(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104509
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240729BHJP
H02M 7/49 20070101ALI20240729BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/49
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008752
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小日向 夏美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】前川 達也
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770BA01
5H770BA11
5H770DA03
5H770DA23
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA03X
5H770HA03Y
5H770JA18Y
5H770KA01Y
5H770LB05
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】共振の発生を検出することができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】各系統ラインからパッシブフィルタにかけての通電路と電力変換器の各クラスタの相互接続点との間の電圧を検出し、検出した電圧から電力変換器のスイッチングに伴う矩形波成分を除去し、この除去後の電圧に基づいて交流系統の系統電圧の値を推定する。各系統ラインに流れる負荷電流の値および上記推定結果に基づき、負荷電流に含まれる高調波成分を抑制するための補償電圧を電力変換器で生成し出力させる。上記推定手段の推定結果から各系統ラインの線間電圧を算出し、算出した線間電圧に含まれる共振成分を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流系統と負荷との間の各系統ラインにパッシブフィルタを介して一端が接続され他端が相互接続された複数のクラスタを含み、これらクラスタのスイッチングにより交流電圧を生成し前記系統ラインへ出力する電力変換器と、
前記各系統ラインから前記パッシブフィルタにかけての通電路と前記各クラスタの相互接続点との間の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部で検出される電圧から前記スイッチングに伴う矩形波成分を除去する矩形波除去フィルタと、
前記矩形波除去フィルタを経た電圧に基づいて前記交流系統の系統電圧の値を推定する推定手段と、
前記各系統ラインに流れる負荷電流の値および前記推定手段の推定結果に基づき、前記負荷電流に含まれる高調波成分を抑制するための補償電圧を前記電力変換器で生成し出力させる制御手段と、
前記推定手段の推定結果から前記各系統ラインの線間電圧を算出し、算出した線間電圧に含まれる共振成分を検出する検出手段と、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記電圧検出部は、前記各系統ラインのうち2つの系統ラインから前記パッシブフィルタにかけての2つの通電路と前記各クラスタの相互接続点との間の電圧を検出し、
前記推定手段は、前記矩形波除去フィルタを経た電圧と前記相互接続点の電位に重畳する零相電圧とに基づいて前記交流系統の系統電圧の値を推定する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記算出した線間電圧に含まれる共振成分をその線間電圧のピーク値と閾値との比較により検出する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検出手段で前記共振成分が検出された場合に前記補償電圧を算出するための操作量を低減する、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御手段は、さらに負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、補償電流を検出する補償電流検出手段とを備え、
前記補償電圧は、前記負荷電流と前記補償電流から制御ゲインを含む演算処理を行なうことで算出され、前記操作量の低減は、前記制御ゲインを低減である、
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記検出手段で前記共振成分が検出された場合に前記電力変換器の動作を停止する、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記閾値は、第1閾値、およびこの第1閾値より大きい保護用の第2閾値であり、
前記制御手段は、前記検出手段が算出した前記線間電圧のピーク値が前記第1閾値に達した場合、前記共振成分があると判定して前記操作量を低減し、前記線間電圧のピーク値が前記第1閾値を超えて前記第2閾値に達した場合に前記電力変換器の動作を停止する、
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1閾値は、前記電力変換器が動作する前に前記検出手段で算出される線間電圧のピーク値に応じて設定される、
請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記算出した線間電圧のピーク値が一定時間内で前記閾値以上となる回数を計数し、計数した回数が設定値以上の場合に、前記算出した線間電圧に前記共振成分があると判定する、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記検出手段は、前記算出した線間電圧と前記各系統ラインの実際の線間電圧との差分を前記共振成分として検出する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記電圧検出部は、前記各系統ラインのうち3つの系統ラインから前記パッシブフィルタにかけての3つの通電路と前記各クラスタの相互接続点との間の電圧を検出する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、負荷に流れる電流の高調波成分を抑制する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイオード整流器など非線形な特性を持つ負荷を交流系統に接続した場合、負荷に流れる電流(負荷電流)に高調波が生じる。この高調波成分は交流系統を通して他の負荷へ悪影響を与える可能性があるため、それをいかに抑制するかが重要な課題となっている。
【0003】
その対策として、例えば負荷電流の高調波成分を抑制する電力変換装置(高調波抑制装置)が使用される。高調波抑制装置は、ノイズ除去用フィルタおよび変換器用リアクトルからなるパッシブフィルタを介して交流系統と負荷との間の系統ラインに接続される電力変換器を含み、負荷電流の高調波成分に対する抑制用の電圧をその電力変換器のスイッチングにより生成し、生成した電圧を系統ラインに供給する。
【0004】
ノイズ除去用フィルタは、フィルタ用リアクトルとフィルタ用コンデンサとで構成され、変換器のスイッチングにより生じる高周波ノイズが系統ラインに流れて他の電気機器に悪影響を与えないよう、その高周波ノイズをフィルタ用リアクトルよりもインピーダンスが小さいフィルタ用コンデンサに導いて吸収する。変換器用リアクトルは、変換器のスイッチングにより生じる電流リップルを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
交流系統の系統ライン(電源ライン)には電源ラインインピーダンスが存在し、その電源ラインインピーダンスのインダクタ成分とキャパシタ成分、フィルタ用リアクトル、フィルタ用コンデンサ、および変換器用リアクトルにより、共振回路が形成される。この共振回路は、電源ラインインピーダンスのインダクタンスとキャパシタンス、フィルタ用リアクトルのインダクタンス、フィルタ用コンデンサの容量、変換器用リアクタのインダクタンスなどで定まる共振周波数を有する。
【0007】
電源ラインインピーダンスは、交流系統側の状況により定まるもので、固定ではない。交流系統も商用電源であったり、自家発電電源やその組み合わせ等の種々のケースがある。このため、場合によっては、共振回路の共振周波数が電力変換器のスイッチング周波数や電流制御周波数帯域に接近または一致することがある。この場合、共振が発生して、電力変換器への入力電圧すなわち系統電圧(電源電圧)が大きく振動して異常上昇する。この入力電圧の異常上昇は、電力変換器の電気部品を破壊する可能性がある。同じ交流系統に接続されている他の機器の電気部品へ悪影響を及ぼす可能性もある。
【0008】
本発明の実施形態の目的は、このような共振の発生を検出することができる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の電力変換装置は、三相交流系統と負荷との間の各系統ラインにパッシブフィルタを介して一端が接続され他端が相互接続された複数のクラスタを含み、これらクラスタのスイッチングにより交流電圧を生成し前記系統ラインへ出力する電力変換器と;前記各系統ラインから前記パッシブフィルタにかけての通電路と前記各クラスタの相互接続点との間の電圧を検出する電圧検出部と;前記電圧検出部で検出される電圧から前記スイッチングに伴う矩形波成分を除去する矩形波除去フィルタと;前記矩形波除去フィルタを経た電圧に基づいて前記交流系統の系統電圧の値を推定する推定手段と;前記各系統ラインに流れる負荷電流の値および前記推定手段の推定結果に基づき、前記負荷電流に含まれる高調波成分を抑制するための補償電圧を前記電力変換器で生成し出力させる制御手段と;前記推定手段の推定結果から前記各系統ラインの線間電圧を算出し、算出した線間電圧に含まれる共振成分を検出する検出手段と;を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図3は各実施形態における制御部の系統電圧推定に関する構成を示す図。
【
図4】
図4は各実施形態における制御部の要部の構成を示す図。
【
図6】
図6は各実施形態において共振現象がない場合の電圧波形を示す図。
【
図7】
図7は各実施形態において共振現象がある場合の電圧波形を示す図。
【
図8】
図8は第4実施形態における電圧波形および共振成分波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1]第1実施形態
本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、三相交流系統(商用三相交流電源、自家発電三相交流電源、配電系統などを含む)1の系統ライン(電源ライン)Lr,Ls,Ltに負荷たとえば空気調和機2が接続されている。
【0012】
空気調和機2は、ブリッジ接続した複数のダイオードにより交流系統1の系統電圧(交流電圧)Vr,Vs,Vtを全波整流する全波相整流回路(ダイオード整流器)3、この全波整流回路3の出力端に直流リアクトル4を介して接続された平滑用のコンデンサ5、このコンデンサ5の両端に接続されたインバータ6、このインバータ6の出力により動作する圧縮機モータ7を含む。インバータ6は、平滑用コンデンサ5の直流電圧をスイッチングにより所定周波数の交流電圧に変換し、その交流電圧を圧縮機モータ7の駆動電力として出力する。
【0013】
交流系統1と空気調和機2との間の系統ラインLr,Ls,Ltに、本実施形態の電力変換装置10が、空気調和機2と並列の関係に接続されている。電力変換装置10は、空気調和機2を負荷としたいわゆる高調波低減装置であって、必要に応じて据付け済みの空気調和機に対して追加で設置して接続できるオプション装置としてもよいし、空気調和機2の出荷前に空気調和機2に組み込んでもよい。
【0014】
電力変換装置10は、ノイズ除去用フィルタ11、変換器用リアクトル14r,14s,14t、このノイズ除去用フィルタ11および変換器用リアクトル14r,14s,14tから成るパッシブフィルタ、このパッシブフィルタを介して系統ラインLr,Ls,Ltに接続されたマルチレベル変換器(変換器)20を備える。
【0015】
さらに、電力変換装置10は、系統ラインLr,Ls,Ltにおけるノイズ除去用フィルタ11の接続位置より空気調和機2側の位置に配置され空気調和機2に接続された系統ラインLr,Lsのそれぞれに流れる電流(負荷電流)Ir,Isを検出する検出部15、ノイズ除去用フィルタ11とマルチレベル変換器20との間の通電路に流れる電流(補償電流)Icr,Icsを検出する検出部16、系統ラインLr,Ls,Ltのうち2つの例えば系統ラインLr,Lsからパッシブフィルタ(ノイズ除去用フィルタ11及び変換器用リアクトル14r,14s,14t)にかけての各通電路とマルチレベル変換器20における後述の相互接続点(中性点)Aとの間の電圧Vrn,Vsnを検出する電圧検出部17、この電圧検出部17で検出される電圧Vrn,Vsnからマルチレベル変換器20のスイッチングに伴う矩形波成分を除去する矩形波除去フィルタ18、および制御部30を含む。
【0016】
制御部30は、矩形波除去フィルタ18を経た電圧Vrn_f,Vsn_fとマルチレベル変換器20における相互接続点(中性点)Aの電位に重畳する零相電圧Voとに基づいて交流系統1の系統電圧Vr,Vs,Vtの値および位相θを推定し、この推定結果および検出部15,16の検出結果に応じて後述するマルチレベル変換器20のスイッチングを制御する。この制御に際し、負荷電流Itについては、検出部15で検出される負荷電流Ir,Isから算出する。補償電流Icrについては、検出部16で検出される2つの補償電流Icr,Icsから算出する。
【0017】
ノイズ除去用フィルタ11は、フィルタ用リアクトル12rとフィルタ用コンデンサ13rから成るLC回路、フィルタ用リアクトル12sとフィルタ用コンデンサ13sから成るLC回路、フィルタ用リアクトル12tとフィルタ用コンデンサ13tから成るLC回路を含む。フィルタ用リアクトル12r,12s,12tは、それぞれ電源ラインLr,Ls,Ltと変換器用リアクトル14r,14s,14tとの間に直列に接続される。一方、フィルタ用コンデンサ13r、13s、13tは、それぞれ一端がフィルタ用リアクトル12r,12s,12tと変換器用リアクトル14r,14s,14tの接続ラインに接続され、他端が共通接続される。
【0018】
マルチレベル変換器20は、系統ラインLr,Ls,Ltの相ごとに3つ以上のマルチレベルの直流電圧を選択的に生成し出力するクラスタ21r,21s,21tを含み、負荷である空気調和機2から生じて整流回路3に流れる電流の高調波成分を抑制するアクティブフィルタとして機能する。
【0019】
クラスタ21rは、それぞれがマルチレベルの直流電圧をスイッチングにより選択的に生成し出力する複数(3つ)の単位変換器(セル)22rを直列接続(カスケード接続)してなるいわゆる多直列変換器クラスタであり、各単位変換器22rの出力電圧(セル出力電圧)Vcrを足し合わせることにより交流電圧Vcr0を生成し出力する。同様に、クラスタ21sは、複数の単位変換器22sを直列接続してなり、各単位変換器22sの出力電圧Vcsを足し合わせることにより交流電圧Vcs0を生成し出力する。クラスタ21tは、複数の単位変換器22tを直列接続してなり、各単位変換器22tの出力電圧Vctを足し合わせることにより交流電圧Vct0を生成し出力する。出力される交流電圧Vcr0、Vcs0、Vct0は高調波を低減するための補償電圧で、後述する交流電圧指令値でもあり、交流系統1の系統電圧Vr,Vs,Vtとほぼ同じ正弦波に近い波形である。
【0020】
クラスタ21r,21sもクラスタ21tと同じ構成である。これらクラスタ21r,21s,21tの一端がフィルタ用リアクトル12r,12s,12tとノイズ除去用フィルタ11および変換器用リアクトル14r,14s,14tからなるパッシブフィルタを介して系統ラインLr,Ls,Ltに接続され、クラスタ21r,21s,21tの他端は中性点Aとして相互接続(スター結線)されている。本実施形態においてはクラスタ21r,21s,21tを構成する単位変換器22の数をそれぞれ3個として4レベルの電圧を出力可能としたが、各クラスタ21中の単位変換器22の数は2個以上あればよい。各クラスタ21中の単位変換器22の数を増やせばその分だけ出力電圧のレベル(段数)を増加することができる。
【0021】
クラスタ21r,21s,21tの代表例として、クラスタ21rの各単位変換器22rの構成を
図2に示す。
【0022】
各単位変換器22rは、一対の出力端子、それぞれ還流ダイオードDを有するブリッジ接続されたスイッチ素子Q1,Q2,Q3,Q4、これらスイッチ素子Q1~Q4を介して上記出力端子に接続された補償用コンデンサC、この補償用コンデンサCの電圧(コンデンサ電圧という)Vcを検出して制御部30に知らせる電圧検出部Cxを含む。直列接続されたスイッチ素子Q1,Q2の中間接続点が出力端の一方となり、スイッチ素子Q3,Q4の中間接続点が出力端の他方となる。最上段の単位変換器22rの出力端の一方は変換器用リアクトル14rに接続され、その最上段の単位変換器22rの他方の出力端は中段の単位変換器22rの出力端の一方に接続されている。そして、中段の単位変換器22rの出力端の他方は下段の単位変換器の出力端の一方に接続され、最下段の単位変換器22rの出力端の他方は他のクラスタの出力端の他方に共通接続されている。クラスタ21rは、このような各単位変換器22rのスイッチ素子Q1~Q4のスイッチング(オン,オフ)が制御部30により適宜に制御されることで、複数の通電路の選択的な形成により複数レベル(マルチレベル)の直流電圧を生成し出力する。
【0023】
制御部30は、交流系統1の系統電圧Vrとほぼ同じ波形の交流電圧をクラスタ21rで生成させるための交流電圧指令値Vcr0を設定し、後述するPWM制御器82(
図5)において行われる各単位変換器22rの個数と同じ個数で互いに位相が異なる三角波状の各キャリア信号の電圧レベルとその交流電圧指令値の電圧レベルとを比較するパルス幅変調(PWM)により、単位変換器22rのスイッチ素子Q1~Q4に対するスイッチング用の駆動信号(ゲート信号)を生成する。この駆動信号の生成に際し、制御部30は、各単位変換器22rにおいて互いに直列に配置されているスイッチ素子Q1,Q2のオンとオフの間、および互いに直列に配置されているスイッチ素子Q3,Q4のオンとオフの間に、それぞれ短絡防止のためにオフ状態となるデッドタイムを確保する。
【0024】
2レベル変調によるスイッチングの場合、各単位変換器22rはそれぞれ“正レベル”“負レベル”の2レベルの直流電圧を選択的に生成し出力する。3レベル変調によるスイッチングであれば、各単位変換器22rはそれぞれ“正レベル”“零レベル”“負レベル”の3レベルの直流電圧を選択的に生成し出力する。
【0025】
クラスタ21rの各単位変換器22rの構成およびスイッチングは、クラスタ21sの各単位変換器22sおよびクラスタ21tの各単位変換器22tの構成およびスイッチングについても同じである。すなわち、制御部30は、同様にクラスタ21s、21tに対しても同様にそれぞれの交流電圧指令値Vcs0、Vct0を設定し、それぞれのクラスタ21s、21tを構成する複数の単位変換器22s、22tのスイッチ素子Q1~Q4に対するスイッチング用の駆動信号(ゲート信号)を生成する。
【0026】
電圧検出部17は、2つの系統ラインLr,Lsから上記パッシブフィルタにかけての各通電路とマルチレベル変換器20における中性点Aとの間の電圧Vrn,Vsnを検出する。具体的には、電圧検出部17は、系統ラインLrからパッシブフィルタにかけての通電路と中性点Aとの間に接続された抵抗器R1,R2の直列回路、系統ラインLsからパッシブフィルタにかけての通電路と中性点Aとの間に接続された抵抗器R3,R4の直列回路を含み、抵抗器R1,R2の相互接続点と中性点Aとの間に生じる電圧Vrnを検出し、抵抗器R3.R4の相互接続点と中性点Aとの間に生じる電圧Vsnを検出する。
【0027】
矩形波除去フィルタ18は、電圧検出部17で検出される電圧Vrn,Vsnからマルチレベル変換器20のスイッチングに伴うPWM矩形波成分を除去するローパスフィルタ(LPF)である。この矩形波除去フィルタ18を経た電圧Vrn_f,Vsn_fが制御部30に供給される。
【0028】
制御部30は、矩形波除去フィルタ18を経た電圧Vrn_f,Vsn_fとマルチレベル変換器20における零相電圧Voとに基づき、かつマルチレベル変換器20の中性点Aの電位を基準電位として、系統電源1の系統電圧Vr,Vs,Vtの値および位相θを推定する。この推定手段として、制御部30は、
図3に示す位相同期回路(PLL回路)を備える。
【0029】
減算部51,52は、矩形波除去フィルタ18を経た電圧Vrn_f,Vsn_fから、後段の零相電圧算出部59で算出される零相電圧(中性点Aの電位に重畳する零相電圧)Voを減算することにより、交流の系統電圧Vr,Vsの値(瞬時値)を算出する。減算部53は、減算部51,52で算出した系統電圧Vr,Vsの値の合算値を符号反転した値を系統電圧Vtの値として計算する。
Vr=Vrn_f-Vo,Vs=Vsn_f-Vo,Vt=-(Vr+Vs)
マルチレベル変換器20がスイッチング動作を停止しているとき、系統電圧Vr,Vs,Vtの実効値もしくは振幅値の15%の値を有し、かつ系統電圧Vr,Vs,Vtの周波数の3倍の周波数を有する零相電圧Voが、マルチレベル変換器20の中性点Aの電位に重畳する。
【0030】
系統電圧Vr,Vs,Vtの値を捕らえることに加え、制御部30は、電源擾乱への耐性を向上させるため、かつ現時点の位相θを推定するため、座標変換部54、減算部55、PI制御部56、加算部57、積分部58、零相電圧算出部59を含む。
【0031】
座標変換部54は、上記捕らえた系統電圧Vr,Vs,Vtの値を後段の積分部58で求められる位相θによって座標変換することにより、上記で算出した系統電圧Vr,Vs,Vtの値に対応するd軸電圧Vdおよびのq軸電圧Vqを得る。減算部55は、座標変換部54で得たq軸電圧Vqと目標値“0”との偏差を捕らえる。PI制御部56は、減算部55で捕らえた偏差を入力とするPI制御により、上記捕らえた系統電圧Vr,Vs,Vtの周波数ωを求める。
【0032】
加算部57は、PI制御部56で求める周波数ωが運転開始時はまだ不明であることに対処し、PI制御部56で求めた周波数ωに対し、系統電源1の電源周波数に相当する基準周波数ωoを加える。積分部58は、加算部57を経た周波数ωを積分することにより、上記捕らえた系統電圧Vr,Vs,Vtの位相θを求める。
【0033】
零相電圧算出部59は、積分部58で求めた位相θおよび座標変換部54で得たd軸電圧Vdに基づき、中性点Aの電位に重畳する零相電圧Voを算出する。算出した零相電圧Voは減算部51,52にフィードバックされる。
【0034】
以上の構成により、系統電圧Vr,Vs,Vtの値および位相θを的確に監視することができる。これにより、制御部30の制御によるマルチレベル変換器20の適切な動作を継続することができる。系統電圧Vr,Vs,Vtの値および位相θの推定を、零相電圧Voが重畳する中性点Aの電位を基準に行うので、制御部30とマルチレベル変換器20との間の電気的な絶縁が不要であり、系統ラインLr,Ls,Ltの相互間の各々に電圧検出器を設けるよりも構成が簡素化できる。
【0035】
減算部51,52,53で捕らえた系統電圧Vr,Vs,Vtの値は、後述の共振検出部41に送られる。
【0036】
制御部30は、検出器15で検出される負荷電流Ir,Isおよびその負荷電流Ir,Isから算出した負荷電流Itから高調波成分を検出し、検出した高調波成分を抑制するために負荷電流Ir,Is,Itに加えるべき補償電流Icr,Ics,Ictの目標値を求め、その目標値と実際の補償電流Icr,Ics,Ict(検出器16の検出およびその検出結果から算出)との偏差Dに基づき、系統ラインLr,Ls,Ltに供給するために必要な補償電圧である交流電圧指令値Vcr0,Vcs0,Vct0を生成し、これをマルチレベル変換器20で生成し出力させる。この処理を実行する制御部30の要部の構成を
図4および
図5に示す。
図4および
図5における実際の処理では、補償電流Icr,Ics,Ictはdq変換されたd軸電流とq軸電流の形式で処理が実行される。
【0037】
まず、
図5の前段である
図4において、コンデンサ電圧制御部60は、高調波抑制制御中に各電圧検出部Cxで検出される各コンデンサCの両端間のコンデンサ電圧Vcの値が所定値となるように電圧調整用電流指令値を出力する。
【0038】
回転座標変換部61は、検出器15で検出される負荷電流Ir,Isおよびその負荷電流Ir,Isから算出した負荷電流Itの値を上記推定手段で捕らえた系統電圧Vr,Vs,Vtの位相θに基づいて回転座標変換(dq変換)することにより、負荷電流Ir,Is,Itに対応する回転座標軸上のd軸電流Id及びq軸電流Iqを求める。ローパスフィルタ(LPF)62は、回転座標変換部61で得られるd軸電流Idの低周波成分を抽出する。演算部63は、ローパスフィルタ62で抽出された低周波数成分を回転座標変換部61で得られるd軸電流Idから減算することにより、d軸電流Idの高調波成分Idhを検出する。
【0039】
演算部64は、演算部63で検出された高調波成分Idhを抑制するためにd軸電流Idに加えるべき補償電流のd軸指令値(目標値)Idrefを算出するとともに、算出した補償電流のd軸指令値Idrefに対し前述のコンデンサ電圧制御部60から供給される電圧調整用電流指令値を加える。
【0040】
回転座標変換部66は、検出器16で検出される補償電流値Icr,Icsおよびその補償電流値Icr,Icsから算出した補償電流値Ictの値を上記推定手段で捕らえた位相θに基づいて回転座標変換(dq変換)することにより、現時点で出力されている補償電流Icr,Ics,Ictに対応する回転座標軸上のd軸補償電流Icd及びq軸電流Icqを求める。演算部65は、演算部63で算出される補償電流のd軸指令値Idrefと回転座標変換部66で得られるd軸補償電流Icdとの偏差Dを求める。
【0041】
図4は、d軸電流に対する制御ブロック図であり、図示省略したが、q軸電流Iqに対して
図4と同様の処理を行うq軸電流対応の制御ブロックが別途設けられる。このq軸電流の処理では、回転座標変換部61、66からのq軸電流Iqおよびd軸補償電流Icqが供給されて、補償電流のq軸指令値Iqrefが出力される。ただし、このq軸電流に対する処理ブロックにおいて、コンデンサ電圧制御は無関係であるため、コンデンサ電圧制御部60は除かれている。補償電流のd軸指令値Idrefは、高調波成分Idhを抑制するための目標値であり、同様に補償電流のq軸指令値Iqrefは、高調波成分Iqhを抑制するための目標値である。
【0042】
続いて、
図5に示す電流制御部67は、演算部65で求められる偏差Dに対応する補償電流Icr,Ics,Ictを系統ラインLr,Ls,Ltに供給するためにマルチレベル変換器20から出力させるべき補償電圧である交流電圧指令値Vcr0,Vcs0,Vct0を算出するための元になるd軸補償電圧Vcdを出力する。図示省略したが、同様にq軸電流に関しても
図5と同様の処理が行われ、q軸の補償電流Vqが算出される。このd軸補償電圧Vcdとq軸補償電圧Vcqが入力されたdq軸逆変換器79によって三相の交流電圧指令値Vcr0,Vcs0,Vct0が得られる。続いて、この交流電圧指令値Vcr0,Vcs0,Vct0が入力されたPWM変換器82が、各クラスタ21がこの指令値に合致した電圧を出力するようにマルチレベル変換器20の各単位変換器22におけるスイッチ素子Q1~Q4のオン,オフ動作を行わせるパルス幅変調(PWM)信号を出力する。
【0043】
電流制御部67の詳細処理を、
図5を参照して説明する。電流制御部67は、演算部65で求められる偏差の電源周期Tに応じた周期的な誤差を低減するため、演算部65で得られる偏差Dを加算部71,変動保持部72,積分部(LPF)73のループ構成により上記推定手段で捕らえた系統電圧Vr,Vs,Vtの周期ごとに保持および積分しながら積算する。変動保持部72は、e
-ST、すなわち丁度電源周期の1周期前の偏差を出力する。このために電流制御部67は、少なくとも電源周期Tの一周期分の偏差を記憶するメモリを備える。この積算結果に乗算部74で繰返し制御用の所定の繰返しゲインKrcを乗算するとともに、続く加算部75においてこの乗算結果を演算部65から供給される偏差に加算する。そして、電流制御部67は、加算部75を経た偏差に対し、比例演算部76で比例ゲインKpを乗算するとともに並行して積分演算部77で積分ゲインKiの積分を行い、両者の結果を加算部78で加算することにより、演算部65で得られる偏差が零となるd軸電圧の操作量Vcd_lを求める。続く加算部81においてこのd軸電圧の操作量Vcd_lに基本電圧波形である電源周期に同期した電圧振幅、すなわち
図3のd軸電圧Vdを加算して、d軸の補償電圧Vcdを算出する。なお、図示しないq軸電圧の処理では、q軸電圧の操作量に
図3におけるq軸電圧Vqを加算して、q軸の補償電圧Vcqを算出する。
【0044】
演算部65で得られる偏差Dを系統電圧Vr,Vs,Vtの周期ごとに保持および積分しながら積算し、その積算結果に繰返しゲインKrcを乗算することで、偏差における周期的な誤差を低減するようにしている。
【0045】
図4に戻り、共振検出部41は、
図3に示す推定手段で捕らえた系統電圧Vr,Vs,Vtの値から系統ラインLr,Ls,Ltの線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´を算出し、算出した線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´に含まれる共振成分を検出する。具体的には、算出した線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´に含まれる共振成分をその線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´のピーク値と閾値との比較により検出する。この共振検出部41の検出結果が電流制御部67に送られる。
【0046】
電流制御部67は、共振検出部41で共振成分が検出された場合、すなわち共振発生を検出した場合に、上記算出した補償電圧Vcr0,Vcs0,Vct0を算出するために必要な操作量を低減する方向に調整する。操作量を低減することにより、共振を回避して抑制することができる。
【0047】
本実施形態における上述の操作量を低減するための具体的な仕組みを説明する。低減共振成分を検出すると共振検出部41は、
図5中の操作量低減部85にその旨の信号を送る。操作量低減部85は、この信号を受けて電流制御部67内に設定されている各種の制御ゲインを低減する。例えば、乗算部74の繰返しゲインKrc、比例演算部76の比例ゲインKp、積分演算部77の積分ゲインKiの内の1つもしくは複数の組み合わせ、さらにはそのすべてを低下させる。その低下量としては、例えば、乗算部74の繰返しゲインKrcを0にして繰り返し制御を無効にすることも含まれる。なお、図示しないq軸電流の処理においても
図4のd軸電流の処理と同様に各種制御ゲインを低減する。このような操作量の低減は、q軸電流の制御ゲインおよびd軸電流の制御ゲインのいずれか一方のみを低減してもよい。通常、q軸電流の処理の方が操作量が大きいため、q軸電流の制御ゲインの低減だけで共振状態から抜け出せる可能性が高い。このように操作量を低減すれば、高調波抑制における応答性が低下するが、応答性を低下させることで共振状態から逃れることができる。
【0048】
また、共振発生を検出した場合、電力変換装置10を停止させて、完全に共振状態を解消してもよい。電力変換装置10を停止させる方法は様々な方法が考えられるが、その一例としては、例えば、
図4,
図5中に破線で示すように共振検出部41の共振成分の検出信号をPWM制御器82に入力して、PWM制御器82の動作を停止させる。この場合、
図5中の操作量低減部85は不要である。高調波抑制装置10を停止させた場合、その後の高調波抑制装置10の運転復帰時に再度共振が発生する可能性が高いため、電源ライン側のインピーダンス(送配電配電設備)を見直したり、電流制御部67内に設定されている各種制御ゲインを変更したりすることが望ましい。
【0049】
共振現象が生じていない状況において、実際の線間電圧Vrs、電圧検出部17で検出される電圧Vrn,Vsn、矩形波除去フィルタ18を経た電圧Vrn_f,Vsn_f、共振検出部41で算出される線間電圧Vrs´がマルチレベル変換器20の動作開始の前後でどのように変化するかの例を
図6に示している。マルチレベル変換器20の動作開始後、電圧Vrn,VsnにPWM矩形波成分が重畳し、矩形波除去フィルタ18を経た電圧Vrn_f,Vsn_fにもある程度のPWM矩形波成分が残っている。
【0050】
共振現象が生じている状況において、実際の線間電圧Vrs、電圧検出部17で検出される電圧Vrn,Vsn、矩形波除去フィルタ18を経た電圧Vrn_f,Vsn_f、共振検出部41で算出される線間電圧Vrs´がマルチレベル変換器20の動作開始の前後でどのように変化するかの例を
図7に示している。マルチレベル変換器20の動作開始後、電圧Vrn,VsnにPWM矩形波成分と共振成分が重畳し、矩形波除去フィルタ18を経た電圧Vrn_f,Vsn_fにもある程度のPWM矩形波成分と共振成分が残っている。
【0051】
PWM矩形波成分を完全に除去しようとすると、矩形波除去フィルタ18のフィルタカットオフ周波数を十分に低く設計しなければならず、そうすると共振成分も減衰させることになり、共振の検出が困難になる。一方、矩形波除去フィルタ18のフィルタカットオフ周波数を高く設計すると、PWM矩形波成分および共振成分が共に重畳した状態で残り、PWM矩形波成分と共振成分の分離が難しくなり、共振成分を検出するための閾値の設定も難しくなる。
【0052】
これらの点を考慮し、矩形波除去フィルタ18を経た電圧Vrn_f,Vsn_fにはある程度のPWM矩形波成分が残ることは容認しつつ、その電圧Vrn_f,Vsn_fからの演算によって線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´を求めるようにしている。
【0053】
以上のように、系統ラインLr,Ls,Ltからパッシブフィルタにかけての通電路とマルチレベル変換器20の中性点Aとの間の電圧Vrn,Vsnを検出し、検出した電圧Vrn,Vsnからマルチレベル変換器20のスイッチングに伴うPWM矩形波成分を除去し、この除去後の電圧Vrn_f,Vsn_fとマルチレベル変換器20の中性点Aの電位に重畳する零相電圧Voとに基づいて系統電圧Vr,Vs,Vtの値を推定し、この推定結果からの演算によって系統ラインLr,Ls,Ltの線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´を求めることにより、系統ラインLr,Ls,Ltの実際の線間電圧Vrs,Vst,Vtrに含まれる共振成分を検出することができる。
【0054】
[2]第2実施形態
第1実施形態においては、共振検出部41の共振検出のための閾値を1つとしたが、第2実施形態では、共振検出部41の閾値として、第1閾値およびその第1閾値より大きい保護用の第2閾値が設定される。第1閾値、第2閾値は予め定めた固定値でもよいし、第1閾値については、マルチレベル変換器20が動作する前に当該共振検出部41で算出される線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´のピーク値に応じて、可変設定してもよい。さらに第2閾値を第1閾値と同様に可変設定してもよい。
【0055】
共振検出部41は、マルチレベル変換器20の動作中、算出した線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´のピーク値が第1閾値以上の場合に、その線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´に共振成分があると判定する。算出した線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´のピーク値が第1閾値を超えて保護用の第2閾値に達した場合、共振検出部41は、マルチレベル変換器20の保護が必要であると判定する。
【0056】
制御部30は、ピーク値が第1閾値と第2閾値の間にある場合、共振を抑制するべく、上述の交流電圧指令値Vcr0,Vcs0,Vct0を算出するための操作量を低減する制御を実行する。一方、共振検出部41でマルチレベル変換器20の保護が必要であると判定される、ピーク値が第2閾値を超えた場合、制御部30は、マルチレベル変換器20の安全を保つため、PWM制御器82の動作を停止させるなどしてマルチレベル変換器20の動作を停止する。このように第4実施形態では、操作量を低減する制御及びマルチレベル変換器20の動作を停止する制御の2つの保護動作を必要とするため、
図5に示すブロック図において、操作量低減部85と共振検出部41の出力(図中破線で示す)によってPWM動作を停止するPWM変換器82の両方を設ける必要がある。
他の構成および制御は第1実施形態と同じである
【0057】
[3]第3実施形態
第3実施形態として、共振検出部41は、算出した線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´のピーク値が一定時間内で閾値以上(または上記第1閾値)となる回数を計数し、計数した回数が設定値以上の場合に、その線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´に共振成分ありと判定する。
一時的な線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´の上昇による共振の誤検出を防ぐことができる。
【0058】
[4]第4実施形態
第4実施形態として、共振検出部41は、算出した線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´と、
図3に示す位相同期回路(PLL回路)の位相θに同期した理想的な三相交流電圧(正弦波)における線間電圧との差分を共振成分として検出する。
【0059】
共振検出部41で算出される線間電圧Vrs´と実際の線間電圧Vrsとの関係、その線間電圧Vrs´と線間電圧Vrsとの差分として検出される共振成分を
図8に示している。線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´のピーク値以外の部分に共振成分が重畳している場合でも、その共振成分を的確に捕らえることができる。
【0060】
[5]第5実施形態
第5実施形態として、零相電圧算出部59を用いないで共振を検出する方式を説明する。この例では、
図1における電圧検出部17が、三相のすべての電圧を検出する。すなわち、電圧検出部17は、3つの系統ラインLr,Ls,Ltからパッシブフィルタにかけての各通電路とマルチレベル変換器20における相互接続点(中性点)Aとの間の3つの電圧Vrn,Vsn,Vtnを検出する。そして、電圧検出部17の検出した電圧のすべてが矩形波フィルタ18に入力され、矩形波フィルタ18は3つの電圧Vrn_f,Vsn_f、Vtn_fを出力する。
【0061】
続いて、
図4中の共振検出部41には交流電圧Vr,Vs,Vtの代わりに、この3つの電圧Vrn_f,Vsn_f、Vtn_fが入力される。ここで、この3つの電圧Vrn_f,Vsn_f、Vtn_fの相互間の差は各相間の線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´に他ならない。すなわち、各相の電圧Vrn_f,Vsn_f、Vtn_fのすべてに対して同じように零相電圧が重畳していることからその差をとることで零相電圧の影響がなくなる。したがって、この方法でも第1実施形態と同様に適正な線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´を得ることができる。
【0062】
一方、位相θは、零相電圧検出部59を用いることなく、線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´のみを用いた位相同期回路(PLL回路)を形成して算出する。この結果、線間電圧Vrs´,Vst´,Vtr´の位相θと同期した理想的な三相交流電圧(正弦波)における線間電圧との差分を共振成分として検出することができるようになる。
【0063】
上記各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態および変形例は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1…系統電源、Lr,Ls,Lt…系統ライン、2…空気調和機(負荷)、10…電力変換装置、11…ノイズ除去用フィルタ、14r,14s,14t…変換器用リアクトル、17…電圧検出部、18…矩形波除去フィルタ、20…マルチレベル変換器(変換器)、21r,21s,21t…クラスタ、22…単位変換器(セル)、30…制御部、41…共振検出部、79…PWM変換器、85…操作量低減部。