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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104515
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】コイル部品支持構造
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/06 20060101AFI20240729BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20240729BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20240729BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20240729BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H01F27/06
H01F27/30 160
H01F37/00 G
H01F27/32 140
H01F41/12 A
H01F37/00 J
H01F37/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008767
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】清水 宣和
(72)【発明者】
【氏名】金子 浩二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 充良
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 訓
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
5E059
【Fターム(参考)】
5E043FA06
5E044BB01
5E044CA03
5E059BB18
5E059BB22
5E059LL12
(57)【要約】
【課題】コストを抑制しながら性能を向上できるコイル部品支持構造を提供する。
【解決手段】コイル部品支持構造1において、コイル部品2が容器3に収容され、樹脂層5が容器3内に充填されて、コイル部品2を覆う。コイル部品2と第1の周壁部17との間の隙間のうち、樹脂層5が配置されている隙間GP1は、当該樹脂層5によって絶縁性が高められている。一方、容器3内には、樹脂層5の上面5aと上壁部18と第2の周壁部19とで空間SPが形成される。そのため、コイル部品2と第1の周壁部17との間の隙間のうち、樹脂層5が配置されていない箇所は、第2の周壁部19によって絶縁性が高められている。従って、コイル部品2と第1の周壁部17との間の隙間GP1,GP2は、樹脂層5が配置されている箇所にあわせた寸法にすることで樹脂量を抑制しつつ、樹脂層5が配置されていない隙間GP2でも絶縁性を確保することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部品と、
底壁部及び第1の周壁部を有し、前記コイル部品を収容する容器と、
前記容器内に充填されて、前記コイル部品を覆う樹脂層と、
前記コイル部品を上側から覆うキャップ部材と、を備え、
前記キャップ部材は、
前記コイル部品を介して前記底壁部と対向する上壁部と、
前記上壁部から前記底壁部へ向かって延び、前記第1の周壁部と前記コイル部品との間に配置される第2の周壁部と、を有し、
前記容器内には、前記樹脂層の上面と前記上壁部と前記第2の周壁部とで空間が形成される、コイル部品支持構造。
【請求項2】
前記容器の前記第1の周壁部と、前記キャップ部材の前記上壁部とが、互いに嵌合する嵌合構造を備える、請求項1に記載のコイル部品支持構造。
【請求項3】
前記キャップ部材には、前記空間から空気を抜く貫通部が形成されている、請求項1に記載のコイル部品支持構造。
【請求項4】
前記第2の周壁部は、少なくとも前記樹脂層の前記上面と接触する、請求項1に記載のコイル部品支持構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品を容器の内部で支持するコイル部品支持構造が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1において、容器の中には樹脂層が形成されている。これにより、容器の周壁部とコイル部品との間には、樹脂が充填されるような構造となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-92200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成を有するコイル部品支持構造では、容器の周壁部とコイル部品との間の隙間に樹脂層が形成されている樹脂絶縁の領域と、樹脂層が形成されていない空間絶縁の領域を有する場合がある。当該構造に対し、空間絶縁の距離を確保できる寸法に設定すると、部品サイズが大型化する事に加えて、樹脂絶縁の領域での樹脂量が多くなりすぎ樹脂材料コストがかかる上に部品重量が重くなるという問題がある。一方、樹脂絶縁の寸法にあわせると、樹脂層が形成されていない空間絶縁の領域において空間絶縁の距離が短くなり、絶縁性能が低下するという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、樹脂量を抑制する事で樹脂材料コスト及び部品重量を抑制しながら、部品サイズのダウンサイジングと絶縁性能の向上を可能とするコイル部品支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様におけるコイル部品支持構造は、コイル部品と、底壁部及び第1の周壁部を有し、コイル部品を収容する容器と、容器内に充填されて、コイル部品を覆う樹脂層と、コイル部品を上側から覆うキャップ部材と、を備え、キャップ部材は、コイル部品を介して底壁部と対向する上壁部と、上壁部から底壁部へ向かって延び、第1の周壁部とコイル部品との間に配置される第2の周壁部と、を有し、容器内には、樹脂層の上面と上壁部と第2の周壁部とで空間が形成される。
【0007】
コイル部品支持構造において、コイル部品が容器に収容され、樹脂層が容器内に充填されて、コイル部品を覆う。コイル部品と第1の周壁部との間の隙間のうち、樹脂層が配置されている箇所は、当該樹脂層によって絶縁性が高められている。一方、容器内には、樹脂層の上面と上壁部と第2の周壁部とで空間が形成される。そのため、コイル部品と第1の周壁部との間の隙間のうち、樹脂層が配置されていない箇所は、第2の周壁部によって絶縁性が高められている。従って、コイル部品と第1の周壁部との間の隙間は、樹脂層が配置されている箇所にあわせた寸法にすることで樹脂量を抑制しつつ、樹脂層が配置されていない箇所でも絶縁性を確保することができる。以上より、樹脂材料コスト及び部品重量を抑制しながらコイル部品支持構造のダウンサイジングと絶縁性能を向上できる。
【0008】
コイル部品支持構造は、容器の第1の周壁部と、キャップ部材の上壁部とが、互いに嵌合する嵌合構造を備えてよい。この場合、コイル部品と容器とを容易に位置決めすることができる。
【0009】
キャップ部材には、空間から空気を抜く貫通部が形成されていてよい。この場合、組立時に容器内の空気を容易に貫通部から抜くことができる。
【0010】
第2の周壁部は、少なくとも樹脂層の上面と接触してよい。この場合、樹脂層が形成されている部分に第2の周壁部が存在しないため、コイル部品と第1の周壁部との間の熱伝導性を向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂量を抑えて、樹脂材料コスト及び部品重量を抑制しながら、ダウンサイジングと絶縁性能を向上できるコイル部品支持構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態におけるコイル部品支持構造1の斜視図である。
図2図1のコイル部品支持構造1の展開斜視図である。
図3】コイル部品及びキャップ部材を下方から見た斜視図である。
図4】コイル部品支持構造の断面図である。
図5】変形例に係るコイル部品支持構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0014】
まず、図1図3を参照して、本実施形態におけるコイル部品支持構造1の概略構成を説明する。図1は、本実施形態におけるコイル部品支持構造1の斜視図である。図2は、図1のコイル部品支持構造1の展開斜視図である。図3は、コイル部品及びキャップ部材を下方から見た斜視図である。コイル部品支持構造1の中心線CLを設定する。中心線CLが延びる方向を上下方向とする。なお、ここでの「上」「下」は、説明のために便宜的に設定したものである。コイル部品支持構造1の流通時や使用時においては、コイル部品支持構造1の姿勢は本明細書における「上」「下」に限定されない。例えば、中心線CLが水平になるような姿勢でコイル部品支持構造1が使用されてもよい。
【0015】
コイル部品支持構造1は、コイル部品2と、容器3と、キャップ部材4と、を備える。
【0016】
図3に示すように、コイル部品2は、コア部11と、コイル部12A,12Bと、を備える。コア部11は、中空円柱状のコア部材をボビンで覆うことによって構成される。コア部11のボビン内部にあるコア部材は、例えば透磁率の高いフェライト、ナノ結晶磁性材料などの金属で形成されている。表面のボビンは、PBT(PolyButylene Terephthalate)などの電気絶縁性に優れた絶縁性樹脂材料で形成されている。コア部11のボビンは、コアを覆う中空円柱状の円環部11aと、コイル部12A,12Bを分離して絶縁を確保する絶縁壁11bと、を備える。
【0017】
コイル部12A,12Bは、コア部11のボビンの円環部11aに、例えばエナメル被覆処理が施された銅線などの導体を、導体を流れる電流によって生じる磁束がコアを鎖交する様に配置することによって形成される。コイル部12Aとコイル部12Bとは、絶縁壁11bによって仕切られている。2つのコイル部12A,12Bの巻方向は、互いのコイルに流れる電流によって発生する磁束が打ち消される様に互いに反対方向になっている。両コイル部12A,12Bに通電することで、大きなインダクタンスが得られる。通電により、コイル部12A,12Bからは、ジュール熱が発生する。各コイル部12A,12Bへの通電用に4本の端子部13が設けられている(図1及び図2参照)。例えば二本の端子部12がコイル部12Aへの通電用であり、他の二本の端子部12がコイル部12Bへの通電用である。
【0018】
図1及び図2に示すように、容器3は、コイル部品2を収容する部材である。容器3の材質は特に限定されないが、例えばアルミダイカストで成形されたアルミ系金属製であってよい。またはコイルが実装される装置自体の外囲を形成するベースプレートの様な構造体上に一体として設けられても良い。容器3は、コイル部品2に発生した熱量の除去に用いられる。容器3は、底壁部16と、第1の周壁部17と、を有する。底壁部16は、コイル部品2の下方において、中心線CLと直交するように平面状に広がる部分である。第1の周壁部17は、底壁部16から上方へ延び、中心線CLを中心軸とした円筒状の部分である。第1の周壁部17は、コイル部品2を外周側から取り囲むように配置される。これにより、コイル部品2は、容器内において、第1の周壁部17の内周面と底壁部16の上面によって形成される空間内に収容される。
【0019】
キャップ部材4は、コイル部品2を上側から覆う部材である。キャップ部材4の材質は特に限定されないが、例えばPBTなどの電気絶縁性樹脂材を用いた射出成形により作製されてよい。キャップ部材4は、上壁部18と、第2の周壁部19と、を備える。上壁部18は、コイル部品2を介して底壁部16と対向する部分である。第2の周壁部19は、上壁部18から底壁部16へ向かって延び、第1の周壁部17とコイル部品2との間に配置される部分である。上壁部18は、コイル部品2の上方において、中心線CLと直交するように平面状に広がる円板状の部分である。上壁部18は、第1の周壁部17の上端で支持される。コイル部品2の端子部13は、上壁部18を貫通して上方へ延びる。第2の周壁部19は、上壁部18から下方へ延び、中心線CLを中心軸とした円筒状の部分である。第2の周壁部19は、コイル部品2を外周側から取り囲むように配置される。これにより、コイル部品2は、第2の周壁部19の内周面と上壁部18の下面によって形成される空間内にてキャップ部材4で覆われる。
【0020】
コイル部品支持構造1は、容器3の第1の周壁部17と、キャップ部材4の上壁部18とが、互いに嵌合する嵌合構造20を備える。嵌合構造20は、突起部21と、突起部21が嵌合する溝部22と、を有する。本実施形態では、突起部21は、上壁部18の外周縁部から下方へ突出するように設けられる。溝部22は、第1の周壁部17の上端部に設けられる。なお、本実施形態では、180°のピッチで二つの嵌合構造20が設けられているが、一つであっても三つ以上であってもよい。
【0021】
キャップ部材4には、空間SP(図4参照)から空気を抜く貫通部23が形成されている。貫通部23は、上壁部18の中央位置付近において、上下方向に貫通している。これにより、貫通部23は、キャップ部材4内の空間SPと外部とを連通させることができる。
【0022】
次に、図4を参照して、コイル部品支持構造1の各部品の位置関係についてより詳細に説明する。
【0023】
図4に示すように、コイル部品2のコイル部12A,12Bの下端部は、底壁部16の上面から寸法H1だけ上方へ離間した位置に配置されている。コイル部品2のコイル部12A,12Bの上端部は、第1の周壁部17の上端よりも高い位置に配置されている。なお、第1の周壁部17の高さは寸法H3である。第2の周壁部19の下端部19aは、底壁部16の上面から寸法H2だけ上方へ離間した位置に配置されている。また、第2の周壁部19の下端部19aは、第1の周壁部17の上端部よりも低い位置に配置されている。各寸法は特に限定されないが、コイル部品2及び容器3及びキャップ部材4の各部品寸法及び組付けバラツキと、必要とされる絶縁耐量から決定される絶縁距離と、後述の放熱のために必要な樹脂充填量(高さ)と、その樹脂充填量(高さ)のバラツキを考慮して決定される。例えば寸法H1はコイル部品の高さ寸法に対して10%程度であってよく、寸法H2は50%程度であってよく、寸法H3は100%程度であってよい。
【0024】
コイル部品支持構造1は、容器3内に充填されて、コイル部品2を覆う樹脂層5を備える。樹脂層5は、ポッティングした樹脂の充填材が硬化することで形成されたものであってよい。例えば容器3内に樹脂層5となる充填材を注入し、充填材が硬化する前に、容器3内に図3に示すモジュールを挿入する。それにより、容器3内の空隙部、つまりコイル部品2、及びキャップ部材4の何れも存在しない空間に樹脂層5となる充填材が充填される。この結果、コイル部品2及びキャップ部材4によるモジュールは、樹脂層5により固定されると共に、コイル部品2から容器3へ、樹脂層5を介した熱伝達が可能となる。樹脂層5となる充填材としては、例えば流動性、絶縁性、及び熱伝導性に優れたシリコーン系のポッティング樹脂材が挙げられる。樹脂層5の上面5aと上壁部18とが上下方向に離間することで、容器3内に空間SPが形成される。なお、図4において、樹脂層5の上面5aは、ポッティング充填量の公差の範囲の上下限における下限位置に配置されている。下限値においては、第2の周壁部19は、少なくとも樹脂層5の上面5aと接触している(又は埋設している)ことが必要である。上限位置ULを仮想線で示す。
【0025】
上述のような構成により、第1の周壁部17の内周側の領域は、樹脂層5が充填された第1の領域E1と、樹脂層5の上面5aの上側の第2の領域E2と、を有する。第2の領域E2は、空間SPの一部を含む。空間SPの下面と第2の領域E2の下面(第1の領域E1と第2の領域E2の境界面)は一致する。本実施形態では、第1の周壁部17の内周面は上下方向に真っ直ぐに延びる面である。コイル部品2のコイル部12A、12Bの外周面も上下方向に真っ直ぐに延びる面である。従って、第1の領域E1におけるコイル部品2と第1の周壁部17との間の隙間GP1の寸法L1と、第2の領域E2におけるコイル部品2と第1の周壁部17との間の隙間GP2の寸法L2とは、同じになる。第1の領域E1における隙間GP1には樹脂層5が存在する。第2の領域E2における隙間GP2には樹脂層が存在しない。これらの寸法L1,L2が、各隙間GP1,GP2における絶縁距離となる。なお、絶縁距離には、空間距離、及び沿面距離が存在する。電気的絶縁を確保するためには、空間距離、及び沿面距離を共に確保する必要がある。ここでは、特に断らない限り、絶縁距離とは、空間距離、及び沿面距離のなかで電気的絶縁の確保にとってより重要となる方を指す意味で用いる。寸法L1,L2は特に限定されず、例えばMin.1.5mm等の最小値で規定されてよい。
【0026】
これに対し、容器3内には、樹脂層5の上面5aと上壁部18と第2の周壁部19とで空間SPが形成される。また、第2の周壁部19は、第2の領域E2において、コイル部品2と第1の周壁部17との間に介在するように配置される。第2の周壁部19は、少なくとも樹脂層5の上面5aと接触する。すなわち、第2の周壁部19の下端部19aは、樹脂層5内に埋設されるか、上面5aと同位置に配置される。本実施形態では、第2の周壁部19の下端部19aは、上面5aと同位置に配置される。これにより、第2の領域E2では、隙間GP2の上下方向における全域に、第2の周壁部19が配置される。
【0027】
次に、本実施形態に係るコイル部品支持構造1の作用・効果について説明する。
【0028】
まず、比較例に係るコイル部品支持構造について説明する。比較例1として、図4の構造から第2の周壁部19を省略した構造を挙げる。当該構造では、樹脂層5が配置されていない第2の領域E2における絶縁性を確保するために寸法L1,L2を大きくする(例えば2.5mm)必要がある。この場合、容器3のサイズが大きくなり、樹脂層5の樹脂の厚みが増えるため熱抵抗が大きくなり、同時に樹脂量も増えるためコストアップ及び部品重量も増大する。
【0029】
比較例2として、図4の構造から第2の周壁部19を省略し、第2の領域E2における第1の周壁部17を部分的に省略した構造を挙げる。当該構造では、第2の領域E2においてコイル部品2と第1の周壁部17が対向しないため、寸法L1を樹脂層5が配置されている箇所に合わせた寸法(例えば1.5mm)にすることができる。しかし、当該構造では、製造時に樹脂層5の充填材が第1の周壁部17からあふれ出てしまうという問題がある。また、この場合、樹脂層5の上面5aの幅が絶縁距離(=空間距離≒沿面距離)となる。よって比較例1と同様に絶縁性を確保するために寸法L1,L2を大きくする(例えば2.5mm)必要がある。
【0030】
比較例3として、図4の構造から第2の周壁部19を省略し、第1の領域E1の寸法L1を狭くして(例えば1.5mm)、第2の領域E2の寸法L2を広くする(例えば2.5mm)構造を挙げる。当該構造では、容器3のサイズを大きい方の寸法L2に合わせて大きく設計する必要があるため、部品が大型化するという問題がある。
【0031】
比較例4として、比較例1として、図4の構造から第2の周壁部19を省略し、コイル部品2を絶縁テープで巻いた構造を挙げる。当該構造では、寸法L1,L2を狭くする(例えば1.5mm)ことができるが、絶縁テープの熱抵抗が大きいため放熱の効果が低下する、結果としてコイルの温度が十分に下げる事が出来ない問題があり、また、絶縁テープの材料コスト及び絶縁テープを巻いて固定する作業コストがアップするという問題がある。
【0032】
これに対し、本実施形態に係るコイル部品支持構造1において、コイル部品2が容器3に収容され、樹脂層5が容器3内に充填されて、コイル部品2を覆う。コイル部品2と第1の周壁部17との間の隙間のうち、樹脂層5が配置されている隙間GP1は、当該樹脂層5によって絶縁性が高められている。一方、容器3内には、樹脂層5の上面5aと上壁部18と第2の周壁部19とで空間SPが形成される。そのため、コイル部品2と第1の周壁部17との間の隙間のうち、樹脂層5が配置されていない箇所は、第2の周壁部19によって絶縁性が高められている。従って、コイル部品2と第1の周壁部17との間の隙間GP1,GP2は、樹脂層5が配置されている箇所にあわせた寸法にすることで樹脂量を抑制しつつ、樹脂層5が配置されていない隙間GP2でも絶縁性を確保することができる。以上より、必要な放熱効果を確保可能な範囲で樹脂量を抑えて、樹脂材料コスト及び部品重量を抑制しながらコイル部品支持構造1のダウンサイジングと絶縁性能を向上できる。
【0033】
コイル部品支持構造1は、容器3の第1の周壁部17と、キャップ部材4の上壁部18とが、互いに嵌合する嵌合構造20を備えてよい。この場合、コイル部品2と容器3とを容易に位置決めすることができる。
【0034】
キャップ部材4には、空間SPから空気を抜く貫通部23が形成されていてよい。この場合、組立時に容器3内の空気を容易に貫通部23から抜くことができる。
【0035】
第2の周壁部19は、少なくとも樹脂層5の上面5aと接触してよい。この場合、樹脂層5が形成されている部分に第2の周壁部19が存在しないため、コイル部品2と第1の周壁部17との間の熱伝導性を向上できる。
【0036】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、コイル部品支持構造の各部品の形状や大きさは特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、コイル部品の形状は適宜変更してよいし、容器の形状は円形に限定されず多角形の形状を含めて適宜変更してよい。
【0038】
例えば、図5に示すように、第2の周壁部19の下端部19aと樹脂層5の上面5aとの間には重なり部OVがある条件で、上下方向の僅かな隙間が形成されてもよい。例えば、下端部19a及び上面5aに製造上避けられない凹凸や気泡や表面張力などが生じた場合、隙間が生じることもある。なお、図5(a)に示すように、下端部19aが上面5aの一部と接触してもよいし、図5(b)に示すように、重なり部OVがある条件で下端部19aが上面5aとが非接触となっていてもよい。
【0039】
[形態1]
コイル部品と、
底壁部及び第1の周壁部を有し、前記コイル部品を収容する容器と、
前記容器内に充填されて、前記コイル部品を覆う樹脂層と、
前記コイル部品を上側から覆うキャップ部材と、を備え、
前記キャップ部材は、
前記コイル部品を介して前記底壁部と対向する上壁部と、
前記上壁部から底壁部へ向かって延び、前記第1の周壁部と前記コイル部品との間に配置される第2の周壁部と、を有し、
前記容器内には、前記樹脂層の上面と前記上壁部と前記第2の周壁部とで空間が形成される、コイル部品支持構造。
[形態2]
前記容器の前記第1の周壁部と、前記キャップ部材の前記上壁部とが、互いに嵌合する嵌合構造を備える、形態1に記載のコイル部品支持構造。
[形態3]
前記キャップ部材には、前記空間から空気を抜く貫通部が形成されている、形態1又は2に記載のコイル部品支持構造。
[形態4]
前記第2の周壁部は、少なくとも前記樹脂層の前記上面と接触する、形態1~3の何れか一項に記載のコイル部品支持構造。
【符号の説明】
【0040】
1…コイル部品支持構造、2…コイル部品、3…容器、4…キャップ部材、5…樹脂層、16…底壁部、17…第1の周壁部、18…上壁部、19…第2の周壁部、20…嵌合構造、23…貫通部、SP…空間。
図1
図2
図3
図4
図5