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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104511
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】コーチング方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20240729BHJP
   G06N 20/10 20190101ALI20240729BHJP
【FI】
A63B69/00 C
G06N20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008760
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】東 侑之介
(57)【要約】
【課題】トレーニング対象者に対するコーチング方法を提供すること。
【解決手段】コーチング方法は、アクティビティ実施者の特性の指標である特性指標実績値をそれぞれ取得する指標実績値取得ステップと、複数の特性指標実績値に対して主成分分析を行い、主成分分析による主成分スコアについてクラスタリングされることによって分割された複数のグループのうち、トレーニング対象者が帰属する帰属グループとトレーニング対象者の目標とする目標グループとの間の超平面BPと、複数の特性指標実績値が示す主成分負荷ベクトルViと、の角度である指標角度をそれぞれ導出する指標角度導出ステップと、導出された複数の指標角度のうち、90度に近い角度をもたらす主成分負荷ベクトルViが示す指標を向上させるトレーニング内容を優先して提案する提案ステップとを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーニング対象者に対するコーチング方法であって、
アクティビティ実施者の特性の指標である特性指標実績値をそれぞれ取得する指標実績値取得ステップと、
複数の前記特性指標実績値に対して主成分分析を行い、前記主成分分析による主成分スコアについてクラスタリングされることによって分割された複数のグループのうち、前記トレーニング対象者が帰属する帰属グループと、前記トレーニング対象者の目標とする目標グループとの間の超平面と、複数の前記特性指標実績値が示す主成分負荷ベクトルと、の角度である指標角度をそれぞれ導出する指標角度導出ステップと、
導出された複数の前記指標角度のうち、90度に近い角度をもたらす前記主成分負荷ベクトルが示す前記指標を向上させるトレーニング内容を優先して提案する提案ステップと、を有する、
コーチング方法。
【請求項2】
前記超平面がサポートベクターマシーン手法により導出される、
請求項1に記載のコーチング方法。
【請求項3】
前記主成分負荷ベクトルのより長い特性指標を向上させる前記トレーニング内容を提案する、
請求項1又は請求項2に記載のコーチング方法。
【請求項4】
トレーニング結果に基づいて前記特性指標実績値を更新し、前記トレーニング内容を提案する、
請求項1又は請求項2に記載のコーチング方法。
【請求項5】
前記アクティビティ実施者に予め付与されたランクを取得し、
前記帰属グループに属する前記アクティビティ実施者の有するランクの平均に対して、グループに属する前記アクティビティ実施者のランクの平均がより高いグループを、前記目標グループとして抽出する、
請求項1又は請求項2に記載のコーチング方法。
【請求項6】
トレーニング対象者に対するコーチング内容を提案する情報処理装置であって、
アクティビティ実施者の特性の指標である特性指標実績値をそれぞれ取得する指標実績値取得部と、
複数の前記特性指標実績値に対して主成分分析を行い、前記主成分分析による主成分スコアについてクラスタリングされることによって分割された複数のグループのうち、前記トレーニング対象者が帰属する帰属グループと前記トレーニング対象者の目標とする目標グループとの間の超平面と、複数の前記特性指標実績値が示す主成分負荷ベクトルと、の角度である指標角度をそれぞれ導出する指標角度導出部と、
導出された複数の前記指標角度のうち、90度に近い角度をもたらす前記主成分負荷ベクトルが示す前記指標を向上させる前記トレーニング内容を優先して提案する提案部とを有する、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーチング方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばランナーが成績向上を図るためにアドバイスを提供する情報処理装置が知られている。このような情報処理装置の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の情報処理装置においては、腰につけた加速度・ジャイロセンサを使用してランニング中の動作に関する指標値を算出し、その良し悪しを測定するサービス及びコーチング技術が開発されている。
【0003】
上記技術では、ユーザのランニング中における複数の指標を算出し、その組み合わせでスコアリングを行い、改善を促すアドバイスを提示する。指標値は、測定された筋力、バランス能力、活動量、及び、持久力等が挙げられる。情報処理装置は、例えば、測定された複数の指標のうち、最も評価点が低い項目に対してアドバイス情報を与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-205133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記技術は、複数の指標の内、最も評価点の低いものをコーチング対象とするものであり、多様なランナーの統計的情報が十分に考慮されたものではない。そのアドバイスは、多様なランナーにそれぞれ最適なアドバイスを提供しているとは言えない。また、ランナーの実力は、定義によって様々であり、定義ごとに分布も異なってくると考えられる。ランナーを指導する上では、指導目的にあった実力定義と、その分布も考慮して指導対象の指標を決定することが望ましい。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、あらゆる多様なトレーニング対象者の目標に対応し、且つ、効率のよいコーチングを提案するコーチング方法及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様のトレーニング対象者に対するコーチング方法は、アクティビティ実施者の特性の指標である特性指標実績値をそれぞれ取得する指標実績値取得ステップと、複数の前記特性指標実績値に対して主成分分析を行い、前記主成分分析による主成分スコアについてクラスタリングされることによって分割された複数のグループのうち、前記トレーニング対象者が帰属する帰属グループと前記トレーニング対象者の目標とする目標グループとの間の超平面と、複数の前記特性指標実績値が示す主成分負荷ベクトルと、の角度である指標角度をそれぞれ導出する指標角度導出ステップと、導出された複数の前記指標角度のうち、90度に近い角度をもたらす前記主成分負荷ベクトルが示す前記指標を向上させるトレーニング内容を優先して提案する提案ステップとを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、あらゆる多様なユーザの目標に対応し、且つ、効率のよいコーチングを提案するコーチング方法及び情報処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るコーチングシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る身体特性指標測定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の機能的構成を示す機能ブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る身体特性指標実績値の表、データベースを示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る主成分分析により身体特性指標の検査値の主成分スコアが二次元平面に射影された例を示す散布図である。
図7】本発明の一実施形態に係る第3の身体特性指標の実績値とラントレーニング回数との関係を示す棒グラフである。
図8】本発明の一実施形態に係る第4の身体特性指標の実績値とラントレーニング回数との関係を示す棒グラフである。
図9】本発明の一実施形態に係る対象ユーザにおける第3の身体特性指標及び第4の身体特性指標の実績値の偏差値を示す表である。
図10】本発明の一実施形態に係る第2の身体特性指標及び第5の身体特性指標の実績値を示す表である。
図11】本発明の一実施形態に係る第2の身体特性指標及び第5の身体特性指標の実績値が標準化されたデータを示す表である。
図12】本発明の一実施形態に係る情報処理装置が実行するトレーニング内容提案処理の流れを説明するフローチャートである。
図13】本発明の一実施形態に係る英語能力指標実績値の表、データベースを示す図である。
図14】本発明の一実施形態に係る情報処理装置、特に英語能力向上を図る情報処理装置の機能的構成を示す機能ブロック図である。
図15】本発明の一実施形態に係る情報処理装置が実行する英語学習内容提案処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るコーチングシステム100について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付す。同一構成要素にて第1の構成要素、第2の構成要素のように区別する場合には、符号にa、b等が付加される。
【0011】
図1は、コーチングシステム100のハードウェア構成を示すブロック図である。コーチングシステム100は、情報処理装置1と身体特性指標測定装置2とを有する。情報処理装置1は、トレーニング対象者に対して、トレーニング内容を提案する情報処理装置1である。身体特性指標測定装置2は、身体の特性を表す身体特性指標を測定する装置である。情報処理装置1は、特定のアクティビティ、ここでは運動としてのランニングに関するトレーニング対象者について、対象者のランニングにおけるパフォーマンスを表す身体特性の指標を測定する身体特性指標測定装置2が測定した身体特性指標の測定値である身体特性指標実績値に基づいて、トレーニング内容を策定し、提案する。なお、本実施形態は、トレーニング対象者がランニングについてのコーチングを受ける場合を想定しているが、後述するように、本発明はランニング、ランニングを含む運動だけでなく、様々なアクティビティについてトレーニングを行う場合に適用することができる。
【0012】
図2は情報処理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示すように、情報処理装置1は、制御部10と、入出力部16と、通信手段17と、記憶部18と、を備える。制御部10は、プロセッサ11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インタフェース15とを有する。情報処理装置1は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な汎用のパーソナルコンピュータであってもよいし、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
【0013】
プロセッサ11は、各種演算及び処理を行う。プロセッサ11は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)等である。或いは、プロセッサ11は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。また、プロセッサ11は、これらにハードウェアアクセラレーター等を組み合わせたものであってもよい。
【0014】
プロセッサ11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。プロセッサ11は、ROM12に記録されているプログラム又はRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。プログラムの一部又は全部は、プロセッサ11の回路内に組み込まれていてもよい。
【0015】
バス14は入出力インタフェース15にも接続される。入出力インタフェース15には、入出力部16と、通信手段17と、記憶部18と、が接続されている。
【0016】
入出力部16は、有線又は無線により電気的に入出力インタフェース15に接続される。入出力部16は例えばキーボード及びマウス等の入力部と画像を表示するディスプレイ及び音声を拡声するスピーカ等の出力部とによって構成される。なお、入出力部16はタッチパネルのように表示機能と入力機能が一体的な構成であってもよい。
【0017】
通信手段17は、プロセッサ11が、本発明の実施形態に係る身体特性指標測定装置2と通信を行うための装置である。記憶部18は、コーチングシステム100全体を制御するプログラム、身体特性指標測定装置2の測定結果、ユーザ情報等を記憶する例えばハードディスクドライブ(HDD)、半導体ドライブ(SSD)等の記憶装置である。
【0018】
図2に示したハードウェア構成は、あくまで一例であり、特にこの構成に限定されるわけではない。情報処理装置1が記憶部18を有するのではなく、記憶部18が別途設けられる構成が採用されてもよい。
【0019】
図3は身体特性指標測定装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。身体特性指標測定装置2は、情報処理装置1と同様のハードウェア構成に加えて、測定部29を有する。測定部29は、例えば、図3には図示されない加速度センサ、ジャイロセンサ、GPS受信装置等のセンサ装置を有する。測定部29は、センサ装置の測定結果から身体特性指標、例えば、走行中のピッチ、走行中のストライド、走行中の上下動、走行中の蹴り出し時間など、を制御部20に出力する。また、測定部29は測定結果(加速度センサが測定した加速度の値等)を制御部20に出力し、制御部20において身体特性指標を導出するようにしてもよい。
【0020】
次に、本実施形態に係る情報処理装置1の機能的構成を説明する。図4は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能的構成を示す機能ブロック図である。図4に示す各機能は、図3に示す情報処理装置1の有するプロセッサ11等により実現される。
【0021】
情報処理装置1が備える制御部10は、図4に示す各処理部を有する。身体特性指標取得部101は、トレーニング対象者を含む運動実施者の身体特性を表し、トレーニングを提供するために有効な身体特性指標を取得する。トレーニング内容記憶部102は、身体特性指標を向上させるトレーニング内容を記憶する。このトレーニング内容は、情報処理装置1が創生するのではなく、過去の科学的トレーニングで培われた情報に基づき策定される。トレーニング内容は、例えば、図2に示した入出力部16あるいは通信手段17を通して情報処理装置1にもたらされ、記憶部18に記憶される。指標実績値取得部103は、トレーニング対象者を含む運動実施者の身体特性を表す各身体特性指標についての測定値である身体特性指標実績値を取得する。更に、指標実績値取得部103は、各運動実施者の運動分野における能力(運動レベル)を取得する。例えば、マラソン選手であれば過去の最短(最速)タイム、重量挙げの選手であれば最大成功重量、全日本選手権者か、全日本級か国体級か県レベルか、上級か中級か初級か、等が挙げられる。
【0022】
主成分分析部104は、運動実施者の身体特性指標実績値について主成分分析を行う。主成分分析部104は、n個の前記身体特性指標における前記身体特性指標実績値について主成分分析を行う。主成分分析部104は、上位m個(mは2以上の自然数)の主成分について、前記運動実施者の主成分スコアを抽出し、m次元空間(mはm<nなる自然数)に圧縮射影する。例えば、mは2である。この場合、主成分分析部104は、第1主成分と第2主成分とを導出する。第1主成分と第2主成分とにより、身体特性の全体概要が把握され得る。選択した主成分の寄与率を合算した累積寄与率が高いほど全体概要がより確度高く把握され得る。プロット部105は、例えば、第1主成分と第2主成分について、運動実施者の主成分スコアを抽出し、第1の主成分スコアと第2の主成分スコアとを軸として平面図にプロットする。この操作により散布図が作成される。超平面導出部106は、プロットされた座標点群に対して、事前に用意された属性、もしくはk平均法等のクラスタリングを実行する等で分類された複数グループ間の境界を決定する。例えば、超平面導出部106は、サポートベクターマシーン手法を適用し、プロットされた座標点群のグループ間境界を最適化し、超平面BPを導出する。なお、本実施形態では、上記の事前に用意された属性、もしくはk平均法等を用いて複数のグループに分類することをクラスタリングと称する。ここで上記の「属性」とは、人為的又は統計的な観点でランニングコーチ等の例えば指導者によって予め決められたランナーのランニングレベルとする。
【0023】
帰属グループ抽出部107は、トレーニング対象者の帰属する帰属グループを抽出する。帰属グループ抽出部107は、トレーニング対象者の主成分スコアに対応する点を平面図上で特定する。帰属グループ抽出部107は、特定された点が超平面導出部106により導出されたグループの何れに帰属するか、即ち、帰属グループを判定する。目標グループ抽出部108は、トレーニング対象者の目標とする目標グループを抽出する。超平面選択部109は、帰属グループと目標グループとの間の超平面BPである超越目標超平面BPTを選択する。指標角度導出部110は、超越目標超平面BPTと身体特性指標の主成分負荷ベクトルViとの角度である指標角度を求める。重点身体特性指標抽出部111は、指標角度が90度を含む所定の角度範囲となるような身体特性指標を重点身体特性指標として抽出する。トレーニング内容提案部112は、重点身体特性指標を向上させるトレーニング内容をトレーニング内容記憶部102に記憶されているトレーニング内容に基づいて提案する。トレーニング結果取得部113は、トレーニングの結果を取得する。
【0024】
次に、図5から図12を用いて、コーチングシステム100が、如何にトレーニング内容を提案するかについて説明する。説明に当たって、適宜、図1から図4を参照する。
【0025】
以下の説明においては、ランナーを例として、コーチングシステム100について説明する。情報処理装置1は、トレーニング対象者を含み、ランナーについて身体特性指標の測定値である身体特性指標実績値のデータベースを記憶部18に有する。身体特性指標実績値は、コーチングシステム100の有する身体特性指標測定装置2により測定され、記憶部18に記憶される。身体特性指標実績値は、身体特性指標測定装置2以外により測定され、入出力部16を通して記憶部18に記録されてもよい。図5は、トレーニング対象者を含むランナーについての身体特性指標実績値の表、即ちデータベースの例である。身体特性指標は、例えば、所定の距離を走るのに要する時間であるタイム、走行中のピッチ、走行中のストライド、走行中のストライドと身長との比、走行中の身体の上下動、走行中の身体の上下動と身長との比、走行中の腰の沈み込み、走行中の骨盤の左右傾き、走行中の骨盤の引き上げ、走行中の骨盤の回転、走行中の骨盤の後傾、走行中の骨盤回転タイミング、走行中の左右方向衝撃、走行中の蹴り出し時間、走行中の接地時間、走行中の接地時間率、走行中の接地衝撃、走行中の蹴り出し加速度、走行中の減速量、走行中のスティフネスのうちの何れか複数である。
【0026】
各ランナーの実力(以下「レベル」)を示す情報も同時に記憶部18に保存されている。レベルは例えば、初級から上級にクラス分けされる。このレベルは、例えば、特定距離(フルマラソン、ハーフマラソン、10km走、5km走など)のベスト記録、呼吸計測器などにより測定されたランニングエコノミー(ある速度においてどれだけ少ない酸素摂取量で走れるかを評価する指標値)、現実のランニング指導者によって定められたフォームの評価点などに基づく。レベル分けの方法については、ユーザの指定した方法で行うことができるものとする。例えば、「マラソン記録を伸ばしたい」なら、マラソンベスト記録、「きれいなフォームで走れるようになりたい」なら、あるランニング指導者のフォーム評価点などに基づいてレベルが策定される。また、ユーザによる入出力部16の操作によって、レベルを設定するようにしてもよい。
【0027】
各身体特性指標には、その身体特性指標を伸ばすためのトレーニング内容が対応付けられる。トレーニング内容記憶部102は、図5に示すように対応付けられたトレーニング内容を記憶する。ピッチを上げるには、下り坂を走行するトレーニングが例えば対応付けられている。上下動を小さくするには、股関節回りの筋肉増強が例えば対応付けられている。
【0028】
主成分分析部104は、例えば図5に示される身体特性指標の測定値について主成分分析を行い、低次元多様体へ射影する。身体特性指標の元々の次元数をnとし、射影後の次元数をm(n>=m>0)とする。同時に、各身体特性指標の主成分負荷量(各主成分軸に対する相関の度合い)も保存しておく。各身体特性指標をRi(i=1、2、・・、n)とする。Riに対応する各主成分負荷量をまとめて主成分負荷ベクトルVi=[x(i,1)、・・・、x(i,m)]とする。主成分負荷ベクトルViの要素は、各主成分とRiとの相関係数となっている。
【0029】
プロット部105は、各ランナーの身体特性指標の測定値に基づいて導出された主成分スコアをプロットする。図6は、nが6となる図5に示した測定結果に基づいて、m=2、即ち2次元平面に各ランナーの主成分スコアがプロットされた図である。横軸が第1主成分スコア、縦軸が第2主成分スコアを示す。
【0030】
超平面導出部106は、射影後のm次元空間にて、主成分スコアに対してグループ間の境界を決定する。例えば、超平面導出部106は、レベル分けされた各グループ間の境界である超平面BPを、サポートベクターマシーン手法を適用して導出する。図6は、m=2の2次元の例を示す。図6内の点線が超平面BPである。図5に示したレベルにより導かれたグループに基づいて超平面BPが導出されてもよい。ここで、サポートベクターマシーンの分類性能は100%でなくともよく、グループ間での重複は許すものとする。以下、求めた境界方向を表す単位ベクトルをE=[e1、・・・、em]とする。図6ではm=2であるので、E=[e1、e2]である。
【0031】
帰属グループ抽出部107は、トレーニング対象者の帰属する帰属グループを抽出する。図5に示したように、トレーニング対象者のレベルは中級である。図6で中級ランナーグループの中ほどの黒丸で示した点がトレーニング対象者の主成分スコアの座標点である。
【0032】
目標グループ抽出部108は、トレーニング対象者の能力向上のために、目標グループとして、上級ランナーのグループを抽出する。例えば、目標グループ抽出部108は、運動実施者に予め付与されたランクを取得する。次に、目標グループ抽出部108は、トレーニング対象者の帰属グループに属する運動実施者の有するランクの平均に対して、グループに属する運動実施者のランクの平均がより高いグループを目標グループとして抽出する。図6では、X軸の正方向に上級ランナーのグループが位置しており、このグループが抽出される。
【0033】
超平面選択部109は、トレーニング対象者の帰属グループと目標グループとの間に位置する超平面BPを選択する。図6では、上級グループと中級グループとの境界に位置する超平面BPが選択される。
【0034】
次に、指標角度導出部110は、各身体特性指標Riの主成分負荷ベクトルVi=[x(i,1), x(i,2)]と、超平面BPの境界方向を表すベクトルE=[e1、e2]とのなす角θiを求める。重点身体特性指標抽出部111は、各身体特性指標Riについて指標角度が90度を含む所定の角度範囲となるような身体特性指標を重点身体特性指標として抽出する。又は、重点身体特性指標抽出部111は、求めたθiが直交(90°)に近い順にソートし、最も直交に近いものが、グループを隔てる要因が最も高い身体特性指標と捉え、重点身体特性指標として指定する。又は、重点身体特性指標抽出部111は、θiが直交に近い順に身体特性指標Riを複数抽出し、その組み合わせを重点身体特性指標(コーチング対象指標)とする。或いは、θiが90度に近い身体特性指標Riを優先的に抽出してもよい。或いは、重点身体特性指標抽出部111は、θiが例えば70度以上110度以下の身体特性指標Riを抽出する。図6に示す例においては、超越目標超平面BPTとのなす角度θが90度に近い重点身体特性指標として、第3の身体特性指標R3と第4の身体特性指標R4とが抽出される。
【0035】
なお、上記の所定の角度範囲は、ユーザによる入出力部16の操作によって、角度の範囲を設定するようにしてもよい。また、この所定の角度範囲は、ユーザの現在のレベルに応じて範囲を変更するようにしてもよい。具体的には、トレーニング対象者の帰属グループが初級であり目標グループが中級である場合、角度範囲を例えば80度以上かつ100度以下(90度±10度)とし、帰属グループが中級であり目標グループが上級である場合、角度範囲を例えば85度以上かつ95度以下(90度±5度)とする。これによれば、初級から中級にレベルを向上させるためのトレーニングは比較的に容易であるため、角度範囲を広めに取って、複数の身体特性指標を提案することで、ユーザは任意のトレーニング内容を選択することができる。
【0036】
上記の角度範囲は一例であって、目標グループが中級である場合の角度範囲を90度±5度とし、目標グループが上級である場合の角度範囲を90度±10度としてもよい。
【0037】
トレーニング内容提案部112は、重点身体特性指標を向上させるトレーニング内容を前記トレーニング内容記憶部の情報に基づいて提案する。例えば、重点身体特性指標として選択された第4の身体特性指標R4は図5に示すように上下動である。図5で上下動に対応付けられているトレーニング内容である、股関節回りの筋肉増強がトレーニングメニューとして提案される。
【0038】
トレーニングの具体的方法については、各トレーニングメニューに関連付けられたアドバイス文言を情報処理装置1が自動的にトレーニング対象者に提示する、もしくは現実の指導者がトレーニングメニューについて解釈し、指導を行ってもよいとする。
【0039】
トレーニング結果取得部113がトレーニングの結果として、トレーニング対象者の身体特性指標の測定値を取得する。指導後にトレーニングが継続される場合には、トレーニング対象者の身体特性指標実績値が更新され、再び主成分分析部104が主成分分析を行い、トレーニング内容提案部112がトレーニング内容を適宜修正して提案する。
【0040】
ここで、図6に示すR3とR4のように角度が殆ど同じ身体特性指標が複数得られる可能性がある。この場合には、身体特性指標の選択、及びトレーニング内容の選択について、幾つかの例が挙げられる。以下にそれらの例について変形例として説明する。
【0041】
(変形例1)
複数の身体特性指標が選択され得る場合には、例えば、主成分負荷ベクトルViの長い方をトレーニング内容提案部112が優先的に選択するとしてもよい。超平面BPに対して影響が高いと考えられるからである。図6においては、より主成分負荷ベクトルViの長いR4が選択される。
【0042】
(変形例2)
複数の身体特性指標が選択され得る場合には、複数の身体特性指標を向上させるトレーニングを実施し、身体特性指標の測定結果の伸びが良好なものをトレーニング内容提案部112が重点身体特性指標として提案してもよい。図7はトレーニング回数と第3の身体特性指標R3の測定結果である指標実績値の伸びを示す。図8はトレーニング回数と第4の身体特性指標R4の指標実績値の伸びを示す。図7に示す第3の指標実績値の伸びと比較して、図8に示す第4の指標実績値には伸び悩みが見られる。トレーニング内容提案部112は、改善傾向が、より見える身体特性指標(R3)を優先してコーチング対象身体特性指標として選択する。
【0043】
(変形例3)
複数の身体特性指標が選択され得る場合には、トレーニング対象者の身体特性指標の測定値の偏差値に基づいてトレーニング内容提案部112が身体特性指標を選択してもよい。図9は、トレーニング対象者における第3の身体特性指標R3と第4の身体特性指標R4についての値の偏差値を示す。第3の身体特性指標R3においては偏差値が52である。第4の身体特性指標R4においては偏差値が43である。トレーニング内容提案部112は、偏差値の低い第4の身体特性指標R4をトレーニング対象として選択する。トレーニング内容提案部112は、伸びしろの高い第4の身体特性指標R4に基づいて、例えば、図5に示す上下動を小さくするためのトレーニングである、股関節回りの筋肉増強が有効として提案する。
【0044】
(変形例4)
複数の身体特性指標が選択され得る場合には、トレーニング対象者の目標とするグループ全体の指標実績値とトレーニング対象者の指標実績値とに基づいてトレーニング対象者の身体特性指標をトレーニング内容提案部112が策定してもよい。図10は、重点身体特性指標としてストライド(R2)と骨盤の回転量(R5)とが選択され得る場合を示す。図10に示すように、R2の指標の単位がcmであり、R5の指標の単位が度であり、身体特性指標の単位の種類(測定系)が全く異なるため、異なる単位系となる複数の身体特性指標同士を直接には比較できない。そのため、図11に示すように、身体特性指標の標準化が行われる。この標準化は身体特性指標の単位を揃えて比較するために行う。図11では、第2の身体特性指標R2と第5の身体特性指標R5とのどちらも0から100の値になるように処理される。そして、標準化後の差分(図11では標準化された対象ユーザの値と上級平均値との差分)が大きい第5の身体特性指標R5がトレーニング対象として選択される。
【0045】
(変形例5)
身体特性指標の選択方法として、他の例を説明する。例えば、図7図8に示すようにトレーニング回数と、ある身体特性指標の指標実績値の伸び(推移)に基づいて、身体特性指標の選択方法を変更したり、上記の所定の角度範囲を変更したりするようにしてもよい。具体的には、ある身体特性指標の指標実績値が所定回数のトレーニングを行った後においても向上しない(所定の閾値を超えない)場合、現在の「所定の角度範囲となる身体特性指標を抽出する方法」から「90度に近い順にソートし、最も90度に近いものを抽出する方法」に変更する。又は、ある身体特性指標の指標実績値が所定回数のトレーニングを行った後においても向上しない(所定の閾値を超えない)場合、現在の「85度以上かつ95度以下となる身体特性指標を抽出する方法」から「80度以上かつ100度以下となる身体特性指標を抽出する方法」に変更する。
【0046】
次に、情報処理装置1が実行するトレーニング内容提案処理について説明する。図12は、情報処理装置1が実行するトレーニング内容提案処理の流れの一例を説明するフローチャートである。処理がスタートすると(START)、情報処理装置1の身体特性指標取得部101が身体特性指標を取得する(ステップS101)。指標実績値取得部103は、トレーニング対象者を含む運動実施者の身体特性を表す各身体特性指標についての測定値である身体特性指標実績値を取得する(ステップS102)。主成分分析部104が、身体特性指標実績値について主成分分析を行う。主成分分析部104は、例えば、第1主成分と第2主成分とを導出する。プロット部105は、運動実施者の主成分スコアを抽出し、2次元に射影する(ステップS103)。超平面導出部106は、プロットされた座標点群に対してサポートベクターマシーン手法を適用する。超平面導出部106は、プロットされた座標点群を事前に用意された属性、もしくはk平均法等のクラスタリングを実行する等で分類された複数グループ間の境界を最適化し、超平面BPを導出する(ステップS104)。指標角度導出部110は、超平面BPと身体特性指標の主成分負荷ベクトルViとの角度である指標角度を導出する(ステップS105)。重点身体特性指標抽出部111は、指標角度に基づいて重点身体特性指標を抽出する(ステップS106)。トレーニング内容提案部112は、トレーニング内容を提案する(ステップS107)。トレーニングが続行される場合には(ステップS108:No)、トレーニング結果取得部113は、トレーニングの結果を取得する(ステップS109)。更に、処理は、ステップS103からのフローに戻る。トレーニングが終了される場合には(ステップS108:Yes)、処理が終了する(END)。
【0047】
上記の実施形態では、情報処理装置1と身体特性指標測定装置2との協働によって上記の処理が行われていたが、本発明はこれに限定されない。身体特性指標測定装置2の機能を情報処理装置1に取り込み、情報処理装置1単体で上記の処理を行ってもよい。また、情報処理装置1の機能を身体特性指標測定装置2に取り込み、身体特性指標測定装置2単体で上記の処理を行ってもよい。
【0048】
(変形例6)
以上の実施形態では、運動能力を向上させる例について説明してきた。英語能力を向上させるための学習内容を提案する例を変形例6として、図13から15を参照して説明する。図13は、英語能力指標実績値の表、データベースを示す図である。図14は、情報処理装置1、特に英語能力向上を図る情報処理装置1の機能的構成を示す機能ブロック図である。図15は、情報処理装置1が実行する英語学習内容提案処理の流れを説明するフローチャートである。
【0049】
情報処理装置1は、英語学習指導対象者を含み、英語学習者について英語能力指標の測定値である英語能力指標実績値のデータベースを記憶部18に有する。英語能力指標実績値は、コーチングシステム100の有する英語能力指標測定機能、具体的には例えばWEB形式による英語試験により測定され、記憶部18に記憶される。英語能力指標実績値は、ペーパーテスト或いは面接により評価され、入出力部16を通して記憶部18に記録されてもよい。図13は、英語学習指導対象者を含む英語学習者についての英語能力指標実績値の表、即ちデータベースの例である。英語能力指標は、例えば、リスニング力、英単語記憶量、英文法知識量、英熟語記憶量、英語長文読解力、スピーキング力、速読力、コミュニケーション力、定型文記憶量、派生語記憶量、類義語記憶量、表現力、プレゼンテーション力等のうちの何れか複数である。
【0050】
各英語学習者の実力(以下「レベル」)を示す情報も同時に記憶部18に保存されている。レベルは例えば、初級から上級にクラス分けされる。このレベルは、例えば、TOEICのような総合力判定テストの結果を用いて策定される。レベル分けの方法については、ユーザの指定した方法で行うことができるものとする。例えば、「ヒアリング力を伸ばしたい」ならネイティブスピーカとの会話テストの結果、「翻訳力を伸ばしたい」なら、和訳或いは英訳した文書に対する評価点などに基づいてレベルが策定される。また、ユーザによる入出力部16の操作によって、レベルを設定するようにしてもよい。
【0051】
各英語能力指標には、その英語能力指標を伸ばすための英語学習指導内容が対応付けられる。英語学習内容記憶部102aは、図13に示すように対応付けられた英語学習指導内容を記憶する。英語長文読解力を上げるには、英語長文を読む英語学習指導が例えば対応付けられている。英語長文としては、初級の場合には英語の絵本、中級の場合には中学3年程度の英語教科書、上級の場合には英字新聞が例えば挙げられる。
【0052】
主成分分析部104は、例えば図13に示される英語能力指標の測定値について主成分分析を行い、低次元多様体へ射影する。プロット部105は、各英語学習者の英語能力指標の測定値に基づいて導出された主成分スコアをプロットする。図13に示した測定結果に基づいて、m=2、即ち2次元平面に各英語学習者の主成分スコアがプロットされる。図6に示した結果と同様の結果が得られる。横軸が第1主成分スコア、縦軸が第2主成分スコアを示す。
【0053】
超平面導出部106は、射影後のm次元空間にて、主成分スコアに対してグループ間の境界を決定する。帰属グループ抽出部107は、英語学習指導対象者の帰属する帰属グループを抽出する。例えば、英語学習指導対象者のレベルは中級である。例えば、図6で中級英語学習者グループを示す中級グループの中ほどの黒丸で示した点が英語学習指導対象者の主成分スコアの座標点である。
【0054】
目標グループ抽出部108は、英語学習指導対象者の能力向上のために、目標グループとして、上級英語学習者のグループを抽出する。例えば、目標グループ抽出部108は、英語学習者に予め付与されたランクを取得する。次に、目標グループ抽出部108は、英語学習指導対象者の帰属グループに属する英語学習者の有するランクの平均に対して、グループに属する英語学習者のランクの平均がより高いグループを目標グループとして抽出する。図6では、X軸の正方向に上級英語学習者のグループ(上級グループ)が位置しており、このグループが抽出される。
【0055】
超平面選択部109は、英語学習指導対象者の帰属グループと目標グループとの間に位置する超平面BPを選択する。図6では、上級グループと中級グループとの境界に位置する超平面BPが選択される。
【0056】
次に、指標角度導出部110は、各英語能力指標Riの主成分負荷ベクトルVi=[x(i,1), x(i,2)]と、超平面BPの境界方向を表すベクトルE=[e1、e2]とのなす角θiを求める。重点英語能力指標抽出部111aは、各英語能力指標Riについて指標角度が90度を含む所定の角度範囲となるような英語能力指標を重点英語能力指標として抽出する。又は、重点英語能力指標抽出部111aは、求めたθiが直交(90°)に近い順にソートし、最も直交に近いものが、グループを隔てる要因が最も高い英語能力指標と捉え、重点英語能力指標として指定する。又は、重点英語能力指標抽出部111aは、θiが直交に近い順に英語能力指標Riを複数抽出し、その組み合わせを重点英語能力指標(コーチング対象指標)とする。或いは、重点英語能力指標抽出部111aは、θiが例えば70度以上110度以下の英語能力指標Riを抽出する。図6に示す例においては、超越目標超平面BPTとのなす角度θが90度に近い重点英語能力指標として、第3の英語能力指標R3と第4の英語能力指標R4とが抽出される。
【0057】
なお、上記の所定の角度範囲は、ユーザによる入出力部16の操作によって設定するようにしてもよい。また、この所定の角度範囲は、ユーザの現在のレベルに応じて変更するようにしてもよい。具体的には、英語学習指導対象者の帰属グループが初級であり目標グループが中級である場合、角度範囲は例えば80度以上かつ100度以下(90度±10度)とされる。帰属グループが中級であり目標グループが上級である場合、角度範囲は例えば85度以上かつ95度以下(90度±5度)とされる。これによれば、初級から中級にレベルを向上させるための英語学習指導は比較的に容易であるため、角度範囲を広めに取って、複数の英語能力指標を提案することで、ユーザは任意の英語学習指導内容を選択することができる。
【0058】
上記の角度範囲は一例であって、目標グループが中級である場合の角度範囲を90度±5度とし、目標グループが上級である場合の角度範囲を90度±10度としてもよい。
【0059】
英語学習内容提案部112aは、重点英語能力指標を向上させる英語学習指導内容を前記英語学習指導内容記憶部102aの情報に基づいて提案する。例えば、重点英語能力指標として選択された第4の英語能力指標R4は図13に示すように英熟語である。図13で英熟語に対応付けられている英語学習指導内容である、英熟語学習が英語学習指導メニューとして提案される。より具体的には、例えば、初級の場合には高校受験用の或いは英検2級用の英熟語記憶テキストの習得が提案され、中級の場合には大学受験用の或いは英検1級受検用の英熟語記憶テキストの習得が提案される。
【0060】
英語学習指導の具体的方法については、各英語学習指導メニューに関連付けられたアドバイス文言を情報処理装置1が自動的に英語学習指導対象者に提示する、もしくは現実の指導者が英語学習指導メニューについて解釈し、指導を行ってもよいとする。
【0061】
英語学習結果取得部113aが英語学習指導の結果として、英語学習指導対象者の英語能力指標の測定値を取得する。指導後に英語学習指導が継続される場合には、英語学習指導対象者の英語能力指標実績値が更新され、再び主成分分析部104が主成分分析を行い、英語学習内容提案部112aが英語学習指導内容を適宜修正して提案する。
【0062】
次に、情報処理装置1が実行する英語学習指導内容提案処理について説明する。図15は、情報処理装置1が実行する英語学習指導内容提案処理の流れの一例を説明するフローチャートである。処理がスタートすると(START)、情報処理装置1の英語能力指標取得部101aが英語能力指標を取得する(ステップS101a)。指標実績値取得部103は、英語学習指導対象者を含む英語学習者の英語能力を表す各英語能力指標についての測定値である英語能力指標実績値を取得する(ステップS102a)。主成分分析部104が、英語能力指標実績値について主成分分析を行う。主成分分析部104は、例えば、第1主成分と第2主成分とを導出する。プロット部105は、英語学習者の主成分スコアを抽出し、2次元に射影する(ステップS103)。超平面導出部106は、プロットされた座標点群に対してサポートベクターマシーン手法を適用し、プロットされた座標点群を事前に用意された属性、もしくはk平均法等のクラスタリングを実行する等で分類された複数グループ間の境界を最適化し、超平面BPを導出する(ステップS104)。指標角度導出部110は、超平面BPと英語能力指標の主成分負荷ベクトルViとの角度である指標角度を導出する(ステップS105)。重点英語能力指標抽出部111aは、指標角度に基づいて重点英語能力指標を抽出する(ステップS106a)。英語学習内容提案部112aは、英語学習内容を提案する(ステップS107a)。英語学習が続行される場合には(ステップS108a:No)、英語学習結果取得部113aは、英語学習の結果を取得する(ステップS109a)。更に、処理は、ステップS103からのフローに戻る。英語学習が終了される場合には(ステップS108a:Yes)、処理が終了する(END)。
【0063】
以上、実施形態によって説明したように、トレーニング対象者に対するトレーニング内容の提案方法は、アクティビティ実施者の特性の指標である特性指標実績値をそれぞれ取得する指標実績値取得ステップと、複数の特性指標実績値に対して主成分分析を行い、主成分分析による主成分スコアについてクラスタリングされることによって分割された複数のグループのうち、トレーニング対象者が帰属する帰属グループとトレーニング対象者の目標とする目標グループとの間の超平面BPと、複数の特性指標実績値が示す主成分負荷ベクトルViと、の角度である指標角度をそれぞれ導出する指標角度導出ステップと、導出された複数の指標角度のうち、90度に近い角度をもたらす主成分負荷ベクトルViが示す指標を向上させるトレーニング内容を優先して提案する提案ステップとを有する。
【0064】
このようにすれば、あらゆる多様なユーザの目標に対応し、且つ、効率のよいコーチングを提案することができる。
【0065】
トレーニング内容の提案方法において、超平面BPがサポートベクターマシーン手法により導出されてもよい。
【0066】
このようにすれば、的確な超平面BPが計算により求められる。求められた超平面BPに基づいて、的確に指標角度が導出され得る。
【0067】
トレーニング内容の提案方法は、主成分負荷ベクトルViのより長い特性指標を向上させるトレーニング内容を提案するとしてもよい。
【0068】
このようにすれば、よりレベル向上に資する項目についてのトレーニング内容を提案することができる。
【0069】
トレーニング結果に基づいて特性指標実績値を更新し、トレーニング内容を提案するようにしてもよい。
【0070】
このようにすれば、ユーザにおけるトレーニング結果をその後に提案するトレーニング内容に反映させることができる。
【0071】
アクティビティ実施者に予め付与されたランクを取得し、帰属グループに属するアクティビティ実施者の有するランクの平均に対して、グループに属するアクティビティ実施者のランクの平均がより高いグループを、目標グループとして抽出するとしてもよい。
【0072】
このようにすれば、ランクの平均がより高いグループを目標としてトレーニング内容を提案することができる。
【0073】
トレーニング対象者に対するトレーニング内容を提案する情報処理装置1は、アクティビティ実施者の特性の指標である特性指標実績値をそれぞれ取得する指標実績値取得部と、複数の特性指標実績値に対して主成分分析を行い、主成分分析による主成分スコアについてクラスタリングされることによって分割された複数のグループのうち、トレーニング対象者が帰属する帰属グループとトレーニング対象者の目標とする目標グループとの間の超平面BPと、複数の特性指標実績値が示す主成分負荷ベクトルViと、の角度である指標角度をそれぞれ導出する指標角度導出部と、導出された複数の指標角度のうち、90度に近い角度をもたらす主成分負荷ベクトルViが示す指標を向上させるトレーニング内容を優先して提案する提案部とを有する。
【0074】
このようにすれば、あらゆる多様なユーザの目標に対応し、且つ、効率のよいコーチングを提案することができる。また、より効率的にレベル向上を達成しうる項目についてのトレーニング内容を提案することができる。
【0075】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。以上の説明においては、主に、情報処理装置1について説明した。情報処理装置1の機能をコンピュータに実行させるプログラムは独立して使用可能であり、情報処理装置1の機能をコンピュータに実行させる
プログラムが行っているのと同様のステップに則ったコーチング方法を使用することが可能である。
【0076】
上記した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。換言すると、図4の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上記した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理装置1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図4の例に限定されない。
【0077】
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0078】
本実施形態における機能的構成は、演算処理を実行するプロセッサによって実現され、本実施形態に用いることが可能なプロセッサには、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを含む。
【0079】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0080】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されているROM12や図示されないハードディスク等で構成される。
【0081】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【0082】
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段などにより構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0083】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1情報処理装置、2身体特性指標測定装置、10制御部、11プロセッサ、12ROM、13RAM、14バス、15入出力インタフェース、16入出力部、17通信手段、18記憶部、20制御部、21プロセッサ、22ROM、23RAM、24バス、25入出力インタフェース、26入出力部、27通信手段、28記憶部、100コーチングシステム、101身体特性指標取得部、102トレーニング内容記憶部、103指標実績値取得部、104主成分分析部、105プロット部、106超平面導出部、107帰属グループ抽出部、108目標グループ抽出部、109超平面選択部、110指標角度導出部、111重点身体特性指標抽出部、112トレーニング内容提案部、113トレーニング結果取得部、BP超平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15