(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104476
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】外壁下地材及び外壁構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20240729BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
E04B2/56 644B
E04B2/56 644H
E04B1/70 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008702
(22)【出願日】2023-01-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592103442
【氏名又は名称】ビッグテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 正一
(72)【発明者】
【氏名】外崎 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】共田 陸史
(72)【発明者】
【氏名】竹平 龍平
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
【Fターム(参考)】
2E001EA08
2E001FA03
2E001FA09
2E001HF01
2E001HF05
2E001NA07
2E001NC01
2E001ND11
2E001ND12
2E002EA01
2E002EA02
2E002EB12
2E002FA03
2E002FB07
2E002GA01
2E002GA06
2E002HB01
2E002MA23
2E002MA27
2E002MA28
(57)【要約】
【課題】容易に仕上がり良く施工可能な外壁構造を提供する。
【解決手段】建物の外壁W1に用いられる外壁下地材10は、耐力面材となる矩形板状の基材11と、基材11の片面全体を覆う透湿防水シート12とを備え、透湿防水シート12は、シート本体13と、該シート本体13と上記基材11とを接着する粘着剤層14とを有し、透湿抵抗値が0.19m
2・s・Pa/μg以下になるように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に用いられる外壁下地材であって、
耐力面材となる矩形板状の基材と、
上記基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え、
上記透湿防水シートは、
シート本体と、該シート本体と上記基材とを接着する粘着剤層とを有し、
透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成されている
ことを特徴とする外壁下地材。
【請求項2】
請求項1に記載の外壁下地材であって、
上記粘着剤層は、透湿性を有し、上記シート本体の片面全体を覆っている
ことを特徴とする外壁下地材。
【請求項3】
請求項1に記載の外壁下地材であって、
上記基材は、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成された中密度繊維板で構成されている
ことを特徴とする外壁下地材。
【請求項4】
建物の外壁構造であって、
上記建物の躯体の屋外側に、請求項1~3のいずれか1つに記載の外壁下地材が複数取り付けられ、
上記複数の外壁下地材の屋外側に、上下に延びる複数の胴縁が取り付けられ、
上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、
上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間であって、上記複数の胴縁の隣り合う各2本の胴縁間には、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されている
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項5】
請求項4に記載の外壁構造において、
上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材の上下方向に延びる継ぎ目を屋外側から覆い隠す位置に設けられている
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項6】
請求項5に記載の外壁構造において、
上記複数の外壁下地材は、上記建物の躯体である複数の柱に複数の釘で固定され、
上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材を上記複数の柱に固定するための上記複数の釘及び釘穴を屋外側から覆い隠す位置に設けられている
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項7】
建物の外壁構造であって、
上記建物の躯体の屋外側に、請求項1~3のいずれか1つに記載の外壁下地材が複数取り付けられ、
上記複数の外壁下地材の屋外側に、左右に延びる複数の胴縁が取り付けられ、
上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、
上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間に、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されるように、上記各胴縁の上下の空間を連通する連通路が形成された通気胴縁である
ことを特徴とする外壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁下地材及び外壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建物の外壁内に通気路を形成し、室内で発生して壁内に浸入した湿気を屋外へ排出することで壁内における結露の発生を抑制すると共に、室内の空調効率の向上を図る通気構法による外壁構造が知られている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の外壁構造は、構造材の屋外側に、透湿性を有する耐力面材、透湿防水シート、胴縁、外装材を順に施工することによって構成されている。上記外壁構造では、透湿防水シートと外装材との間に複数の胴縁を平行に間隔を空けて設けることにより、複数の通気路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記外壁構造では、透湿防水シートを施工現場においてステープル等で耐力面材に固定していた。透湿防水シートは、薄く、軟らかく、軽いため、風で捲れ易く、破れる虞もあり、施工がし辛い。また、透湿防水シートは、施工時に皺が入り易く、施工者の技量によって仕上がりの良し悪しが異なる虞があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に仕上がり良く施工可能な外壁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、耐力面材となる基材の片面に予め透湿防水シートが接着された外壁下地材を用いることとした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、建物の外壁に用いられる外壁下地材であって、耐力面材となる矩形板状の基材と、上記基材の片面を覆う透湿防水シートとを備え、上記透湿防水シートは、シート本体と、該シート本体と上記基材とを接着する粘着剤層とを有し、透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、透湿防水シートの透湿抵抗は、JIS A6111に準拠して測定される値である。
【0010】
第1の発明では、耐力面材となる矩形板状の基材の片面に、透湿防水シートを、粘着剤層を含む透湿防水シート全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材を形成することとしている。このような外壁下地材を用いることにより、外壁下地材を建物の骨格となる構造材に固定するだけで、施工し難い透湿防水シートも容易に施工できる。また、上記外壁下地材は、工場等の屋内において透湿防水シートを基材に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シートが捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になる。従って、第1の発明によれば、上記外壁下地材を用いることにより、容易に仕上がり良く施工可能な外壁構造を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記粘着剤層は、透湿性を有し、上記シート本体の片面全体を覆っていることを特徴とするものである。
【0012】
第2の発明では、シート本体の片面全体を覆う透湿性を有する粘着剤層により、透湿防水シートが基材の片面全体に接着されている。このように、透湿防水シートを基材の片面全体に接着させることにより、透湿防水シートが剥がれ難くなり、施工時に風等によって透湿防水シートがばたつくことがなくなる。よって、第2の発明によれば、外壁構造の施工をより容易にすることができる。
【0013】
第3の発明は、第1の発明において、上記基材は、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成された中密度繊維板で構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
ところで、施工現場において耐力面材に透湿防水シートを施工する従来の施工方法では、耐力面材を柱等の躯体の屋外側に貼り終えた後、外壁の構造体(躯体及び耐力面材)を包み込むように透湿防水シートを横張りするのが一般的であり、外壁の下部から貼り始め、上下の透湿防水シートが一部重なるように、透湿防水シートの端部を上方へずらしながら貼り付けることとしていた。また、透湿防水シートは、タッカー等を用いてステープルを打ち込むことにより固定していた。このように従来の施工方法では、透湿防水シートで外壁の構造体を隙間無く覆うことにより、耐力面材の継ぎ目からの雨水の浸入を抑制していた。
【0015】
これに対し、予め基材の片面に透湿防水シートが接着された外壁下地材を用いると、外壁の施工は容易になる一方、透湿防水シートで基材(耐力面材)の継ぎ目を覆うことができないため、外壁下地材の継ぎ目から雨水が浸入する虞がある。
【0016】
そこで、第3の発明では、外壁下地材の基材を、吸水性が低い中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成することとしている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、吸水率が低い。そのため、外壁下地材の継ぎ目から雨水が浸入して基材に至ったとしても、基材が吸水して変形(厚さ膨張、反り、捻れ)することがなく、またカビの発生も抑制することができる。
【0017】
また、第3の発明では、外壁下地材の基材を構成する中密度繊維板を、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなる(撥水性を有する)ように構成している。そのため、外壁下地材の継ぎ目から雨水が浸入したとしても、雨水は基材の表面(木口面を含む)において接触角が90度より大きい水滴となるので、水滴が栓の役割を果たして外壁下地材の継ぎ目にはそれ以上雨水が浸入し難くなる。つまり、第3の発明によれば、外壁下地材の継ぎ目から雨水が浸入したとしても、基材の表面で止まり、それ以上雨水が室内側へ浸入するのを抑制することができる。
【0018】
第4の発明は、建物の外壁構造であって、上記建物の躯体の屋外側に、第1~第3のいずれか1つの発明に係る外壁下地材が複数取り付けられ、上記複数の外壁下地材の屋外側に、上下に延びる複数の胴縁が取り付けられ、上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間であって、上記複数の胴縁の隣り合う各2本の胴縁間には、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
第4の発明では、内部に上下方向に延びる通気路が形成された通気構法による外壁構造に、耐力面材となる矩形板状の基材の片面に、透湿防水シートを、粘着剤層を含む透湿防水シート全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材を用いることとしている。このような外壁下地材を用いることにより、外壁下地材を建物の骨格となる構造材に固定するだけで、施工し難い透湿防水シートも施工でき、通気構法による外壁の施工が容易になる。また、上記外壁下地材は、工場等の屋内において透湿防水シートを基材に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シートが捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になる。よって、このような外壁下地材を用いることにより、施工者の技量によらず、誰が施工しても、容易に仕上がり良く施工可能な通気構法による外壁構造を提供することができる。
【0020】
また、第4の発明では、透湿防水シートを基材の片面に接着するものの、透湿抵抗値が低く抑えられるように(0.19m2・s・Pa/μg以下になるように)構成している。そのため、室内で発生した湿気を、外壁下地材を通過させて通気路へ導き、空気と共に屋外へ排出することができる。
【0021】
第5の発明は、第4の発明において、上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材の上下方向に延びる継ぎ目を屋外側から覆い隠す位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0022】
ところで、上述のように、予め基材の片面に透湿防水シートが接着された外壁下地材を用いると、外壁の施工は容易になる一方、透湿防水シートで基材(耐力面材)の継ぎ目を覆うことができないため、外壁下地材の継ぎ目から雨水が浸入する虞がある。
【0023】
そこで、第5の発明では、複数の外壁下地材の上下方向に延びる継ぎ目、即ち、横方向に隣り合う2つの外壁下地材間の継ぎ目の位置に、上下方向に延びる胴縁を設けることにより、胴縁で継ぎ目を屋外側から覆い隠すようにしている。このような構造とすることにより、外壁下地材の継ぎ目からの雨水の浸入を抑制することができる。
【0024】
第6の発明は、第5の発明において、上記複数の外壁下地材は、上記建物の骨格となる複数の柱に複数の釘で固定され、上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材を上記複数の柱に固定するための上記複数の釘及び釘穴を屋外側から覆い隠す位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
ところで、外壁下地材を釘で柱に固定することとすると、外壁下地材には釘穴が空き、釘穴から雨水が浸入する虞がある。
【0026】
そこで、第6の発明では、複数の外壁下地材を複数の柱に固定するための複数の釘と釘を打ち込むことによって形成された釘穴を屋外側から覆い隠す位置に、上下方向に延びる胴縁を設けることとしている。このような構造とすることにより、釘穴から外壁下地材の内部に雨水が浸入するのを抑制することができる。
【0027】
第7の発明は、建物の外壁構造であって、上記建物の躯体の屋外側に、第1~第3のいずれか1つの発明に係る外壁下地材が複数取り付けられ、上記複数の外壁下地材の屋外側に、左右に延びる複数の胴縁が取り付けられ、上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間に、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されるように、上記各胴縁の上下の空間を連通する連通路が形成された通気胴縁であることを特徴とするものである。
【0028】
第7の発明では、内部に上下方向に延びる通気路が形成された通気構法による外壁構造に、耐力面材となる矩形板状の基材の片面に、透湿防水シートを、粘着剤層を含む透湿防水シート全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材を用いることとしている。このような外壁下地材を用いることにより、外壁下地材を建物の骨格となる構造材に固定するだけで、施工し難い透湿防水シートも施工でき、通気構法による外壁の施工が容易になる。また、上記外壁下地材は、工場等の屋内において透湿防水シートを基材に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シートが捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になる。よって、このような外壁下地材を用いることにより、施工者の技量によらず、誰が施工しても、容易に仕上がり良く施工可能な通気構法による外壁構造を提供することができる。
【0029】
また、第7の発明では、透湿防水シートを基材の片面に接着するものの、透湿抵抗値が低く抑えられるように(0.19m2・s・Pa/μg以下になるように)構成している。そのため、室内で発生した湿気を、外壁下地材を通過させて通気路へ導き、空気と共に屋外へ排出することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によると、耐力面材となる基材の片面に予め透湿防水シートが接着された外壁下地材を用いることにより、外壁の施工を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る建物の外壁構造を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る建物の外壁構造を示す横断面図である。
【
図4】
図4は、施工途中の外壁構造を屋外側から視た図であり、外壁下地材の施工後、胴縁の施工前の様子を示す図である。
【
図5】
図5は、施工途中の外壁構造を屋外側から視た図であり、胴縁の施工後、外装材の施工前の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0033】
《発明の実施形態1》
図1~
図3に示すように、外壁構造1は、建物の骨格となる構造材2(柱2a、間柱2b、土台2c、胴差2d、軒桁2e等)の屋外側に施工された外壁W1に採用されている。構造材2の屋内側には、内壁W2(内装材3及び防湿シート4)が施工されている。構造材2によって囲まれた空間、即ち外壁W1と内壁W2との間には、例えばロックウールからなる断熱材5が介装されている。
【0034】
図1~
図3に示すように、外壁構造1は、複数の外壁下地材10,…,10と、複数の胴縁20,…,20と、複数の外装材30,…,30とを備えている。複数の外壁下地材10は構造材2の屋外側に設けられ、複数の胴縁20,…,20は外壁下地材10,…,10の屋外側に設けられ、複数の外装材30,…,30は複数の胴縁20,…,20の屋外側に設けられている。
【0035】
〈外壁下地材〉
外壁下地材10は、基材11と、透湿防水シート12とを備えている。基材11は、厚さが5~30mmの耐力面材となり得る矩形状の板状部材で構成されている。透湿防水シート12は、基材11と等しい矩形状で等しい大きさ(幅×長さ)に形成され、基材11の片面に接着されている。例えば、本実施形態1では、外壁下地材10は、910mm×3030mmの大きさに形成されている。
【0036】
[基材]
基材11は、ダイライト(大建工業株式会社製)、火山性ガラス質複層板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、木質繊維板、ロックウール繊維板等の多孔質材、繊維質材等、耐力面材となり得る板状部材であればいかなるものであってもよいが、屋内の湿気を屋外へ排出して壁内における結露を防止する観点からは、基材11として透湿抵抗が低い素材を用いることが好ましい。本実施形態1では、密度0.79g/cm3の厚さ9mm厚の中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)を、基材11として用いている。
【0037】
基材11を構成する中密度繊維板は、耐水性に優れた接着剤を含んでいる。本実施形態1では、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤を含む中密度繊維板によって基材11が構成されている。なお、中密度繊維板に用いる接着剤は、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤に限られず、ジフェニルメタンジイソシアネートやフェノール樹脂等を含むものであってもよい。
【0038】
(撥水性)
基材11は、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成されている。具体的には、本実施形態1では、基材11を構成する中密度繊維板を形成する際に、中密度繊維板の表面が撥水性を有する(表面のいずれの箇所においても水の接触角が90度より大きくなる)のに必要な分量だけパラフィン・シリコン樹脂・フッ素樹脂等(撥水剤)を添加している。
【0039】
なお、基材11の表面は、水の接触角が110度以上となるように構成されるのが撥水性に優れる観点から好ましく、水の接触角が120度以上となるように構成されるとより好ましい。
【0040】
(吸水率)
基材11は、吸水率が15%以下となるように構成されている。なお、基材11は、吸水率が13.6%以下となるように構成されるのが好ましく、さらに、吸水率が13.2%以下となるように構成されるのがより好ましい。
【0041】
ここで、上記吸水率は、JIS A5905に規定される吸水厚さ膨張率試験に準拠して、相対湿度65±5%の環境下で恒量に達した試験片の重量(m1)を測定した後、該試験片を20±1℃の水中に置き、24時間浸した後、試験片を取り出して重量(m2)を測定し、水浸前後の試験片の重量差から算出したもの(水浸前後の試験片の重量差(m2-m1)を水浸前の重量m1で除したものに100を乗じた値)を用いる。
【0042】
上述のように耐水性に優れる接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。よって、基材11を構成する中密度繊維板の成形に耐水性に優れる接着剤を用い、その配合比率を調整することにより、基材11の吸水率を所望の吸水率、本実施形態では、15%以下(好ましくは13.6%以下、より好ましくは13.2%以下)にすることができる。
【0043】
なお、中密度繊維板の他に耐力面材としてよく用いられる厚さ12mmの構造用合板(スギ)と構造用合板(表層カラマツ、芯層スギ)について、上記吸水厚さ膨張率試験を行い、吸水率を算出したところ、その吸水率は、82%と61%であった。このことから、本実施形態1の基材11の吸水率が、構造用合板と比較して著しく低いことが判る。
【0044】
(透湿性能)
基材11は、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定される透湿抵抗が、1.2m2・s・Pa/μg未満となるように構成されている。具体的には、本実施形態1では、基材11の透湿抵抗が、1.2m2・s・Pa/μg未満となるように、基材11を構成する中密度繊維板のエレメントサイズ(木質繊維の大きさ、径、長さ)を調節している。
【0045】
上述のように耐水性に優れる接着剤を含む中密度繊維板は、吸水率が低くなる。しかしながら、本実施形態1では、基材11を構成する中密度繊維板のエレメントサイズ(木質繊維の大きさ、径、長さ)を調節することにより、吸水率が15%以下でも透湿抵抗が1.2m2・s・Pa/μg未満と低く抑えられた基材11を構成することができる。
【0046】
なお、中密度繊維板の他に耐力面材としてよく用いられる厚さ12mmの構造用合板(スギ)と構造用合板(表層カラマツ、芯層スギ)について、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定した透湿抵抗は、11m2・s・Pa/μgと13m2・s・Pa/μgであった。このことから、本実施形態1の基材11の透湿抵抗が、構造用合板と比較して著しく低い、つまり、透湿性能が著しく高いことが判る。
【0047】
[透湿防水シート]
図2及び
図3において拡大して示すように、透湿防水シート12は、シート本体13と、該シート本体13の下面に形成された粘着剤層14とを有している。透湿防水シート12は、粘着剤層14を基材11の片面に押圧して粘着力を発現させることにより、基材11の片面に接着されている。透湿防水シート12は、JIS A6111に準拠して測定した透湿抵抗が0.19m
2・s・Pa/μg以下となるように構成されている。
【0048】
本実施形態1では、シート本体13は、JIS A6111に準拠して測定される透湿抵抗が0.13m2・s・Pa/μg以下となる透湿性を有する透湿防水シートで構成されている。より具体的には、本実施形態1では、シート本体13は、厚みが0.1~0.2mmで多数の微細孔(直径0.5μm程度)が形成された例えば、ポリプロピレン等の樹脂フィルムで構成され、透湿抵抗が0.13m2・s・Pa/μg以下に構成されている。なお、シート本体13として用いる透湿防水シートは、JIS A6111に準拠したものであればいかなるものを用いてもよく、不織布で構成してもよい。また、これらを積層したものとしてもよい。
【0049】
粘着剤層14は、シート本体13の片面に粘着剤を塗布又は転写することにより形成されている。粘着剤層14は、シート本体13を基材11の片面に接着させることができる程度の粘着力を有し、透湿防水シート12の透湿抵抗が0.19m2・s・Pa/μg以下となるものであれば、いかなる粘着剤を用いて形成してもよい。
【0050】
なお、本実施形態1では、粘着剤層14は、JIS A6111に準拠して測定される透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下となる(透湿性を有する)ように構成され、シート本体13の片面全体を覆っている。
【0051】
より具体的には、本実施形態1では、粘着剤層14は、(メタ)アクリル系ポリマー5~60重量%に親水性化合物であるポリプロピレングリコールを添加し、溶媒によって全体が100重量%に調整されたアクリル系粘着剤組成物と架橋剤としてイソシアネート組成物0.5~5.0重量%を混合した溶液をシート本体13の下面に塗布又は転写することによって形成されている。ここで用いる(メタ)アクリル系ポリマーとしては、例えば、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。なお、アクリル系粘着剤組成物中、ポリプロピレングリコールは、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して1~20重量部の割合で添加されている。添加量が1重量部より少ないと粘着剤層14に所望の透湿抵抗(0.06m2・s・Pa/μg以下)を与えることができず、添加量が20重量部より多いと正常な粘着剤層14の形成が困難であるため、添加量は上記の範囲が好ましい。
【0052】
以上のように、本実施形態1では、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対してポリプロピレングリコールが1~20重量部添加されたアクリル系粘着剤組成物とイソシアネート組成物0.5~5.0重量%を混合して塗布することにより、透湿抵抗0.06m2・s・Pa/μg以下の粘着剤層14が形成される。
【0053】
なお、本実施形態1では、通常用いられる方法で発泡させる、又は気泡を発生させることで、透湿抵抗が0.03m2・s・Pa/μg以下の粘着剤層14を形成することができ、好ましい。
【0054】
また、粘着剤層14は、10μm以上150μm以下の厚さを有することが好ましく、30μm以上90μm以下の厚さを有することがより好ましい。10μmより薄い場合、粘着力が低く透湿防水シート12が剥がれ易くなるおそれがあり、150μmより厚い場合、透湿抵抗が増大するため好ましくない。
【0055】
以上のように、外壁下地材10は、耐力面材となる基材11の片面に透湿防水シート12を接着することによって構成されている。そして、外壁下地材10は、基材11の透湿防水シート12の非接着面を構造材2の外面に当接させ、外壁下地材10の屋外側から構造材2に向かって外壁下地材10を貫通するように釘7を打ち込むことにより、構造材2に取り付けられる。
【0056】
〈胴縁〉
胴縁20は、長尺の角材によって構成されている。本実施形態1では、幅の異なる2種類の角材が胴縁20として用いられている。複数の胴縁20,…,20は、外壁下地材10の屋外側に、長さ方向が縦方向となるように左右方向に所定長さ(例えば、455mm)毎に配置され、釘やステープル等で外壁下地材10の屋外側に固定されている(縦張りされている)。
【0057】
幅の広い幅広胴縁20aは、幅の狭い幅狭胴縁20bの略2倍の幅を有している。幅広胴縁20aは、左右に隣り合う外壁下地材10の継ぎ目(後述する上下方向に延びる継ぎ目15a)を屋外側から覆い隠す位置に設けられ、幅狭胴縁20bは、左右に隣り合う2本の幅広胴縁20aの間に設けられている(
図4,5を参照)。また、
図3に示すように、幅広胴縁20aは、柱2aに対応する位置に設けられ、幅狭胴縁20bは、間柱2bに対応する位置に設けられている。
【0058】
〈外装材〉
外装材30は、外壁W1に用いることができる面材であればいかなるものであってもよいが、本実施形態1では、外装材30は、サイディングで構成されている。また、本実施形態1では、複数の外装材30,…,30は、胴縁20の屋外側に長さ方向が横方向となるように配置され、釘等で胴縁20に固定されている(横張りされている)。
【0059】
[通気路]
複数の外壁下地材10,…,10と複数の外装材30,…,30との間には、複数の胴縁20,…,20によって上下方向に延びる複数の通気路40,…,40が区画されている。
図1に示すように、各通気路40は、下端部が流入口となり、上端部が流出口となって、屋外の空気が流入口から流出口へ流れる。各通気路40の上端部(流出口)から流出した空気は、軒裏換気口8又は棟換気口(図示省略)に向かって流れ、軒裏換気口8又は棟換気口から屋外へ排出される。
【0060】
-壁の施工方法-
外壁W1は、以下のようにして施工される。
【0061】
まず、複数の外壁下地材10,…,10を、建物の骨格となる構造材2(柱2a、間柱2b、土台2c、胴差2d、軒桁2e等)に、釘7で打ち付ける。複数の外壁下地材10,…,10は、透湿防水シート12が基材11よりも屋外側に位置するように、基材11の透湿防水シート12の非接着面を構造材2の外面に当接させ、屋外側から構造材2に向かって釘7を打ち込むことにより、構造材2に取り付けられる。
【0062】
図4に示すように、各外壁下地材10は、四周と幅方向(左右方向)の中央に複数の釘7,…,7が打ち込まれて構造材2に取り付けられる。具体的には、建物の1階部分の外壁W1を構成する外壁下地材10は、幅方向の両端部は柱2a,2aに取り付けられ、幅方向の中央は間柱2bに取り付けられ、下端部は土台2cに取り付けられ、上端部は胴差2dに取り付けられる。建物の2階部分の外壁W1を構成する外壁下地材10は、幅方向の両端部は柱2a,2aに取り付けられ、幅方向の中央は間柱2bに取り付けられ、下端部は胴差2dに取り付けられ、上端部は軒桁2eに取り付けられる。そのため、各柱2aの屋外側には、外壁下地材10の上下方向に延びる継ぎ目15aが形成され、胴差2dの屋外側には、外壁下地材10の左右方向に延びる継ぎ目15bが形成される。
【0063】
外壁下地材10は、施工現場に搬入される前に、工場等の屋内において透湿防水シート12が基材11の片面に固定(接着)されている。そのため、外壁下地材10を構造材2に取り付けるだけで、耐力面材となる基材11と透湿防水シート12とを一度に施工することができる。なお、基材11への透湿防水シート12の貼り付け方法は、所謂ラミネーター、ロールプレス、平板プレス等一定の圧力をかけられる工程を有するものであればよく、熱圧である必要もない。
【0064】
次に、複数の胴縁20,…,20を、複数の外壁下地材10,…,10の屋外側に、取り付ける。
図5に示すように、外壁下地材10の屋外側に、左右方向に所定長さ(例えば、455mm)毎に胴縁20を配置し、釘やステープル等で外壁下地材10の屋外側に固定する。
【0065】
具体的には、幅広胴縁20aについては、外壁下地材10の屋外側において柱2aに対応する位置に配置し、釘やステープル等で外壁下地材10に固定する。幅広胴縁20aをこのように配置して固定することにより、複数の外壁下地材10,…,10の上下方向に延びる複数の継ぎ目15a,…,15aと、各外壁下地材10を柱2a,2aに固定するための複数の釘7,…,7及びその釘穴とを屋外側から覆い隠すことができる(
図4,5を参照)。
【0066】
一方、幅狭胴縁20bについては、外壁下地材10の屋外側において間柱2bに対応する位置に配置し、釘やステープル等で外壁下地材10に固定する。幅狭胴縁20bをこのように配置して固定することにより、各外壁下地材10を間柱2bに固定するための複数の釘7,…,7及びその釘穴を屋外側から覆い隠すことができる(
図4,5を参照)。
【0067】
複数の胴縁20,…,20の施工後、複数の外装材30,…,30を複数の胴縁20,…,20に取り付ける。具体的には、胴縁20の屋外側に、長さ方向が横方向となる向きに外装材30を配置し、屋外側から胴縁20に向かって釘を打ち込む等して外装材30を胴縁20に固定する。
【0068】
以上のようにして、外壁構造1が施工される。
【0069】
-外壁構造の特性-
〈通気路の特性〉
上述のように、本実施形態1の外壁構造1では、複数の外壁下地材10,…,10と複数の外装材30,…,30との間には、複数の胴縁20,…,20によって上下方向に延びる複数の通気路40,…,40が区画されている。
【0070】
各通気路40では、下端部(流入口)から流入した屋外の空気が上方へ流れ、上端部(流出口)から流出する。各通気路40の上端部(流出口)から流出した空気は、軒裏換気口8又は棟換気口(図示省略)に向かって流れ、軒裏換気口8又は棟換気口から屋外へ排出される。そのため、室内の湿気が、内壁W2(内装材3及び防湿シート4)及び断熱材5を通過して外壁下地材10に至ったとしても、外壁下地材10を通過して通気路40に至り、通気路40を流れる空気と共に軒裏換気口8又は棟換気口から屋外へ排出される。そのため、外壁W1内において結露が生じ難くなる。また、外壁W1内において結露が生じたとしても、結露水は、通気路40を流れる空気によって気化して水蒸気となり、該空気と共に軒裏換気口8又は棟換気口から屋外へ排出される。そのため、外壁下地材10の腐朽による劣化を防止することができる。
【0071】
〈防水性〉
本実施形態1の外壁構造1では、耐力面材となる基材11として、密度が0.7以上0.85未満で吸水率が15%以下の中密度繊維板を用いている。このように吸水率が低い中密度繊維板からなる基材11を耐力面材として用いることにより、構造用合板を耐力面材として用いる場合に比べて、耐力面材の防水性が高くなる。
【0072】
〈釘穴止水性〉
また、本実施形態1の外壁構造1では、比較的高密度で空隙が少ない中密度繊維板を耐力面材となる基材11として用いることにより、構造用合板を耐力面材として用いる場合に比べて耐力面材の釘穴止水性が飛躍的に高くなる。耐力面材(本実施形態1では外壁下地材10)を施工するために打ち込まれた釘7に、耐水性を有する接着剤や撥水剤でコーティングされた木材繊維が密着するため、耐力面材の釘穴止水性が飛躍的に高くなると考えられる。
【0073】
また、本実施形態1では、基材11の片面(屋外側の面)に、粘着剤層14を有する透湿防水シート12で覆っている。このように基材11の片面を、粘着剤層14を有する透湿防水シート12で覆うこととすると、耐力面材(本実施形態1では外壁下地材10)を施工する際に釘7を打ち込んでも、釘7に粘着剤層14の粘着剤が密着することにより、透湿防水シート12の釘穴止水性が飛躍的に高くなる。
【0074】
以上のように、本実施形態1の外壁構造1では、工場等で予め基材11の片面(屋外側の面)に粘着剤層14を有する透湿防水シート12を接着した外壁下地材10を用いることとしている。そのため、従来の外壁構造のように粘着剤層のない透湿防水シートを耐力面材にタッカー等でステープルを打ち付ける場合に比べて、耐力面材及び透湿防水シートの釘穴止水性が飛躍的に高くなる。
【0075】
また、本実施形態1の外壁構造1では、各外壁下地材10を柱2a,2aに固定するための複数の釘7,…,7及びその釘穴を屋外側から覆い隠す位置に、幅広胴縁20a,…,20aを設け、各外壁下地材10を間柱2bに固定するための複数の釘7,…,7及びその釘穴を屋外側から覆い隠す位置に幅狭胴縁20b,…,20bを設けることとしている。そのため、少なくとも外壁下地材10の屋外側から柱2a及び間柱2bに向かって打ち込まれた釘7の釘穴からは、外壁下地材10の内部に雨水が浸入しなくなる。
【0076】
〈継ぎ目における止水性〉
ところで、施工現場において耐力面材に透湿防水シートを施工する従来の施工方法では、耐力面材を柱等の躯体の屋外側に貼り終えた後、外壁の構造体(躯体及び耐力面材)を包み込むように透湿防水シートを横張りするのが一般的であり、外壁の下部から貼り始め、上下の透湿防水シートが一部重なるように、透湿防水シートの端部を上方へずらしながら貼り付けることとしていた。また、透湿防水シートは、タッカー等を用いてステープルを打ち込むことにより固定していた。このように従来の施工方法では、透湿防水シートで外壁の構造体を隙間無く覆うことにより、耐力面材の継ぎ目からの雨水の浸入を抑制していた。
【0077】
これに対し、本実施形態1の外壁構造1では、上述のように、予め基材11の片面に透湿防水シート12が接着された外壁下地材10を用いることとしている。そのため、外壁W1の施工は容易になる一方、透湿防水シート12で基材11(耐力面材)の継ぎ目を覆うことができないため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入する虞がある。
【0078】
そこで、本実施形態1の外壁構造1では、外壁下地材10の基材11を、吸水性が低い中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成することとしている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、吸水率が低い。そのため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入して基材11に至ったとしても、基材11が吸水して変形(厚さ膨張、反り、捻れ)したり、カビが発生したりすることがない。
【0079】
また、本実施形態1の外壁構造1では、外壁下地材10の基材11を構成する中密度繊維板を、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなる(撥水性を有する)ように構成している。そのため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入したとしても、雨水は基材11の表面(木口面を含む)において接触角が90度より大きい水滴となり、水滴が栓の役割を果たし、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bにはそれ以上雨水が浸入し難くなる。
【0080】
また、上述したように、本実施形態1の外壁構造1では、複数の外壁下地材10,…,10の上下方向に延びる継ぎ目15a、即ち、横方向に隣り合う2つの外壁下地材10,10間の継ぎ目15aの位置に、上下方向に延びる幅広胴縁20aを設けることにより、幅広胴縁20aで継ぎ目15aを屋外側から覆い隠すようにしている。そのため、雨水が外壁下地材10の継ぎ目15aから浸入することがなくなる。
【0081】
-実施形態1の効果-
本実施形態1では、耐力面材となる矩形板状の基材11の片面に、透湿防水シート12を、粘着剤層14を含む透湿防水シート12全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材10を形成することとしている。このような外壁下地材10を用いることにより、外壁下地材10を建物の骨格となる構造材2に固定するだけで、施工し難い透湿防水シート12も容易に施工できる。また、上記外壁下地材10は、工場等の屋内において透湿防水シート12を基材11に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シート12が捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になる。従って、本実施形態1によれば、上記外壁下地材10を用いることにより、容易に仕上がり良く施工可能な外壁構造1を提供することができる。
【0082】
また、本実施形態1では、シート本体13の片面全体を覆う透湿性を有する粘着剤層14により、透湿防水シート12が基材11の片面全体に接着されている。このように、透湿防水シート12を基材11の片面全体に接着させることにより、透湿防水シート12が剥がれ難くなり、施工時に風等によって透湿防水シート12がばたつくことがなくなる。よって、本実施形態1によれば、外壁構造1の施工をより容易にすることができる。
【0083】
ところで、施工現場において耐力面材に透湿防水シートを施工する従来の施工方法では、耐力面材を柱等の躯体の屋外側に貼り終えた後、外壁の構造体(躯体及び耐力面材)を包み込むように透湿防水シートを横張りするのが一般的であり、外壁の下部から貼り始め、上下の透湿防水シートが一部重なるように、透湿防水シートの端部を上方へずらしながら貼り付けることとしていた。また、透湿防水シートは、タッカー等を用いてステープルを打ち込むことにより固定していた。このように従来の施工方法では、透湿防水シートで外壁の構造体を隙間無く覆うことにより、耐力面材の継ぎ目からの雨水の浸入を抑制していた。
【0084】
これに対し、予め基材11の片面に透湿防水シート12が接着された外壁下地材10を用いると、外壁W1の施工は容易になる一方、透湿防水シート12で基材11(耐力面材)の継ぎ目を覆うことができないため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入する虞がある。
【0085】
そこで本実施形態1では、外壁下地材10の基材11を、吸水性が低い中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成することとしている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、吸水率が低い。そのため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入して基材11に至ったとしても、基材11が吸水して変形(厚さ膨張、反り、捻れ)することがなく、またカビの発生も抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態1では、外壁下地材10の基材11を構成する中密度繊維板を、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなる(撥水性を有する)ように構成している。そのため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入したとしても、雨水は基材11の表面(木口面を含む)において接触角が90度より大きい水滴となるので、水滴が栓の役割を果たして外壁下地材10の継ぎ目15a,15bにはそれ以上雨水が浸入し難くなる。つまり、本実施形態1によれば、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入したとしても、基材11の表面で止まり、それ以上雨水が室内側へ浸入するのを抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態1では、内部に上下方向に延びる通気路40が形成された通気構法による外壁構造1に、耐力面材となる矩形板状の基材11の片面に、透湿防水シート12を、粘着剤層14を含む透湿防水シート12全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材10を用いることとしている。このような外壁下地材10を用いることにより、外壁下地材10を建物の骨格となる構造材2に固定するだけで、施工し難い透湿防水シート12も施工でき、通気構法による外壁W1の施工が容易になる。また、上記外壁下地材10は、工場等の屋内において透湿防水シート12を基材11に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シート12が捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になる。よって、このような外壁下地材10を用いることにより、施工者の技量によらず、誰が施工しても、容易に仕上がり良く施工可能な通気構法による外壁構造1を提供することができる。
【0088】
また、本実施形態1では、透湿防水シート12を基材11の片面に接着するものの、透湿抵抗値が低く抑えられるように(0.19m2・s・Pa/μg以下になるように)構成している。そのため、室内で発生した湿気を、外壁下地材10を通過させて通気路40へ導き、空気と共に屋外へ排出することができる。
【0089】
ところで、上述のように、予め基材11の片面に透湿防水シート12が接着された外壁下地材10を用いると、外壁W1の施工は容易になる一方、透湿防水シート12で基材11(耐力面材)の継ぎ目を覆うことができないため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入する虞がある。外壁下地材10に付着した雨水は下方へ流れるため、左右方向に延びる継ぎ目15bよりも上下方向に流れる継ぎ目15aでは、雨水が浸入する虞が高くなる。
【0090】
そこで、本実施形態1では、複数の外壁下地材10,…,10の上下方向に延びる継ぎ目15a、即ち、横方向に隣り合う2つの外壁下地材10,10間の継ぎ目15aの位置に、上下方向に延びる幅広胴縁20aを設けることにより、幅広胴縁20aで継ぎ目15aを屋外側から覆い隠すようにしている。このような構造とすることにより、外壁下地材10の継ぎ目15aからの雨水の浸入を抑制することができる。
【0091】
ところで、外壁下地材10を釘7で柱(柱2a及び間柱2b)に固定することとすると、外壁下地材10には釘穴が空き、釘穴から雨水が浸入する虞がある。
【0092】
そこで、本実施形態1では、複数の外壁下地材10,…,10を複数の柱(柱2a,…,2a及び間柱2b,…,2b)に固定するための複数の釘7,…,7とその釘穴を屋外側から覆い隠す位置に、上下方向に延びる胴縁(幅広胴縁20a,…,20a及び幅狭胴縁20b,…,20b)を設けることとしている。このような構造とすることにより、釘穴から外壁下地材10の内部に雨水が浸入するのを抑制することができる。
【0093】
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、透湿防水シート12の粘着剤層14は、シート本体13の片面全体を覆うものであったが、透湿防水シート12が捲れ上がったり、皺になったりしない程度に基材11に貼り付けることができるのであれば、シート本体13の片面に部分的に又は断片的に形成されていてもよい。例えば、シート本体13の片面に、上下方向(シート本体13の長さ方向)に延びる細長い粘着剤層14を複数一定間隔で形成することとしてもよい。
【0094】
また、施工現場にて、外壁W1の地面からの高さが1mまでの部分に防腐・防蟻処理を施す場合には、必要に応じて、一部分(地面からの高さが1mまでの部分)のみ透湿防水シート12を接着せずに基材11が露出した外壁下地材10を用意し、防腐・防蟻処理を行った後、基材11を十分に乾燥させた上で、基材11の露出部分に透湿防水シート12を貼り付けることとしてもよい。
【0095】
また、上記実施形態1では、(メタ)アクリル系ポリマー5~60重量%にポリプロピレングリコールを添加したアクリル系粘着剤組成物に架橋剤を添加した粘着剤層14を形成していた。しかしながら、本発明に係る粘着剤層は、上記のものに限られない。粘着剤層を形成する粘着剤は、通常用いられる親水性を有する(メタ)アクリルモノマーを含有する(メタ)アクリル系ポリマー、さらには通常粘着剤に用いられている親水性添加剤、粘着付与剤等の成分を含有していてもよく、また、架橋剤としてはアクリル系粘着剤に通常用いられるイソシアネート樹脂、エポキシ樹脂、金属キレート等を用い、さらには発泡剤等を添加したり、アクリルエマルジョン等のように機械発泡させる等、所望の透湿抵抗を有する粘着剤層を形成することができるものであればいかなる組成や塗工方法のものであってもよい。
【0096】
また、上記実施形態1の外壁構造1は、外壁下地材10の屋外側に複数の胴縁20,…,20を長さ方向が縦方向(上下方向)となるように取り付け(縦張りし)、胴縁20の屋外側に複数の外装材30,…,30を長さ方向が横方向(左右方向)となるように取り付けた(横張りした)ものであった。しかしながら、本発明に係る外壁構造は、外壁下地材10の屋外側に複数の胴縁20,…,20を長さ方向が横方向(左右方向)となるように取り付け(横張りし)、胴縁20の屋外側に複数の外装材30,…,30を長さ方向が縦方向(上下方向)となるように取り付けた(縦張りした)ものであってもよい。
【0097】
なお、上述のように胴縁20を横張りし、外装材30を縦張りする場合には、複数の胴縁20,…,20に各胴縁20の上下の空間を連通する連通路を複数形成し、通気胴縁とする。連通路は、各胴縁20に上端から下端まで上下方向に延びる穴や溝を形成する、又は短い胴縁20を横方向に連続して設けずに間隔を空けて設けることによって形成することができる。このように複数の胴縁20,…,20に複数の連通路を形成して(穴や溝を形成して又は間隔を開けて)通気胴縁とすることにより、実施形態1の外壁構造1と同様に、複数の外壁下地材10,…,10と複数の外装材30,…,30との間に、上下方向に延びる複数の通気路40,…,40を形成することができる。そのため、胴縁20を横張りし、外装材30を縦張りした外壁構造1であっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、外壁下地材及び外壁構造に有用である。
【符号の説明】
【0099】
1 外壁構造
2a 柱
4 防湿シート
7 釘
10 外壁下地材
11 基材
12 透湿防水シート
13 シート本体
14 粘着剤層
15a 継ぎ目
15b 継ぎ目
20 胴縁
20a 幅広胴縁
20b 幅狭胴縁
40 通気路
W1 外壁
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁下地材及び外壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建物の外壁内に通気路を形成し、室内で発生して壁内に浸入した湿気を屋外へ排出することで壁内における結露の発生を抑制すると共に、室内の空調効率の向上を図る通気構法による外壁構造が知られている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の外壁構造は、構造材の屋外側に、透湿性を有する耐力面材、透湿防水シート、胴縁、外装材を順に施工することによって構成されている。上記外壁構造では、透湿防水シートと外装材との間に複数の胴縁を平行に間隔を空けて設けることにより、複数の通気路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記外壁構造では、透湿防水シートを施工現場においてステープル等で耐力面材に固定していた。透湿防水シートは、薄く、軟らかく、軽いため、風で捲れ易く、破れる虞もあり、施工がし辛い。また、透湿防水シートは、施工時に皺が入り易く、施工者の技量によって仕上がりの良し悪しが異なる虞があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に仕上がり良く施工可能な外壁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、耐力面材となる基材の片面に予め透湿防水シートが接着された外壁下地材を用いることとした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、建物の外壁に用いられる外壁下地材であって、耐力面材となる矩形板状の基材と、上記基材の片面を覆う透湿防水シートとを備え、上記透湿防水シートは、シート本体と、該シート本体と上記基材とを接着する粘着剤層とを有し、透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、透湿防水シートの透湿抵抗は、JIS A6111に準拠して測定される値である。
【0010】
第1の発明では、耐力面材となる矩形板状の基材の片面に、透湿防水シートを、粘着剤層を含む透湿防水シート全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材を形成することとしている。このような外壁下地材を用いることにより、外壁下地材を建物の骨格となる構造材に固定するだけで、施工し難い透湿防水シートも容易に施工できる。また、上記外壁下地材は、工場等の屋内において透湿防水シートを基材に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シートが捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になる。従って、第1の発明によれば、上記外壁下地材を用いることにより、容易に仕上がり良く施工可能な外壁構造を提供することができる。
【0011】
また、第1の発明は、上記構成に加え、上記粘着剤層は、透湿性を有し、上記シート本体の片面全体を覆っていることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、シート本体の片面全体を覆う透湿性を有する粘着剤層により、透湿防水シートが基材の片面全体に接着されている。このように、透湿防水シートを基材の片面全体に接着させることにより、透湿防水シートが剥がれ難くなり、施工時に風等によって透湿防水シートがばたつくことがなくなる。よって、第1の発明によれば、外壁構造の施工をより容易にすることができる。
【0013】
第2の発明は、建物の外壁に用いられる外壁下地材であって、耐力面材となる矩形板状の基材と、上記基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え、上記透湿防水シートは、透湿性を有するシート本体と、上記シート本体の片面に部分的に又は断片的に設けられて該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有していることを特徴とするものである。
【0014】
第2の発明では、耐力面材となる矩形板状の基材の片面に、透湿性を有するシート本体と透湿性を有する粘着剤層とを有する透湿防水シートを接着させた外壁下地材を形成することとしている。このような外壁下地材を用いることにより、外壁下地材を建物の骨格となる構造材に固定するだけで、施工し難い透湿防水シートも容易に施工できる。また、上記外壁下地材は、工場等の屋内において透湿防水シートを基材に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シートが捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になる。従って、第2の発明によれば、上記外壁下地材を用いることにより、容易に仕上がり良く施工可能な外壁構造を提供することができる。
【0015】
また、第2の発明では、透湿性を有する粘着剤層を、シート本体の片面に部分的に又は断片的に設けることとしているため、粘着剤層をシート本体の片面全面を覆うように設けた場合に比べて、透湿防水シート全体の透湿抵抗値を低く抑えることができる。
【0016】
第3の発明は、第1の発明において、上記基材は、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成された中密度繊維板で構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
ところで、施工現場において耐力面材に透湿防水シートを施工する従来の施工方法では、耐力面材を柱等の躯体の屋外側に貼り終えた後、外壁の構造体(躯体及び耐力面材)を包み込むように透湿防水シートを横張りするのが一般的であり、外壁の下部から貼り始め、上下の透湿防水シートが一部重なるように、透湿防水シートの端部を上方へずらしながら貼り付けることとしていた。また、透湿防水シートは、タッカー等を用いてステープルを打ち込むことにより固定していた。このように従来の施工方法では、透湿防水シートで外壁の構造体を隙間無く覆うことにより、耐力面材の継ぎ目からの雨水の浸入を抑制していた。
【0018】
これに対し、予め基材の片面に透湿防水シートが接着された外壁下地材を用いると、外壁の施工は容易になる一方、透湿防水シートで基材(耐力面材)の継ぎ目を覆うことができないため、外壁下地材の継ぎ目から雨水が浸入する虞がある。
【0019】
そこで、第3の発明では、外壁下地材の基材を、吸水性が低い中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成することとしている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、吸水率が低い。そのため、外壁下地材の継ぎ目から雨水が浸入して基材に至ったとしても、基材が吸水して変形(厚さ膨張、反り、捻れ)することがなく、またカビの発生も抑制することができる。
【0020】
また、第3の発明では、外壁下地材の基材を構成する中密度繊維板を、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなる(撥水性を有する)ように構成している。そのため、外壁下地材の継ぎ目から雨水が浸入したとしても、雨水は基材の表面(木口面を含む)において接触角が90度より大きい水滴となるので、水滴が栓の役割を果たして外壁下地材の継ぎ目にはそれ以上雨水が浸入し難くなる。つまり、第3の発明によれば、外壁下地材の継ぎ目から雨水が浸入したとしても、基材の表面で止まり、それ以上雨水が室内側へ浸入するのを抑制することができる。
【0021】
第4の発明は、建物の外壁構造であって、上記建物の躯体の屋外側に、第1~第3のいずれか1つの発明に係る外壁下地材が複数取り付けられ、上記複数の外壁下地材の屋外側に、上下に延びる複数の胴縁が取り付けられ、上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間であって、上記複数の胴縁の隣り合う各2本の胴縁間には、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
第4の発明では、内部に上下方向に延びる通気路が形成された通気構法による外壁構造に、耐力面材となる矩形板状の基材の片面に、透湿防水シートを、粘着剤層を含む透湿防水シート全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材を用いることとしている。このような外壁下地材を用いることにより、外壁下地材を建物の骨格となる構造材に固定するだけで、施工し難い透湿防水シートも施工でき、通気構法による外壁の施工が容易になる。また、上記外壁下地材は、工場等の屋内において透湿防水シートを基材に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シートが捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になる。よって、このような外壁下地材を用いることにより、施工者の技量によらず、誰が施工しても、容易に仕上がり良く施工可能な通気構法による外壁構造を提供することができる。
【0023】
また、第4の発明では、透湿防水シートを基材の片面に接着するものの、透湿抵抗値が低く抑えられるように(0.19m2・s・Pa/μg以下になるように)構成している。そのため、室内で発生した湿気を、外壁下地材を通過させて通気路へ導き、空気と共に屋外へ排出することができる。
【0024】
第5の発明は、第4の発明において、上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材の上下方向に延びる継ぎ目を屋外側から覆い隠す位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
ところで、上述のように、予め基材の片面に透湿防水シートが接着された外壁下地材を用いると、外壁の施工は容易になる一方、透湿防水シートで基材(耐力面材)の継ぎ目を覆うことができないため、外壁下地材の継ぎ目から雨水が浸入する虞がある。
【0026】
そこで、第5の発明では、複数の外壁下地材の上下方向に延びる継ぎ目、即ち、横方向に隣り合う2つの外壁下地材間の継ぎ目の位置に、上下方向に延びる胴縁を設けることにより、胴縁で継ぎ目を屋外側から覆い隠すようにしている。このような構造とすることにより、外壁下地材の継ぎ目からの雨水の浸入を抑制することができる。
【0027】
第6の発明は、第5の発明において、上記複数の外壁下地材は、上記建物の骨格となる複数の柱に複数の釘で固定され、上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材を上記複数の柱に固定するための上記複数の釘及び釘穴を屋外側から覆い隠す位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0028】
ところで、外壁下地材を釘で柱に固定することとすると、外壁下地材には釘穴が空き、釘穴から雨水が浸入する虞がある。
【0029】
そこで、第6の発明では、複数の外壁下地材を複数の柱に固定するための複数の釘と釘を打ち込むことによって形成された釘穴を屋外側から覆い隠す位置に、上下方向に延びる胴縁を設けることとしている。このような構造とすることにより、釘穴から外壁下地材の内部に雨水が浸入するのを抑制することができる。
【0030】
第7の発明は、建物の外壁構造であって、上記建物の躯体の屋外側に、第1~第3のいずれか1つの発明に係る外壁下地材が複数取り付けられ、上記複数の外壁下地材の屋外側に、左右に延びる複数の胴縁が取り付けられ、上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間に、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されるように、上記各胴縁の上下の空間を連通する連通路が形成された通気胴縁であることを特徴とするものである。
【0031】
第7の発明では、内部に上下方向に延びる通気路が形成された通気構法による外壁構造に、耐力面材となる矩形板状の基材の片面に、透湿防水シートを、粘着剤層を含む透湿防水シート全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材を用いることとしている。このような外壁下地材を用いることにより、外壁下地材を建物の骨格となる構造材に固定するだけで、施工し難い透湿防水シートも施工でき、通気構法による外壁の施工が容易になる。また、上記外壁下地材は、工場等の屋内において透湿防水シートを基材に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シートが捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になる。よって、このような外壁下地材を用いることにより、施工者の技量によらず、誰が施工しても、容易に仕上がり良く施工可能な通気構法による外壁構造を提供することができる。
【0032】
また、第7の発明では、透湿防水シートを基材の片面に接着するものの、透湿抵抗値が低く抑えられるように(0.19m2・s・Pa/μg以下になるように)構成している。そのため、室内で発生した湿気を、外壁下地材を通過させて通気路へ導き、空気と共に屋外へ排出することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によると、耐力面材となる基材の片面に予め透湿防水シートが接着された外壁下地材を用いることにより、外壁の施工を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る建物の外壁構造を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る建物の外壁構造を示す横断面図である。
【
図4】
図4は、施工途中の外壁構造を屋外側から視た図であり、外壁下地材の施工後、胴縁の施工前の様子を示す図である。
【
図5】
図5は、施工途中の外壁構造を屋外側から視た図であり、胴縁の施工後、外装材の施工前の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0036】
《発明の実施形態1》
図1~
図3に示すように、外壁構造1は、建物の骨格となる構造材2(柱2a、間柱2b、土台2c、胴差2d、軒桁2e等)の屋外側に施工された外壁W1に採用されている。構造材2の屋内側には、内壁W2(内装材3及び防湿シート4)が施工されている。構造材2によって囲まれた空間、即ち外壁W1と内壁W2との間には、例えばロックウールからなる断熱材5が介装されている。
【0037】
図1~
図3に示すように、外壁構造1は、複数の外壁下地材10,…,10と、複数の胴縁20,…,20と、複数の外装材30,…,30とを備えている。複数の外壁下地材10は構造材2の屋外側に設けられ、複数の胴縁20,…,20は外壁下地材10,…,10の屋外側に設けられ、複数の外装材30,…,30は複数の胴縁20,…,20の屋外側に設けられている。
【0038】
〈外壁下地材〉
外壁下地材10は、基材11と、透湿防水シート12とを備えている。基材11は、厚さが5~30mmの耐力面材となり得る矩形状の板状部材で構成されている。透湿防水シート12は、基材11と等しい矩形状で等しい大きさ(幅×長さ)に形成され、基材11の片面に接着されている。例えば、本実施形態1では、外壁下地材10は、910mm×3030mmの大きさに形成されている。
【0039】
[基材]
基材11は、ダイライト(大建工業株式会社製)、火山性ガラス質複層板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、木質繊維板、ロックウール繊維板等の多孔質材、繊維質材等、耐力面材となり得る板状部材であればいかなるものであってもよいが、屋内の湿気を屋外へ排出して壁内における結露を防止する観点からは、基材11として透湿抵抗が低い素材を用いることが好ましい。本実施形態1では、密度0.79g/cm3の厚さ9mm厚の中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)を、基材11として用いている。
【0040】
基材11を構成する中密度繊維板は、耐水性に優れた接着剤を含んでいる。本実施形態1では、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤を含む中密度繊維板によって基材11が構成されている。なお、中密度繊維板に用いる接着剤は、ユリア・メラミン共縮合樹脂系接着剤に限られず、ジフェニルメタンジイソシアネートやフェノール樹脂等を含むものであってもよい。
【0041】
(撥水性)
基材11は、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成されている。具体的には、本実施形態1では、基材11を構成する中密度繊維板を形成する際に、中密度繊維板の表面が撥水性を有する(表面のいずれの箇所においても水の接触角が90度より大きくなる)のに必要な分量だけパラフィン・シリコン樹脂・フッ素樹脂等(撥水剤)を添加している。
【0042】
なお、基材11の表面は、水の接触角が110度以上となるように構成されるのが撥水性に優れる観点から好ましく、水の接触角が120度以上となるように構成されるとより好ましい。
【0043】
(吸水率)
基材11は、吸水率が15%以下となるように構成されている。なお、基材11は、吸水率が13.6%以下となるように構成されるのが好ましく、さらに、吸水率が13.2%以下となるように構成されるのがより好ましい。
【0044】
ここで、上記吸水率は、JIS A5905に規定される吸水厚さ膨張率試験に準拠して、相対湿度65±5%の環境下で恒量に達した試験片の重量(m1)を測定した後、該試験片を20±1℃の水中に置き、24時間浸した後、試験片を取り出して重量(m2)を測定し、水浸前後の試験片の重量差から算出したもの(水浸前後の試験片の重量差(m2-m1)を水浸前の重量m1で除したものに100を乗じた値)を用いる。
【0045】
上述のように耐水性に優れる接着剤を含む中密度繊維板は、木材繊維が接着剤でコーティングされることにより、木材繊維間に水が浸入し難くなり、吸水率が低くなる。よって、基材11を構成する中密度繊維板の成形に耐水性に優れる接着剤を用い、その配合比率を調整することにより、基材11の吸水率を所望の吸水率、本実施形態では、15%以下(好ましくは13.6%以下、より好ましくは13.2%以下)にすることができる。
【0046】
なお、中密度繊維板の他に耐力面材としてよく用いられる厚さ12mmの構造用合板(スギ)と構造用合板(表層カラマツ、芯層スギ)について、上記吸水厚さ膨張率試験を行い、吸水率を算出したところ、その吸水率は、82%と61%であった。このことから、本実施形態1の基材11の吸水率が、構造用合板と比較して著しく低いことが判る。
【0047】
(透湿性能)
基材11は、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定される透湿抵抗が、1.2m2・s・Pa/μg未満となるように構成されている。具体的には、本実施形態1では、基材11の透湿抵抗が、1.2m2・s・Pa/μg未満となるように、基材11を構成する中密度繊維板のエレメントサイズ(木質繊維の大きさ、径、長さ)を調節している。
【0048】
上述のように耐水性に優れる接着剤を含む中密度繊維板は、吸水率が低くなる。しかしながら、本実施形態1では、基材11を構成する中密度繊維板のエレメントサイズ(木質繊維の大きさ、径、長さ)を調節することにより、吸水率が15%以下でも透湿抵抗が1.2m2・s・Pa/μg未満と低く抑えられた基材11を構成することができる。
【0049】
なお、中密度繊維板の他に耐力面材としてよく用いられる厚さ12mmの構造用合板(スギ)と構造用合板(表層カラマツ、芯層スギ)について、JIS A1324に規定されたカップ法に準拠して測定した透湿抵抗は、11m2・s・Pa/μgと13m2・s・Pa/μgであった。このことから、本実施形態1の基材11の透湿抵抗が、構造用合板と比較して著しく低い、つまり、透湿性能が著しく高いことが判る。
【0050】
[透湿防水シート]
図2及び
図3において拡大して示すように、透湿防水シート12は、シート本体13と、該シート本体13の下面に形成された粘着剤層14とを有している。透湿防水シート12は、粘着剤層14を基材11の片面に押圧して粘着力を発現させることにより、基材11の片面に接着されている。透湿防水シート12は、JIS A6111に準拠して測定した透湿抵抗が0.19m
2・s・Pa/μg以下となるように構成されている。
【0051】
本実施形態1では、シート本体13は、JIS A6111に準拠して測定される透湿抵抗が0.13m2・s・Pa/μg以下となる透湿性を有する透湿防水シートで構成されている。より具体的には、本実施形態1では、シート本体13は、厚みが0.1~0.2mmで多数の微細孔(直径0.5μm程度)が形成された例えば、ポリプロピレン等の樹脂フィルムで構成され、透湿抵抗が0.13m2・s・Pa/μg以下に構成されている。なお、シート本体13として用いる透湿防水シートは、JIS A6111に準拠したものであればいかなるものを用いてもよく、不織布で構成してもよい。また、これらを積層したものとしてもよい。
【0052】
粘着剤層14は、シート本体13の片面に粘着剤を塗布又は転写することにより形成されている。粘着剤層14は、シート本体13を基材11の片面に接着させることができる程度の粘着力を有し、透湿防水シート12の透湿抵抗が0.19m2・s・Pa/μg以下となるものであれば、いかなる粘着剤を用いて形成してもよい。
【0053】
なお、本実施形態1では、粘着剤層14は、JIS A6111に準拠して測定される透湿抵抗が0.06m2・s・Pa/μg以下となる(透湿性を有する)ように構成され、シート本体13の片面全体を覆っている。
【0054】
より具体的には、本実施形態1では、粘着剤層14は、(メタ)アクリル系ポリマー5~60重量%に親水性化合物であるポリプロピレングリコールを添加し、溶媒によって全体が100重量%に調整されたアクリル系粘着剤組成物と架橋剤としてイソシアネート組成物0.5~5.0重量%を混合した溶液をシート本体13の下面に塗布又は転写することによって形成されている。ここで用いる(メタ)アクリル系ポリマーとしては、例えば、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。なお、アクリル系粘着剤組成物中、ポリプロピレングリコールは、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して1~20重量部の割合で添加されている。添加量が1重量部より少ないと粘着剤層14に所望の透湿抵抗(0.06m2・s・Pa/μg以下)を与えることができず、添加量が20重量部より多いと正常な粘着剤層14の形成が困難であるため、添加量は上記の範囲が好ましい。
【0055】
以上のように、本実施形態1では、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対してポリプロピレングリコールが1~20重量部添加されたアクリル系粘着剤組成物とイソシアネート組成物0.5~5.0重量%を混合して塗布することにより、透湿抵抗0.06m2・s・Pa/μg以下の粘着剤層14が形成される。
【0056】
なお、本実施形態1では、通常用いられる方法で発泡させる、又は気泡を発生させることで、透湿抵抗が0.03m2・s・Pa/μg以下の粘着剤層14を形成することができ、好ましい。
【0057】
また、粘着剤層14は、10μm以上150μm以下の厚さを有することが好ましく、30μm以上90μm以下の厚さを有することがより好ましい。10μmより薄い場合、粘着力が低く透湿防水シート12が剥がれ易くなるおそれがあり、150μmより厚い場合、透湿抵抗が増大するため好ましくない。
【0058】
以上のように、外壁下地材10は、耐力面材となる基材11の片面に透湿防水シート12を接着することによって構成されている。そして、外壁下地材10は、基材11の透湿防水シート12の非接着面を構造材2の外面に当接させ、外壁下地材10の屋外側から構造材2に向かって外壁下地材10を貫通するように釘7を打ち込むことにより、構造材2に取り付けられる。
【0059】
〈胴縁〉
胴縁20は、長尺の角材によって構成されている。本実施形態1では、幅の異なる2種類の角材が胴縁20として用いられている。複数の胴縁20,…,20は、外壁下地材10の屋外側に、長さ方向が縦方向となるように左右方向に所定長さ(例えば、455mm)毎に配置され、釘やステープル等で外壁下地材10の屋外側に固定されている(縦張りされている)。
【0060】
幅の広い幅広胴縁20aは、幅の狭い幅狭胴縁20bの略2倍の幅を有している。幅広胴縁20aは、左右に隣り合う外壁下地材10の継ぎ目(後述する上下方向に延びる継ぎ目15a)を屋外側から覆い隠す位置に設けられ、幅狭胴縁20bは、左右に隣り合う2本の幅広胴縁20aの間に設けられている(
図4,5を参照)。また、
図3に示すように、幅広胴縁20aは、柱2aに対応する位置に設けられ、幅狭胴縁20bは、間柱2bに対応する位置に設けられている。
【0061】
〈外装材〉
外装材30は、外壁W1に用いることができる面材であればいかなるものであってもよいが、本実施形態1では、外装材30は、サイディングで構成されている。また、本実施形態1では、複数の外装材30,…,30は、胴縁20の屋外側に長さ方向が横方向となるように配置され、釘等で胴縁20に固定されている(横張りされている)。
【0062】
[通気路]
複数の外壁下地材10,…,10と複数の外装材30,…,30との間には、複数の胴縁20,…,20によって上下方向に延びる複数の通気路40,…,40が区画されている。
図1に示すように、各通気路40は、下端部が流入口となり、上端部が流出口となって、屋外の空気が流入口から流出口へ流れる。各通気路40の上端部(流出口)から流出した空気は、軒裏換気口8又は棟換気口(図示省略)に向かって流れ、軒裏換気口8又は棟換気口から屋外へ排出される。
【0063】
-壁の施工方法-
外壁W1は、以下のようにして施工される。
【0064】
まず、複数の外壁下地材10,…,10を、建物の骨格となる構造材2(柱2a、間柱2b、土台2c、胴差2d、軒桁2e等)に、釘7で打ち付ける。複数の外壁下地材10,…,10は、透湿防水シート12が基材11よりも屋外側に位置するように、基材11の透湿防水シート12の非接着面を構造材2の外面に当接させ、屋外側から構造材2に向かって釘7を打ち込むことにより、構造材2に取り付けられる。
【0065】
図4に示すように、各外壁下地材10は、四周と幅方向(左右方向)の中央に複数の釘7,…,7が打ち込まれて構造材2に取り付けられる。具体的には、建物の1階部分の外壁W1を構成する外壁下地材10は、幅方向の両端部は柱2a,2aに取り付けられ、幅方向の中央は間柱2bに取り付けられ、下端部は土台2cに取り付けられ、上端部は胴差2dに取り付けられる。建物の2階部分の外壁W1を構成する外壁下地材10は、幅方向の両端部は柱2a,2aに取り付けられ、幅方向の中央は間柱2bに取り付けられ、下端部は胴差2dに取り付けられ、上端部は軒桁2eに取り付けられる。そのため、各柱2aの屋外側には、外壁下地材10の上下方向に延びる継ぎ目15aが形成され、胴差2dの屋外側には、外壁下地材10の左右方向に延びる継ぎ目15bが形成される。
【0066】
外壁下地材10は、施工現場に搬入される前に、工場等の屋内において透湿防水シート12が基材11の片面に固定(接着)されている。そのため、外壁下地材10を構造材2に取り付けるだけで、耐力面材となる基材11と透湿防水シート12とを一度に施工することができる。なお、基材11への透湿防水シート12の貼り付け方法は、所謂ラミネーター、ロールプレス、平板プレス等一定の圧力をかけられる工程を有するものであればよく、熱圧である必要もない。
【0067】
次に、複数の胴縁20,…,20を、複数の外壁下地材10,…,10の屋外側に、取り付ける。
図5に示すように、外壁下地材10の屋外側に、左右方向に所定長さ(例えば、455mm)毎に胴縁20を配置し、釘やステープル等で外壁下地材10の屋外側に固定する。
【0068】
具体的には、幅広胴縁20aについては、外壁下地材10の屋外側において柱2aに対応する位置に配置し、釘やステープル等で外壁下地材10に固定する。幅広胴縁20aをこのように配置して固定することにより、複数の外壁下地材10,…,10の上下方向に延びる複数の継ぎ目15a,…,15aと、各外壁下地材10を柱2a,2aに固定するための複数の釘7,…,7及びその釘穴とを屋外側から覆い隠すことができる(
図4,5を参照)。
【0069】
一方、幅狭胴縁20bについては、外壁下地材10の屋外側において間柱2bに対応する位置に配置し、釘やステープル等で外壁下地材10に固定する。幅狭胴縁20bをこのように配置して固定することにより、各外壁下地材10を間柱2bに固定するための複数の釘7,…,7及びその釘穴を屋外側から覆い隠すことができる(
図4,5を参照)。
【0070】
複数の胴縁20,…,20の施工後、複数の外装材30,…,30を複数の胴縁20,…,20に取り付ける。具体的には、胴縁20の屋外側に、長さ方向が横方向となる向きに外装材30を配置し、屋外側から胴縁20に向かって釘を打ち込む等して外装材30を胴縁20に固定する。
【0071】
以上のようにして、外壁構造1が施工される。
【0072】
-外壁構造の特性-
〈通気路の特性〉
上述のように、本実施形態1の外壁構造1では、複数の外壁下地材10,…,10と複数の外装材30,…,30との間には、複数の胴縁20,…,20によって上下方向に延びる複数の通気路40,…,40が区画されている。
【0073】
各通気路40では、下端部(流入口)から流入した屋外の空気が上方へ流れ、上端部(流出口)から流出する。各通気路40の上端部(流出口)から流出した空気は、軒裏換気口8又は棟換気口(図示省略)に向かって流れ、軒裏換気口8又は棟換気口から屋外へ排出される。そのため、室内の湿気が、内壁W2(内装材3及び防湿シート4)及び断熱材5を通過して外壁下地材10に至ったとしても、外壁下地材10を通過して通気路40に至り、通気路40を流れる空気と共に軒裏換気口8又は棟換気口から屋外へ排出される。そのため、外壁W1内において結露が生じ難くなる。また、外壁W1内において結露が生じたとしても、結露水は、通気路40を流れる空気によって気化して水蒸気となり、該空気と共に軒裏換気口8又は棟換気口から屋外へ排出される。そのため、外壁下地材10の腐朽による劣化を防止することができる。
【0074】
〈防水性〉
本実施形態1の外壁構造1では、耐力面材となる基材11として、密度が0.7以上0.85未満で吸水率が15%以下の中密度繊維板を用いている。このように吸水率が低い中密度繊維板からなる基材11を耐力面材として用いることにより、構造用合板を耐力面材として用いる場合に比べて、耐力面材の防水性が高くなる。
【0075】
〈釘穴止水性〉
また、本実施形態1の外壁構造1では、比較的高密度で空隙が少ない中密度繊維板を耐力面材となる基材11として用いることにより、構造用合板を耐力面材として用いる場合に比べて耐力面材の釘穴止水性が飛躍的に高くなる。耐力面材(本実施形態1では外壁下地材10)を施工するために打ち込まれた釘7に、耐水性を有する接着剤や撥水剤でコーティングされた木材繊維が密着するため、耐力面材の釘穴止水性が飛躍的に高くなると考えられる。
【0076】
また、本実施形態1では、基材11の片面(屋外側の面)に、粘着剤層14を有する透湿防水シート12で覆っている。このように基材11の片面を、粘着剤層14を有する透湿防水シート12で覆うこととすると、耐力面材(本実施形態1では外壁下地材10)を施工する際に釘7を打ち込んでも、釘7に粘着剤層14の粘着剤が密着することにより、透湿防水シート12の釘穴止水性が飛躍的に高くなる。
【0077】
以上のように、本実施形態1の外壁構造1では、工場等で予め基材11の片面(屋外側の面)に粘着剤層14を有する透湿防水シート12を接着した外壁下地材10を用いることとしている。そのため、従来の外壁構造のように粘着剤層のない透湿防水シートを耐力面材にタッカー等でステープルを打ち付ける場合に比べて、耐力面材及び透湿防水シートの釘穴止水性が飛躍的に高くなる。
【0078】
また、本実施形態1の外壁構造1では、各外壁下地材10を柱2a,2aに固定するための複数の釘7,…,7及びその釘穴を屋外側から覆い隠す位置に、幅広胴縁20a,…,20aを設け、各外壁下地材10を間柱2bに固定するための複数の釘7,…,7及びその釘穴を屋外側から覆い隠す位置に幅狭胴縁20b,…,20bを設けることとしている。そのため、少なくとも外壁下地材10の屋外側から柱2a及び間柱2bに向かって打ち込まれた釘7の釘穴からは、外壁下地材10の内部に雨水が浸入しなくなる。
【0079】
〈継ぎ目における止水性〉
ところで、施工現場において耐力面材に透湿防水シートを施工する従来の施工方法では、耐力面材を柱等の躯体の屋外側に貼り終えた後、外壁の構造体(躯体及び耐力面材)を包み込むように透湿防水シートを横張りするのが一般的であり、外壁の下部から貼り始め、上下の透湿防水シートが一部重なるように、透湿防水シートの端部を上方へずらしながら貼り付けることとしていた。また、透湿防水シートは、タッカー等を用いてステープルを打ち込むことにより固定していた。このように従来の施工方法では、透湿防水シートで外壁の構造体を隙間無く覆うことにより、耐力面材の継ぎ目からの雨水の浸入を抑制していた。
【0080】
これに対し、本実施形態1の外壁構造1では、上述のように、予め基材11の片面に透湿防水シート12が接着された外壁下地材10を用いることとしている。そのため、外壁W1の施工は容易になる一方、透湿防水シート12で基材11(耐力面材)の継ぎ目を覆うことができないため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入する虞がある。
【0081】
そこで、本実施形態1の外壁構造1では、外壁下地材10の基材11を、吸水性が低い中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成することとしている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、吸水率が低い。そのため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入して基材11に至ったとしても、基材11が吸水して変形(厚さ膨張、反り、捻れ)したり、カビが発生したりすることがない。
【0082】
また、本実施形態1の外壁構造1では、外壁下地材10の基材11を構成する中密度繊維板を、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなる(撥水性を有する)ように構成している。そのため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入したとしても、雨水は基材11の表面(木口面を含む)において接触角が90度より大きい水滴となり、水滴が栓の役割を果たし、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bにはそれ以上雨水が浸入し難くなる。
【0083】
また、上述したように、本実施形態1の外壁構造1では、複数の外壁下地材10,…,10の上下方向に延びる継ぎ目15a、即ち、横方向に隣り合う2つの外壁下地材10,10間の継ぎ目15aの位置に、上下方向に延びる幅広胴縁20aを設けることにより、幅広胴縁20aで継ぎ目15aを屋外側から覆い隠すようにしている。そのため、雨水が外壁下地材10の継ぎ目15aから浸入することがなくなる。
【0084】
-実施形態1の効果-
本実施形態1では、耐力面材となる矩形板状の基材11の片面に、透湿防水シート12を、粘着剤層14を含む透湿防水シート12全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材10を形成することとしている。このような外壁下地材10を用いることにより、外壁下地材10を建物の骨格となる構造材2に固定するだけで、施工し難い透湿防水シート12も容易に施工できる。また、上記外壁下地材10は、工場等の屋内において透湿防水シート12を基材11に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シート12が捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になる。従って、本実施形態1によれば、上記外壁下地材10を用いることにより、容易に仕上がり良く施工可能な外壁構造1を提供することができる。
【0085】
また、本実施形態1では、シート本体13の片面全体を覆う透湿性を有する粘着剤層14により、透湿防水シート12が基材11の片面全体に接着されている。このように、透湿防水シート12を基材11の片面全体に接着させることにより、透湿防水シート12が剥がれ難くなり、施工時に風等によって透湿防水シート12がばたつくことがなくなる。よって、本実施形態1によれば、外壁構造1の施工をより容易にすることができる。
【0086】
ところで、施工現場において耐力面材に透湿防水シートを施工する従来の施工方法では、耐力面材を柱等の躯体の屋外側に貼り終えた後、外壁の構造体(躯体及び耐力面材)を包み込むように透湿防水シートを横張りするのが一般的であり、外壁の下部から貼り始め、上下の透湿防水シートが一部重なるように、透湿防水シートの端部を上方へずらしながら貼り付けることとしていた。また、透湿防水シートは、タッカー等を用いてステープルを打ち込むことにより固定していた。このように従来の施工方法では、透湿防水シートで外壁の構造体を隙間無く覆うことにより、耐力面材の継ぎ目からの雨水の浸入を抑制していた。
【0087】
これに対し、予め基材11の片面に透湿防水シート12が接着された外壁下地材10を用いると、外壁W1の施工は容易になる一方、透湿防水シート12で基材11(耐力面材)の継ぎ目を覆うことができないため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入する虞がある。
【0088】
そこで本実施形態1では、外壁下地材10の基材11を、吸水性が低い中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)で構成することとしている。中密度繊維板は、木材繊維を接着剤と共に熱圧して成板することによって形成された木質ボードであり、吸水率が低い。そのため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入して基材11に至ったとしても、基材11が吸水して変形(厚さ膨張、反り、捻れ)することがなく、またカビの発生も抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態1では、外壁下地材10の基材11を構成する中密度繊維板を、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなる(撥水性を有する)ように構成している。そのため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入したとしても、雨水は基材11の表面(木口面を含む)において接触角が90度より大きい水滴となるので、水滴が栓の役割を果たして外壁下地材10の継ぎ目15a,15bにはそれ以上雨水が浸入し難くなる。つまり、本実施形態1によれば、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入したとしても、基材11の表面で止まり、それ以上雨水が室内側へ浸入するのを抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態1では、内部に上下方向に延びる通気路40が形成された通気構法による外壁構造1に、耐力面材となる矩形板状の基材11の片面に、透湿防水シート12を、粘着剤層14を含む透湿防水シート12全体の透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように接着させた外壁下地材10を用いることとしている。このような外壁下地材10を用いることにより、外壁下地材10を建物の骨格となる構造材2に固定するだけで、施工し難い透湿防水シート12も施工でき、通気構法による外壁W1の施工が容易になる。また、上記外壁下地材10は、工場等の屋内において透湿防水シート12を基材11に固定(接着)するため、固定工程中に透湿防水シート12が捲れたり、皺が入ったりする虞が低く、仕上がりが均一になる。よって、このような外壁下地材10を用いることにより、施工者の技量によらず、誰が施工しても、容易に仕上がり良く施工可能な通気構法による外壁構造1を提供することができる。
【0091】
また、本実施形態1では、透湿防水シート12を基材11の片面に接着するものの、透湿抵抗値が低く抑えられるように(0.19m2・s・Pa/μg以下になるように)構成している。そのため、室内で発生した湿気を、外壁下地材10を通過させて通気路40へ導き、空気と共に屋外へ排出することができる。
【0092】
ところで、上述のように、予め基材11の片面に透湿防水シート12が接着された外壁下地材10を用いると、外壁W1の施工は容易になる一方、透湿防水シート12で基材11(耐力面材)の継ぎ目を覆うことができないため、外壁下地材10の継ぎ目15a,15bから雨水が浸入する虞がある。外壁下地材10に付着した雨水は下方へ流れるため、左右方向に延びる継ぎ目15bよりも上下方向に流れる継ぎ目15aでは、雨水が浸入する虞が高くなる。
【0093】
そこで、本実施形態1では、複数の外壁下地材10,…,10の上下方向に延びる継ぎ目15a、即ち、横方向に隣り合う2つの外壁下地材10,10間の継ぎ目15aの位置に、上下方向に延びる幅広胴縁20aを設けることにより、幅広胴縁20aで継ぎ目15aを屋外側から覆い隠すようにしている。このような構造とすることにより、外壁下地材10の継ぎ目15aからの雨水の浸入を抑制することができる。
【0094】
ところで、外壁下地材10を釘7で柱(柱2a及び間柱2b)に固定することとすると、外壁下地材10には釘穴が空き、釘穴から雨水が浸入する虞がある。
【0095】
そこで、本実施形態1では、複数の外壁下地材10,…,10を複数の柱(柱2a,…,2a及び間柱2b,…,2b)に固定するための複数の釘7,…,7とその釘穴を屋外側から覆い隠す位置に、上下方向に延びる胴縁(幅広胴縁20a,…,20a及び幅狭胴縁20b,…,20b)を設けることとしている。このような構造とすることにより、釘穴から外壁下地材10の内部に雨水が浸入するのを抑制することができる。
【0096】
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、透湿防水シート12の粘着剤層14は、シート本体13の片面全体を覆うものであったが、透湿防水シート12が捲れ上がったり、皺になったりしない程度に基材11に貼り付けることができるのであれば、シート本体13の片面に部分的に又は断片的に形成されていてもよい。例えば、シート本体13の片面に、上下方向(シート本体13の長さ方向)に延びる細長い粘着剤層14を複数一定間隔で形成することとしてもよい。
【0097】
また、施工現場にて、外壁W1の地面からの高さが1mまでの部分に防腐・防蟻処理を施す場合には、必要に応じて、一部分(地面からの高さが1mまでの部分)のみ透湿防水シート12を接着せずに基材11が露出した外壁下地材10を用意し、防腐・防蟻処理を行った後、基材11を十分に乾燥させた上で、基材11の露出部分に透湿防水シート12を貼り付けることとしてもよい。
【0098】
また、上記実施形態1では、(メタ)アクリル系ポリマー5~60重量%にポリプロピレングリコールを添加したアクリル系粘着剤組成物に架橋剤を添加した粘着剤層14を形成していた。しかしながら、本発明に係る粘着剤層は、上記のものに限られない。粘着剤層を形成する粘着剤は、通常用いられる親水性を有する(メタ)アクリルモノマーを含有する(メタ)アクリル系ポリマー、さらには通常粘着剤に用いられている親水性添加剤、粘着付与剤等の成分を含有していてもよく、また、架橋剤としてはアクリル系粘着剤に通常用いられるイソシアネート樹脂、エポキシ樹脂、金属キレート等を用い、さらには発泡剤等を添加したり、アクリルエマルジョン等のように機械発泡させる等、所望の透湿抵抗を有する粘着剤層を形成することができるものであればいかなる組成や塗工方法のものであってもよい。
【0099】
また、上記実施形態1の外壁構造1は、外壁下地材10の屋外側に複数の胴縁20,…,20を長さ方向が縦方向(上下方向)となるように取り付け(縦張りし)、胴縁20の屋外側に複数の外装材30,…,30を長さ方向が横方向(左右方向)となるように取り付けた(横張りした)ものであった。しかしながら、本発明に係る外壁構造は、外壁下地材10の屋外側に複数の胴縁20,…,20を長さ方向が横方向(左右方向)となるように取り付け(横張りし)、胴縁20の屋外側に複数の外装材30,…,30を長さ方向が縦方向(上下方向)となるように取り付けた(縦張りした)ものであってもよい。
【0100】
なお、上述のように胴縁20を横張りし、外装材30を縦張りする場合には、複数の胴縁20,…,20に各胴縁20の上下の空間を連通する連通路を複数形成し、通気胴縁とする。連通路は、各胴縁20に上端から下端まで上下方向に延びる穴や溝を形成する、又は短い胴縁20を横方向に連続して設けずに間隔を空けて設けることによって形成することができる。このように複数の胴縁20,…,20に複数の連通路を形成して(穴や溝を形成して又は間隔を開けて)通気胴縁とすることにより、実施形態1の外壁構造1と同様に、複数の外壁下地材10,…,10と複数の外装材30,…,30との間に、上下方向に延びる複数の通気路40,…,40を形成することができる。そのため、胴縁20を横張りし、外装材30を縦張りした外壁構造1であっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、外壁下地材及び外壁構造に有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 外壁構造
2a 柱
4 防湿シート
7 釘
10 外壁下地材
11 基材
12 透湿防水シート
13 シート本体
14 粘着剤層
15a 継ぎ目
15b 継ぎ目
20 胴縁
20a 幅広胴縁
20b 幅狭胴縁
40 通気路
W1 外壁
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に用いられる外壁下地材であって、
耐力面材となる矩形板状の基材と、
上記基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え、
上記透湿防水シートは、
シート本体と、
上記シート本体の片面全体を覆い、該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有し、
透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成されている
ことを特徴とする外壁下地材。
【請求項2】
建物の外壁に用いられる外壁下地材であって、
耐力面材となる矩形板状の基材と、
上記基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え、
上記透湿防水シートは、
透湿性を有するシート本体と、
上記シート本体の片面に部分的に又は断片的に設けられて該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有している
ことを特徴とする外壁下地材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の外壁下地材であって、
上記基材は、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成された中密度繊維板で構成されている
ことを特徴とする外壁下地材。
【請求項4】
建物の外壁構造であって、
上記建物の躯体の屋外側に、請求項1又は2に記載の外壁下地材が複数取り付けられ、
上記複数の外壁下地材の屋外側に、上下に延びる複数の胴縁が取り付けられ、
上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、
上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間であって、上記複数の胴縁の隣り合う各2本の胴縁間には、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されている
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項5】
請求項4に記載の外壁構造において、
上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材の上下方向に延びる継ぎ目を屋外側から覆い隠す位置に設けられている
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項6】
請求項5に記載の外壁構造において、
上記複数の外壁下地材は、上記建物の躯体である複数の柱に複数の釘で固定され、
上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材を上記複数の柱に固定するための上記複数の釘及び釘穴を屋外側から覆い隠す位置に設けられている
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項7】
建物の外壁構造であって、
上記建物の躯体の屋外側に、請求項1又は2に記載の外壁下地材が複数取り付けられ、
上記複数の外壁下地材の屋外側に、左右に延びる複数の胴縁が取り付けられ、
上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、
上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間に、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されるように、上記各胴縁の上下の空間を連通する連通路が形成された通気胴縁である
ことを特徴とする外壁構造。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に用いられる外壁下地材であって、
耐力面材となる矩形板状の基材と、
上記基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え、
上記透湿防水シートは、
シート本体と、
上記シート本体の片面全体を覆い、該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有し、
透湿抵抗値が0.19m2・s・Pa/μg以下になるように構成されている
ことを特徴とする外壁下地材。
【請求項2】
建物の躯体の屋外側に複数取り付けられて外壁を構成する外壁下地材であって、
耐力面材となる矩形状の1枚の板状部材で構成された基材と、
上記基材の片面全体を覆う透湿防水シートとを備え、
上記透湿防水シートは、
透湿性を有するシート本体と、
上記シート本体の片面に部分的に又は断片的に設けられて該シート本体と上記基材とを接着する透湿性を有する粘着剤層とを有している
ことを特徴とする外壁下地材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の外壁下地材であって、
上記基材は、撥水剤を含むことにより、表面に対する水の接触角が90度より大きくなるように構成された中密度繊維板で構成されている
ことを特徴とする外壁下地材。
【請求項4】
建物の外壁構造であって、
上記建物の躯体の屋外側に、請求項1又は2に記載の外壁下地材が複数取り付けられ、
上記複数の外壁下地材の屋外側に、上下に延びる複数の胴縁が取り付けられ、
上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、
上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間であって、上記複数の胴縁の隣り合う各2本の胴縁間には、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されている
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項5】
請求項4に記載の外壁構造において、
上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材の上下方向に延びる継ぎ目を屋外側から覆い隠す位置に設けられている
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項6】
請求項5に記載の外壁構造において、
上記複数の外壁下地材は、上記建物の躯体である複数の柱に複数の釘で固定され、
上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材を上記複数の柱に固定するための上記複数の釘及び釘穴を屋外側から覆い隠す位置に設けられている
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項7】
建物の外壁構造であって、
上記建物の躯体の屋外側に、請求項1又は2に記載の外壁下地材が複数取り付けられ、
上記複数の外壁下地材の屋外側に、左右に延びる複数の胴縁が取り付けられ、
上記複数の胴縁の屋外側に、複数の外装材が取り付けられ、
上記複数の胴縁は、上記複数の外壁下地材と上記複数の外装材との間に、両端が屋外空間に開口する上下方向に延びる通気路が形成されるように、上記各胴縁の上下の空間を連通する連通路が形成された通気胴縁である
ことを特徴とする外壁構造。