IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ BASF INOACポリウレタン株式会社の特許一覧

特開2024-104479ポリオール組成物及びポリウレタンフォーム
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104479
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ポリオール組成物及びポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240729BHJP
   C08G 18/68 20060101ALI20240729BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240729BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G18/68
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008705
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】石塚 俊行
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF29
4J034GA55
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB03
4J034KC02
4J034KD02
4J034KD12
4J034MA16
4J034NA08
4J034QB14
4J034QB17
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA03
4J034RA07
4J034RA08
4J034RA10
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】難燃性に優れたポリウレタンフォームを製造することが可能なポリオール組成物及びこれを用いて製造されたポリウレタンフォームを提供すること。
【解決手段】ポリオール組成物は、ポリオール成分と、ウレタン触媒と、ヌレート触媒と、化学発泡剤及び/又は物理発泡剤と、シリコーン整泡剤と、難燃剤とを含み、前記ポリオール成分は、不飽和脂肪族ポリエステルポリオールを含む。前記不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの含有量は50.0mass%以上であり、前記シリコーン整泡剤の含有量は10.0質量部超であり、前記難燃剤の含有量は10.0質量部超である。ポリウレタンフォームは、このようなポリオール組成物と、ポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分と、
ウレタン触媒と、
ヌレート触媒と、
化学発泡剤及び/又は物理発泡剤と、
シリコーン整泡剤と、
難燃剤と
を含み、
前記ポリオール成分は、不飽和脂肪族ポリエステルポリオールを含み、
前記不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの含有量が50.0mass%以上であり、
前記シリコーン整泡剤の含有量が10.0質量部超であり、
前記難燃剤の含有量が10.0質量部超である
ポリオール組成物。
但し、
前記「不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの含有量(mass%)」とは、前記ポリオール成分の総質量に対する、前記不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの質量の割合をいい、
前記「シリコーン系整泡剤の含有量(質量部)」とは、前記ポリオール成分の総質量を100としたときの、前記シリコーン系整泡剤の質量をいい、
前記「難燃剤の含有量(質量部)」とは、前記ポリオール成分の質量を100としたときの、前記難燃剤の質量をいう。
【請求項2】
請求項1に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られるポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物及びポリウレタンフォームに関し、さらに詳しくは、難燃性に優れたポリウレタンフォームの原料として好適なポリオール組成物、及び、これを用いて製造されたポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンとは、ウレタン結合(-NH-C(O)O-)を有する高分子化合物をいう。ポリウレタンは、一般に、ポリオールの水酸基(-OH)と、ポリイソシアネートのイソシアネート基(-NCO)とを反応させることにより得られる。ポリウレタンは、ポリオール及び/又はポリイソシアネートの種類を最適化することにより、多様な性質を示すことが知られている。そのため、ポリウレタンは、各種自動車部品、合成皮革、塗料、接着剤などに応用されている。また、ポリウレタンを発泡させたポリウレタンフォームは、断熱材、クッション材などに応用されている。
【0003】
建築構造物の断熱材としてポリウレタンフォームを用いる場合、ポリオール組成物及びポリイソシアネートを二液塗装機に供給し、ポリオール組成物とポリイソシアネートとの混合物を基材表面に吹き付け、基材表面においてポリウレタンフォームを形成することが行われている。そのため、このようなポリウレタンフォームには、施工現場における溶接火花などの火気で着火しない程度の難燃性が求められる。さらに、火災発生時に建築構造物の延焼を抑制するためには、建築構造物に用いられるポリウレタンフォームは、建築基準法に定める「不燃材料」の条件を満たしているのが好ましい。
【0004】
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(a)ノニルフェノール、ジエタノールアミン、及び、ホルムアルデヒドを反応させることにより、マンニッヒ縮合物を合成し、
(b)マンニッヒ縮合物を開始剤に用いて、無触媒下でプロピレンオキシド(PO)を開環付加することにより、マンニッヒポリオールを合成し、
(c)触媒存在下において、マンニッヒポリオールにさらにエチレンオキシド(EO)を開環付加する
ポリエーテルポリオールの製造方法が開示されている。
【0005】
同文献には、
(A)マンニッヒ縮合物のキャッピングにPOを用いると、マンニッヒポリオールの臭気を改善できる点、
(B)POでキャッピングされたマンニッヒポリオールにさらにEOを開環付加すると、マンニッヒポリオールを低粘度化できる点、及び、
(C)このようなマンニッヒポリオールを用いて硬質ポリウレタンフォームを作製すると、硬質フォームのセルが微細化され、輻射による伝熱が抑制されるために、硬質フォームの熱伝導率が低下し、良好な難燃性が得られる点、
が記載されている。
【0006】
特許文献2には、ビニル重合性官能基を有する化合物と、芳香環及び活性水素含有基を有し、ビニル重合性官能基を有しないポリオールとを含有するポリウレタン樹脂製造用ポリオール組成物が開示されている。
同文献には、
(A)このようなポリウレタン樹脂製造用ポリオール組成物を用いて得られたポリウレタン樹脂は、従来のポリウレタン樹脂と比較して寸法安定性及び耐燃焼性(難燃性)に優れている点、及び
(B)ポリウレタン樹脂の耐燃焼性(難燃性)を向上させるためには、ビニル重合性官能基を有する化合物は、活性水素含有基を持たない化合物が好ましい点、
が記載されている。
【0007】
特許文献3には、
ウレタンフォームと、
ウレタンフォームの上に積層された着色塗膜とを備え、
着色塗膜が結合材及び着色剤を含み、
結合材がガラス転移温度0℃以下の合成樹脂エマルジョンを含む
積層体が開示されている。
同文献には、このような積層体は、長期に亘って美観性を保持でき、断熱性、耐熱性に優れる点が記載されている。
【0008】
さらに、特許文献4には、ポリオール、三量化触媒、発泡剤、有機ホスフィン酸金属塩及び赤リンを含む組成物Aと、ポリイソシアネートを含む組成物Bとを反応させることにより得られる不燃性ポリウレタンフォームが開示されている。
同文献には、三量化触媒により得られるイソシアヌレート構造、有機ホスフィン酸金属塩、及び、赤リンを含むポリウレタンフォームは、これらの難燃化作用が相乗的に発現するために、高い難燃性を示す点が記載されている。
【0009】
イソシアヌレート環は、ウレタン結合に比べて熱安定性が高い。そのため、ポリウレタン中にイソシアヌレート環を導入すると、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。一般に、イソシアヌレート環の含有量が多くなるほど、難燃性が向上する。しかしながら、イソシアヌレート環の含有量が過剰になると、ポリウレタンフォームの柔軟性が低下する。そのため、二液塗装機を用いてポリウレタンフォームをスプレー施工した場合、ポリウレタンフォームに亀裂が入りやすくなる。亀裂が発生すると、そこから可燃性ガスが揮発しやすくなるため、亀裂の発生は難燃性を低下させる原因となる。
【0010】
さらに、二液塗工機を用いてポリウレタンフォームをスプレー施工する場合、各種添加剤を含むポリオール組成物(A液)とポリイソシアネート(B液)との体積比が約1:1となるように、A液及びB液を二液塗工機に供給するのが好ましい。これは、A液とB液の体積が著しく異なると、一定の体積比を維持した状態でA液及びB液をスプレー施工するのが困難となるためである。
【0011】
一方、イソシアヌレート環を形成するには、イソシアネートインデックス(=イソシアネート基のモル数×100/活性水素基のモル数)を高くする必要がある。そのため、A液に含まれる単位体積当たりの活性水素基の量と、B液に含まれる単位体積当たりのイソシアネート基の量とがほぼ等しい場合において、イソシアネートインデックスを高くするためには、B液の体積をA液の体積よりも大きくする必要がある。その結果、一定の体積比を維持した状態でA液及びB液をスプレー施工するのが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2012/077688号
【特許文献2】特開2013-122007号公報
【特許文献3】特開2020-037260号公報
【特許文献4】特開2021-054942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、難燃性に優れたポリウレタンフォームを製造することが可能なポリオール組成物を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、難燃性に優れたポリウレタンフォームを二液塗工機を用いて安定してスプレー施工することが可能なポリオール組成物を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このようなポリオール組成物を用いて製造されたポリウレタンフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明に係るポリオール組成物は、
ポリオール成分と、
ウレタン触媒と、
ヌレート触媒と、
化学発泡剤及び/又は物理発泡剤と、
シリコーン整泡剤と、
難燃剤と
を含み、
前記ポリオール成分は、不飽和脂肪族ポリエステルポリオールを含み、
前記不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの含有量が50.0mass%以上であり、
前記シリコーン整泡剤の含有量が10.0質量部超であり、
前記難燃剤の含有量が10.0質量部超である。
【0015】
但し、
前記「不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの含有量(mass%)」とは、前記ポリオール成分の総質量に対する、前記不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの質量の割合をいい、
前記「シリコーン系整泡剤の含有量(質量部)」とは、前記ポリオール成分の総質量を100としたときの、前記シリコーン系整泡剤の質量をいい、
前記「難燃剤の含有量(質量部)」とは、前記ポリオール成分の質量を100としたときの、前記難燃剤の質量をいう。
【0016】
本発明に係るポリウレタンフォームは、本発明に係るポリオール組成物と、ポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られたものからなる。
【発明の効果】
【0017】
相対的に多量のシリコーン整泡剤及び難燃剤を含むポリオール組成物を用い、高イソシアネートインデックス下においてポリウレタンフォームを製造すると、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。これは、
(A)ポリウレタン中に難燃性の高いイソシアヌレート環が導入されるため、
(B)難燃剤がポリウレタンフォームの燃焼の拡大を抑制するため、
(C)相対的に多量のシリコーン整泡剤を含むポリオール組成物を用いてポリウレタンフォームを製造すると、ポリウレタンフォーム中に微細な気泡が多量に形成され、ポリウレタンフォームの熱伝導率が低下するため、及び、
(D)樹脂表面に配向したシリコーン整泡剤が燃焼時に珪素を含んだ炭化層の生成を促進し、可燃性ガスの揮発が抑制されるため
と考えられる。
【0018】
また、相対的に多量のシリコーン整泡剤及び難燃剤を含むポリオール組成物を用い、高イソシアネートインデックス下においてポリウレタンフォームを製造する場合において、ポリオール成分として不飽和脂肪族ポリエステルポリオールを用いると、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。これは、燃焼熱により二次重合が起こり、炭化層の形成を促進するためと考えられる。
【0019】
さらに、難燃剤及び/又はシリコーン整泡剤の活性水素基の数が少ない場合、これらを相対的に多量に含むポリオール組成物は、単位体積当たりの活性水素基の量が相対的に少なくなる。そのため、このようなポリオール組成物を用いると、イソシアネートインデックスを最適な範囲に維持しながら、ポリオール組成物の体積とポリイソシアネート成分の体積がほぼ等しい条件下において、これらを二液塗工機に供給することができる。その結果、高い難燃性と、適度な柔軟性を持つポリウレタンフォームのスプレー施工が容易化する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. ポリオール組成物]
本発明に係るポリオール組成物は、
ポリオール成分と、
ウレタン触媒と、
ヌレート触媒と、
化学発泡剤及び/又は物理発砲剤と、
シリコーン整泡剤と、
難燃剤と
を含む。
【0021】
[1.1. 成分]
[1.1.1. ポリオール成分]
本発明に係るポリオール組成物は、ポリオール成分を含む。ポリオールは、ポリウレタンを合成するための主原料の1つである。
【0022】
本発明において、ポリオール成分は、少なくとも不飽和脂肪族ポリエステルポリオールを含む。ポリオール成分は、不飽和脂肪族ポリエステルポリオールのみからなるものでも良く、あるいは、不飽和脂肪族ポリエステルポリオール以外のポリオール(以下、「第2ポリオール」ともいう)を含むものでも良い。第2ポリオールとしては、例えば、芳香族ポリエステルポリオール、エーテル系ポリオールなどがある。
【0023】
ポリオール組成物は、いずれか1種の不飽和脂肪族ポリエステルポリオールを含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
また、ポリオール組成物が1種又は2種以上の不飽和脂肪族ポリエステルポリオールに加えて第2ポリオールをさらに含む場合、ポリオール組成物は、いずれか1種の第2ポリオールを含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0024】
「不飽和脂肪族ポリエステルポリオール」とは、マレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪族多塩基酸と、多価アルコールとを反応させることにより得られるポリエステルポリオールをいう。
「芳香族ポリエステルポリオール」とは、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸等の芳香族多塩基酸と、多価アルコールとを反応させることにより得られるポリエステルポリオールをいう。
【0025】
エーテル系ポリオールとしては、例えば、
(a)エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース等の多価アルコール、
(b)多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール
などがある。
【0026】
不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの官能基数、分子量、及び、水酸基価は、特に限定されるものではなく、適正なイソシアネートとの比率において、目的に応じて最適なものを選択することができる。
また、ポリオール成分に第2ポリオールが含まれる場合、第2ポリオールの官能基数、分子量、及び、水酸基価は、特に限定されるものではなく、適正なイソシアネートとの比率において、目的に応じて最適なものを選択することができる。
【0027】
[1.1.2. ウレタン触媒]
「ウレタン触媒」とは、ポリオールとポリイソシアネートとの反応(樹脂化反応)を促進する作用がある触媒をいう。ウレタン触媒は、通常、樹脂化反応を促進する作用に加えて、水とポリイソシアネートとの反応(泡化反応)を促進する作用がある。
【0028】
本発明において、ウレタン触媒の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な触媒を選択することができる。ウレタン触媒としては、例えば、アミン触媒、金属触媒などがある。ポリウレタン組成物は、いずれか1種のウレンタン触媒を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0029】
アミン触媒としては、例えば、
1,2-ジメチルイミダゾール、
1-メチルイミダゾール、
N・(N',N'-ジメチルアミノエチル)-モルホリン、テトラメチルグアニジン、
ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、
N-メチル-N'-(2ヒドロキシエチル)-ピペラジン、
N,N,N',N'-テトラメチルプロパン1,3-ジアミン、
N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、
N,N,N',N",N"-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、
N,N'-ジメチルピペラジン、
N,N,N',N'-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン、
N,N,N',N",N"-ペンタメチルジプロピレン-トリアミン、
N-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、
エチレングリコールビス(3-ジメチル)-アミノプロピルエーテル、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、
N-メチル-N'-(2ジメチルアミノ)エチルピペラジン
などがある。
【0030】
金属触媒としては、例えば、
(a)スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒、
(b)フェニル水銀プロピオン酸塩、
(c)オクテン酸鉛、
(d)ビスマスカルボキシレートなどのビスマス触媒、
(e)亜鉛(II)カルボキシレートなどの亜鉛触媒、
などがある。
【0031】
[1.1.3. ヌレート触媒]
「ヌレート触媒」とは、ポリイソシアネートの三量化反応を促進し、イソシアヌレート環を生成する作用がある触媒をいう。
ヌレート触媒を含むポリオール組成物とポリイソシアネートとを反応させると、イソシアヌレート環を含むポリウレタンフォームが得られる。イソシアヌレート環は、ウレタン結合に比べて熱安定性が高いため、イソシアヌレート環を含むポリウレタンフォームは高い難燃性を示す。
【0032】
本発明において、ヌレート触媒の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。ポリウレタン組成物は、いずれか1種のヌレート触媒を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0033】
ヌレート触媒としては、例えば、
(a)第四級アンモニウム塩、
(b)オクチル酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、酢酸ナトリウムなどのカルボン酸アルカリ金属塩、
(c)トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジンなどの含窒素芳香族化合物、
(d)トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩などの第三級アンモニウム塩
などがある。
【0034】
[1.1.4. 発泡剤]
「発泡剤」とは、液状の原料混合物が樹脂化していく過程で原料混合物中に気泡を生成させる作用がある添加剤をいう。
本発明において、発泡剤は、
(a)圧力低下又は加熱によりガスを発生させる物理発泡剤、又は、
(b)熱分解又は化学反応によりガスを発生させる化学発泡剤
のいずれであっても良い。
【0035】
ポリオール組成物は、物理発泡剤又は化学発泡剤のいずれか一方を含むものでも良く、あるいは、双方を含むものでも良い。ポリオール組成物は、1種類の物理発泡剤を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。さらに、ポリオール組成物は、1種類の化学発泡剤を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0036】
物理発泡剤としては、例えば、
(a-1)シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタンなどの炭化水素、
(a-2)塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ペンタフルオロイソプロピルメチルエーテルなどのハロゲン系化合物、
などがある。
【0037】
化学発泡剤としては、例えば、
(b-1)イソシアネート基と反応してCO2を発生させる水、
(b-2)熱分解によって、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、又は、アンモニアガスを発生させるアゾジカルボンアミド
などがある。
【0038】
[1.1.5. シリコーン整泡剤]
「整泡剤」とは、気泡の大きさや分布を均一化する作用がある添加剤をいう。
整泡剤を含むポリオール組成物とポリイソシアネートとを反応させると、気泡の大きさや分布が均一なポリウレタンフォームが得られる。
【0039】
本発明において、整泡剤には、シリコーン整泡剤を用いる。シリコーン整泡剤を含むポリオール組成物とポリイソシアネートとを反応させると、難燃性の高いポリウレタンフォームが得られる。これは、
(a)ポリウレタンフォーム中に微細な気泡が多量に形成され、ポリウレタンフォームの熱伝導率が低下するため、及び、
(b)樹脂表面に配向したシリコーン整泡剤が燃焼時に珪素を含んだ炭化層の生成を促進し、可燃性ガスの揮発が抑制されるため
考えられる。
【0040】
さらに、整泡剤に含まれる活性水素基の数が少ない場合、整泡剤は、ポリオール組成物の水酸基価を低下させるための添加剤としても機能する。そのため、活性水素基の数が少ない、又は、活性水素基を持たない整泡剤を用いると、ポリウレタンフォームを製造する際に、ポリオール組成物とポリイソシアネートとの体積比を1:1に近い状態に維持したまま、イソシアネートインデックスを大きくすることが容易化する。
【0041】
[1.1.6. 難燃剤]
「難燃剤」とは、ポリウレタンフォームを難燃化させる作用がある添加剤をいう。
難燃剤を含むポリオール組成物とポリイソシアネートとを反応させると、高い難燃性を示すポリウレタンフォームが得られる。
【0042】
難燃剤としては、例えば、
(a)リン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウムなどの粉体難燃剤、
(b)リン酸エステル系難燃剤などの液体難燃剤
などがある。
ポリオール組成物は、これらのいずれか1種の難燃剤を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0043】
さらに、難燃剤に含まれる活性水素基の数が少ない場合、難燃剤は、ポリオール組成物の水酸基価を低下させるための添加剤としても機能する。そのため、活性水素基の数が少ない、又は、活性水素基を持たない難燃剤を用いると、ポリウレタンフォームを製造する際に、ポリオール組成物とポリイソシアネートとの体積比を1:1に近い状態に維持したまま、イソシアネートインデックスを大きくすることが容易化する。
【0044】
[1.2. 含有量]
[1.2.1. 不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの含有量]
「不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの含有量(mass%)」とは、ポリオール成分の総質量に対する、不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの質量の割合をいう。
【0045】
不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの含有量が少なくなりすぎると、難燃性が低下する場合がある。従って、不飽和脂肪族ポリエステルポリオールの含有量は、50mass%以上である必要がある。含有量は、好ましくは、60mass%以上、70mass%以上、あるいは、80mass%以上である。
【0046】
[1.2.2. ウレタン触媒の含有量]
「ウレタン触媒の含有量(質量部)」とは、ポリオール成分の総質量を100としたときの、ウレンタン触媒の質量をいう。
【0047】
ウレタン触媒の含有量が少なくなりすぎると、樹脂化反応が進行しにくくなる。従って、ウレタン触媒の含有量は、3.0質量部以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、4.0質量部以上、あるいは、5.0質量部以上である。
一方、ウレタン触媒の含有量が過剰になると、急速に硬化が進行し、施工性が低下する場合がある。従って、ウレタン触媒の含有量は、15.0質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、14.0質量部以下、あるいは、13.0質量部以下である。
【0048】
[1.2.3. ヌレート触媒の含有量]
「ヌレート触媒の含有量(質量部)」とは、ポリオール成分の総質量を100としたときの、ヌレート触媒の質量をいう。
【0049】
ヌレート触媒の含有量が少なくなりすぎると、三量化反応が進行しにくくなる。従って、ヌレート触媒の含有量は、6.0質量部以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、7.0質量部以上、あるいは、8.0質量部以上である。
一方、ヌレート触媒の含有量が過剰になると、過剰のイソシアヌレート環が生成し、ポリウレタンフォームの硬度が過度に高くなる場合がある。従って、ヌレート触媒の含有量は、12.0質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、11.0質量部以下、あるいは、10.0質量部以下である。
【0050】
[1.2.4. 化学発泡剤の含有量]
「化学発泡剤の含有量(質量部)」とは、ポリオール成分の総質量を100としたときの、化学発泡剤の質量をいう。
【0051】
ポリオール組成物中に適量の物理発泡剤が含まれている場合、化学発泡剤の含有量は、ゼロでも良い。しかしながら、ポリオール組成物に化学発泡剤を添加すると、反応熱によりヌレート化反応やウレタン化反応が促進される場合がある。このような効果を得るためには、化学発泡剤の含有量は、0.1質量以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.2質量以上、あるいは、0.3質量部以上である。
【0052】
一方、化学発泡剤の含有量が過剰になると、イソシアネート基の量が相対的に低下し、ヌレート環の生成が阻害される場合がある。従って、化学発泡剤の含有量は、1.0質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.9質量部以下、あるいは、0.8質量部以下である。
【0053】
[1.2.5. 物理発泡剤の含有量]
「物理発泡剤の含有量(質量部)」とは、ポリオール成分の総質量を100としたときの、物理発泡剤の質量をいう。
【0054】
ポリオール組成物中に適量の化学発泡剤が含まれている場合、物理発泡剤の含有量は、ゼロでも良い。しかしながら、ポリオール組成物に物理発泡剤を添加すると、フォームの密度が低下するとともに、熱伝導率が低下する場合がある。このような効果を得るためには、物理発泡剤の含有量は、1.0質量部以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、5.0質量部以上、10.0質量以上、あるいは、15.0質量部以上である。
【0055】
一方、物理発泡剤の含有量が過剰になると、揮発に伴う吸熱による反応性の低下や、泡が連通化することでかえって熱伝導率が上昇する場合がある。従って、物理発泡剤の含有量は、50.0質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、45.0質量部以下、あるいは、40.0質量部以下である。
【0056】
[1.2.6. シリコーン整泡剤の含有量]
「シリコーン整泡剤の含有量(質量部)」とは、ポリオール成分の総質量を100としたときの、シリコーン整泡剤の質量をいう。
【0057】
一般に、シリコーン整泡剤の含有量が多くなるほど、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。また、シリコーン整泡剤に含まれる活性水素基の数が少ない場合、シリコーン整泡剤の含有量が多くなるほど、ポリオール組成物の水酸基価が小さくなる。その結果、ポリウレタンフォームを製造する際に、原料混合物のイソシアネートインデックスを大きくすることができ、二液塗工機を用いたスプレー施工が容易化する。このような効果を得るためには、シリコーン整泡剤の含有量は、10.0質量部超が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、15.0質量部以上、あるいは、20.0質量部以上である。
【0058】
一方、シリコーン整泡剤の含有量が過剰になると、ポリウレタンフォームの伸びが小さくなり、ポリウレタンフォームにクラックが発生しやすくなる。従って、シリコーン整泡剤の含有量は、50.0質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、45.0質量部以下、40.0質量部以下、あるいは、35.0質量部以下である。
【0059】
[1.2.7. 難燃剤の含有量]
「難燃剤の含有量(質量部)」とは、ポリオール成分の総質量を100としたときの、難燃剤の質量をいう。
【0060】
一般に、難燃剤の含有量が多くなるほど、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。また、難燃剤に含まれる活性水素基の数が少ない場合、難燃剤の含有量が多くなるほど、ポリオール組成物の水酸基価が小さくなる。その結果、ポリウレタンフォームを製造する際に、原料混合物のイソシアネートインデックスを大きくすることができ、二液塗工機を用いたスプレー施工が容易化する。このような効果を得るためには、難燃剤の含有量は、10.0質量部超が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、15.0質量部以上、あるいは、20.0質量部以上である。
【0061】
一方、難燃剤の含有量が過剰になると、ポリウレタンフォームの伸びが小さくなり、ポリウレタンフォームにクラックが発生しやすくなる。従って、難燃剤の含有量は、60.0質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、50.0質量部以下、40.0質量部以下、あるいは、30.0質量部以下である。
【0062】
[2. ポリウレタンフォーム]
本発明に係るポリウレタンフォームは、本発明に係るポリオール組成物と、ポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られる。
【0063】
[2.1. ポリオール組成物]
ポリオール組成物の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0064】
[2.2. ポリイソシアネート成分]
[2.2.1. 材料]
本発明において、ポリイソシアネート成分に含まれるポリイソシアネートの種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。ポリイソシアネートは、1分子中に2個のイソシアネート基を有するものでも良く、あるいは、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するものでも良い。
ポリイソシアネート成分は、いずれか1種のポリイソシアネートを含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0065】
2官能の芳香族系イソシアネートとしては、例えば、
2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、
m-フェニレンジイソシネート、p-フェニレンジイソシアネート、
4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'-MDI)、
2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4'-MDI)、
2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2'-MDI)、
キシリレンジイソシアネート、
3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンジイソネート、
3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニレンジイソシアネートなどがある。
【0066】
2官能の脂環式イソシアネートとしては、例えば、
シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、
ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、
メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどがある。
【0067】
2官能の脂肪族系イソシアネートとしては、例えば、
ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、
イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート
などがある。2官能以上のイソシアネートとしては、ポリメリックMDI、3官能以上のイソシアネートなどがある。
【0068】
3官能以上のイソシアネートとしては、例えば、
1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、
1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、
ビフェニル-2,4,4'-トリイソシアネート、
ジフェニルメタン-2,4,4'-トリイソシアネート、
メチルジフェニルメタン-4,6,4'-トリイソシアネート、
4,4'-ジメチルジフェニルメタン-2,2',5,5'テトライソシアネート、
トリフェニルメタン-4,4',4"-トリイソシアネート、
などがある。
【0069】
[2.2.2. イソシアネートインデックス]
「イソシアネートインデックス」とは、原料混合物中の活性水素基の当量に対する、原料混合物中のポリイソシアネートのイソシアネート基の当量の比に100を掛けた値をいう。
【0070】
イソシアネートインデックスが大きくなるほど、三量化反応が進行しやすくなり、ポリウレタンフォーム中にイソシアヌレート環が形成されやすくなる。このような効果を得るためには、イソシアネートインデックスは、200以上が好ましい。イソシアネートインデックスは、さらに好ましくは、210以上、220以上、230以上、あるいは、240以上である。
一方、イソシアネートインデックスが大きくなりすぎると、過剰のイソシアヌレート環が生成し、ポリウレタンフォームの硬度が過度に高くなる場合がある。従って、イソシアネートインデックスは、320以下が好ましい。イソシアネートインデックスは、さらに好ましくは、310以下、300以下、あるいは、290以下である。
【0071】
[2.2.3. 体積比]
「体積比」とは、ポリオール組成物の体積(VP)に対する、ポリイソシアネート成分の体積(VI)の比(=VI/VP)をいう。
【0072】
二液塗工機を用いてポリウレタンフォームをスプレー施工する場合、各種添加剤を含むポリオール組成物(A液)とポリイソシアネート成分(B液)との体積比が約1:1となるように、A液及びB液を二液塗工機に供給するのが好ましい。これは、A液とB液の体積が著しく異なると、一定の体積比を維持した状態でA液及びB液をスプレー施工するのが困難となるためである。
【0073】
ポリオール組成物の組成(特に、活性水素基の少ない難燃剤及び整泡剤の含有量)を最適化すると、高イソシアネートインデックスを維持したまま、VI/VPを0.8/1.2以上1.2/0.8以下にすることができる。ポリオール組成物の組成をさらに最適化すると、VI/VPは、0.85/1.15以上1.15/0.85以下、あるいは、0.9/1.1以上1.1/0.9以下となる。
【0074】
[2.3. ポリウレタンフォームの製造方法]
本発明に係るポリウレタンフォームは、種々の方法により製造することができる。
例えば、本発明に係るポリウレタンフォームを建築構造物の断熱材として用いる場合、
(a)VI/VPが0.8/1.2以上1.2/0.8以下となり、イソシアネートインデックスが200以上320以下となるように、ポリオール組成物及びポリイソシアネート成分を二液塗装機に供給し、
(b)ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との混合物を基材表面に吹き付け、基材表面においてポリウレタンフォームを形成する
方法を用いるのが好ましい。
【0075】
[3. 作用]
相対的に多量のシリコーン整泡剤及び難燃剤を含むポリオール組成物を用い、高イソシアネートインデックス下においてポリウレタンフォームを製造すると、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。これは、
(A)ポリウレタン中に難燃性の高いイソシアヌレート環が導入されるため、
(B)難燃剤がポリウレタンフォームの燃焼の拡大を抑制するため、
(C)相対的に多量のシリコーン整泡剤を含むポリオール組成物を用いてポリウレタンフォームを製造すると、ポリウレタンフォーム中に微細な気泡が多量に形成され、ポリウレタンフォームの熱伝導率が低下するため、及び、
(D)樹脂表面に配向したシリコーン整泡剤が燃焼時に珪素を含んだ炭化層の生成を促進し、可燃性ガスの揮発が抑制されるため
と考えられる。
【0076】
また、相対的に多量のシリコーン整泡剤及び難燃剤を含むポリオール組成物を用い、高イソシアネートインデックス下においてポリウレタンフォームを製造する場合において、ポリオール成分として不飽和脂肪族ポリエステルポリオールを用いると、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。これは、燃焼熱により二次重合が起こり、炭化層の形成を促進するためと考えられる。
【0077】
さらに、難燃剤及び/又はシリコーン整泡剤の活性水素基の数が少ない場合、これらを相対的に多量に含むポリオール組成物は、単位体積当たりの活性水素基の量が相対的に少なくなる。そのため、このようなポリオール組成物を用いると、イソシアネートインデックスを最適な範囲に維持しながら、ポリオール組成物の体積とポリイソシアネート成分の体積がほぼ等しい条件下において、これらを二液塗工機に供給することができる。その結果、高い難燃性と、適度な柔軟性を持つポリウレタンフォームのスプレー施工が容易化する。
【実施例0078】
(実施例1~13、比較例1~2)
[1. 試料の作製]
[1.1. 原料]
ポリオールには、以下のものを用いた。
(a)ポリエステルポリオール1(アクリル系ポリエステルポリオール、水酸基価200mgKOH/g、品番:PE-2009、三洋化成工業(株)製)
(b)ポリエステルポリオール2(テレフタル酸系ポリエステルポリオール、水酸基価200、品番:RLK-087、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル製)
(c)ポリエステルポリオール3(テレフタル酸系ポリエステルポリオール、水酸基価200、品番:RFK-509、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル製)
(d)ポリエステルポリオール4(フマル酸系ポリエステルポリオール、水酸基価200、品番:RFK-868、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル製)
(e)ポリエーテルポリオール(水酸基価315、品番:FB512B、AGC(株)製)
【0079】
難燃剤及び整泡剤には、以下のものを用いた。
(a)難燃剤(含ハロゲンリン酸エステル、トリス(クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)、大八化学工業(株)製)
(b)整泡剤1(シリコーン整泡剤、水酸基価39mgKOH/g、品番:SF2937F、ダウ・東レ(株)製)
(c)整泡剤2(シリコーン整泡剤、水酸基価72.7mgKOH/g、品番:SH193、ダウ・東レ(株)製)
【0080】
ウレタン触媒及びヌレート触媒には、以下のものを用いた。
(a)ウレタン触媒1(3級アミン触媒、品番:H1、HUNTSMAN製)
(b)ウレタン触媒2(3級アミン触媒、品番:PC206、EVONIK製)
(c)ヌレート触媒1(4級アンモニウム触媒、品番:TOYOCAT TRX、東ソー(株)製)
(d)ヌレート触媒2(カリウム触媒、品番:K15、EVONIK製)
(e)ウレタン触媒3(ビスマス触媒、品番:BICAT 8210、SHEPHERD CHEMICAL JAPAN製)
(f)ウレタン触媒4(亜鉛触媒、品番:BICAT Z、SHEPHERD CHEMICAL JAPAN製)
【0081】
化学発泡剤、物理発泡剤、及び、ポリイソシアネートには、以下のものを用いた。
(a)化学発泡剤(水)
(b)物理発泡剤(液状発泡剤(LBA)、HONEYWELL製)
(c)ポリイソシアネート(クルードMDI、品番:MR-200、東ソー(株)製)
【0082】
[1.2. ポリウレタンフォームの作製]
上記の原料を所定の比率で混合し、ポリオール組成物を得た。次いで、ポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを二液塗工機に供給し、材料液温:40℃、及び、材料圧力:6MPaにて厚みが30mmとなるように基板上に吹きつけ、原料混合物の反応及び発泡を行った。この操作を合計2回繰り返して積層し、ポリウレタンフォームを得た。スプレー機には、BASF INOAC ポリウレタン(株)製、FS2000を用いた。スプレーガンには、Graco社製、フュージョンCSを用いた。
【0083】
[2. 試験方法]
[2.1. コーンカロリーメータテスト(CCT)]
上記ポリウレタンフォームから基板を取り外し、99mm×99mmの正方形で、内部スキンを1層含むように厚み25mmで切り出し、試験片を作製した。得られた試験片を用いて、ISO 5660に準拠してコーンカロリーメータテストを行った。試験片を放射熱強度50kW/m2で5分間加熱したときの、総発熱量(THR)及び最高発熱速度(HRR)を求めた。また、試験片を放射熱強度50kW/m2で加熱し、5分経過したときの重量損失(CCT焼失量)を求めた。
【0084】
[2.2. 伸び]
上記ポリウレタンフォームの1層目から、ダンベル1号試験片(内部スキン無し)を作製した。得られた試験片を用いて、JIS A 9511に準拠して引張試験を行い、伸びを測定した。試験速度は、20mm/minとした。
【0085】
[2.3. 切り込みクラック]
高さ:1800mm、幅:450mm、深さ:100mmの木枠に合板面材を裏張りした躯体に、25℃雰囲気下、二液塗工機を用いて、吹付厚み30mmとなるように原料混合物を吹き付けた。この操作を合計2回繰り返して積層し、ポリウレタンフォームを得た。吹き付けしてから30分経過後に、ポリウレタンフォームの中央を100mm×100mmの正方形にくり抜いた。24時間経過後に、切り込みの周辺におけるクラックの有無を目視で評価した。
【0086】
[3. 結果]
表1及び表2に、結果を示す。なお、表1及び表2には、原料配合も併せて示した。また、切り込みクラックに関し、「○」はクラックが発生しなかったことを表し、「×」はクラックが発生したことを表す。難燃性に関し、「○」はCCT焼失量が75%未満(残存量が25%以上)であることを表し、「×」はCCT焼失量が75%以上(残存量が25%未満)であることを表す。表1及び表2より、以下のことが分かる。
【0087】
(1)比較例1は、CCT焼失量が75%以上(残存量が25%未満)であった。これは、難燃剤及びシリコーン整泡剤の含有量が少ないためと考えられる。
(2)比較例2は、CCT焼失量が75%以上(残存量が25%未満)であった。これは、不飽和脂肪族系ポリエステルポリオールの含有量が少ないためと考えられる。
(3)実施例1~13は、いずれも、CCT焼失量が75%未満(残存量が25%以上)であった。
(4)難燃剤及び整泡剤の総量が少なくなるほど、伸びが大きくなり、切り込みの周辺にクラックが発生しにくくなることが分かった。具体的には、難燃剤及び整泡剤の総量が50質量部以下(好ましくは、40質量部以下)になると、クラックが発生しにくくなることが分かった。これは、反応基の濃度が上昇するため、重合時に樹脂の分子鎖が成長しやすくなるためと考えられる。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係るポリオール組成物は、建築構造物の断熱材を製造するための原料として使用することができる。