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2024-104475チップ剥離装置、テーピングマシン及び剥離方法
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  • -チップ剥離装置、テーピングマシン及び剥離方法 図1
  • -チップ剥離装置、テーピングマシン及び剥離方法 図2
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  • -チップ剥離装置、テーピングマシン及び剥離方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104475
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】チップ剥離装置、テーピングマシン及び剥離方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/67 20060101AFI20240729BHJP
   B65H 41/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H01L21/68 E
B65H41/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008701
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】597168228
【氏名又は名称】日本ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】高田 勉
【テーマコード(参考)】
3F108
5F131
【Fターム(参考)】
3F108JA05
5F131AA04
5F131BA39
5F131BA53
5F131BA54
5F131CA32
5F131DA03
5F131DA33
5F131DA35
5F131DA42
5F131DB22
5F131DB42
5F131DB43
5F131DB62
5F131DB76
5F131DC30
5F131DD10
5F131DD29
5F131DD33
5F131DD43
5F131DD82
5F131DD84
5F131DD85
5F131DD94
5F131EA07
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EB01
5F131EC32
5F131EC72
5F131EC73
5F131EC74
5F131FA03
5F131FA17
5F131FA32
5F131FA33
5F131KA15
5F131KA16
5F131KA22
5F131KA40
5F131KB32
5F131KB43
5F131KB53
5F131KB58
(57)【要約】
【課題】チップ部品の剥離に失敗する可能性が低減されたチップ剥離装置、テーピングマシン及び剥離方法を提供する。
【解決手段】チップ剥離装置10は、超音波振動を発生する超音波振動発生部266と、シートSTに貼付されているチップ部品CにシートSTを介して接触し、超音波振動発生部266が発生した超音波振動を加える接触部材262と、を備え、
振幅量P1の超音波振動が時間T0の間加えられたことによりチップ部品Cが剥離する場合、接触部材262がシートSTに接触した後、超音波振動発生部266が、予め決められた停止条件を満たすまで、包絡線が所定の波形W1となるように、超音波振動を発生し、所定の波形W1の振幅量が、時間とともに徐々に増加し、時間T0よりも遅い時間T1が経過した後に振幅量P1を超える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動を発生する超音波振動発生部と、
シートに貼付されているチップ部品に該シートを介して接触し、前記超音波振動発生部が発生した超音波振動を加える接触部材と、を備えたチップ剥離装置。
【請求項2】
請求項1記載のチップ剥離装置において、
振幅量P1の超音波振動が時間T0の間加えられたことによりチップ部品が剥離する場合、
前記接触部材が前記シートに接触した後、前記超音波振動発生部が、予め決められた停止条件を満たすまで、包絡線が所定の波形となるように、超音波振動を発生し、
前記所定の波形の振幅量が、時間とともに徐々に増加し、前記時間T0よりも遅い時間T1が経過した後に前記振幅量P1を超えるチップ剥離装置。
【請求項3】
請求項2記載のチップ剥離装置において、
前記所定の波形の振幅量が、前記振幅量P1を超え、予め決められた振幅量P2に到達した以降は、当該振幅量P2を維持するチップ剥離装置。
【請求項4】
請求項3記載のチップ剥離装置において、
前記シートから剥離したチップ部品をエア吸着する吸着コレットを更に備え、
前記予め決められた停止条件が、前記吸着コレットがチップ部品を吸着したことであるチップ剥離装置。
【請求項5】
請求項4記載のチップ剥離装置において、
前記予め決められた停止条件が、前記振幅量が予め決められた振幅量P2に到達してから予め設定された時間が経過するまでの間に、前記吸着コレットがチップ部品を吸着しなかったことであるチップ剥離装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載のチップ剥離装置において、
前記吸着コレットが、前記シートに対して進退することなく、チップ部品を吸着するチップ剥離装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のチップ剥離装置と、
前記剥離装置によって剥離されたチップ部品をキャリアテープに挿入する挿入装置と、を備えたテーピングマシン。
【請求項8】
請求項1記載のチップ剥離装置を準備するステップと、
超音波振動を加え、チップ部品が剥離する振幅量P1及び時間T0を予め調査するステップと、
前記接触部材が前記シートに接触した後、前記超音波振動発生部が、予め決められた停止条件を満たすまで、包絡線が所定の波形となるように、超音波振動を発生するステップと、を含み、
前記所定の波形の振幅量が、時間とともに徐々に増加し、前記時間T0よりも遅い時間T1が経過した後に前記振幅量P1を超える剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ剥離装置、テーピングマシン及び剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粘着シートが貼り付けられた半導体ウェハーを個別の半導体チップにダイシングし、各々の半導体チップを吸着治具にて吸着保持し、粘着シートから採取するピックアップ工程を含む半導体装置の製造方法が記載されている。
このピックアップ工程では、粘着シートを介して半導体チップに超音波振動を印加し、粘着シートからの分離に失敗したチップに対し、再度同様の分離動作を行う機能を設け、再度分離できない場合は、再々度分離動作を行わないことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-186352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、そもそも剥離に失敗しなければ、再度の剥離動作を行う必要が生じない。
本発明は、チップ部品の剥離に失敗する可能性が低減されたチップ剥離装置、テーピングマシン及び剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、超音波振動を発生する超音波振動発生部と、シートに貼付されているチップ部品に該シートを介して接触し、前記超音波振動発生部が発生した超音波振動を加える接触部材と、を備えたチップ剥離装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のチップ剥離装置において、振幅量P1の超音波振動が時間T0の間加えられたことによりチップ部品が剥離する場合、前記接触部材が前記シートに接触した後、前記超音波振動発生部が、予め決められた停止条件を満たすまで、包絡線が所定の波形となるように、超音波振動を発生し、前記所定の波形の振幅量が、時間とともに徐々に増加し、前記時間T0よりも遅い時間T1が経過した後に前記振幅量P1を超える。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載のチップ剥離装置において、前記所定の波形の振幅量が、前記振幅量P1を超え、予め決められた振幅量P2に到達した以降は、当該振幅量P2を維持する。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載のチップ剥離装置において、前記シートから剥離したチップ部品をエア吸着する吸着コレットを更に備え、前記予め決められた停止条件が、前記吸着コレットがチップ部品を吸着したことである。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載のチップ剥離装置において、前記予め決められた停止条件が、前記振幅量が予め決められた振幅量P2に到達してから予め設定された時間が経過するまでの間に、前記吸着コレットがチップ部品を吸着しなかったことである。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5のいずれか1項に記載のチップ剥離装置において、前記吸着コレットが、前記シートに対して進退することなく、チップ部品を吸着する。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のチップ剥離装置と、前記剥離装置によって剥離されたチップ部品をキャリアテープに挿入する挿入装置と、を備えたテーピングマシンである。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項1記載のチップ剥離装置を準備するステップと、超音波振動を加え、チップ部品が剥離する振幅量P1及び時間T0を予め調査するステップと、前記接触部材が前記シートに接触した後、前記超音波振動発生部が、予め決められた停止条件を満たすまで、包絡線が所定の波形となるように、超音波振動を発生するステップと、を含み、前記所定の波形の振幅量が、時間とともに徐々に増加し、前記時間T0よりも遅い時間T1が経過した後に前記振幅量P1を超える剥離方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、チップ部品の剥離に失敗する可能性が低減されたチップ剥離装置及び剥離方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係るチップ剥離装置を備えたテーピングマシンを模式的に示した平面図である。
図2】同チップ剥離装置を模式的に示した側面図である。
図3】同チップ剥離装置が備える超音波振動発生部が発生する超音波振動の波形の説明図である。
図4】テスト用の超音波振動の片側の包絡線の波形及び図3の超音波振動の片側の包絡線の波形の説明図である。
図5】同チップ剥離装置の動作を示す説明図である。
図6】同チップ剥離装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0016】
図1に示すテーピングマシン10は、本発明の一実施の形態に係るチップ剥離装置20を備えている。テーピングマシン10においては、チップ剥離装置20によって、ウェハーリング110に固定されたダイシング後のウェハーから半導体チップ(チップ部品の一例)Cが剥離され、剥離された半導体チップCが回転テーブル115によって各処理ユニット120a~120gにて所定の検査等がされながら搬送され、テーピングユニット140にてキャリアテープに封入される。
【0017】
付言すると、処理ユニット120a~120gのうち、処理ユニット120aは、外観検査ユニットであり、半導体チップCの外観及び基準位置からの位置ずれ量を検査できる。処理ユニット120cは、三軸補正ユニットであり、キャリアテープに挿入するために、半導体チップCの位置を補正できる。処理ユニット120eは、ランク分けユニットであり、半導体チップCを品質に応じてランク分けできる。処理ユニット120gは、強制排出ユニットであり、所定の品質を満たしていない半導体チップCを排出できる。
【0018】
チップ剥離装置20は、ダイシングされた複数の半導体チップCが貼付されたシートSTから所定の半導体チップCを剥離して取り出すことができる。
シートSTの厚みは、例えば0.1mmである。半導体チップCの長さは例えば0.4~1.0mmであり、幅は例えば0.2~0.7mmであり、厚みは例えば0.05~0.2mmである。
【0019】
チップ剥離装置20は、図2に示すように、半導体チップCを吸着するチップ吸着部22と、シートSTを吸着するシート吸着部24と、半導体チップCを押し出す押出部26と、を備えている。
なお、シート吸着部24及び押出部26は、図1に示す押出ユニット150の一例を構成する。
【0020】
チップ吸着部22は、図2に示すように、吸着コレット222を有している。
吸着コレット222は、その先端面にエア吸着用の吸着孔HL1(図5(A)参照)が形成されており、シートSTに貼付された半導体チップCを吸着できる。
【0021】
吸着コレット222は、図2に示すように、水平方向に延びる回転軸AXを中心に複数配置されており、この回転軸AX回りに回転することで半導体チップCを順次吸着する。吸着された半導体チップCは、回転テーブル115に受け渡される。
吸着コレット222が半導体チップCを吸着するための吸着エアの流量は、図示しない流量センサによって測定される。
なお、吸着コレット222は、シートST(半導体チップC)に対して進退する動作はしない。
【0022】
シート吸着部24は、吸着ホルダ242及び吸着ホルダ進退機構243を有している。
吸着ホルダ242は、シートSTに対して進退し、その先端面にてシートSTを吸着できる。
吸着ホルダ242の先端面には、図5(A)に示すように、中央部に孔HL2が形成されている。孔HL2の周囲には、半導体チップCが貼付されたシートSTをエア吸着するための吸着孔HL3が形成されている。
【0023】
吸着ホルダ進退機構243は、図2に示すように、カム244及びサーボモータ246を有し、吸着ホルダ242をシートSTに対して進退させることができる。
カム244は、吸着ホルダ242が先端に設けられた取付部材248を予め設定されたタイミングで進退させることができる。すなわち、吸着ホルダ242は、カム244のプロファイルに従って進退する。
サーボモータ246は、カム244を回転させる駆動源となるモータである。
【0024】
押出部26は、押出部材262、押出部材ホルダ264、超音波振動発生部266及び押出部材進退機構268を有し、図5(A)~図5(D)に示すように、押出部材262の先端部が吸着ホルダ242の先端から進出する。
【0025】
押出部材(接触部材の一例)262は、シートSTに貼付されている半導体チップCにシートSTを介して接触し、超音波振動発生部266が発生した超音波振動を加えることができる。押出部材262の先端部は、先端に向かうに従って細くなるように形成され、先端面は、円形状の平面となっている。押出部材262は、吸着ホルダ242に設けられた孔HL2(図5(A)参照)の内部に収納され、この孔HL2を通ってシートSTに貼付された半導体チップCをシートSTの側から押すように接触することができる。
押出部材262は、繰り返しの使用に従って摩耗するため、使用状態に応じて交換される消耗部品である。従って、交換が容易となるように基部には雄ねじが形成されている。
【0026】
押出部材ホルダ264は、押出部材262が取り付けられる円柱状の部材である。押出部材ホルダ264の先端面には、押出部材262の基部に形成された雄ねじに対応する雌ねじが形成されている。
【0027】
超音波振動発生部266は、図2に示すように、超音波発振器270及び超音波振動子272を有し、テーピングマシン10の全体を制御する制御装置(不図示)からの指令信号に基づいて、例えば図3に示すような超音波振動を発生できる。なお、同図3の横軸は時間であり、縦軸は振幅量である。
【0028】
超音波発振器270は、制御装置(不図示)からの出力指令信号に基づいて、超音波振動子272を駆動できる。
超音波振動子272は、超音波振動を発生でき、押出部材ホルダ264の基端部が固定されている。
押出部材ホルダ264及びその先端に設けられた押出部材262は、発生した超音波振動を伝達する超音波ホーンとして機能する。
【0029】
押出部材進退機構268は、カム274及びサーボモータ276を有し、押出部材262をシートSTに対して進退させることができる。
カム274は、超音波振動子272を予め設定されたタイミングで進退させることができる。すなわち、押出部材262及び押出部材ホルダ264は、カム274のプロファイルに従って進退する。
サーボモータ276は、カム274を回転させる駆動源となるモータである。
【0030】
次に、チップ剥離装置20の動作(半導体チップCの剥離方法)について、図5及び図6に基づいて説明する。シートSTに貼付された半導体チップCは、チップ剥離装置20が準備された後、次のステップS1~S6に従って剥離される。
チップ吸着部22、シート吸着部24及び押出部26、各処理ユニット120a~120g、テーピングユニット及びその他の各部は、前述の制御装置(不図示)によって制御される。
【0031】
(ステップS1)
本ステップは、半導体チップCがシートSTから剥離する条件を予め調査するために、剥離対象となる半導体チップCに対してテスト用の超音波振動を加えるステップである。
なお、図4に示した波形W0は、テスト用の超音波振動の包絡線であり、正側の包絡線のみが描かれ、負側の包絡線が省略されている。同図4の横軸は時間であり、縦軸は振幅量である。
【0032】
テスト用の超音波振動は、基準位置(同図4におけるゼロ点)を中心として正負の振幅を有する正弦波状の振動であり、半導体チップCを剥離するまでの包絡線がステップ状となる波形である。振動周波数は、例えば、30~60kHzである。
ただし、ここに言う波形とは、超音波発振器270に設定される波形である(以下同様)。従って、実際に超音波振動子272が発生する波形とは厳密な意味では相違するものの、実質的に同一の波形となる。
【0033】
複数の半導体チップCに対してそれぞれ波形W0の振幅量を変え、テスト用超音波振動の加振を繰り返すことで、半導体チップCが剥離するR0点(同図4参照)が求められる。
すなわち、チップ剥離装置20が剥離する対象となる半導体チップCに対し、予め本ステップによる事前の調査が実施されることにより、半導体チップCが剥離する確度が高いR0点(テスト用超音波振動の振幅量P1及び時間T0)が確認される。
【0034】
(ステップS2)
ウェハー位置決め機構(不図示)によって、剥離すべき半導体チップCが所定の剥離位置に位置するように、シートSTが貼付されたウェハーがウェハー表面の法線方向と直交する方向に位置決めされる(図6(A)参照)。
【0035】
ここで、図6は、図4に示した超音波振動の包絡線の波形W1と各部の動作タイミングとの関係を示しており、波形W1については、図4の波形W1とは異なり、正側及び負側の包絡線がともに描かれている。
【0036】
図6(A)~(G)のうち、図6(A)は、ウェハー位置決め機構(不図示)の動作であり、移動及び静止のタイミングを示している。
図6(B)は、吸着コレット222の回転動作のタイミングを単に示すものであり、縦軸は回転角度を示すものではない。
図6(C)は、吸着コレット222の吸着エアの流量であり、その変化のタイミングを示している。
図6(D)は、押出部材262の動作であり、進退動作のタイミングを示している。
図6(E)は、吸着ホルダ242の動作であり、進退動作のタイミングを示している。
図6(F)は、吸着ホルダ242のエア吸着の動作を示している。
図6(G)は、制御装置(不図示)が、超音波発振器270に対して出力する指令信号であって、超音波振動を発生するための指令信号の出力タイミングを示している。
【0037】
(ステップS3)
ウェハーが位置決めされると、吸着コレット222が、図2に示す回転軸AXの回りに回転を始め(図6(B)参照)、所定の剥離位置にある半導体チップCに対向して静止する。
一方で、シートSTに向かって吸着ホルダ242及び押出部材262が共に進出し、図5(A)に示すように、吸着ホルダ242及び押出部材262がシートSTに接触するとともに(図6(D)及び図6(E)参照)、吸着ホルダ242が、シートSTを吸着する(図6(F)参照)。
【0038】
吸着ホルダ242及び押出部材262が、共に吸着コレット222の方向に向かって更に進出を続けると、吸着ホルダ242によって押されたシートSTが吸着コレット222の方向へ移動し、図5(B)に示すように、シートSTが撓む。
【0039】
(ステップS4)
押出部材262が静止する一方で、シートSTを吸着した状態(図6(F)参照)で吸着ホルダ242が後退する(図6(E)参照)。
その結果、図5(C)に示すように、押出部材262によってシートSTから半導体チップCがシートSTから押し出される。
【0040】
一方、吸着ホルダ242が後退を開始した後に、制御装置(不図示)が超音波発振器270に対し、超音波振動を発生させるための指令を出力する(図6(G)参照)。超音波発振器270は、この指令に基づいて、超音波振動子272を駆動し、半導体チップCに対し、押出部材262を介して図3に示すような超音波振動を加える。
【0041】
詳細には、超音波振動発生部266が、予め決められた停止条件を満たすまで、包絡線が所定の波形W1(図4参照)となるように、超音波振動を発生する。
ここで、この所定の波形W1は、前述のステップS1にて確認されたR0点における振幅量P1及び時間T0に基づいて定められる。所定の波形W1の振幅量は、時間とともに徐々に増加し、時間T0よりも遅い時間T1が経過した後に振幅量P1(R1点)を超え、時間T2が経過し予め決められた振幅量P2に到達した以降は、この振幅量P2を予め設定された時間T3まで維持する。
【0042】
振動周波数の大きさは、テスト用の超音波振動と同一である。なお、ここに言う「同一」とは、厳密な意味での同一ではない。即ち、「同一」とは、例えば設計上、製造上及び測定上の誤差等が許容され、「実質的に同一」という意味である。具体的には、例えば±10%の範囲内で振動周波数に誤差があってもよい。
【0043】
また、予め決められた停止条件は、次の停止条件A又は停止条件Bの少なくとも一方である。
停止条件Aは、吸着コレット222が半導体チップCを吸着したことである。より具体的には、停止条件Aは、吸着コレット222の吸着エアの流量が変化したことである。吸着エアの流量が変化したことにより、吸着コレット222が半導体チップCを吸着したものと判断されるので、超音波振動を早期に停止して後続の半導体チップCの剥離動作に移ることができる。
【0044】
停止条件Bは、予め設定された時間T3が経過するまでの間に、吸着コレット222が半導体チップCを吸着しなかったことである。より具体的には、停止条件Bは、予め設定された時間T3が経過するまでの間に、吸着コレット222の吸着エアの流量が変化しないことである。この停止条件Bを満たす場合には、何らかの要因により半導体チップCの吸着に失敗したものと判断されるので、早期にアラートを出力できる。
【0045】
このような超音波振動が加えられる結果、停止条件Bが成立したことにより停止した場合を除き、遅くとも時間T3までの間に半導体チップCが剥離される。
【0046】
従って、超音波振動の振幅量が、半導体チップCが剥離する確度が高いR0点を超えて増加していくため、シートSTの粘着力や吸着コレット222の吸引力等の剥離条件に変動があったとしても、剥離に失敗する可能性が低減される。
一方で、超音波振動の振幅量がR0点に到達する前に半導体チップCが剥離することもありうるため、このような場合には、半導体チップCに与える機械的なストレスが抑制される。
【0047】
(ステップS5)
ウェハー位置決め機構(図6(A)参照)、吸着コレット222(図6(B)参照)、押出部材262(図6(D)参照)及び吸着ホルダ242(図6(E)参照)はそれぞれ静止している。
一方で、超音波振動発生部266は、半導体チップCに対し、前ステップS4から継続して図3に示す超音波振動を加える(図6(G)参照)。
【0048】
時間T2が経過してから時間T3(図4参照)が経過するまでの間に半導体チップCが剥離し、図5(D)に示すように、吸着コレット222がこの半導体チップCを吸着すると、図6(C)に示すように、吸着コレット222の吸着エアの流量が小さくなり、半導体チップCが剥離されたことが検出される。
半導体チップCが剥離されたことが検出されると、前述の停止条件Aが成立し、制御装置(不図示)は、超音波発生部222に対し、超音波振動の発生を停止する指令を出力する(図6(G)参照)。その結果、超音波振動子272の駆動が停止される。
【0049】
なお、前述のとおり、時間T2が経過する前に半導体チップCが剥離し、停止条件Aが成立することもありうる。その場合は、時間T2が経過する前であっても、次のステップS6に移行する。
【0050】
(ステップS6)
超音波振動子272の駆動が停止されたことにより、超音波振動が減衰する。
剥離された半導体チップCは、吸着コレット222によって吸着され、所定の位置に搬送される(図6(B)参照)。
一方で、押出部材262及び吸着ホルダ242は、ともに当初の位置(ステップS2の開始時の位置)へと戻る(図6(D)及び図6(E)参照)。
【0051】
以降、剥離する対象となる半導体チップCに対して前述のステップS2~S6が繰り返されることにより、一枚のシートSTに貼り付けられた全ての半導体チップCが剥離され、剥離された半導体チップCは、順次キャリアテープに挿入される。
【0052】
以上説明したように、チップ剥離装置20によれば、剥離に失敗する可能性が低減されるため、超音波振動の出力を調整する負担が低減される。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
チップ剥離装置20が剥離する対象は、半導体チップCに限定されるものではなく、任意のチップ部品であってもよい。このチップ部品として、例えば、チップ抵抗、チップコンデンサその他のチップ状の電子部品が挙げられる。
【0054】
前述の実施の形態において、吸着コレット222、吸着ホルダ242及び押出部材262が進退する方向は、任意の方向でよい。すなわち、吸着コレット222、吸着ホルダ242及び押出部材262が進退する方向は、水平方向に限定されるものではない。
押出部材262は、チップ部品を押し出すことができれば任意の形状の部材でよい。
【0055】
前述の実施の形態に記載のとおり、吸着コレット222が半導体チップCを吸着したか否かは、図示しない流量センサによって判断される。ただし、流量センサに限定されるものではなく、吸着コレット222が、半導体チップCを吸着したことを検出できるのであれば、他の任意のセンサでよい。
他のセンサとして、例えば、反射型又は透過型の光電センサが挙げられる。光電センサが、吸着コレット222の先端に半導体チップがあることを検出することで、半導体チップCが吸着されたことを判断できる。また、他のセンサとして、例えば、圧力センサが挙げられる。圧力センサが、吸着エアの圧力変化を検出することで、半導体チップCが吸着されたことを判断できる。
【符号の説明】
【0056】
10 テーピングマシン
20 チップ剥離装置
22 チップ吸着部
24 シート吸着部
26 押出部
110 ウェハーリング
115 回転テーブル
120a~120g 処理ユニット
140 テーピングユニット
150 押出ユニット
222 吸着コレット
242 吸着ホルダ
243 吸着ホルダ進退機構
244 カム
246 サーボモータ
248 取付部材
262 押出部材
264 押出部材ホルダ
266 超音波振動発生部
268 押出部材進退機構
270 超音波発振器
272 超音波振動子
274 カム
276 サーボモータ
AX 回転軸
C 半導体チップ
HL1 吸着孔
HL2 孔
HL3 吸着孔
ST シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6