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特開2024-104471積層セラミックコンデンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104471
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
H01G4/30 311A
H01G4/30 201N
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008687
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒
(72)【発明者】
【氏名】古市 明
(72)【発明者】
【氏名】江藤 大俊
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AH06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】 短絡が生じにくく、信頼性および耐久性に優れた積層セラミックコンデンサを製造することができる積層セラミックコンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】 積層セラミックコンデンサの製造方法は、導電膜が形成された複数のセラミックグリーンシートを積層してシート積層体を作製する第1工程と、シート積層体を積層体ブロック22に切断する第2工程と、積層体ブロック22を切断方向と直交する方向に切断して積層体チップ23に切断する第3工程と、積層体チップ23の側面切断面に保護層を形成する第4工程と、複数の積層体チップ23を焼成する第5工程と、を含み、第3工程において、刃先26,27が対向する一対の切断刃14,15を、刃先26,27が互いに近接するように移動させて切込みを形成し、シート積層体を複数の積層体チップ23に分割する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電膜が形成された複数のセラミックグリーンシートを積層してシート積層体を作製する第1工程と、前記シート積層体を積層体ブロックに切断する第2工程と、前記積層体ブロックを切断方向と直交する方向に切断して積層体チップに切断する第3工程と、積層体チップの側面切断面に保護層を形成する第4工程と、前記複数の積層体チップを焼成する第5工程と、を含み、
前記第3工程において、刃先が対向する一対の切断刃を、前記積層体ブロックの対向両面に垂直に、前記刃先が互いに近接するように移動させて切込みを形成し、前記シート積層体を複数の積層体チップに分割する、積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記積層体ブロックの対向両面が、積層方向に垂直な面である、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記積層体ブロックの対向両面が、積層方向と平行な面である、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記積層体ブロックの前記対向両面に垂直な面に沿って移動する前記刃先の進行方向と、前記積層体ブロックの対向両面とが成す角度が10°~90°である、請求項2または3に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記第3工程において、前記複数の積層体ブロックを、前記複数のセラミックグリーンシートの積層方向が前記一対の切断刃の移動面に対して垂直となるように配置して、前記複数の積層体チップに分割する、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記第3工程において、前記複数の積層体ブロックを、前記複数のセラミックグリーンシートの積層方向が前記一対の切断刃の移動方向に対して平行となるように配置して、複数の積層体チップに分割する、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記一対の切断刃の移動経路に沿って一対の支持体を設け、
前記一対の切断刃を、前記一対の支持体に接触させながら移動させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記一対の切断刃の前記シート積層体への切込み深さは、前記シート積層体の厚さの5%以上20%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記一対の切断刃の前記積層体ブロックへの切込み深さは、前記積層体ブロックの厚さの5%以上20%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層セラミックコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の積層セラミックコンデンサの製造方法は、例えば特許文献1に記載されている。この従来技術では、内部電極とセラミックシートとが交互に積層された大判の積層シートを押し切り刃によって格子状に切断し、未焼成の積層チップに個片化するとき、内部電極の端部に押し切り刃によって押し切り方向に展延された展延部が生じることを、押し切り刃の刃先の角度や形状を調整することによって抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019- 79977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の従来技術では、積層チップの展延部を押し切り刃の刃先の角度、形状の調整によって抑制しているが、展延部の形状が小さくなったり、発生個数が低減されること想定し得るが、展延部に発生を完全に抑制することは困難である。このような従来技術の製造方法では、積層チップに切断による内部電極の垂れ下が生じ、このような積層他チップを焼成して積層セラミックコンデンサを作成しても、短絡が起こる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の積層セラミックコンデンサの製造方法は、導電膜が形成された複数のセラミックグリーンシートを積層してシート積層体を作製する第1工程と、前記シート積層体を積層体ブロックに切断する第2工程と、前記積層体ブロックを切断方向と直交する方向に切断して積層体チップに切断する第3工程と、積層体チップの側面切断面に保護層を形成する第4工程と、前記複数の積層体チップを焼成する第5工程と、を含み、前記第3工程において、刃先が対向する一対の切断刃を、前記積層体ブロックの対向両面に垂直に、前記刃先が互いに近接するように移動させて切込みを形成し、前記シート積層体を複数の積層体チップに分割する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の積層セラミックコンデンサの製造方法によれば、短絡が生じにくく、信頼性および耐久性に優れた積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1の実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法によって製造される積層セラミックコンデンサの一例を示す斜視図である。
図2図1に示される積層セラミックコンデンサのコンデンサ本体を示す斜視図である。
図3】積層セラミックコンデンサの積層体ブロックの切断工程を示す断面図である。
図4】積層体ブロックの切断工程で用いられる切断装置の構成を模式的に示す断面図である。
図5図4に示される切断装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図6】積層セラミックコンデンサの製造手順を説明するためのフローチャートである。
図7図7(a)は、第1切断刃14および第2切断刃15による積層体ブロック22の切断面を示す図であり、図7(b)は、図7(a)の端面側のコーナーA部の部分拡大図である。
図8】第1切断刃および第2切断刃による積層体ブロックの切断動作を説明するための図である。
図9図8の左側から見た側面図である。
図10】積層体ブロックの切断面の中央部の破断面の状態を観察した5000倍のSEM像を示す図である。
図11】積層体ブロックの切断面の切断部の2000倍のSEM像を示す図である。
図12】本開示の第2の実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法における切断装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図13】本開示の第2の実施形態の第1切断刃および第2切断刃による積層体ブロックの切断動作を説明するための側面図である。
図14】本開示の第1および第2の実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法で用いられる第1切断刃および第2切断刃の刃先形状を模式的に示す図である。
図15】本開示の第1および第2の実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法で用いられる第1切断刃および第2切断刃を模式的に示す図である。
図16図16(a)は本開示の第2の実施形態の積層体ブロックの切断面を示す図であり、図16(b)は図16(a)の積層上層部側のコーナーB部の部分拡大図である。
図17】本開示の第3の実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本開示の積層セラミックコンデンサの製造方法の実施形態について説明する。以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。本明細書では、便宜的に、直交座標系XYZを想定する。
【0009】
図1は、本開示の第1の実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法によって製造される積層セラミックコンデンサの一例を示す斜視図であり、図2は、図1に示される積層セラミックコンデンサのコンデンサ本体を示す斜視図である。本実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法によって製造される積層セラミックコンデンサ1は、積層体21を含んでいる。積層体21は、略直方体状の形状を有している。積層体21は、第3方向Zに互いに対向する第1面7aおよび第2面7b、第1方向Xに互いに対向する第1端面8aおよび第2端面8b、ならびに、第2方向Yに互いに対向する第1側面9aおよび第2側面9bを有している。
【0010】
第1面7aおよび第2面7bは、第3方向Zに垂直であってもよい。第1端面8aおよび第2端面8bは、第1方向Xに垂直であってもよい。第1側面9aおよび第2側面9bは、第2方向Yに垂直であってもよい。以下では、第1面7aおよび第2面7bを、主面7a,7bと称することがあり、第1端面8aおよび第2端面8bを、端面8a,8bと称することがあり、第1側面9aおよび第2側面9bを、側面9a,9bと称することがある。
【0011】
積層体21は、複数の誘電体層4と複数の内部電極層5とが第3方向Zに交互に積層されて構成される。内部電極層5を形成する材料としては、高積層化して製造コストも抑制できるという点で、ニッケル(Ni)または銅(Cu)などの卑金属が用いられてもよい。内部電極層5と誘電体層4との同時焼成を行える点で、ニッケル(Ni)であってもよい。内部電極層5の厚みは、0.1μm~1.0μm程度であってもよく、0.4μm~0.5μm程度であってもよい。
【0012】
外部電極3は、金属とガラスとの焼結体からなってもよく、例えば銅(Cu)粉末または銅と他の金属、たとえばニッケル(Ni)等の卑金属との合金粉末と、ガラス粉末とを焼成した構成であってもよい。さらに、表層にNiめっきやSnめっきなどの金属めっき層を付与してもよい。
【0013】
誘電体層4は、絶縁性を有する材料によって構成されている。誘電体層4は、例えばチタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、またはジルコン酸バリウム(BaZrO)等を主成分とするセラミック材料で構成されていてもよい。なお、本明細書において、「主成分」とは、着目する材料または部材等において最も構成比率の高い成分のことを言う。構成比率は、含有濃度(mol%)であってよい。
【0014】
誘電体層4は、チタン酸バリウム(BaTiO)に酸化マグネシウム、希土類元素(RE)の酸化物および酸化マンガンなどが固溶した結晶粒子と、酸化珪素(SiO)を主成分とする粒界相とから構成されているセラミックからなる。なお、セラミックの種類としては、上述したものだけに限らず、他のセラミックを用いることもできる。その平均厚みは2μm以下、特に、1μm以下であってもよい。これにより積層セラミックコンデンサ1を小型化、高容量化することが可能となる。なお、誘電体層4の第3方向Zの平均厚みは、0.1μm~1.0μm程度であってもよく、0.4μm~0.5μm程度であってもよい。
【0015】
内部電極層5は、極性別に第1端面8aおよび第2端面8bに露出している。
【0016】
積層セラミックコンデンサ1は、例えば図2に示すように、保護層6を含んでいる。保護層6は、積層体21の第1側面9aおよび第2側面9bに位置している。保護層6は、側面9a,9bに露出した極性の異なる内部電極層5間を電気的に絶縁している。また、保護層6は、側面9a,9bに露出した内部電極層5の外側部を機械的に保護している。各側面9a,9bに保護層6が配設された積層体21は、素体2とも称される。
【0017】
保護層6は、絶縁性を有する材料によって構成される。保護層6は、例えばチタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、またはジルコン酸バリウム(BaZrO)等を主成分とするセラミック材料で構成されていてもよい。保護層6は、誘電体層4を構成するセラミック材料と同じセラミック材料で構成されていてもよい。保護層6は、第2方向Yにおいて、例えば5μm~30μm程度の厚みを有していてもよい。
【0018】
積層セラミックコンデンサ1は、第1端面8aおよび第2端面8bを覆い、内部電極層5に極性別に接続された外部電極3を含んでいる。外部電極3は、外部基板または外部装置との電気的接続のために用いられる。
【0019】
外部電極3は、第1外部電極31と第2外部電極32とによって構成される。第1外部電極31は、積層体21の第1端面8aに位置している。第1外部電極31は、第1端面8aに露出した内部電極層5と電気的に接続されている。第2外部電極32は、積層体21の第2端面8bに位置している。第2外部電極32は、第2端面8bに露出した内部電極層5と電気的に接続されている。第1外部電極31および第2外部電極32は、例えば図1に示すように、主面7a,7bに位置してもよい。また、第1外部電極31および第2外部電極32は、例えば図1に示すように、側面9a,9b上に位置し、保護層6を部分的に覆っていてもよい。
【0020】
第1外部電極31および第2外部電極32は、単一の導電層によって構成されてもよく、複数の導電層によって構成されてもよい。本実施形態では、第1外部電極31および第2外部電極32が、下地層および外層を有する2層構造で構成されてもよい。
【0021】
下地層は、積層体21に接しており、第1端面8aおよび第2端面8bに露出した内部電極層5と接続されている。下地層は、金属とガラスとの焼結体からなってもよく、例えば銅(Cu)粉末または銅と他の金属、例えばニッケル(Ni)等の卑金属との合金粉末と、ガラス粉末とを焼成した構成であってもよい。或いは、めっき法、スパッタリング法、蒸着法等の薄膜形成技術、またはスクリーン印刷法、グラビア印刷法等の厚膜形成技術を用いて形成されてもよい。或いは、導電性樹脂で形成されてもよい。下地層に用いられる金属材料としては、例えばNi、Cu、Ag、Pd、またはAu等の金属またはこれらの金属から成る合金であってもよい。
【0022】
外層は、下地層を覆っている。外層は、例えば無電解めっき法、または電解めっき法等の薄膜形成技術を用いて形成されていてもよい。外層は、金属材料から構成されている。外層に用いられる金属材料は、例えばNi、Sn、Cu、またはAu等の金属もしくはこれらの金属から成る合金であってもよい。外層は、単一のめっき層で構成されてもよく、複数のめっき層で構成されてもよい。
【0023】
前述の積層セラミックコンデンサ1は、複数のセラミックグリーンシートを積層してシート積層体を作製し、シート積層体を、複数のセラミックグリーンシートの積層方向に垂直な第1方向Xに沿って切断して、複数の積層体ブロック22を作製し、複数の積層体ブロック22を第1方向Xに垂直な第2方向Yに切断することによって、複数の積層体チップ23を作製し、複数の積層体チップ23を焼成することによって作製することができる。
【0024】
図3は、積層セラミックコンデンサの積層体ブロックの切断工程を示す断面図であり、図4は、積層体ブロックの切断工程で用いられる切断装置の構成を模式的に示す断面図であり、図5は、図4に示される切断装置の構成を模式的に示す斜視図である。積層セラミックコンデンサ1を製造するに際しては、切断装置11が用いられる。切断装置11は、貫通孔12を有する基台13、一対の切断刃である第1切断刃14および第2切断刃15、第1支持体16、押出し部材18、一対の案内部材19a,19b、ならびに押出し駆動装置20を備える。
【0025】
貫通孔12は、第2切断刃15が第3方向Zに移動可能に嵌り込む、第2方向Yに長手の長孔である。基台13は、例えば、ステンレス鋼などの金属や、ポリエチレンテレフタレート(Poly Ethylene Terephthalate:略称PET)などからなる板状体によって構成されてもよい。また、一対の案内部材19a,19bは、例えばステンレス鋼などの金属やポリエチレンテレフタレートによって構成され、積層体ブロック22と接触する内面の表面粗さは、損傷が発生しない表面粗さとされてもよい。
【0026】
基台13は、平坦状の水平な支持面13aを有し、支持面13aには、複数の積層体ブロック22が例えば第2端面8bを下方に向けて載置される。このような支持面13a上には、積層体ブロック22の第2端面8bが対向するように載置される。
【0027】
複数の積層体ブロック22は、支持面13a上で一対の案内部材19a,19bによって、第1方向Xに移動可能な状態で挟着される。複数の積層体ブロック22は、押出し部材18によって第1方向Xに平行な押出し方向D1に同時に押圧され、各案内部材19a,19bの各内面によって案内されるので、支持面13aに平行な水平面上で押出し方向D1に交差する第2方向Yに積層体ブロック22が変位することが防がれた状態で、押出し部材18および押出し駆動装置20によって、第1切断刃14および第2切断刃15の1切断動作ごとに各積層体ブロック22が押出し方向D1に積層体チップ23の幅b分ずつ間欠的に押出すように構成される。このとき、積層体ブロック22は、基台13の支持面13aおよび案内部材19a,19bの各内面に接触した状態で移動されても、積層体ブロック22が損傷することが防がれる。
【0028】
第1切断刃14および第2切断刃15は、第3方向Zに平行に互いに刃先26,27が近接する方向に移動された後、互いに刃先26,27が離反する方向に第3方向Zに平行に移動して初期位置に復帰する。このように切断動作する第1切断刃14および第2切断刃15は、図示しない切断刃駆動装置によって変位駆動される。切断刃駆動装置は、例えば復動油圧シリンダおよび複数のリンク部材等によって駆動されてもよく、あるいはステッピングモータおよびステッピングモータによって回転軸線まわりに回転駆動されるボールねじ軸等によって駆動されてもよい。
【0029】
第1切断刃14および第2切断刃15は、一定の厚みを有する基部24,25と、刃先26,27とを有する。第1切断刃14および第2切断刃15は、刃先26,27が第1方向Xおよび第2方向Yを含む仮想一平面上で対向するように、高精度で位置決めされており、切断時に積層体ブロック22に切込んだ際に、積層体ブロック22の各端面8a,8bに形成される亀裂の進展方向のずれを可及的に小さくすることができる。これによって、各亀裂を第2方向Yおよび第3方向Zを含む仮想一平面に沿って真っ直ぐに進展させることができる。したがって、積層体ブロック22には、第1切断刃14および第2切断刃15の各刃先26,27によって切込みだけが形成され、その後は亀裂の進展によって分断される。これによって、刃先26,27が積層体ブロック22に接触する領域を少なくすることができるので、積層体ブロック22への刃傷の発生を抑制し、積層体ブロック22を亀裂の進展によって、平坦状の切断面を得ることができる。
【0030】
第1切断刃14および第2切断刃15は、例えばタングステンカーバイトなどの超硬合金から成ってよい。第1切断刃14の刃先26は、後述の図14又は図15に示されるように、両面刃、或いは片面刃であり、刃先26,27の剛性が高いので、切断時の被切断物からの反力の作用に対して歪みが小さい。これによって、積層体ブロック22の切断面に高い平面性を得ることができる。
【0031】
(製造方法)
図6は、積層セラミックコンデンサの製造手順を示すフローチャートである。本実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法は、準備工程S0において、内部電極層5の所定の内部電極パターンに導電ペーストを例えば印刷して導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを準備する。第1工程S1において、準備工程S0で準備されたセラミックグリーンシートを、例えば100~600枚積層して板状のシート積層体を作製する。第2工程S2において、シート積層体を基台13の支持面13aに載置する。支持面13aに載置されたシート積層体は、複数のセラミックグリーンシートの積層方向が支持面13aに垂直な状態である。第1切断刃14および第2切断刃15を、刃先26,27が互いに近接するように、移動させてシート積層体の複数のセラミックグリーンシートの積層方向に垂直な第1方向Xに沿って切込みを形成し、シート積層体を複数の積層体ブロック22に分割する。第3工程S3において、複数の積層体ブロック22を、支持面13aに垂直な軸線(第2方向Yに平行な軸線)まわりに90°回転させるとともに、各積層体ブロック22のそれぞれを長手方向に平行な軸線まわりに90°回転させて基台13の支持面13aに載置する。これによって、支持面13a上の各積層体ブロック22は、複数のセラミックグリーンシートの積層方向が支持面13aに対して平行となる。第1切断刃14および第2切断刃15を、刃先26,27が互いに近接するように、移動させて、第1方向Xに垂直な第2方向Yに沿って複数の積層体ブロック22に切込みを形成し、複数の積層体ブロック22を複数の積層体チップ23に分割する。次に、第4工程S4において、積層体チップ23の各側面9a,9bに保護層6を形成する。保護層6が形成された複数の積層体チップ23は、第5工程S5において焼成してコンデンサ本体を作製する。
【0032】
複数の積層体チップ23は、脱脂した後、酸素分圧が例えば1×10-7Pa~1×10-9Paの水素-窒素の混合ガス中で、1100℃~1200℃の温度で1~4時間の焼成を行い、誘電体層4と内部電極層5とが一体化するように焼結される。これによって、積層体チップ23は、誘電体層4と内部電極層5とが分離する方向への応力が低減され、クラックの発生を抑制することができる。第6工程S6において、焼成後の積層体チップ23に第1端面8aに第1外部電極31を形成し、第2端面8bに第2外部電極32を形成する。このようにして、積層セラミックコンデンサ1が作製される。
【0033】
第3工程S3において、複数の積層体ブロック22は、第1切断刃14および第2切断刃15を各刃先26,27が互いに近接する方向に移動するとき、第1切断刃14は第1支持体16に接触し、第1切断刃14の第1方向Xの変位を阻止することができる。また、第2切断刃15は、第2支持体17に接触するので、第2切断刃15の第1方向Xの変位を阻止することができる。このように第1支持体16および第2支持体17によって第1切断刃14および第1切断刃14の第1方向Xへの変位が阻止されるので、各刃先26,27の複数の積層体ブロック22への接触によるカット崩れの発生が抑制され、平面性の高い切断面を得ることができる。なお、第2支持体17は、基台13と一体で構成されていてもよい。
【0034】
また、複数の積層体ブロック22を、第1切断刃14および第2切断刃15の移動方向に対して複数のセラミックグリーンシートの積層方向が垂直となるように配置して、複数の積層体チップ23に分割する。これによって複数の積層体ブロック22を切断方向に材料変化がなく、亀裂を円滑に進展させることができ、従来法の押切切断で発生していた切断最終端におけるカット崩れがない平面性の高い端面8a,8bおよび側面9a,9bを有する積層体チップ23を得ることができる。よって、各側面9a,9bを覆う保護層6と内部電極層5との間の層間剥離の発生を抑制し、積層セラミックコンデンサ1の信頼性および耐久性を向上することができる。
【0035】
図7(a)は、積層体ブロックの切断面を示す図である。前述の第1切断刃14および第2切断刃15によって積層体ブロック22を切断したところ、図7(a)に示されるように、カット崩れのない切断面が得られることが確認された。図7(b)は、図7(a)の端面側のコーナーA部の部分拡大図である。積層体チップ23の端面8a,8bから第2切断刃15の切込が入った刃痕が、ダレ(a部)とシェア切断部(b部)に観察され、その後は破断面(c部)となっている。
【0036】
図8は、第1切断刃および第2切断刃による積層体ブロックの切断動作を説明するための図であり、図9は、図8の左側から見た側面図である。第1切断刃14および第2切断刃15の各刃先26,27は、積層体ブロック22の第1端面8aおよび第2端面8bとなる各表面から切込み深さdだけ切込まれる。切込み深さdは、積層体ブロック22の厚さTの例えば5%以上20%以下であってもよい。製品材質によって、例えば20%以上に設定する可能性があるが、そうなったとしても本開示の主旨に影響を与えるものではない。
【0037】
切込み深さdは、積層ブロックの厚みに影響されるが、一例を述べると、15μm以上40μm以下であってもよく、80μm以上120μm以下であってもよい。第1切断刃14および第2切断刃15の各刃先26,27を積層体ブロック22に切込み深さdだけ切込むことによって、積層体ブロック22には確実に亀裂が発生し、この亀裂の進展によって、刃傷を生じることなしに積層体ブロック22を複数の積層体チップ23に分断することができる。
【0038】
積層体ブロック22は、第1切断刃14および第2切断刃15の移動方向に対してセラミックグリーンシートの積層方向が垂直に配置されるので、第1切断刃14および第2切断刃15の切断方向に積層体ブロック22の断面変化がなく、円滑に亀裂を進展させることができ、平坦性の高い切断面を得ることができる。
【0039】
図10は、積層体ブロックの切断面の中央部の破断面の状態を観察した5000倍のSEM像を示す図であり、図11は、積層体ブロックの切断面の切断刃の切込部の1100倍のSEM像を示す図である。これらの図から明らかなように、カット崩れのない平面性の高い切断面が得られることが確認された。
【0040】
図12は、本開示の第2の実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法における切断装置の構成を模式的に示す斜視図である。積層セラミックコンデンサ1を製造するに際しては、図5で説明した切断装置11が用いられる。
【0041】
図13は、本開示の第2の実施形態の第1切断刃および第2切断刃による積層体ブロックの切断動作を説明するための側面図である。図9に示す前述の実施形態の各積層体ブロック22を、その長手軸線L1まわりに90°回転させてもよい。これによって第1面7a(または第2面7b)となる表面を支持面13aに対向させ、セラミックグリーンシートの積層方向が、支持面13aと平行となるように載置することによって、第1切断刃14および第2切断刃15の切断方向に対して積層体ブロック22の積層方向を平行な状態で切断することができる。切断後の積層体チップ23に刃傷の発生はなく、カット崩れの発生をなくし、平面性の高い切断面を得ることができる。
【0042】
図14は、本開示の第2の実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法で用いられる第1切断刃および第2切断刃を模式的に示す図であり、図15は本開示の第1および第2の実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法で用いられる第1切断刃および第2切断刃を模式的に示す図である。前述の第1切断刃14および第2切断刃15としては、図14に示される両面刃を構成する刃先26,27を有する切断刃であってもよく、また図15に示される片面刃を構成する刃先26,27を有する切断刃であってもよい。
【0043】
図16(a)は、本開示の第2の実施形態の積層体ブロックの切断面を示す図である。前述の第1切断刃14および第2切断刃15によって4本の積層体ブロック22を切断したところ、図16(a)に示されるように、カット崩れのない切断面が得られることが確認された。
【0044】
図16(b)は、図16(a)の積層上層部側のコーナーB部の部分拡大図である。積層体ブロック22の端面から第2切断刃15の切込が入った刃痕が、ダレ(a部)とシェア切断部(b部)に観察され、その後は破断面(c部)となっている。このように平均的な切込深さは、積層体ブロック22の厚さTの例えば5%以上20%以下であってもよい。
【0045】
図17は、本開示の第3の実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法を模式的に示す断面図である。前記積層体ブロック22の対向両面に垂直な面に沿って移動する前記刃先26,27の進行方向と積層体ブロック22の対向両面とが成す角度θが鋭角となっている。刃先26,27の進行方向が傾斜することにより、刃先26,27の摩擦力が増大し有機分子の切断を容易にするため、切断面におけるダレ量が小さくなるメリットがある。積層体ブロック22の対向両面と刃先26,27の進行方向とが成す角度θは、10°~45°であってもよい。
【0046】
上述の第一の実施例及び第二の実施例において、第1切断刃14の刃先角度と第2切断刃15の刃先角度とを違えた切断刃で切断してもよい。刃先角度を大きくすると、浅い切り込みで切断されることも見出しているので、積層ブロックの状態においては、違えて切断するのがよい場合もある。刃先角度は10°~120°の範囲の中から選定される。
【0047】
本開示は、以下の構成(1)~(9)の態様で実施可能である。
【0048】
(1)導電膜が形成された複数のセラミックグリーンシートを積層してシート積層体を作製する第1工程と、前記シート積層体を積層体ブロックに切断する第2工程と、前記積層体ブロックを切断方向と直交する方向に切断して積層体チップに切断する第3工程と、積層体チップの側面切断面に保護層を形成する第4工程と、前記複数の積層体チップを焼成する第5工程と、を含み、前記第3工程において、刃先が対向する一対の切断刃を、前記積層体ブロックの対向両面に垂直に、前記刃先が互いに近接するように移動させて切込みを形成し、前記シート積層体を複数の積層体チップに分割する、積層セラミックコンデンサの製造方法。
【0049】
(2)前記積層体ブロックの対向両面が、積層方向に垂直な面である、上記構成(1)に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【0050】
(3)前記積層体ブロックの対向両面が、積層方向と平行な面である、上記構成(1)に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【0051】
(4)前記積層体ブロックの対向両面に垂直な面に沿って移動する前記刃先の進行方向と、前記積層体ブロックの対向両面とが成す角度が10°~90°である、上記構成(2)または(3)に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【0052】
(5)前記第3工程において、前記複数の積層体ブロックを、前記複数のセラミックグリーンシートの積層方向が前記一対の切断刃の移動面に対して垂直となるように配置して、前記複数の積層体チップに分割する、上記構成(1)に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【0053】
(6)前記第3工程において、前記複数の積層体ブロックを、前記複数のセラミックグリーンシートの積層方向が前記一対の切断刃の移動方向に対して平行となるように配置して、複数の積層体チップに分割する、上記構成(1)に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【0054】
(7)前記一対の切断刃の移動経路に沿って一対の支持体を設け、
前記一対の切断刃を、前記一対の支持体に接触させながら移動させる、上記構成(1)~(3)のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【0055】
(8)前記一対の切断刃の前記シート積層体への切込み深さは、前記シート積層体の厚さの5%以上20%以下である、上記構成(1)~(3)のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【0056】
(9)前記一対の切断刃の前記積層体ブロックへの切込み深さは、前記積層体ブロックの厚さの5%以上20%以下である、上記構成(1)~(3)のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【0057】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、また、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1 積層セラミックコンデンサ
2 素体
3 外部電極
31 第1外部電極
32 第2外部電極
4 誘電体層
5 内部電極層
6 保護層
7a 第1面
7b 第2面
8a 第1端面
8b 第2端面
9a 第1側面
9b 第2側面
11 切断装置
12 貫通孔
13 基台
13a 支持面
14 第1切断刃
15 第2切断刃
16 第1支持体
17 第2支持体
18 押出し部材
19a,19b 案内部材
20 押出し駆動装置
21 積層体
22 積層体ブロック
23 積層体チップ
24,25 基部
26,27 刃先
b 切込み深さ
D1 押出し方向
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17