのキャップ71が装着される(
図5参照)。インクヘッド40からキャップ71を離間させるとき、キャッピング制御部92は、昇降装置72を制御する。キャッピング制御部92は、キャップ71を下降させるように、昇降装置72の昇降モータ78を駆動させる。このことで、インクヘッド40からキャップ71が離間される。
【0045】
吸引ポンプ制御部93は、吸引ポンプ73を駆動する吸引処理を実行する。吸引処理を実行することにより、インク供給路52、ダンパー54およびインクヘッド40の内部を負圧にし、インクを廃液タンクに流す。なお、吸引ポンプ73を駆動したとき、インク供給路52、ダンパー54、およびインクヘッド40の内部の圧力は、第3圧力よりも低い負圧となる。このとき、インク供給路52、ダンパー54およびインクヘッド40の内部に含まれる、硬化したインクやゴミを廃液タンクに流すことができる。
【0046】
ワイピング制御部94は、ワイピング機構140およびワイパー141を駆動することにより、ワイピング処理を実行する。ワイピング処理は、ワイパー141によって、ノズル面45をワイピングする処理である。ここでは、ワイピング制御部94は、ワイピング機構(
図6参照)の上方にインクヘッド40が移動するように、ヘッド移動機構30を制御する。そして、インクヘッド40がワイピング機構140の上方を通過するとき、ワイピング制御部94は、ワイパー141を回転させ、ワイパー141でインクヘッド40のノズル面45をワイピングする。ここでは、4つのインクヘッド40をワイピングする順番は、限定されない。
【0047】
フラッシング制御部95は、インクヘッド40を制御することにより、ノズル46からキャップ71にインクを吐出するフラッシング処理を実行する。
図4に示すように、インクヘッド40からキャップ71を離間した状態で、インクヘッド40からインクをキャップ71に吐き出すことにより、ノズル46内の硬化したインクやゴミを吐き出すことができる。
【0048】
次に、本実施形態に係るクリーニングの制御手順について、
図8のフローチャートに沿って説明する。
【0049】
ステップS101では、インクヘッド40にキャップ71を装着させるように、昇降装置72が制御される。ここでは、キャッピング制御部92は、
図4に示すように、キャップ71の真上に、インクヘッド40が配置されるように、ヘッド移動機構30(
図1参照)を制御する。その後、キャッピング制御部92は、キャップ71を上昇させるように昇降装置72の昇降モータ78を駆動させる。このことで、
図5に示すように、インクヘッド40に、4つのキャップ71が装着される。
【0050】
ステップS102では、圧力制御部91が送液ポンプ55aを駆動し、ダンパー54内の圧力を上昇させる。すなわち、インク供給路52、ダンパー54およびインクヘッド40の内部のインクの圧力が第1圧力から第2圧力となる。なお、ステップS102は、ステップS101より前もしくはステップS101と同時、ステップS103~ステップS105のいずれか一つの動作と同時、またはステップS103~ステップS105を実行する間に実行されてもよい。
【0051】
ステップS103では、吸引ポンプ制御部93により吸引処理が実行される。吸引ポンプ制御部93が吸引ポンプ73を駆動することにより、インク供給路52、ダンパー54およびインクヘッド40の内部のインクが吸引される。このとき、インク供給路52、ダンパー54およびインクヘッド40の内部に含まれる、硬化したインクやゴミを廃液タンクに流すことができる。
【0052】
ステップS104では、吸引ポンプ制御部93により吸引ポンプ73の駆動が停止される。吸引ポンプ73を駆動してから停止するまでの吸引処理の時間は、予め設定されていてもよく、ユーザによって適宜設定されるものでもよい。
【0053】
ステップS105では、吸引ポンプ73が停止した状態で一定時間待機する。一定時間待機することで、キャップ71内部の圧力が負圧から大気圧に近づく。本実施形態では、-5kPa程度になる状態まで待機する。吸引ポンプ73を停止してから-5kPa程度になるまでの時間を過去のデータより判断し、その時間の分だけステップS105で待機する。なお、吸引ポンプ73を停止させてから次のステップに進むまでの判定は、一定時間待機する方法に限定されない。例えば、圧力センサなどを用いて、キャップ71内部の圧力を測定し、所定の圧力となったことを判断するまで待機していてもよい。
【0054】
ステップS106では、キャッピング制御部92が、昇降装置72を駆動することにより、キャップ機構70を下降させる。このことにより、インクヘッド40からキャップ71が離間される。このとき、ノズル46の内部の圧力が第2圧力となっているため、ノズル面45に付着している、硬化したインクやゴミがインクヘッド40のノズルの内部に侵入することが防がれる。
【0055】
ステップS107では、ワイピング制御部94がワイピング機構140を駆動することにより、ワイピング処理を複数回実行する。ステップS106でノズル面45に残ったインクやゴミが、ワイピング処理により、除去される。なお、ワイピング処理の回数は、ユーザによって予め設定されていてもよく、ユーザによって適宜決定されるものでもよい、また、ワイピング処理の回数は、1回でもよい。
【0056】
ステップS108では、制御装置90が吸引処理とワイピング処理とを再度行うか否かを判定する。吸引処理とワイピング処理とを再度行う必要がない場合は、ステップS109に進む。吸引処理とワイピング処理とを再度行う必要がある場合は、S101に戻る。なお、吸引処理とワイピング処理とを再度実行する回数は、ユーザによって決定されてもよい。また、吸引処理とワイピング処理とを実行する回数は、予め設定されていてもよく、ユーザによって適宜設定されてもよい。なお、S108からS101に戻った場合、ダンパー54内の圧力は第2圧力のままであるので、ステップS102にて、「圧力制御部91が、ダンパー54の設定圧力を第1圧力から第2圧力に変更する」動作は省略される。
【0057】
ステップS109では、ダンパー54の圧力を第2圧力にした状態で、プリンタ10は一定時間待機する。S101~S108の動作の後、すぐに印刷を実行しない場合は、ダンパー54の圧力を第2圧力にしたまま一定時間待機する。例えば、夜間メンテナンス時にステップS101~S108が実行され、その後すぐにプリンタ10が印刷を実行しない場合は、待機していてよい。なお、ステップS109は、省略されてもよい。また、待機する時間は予め設定されていてもよく、ユーザによって適宜設定されてもよい。
【0058】
ステップS110では、S101~108のクリーニング動作を再度実行するか判断する。クリーニング動作を再度実行するか否かは、制御装置により自動的に決定されるものでもよく、ユーザによって適宜決定されるものでも良い。例えば、夜間メンテナンス時にS101~S108の動作が実行され、ステップS109で翌朝まで待機していたとき、再度S101~S108の動作を実行することがある。
【0059】
ステップS111では、フラッシング制御部95がフラッシング処理を実行する。このときインクヘッド40からインクが所望の量だけキャップ71に吐出される。このことにより、ノズル46内の硬化したインクやゴミを吐き出すことができる。
【0060】
ステップS112では、圧力制御部91が、ダンパー54内の圧力を第2圧力から第1圧力に変更する。このことにより、インク供給路52、ダンパー54およびインクヘッド40の内部の圧力が第1圧力となる。プリンタ10は印刷可能な状態となる。
【0061】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、圧力制御部91によりノズル46内部の圧力が第2圧力に設定された状態でワイピング処理が実行される。したがって、ノズル面45に付着している硬化したインクやゴミが、ノズルの内部に吸いこまれることが抑制される。このことにより、硬化したインクやゴミがノズル内に混入することが抑制されるので、インクヘッドから所望のとおりインクが吐出できなくなる可能性を低減することができる。したがって、印刷物の不良の発生を抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、吸引処理を実行した後にワイピング処理を実行する。吸引処理を実行することにより、ノズル面45には、確実にインクが付着した状態でワイピング処理を実行することができる。ここで第2圧力は、第1圧力よりも大きい圧力であるが、負圧であってもよい。第2圧力が負圧の場合、ノズル46に形成されるメニスカスは、内側に引き込まれるように形成される。したがって、第2圧力が負圧の場合かつ、吸引処理を実行しない場合、ノズル面45にはインクが付着していない可能性がある。ノズル面45にインクが付着していない状態でワイピング(所謂、「空ワイプ」)を行うと、ノズル面45にインクが付着した状態でのワイピングに比べ、硬化したインクやゴミの除去の効果が低減したり、硬化したインクやゴミによりノズル面を傷つけたりする。しかしながら、本実施形態では、吸引処理により、ノズル面45にインクが必ず付着する。したがって、第2圧力が負圧の場合でも、空ワイプの発生が防がれ、ワイピング処理の効果を得ることができる。
【0063】
本実施形態のプリンタ10によると、送液ポンプ55aを駆動することにより、ダンパー54内の圧力を制御する。すなわち、送液ポンプ55aがインク供給路52およびダンパー54にインクを送ることにより、ダンパー54内の圧力が制御される。したがって、圧力を調整する機構を別途設ける必要がない。
【0064】
本実施形態のプリンタ10によると、ワイピング処理の実行後に、圧力制御部91がダンパー54内の圧力を第2圧力から第1圧力に変更する。このことにより、一連のクリーニングの後、すぐに印刷を開始することができる。
【0065】
本実施形態のプリンタ10によると、吸引処理の前に、圧力制御部91がダンパー54内の圧力を第1圧力から第2圧力に変更する。このことにより、ノズル46内のインクは、第1圧力のときに比べ、ノズル46の外側に押し出されている。したがって、吸引ポンプ73により、インクが吸引されやすい状態になっている。よって、吸引処理の前にダンパー54内の圧力が第2圧力に制御されていることで、より多くの硬化したインクやゴミを吸引することができる。
【0066】
本実施形態のプリンタ10によると、ワイピング処理が複数回実行される。ワイピング処理を複数回実行することで、ノズル面45に付着している、硬化したインクやゴミをより多く取り除くことができる。
【0067】
本実施形態のプリンタ10によると、圧力センサ55bは、ダンパー54の内部のインク室60の圧力を測定している。インク供給路52が比較的細い流路の場合、インク供給路52の圧力を測定しようとしても圧力センサ55bの測定値が安定しない可能性がある。したがって、インク供給路52の圧力を測定するには、比較的容積を有する箇所に圧力センサ55bを接続することが好ましい。本実施形態の場合、インク供給路52と同圧であるインク室60をダンパー54が備えている。したがって、インク室60に圧力センサ55bを接続することにより、インク供給路52の圧力を測定するために別途タンク等を設ける必要がない。このことにより、インク供給ユニット50の省スペース化や低コスト化が可能である。
【0068】
本実施形態のプリンタ10によると、第2圧力は、ノズル46に形成されるメニスカスが破壊される圧力である第3圧力よりも低い値に設定されている。したがって、ワイピング処理を実行するときにメニスカスが壊れることがない。このことにより、キャップ71を取り外したあと、ノズル46からインクが漏れることが防止され、メンテナンスにおけるインク消費量を削減することができる。
【0069】
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、本発明のインクジェットプリンタは、上述した実施形態に限定されない。
【0070】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るプリンタ10Aについて説明する。なお、以下の第2実施形態に係るプリンタ10Aに関して、第1実施形態に係るプリンタ10と同様の構成について、同じ符号を付し、説明を適宜省略する。また、第1実施形態に係るプリンタ10に対して、機能は同じであるが、構成が異なる場合には、同じ名称を使用し、かつ、符号を適宜変更している。
【0071】
図9は、本実施形態に係るプリンタ10Aのキャリッジ17、インクヘッド40Aを示す底面図である。
図10は、プリンタ10Aのブロック図である。本実施形態では、
図9に示すように、プリンタ10Aは、キャリッジ17と、インクヘッド40Aと、を備えている。インクヘッド40Aは、プラテン13(
図1参照)に支持された記録媒体5(
図2参照)に対してインクを吐出する。インクヘッド40Aは、キャリッジ17に設けられている。インクヘッド40Aは、キャリッジ17と共に主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0072】
本実施形態では、インクヘッド40Aの数は2つである。2つのインクヘッド40Aは、主走査方向Yに並んで配置されているが、副走査方向Xの位置が異なるように配置されている。2つのインクヘッド40Aの配置は、いわゆるスタガー配置である。ここでは、左のインクヘッド40Aは、右のインクヘッド40Aよりも前方に突出している。本実施形態では、2つのインクヘッド40Aにおいて、一部が副走査方向Xに重なっており、一方のインクヘッド40Aの一部が、他方のインクヘッド40Aよりも副走査方向Xに突出している。ただし、2つのインクヘッド40Aにおいて、副走査方向Xに重なる部分がなく、一方のインクヘッド40Aの全体が、他方のインクヘッド40Aよりも副走査方向Xに突出していてもよい。各インクヘッド40Aは、複数のノズル46が形成されたノズル面45を有している。本実施形態では、1つのインクヘッド40Aにおいて、複数のノズル46が副走査方向Xに並んだノズル列46aの数は、4つである。なお、図示は省略するが、第2実施形態に係るキャップ機構70は、キャップ71の数がインクヘッド40Aの数と同じ2つであること以外は、第1実施形態に係るキャップ機構70と同様の構成である。
【0073】
図11は、キャリッジ17およびワイピング機構140Aを模式的に示した平面図である。
図12~
図14は、キャリッジ17およびワイピング機構140Aを模式的に示した右側面図である。ワイピング機構140Aは、非印刷時にインクヘッド40Aが待機する位置であるホームポジションの周囲に配置されている。ワイピング機構140Aは、ワイパー141Aと、スライドレール148と、ワイパー駆動装置144Aと、除去部材145Aと、塗布機構146Aと、を備えている。ワイパー駆動装置144Aは、ワイパーキャリッジ144Aaと、スライドモータ144Abと、ワイパー昇降機構144Acと、を備えている。ワイピング機構140Aは、インクヘッド40Aのノズル面45をワイピングするために、ワイパー141Aを移動させる機構である。
【0074】
ワイパー141Aは、インクヘッド40Aのノズル面45を拭う部材である。第2実施形態では、ワイパー141Aは、副走査方向Xおよび上下方向に広がった板状の部材である。ワイパー141Aの副走査方向Xの長さは、ノズル面45の副走査方向Xの長さ以上である。ワイパー141Aの数は1つであり、1つのワイパー141Aで2つのインクヘッド40Aのノズル面45を順に拭くことが可能に構成されている。ワイパー141Aは、ワイパー141Aの先端部(ここでは上端部)がノズル面45と同じ高さ、または、ノズル面45よりもわずかに高い位置になるように配置される。このような状態で、インクヘッド40Aを主走査方向Yに移動させる。このことによって、インクヘッド40Aがワイパー141Aの真上の位置まで移動し、ノズル面45がワイパー141Aに接触した状態でインクヘッド40Aが主走査方向Yに移動することで、ノズル面45がワイパー141Aで拭かれる。
【0075】
スライドレール148は、副走査方向Xに延びている。スライドレール148は、後述するワイピング位置P1、除去位置P2、および、塗布位置P3に亘って配置されている。スライドレール148は、除去部材145Aおよび塗布機構146A(詳しくは塗布ノズル146Ac)の下方に配置されている。また、スライドレール148は、側面視においてインクヘッド40Aよりも下方に配置されている。
【0076】
ワイパー駆動装置144Aは、インクヘッド40A、除去部材145Aおよび塗布機構146Aに対してワイパー141Aを相対的に移動させる機構である。第2実施形態では、ワイパー駆動装置144Aは、ワイパー141Aと、インクヘッド40A、除去部材145Aおよび塗布機構146Aとを、ワイピング位置P1と、除去位置P2と、塗布位置P3とに相対的に移動させる。ワイピング位置P1は、ワイパー141Aがインクヘッド40Aのノズル46を拭く位置である。除去位置P2は、ワイパー141Aに付着した付着物を除去部材145Aで取り除く位置である。塗布位置P3は、
図14に示す洗浄液146Aeを塗布機構146Aによりワイパー141Aに塗布する位置である。ワイピング位置P1、除去位置P2および塗布位置P3は、副走査方向Xに並んで配置されている。詳しくは、ワイピング位置P1、除去位置P2および塗布位置P3は、後方からワイピング位置P1、塗布位置P3、除去位置P2の順に並んでいる。ワイパー駆動装置144Aは、ワイパー141Aを移動方向D1、すなわち副走査方向Xに移動させる。なお、ワイパー駆動装置144Aの構成は特に限定されない。
【0077】
ワイパーキャリッジ144Aaは、スライドレール148に摺動自在に係合している。ワイパーキャリッジ144Aaは、スライドレール148に沿って移動方向D1に移動可能に構成されている。ワイパーキャリッジ144Aaには、ワイパー141Aが設置されている。ここでは、ワイパー141Aは、ワイパーキャリッジ144Aaから上方に突出しており、ワイパーキャリッジ144Aaから上方に延びている。
【0078】
スライドモータ144Abは、ワイパーキャリッジ144Aaに接続されている。ここでは、スライドモータ144Abが駆動することにより、ワイパーキャリッジ144Aaがスライドレール148に沿って移動方向D1に移動する。ワイパーキャリッジ144Aaによる移動方向D1への移動に伴い、ワイパー141Aが移動方向D1に移動する。このように、ワイパー141Aが移動方向D1に移動することで、ワイピング位置P1、除去位置P2および塗布位置P3のいずれかにワイパー141Aを移動させることができる。
【0079】
ワイパー昇降機構144Acは、ワイパーキャリッジ144Aaを昇降させ、ワイパー141Aを昇降させる機構である。
図12では、ワイパー141Aが上昇した状態が示されている。なお、ワイパー昇降機構144Acの構成は特に限定されるものではない。ここでは、図示を省略するが、ワイパー昇降機構144Acは、例えば複数のギアと、ギアを回転させる駆動モータなどから構成されたギア機構を有している。例えば、上記駆動モータが駆動することで、複数のギアを介してワイパー141Aが昇降する。
【0080】
除去部材145Aは、副走査方向Xに延びた部材である。除去部材145Aの副走査方向Xの長さは、ワイパー141Aの副走査方向Xの長さ以上である。除去部材145Aは、多孔質の材料によって形成されており、例えば吸収材である。吸収材として例えばスポンジが挙げられる。ここでは、除去部材145Aの真下にワイパー141Aが配置されている状態において、ワイパー昇降機構144Acが駆動することにより、ワイパー141Aが上昇し、除去部材145Aに向かって移動する。このことにより、ワイパー141Aの先端部が除去部材145Aに接触し、ワイパー141Aの先端部に付着したインクなどの付着物が除去部材145Aに付着する。すなわち、ワイパー141Aの先端部に付着した付着物が取り除かれる。なお、ワイパー141Aの先端部が除去部材145Aに接触した後、ワイパー141Aは、ワイパー昇降機構144Acによって下降し、除去部材145Aから離れるように移動する。
【0081】
図14に示すように、塗布機構146Aは、収容体146Aaと、開閉バルブ146Abと、塗布ノズル146Acと、供給路146Adと、洗浄液ポンプ146Afと、を有している。収容体146Aaは、例えば、パウチ状のものであるが、その形状は限定されない。開閉バルブ146Abは、開閉可能なものであり、ワイパー141Aに塗布する洗浄液146Aeの量を調整するものである。ここでは、開閉バルブ146Abは、いわゆる電磁バルブであり、電気的に開閉制御されるものである。塗布ノズル146Acは、ワイパー141Aの上方に配置され、ワイパー141Aに向かって、洗浄液146Aeを塗布するものである。塗布ノズル146Acの形状は特に限定されないが、ここでは、上下方向に延びた棒状のものである。供給路146Adは、洗浄液146Aeが流れる通路である。供給路146Adは、例えば、可撓性を有する部材により形成され、ここでは、チューブにより形成される。開閉バルブ146Abは、供給路146Adの途中部分に設けられている。洗浄液ポンプ146Afが駆動することにより、収容体146Aaに収容された洗浄液146Aeが塗布ノズル146Acに向かって流れる。洗浄液ポンプ146Afは、収容体146Aaに収容された洗浄液146Aeを塗布ノズル146Acに供給することを促進するためのポンプである。洗浄液ポンプ146Afは、供給路146Adに設けられている。なお、洗浄液ポンプ146Afの種類は特に限定されないが、例えばチューブポンプである。
【0082】
ワイパー141Aに洗浄液146Aeを塗布しないときには、開閉バルブ146Abが閉鎖され、かつ、洗浄液ポンプ146Afが停止される。そのため、収容体146Aaに収容された洗浄液146Aeは、塗布ノズル146Acに供給されない。一方、ワイパー141Aに洗浄液146Aeを塗布するときには、開閉バルブ146Abが開放され、かつ、洗浄液ポンプ146Afが駆動される。そのため、収容体146Aaに収容された洗浄液146Aeは、供給路146Adを通じて塗布ノズル146Acに供給される。このように、洗浄液ポンプ146Afが設けられていることによって、塗布ノズル146Acから洗浄液146Aeを吐出させるときに、洗浄液ポンプ146Afが駆動することにより、収容体146Aaに収容された洗浄液146Aeが塗布ノズル146Acに向かって流れ易くなる。よって、塗布ノズル146Acから洗浄液146Aeをより確実に吐出させることができる。また、パウチ状の収容体146Aaに収容された洗浄液146Aeの量が少なくなった場合であっても、洗浄液ポンプ146Afが駆動されることで、洗浄液146Aeを塗布ノズル146Acに流すことができる。
【0083】
次に、制御装置90Aについて説明する。
図10に示すように、制御装置90Aは、印刷に関する制御、および、インクヘッド40Aのクリーニングの制御などを行う装置である。制御装置90Aの構成は特に限定されない。制御装置90Aは、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されない。制御装置90Aは、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、を備えている。制御装置90Aは、プリンタ本体11の内部に設けられている。ただし、制御装置90Aは、プリンタ本体11の外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置90Aは、有線または無線を介してプリンタ10Aの制御基板(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0084】
本実施形態では、ノズル46およびノズル面45のクリーニングを実行するため、
図10に示すように、制御装置90Aは、圧力制御部91Aと、キャッピング制御部92Aと、吸引ポンプ制御部93Aと、除去制御部94Aと、塗布制御部95Aと、ワイピング制御部96Aと、フラッシング制御部97Aと、を備えている。なお、上述した制御装置90Aの各部91A~97Aは、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置90Aの各部91A~97Aは、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。ここで、圧力制御部91A、キャッピング制御部92A、吸引ポンプ制御部93Aおよびフラッシング制御部97Aは、それぞれ第1実施形態の圧力制御部91、キャッピング制御部92、吸引ポンプ制御部93およびフラッシング制御部95と同様であるため、ここでは、説明を省略する。
【0085】
除去制御部94Aは、スライドモータ144Abおよびワイパー昇降機構144Acを制御することにより、除去処理を行う。除去処理とは、
図12に示すように、ワイパー141Aに付着した付着物を除去する処理であり、次のように行う。除去制御部94Aは、スライドモータ144Abを制御することにより、ワイパーキャリッジ144Aaを除去位置P2に移動させる。すなわち、ワイパー141Aを除去位置P2に移動させる。その後、ワイパー昇降機構144Acを制御し、ワイパーキャリッジ144Aaを上昇させ、ワイパー141Aを除去部材145Aに接触させる。
【0086】
塗布制御部95Aは、塗布機構146Aの開閉バルブ146Abおよび洗浄液ポンプ146Afを制御し、上述したようにワイパー141Aに洗浄液146Aeを塗布する処理のことを指す。塗布制御部95Aは、
図14に示すスライドモータ144Abを制御することにより、ワイパーキャリッジ144Aaを塗布位置P3に移動させてから洗浄液146Aeをワイパー141Aに塗布する、すなわち、ワイパー141Aを塗布位置P3に移動させてから、洗浄液146Aeをワイパー141Aに塗布する。塗布制御部95Aは、洗浄液ポンプ146Afの回転数を制御することにより、ワイパー141Aに塗布する洗浄液146Aeの量を制御する。
【0087】
ワイピング制御部96Aは、インクヘッド40の移動を制御することによりワイピング処理を行う。本実施形態におけるワイピング処理は次のように行う。ワイピング制御部96Aは、
図13に示すスライドモータ144Abを制御することにより、ワイパーキャリッジ144Aaをワイピング位置P1に移動させる。すなわち、ワイパー141Aをワイピング位置P1に移動させる。その後、ワイピング制御部96Aは、スキャンモータ33を制御し、キャリッジ17を主走査方向Yに移動させる。すなわち、ワイピング制御部96Aは、インクヘッド40を主走査方向Yに移動させる。ワイパー141がワイピング位置P1に配置されているため、インクヘッド40のノズル面45に、ワイパー141Aの先端が接触し、ワイピングが行われる。
【0088】
次に、第2実施形態に係るクリーニングの制御手順について、
図15のフローチャートに沿って説明する。なお、
図15において、ステップS201~S206、ステップS208~212は、第1実施形態におけるステップS101~S106、ステップS108~112と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
ステップS207において、除去制御部94Aによる除去処理、塗布制御部95Aによる塗布処理およびワイピング制御部96Aによるワイピング処理が、除去処理、塗布処理、ワイピング処理の順に行われる。なお、除去処理および塗布処理は、ステップS201~S206が行われている最中に実行されてもよい。その場合、ステップS207では、ワイピング処理のみ行われる。また、ステップS207が実行された後、除去処理または/および塗布処理が行われてもよい。
【0090】
第2実施形態のプリンタ10Aによると、第1実施形態と同様、ノズル面45に確実にインクが付着した状態でワイピング処理を実行することができ、空ワイプの発生が防がれる。第2実施形態では、プリンタ10Aは、インクヘッド40を移動させることにより、ワイピング処理を行う。
【0091】
上述した実施形態では、送液ポンプ55aにより、インク収容容器51からインクヘッド40にインクを供給していたが、インクヘッド40へのインクの供給方法は、これに限定されない。例えば、インク収容容器51が、インクヘッド40よりも高い位置に配置され、位置エネルギーを利用してインク収容容器51からインクヘッド40にインクを送ってもよい。また、ダンパー54の外側に外力を加え、ダンパー54の内部の体積を小さくさせることにより、ダンパー54からインクヘッド40にインクを送ってもよい。
【0092】
上述した実施形態では、
図8に示すステップS112および
図15に示すステップS212において、圧力制御部91または圧力制御部91Aが送液ポンプ55aを駆動することによりダンパー54の圧力を第2圧力から第1圧力に変更していたが、これに限定されない。ダンパー54の内部の圧力の変更は、圧力センサ55bの測定値が第1圧力となるまで、ダンパー54の内部のインクを吐出させる(例えば、フラッシング動作)ものであってもよい。この場合でも、第1実施形態と同様に、一連のクリーニング後すぐに印刷を開始することができる。また、ダンパー54の内部の圧力の変更は、ダンパー54の内部のインクを吐出させると共に送液ポンプ55aを駆動させるものであってもよい。なお、このとき送液ポンプ55aの駆動は、送液ポンプ55aを正回転させるものであってもよく、逆回転させるものであってもよい。この場合も、インクの吐出により圧力が下がると共に、送液ポンプ55aの駆動により、ダンパー54の内部の圧力を第1圧力とすることができる。したがって、第1実施形態と同様に、一連のクリーニング後すぐに印刷を開始することができる。
【0093】
上述した実施形態では、第2圧力は1.0kPaであり、正圧であったがこれに限定されない。第2圧力は、第1圧力よりも高い圧力であればよく、大気圧と同一の0kPaであってもよい。また、第2圧力は、第1圧力よりも高い圧力の負圧であってもよい。上述した実施形態では、第1圧力は-0.6kPaであったので、例えば、第2圧力は、-0.3kPaであってもよい。
【0094】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したRoll-to-Rollタイプのプリンタ10の他、例えば、記録媒体を台の上に載置し、台を副走査方向Xに搬送し印刷する、所謂、フラットベッドタイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。また、記録媒体を台の上に載置し、台に対してキャリッジ17を主走査方向Y及び副走査方向Xに移動させて印刷する、所謂、ガントリータイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。
【0095】
ワイピング処理を複数回実行する場合、その回数は以下のようにしてもよい。例えば、低強度のクリーニングを行うときは、ワイピング処理の回数を2回とする。「低強度のクリーニング」とは、例えば、前回実行されたクリーニング以降に計測された印刷時間や非印刷時間から判断し、プリンタ10の稼働時(印刷終了時、印刷開始時または電源始動時など)に行うクリーニングである。また、高強度のクリーニングを行うときは、ワイピング処理を3回とする。「高強度のクリーニング」とは、例えば、プリンタ10の非稼働時(夜間の所定の時間、印刷終了後でユーザによる印刷予約のない時間など)であって、その日(24時間以内)にプリンタ10が稼働した実績がある場合に行うクリーニングである。
【符号の説明】
【0096】
10 プリンタ
40 インクヘッド
45 ノズル面
46 ノズル
51 インク収容容器
54 ダンパー(中間容器)
55 圧力制御機構
55b 圧力センサ(圧力検出装置)
90 制御装置
91 圧力制御部
94 ワイピング制御部
140 ワイピング機構
141 ワイパー