(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104493
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240729BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20240729BHJP
A21D 13/60 20170101ALI20240729BHJP
A21D 13/16 20170101ALI20240729BHJP
A21D 2/16 20060101ALI20240729BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
A23D7/00
A23D7/00 500
A23D7/00 506
A23D7/00 508
A23L9/20
A21D13/60
A21D13/16
A21D2/16
A23D9/00 506
A23D9/00 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008723
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大前 智哉
(72)【発明者】
【氏名】染野 雄市
【テーマコード(参考)】
4B025
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B025LB21
4B025LG11
4B025LG26
4B025LP10
4B025LP11
4B025LP20
4B026DC01
4B026DG02
4B026DG03
4B026DG04
4B026DG20
4B026DH01
4B026DH10
4B026DK01
4B026DK05
4B026DL03
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP10
4B032DB01
4B032DB15
4B032DB24
4B032DE05
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK43
4B032DK47
4B032DK54
4B032DP08
4B032DP25
4B032DP29
4B032DP40
4B032DP47
4B032DP71
(57)【要約】
【課題】トランス脂肪酸を低減しても、油脂の染み出しが抑制されつつ、口溶けや食品の食感が良好な油脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の油脂組成物は、構成脂肪酸全体の質量に対して、ベヘン酸の含有量が5~40質量%、ステアリン酸の含有量が45~85質量%である油脂を配合したことを特徴としている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成脂肪酸全体の質量に対して、ベヘン酸の含有量が5~40質量%、ステアリン酸の含有量が45~85質量%である油脂を配合した、油脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加工油脂は、健康志向の高まりによりトランス脂肪酸の低減化が強く望まれている。トランス脂肪酸を低減した場合には、フィリングなどにおいては油脂製品の温度耐性が低くなり、融点の低い油脂の染み出しが発生し、その染み出しを抑制するために融点の高い油脂を添加すると口溶けが悪くなるという問題があった。また、フライ用油脂においては、フライ後の製品の食感が悪くなり、また包装袋に油が付着しやすくなるという問題があった。
【0003】
そのため、トランス脂肪酸を用いなくても、油脂の染み出しがなく、食感が良好な油脂組成物が求められていた。
従来、このような課題を解決するために、1,3位特異性リパーゼによるエステル交換油脂と極度硬化油を用いる技術(特許文献1、2)、比較的低い飽和脂肪酸含量で積層特性を有する脂肪で、特定のトリグリセリド組成、長鎖脂肪酸を含有することで積層特性を向上させる技術(特許文献3)、特定のトリグリセリド組成やハイエルシン酸菜種極度硬化油をエステル交換油脂に使用した技術(特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-169073号公報
【特許文献2】特開2000-253818号公報
【特許文献3】特開平11-050085号公報
【特許文献4】特開2017-176100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の技術は、袋への油脂の付着を抑制したとされているが、極度硬化油は構成脂肪酸のうちベヘン酸に言及しているものの、構成脂肪酸としてベヘン酸とステアリン酸を組み合わせた組成を検討しておらず、特に口溶けや食品の食感については十分ではなかった。特許文献3の技術は、特定の飽和脂肪酸含量かつペストリー用であるという限定的な条件であり、特許文献4の技術においても、特定のトリグリセリド組成が必須であると共に、ベヘン酸を含むハイエルシン酸菜種極度硬化油を他の油脂と混合してエステル交換反応をしなければならない、つまり脂肪酸をトリグリセリド中でランダムに交換することを要するといった限定的な条件であった。
さらに、上記の従来技術では、べヘン酸を含む極度硬化油について、さらにステアリン酸に着目し、べヘン酸量と共にステアリン酸量を特定範囲とすることで、使用する製品に良好な食感や口溶けを向上させる効果を付与することは示唆されていない。
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、トランス脂肪酸を低減しても、油脂の染み出しが抑制されつつ、口溶けや食品の食感が良好な油脂組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、構成脂肪酸全体の質量に対して、ベヘン酸の含有量が5~40質量%、ステアリン酸の含有量が45~85質量%である油脂を配合することで、特異的な結晶型を有し、油脂の染み出しが抑制されつつ、食品の食感も良好となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の油脂組成物は、構成脂肪酸全体の質量に対して、ベヘン酸の含有量が5~40質量%、ステアリン酸の含有量が45~85質量%である油脂を配合したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油脂組成物は、油脂の染み出しが抑制されつつ、口溶けや食品の食感も良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例において、菜種油に油脂2又は油脂9を3%添加し、80℃で溶解後、スライドガラスに滴下しカバーガラスで覆い、80℃に30分保持後、20℃で24時間保持した時の結晶状態を観察した偏光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の具体的な実施形態について説明する。
(油脂組成物)
本発明の油脂組成物は、構成脂肪酸全体の質量に対して、ベヘン酸の含有量が5~40質量%、ステアリン酸の含有量が45~85質量%である油脂(以下本発明における油脂ということもある。)を配合したものである。
【0011】
食用油脂の主要な成分はトリグリセリドであり、トリグリセリドは1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸が1位、2位、3位でエステル結合した構造を有する。食用油脂の構成脂肪酸は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸である。食用油脂の構成脂肪酸のうち、飽和脂肪酸としては、酪酸(4)、カプロン酸(6)、カプリル酸(8)、カプリン酸(10)、ラウリン酸(12)、ミリスチン酸(14)、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、リグノセリン酸(24)等がある。上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数である。不飽和脂肪酸としては、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、ヒラゴン酸(16:3)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、エイコセン酸(20:1)、エルカ酸(22:1)、セラコレイン酸(24:1)等がある。括弧内の数値表記は、左側が脂肪酸の炭素数であり、右側が二重結合数である。これらのうち、ベヘン酸とステアリン酸の含有量が上記の範囲である油脂は、天然の食用油脂には存在しない。しかし硬化等の加工処理と、複数種の油脂の組み合わせによって当該油脂を調製し、これを配合すると、特異的な結晶型を有し、油脂の染み出しが抑制されつつ、口溶けや食品の食感も良好となる。
【0012】
本発明における油脂は、例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、菜種油、ハイオレイン酸菜種油、大豆油、綿実油、コーン油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、シア脂、サル脂、マンゴー油、イリッペ脂、カカオ脂等の植物性油脂や、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂、魚油等の動物性油脂、それらの分別油、加工油(硬化及びエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)等を組み合わせて、ベヘン酸の含有量とステアリン酸の含有量を調整したものを用いることができる。
【0013】
特異的な結晶型を得られやすくなるという観点から、硬化油を用いることが好ましい。その中でも、動脈硬化症のリスクを増加させると言われており、健康への影響が懸念されるトランス脂肪酸量を低減する観点から、極度硬化油を用いることがより好ましい。
【0014】
ベヘン酸に相当する炭素数22の飽和もしくは不飽和脂肪酸を豊富に含む油脂としては、ハイエルシン酸菜種油が挙げられる。炭素数22の脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合には、その硬化油、特に極度硬化油を用いることが好ましい。
【0015】
ステアリン酸に相当する炭素数18の飽和もしくは不飽和脂肪酸を豊富に含む油脂としては、常温で液状である液状油、パーム油、動物性油脂が挙げられる。炭素数18の脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合には、その硬化油、特に極度硬化油を用いることが好ましい。
【0016】
本発明における油脂は、構成脂肪酸全体の質量に対して、ベヘン酸の含有量が5~40質量%、ステアリン酸の含有量が45~85質量%である。好ましくは、ベヘン酸の含有量が10~30質量%、ステアリン酸の含有量が55~80質量%である。
【0017】
本発明における油脂は、構成脂肪酸全体の質量に対して、ベヘン酸の含有量が好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
本発明における油脂は、構成脂肪酸全体の質量に対して、ステアリン酸の含有量が好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
【0018】
本発明における油脂は、油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して、ベヘン酸及びステアリン酸の合計含有量が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。
【0019】
本発明における油脂のベヘン酸とステアリン酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2-2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)で測定する。なお、ベヘン酸とステアリン酸の含有量は、上記試験法のとおりガスクロマトグラフィーで測定した油脂全量(油脂の構成脂肪酸全体の質量)を基準とする。
【0020】
本発明における油脂の融点は、特に限定されないが、例えば60~70℃である。本発明における油脂の融点は、基準油脂分析法(公益社団法人日本油化学会)の「3.2.2.2-2013 融点(上昇融点)」に準じて測定する。
【0021】
本発明における油脂の配合量は、特に限定されないが、例えば、油脂組成物に対して、0.1~15質量%が挙げられ、油脂の染み出し抑制効果をより発揮させる観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上が好ましい。また、口溶けや食品の食感をより向上させる観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
【0022】
本発明の油脂組成物は、本発明における油脂以外の油脂を含んでいてもよい。
本発明における油脂以外の油脂としては、特に限定されないが、例えば、ヤシ油、パーム核油等のラウリン系油脂、菜種油、ハイオレイン酸菜種油、大豆油、綿実油、コーン油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油等の液状油脂、パーム油、シア脂、サル脂、マンゴー油、イリッペ脂、カカオ脂等の植物性油脂や、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂、魚油等の動物性油脂、それらの分別油、加工油(硬化及びエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明の効果をより発揮させる観点からは、本発明における油脂以外の油脂には、本発明における油脂の融点よりも低い融点の油脂を用いることが好ましく、油脂の染み出し抑制の効果をより発揮させる観点から、本発明における油脂以外の油脂の融点は60℃未満が好ましく、50℃以下がより好ましく、45℃以下がさらに好ましい。本発明における油脂以外の油脂の融点は、基準油脂分析法(公益社団法人日本油化学会)の「3.2.2.2-2013 融点(上昇融点)」に準じて測定する。
【0024】
本発明における油脂以外の油脂として、1位、2位、及び3位に2つの飽和脂肪酸と1つの不飽和脂肪酸が結合した2飽和トリグリセリド、1位、2位、及び3位に1つの飽和脂肪酸と2つの不飽和脂肪酸が結合した1飽和トリグリセリド、1位、2位、及び3位の全てに不飽和脂肪酸が結合した3不飽和トリグリセリドを用途に応じて適度に含む油脂を用いると、本発明における油脂以外の油脂中の不飽和脂肪酸を含む融点の低いトリグリセリド成分の染み出しが抑制されつつ、口溶けや食品の食感も良好となる。
【0025】
本発明における油脂と、それ以外の油脂とを混合する配合時において、後述の「油脂組成物の製造方法」の項で示したような方法で均一に一体化したものとして調製することが好ましい。
【0026】
動脈硬化症のリスクを増加させると言われており、健康への影響が懸念されるトランス脂肪酸量を低減する観点から、本発明の油脂組成物は、トランス酸脂肪酸の含有量が油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して0.1~3質量%であることが好ましい。
油脂におけるトランス脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.4.3-2013 トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」で測定する。なお、トランス脂肪酸の含有量は、添加量既知の内部標準物質(ヘプタデカン酸)との面積比により算出できる。
【0027】
本発明の油脂組成物は、水相を実質的に含有しない形態と、水相を含有する形態をとることができる。水相を含有する形態としては油中水型、水中油型、油中水中油型、水中油中水型が挙げられ、油相の含有量は、好ましくは60~99.4質量%、より好ましくは65~98質量%であり、水相の含有量は、好ましくは0.6~40質量%、より好ましくは2~35質量%である。水相を含有する形態としては油中水型が好ましく、マーガリン類が挙げられる。ここでマーガリン類とは、日本農林規格のマーガリン又はファットスプレッドに該当するものである。
また、水相を実質的に含有しない形態としてはショートニングが挙げられる。ここで「実質的に含有しない」とは日本農林規格のショートニングに該当する、水分(揮発分を含む。)の含有量が0.5質量%以下のことである。
【0028】
本発明の油脂組成物は、水以外に、本発明の効果を損なわない範囲で従来の公知の成分を配合してもよい。公知の成分としては、例えば、乳、乳製品、蛋白質、糖質、塩類、酸味料、pH調整剤、抗酸化剤、香辛料、着色成分、香料、乳化剤等が挙げられる。乳としては、牛乳等が挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。蛋白質としては、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、小麦蛋白等の植物蛋白等が挙げられる。糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール、デンプン、デンプン分解物、多糖類等が挙げられる。抗酸化剤としては、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、植物ステロール、カテキン類、ポリフェノール類、茶抽出物等が挙げられる。香辛料としては、カプサイシン、アネトール、オイゲノール、シネオール、ジンゲロン等が挙げられる。着色成分としては、カロテン、アナトー、アスタキサンチン等が挙げられる。香料としては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等が挙げられる。乳化剤としては、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0029】
(油脂組成物の製造方法)
本発明の油脂組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば水相を含有する形態のものは、本発明における油脂及び任意にそれ以外の油脂を配合した油相と水相とを適宜に加熱し混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス、ポラロン、ロノーター等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。水相を含有しない形態のものは、本発明における油脂及び任意にそれ以外の油脂を配合した油相を加熱した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス、ポラロン、ロノーター等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。冷却混合機による急冷捏和後には、必要に応じて熟成(テンパリング)してもよい。
【0030】
(用途)
本発明の油脂組成物の用途としては、特に限定されないが、例えば、製菓製パン用、加熱調理用、即席調理食品用等に用いることができる。
【0031】
本発明の油脂組成物を製菓製パン用として用いる場合には、フィリング用、バタークリーム用、スプレッド用、練り込み用、ロールイン用等に好適に用いることができ、良好な菓子類やパン類を得ることができる。
【0032】
菓子類としては、パイ、ケーキ(パウンドケーキ等)、クッキー、ビスケット、クラッカー、ワッフル、スコーン、シュー、ケーキドーナツ等が挙げられる。パン類としては、食パン、菓子パン、クロワッサン、デニッシュ、ベーグル、ロールパン、コッペパン、イーストドーナツ等が挙げられる。
【0033】
本発明の油脂組成物をフィリングやバタークリームに用いる場合には、低温から高温領域での油脂の染み出しが抑制され、口溶けが良好なフィリングやバタークリームを得ることができる。
【0034】
本発明の油脂組成物を用いたフィリングやバタークリームとしては、可塑性油脂である本発明のマーガリンやショートニング等の油脂組成物と、所望により糖質等の呈味成分を加えて起泡させ、あるいはこの可塑性油脂を起泡させたものに糖質等の呈味成分などを配合したものが挙げられる。
【0035】
起泡(クリーミング)は、公知の方法によって起泡させることで行うことができる。例えば、電動式もしくは手動の泡立て器を用いて、比重が適度に軽くなるまで含気させることにより行うことができる。本発明の油脂組成物を用いたフィリングやバタークリームは、比重が好ましくは0.8以下、より好ましくは0.3~0.7である。
【0036】
本発明の油脂組成物を用いたフィリングやバタークリームに配合する呈味成分としては、糖質、乳製品、卵類、果実、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、ナッツペースト、香辛料、コーヒー及びコーヒー製品、酸味料、調味料、香料等が挙げられる。糖質としては、液糖、粉糖、糖アルコール等であってよく、例えば、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等)、オリゴ糖、糖アルコール、デンプン、デンプン分解物、多糖類、水あめ、異性化液糖等が挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、発酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白濃縮ホエイパウダー、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等が挙げられる。卵類としては、全卵、卵黄、卵白、加工卵等が挙げられる。
【0037】
上記フィリングやバタークリームに呈味成分やそれ以外の成分を配合する場合は、通常これらに配合される範囲の量などでよく、特に配合量に制限はない。上記フィリングやバタークリームに糖質を配合する場合は、油脂組成物100質量部に対して10~200質量部の範囲内で配合することができ、本発明の油脂組成物を用いたフィリングやバタークリームは、油脂の染み出しがなく、口溶けが良好である。
【0038】
上記フィリングやバタークリームは、パン、菓子、ケーキ等のフィリング、ナッペ、トッピング、サンド、注入等に好適に用いることができる。
【0039】
フィリングとしては、特に限定されないが、例えば、チョコレートフィリング、ジャムフィリング、ピーナッツバターフィリング等が挙げられる。
【0040】
本発明の油脂組成物を加熱調理用として用いる場合には、加熱調理後の食感(サクさ)が良好で、包装袋に油が付着しにくい加熱調理食品を得ることができる。
本発明において加熱調理とは、加熱調理用油脂組成物を熱媒体として食品を加熱調理することを意味し、主に揚げ物(フライ食品)の調理が代表的なものとして挙げられる。
【0041】
本発明の油脂組成物を加熱調理用として用いる場合、ドーナツ類、揚げパイ類、揚げ和菓子類等の揚げ菓子類や、揚げパン類等の製菓製パン、肉や魚、野菜やそれらを加工した惣菜等の揚げ種にバッターやブレッダー、パン粉をつけて油ちょうする衣揚げ、揚げ種に衣をつけずにそのまま油ちょうする素揚げ等の加熱調理食品に好適である。
【0042】
ドーナツ類は、ベーキングパウダー等の膨張剤を用いて生地を膨化させて製造されるケーキドーナツや、イーストで発酵させた生地で製造されるイーストドーナツ等が挙げられる。ドーナツには、揚げられているため表面はサクサクとした食感で、中はふんわりした食感のソフトでサクさがあるものや、表面はカリッとしていて中がサクサクしているもの等がある。その他、サクサクとした食感に特徴のあるいわゆるオールドファッションや、フレンチクルーラー、イーストで発酵させた生地を用いたイーストドーナツ、クロワッサンドーナツ等が挙げられる。これらはチョコレート等でコーティングしたものであってもよい。また、リング状に成形して揚げたものだけでなく、球状のもの、スティック状のもの、ツイスト状のものや、中に具を入れた餡ドーナツや、クリームドーナツ等であってもよい。
【0043】
ケーキドーナツの生地の原材料としては、小麦粉(薄力粉やこれに中力粉や強力粉を混ぜたものなど)等の穀粉や膨張剤(ベーキングパウダーなど)、澱粉等を配合し、その他、一般にケーキドーナツの生地に使用されているその他の原材料を配合することができる。例えば、水、糖、糖アルコール、卵、卵加工品、食塩、乳化剤、全脂粉乳、脱脂粉乳、牛乳、濃縮乳、合成乳、発酵乳、生クリーム、ヨーグルト、油脂類(ショートニング、マーガリンなど)、着色料、フレーバー等が挙げられる。
【0044】
これらの原材料を配合して常法に従って混合し、この生地を成型してそのままあるいは成型後に冷凍保存した後に加熱調理に供するか、又は生地にフィリングを包み込んで、フライヤー等の油槽内の本発明の加熱調理用油脂組成物に投入し、常法に従ってフライし膨張剤等で生地を膨化させる。ケーキドーナツの揚げ温度は一般に170~190℃である。
【0045】
揚げパイ類としては、肉類、魚介類、卵、野菜類等の具材をパイ生地で包んだものをフライしたものが挙げられる。例えば、リンゴから作製されたペーストをパイ生地に包んだアップルパイをフライしたもの、カスタードクリームをパイ生地で包んだクリームパイをフライしたもの、ミンチ肉を炒めたものをパイ生地で包んだミートパイをフライしたもの等が挙げられる。
【0046】
揚げ和菓子類としては、揚げ万頭、揚げ大福、かりんとう饅頭、かりんとう、芋けんぴ等が挙げられる。
【0047】
揚げパン類としては、パン生地を直接揚げて調理し砂糖やシナモンをまぶして食べるチュロス、カレーパン、ピロシキ、揚げ中華まん、花巻揚げパン、コッペパン等の焼いたパンを揚げたものに砂糖などで味付けした揚げパン等が挙げられる。
【0048】
具材として野菜類、果物類、肉類、魚介類、乳製品、及びこれらの加工調理品、冷凍品等を用いた、揚げ種にバッターやブレッダー、パン粉をつけて油ちょうする衣揚げ、揚げ種に衣をつけずにそのまま油ちょうする素揚げに使用する場合、このような加熱調理食品としては、例えば、フライ(トンカツ等のカツ類、コロッケ類、エビフライ等)、天ぷら、唐揚げ、素揚げ、揚げぎょうざや春巻き等の包み揚げ類、フリッター、フライドポテト、フライドチキン等が挙げられる。
【0049】
本発明の油脂組成物を加熱調理用として用いる場合、揚げ種をフライし、フライした食品を冷凍し、冷凍した食品を解凍するフライ食品の製造方法にも好適に使用できる。近年では弁当等を想定し、フライ食品を一旦冷凍した後に、自然解凍して喫食することが行われているが、本発明の油脂組成物は、フライ食品を一旦冷凍した後に、自然解凍した場合においてもサクさを維持することができる。
【0050】
本発明の油脂組成物を即席調理食品用として用いる場合には、口溶けが良好で、油脂の染み出しがしにくい即席調理食品を得ることができる。
即席調理食品用の即席調理食品としては、ソース類、シチュー類等の加工食品に用いられる固形ルウ等が挙げられる。
【実施例0051】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(油脂の製造)
表1に示す配合比にて、ハイエルシン酸菜種油とローエルシン酸菜種油を混合し、ニッケル触媒としてSO-750R(堺化学工業株式会社製)を対油0.3質量%(1.05g)添加し、水素圧0.12MPa、攪拌数750rpmで攪拌しながら、180℃で水素添加反応を行い、油脂のヨウ素価が2以下となるまで低下させ、各油脂を得た。
【0052】
(フィリング用ショートニングの作製)
表2に示す配合比にて、各原料油脂をタンク内で80℃に調温して溶解した後、混合してプロペラ撹拌機で撹拌し、均一に分散し溶解させた混合物をコンビネーターで急冷捏和して、フィリング用ショートニングを得た(実施例1~3、比較例1~3)。得られたフィリング用ショートニングを用いて、以下の評価を行った。
【0053】
(バタークリーム用マーガリンの作製)
表3に示す配合比にて、各原料油脂に乳化剤を添加し、70℃に調温して油相とした。水を、85℃で加熱殺菌して水相を得た。油相に水相を添加し、プロペラ攪拌機で攪拌して、油中水型に乳化した後、コンビネーターによって急冷捏和して、バタークリーム用マーガリンを得た(実施例4~6、比較例4~6)。得られたバタークリーム用マーガリンを用いて、以下の評価を行った。
【0054】
(加熱調理用ショートニングの作製)
表4に示す配合比にて、各原料油脂をタンク内で80℃に調温して溶解した後、混合してプロペラ撹拌機で撹拌し、均一に分散し溶解させた混合物をコンビネーターで急冷捏和して、加熱調理用ショートニングを得た(実施例7~9、比較例7~9)。得られた加熱調理用ショートニングを用いて、以下の評価を行った。
【0055】
(練り込み用マーガリンの作製)
表5に示す配合比にて、各原料油脂に乳化剤を添加し、70℃に調温して油相とした。水を、85℃で加熱殺菌して水相を得た。油相に水相を添加し、プロペラ攪拌機で攪拌して、油中水型に乳化した後、コンビネーターによって急冷捏和して、練り込み用マーガリンを得た(実施例10~12、比較例10~12)。
。得られた練り込み用マーガリンを用いて、以下の評価を行った。
【0056】
(ロールイン用マーガリンの作製)
表6に示す配合比にて、各原料油脂に乳化剤を添加し、70℃に調温して油相とした。水を、85℃で加熱殺菌して、水相を得た。油相に水相を添加し、プロペラ攪拌機で攪拌して、油中水型に乳化した後、コンビネーターによって急冷捏和して、25cm×21cm×1cmのシート状に成型し、ロールイン用マーガリンを得た(実施例13~15、比較例13~15)。得られたロールイン用マーガリンを用いて、以下の評価を行った。
【0057】
以下の各官能評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テスト、日本電色工業製SE6000等の色差測定装置による色差ΔE=0.8の識別テストを実施し、その
各々のテストで適合と判断された20~50代の男性6名、女性9名を選抜した。
【0058】
[染み出し]
マーガリン又はショートニングを3×3×3cm角にカットし、35℃の恒温槽にて3日保存したときの油脂の染み出しを目視にて、以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:全く染み出しがない
○:若干染み出しがある
△:染み出しがある
×:染み出しが多くある
【0059】
[保形性]
マーガリン又はショートニングを3×3×3cm角にカットし、35℃の恒温槽にて3日保存したときの保形性を目視にて、以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:形状に全く変化がない
○:形状に若干変化がある
△:形状の崩れがある
×:形状の崩れが多くある
【0060】
[口溶け]
マーガリン又はショートニングを25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後の口溶けをパネル15名により以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:パネル15名中12名以上が、口溶けが良好と評価した。
〇:パネル15名中8名~11名が、口溶けが良好と評価した。
△:パネル15名中4名~7名が、口溶けが良好と評価した。
×:パネル15名中3名以下が、口溶けが良好と評価した。
【0061】
(フィリングの作製)
上記で得たフィリング用ショートニングを15℃に調温した後、卓上ミキサー(Kitchen Aid社)を用いて、調温したショートニング250gを多羽ホイッパーで速度1にて30秒クリーミングした後、比重0.5まで含気させ、さらに液糖(BRIX67)250gを添加し、比重0.65となるまで含気させ、フィリングを得た。
〈フィリングの配合〉
ショートニング 250質量部
液糖 250質量部
【0062】
[フィリングの染み出し]
フィリングを、絞り袋に入れ、菊型口金で15gをポリカップ容器に絞り、35℃の恒温槽にて3日保存したときの油脂の染み出しを目視にて、以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:全く染み出しがない
○:若干染み出しがある
△:染み出しがある
×:染み出しが多くある
【0063】
[フィリングの口溶け]
フィリングを25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後の口溶けをパネル15名により以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:パネル15名中12名以上が、口溶けが良好と評価した。
〇:パネル15名中8名~11名が、口溶けが良好と評価した。
△:パネル15名中4名~7名が、口溶けが良好と評価した。
×:パネル15名中3名以下が、口溶けが良好と評価した。
【0064】
(バタークリームの作製)
上記で得たバタークリーム用マーガリンを15℃に調温した後、卓上ミキサー(Kitchen Aid社)を用いて、調温したマーガリン250gを多羽ホイッパーで速度1にて30秒クリーミングした後、比重0.5まで含気させ、さらに液糖(BRIX67)250gを添加し、比重0.65となるまで含気させ、バタークリームを得た。
〈バタークリームの配合〉
マーガリン 250質量部
液糖 250質量部
【0065】
[バタークリームの染み出し]
バタークリームを絞り袋に入れ、菊型口金で15gをポリカップ容器に絞り、35℃の恒温槽にて3日保存したときの油脂の染み出しを目視にて、以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:全く染み出しがない
○:若干染み出しがある
△:染み出しがある
×:染み出しが多くある
【0066】
[バタークリームの口溶け]
バタークリームを25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後の口溶けをパネル15名により以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:パネル15名中12名以上が、口溶けが良好と評価した。
〇:パネル15名中8名~11名が、口溶けが良好と評価した。
△:パネル15名中4名~7名が、口溶けが良好と評価した。
×:パネル15名中3名以下が、口溶けが良好と評価した。
【0067】
(ケーキドーナツの作製)
次の手順でケーキドーナツを作製した。
[1] 下記配合のショートニング、全卵、水を除くすべての原料を均一に篩っておく。
[2] 篩った原材料をミキサーボールに入れ全卵と水を加えビータで低速30秒、中低速1分ミキシングする。
[3] ショートニングを加え低速30秒、中低速2分ミキシングする。
[4] 出来た生地を、麺棒で1cm厚に延ばしドーナツ型で型抜きし、ドーナツフライテストに供した。
ドーナツフライテストは、加熱調理用ショートニングを電気フライヤーに7000g採取し、油温180℃でコントロールし、ケーキドーナツ生地を投入後、片面90秒、さらに反転して90秒フライした。
〈ケーキドーナツの配合〉
薄力粉 1000質量部
砂 糖 400質量部
食 塩 15質量部
ショートニング※1 100質量部
全卵(正味) 220質量部
ベーキングパウダー 30質量部
水 280質量部
※1 ショートニング:ミヨシ油脂製「ミヨシショートニングZ」
【0068】
[ケーキドーナツの染み出し]
フライしたケーキドーナツを、常温(15~25℃)で3分間放冷してから円形ろ紙(※2)に載せ25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後のろ紙への染み出しを以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:ろ紙上への染み出しが、ろ紙表面積の10%未満であった。
○:ろ紙上への染み出しが、ろ紙表面積の10%以上30%未満であった。
△:ろ紙上への染み出しが、ろ紙表面積の30%以上60%未満であった。
×:ろ紙上への染み出しが、ろ紙表面積の60%以上であった。
※2 ろ紙:定性ろ紙 直径110mm(円形)
【0069】
[ケーキドーナツの口溶け]
フライしたケーキドーナツを25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後の口溶けをパネル15名により以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:パネル15名中12名以上が、口溶けが良好と評価した。
〇:パネル15名中8名~11名が、口溶けが良好と評価した。
△:パネル15名中4名~7名が、口溶けが良好と評価した。
×:パネル15名中3名以下が、口溶けが良好と評価した。
【0070】
[ケーキドーナツのサクさ]
フライしたケーキドーナツを25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後の口溶けをパネル15名により以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:パネル15名中12名以上が、サクさが良いと評価した。
〇:パネル15名中8名~11名が、サクさが良いと評価した。
△:パネル15名中4名~7名が、サクさが良いと評価した。
×:パネル15名中3名以下が、サクさが良いと評価した。
【0071】
(菓子パンの作製)
練り込み用マーガリンを用いて、下記の配合及び製造条件によりパンを作製した。まず、イーストを分散させた水、マーガリン以外の材料をミキサーボールに投入し、フックを使用し、低速3分、中低速6分でミキシングを行った後、油脂を投入し、さらに低速2分、中高速3分ミキシングし、捏上げ温度は27℃であった。その後、27℃、湿度75%の条件で1時間発酵を行った。発酵の終点温度は28℃であった。その後、成型(分割50g、丸形)後、焼成し菓子パンを得た。得られた菓子パンについて以下の評価基準で評価した。
〈菓子パン配合〉
強力粉 100質量部
上白糖 15質量部
食塩 1.6質量部
脱脂粉乳 3質量部
全卵 6質量部
マーガリン 10質量部
イースト 5質量部
水 55質量部
【0072】
〈菓子パンの作製条件〉
混捏: 低速3分、中高速6分、(マーガリンを投入)、低速2分、中高速3分
捏上温度: 27℃
発酵時間: 27℃ 75% 1時間
終点温度: 28℃
分割重量: 70g (ロールパンは45g)
ベンチタイム: 20分
成型: モルダー
ホイロ: 38℃ 80% 60分
焼成: 200℃ 10分
【0073】
[菓子パンの口溶け]
菓子パンを25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後の口溶けをパネル15名により以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:パネル15名中12名以上が、口溶けが良好と評価した。
〇:パネル15名中8名~11名が、口溶けが良好と評価した。
△:パネル15名中4名~7名が、口溶けが良好と評価した。
×:パネル15名中3名以下が、口溶けが良好と評価した。
【0074】
[菓子パンのソフトさ]
菓子パンを25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後のソフトさをパネル15名により以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:パネル15名中12名以上が、ソフトさが良いと評価した。
○:パネル15名中8名~11名が、ソフトさが良いと評価した。
△:パネル15名中4名~7名が、ソフトさが良いと評価した。
×:パネル15名中3名以下が、ソフトさが良いと評価した。
【0075】
[菓子パンの歯切れ]
菓子パンを25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後の歯切れをパネル15名により以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:パネル15名中12名以上が、歯切れが良いと評価した。
○:パネル15名中8名~11名が、歯切れが良いと評価した。
△:パネル15名中4名~7名が、歯切れが良いと評価した。
×:パネル15名中3名以下が、歯切れが良いと評価した。
【0076】
(デニッシュの作製)
上記で得たそれぞれのマーガリン、ファットスプレッドを用いて、下記配合でデニッシュを製造した。具体的には実施例及び比較例のロールイン用マーガリン及びショートニングZ(ミヨシ油脂株式会社製)以外の材料をミキサーに投入し、低速3分、中低速5分ミキシングを行った後、ショートニングZを入れ低速2分、中低速4分ミキシングを行い、生地を得た。この生地を、室温で30分、フロアータイムをとった後、0℃で一晩リタードさせた。この生地にロールイン用マーガリンを折り込み、3つ折り2回を加え-10℃にて30分リタードし、3つ折り1回を加え-10℃にて60分リタードさせた。その後シーターゲージ厚3mmまで延ばし、10cm角(10cm×10cm)にカットし、35℃、湿度75%のホイロで60分発酵させた後、200℃で14分焼成して、デニッシュを製造した。焼成したデニッシュを室温で放冷させた後、ポリプロピレン製袋に入れ、20℃の恒温槽にて1日保管した後、風味(旨味、塩味、酸味、コク、濃厚感、乳感)をパネル15名により上記と同様の評価基準で評価した。以上で述べたデニッシュの配合を下記に示す。
【0077】
[デニッシュの配合]
強力粉 90質量部
薄力粉 10質量部
上白糖 10質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 3質量部
全卵 6質量部
ショートニングZ 8質量部
イースト 5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 53質量部
ロールイン用マーガリン 生地100質量部に対して21質量部
【0078】
[デニッシュの口溶け]
デニッシュを25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後の口溶けをパネル15名により以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:パネル15名中12名以上が、口溶けが良好と評価した。
〇:パネル15名中8名~11名が、口溶けが良好と評価した。
△:パネル15名中4名~7名が、口溶けが良好と評価した。
×:パネル15名中3名以下が、口溶けが良好と評価した。
【0079】
[デニッシュのソフトさ]
デニッシュを25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後のソフトさをパネル15名により以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:パネル15名中12名以上が、ソフトさが良いと評価した。
○:パネル15名中8名~11名が、ソフトさが良いと評価した。
△:パネル15名中4名~7名が、ソフトさが良いと評価した。
×:パネル15名中3名以下が、ソフトさが良いと評価した。
【0080】
[デニッシュの歯切れ]
デニッシュを25℃に調温した恒温器内に保管し、24時間後の歯切れをパネル15名により以下の評価基準で評価した。
評価基準
◎:パネル15名中12名以上が、歯切れが良いと評価した。
○:パネル15名中8名~11名が、歯切れが良いと評価した。
△:パネル15名中4名~7名が、歯切れが良いと評価した。
×:パネル15名中3名以下が、歯切れが良いと評価した。
【0081】
上記評価の結果を表2~表6に示す。なお、表2~表6において、染み出し、口溶け試験において評価△以下は発明の課題を解決しないと判断した。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
エステル交換油A:パーム分別軟質部のエステル交換油脂
エステル交換油B:パーム核油40質量%、パーム油60質量%のエステル交換油脂
エステル交換油C:パーム核極度硬化油20質量%、パーム極度硬化油40質量%、パーム油40質量%のエステル交換油脂
【0089】
[結晶の観察]
菜種油に、油脂2又は油脂9を3%添加し、80℃で溶解後、スライドガラスに滴下しカバーガラスで覆った。これを80℃に30分保持後、20℃で24時間保持した時の結晶状態を偏光顕微鏡(DIGITAL MICROSCOPE VHX-7000 キーエンス社製 倍率1000倍)により観察した。
油脂9は、結晶が細かく、密になっているのに対し、油脂2は、結晶が細かくなく、間隙が多いことがわかった。このような結晶型を有することで、本発明の効果が得られる。