(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104472
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】洗面器
(51)【国際特許分類】
E03C 1/24 20060101AFI20240729BHJP
A47K 1/04 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
E03C1/24 C
A47K1/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008688
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】上野 りさ
(72)【発明者】
【氏名】朝野 由加利
(72)【発明者】
【氏名】行徳 和男
(72)【発明者】
【氏名】岡田 圭介
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA02
2D061DC10
(57)【要約】
【課題】本発明は、オーバーフロー流路内で泡が逆流するのを抑制することができる洗面器を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、オーバーフロー流路10が一体となって形成されている洗面器であって、排水口16が形成された底部12と、この底部12の外周縁から上方に延び、オーバーフロー孔18が形成された立壁14と、を有するボウル部6と、排水口16から下方に延び、接続口8cが形成された排水部8と、上流側がオーバーフロー孔18に接続され、下流側が接続口8cに接続されるオーバーフロー流路10と、を備え、オーバーフロー流路10は、その流路断面積が接続口8c付近の流路断面積よりも大きく形成され、接続口8cから侵入した泡を滞留させる滞留部30を有している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバーフロー流路が一体となって形成されている洗面器であって、
排水口が形成された底部と、この底部の外周縁から上方に延び、オーバーフロー孔が形成された立壁と、を有するボウル部と、
上記排水口から下方に延び、接続口が形成された排水部と、
上流側が上記オーバーフロー孔に接続され、下流側が上記接続口に接続されるオーバーフロー流路と、を備え、
上記オーバーフロー流路は、その流路断面積が上記接続口付近の流路断面積よりも大きく形成され、上記接続口から侵入した泡を滞留させる滞留部を有していることを特徴とする洗面器。
【請求項2】
上記滞留部は、上記接続口に近接して配置されている、請求項1に記載の洗面器。
【請求項3】
上記滞留部は、上記ボウル部の底部の裏側に配置されている、請求項2に記載の洗面器。
【請求項4】
上記オーバーフロー流路は、上記接続口から横方向に延びる横流路を有し、この横流路の流路断面が横方向に長い矩形形状に形成されている、請求項3に記載の洗面器。
【請求項5】
上記オーバーフロー孔は、正面視で、排水口に対して横方向に偏心して配置され、上記オーバーフロー流路は、上面視で、上記オーバーフロー孔から上記接続口に向けて斜めに延びている、請求項4に記載の洗面器。
【請求項6】
上記オーバーフロー流路は、上記横流路から上方に延びる縦流路を有し、この縦流路の流路断面積が上記接続口付近以外の他の部分の流路断面積よりも小さくなっている、請求項4又は5項に記載の洗面器。
【請求項7】
上記接続口付近の断面積は、上記縦流路の流路断面積よりも小さくなっている、請求項6に記載の洗面器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面器に係り、特に、オーバーフロー流路が一体となって形成されている洗面器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オーバーフロー流路が一体となって形成された洗面器が知られている(例えば、特許文献1)。この洗面器は、石鹸水を使用して手洗いした際に生じる泡がオーバーフロー流路内を逆流しないように、オーバーフロー流路の流路断面積を出来るだけ小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-25203号公報
【特許文献2】特開2017-155455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の洗面器は、オーバーフロー流路の流路断面積を小さくしているので、オーバーフロー流路全体の容積も小さくなっている。このため、多量の泡が洗面器に流された場合、泡がオーバーフロー流路内を逆流してオーバーフロー孔から排出される可能性がある。
【0005】
一方、例えば、特許文献2のように、オーバーフロー流路内に逆流防止弁を設けることにより泡の逆流を防止することも考えられるが、新たな部材が別途必要になるため好ましくない。
【0006】
ここで、
図8を参照して、オーバーフロー流路で発生する泡の逆流のメカニズムを説明する。
図8は、従来の洗面器における泡の逆流の様子を示す図である。
例えば、使用者が多量の石鹸水を使用して手洗いをすると多量の泡が生じる(
図8のS1)。この泡は水栓装置50から吐水された水と一緒にボウル面52に落下し、ボウル面52上を排水口54に向かって流れる(
図8のS2)。排水口54内に流入した泡は排水部56に滞留する(
図8のS3)。排水部56には、外気と連通する接続口60が形成されているため、排水部56で空気の置換が行われ、これにより、排水部56に滞留している泡が更に増大する(
図8のS3)。その後、排水部56に滞留している泡は、オーバーフロー流路58内へ侵入し、後から侵入した泡に押されることによりオーバーフロー流路58内を徐々に逆流する(
図8のS4)。この状態が継続すると、やがて泡がオーバーフロー孔62から排出される(
図8のS5)。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、オーバーフロー流路内で泡が逆流するのを抑制することができる洗面器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、オーバーフロー流路が一体となって形成されている洗面器であって、排水口が形成された底部と、この底部の外周縁から上方に延び、オーバーフロー孔が形成された立壁と、を有するボウル部と、排水口から下方に延び、接続口が形成された排水部と、上流側がオーバーフロー孔に接続され、下流側が接続口に接続されるオーバーフロー流路と、を備え、オーバーフロー流路は、その流路断面積が接続口付近の流路断面積よりも大きく形成され、接続口から侵入した泡を滞留させる滞留部を有していることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、オーバーフロー流路は、その流路断面積が接続口付近の流路断面積よりも大きく形成され、接続口から侵入した泡を滞留させる滞留部を有しているので、オーバーフロー流路内に多量の泡が侵入した場合でも、泡を滞留部に滞留させることができる。これにより、オーバーフロー流路内で泡が逆流するのを抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、滞留部は、接続口に近接して配置されている。
このように構成された本発明によれば、滞留部は、接続口に近接して配置されているので、オーバーフロー孔から離れた位置に泡を滞留させることができ、泡がオーバーフロー孔から排出されるのを防止できる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、滞留部は、ボウル部の底部の裏側に配置されている。
このように構成された本発明によれば、滞留部は、ボウル部の底部の裏側に配置されているので、ボウル部の底部の裏側のデッドスペースを有効に活用してオーバーフロー流路の容積を大きくすることができると共に、オーバーフロー孔から離れた位置に泡を滞留させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、オーバーフロー流路は、接続口付近から横方向に延びる横流路を有し、この横流路の流路断面が横方向に長い矩形形状に形成されている。
このように構成された本発明によれば、接続口付近から横方向に延びる横流路の流路断面が横方向に長い矩形形状に形成されているので、接続口から侵入した泡が横方向に広がり、オーバーフロー流路内で泡が上昇するのを抑制することができる。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、オーバーフロー孔は、正面視で、排水口に対して横方向に偏心して配置され、オーバーフロー流路は、上面視で、オーバーフロー孔から接続口に向けて斜めに延びている。
このように構成された本発明によれば、オーバーフロー孔は、正面視で、排水口に対して横方向に偏心して配置され、オーバーフロー流路は、オーバーフロー孔から接続口に向けて斜めに延びているので、洗面器の寸法が大きくなるのを抑制しながらオーバーフロー流路の容積を大きくすることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、オーバーフロー流路は、横流路から上方に延びる縦流路を有し、この縦流路の流路断面積が接続口付近以外の他の部分の流路断面積よりも小さくなっている。
このように構成された本発明によれば、横流路から上方に延びる縦流路の流路断面積が接続口付近以外の他の部分の流路断面積よりも小さくなっているので、泡が上昇して縦流路に侵入するのを抑制することができる。
【0015】
また、本発明において、好ましくは、接続口付近の断面積は、縦流路の流路断面積よりも小さくなっている。
このように構成された本発明によれば、接続口付近の断面積は、縦流路の流路断面積よりも小さくなっているので、接続口からオーバーフロー流路内に泡が侵入するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の洗面器によれば、オーバーフロー流路内で泡が逆流するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による洗面器の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態による洗面器の上面図である。
【
図3】本発明の実施形態による洗面器の底面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線に沿って見た側方断面図である。
【
図5】
図1のV-V線に沿って見た正面断面図である。
【
図6】本発明の実施形態による洗面器のオーバーフロー流路を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示すA~I断面であり、流れ方向に対して垂直な流路断面の断面図である。
【
図8】従来の洗面器における泡の逆流の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態による洗面器について説明する。先ず、
図1により、洗面器の概要を説明する。
図1は、本発明の実施形態による洗面器の斜視図である。
【0019】
図1に示すように、洗面器1は、洗面所などに設けられ、使用者が手洗いや洗顔を行うものである。洗面器1は、洗面所に設置されたカウンター2の上に設置されている。洗面器1の上面には、水や湯を吐水する水栓装置4及び石鹸水を吐出する石鹸供給栓5が取り付けられている。使用者は、水栓装置4から吐水された水や湯により手洗いや洗顔などを行う。使用者は、手洗いや洗顔をする際に、石鹸供給栓5から吐出される石鹸水を使用することがある。石鹸水が多量に使用されると多量の泡が生じて水や湯と一緒に洗面器1のボウル面を流れる。
なお、本発明の実施形態においては、洗面所などに設けられる洗面器について説明するが、これに限定されるものではなく、本発明の洗面器には、トイレ空間に設けられる手洗器などが含まれる。
【0020】
次に、
図2~
図5を参照して、本発明の実施形態による洗面器の基本構造を説明する。
図2は、本発明の実施形態による洗面器の上面図であり、
図3は、本発明の実施形態による洗面器の底面図であり、
図4は、
図1のIV-IV線に沿って見た側方断面図であり、
図5はあり、
図1のV-V線に沿って見た正面断面図である。
図2~
図5において、点線は、オーバーフロー流路を示す。
【0021】
ここで、本明細書において、説明の便宜上、洗面器を使用する使用者から見て、手前側を前方、奥側を後方、右側を右方、左側を左方、上側を上方、下側を下方として説明する。
【0022】
図2~
図5に示すように、上述した洗面器1は、水栓装置4から吐水された水を受けるボウル形状のボウル部6と、このボウル部6からの水を排出する排水部8と、水がボウル部6から溢れるのを防止するオーバーフロー流路10とを備えている。洗面器1は、ボウル部6、排水部8、及びオーバーフロー流路10が一体となって陶器により形成されている。
【0023】
ボウル部6は、底を形成する底部12と、この底部12の外周縁から上方に延びる立壁14と、底部12に形成され、水をボウル部6外へ排出する排水口16と、立壁14に形成され、水が所定水位に達した場合にボウル部6外へ排出するオーバーフロー孔18とを備えている。また、ボウル部6は、上面視で、矩形形状に形成されている。
【0024】
図2に示すように、底部12は、矩形状に形成され、前後方向の長さよりも左右方向の長さが長い長方形形状に形成されている。底部12には、底部12の左右方向の中央、且つ、底部12の前後方向の中央よりも後方に排水口16が形成されている。底部12は、略平坦な面で形成され、外周縁から排水口16に向けて僅かに下方に傾斜している(
図4及び
図5を参照)。
【0025】
図1、
図4及び
図5に示すように、立壁14は、底部12の前端から上方に延びる前方壁20と、底部12の後端から上方に延びる後方壁22と、底部12の左端又は右端からそれぞれ上方に延びる側方壁24とで構成されている。前方壁20、後方壁22、及び側方壁24は、上面視で、底部12を取り囲むことによりボウル部6を形成している。
【0026】
前方壁20は、後方壁22及び側方壁24よりも高さが低くなるように形成され、使用者が手洗いなどをし易いように形成されている。前方壁20は、各壁のうちで最も高さが低く、前方壁20の上端20aがボウル部6から溢れる水の溢れ面として設定されている。前方壁20は、鉛直方向に対して約45°の傾斜角度で前方に傾斜している。
【0027】
後方壁22は、前方壁20よりも高さが高くなるように形成され、側方壁24と略同一高さで形成されている。後方壁22は、底部12の後端から上方に延びる下部22aと、この下部22aの上端から後方に延びる略平坦な棚部22bと、この棚部22bの後端から上方に延びる上部22cとを備えている。後方壁22の下部22aは、鉛直方向に対して約5°の傾斜角度で後方に傾斜している。後方壁22の下部22aには、後方壁22の下部22aの左右方向の中央よりも右方、且つ、後方壁22の下部22aの上下方向の中央よりも上方にオーバーフロー孔18が形成されている(
図5を参照)。棚部22bには、棚部22bの左右方向且つ前後方向の中央に、水栓装置4を取り付けるための取付孔22dが形成されている。
【0028】
側方壁24は、前方壁20よりも高さが高くなるように形成され、後方壁22と略同一高さで形成されている。側方壁24は、それぞれ、鉛直方向に対して約15°の傾斜角度で左方又は右方に傾斜している。
【0029】
図2に示すように、排水口16は、正円形状に形成され、後方壁22付近に配置されている。排水口16は、後述する排水栓26の蓋26cにより覆われるようになっている。
【0030】
図5に示すように、オーバーフロー孔18は、縦方向よりも横方向に長い長孔で形成され、洗面器1の内部を使用者が視認し難くなるように形成されている。具体的に、オーバーフロー孔18は、縦方向の長さが約13mm、横方向の長さが約63mm、開口断面積が約783mm
2で形成されている。オーバーフロー孔18は、正面視で、排水口16に対して右方に偏心(オフセット)して配置されている。オーバーフロー孔18は、前方壁の上端20aの溢れ面から下方に約35mmの位置、底部12から上方に約80mmの位置に配置されている。
【0031】
図4及び
図5に示すように、排水部8は、中空の円筒状に形成され、ボウル部6の排水口16と同軸上に下方に延びている。排水部8は、その内部に排水栓26が取り付けられるようになっている。排水栓26を取り付けた状態で、排水部8の内周面8aと排水栓26との間には、所定の空間8bが形成されるようになっている。また、排水部8の内周面8aには、オーバーフロー流路10に接続する接続口8cが形成されている(
図6を参照)。接続口8cは、正面から見て、縦方向よりも横方向に長い矩形形状に形成されている。接続口8cの開口面積は、接続口付近の流路断面(
図6及び
図7のA)と略同一の大きさに設定されている。
【0032】
図2~
図5に示すように、オーバーフロー流路10は、上流側がオーバーフロー孔18と接続し、下流側が接続口8cと接続している。これにより、オーバーフロー孔18から侵入した水がオーバーフロー流路10内を通り、接続口8cから排出されるようになっている。
【0033】
オーバーフロー流路10は、ボウル部6の裏側に配置され、ボウル部6の裏面に沿って延びている。具体的に、オーバーフロー流路10は、後方壁22の下部22aの後方裏側、及び、底部12の下方裏側に配置されている。また、オーバーフロー流路10は、後方壁22の下部22aの裏面に沿って縦方向に延びると共に、底部12の裏面に沿って横方向に延びている。
【0034】
図5に示すように、オーバーフロー流路10は、正面視で、後方壁22の左右方向中央よりも右方に配置されている。また、オーバーフロー流路10の縦方向の長さは、後方壁22の下部22aの縦方向の長さと略同一に設定されている。オーバーフロー流路10の左右方向の長さは、後方壁22の下部22aの左右方向の長さの約4分の1に設定されている。
【0035】
図2に示すように、オーバーフロー流路10は、上面視で、底部12の左右方向中央よりも右方に配置されている。また、オーバーフロー流路10の前後方向の長さは、底部12の約2分の1の長さに設定されている。また、オーバーフロー流路10は、オーバーフロー孔18が形成された後方壁22から排水口16(排水部8)に向けて前方且つ左方に斜めに延びている。
【0036】
図4及び
図5に示すように、水栓装置4は、水が流れる流路を形成する水栓本体部4aと、ボウル部6に向けて水を吐水する吐水口4bと、使用者が操作して吐水及び止水を切り替える操作部4cとを備えている。水栓装置4は、棚部22bの取付孔22dに取り付けられているようになっている。吐水口4bは、ボウル部6の排水口16付近に向けて水を吐水するようになっている。
【0037】
石鹸供給栓5は、石鹸水を貯水する貯水タンク(図示せず)を備え、使用者が操作部を操作することにより石鹸水を吐出するようになっている。
【0038】
排水栓26は、中空円筒状に形成される円筒部材26aと、この円筒部材26aの内部に固定され、排出される水の中から異物を除去するためヘアキャッチャー26bと、このヘアキャッチャー26bの上端部に取り付けられ、上方から排水口16を覆う正円形状の蓋26cとを備えている。
【0039】
排水管路28は、樹脂製のパイプであり、洗面器1の排水部8の下端に取り付けられている。排水管路28は、洗面器1の排水部8と一体的に排水流路を形成し、洗面器1から排出された水を洗面所外の排水配管(図示せず)に導くようになっている。
【0040】
次に、
図6及び
図7を参照して、本発明の実施形態による洗面器のオーバーフロー流路について詳細に説明する。
図6は、本発明の実施形態による洗面器のオーバーフロー流路を示す斜視図であり、
図7は、
図6に示すA~I断面であり、流れ方向に対して垂直な流路断面の断面図である。
【0041】
図6に示すように、オーバーフロー流路10は、接続口8cから横方向に延びる横流路10aと、この横流路10aから上方に延びる縦流路10bとを備えて、全体としてL字状の流路を構成している。横流路10aの流路断面は、縦方向よりも横方向に長い矩形形状(偏平形状)に形成されている。また、縦流路10bの流路断面は、前後方向よりも左右方向に長い矩形形状(偏平形状)に形成されている。ここで、横流路10aは、接続口8cから侵入した泡を滞留させる滞留部30として機能するようになっている。
【0042】
図6及び
図7に示すように、オーバーフロー流路10は、流路断面B~Iの断面積が接続口8c付近の流路断面Aの断面積よりも大きくなっている。具体的に、オーバーフロー流路10は、縦方向の流路断面(横流路及び縦流路の断面)B~Eの断面積が流路断面Aの断面積よりも大きくなっており、流路断面Aよりも上流側の流路が急拡大している。また、オーバーフロー流路10は、横方向の流路断面(縦流路の流路断面)F~Iの断面積が流路断面Aの断面積よりも大きく、縦方向の流路断面B~Eの断面積よりも小さくなっている。すなわち、横方向の流路断面F~Iの断面積は、流路断面A以外の他の部分である流路断面B~Eの断面積よりも小さくなっている。
【0043】
図7を参照して、流路断面Aの断面積は、約1662mm
2の大きさに設定されている。また、縦方向の流路断面B~Eの断面積は、それぞれ、約4190mm
2(B)、約4217mm
2(C)、約3682mm
2(D)、約2592mm
2(E)の大きさに設定されている。また、横方向の流路断面F~Iの断面積は、それぞれ、約2642mm
2(F)、約1995mm
2(G)、約2060mm
2(H)、約2196mm
2(I)の大きさに設定されている。これらにより、オーバーフロー流路10の容積は、約369cm
3に設定され、従来品(約88cm
3)に対して約4倍の大きさになっている。
【0044】
縦方向の流路断面B及びCの横幅(横流路の横幅)は、接続口8c付近の流路断面Aの横幅よりも大きくなっている。これよりも上流側の縦方向の流路断面D及びEの横幅(横流路の横幅)は、流路断面Aの横幅よりも小さくなっている。また、横方向の流路断面F~Iの横幅(縦流路の横幅)は、上流側に向けて徐々に大きくなるように形成されている。
【0045】
オーバーフロー流路10の屈曲部分に最も近い横方向の流路断面Fの断面積は、横方向の流路断面F~Iのうちで最も大きく形成され、屈曲部分付近の流路が広くなっている。流路断面Fよりも上流側の流路断面G~Iの断面積は、略一定になっている。また、オーバーフロー孔18付近の流路断面H及びIの断面積は、接続口8c付近の流路断面Aの断面積よりも大きくなっている。
【0046】
図7に示すように、オーバーフロー流路10は、その流路断面B~Iの断面積が接続口8c付近の流路断面Aの断面積よりも大きく形成され、接続口8cから侵入した泡が横流路10aに滞留し、この横流路10aが滞留部30として機能するようになっている。滞留部30は、接続口8cに近接して配置されると共に、ボウル部6の底部12の裏側に配置されている。
【0047】
以下、上述した本発明の実施形態による洗面器の作用効果を説明する。
先ず、本発明の実施形態による洗面器1においては、オーバーフロー流路10は、その流路断面B~Iの断面積が接続口8c付近の流路断面Aの断面積よりも大きく形成され、接続口8cから侵入した泡を滞留させる滞留部30を有しているので、オーバーフロー流路10内に多量の泡が侵入した場合でも、泡を滞留部30に滞留させることができる。これにより、オーバーフロー流路10内で泡が逆流するのを抑制することができる。
【0048】
また、本発明の実施形態による洗面器1においては、滞留部30は、接続口8cに近接して配置されているので、オーバーフロー孔18から離れた位置に泡を滞留させることができ、泡がオーバーフロー孔18から排出されるのを防止できる。また、接続口8cから侵入した泡を直ぐに滞留させてオーバーフロー流路10内で泡が逆流するのを抑制することができる。
【0049】
本発明の実施形態による洗面器1においては、滞留部30は、ボウル部6の底部12の裏側に配置されているので、ボウル部6の底部12の裏側のデッドスペースを有効に活用してオーバーフロー流路10の容積を大きくすることができると共に、オーバーフロー孔18から離れた位置に泡を滞留させることができる。また、接続口8cから侵入した泡を最も低い位置に滞留させてオーバーフロー流路10内で泡が逆流するのを抑制することができる。
【0050】
また、本発明の実施形態による洗面器1においては、接続口8c付近から横方向に延びる横流路10aの流路断面B~Dが横方向に長い矩形形状に形成されているので、接続口8cから侵入した泡が横方向に広がり、オーバーフロー流路10内で泡が上昇するのを抑制することができる。
【0051】
本発明の実施形態による洗面器1においては、オーバーフロー孔18は、正面視で、排水口16に対して右方に偏心して配置され、オーバーフロー流路10は、オーバーフロー孔18から接続口8cに向けて斜めに延びているので、洗面器1の前後方向の寸法が大きくなるのを抑制しながらオーバーフロー流路10の容積を大きくすることができる。
【0052】
また、本発明の実施形態による洗面器1においては、横流路10aから上方に延びる縦流路10bの流路断面F~Iの断面積は、接続口8c付近の流路断面A以外の他の部分である流路断面B~Eの断面積よりも小さくなっているので、泡が上昇して縦流路10bに侵入するのを抑制することができる。具体的に、横流路10aにおいて泡が上昇しようとすると、縦流路10bの入口が小さくなっているので横流路10aの上面に泡が衝突して消滅する。これにより、泡が流体になり接続口8cから排出されるため、オーバーフロー流路10内で泡が逆流するのを抑制することができる。
【0053】
本発明の実施形態による洗面器1においては、接続口8c付近の流路断面Aの断面積は、縦流路10bの流路断面F~Iの断面積よりも小さくなっているので、接続口8cからオーバーフロー流路10内に泡が侵入するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 洗面器
4、50 水栓装置
6 ボウル部
8、56 排水部
8a 排水部の内周面
8c、60 排水部の接続口
10、58 オーバーフロー流路
10a オーバーフロー流路の横流路
10b オーバーフロー流路の縦流路
12 ボウル部の底部
14 ボウル部の立壁
16、54 ボウル部の排水口
18、62 ボウル部のオーバーフロー孔
20 前方壁
22 後方壁
24 側方壁
22a 後方壁の下部
26 排水栓
30 滞留部