(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104503
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20240729BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F25D23/02 304D
F25D23/02 304A
F25D23/02 304E
F25D23/00 303
F25D23/02 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008743
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森野 厚司
(72)【発明者】
【氏名】大石 紘一郎
【テーマコード(参考)】
3L102
【Fターム(参考)】
3L102JA01
3L102KA06
3L102KA10
3L102KB18
3L102KE04
3L102KE06
(57)【要約】
【課題】 正面ハンドルの設置数を最小限に抑制しつつ、正面ハンドルの近傍には加飾以外の機能も担わせた意匠面を配置する冷蔵庫を提供する。
【解決手段】 回転式の第1扉で開閉される第1貯蔵室、引出式の第2扉で開閉される第2貯蔵室、引出式の第3扉で開閉される第3貯蔵室、を上から順に備え、第2扉の前面の面積は、第3扉の前面の面積より小さく、第2貯蔵室に配された容器の内容積は、第3貯蔵室に配された容器の内容積より小さい、貯蔵庫であって、第1扉は、ハンドルを下面に備え、第2扉は、ハンドルを上面に備え、第3扉は、ハンドルを備えない又は側面に備え、第1扉と第2扉の隙間の寸法は、第2扉と第3扉の隙間の寸法より大きく、第1扉及び第2扉の上下間の隙間に配された意匠面を備え、意匠面は、第1扉、第2扉、及び第3扉それぞれとは異なる色または質感であり、より高い明度である、冷蔵庫。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式の第1扉で開閉される第1貯蔵室、
引出式の第2扉で開閉される第2貯蔵室、
引出式の第3扉で開閉される第3貯蔵室、
を上から順に備え、
前記第2扉の前面の面積は、前記第3扉の前面の面積より小さく、
前記第2貯蔵室に配された容器の内容積は、前記第3貯蔵室に配された容器の内容積より小さい、貯蔵庫であって、
前記第1扉は、ハンドルを下面に備え、
前記第2扉は、ハンドルを上面に備え、
前記第3扉は、ハンドルを備えない又は側面に備え、
前記第1扉と前記第2扉の隙間の寸法は、前記第2扉と前記第3扉の隙間の寸法より大きく、
前記第1扉及び前記第2扉の上下間の隙間に配された意匠面を備え、
前記意匠面は、前記第1扉、前記第2扉、及び前記第3扉それぞれとは異なる色であり、より高い明度である、冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記異なる色とは、マンセル値における明度及び彩度の差が3.0超の色である、冷蔵庫。
【請求項3】
回転式の第1扉で開閉される第1貯蔵室、
引出式の第2扉で開閉される第2貯蔵室、
引出式の第3扉で開閉される第3貯蔵室、
幅寸法略全体に延在する脚カバー、
を上から順に備え、
前記第2扉の前面の面積は、前記第3扉の前面の面積より小さく、
前記第2貯蔵室に配された容器の内容積は、前記第3貯蔵室に配された容器の内容積より小さい、貯蔵庫であって、
前記第1扉は、ハンドルを下面に備え、
前記第2扉は、ハンドルを上面に備え、
前記第3扉は、ハンドルを備えない又は側面に備え、
前記第1扉及び前記第2扉の上下間の隙間の寸法は、前記第2扉及び前記第3扉の上下間の隙間の寸法より大きく、
前記第1扉及び前記第2扉の上下間の隙間に配された意匠面を備え、
前記意匠面は、前記第1扉、前記第2扉、及び前記第3扉それぞれとは異なる質感であり、より高い明度である、冷蔵庫。
【請求項4】
請求項2に記載の冷蔵庫において、
扉の質感がガラスである場合、前記異なる質感とは、木材・石材・金属材・樹脂材の何れかの質感である、冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の冷蔵庫において、
前記意匠面の上方に前記第1扉のハンドルを設けるとともに、
前記意匠面の下方に前記第2扉のハンドルを設けた、冷蔵庫。
【請求項6】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の冷蔵庫において、
前記意匠面は、前記第1扉及び前記第2扉の上下間の隙間と略同じ高さ、かつ、第2扉と略同じ幅の、矩形の板状部材である、冷蔵庫。
【請求項7】
請求項6に記載の冷蔵庫において、
前記意匠面は、板状部材の上辺と側辺にツメを備えており、該ツメと前記第2扉の上部がかみ合うことで、前記意匠面が前記第2扉に装着された、冷蔵庫。
【請求項8】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の冷蔵庫において、
前記第3扉がハンドルを備えない場合、該第3扉に、電動開閉機構またはプッシュオープン式開閉機構を設置した、冷蔵庫。
【請求項9】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の冷蔵庫において、
前記第3貯蔵室の下方に、幅寸法略全体に延在する脚カバーを設けた、冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵室扉のハンドル近傍に扉表面とは外観の異なる意匠面を配置した冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
貯蔵室扉のハンドル近傍に、扉表面とは外観の異なる意匠面を配置することで意匠性を向上させた冷蔵庫として、特許文献1に記載の冷蔵庫が知られている。例えば、同文献の
図1には、野菜室扉・冷凍室扉・製氷室扉の各ハンドル近傍に、加飾用の化粧シート(シール部材)を貼り付けた冷蔵庫が開示されている。この化粧シートに関し、同文献の段落0016から段落0018では、「引き出し式の各扉(・・・)には、その上端部に取っ手部31が設けられている。そして、取っ手部31の周囲の傾斜面には、シール部材(シート部材)61が貼り付けられている(
図2参照)。」、「シール部材61の表面には、例えば、木目模様、大理石模様などの種々の模様が様々な色彩でプリントされている。これにより、冷蔵庫1の外観の意匠性を向上させることができる。シール部材61は化粧シートとも呼ばれる。」、「シール部材61の裏面には、接着材を含む接着層が形成されている。そのため、使用者は、異なる模様がプリントされている複数のシール部材61から好みの模様のシール部材61を選択して、冷蔵庫1の各扉の取っ手部31の周囲に貼り付けることができる。・・・。これにより、使用者は、冷蔵庫1が設置される部屋のインテリアなどに合わせて冷蔵庫1の正面部分のデザインを容易に変更することができる。」との記載がある。
【0003】
このように、特許文献1では、様々の模様や色彩の化粧シート(シール部材)を各扉の取っ手部の周囲に貼り付けることで、冷蔵庫外観を使用者好みのデザインに変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の
図1の冷蔵庫のように、冷蔵庫正面から見える位置に各扉のハンドルを設け、各ハンドルの近傍に扉表面とは模様や色彩の異なる化粧シートを貼り付けると、冷蔵庫正面の意匠が上下方向に四分割されるため、冷蔵庫正面の意匠的な一体感が損なわれる可能性がある。また、同文献では、化粧シートの張り付けに接着材を用いたため、接着材の経年劣化等の影響で化粧シートが剥がれてしまう可能性がある。加えて、同文献の段落0068で「
図2に示すように、シール部材61は、2つの大面部62と、これら2つの大面部62を連結する線状部63とを有している。」と説明されるように、同文献の化粧シートは細い線状部を有しており、この線状部を接触容易な傾斜面に貼り付けているため、冷蔵庫の清掃中等に使用者が細い線状部に触れると、化粧シートを意図せずに破損する可能性もある。
【0006】
そこで、本発明は、正面ハンドルの設置数を最小限に抑制しつつ、正面ハンドルの近傍には加飾以外の機能も担わせた意匠面を配置することで、現行の冷蔵庫同等の使い勝手を維持できる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の冷蔵庫は、回転式の第1扉で開閉される第1貯蔵室、引出式の第2扉で開閉される第2貯蔵室、引出式の第3扉で開閉される第3貯蔵室、を上から順に備え、前記第2扉の前面の面積は、前記第3扉の前面の面積より小さく、前記第2貯蔵室に配された容器の内容積は、前記第3貯蔵室に配された容器の内容積より小さい、貯蔵庫であって、前記第1扉は、ハンドルを下面に備え、前記第2扉は、ハンドルを上面に備え、前記第3扉は、ハンドルを備えない又は側面に備え、前記第1扉と前記第2扉の隙間の寸法は、前記第2扉と前記第3扉の隙間の寸法より大きく、前記第1扉及び前記第2扉の上下間の隙間に配された意匠面を備え、前記意匠面は、前記第1扉、前記第2扉、及び前記第3扉それぞれとは異なる色または質感であり、より高い明度である、冷蔵庫とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の冷蔵庫によれば、正面ハンドルの設置数を最小限に抑制しつつ、正面ハンドルの近傍には加飾以外の機能も担わせた意匠面を配置することで、現行の冷蔵庫同等の使い勝手を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】実施例1の製氷室扉(第2扉)の正面斜視図(意匠面装着状態)。
【
図6】実施例1の製氷室扉(第2扉)の背面斜視図(意匠面取り外し状態)。
【
図7】実施例1の製氷室扉(第2扉)の上端部の断面図(意匠面装着状態)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明の冷蔵庫の実施例を説明する。
【実施例0011】
図1から
図8を用いて、本発明の実施例1に係る冷蔵庫を説明する。
【0012】
<冷蔵庫の概略構成>
まず、
図1の正面図と
図2の右側面図を用いて、実施例1に係る冷蔵庫1の概略構成を説明する。ここに示すように、本実施例の冷蔵庫1は、食材等の貯蔵室として、冷蔵室11、製氷室12、上冷凍室13、下冷凍室14、野菜室15を備えている。各貯蔵室は、各貯蔵室の正面開口に応じた大きさの、矩形の扉11a、12a、13a、14a、15aによって、開閉自在に閉鎖されている。また、各扉は、使用者が扉を開閉する際に把持するハンドル11b、12b、13b、14b、15bを備えている。さらに、野菜室15の扉15aの下方には、冷蔵庫1を支持する複数の脚16またはキャスターを隠すため、矩形の脚カバー16aが設置されている。
【0013】
図2に示すように、冷蔵庫1の全扉を閉鎖すると、扉11a~15a、および、脚カバー16aの前面が同一平面状に配置される。各前面の色や質感は同等であるため、
図2の状態の冷蔵庫1を正面視した場合には、
図1に示すように、冷蔵庫全体として意匠的に統一感のある印象を使用者に与えることができる。
【0014】
しかしながら、各扉正面の視認可能な位置にハンドルを設けると、冷蔵庫1を正面視した場合の意匠的な統一感がハンドルによって損なわれる惧れがある。そこで、本実施例では、通常は使用頻度の低いハンドル14b、15bを冷蔵庫1の側面側に設けることで、ハンドルの存在が冷蔵庫正面の意匠に与える影響を抑制した。一方、通常は使用頻度の高いハンドル11b、12b、13bのみを冷蔵庫1の正面側に設けることで、平均的な身長の使用者が冷蔵庫1の正面に立ったときの、使用頻度の高い扉の使い勝手を向上させた。
【0015】
上記の効果を得るため、本実施例では、使用頻度の高い各ハンドルを次のように配置した。すなわち、
図2の破線部、および、
図1のAA断面図である
図3に示すように、扉12a、13aの上部に後方に凹んだ空間(以下、「凹部2」と称する)を設けると共に、凹部2の上方かつ扉11aの下面に冷蔵室11のハンドル11bを設け、凹部2の下方かつ扉12aの上面に製氷室12のハンドル12bを設け、同じく凹部2の下方かつ扉13の上面に上冷凍室13のハンドル13bを設けた。なお、凹部2の前面開口の高さは、使用者が指を容易に挿入できる程度の高さ(例えば、5~10cm)である。従って、本実施例の冷蔵庫1では、凹部2の上下にハンドル11b、12b、13bが配置されることになるため、使用者は、この凹部2を介して所望のハンドルを把持し、所望の扉を容易に開閉することができる。
【0016】
しかしながら、凹部2を設けた場合も、冷蔵庫1を正面視した場合の意匠的な統一感が凹部2によって損なわれる惧れがある。そこで、本実施例の冷蔵庫1では、周囲とは外観(色、質感)の異なる意匠面3を凹部2に設置することで、凹部2を積極的に目立たたせ、ハンドル11b、12b、13bの位置を使用者に知らしめる機能を凹部2に担わせた。以下では、各貯蔵室の詳細を順次説明した後、凹部2に設置する意匠面3の詳細を説明することとする。
【0017】
<各貯蔵室の詳細>
冷蔵室11は、約0℃~7℃の温度維持を予定した、主に生鮮食品や飲料を貯蔵するための貯蔵室であり、冷蔵庫1の上段に配置される。この冷蔵室11の正面開口は、左右一対の扉11aで閉鎖されている。また、左側の扉11aの下面には右寄りにハンドル11bが設けられており、右側の扉11aの下面には左寄りにハンドル11bが設けられている。さらに、左側の扉11aの左端には回転軸11cが設けられており、右側の扉11aの右端には回転軸11cが設けられている。従って、使用者が凹部2を介して扉11aの下方からハンドル11bに指を入れ、ハンドル11bを前方に引くと、左右の扉11aが各々の回転軸11c周りに回転して、冷蔵室11の正面開口が開放される。
【0018】
製氷室12は、約-18℃~-16℃の温度維持を予定した、製氷機能を備えた貯蔵室であり、冷蔵庫1の中段左側に配置される。この製氷室12の正面開口は、扉12aで閉鎖されている。また、扉12aの上面の右寄りには、ハンドル12bが設けられている。従って、使用者が凹部2を介して扉12aの上方からハンドル12bに指を入れ、ハンドル12bを前方に引くと、扉12aと連結した容器(図示せず)が引き出し状に引き出され、製氷室12の正面開口が開放される。
【0019】
上冷凍室13は、約-18℃~-16℃の温度維持を予定した、主に冷凍食品を貯蔵するための貯蔵室であり、冷蔵庫1の中段右側に配置される。この上冷凍室13の正面開口は、扉13aで閉鎖されている。また、扉13aの上面の左寄りには、ハンドル13bが設けられている。従って、使用者が凹部2を介して扉13aの上方からハンドル13bに指を入れ、ハンドル13bを前方に引くと、扉13aと連結した容器(図示せず)が引き出し状に引き出され、上冷凍室13の正面開口が開放される。
【0020】
下冷凍室14は、約-18℃~-16℃の温度維持を予定した、主に冷凍食品を貯蔵するための貯蔵室であり、冷蔵庫1の下段上部に配置される。この下冷凍室14の正面開口は、扉14aで閉鎖されている。また、
図2に示すように、扉14aの両側面には、縦長のハンドル14bが設けられている。従って、使用者が扉14aの側方からハンドル14bに指を入れ、ハンドル14bを前方に引くと、扉14aと連結した容器(図示せず)が引き出し状に引き出され、下冷凍室14の正面開口が開放される。
【0021】
野菜室15は、約4℃~8℃の温度維持を予定した、主に生鮮野菜を貯蔵するための貯蔵室であり、冷蔵庫1の下段下部に配置される。この野菜室15の正面開口は、扉15aで閉鎖されている。また、
図2に示すように、扉15aの側面には、縦長のハンドル15bが設けられている。従って、使用者が扉15aの側方からハンドル15bに指を入れ、ハンドル15bを前方に引くと、扉15aと連結した野菜室容器(図示せず)が引き出し状に引き出され、野菜室15の正面開口が開放される。
【0022】
図2のBB断面図である
図4に示すように、扉14aのハンドル14bは、平面と曲面で構成した(換言すれば、鋭利な部位を持たない)樹脂部品14cで成形したものであり、その樹脂部品14cの前方には、ガラス板14dが取り付けられている。このように、扉14aの最前面にガラス板14dを配置し、側面を滑らかな樹脂部品14cで構成すると、使用者がハンドル14bを把持しようとする際に、扉14aの端部に誤って指等を接触させた場合であっても、接触する部位は平坦であるため、鋭利な形状の前板支持部品に指等が接触して不快感を覚えることが無い。なお、この点は、野菜室15の扉15aも同様である。
【0023】
ここで、上段の冷蔵室11を第1貯蔵室、中段左右の製氷室12と上冷凍室13の各々を第2貯蔵室、下段上下の下冷凍室14と野菜室15の各々を第3貯蔵室とすると、本実施例の冷蔵庫1では、各貯蔵室の用途などを考慮し、第1貯蔵室の内容積V1、第2貯蔵室の夫々の内容積V2、第3貯蔵室の夫々の内容積V3を、次の大小関係を満たすように設計した。
【0024】
V1 > V3 > V2 ・・・ (式1)
その結果、第1貯蔵室の扉である第1扉の前面の面積S1、第2貯蔵室の扉である第2扉の前面の面積S2、第3貯蔵室の扉である第3扉の前面の面積S3は、以下の大小関係を満たす。なお、各々の前面の面積とは、
図2にて同一平面状に配置される平面部の面積であり、第2扉上部に設けられる凹部2の正面視面積を含まない面積である。
【0025】
S1 > S2 ・・・ (式2)
S3 > S2 ・・・ (式3)
また、本実施例では、第1扉と第2扉の境界にのみ凹部2を設け、他種の扉同士の境界には凹部2を設けていないことから、第1扉表面と第2扉表面の隙間の高さH1と、第2扉表面と第3扉表面の隙間の高さH2は、以下の大小関係にある。
【0026】
H1 > H2 ・・・ (式4)
<第2扉と意匠面3の詳細>
次に、
図5から
図8を用いて、第2扉(扉12a、13a)の凹部2に取り付ける意匠面3の詳細を説明する。なお、冷蔵庫1の中段左側の扉12aの構造と、中段右側の扉13aの構造は、左右反転させただけの鏡像関係にあるため、以下では、製氷室12の扉12aを例に、意匠面3の詳細を説明する。
【0027】
図5は、意匠面3を装着した状態の扉12aの正面斜視図である。この斜視図に示すように、本実施例の扉12a(第2扉)の上部には、後方に凹んだ凹部2があり、この凹部2の後側には、扉12aの凹部2と略同じ高さ、かつ、扉12aと略同じ幅の、矩形の意匠面3が取り付けられている。本実施例の意匠面3には、次の特徴を持たせた。
【0028】
(1)意匠面3の外観の特徴
上記したように、本実施例の意匠面3には、凹部2を積極的に目立たたせ、使用者が第1扉や第2扉のハンドルの位置を特定するための目印の機能を担わせた。そのため、意匠面3の色として、一見して各扉前面の色と異なると判定できるような色を採用した。具体的には、各扉前面の色と意匠面3の色には、明度及び彩度の差として、マンセル値における3.0超の差を設けた。
【0029】
同様の理由で、意匠面3の色相として、冷蔵庫扉に利用されることが多い色相とは異なる色相を採用した。具体的には、意匠面3の色相を、マンセル値の色相における、10色相[R(赤),Y黄),G(緑),B(青),P(紫),YR(黄赤),GY(緑黄),BG(青緑),PB(紫青),RP(赤紫)]の各色範囲外の色相とした。
【0030】
さらに、意匠面3の質感として、一見して各扉前面の質感と異なると判定できるような質感を採用した。例えば、各扉前面にガラス板を配置した場合であれば、意匠面3を木材・石材・金属材・樹脂材の何れかの質感のものとした。
【0031】
(2)意匠面3の製造方法の特徴
上記したような多様な外観を付与しつつ、耐久性の向上も図るため、本実施例の意匠面3の製造には、インモールド成形を利用した。ここで、インモールド成形とは、予め印刷されたフィルムを射出成形の金型内に挟み込んで成形することで、硬質樹脂部品の表面に印刷柄を転写する加飾成形方法である。
【0032】
従って、適当なフィルムを用意すれば所望の色や質感の意匠面3を容易に製造することができる。また、意匠面3を硬質樹脂で形成できるため、特許文献1の化粧シート(シール部材)のように簡単に破損する可能性を回避することができる。また、上述のとおり、樹脂部品の表面に柄や模様等を加飾する方法としてインモールド成形を選択した場合、意匠面3の前面3aだけではなく、意匠面3のR面3b及び側面3cに柄や模様等を加飾成形することができる。
【0033】
なお、インモールド成形を利用した意匠面3は比較的高価な樹脂部品であるが、本実施例の冷蔵庫1では、意匠面3の設置数を最低限の数に留めるとともに、各々の意匠面3の大きさを最低限の大きさに留めているため、高価な意匠面3の装着による冷蔵庫1の製造コスト増を抑制することができる。
【0034】
(3)意匠面3の取り付け方法の特徴
好みのデザインの意匠面3に使用者自身で簡単に交換できるように、本実施例の冷蔵庫1では、意匠面3を着脱自在な構造とした。そのため、意匠面3および第2扉の形状を、
図6から
図8に示すように構成した。
【0035】
図6は、意匠面3を装着する前の扉12aの背面斜視図である。ここに示すように、意匠面3の背面側の上辺には複数の上辺ツメ31が設けられており、意匠面3の背面側の側辺下端には側辺ツメ32が設けられている。
【0036】
図7は、意匠面3を装着した状態の扉12aの上部の拡大断面図である。この図から明らかなように、本実施例の意匠面3は、板状部の上辺と側辺に複数のツメを設けただけの前後方向に薄い構造であるため、意匠面3を装着した状態であっても、凹部2にはハンドル把持を阻害しないだけの十分な奥行きを確保することができる。
【0037】
また、
図8は、意匠面3を装着した状態の扉12aの背面斜視図であり、
図7のCC断面を後方から見た図である。
図7と
図8から自明なように、扉12aの上端前側には、意匠面3の上辺ツメ31と噛み合う溝部が設けられており、扉12aの上端側辺には、意匠面3の側辺ツメ32と噛み合う返りツメが設けられている。そのため、意匠面3を上方からスライドさせるだけで、意匠面3を簡単に扉12aに装着することができる。また、意匠面3の側辺を広げれば、側辺ツメ32と返りツメの噛み合いが解除されるため、意匠面3を上方にスライドさせるだけで、意匠面3を簡単に扉12aから取り外すことができる。
【0038】
<本実施例の効果>
以上で説明した本実施例の冷蔵庫によれば、正面ハンドルの設置数を最小限に抑制しつつ、正面ハンドルの近傍には加飾以外の機能も担わせた意匠面を配置することで、現行の冷蔵庫同等の使い勝手を維持することができる。
本実施例では、扉14aや扉15aの出し入れ時にハンドルを把持できないため、使用者の使い勝手を損なわぬよう、扉14a、15aには次の何れかの開閉機構を設置した。すなわち、第一の開閉機構は、モータ等の動力源を組み込んだ電動開閉機構である。この開閉機構を用いる場合には、扉表面に開閉釦を設けて置き、使用者が同釦を押下することで、扉が自動的に開閉する。また、第二の開閉機構は、閉鎖した扉の前面を押し込んだ場合に扉が所定量飛び出す、プッシュオープン式開閉機構である。このように、何れかの開閉機構を設けることで、扉の側面にハンドルを設けなくても、使用者は扉14a、15aを自在に開閉することができる。