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特開2024-104517エア圧検知装置及びブレーキシステム
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  • 特開-エア圧検知装置及びブレーキシステム 図1
  • 特開-エア圧検知装置及びブレーキシステム 図2
  • 特開-エア圧検知装置及びブレーキシステム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104517
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】エア圧検知装置及びブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/1761 20060101AFI20240729BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240729BHJP
   B60T 7/14 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B60T8/1761
B60T7/12 B
B60T7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008772
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 仁希
(72)【発明者】
【氏名】巻幡 智明
(72)【発明者】
【氏名】石黒 督浩
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA03
3D246DA01
3D246GA01
3D246GB01
3D246GC16
3D246HA02A
3D246HA45A
3D246HA51A
3D246LA02Z
3D246LA43Z
3D246MA28
(57)【要約】
【課題】EDSS(Emergency Driving Stop System)によるブレーキの作動時にABS(Anti-lock Brake System)制御を行わせること。
【解決手段】ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作に基づいて流入するエアとEDSSによるブレーキの作動に基づいて流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出するダブルチェックバルブ12から排出されたエアの圧力の検知を行うエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13は、当該検知に関する検知情報をABS制御用ECU(Electronic Control Unit)27に送信することでABS制御を行わせる。検知情報は、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報であってもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルの操作に基づいて流入するエアとEDSS(Emergency Driving Stop System)によるブレーキの作動に基づいて流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出するダブルチェックバルブから排出されたエアの圧力の検知を行うエア圧検知装置であって、
前記検知に関する検知情報をABS(Anti-lock Brake System)制御用ECU(Electronic Control Unit)に送信することでABS制御を行わせる、
エア圧検知装置。
【請求項2】
前記検知情報は、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報である、
請求項1に記載のエア圧検知装置。
【請求項3】
ブレーキペダルの操作に基づいて流入するエアとEDSS(Emergency Driving Stop System)によるブレーキの作動に基づいて流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出するダブルチェックバルブから排出されたエアの圧力の検知を行うエア圧検知装置と、ABS(Anti-lock Brake System)制御用ECU(Electronic Control Unit)とを含むブレーキシステムであって、
前記エア圧検知装置は、前記検知に関する検知情報を前記ABS制御用ECUに送信し、
前記ABS制御用ECUは、前記検知情報の受信に基づいてABS制御を行う、
ブレーキシステム。
【請求項4】
前記検知情報は、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報である、
請求項3に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記ダブルチェックバルブの上流にて、前記ブレーキペダルの操作に基づいて前記ダブルチェックバルブに流入するエアの圧力の検知である上流検知を行う上流エア圧検知装置をさらに含み、
前記上流エア圧検知装置は、前記ブレーキペダルの操作を作動判定基準にしている制御を行うシステムに前記上流検知に関する情報を送信することで当該制御を行わせる、
請求項3又は4に記載のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、EDSS(Emergency Driving Stop System)制御時にABS(Anti-lock Brake System)制御を作動可能なエア圧検知装置及びブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、走行中、ドライバーが急病などで安全に運転できない状態に陥ったことがカメラで監視され、又は、乗客や乗務員によって非常ブレーキスイッチが操作された場合に、自動ブレーキが作動し、車両が減速して停止するEDSSについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-149707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサービスブレーキ回路では、ブレーキペダルの操作に基づいて流れるエアの圧力の検知に基づいてABS制御が作動する。従来のサービスブレーキ回路にEDSS制御用のブレーキ回路を追加した場合、EDSSによるブレーキの作動では上記検知が行われず、ABS制御が作動しないという問題がある。そこで、EDSSによるブレーキの作動時にABS制御を行わせることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るエア圧検知装置は、ブレーキペダルの操作に基づいて流入するエアとEDSSによるブレーキの作動に基づいて流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出するダブルチェックバルブから排出されたエアの圧力の検知を行うエア圧検知装置であって、検知に関する検知情報をABS制御用ECU(Electronic Control Unit)に送信することでABS制御を行わせる。このような側面においては、EDSSによるブレーキの作動に基づいて流入するエアの圧力の検知が行われる。すなわち、EDSSによるブレーキの作動を検知することができる。そして、上述の検知に関する検知情報をABS制御用ECUに送信することで、ABS制御用ECUにABS制御を行わせる。これにより、EDSSによるブレーキの作動時にABS制御を行わせることができる。
【0006】
また、本開示の一側面に係るエア圧検知装置において、検知情報は、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報であってもよい。このような側面においては、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報をABS制御用ECUに送信することで、ABS制御用ECUにABS制御を行わせる。これにより、例えば、ブレーキがかかっていることを検知したことに基づいてABS制御をより確実に行うことができる。
【0007】
本開示の別の一側面に係るブレーキシステムは、ブレーキペダルの操作に基づいて流入するエアとEDSSによるブレーキの作動に基づいて流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出するダブルチェックバルブから排出されたエアの圧力の検知を行うエア圧検知装置と、ABS制御用ECUとを含むブレーキシステムであって、エア圧検知装置は、検知に関する検知情報をABS制御用ECUに送信し、ABS制御用ECUは、検知情報の受信に基づいてABS制御を行う。このような側面においては、エア圧検知装置により、EDSSによるブレーキの作動に基づいて流入するエアの圧力の検知が行われる。すなわち、エア圧検知装置により、EDSSによるブレーキの作動を検知することができる。そして、エア圧検知装置が上述の検知に関する検知情報をABS制御用ECUに送信し、ABS制御用ECUが検知情報の受信に基づいてABS制御を行う。これにより、EDSSによるブレーキの作動時にABS制御を行わせることができる。
【0008】
また、本開示の別の一側面に係るブレーキシステムにおいて、検知情報は、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報であってもよい。このような側面においては、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報をエア圧検知装置がABS制御用ECUに送信し、ABS制御用ECUが当該情報の受信に基づいてABS制御を行う。これにより、例えば、ブレーキがかかっていることを検知したことに基づいてABS制御をより確実に行うことができる。
【0009】
また、本開示の別の一側面に係るブレーキシステムは、ダブルチェックバルブの上流にて、ブレーキペダルの操作に基づいてダブルチェックバルブに流入するエアの圧力の検知である上流検知を行う上流エア圧検知装置をさらに含み、上流エア圧検知装置は、ブレーキペダルの操作を作動判定基準にしている制御を行うシステムに上流検知に関する情報を送信することで当該制御を行わせてもよい。このような側面においては、上流エア圧検知装置により、ブレーキペダルの操作に基づいて流入するエアの圧力の検知が行われる。すなわち、上流エア圧検知装置により、ブレーキペダルの操作を検知することができる。そして、上流エア圧検知装置が、ブレーキペダルの操作を作動判定基準にしている制御を行うシステムに上述の検知に関する情報を送信することで当該制御を行わせる。これにより、ブレーキペダルの操作時に、ブレーキペダルの操作を作動判定基準にしている制御をより確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一側面によれば、EDSSによるブレーキの作動時にABS制御を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来のサービスブレーキ回路の回路例を示す図である。
図2】実施形態に係るブレーキシステムの回路例を示す図である。
図3】実施形態に係るブレーキシステムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明における本開示での実施形態は、本発明の具体例であり、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限定されないものとする。
【0013】
図1は、車両に備えられた従来のサービスブレーキ回路の回路例を示す図である。図1に示すサービスブレーキ回路は、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20、エアタンク21、エア圧スイッチ(フロントエア回路用)22、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23、ブレーキブースター(フロント用)24、ブレーキブースター(リア用)25、ハイドロユニット(ABS制御用)26、ABS制御用ECU27、ブレーキフロント右28、ブレーキフロント左29、ブレーキリア右30及びブレーキリア左31を含んで構成される。なお、実施形態において「回路」は「配管回路」に置き換えてもよい。
【0014】
図1に示す通り、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20及びエアタンク21、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20及びエア圧スイッチ(フロントエア回路用)22、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20及びエア圧スイッチ(リアエア回路用)23、エア圧スイッチ(フロントエア回路用)22及びブレーキブースター(フロント用)24、並びに、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23及びブレーキブースター(リア用)25は、それぞれエア配管によって接続されている。エアタンク21のエアはエア配管に沿って、エアタンク21(上流)側から順に、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20及びエア圧スイッチ(フロントエア回路用)22を介してブレーキブースター(フロント用)24に流通する。同様に、エアタンク21からのエアはエア配管に沿って、エアタンク21(上流)側から順に、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20及びエア圧スイッチ(リアエア回路用)23を介してブレーキブースター(リア用)25に流通する。
【0015】
図1に示す通り、ブレーキブースター(フロント用)24及びハイドロユニット(ABS制御用)26、ブレーキブースター(リア用)25及びハイドロユニット(ABS制御用)26、ハイドロユニット(ABS制御用)26及びブレーキフロント右28、ハイドロユニット(ABS制御用)26及びブレーキフロント左29、ハイドロユニット(ABS制御用)26及びブレーキリア右30、並びに、ハイドロユニット(ABS制御用)26及びブレーキリア左31は、それぞれオイル配管によって接続されている。ブレーキブースター(フロント用)24からのオイルはオイル配管に沿って、ハイドロユニット(ABS制御用)26を介して、ブレーキフロント右28、ブレーキフロント左29、ブレーキリア右30及びブレーキリア左31のそれぞれに流通する。
【0016】
ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20は、車両のドライバーにより操作されると、バルブを開いて、エアタンク21に格納されている圧縮エアをブレーキブースター(フロント用)24及びブレーキブースター(リア用)25に供給する。
【0017】
エアタンク21は、圧縮エアを格納している。エアタンク21は、エア配管における圧縮エアの供給源である。
【0018】
エア圧スイッチ(フロントエア回路用)22は、車両のフロント側のエア回路(エア配管)におけるエア圧スイッチである。エア圧スイッチ(フロントエア回路用)22は、エア配管に沿ってブレーキペダル(ブレーキバルブ)20からブレーキブースター(フロント用)24へ流入するエアの圧力(エア圧、空気圧)の検知を行う。
【0019】
エア圧スイッチ(リアエア回路用)23は、車両のリア側のエア回路におけるエア圧スイッチである。エア圧スイッチ(リアエア回路用)23は、エア配管に沿ってブレーキペダル(ブレーキバルブ)20からブレーキブースター(リア用)25へ流入するエアの圧力の検知を行う。
【0020】
ブレーキブースター(フロント用)24は、エアタンク21から供給される圧縮エアによりオイルをオイル配管に沿ってブレーキフロント右28及びブレーキフロント左29に送ることで、対応するブレーキを作動させる。ブレーキブースター(フロント用)24は、エアタンク21からのエア圧をもとに、オイルの圧力(オイル圧、油圧)をどのくらいさらにかけるかを計算し、計算結果に基づくオイル圧を排出する。すなわち、ブレーキブースター(フロント用)24は、エア圧をオイル圧に変換して、オイル圧でフロント用ブレーキを作動させる。
【0021】
ブレーキブースター(リア用)25は、エアタンク21から供給される圧縮エアによりオイルをオイル配管に沿ってブレーキリア右30及びブレーキリア左31に送ることで、対応するブレーキを作動させる。ブレーキブースター(リア用)25は、エアタンク21からのエア圧をもとに、オイル圧をどのくらいさらにかけるかを計算し、計算結果に基づくオイル圧を排出する。すなわち、ブレーキブースター(リア用)25は、エア圧をオイル圧に変換して、オイル圧でリア用ブレーキを作動させる。
【0022】
ハイドロユニット(ABS制御用)26は、ABS作動時にオイル圧を制御して、車輪のロックを回避させる。
【0023】
ABS制御用ECU27は、ABSを制御するECUである。ABS制御用ECU27とエア圧スイッチ(フロントエア回路用)22及びエア圧スイッチ(リアエア回路用)23それぞれとは、電気回路で接続されている。ABS制御用ECU27は、エア圧スイッチ(フロントエア回路用)22又はエア圧スイッチ(リアエア回路用)23における検知に関する情報を電気回路を介して受信し、受信した情報に基づいてABSを制御する。
【0024】
ブレーキフロント右28、ブレーキフロント左29、ブレーキリア右30及びブレーキリア左31は、それぞれ車両の右前輪、左前輪、右後輪及び左後輪に取り付けられて、車輪の回転を制動する。
【0025】
図1に示すサービスブレーキ回路において、ドライバーによりブレーキペダル(ブレーキバルブ)20が踏まれると、バルブが開くことによりエアタンク21から供給されるエアが、エア圧スイッチ(フロントエア回路用)22又はエア圧スイッチ(リアエア回路用)23を通過し、ブレーキブースター(フロント用)24又はブレーキブースター(リア用)25へ流入する。続いて、ブレーキブースター(フロント用)24又はブレーキブースター(リア用)25により変換されたオイル圧が、ハイドロユニット(ABS制御用)26を通過し(ハイドロユニット(ABS制御用)26で制御して)、ブレーキフロント右28、ブレーキフロント左29、ブレーキリア右30又はブレーキリア左31へ流入することで、ブレーキが作動する(ブレーキがかかる)。
【0026】
図1に示すサービスブレーキ回路におけるABS制御は、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の下流にあるエア圧スイッチ(フロントエア回路用)22又はエア圧スイッチ(リアエア回路用)23が作動した(エア圧を検知した)ことをABS制御用ECU27が検知したことを、ABS作動(ハイドロユニット(ABS制御用)26を作動させる)の判定条件の一つとしている。
【0027】
ここで、従来のサービスブレーキ回路にEDSS制御用のブレーキ回路(EDSS制御用回路)を単純に追加する場合、課題として「EDSS制御時にABS制御が作動しない回路構成になる」(課題1)がある。さらに、付加的な課題として「既存の制御システムとの制御干渉が発生する」(課題2)がある。
【0028】
課題1について説明する。従来のサービスブレーキ回路にEDSS制御用回路を単純に追加する場合、図1に示すサービスブレーキ回路のうち、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23とブレーキブースター(リア用)25との間にEDSS制御用回路を追加することが考えられる。すなわち、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23の下流にEDSS制御用回路を追加する。この場合、EDSS制御時にABS制御が作動しない。なぜなら、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23がEDSS制御用回路の上流にある又は関係の無い流路にあるため、EDSSが作動したときにエア圧スイッチ(リアエア回路用)23が作動しないからである。ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20を踏んで初めてエアタンク21からのエアが下流に流れるため、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20を踏まない限り、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23は作動しない。上述の通り、ABS制御用ECU27はエア圧スイッチ(リアエア回路用)23が作動したことをABS作動の条件としているので、EDSS制御用回路を単純に追加しただけでは、ABS制御用ECU27はブレーキペダル(ブレーキバルブ)20が踏まれていないと誤認識し、ABS制御が作動しない。
【0029】
上記の課題1の説明において、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23とブレーキブースター(リア用)25との間にEDSS制御用回路を追加する場合について説明したが、エア圧スイッチ(フロントエア回路用)22とブレーキブースター(リア用)25との間にEDSS制御用回路を追加する場合についても同様であり、説明を省略する。
【0030】
付加的な課題2について説明する。課題1を解決するために、例えば、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23をEDSS制御時にも作動させる搭載位置を変更すると、既存の制御システムとの制御干渉が発生する。搭載位置の変更とは、図1に示すサービスブレーキ回路において、リアエア回路側にEDSS制御用回路を追加した後に、EDSS制御用回路の下流にエア圧スイッチ(リアエア回路用)23を移動させることである。既存の制御システムは、例えばブレーキオーバーライドシステムである。ブレーキオーバーライドシステムは、アクセルとブレーキを同時に踏んだときに、ブレーキの方が優先されるような判定を行うシステムである。EDSS制御用回路の下流にエア圧スイッチ(リアエア回路用)23を移動させると、EDSS制御時に、ブレーキオーバーライドシステムが(移動させた)エア圧スイッチ(リアエア回路用)23に基づいて作動するため、誤判定し、制御干渉が発生する。
【0031】
上記のように、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23をEDSS制御時に作動する位置(EDSS制御用回路の下流)に変更とすると、ドライバーによるブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作を作動判定基準にしている制御に対し、ドライバーがブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作をしていないEDSS制御中にも作動判定基準を満足してしまい、誤作動する。なぜなら、EDSS制御時に(移動させた)エア圧スイッチ(リアエア回路用)23が作動し、それによりブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作がなされたとみなし、作動判定基準を満足するからである。以上の通り、物理的な搭載要件(ブレーキオーバーライドシステムに干渉しないような搭載要件)の制約のため、EDSS作動中にエア圧スイッチ(リアエア回路用)23に圧力がかかるような回路構成にできない。
【0032】
上記の課題2の説明において、「エア圧スイッチ(リアエア回路用)23」を「エア圧スイッチ(フロントエア回路用)22」に置き換えると共に、「リアエア回路側にEDSS制御用回路を追加」を「フロントエア回路側にEDSS制御用回路を追加」に置き換えてもよい。
【0033】
図2は、実施形態に係るブレーキシステム1(ブレーキシステム)の回路例を示す図である。図2に示すブレーキシステム1は、図1に示す従来のサービスブレーキ回路に対して、減圧弁10、EDSS専用バルブ11、ダブルチェックバルブ12(ダブルチェックバルブ)及びエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13(エア圧検知装置)をさらに含んで構成したものである。減圧弁10、EDSS専用バルブ11及びダブルチェックバルブ12は、EDSS制御用回路である。すなわち、ブレーキシステム1は、従来のサービスブレーキ回路に対して、ダブルチェックバルブ12を介してEDSS制御用回路を追加すると共に、ダブルチェックバルブ12の下流にエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13を追加したものである。
【0034】
上述の通り、ブレーキシステム1は、エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13とABS制御用ECU27(ABS制御用ECU)とを含む。ブレーキシステム1は、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23(上流エア圧検知装置)をさらに含んでもよい。
【0035】
図2に示す通り、エアタンク21及び減圧弁10、減圧弁10及びEDSS専用バルブ11、並びに、EDSS専用バルブ11及びダブルチェックバルブ12は、それぞれエア配管によって接続されている。エア圧スイッチ(リアエア回路用)23からブレーキブースター(リア用)25への流路の間に、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23(上流)側から順に、ダブルチェックバルブ12及びエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13が接続されている。すなわち、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23及びダブルチェックバルブ12、ダブルチェックバルブ12及びエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13、並びにエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13及びブレーキブースター(リア用)25は、それぞれエア配管によって接続されている。
【0036】
エアタンク21のエアはエア配管に沿って、エアタンク21(上流)側から順に、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23、ダブルチェックバルブ12及びエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13を介してブレーキブースター(リア用)25に流通する。また、エアタンク21のエアはエア配管に沿って、エアタンク21(上流)側から順に、減圧弁10、EDSS専用バルブ11、ダブルチェックバルブ12及びエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13を介してブレーキブースター(リア用)25に流通する。すなわち、エアタンク21にエア配管を並列につないでいる。
【0037】
減圧弁10は、エアタンク21を単純に接続するとエア圧が強すぎるため、エアタンク21から流入されるエアを一定圧力に維持して(弱めて)EDSS専用バルブ11に流す。減圧弁10は、例えば、車両(路線バス)内で立っている乗客が転倒しないよう、又は、国の技術指針に沿うよう、ブレーキを制御する(弱くする)ために用いられる。
【0038】
EDSS専用バルブ11は、EDSSが作動したときに(不図示のEDSS制御ECUの制御に基づいて)バルブを開き、減圧弁10から流入するエアをダブルチェックバルブ12に流す。EDSS専用バルブ11により、狙ったタイミングでエアを流すことができる。
【0039】
ダブルチェックバルブ12は、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作に基づいて(エア圧スイッチ(リアエア回路用)23を介して)流入するエアとEDSSによるブレーキの作動に基づいて流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出する。より具体的には、ダブルチェックバルブ12は、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23から流入するエアとEDSS専用バルブ11から流入するエアとのうち圧力の高いエアをエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13に流す。ブレーキシステム1ではブレーキバルブ(ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20)及びEDSS専用バルブ11が含まれるためエア配管が二つの経路になり、強い方のエア圧を優先しなければいけないので強いエア圧を選別するためにダブルチェックバルブ12を含めている。
【0040】
エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13は、ダブルチェックバルブ12から排出されたエアの圧力の検知を行う。エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13は、(ダブルチェックバルブ12から排出されたエアの圧力の)検知に関する検知情報をABS制御用ECU27に送信する。検知情報は、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報であってもよい。エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13とABS制御用ECU27とは、電気回路で接続されており、ABS制御用ECU27は、エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13における検知に関する検知情報を電気回路を介して受信し、受信した情報に基づいてABSを制御する。エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13は、(ダブルチェックバルブ12から排出されたエアの圧力の)検知に関する検知情報をABS制御用ECU27に送信することで(ABS制御用ECU27に)ABS制御を行わせる。エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13は、どのくらいのエア圧がかかっているかを認識できるセンサであってもよい。
【0041】
エア圧スイッチ(リアエア回路用)23は、ダブルチェックバルブ12の上流にて、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作に基づいてダブルチェックバルブ12に流入するエアの圧力の検知である上流検知を行う。エア圧スイッチ(リアエア回路用)23は、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作を作動判定基準にしている制御を行うシステム(例えばブレーキオーバーライドシステム)に上流検知に関する情報を送信することで(当該システムに)当該制御を行わせてもよい。
【0042】
ABS制御用ECU27は、上述の通り、検知情報の受信に基づいてABS制御を行う。
【0043】
なお、上述のブレーキシステム1の説明において、減圧弁10、EDSS専用バルブ11、ダブルチェックバルブ12及びエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13をリアエア回路側に含める構成として説明したが、これに限るものではない。例えば、フロントエア回路側に含める構成としてもよいし、リアエア回路側及びフロントエア回路側の両方に含める構成としてもよい。実施形態では、部品数を抑えること、及び、国の技術指針に沿って、EDSSを使って車両を勾配路で停止させた後もできる限り車両を停止し続けることを考慮し、リアエア回路側に含める構成として説明した。
【0044】
ブレーキシステム1において、ダブルチェックバルブ12はブレーキペダル(ブレーキバルブ)20(エア圧スイッチ(リアエア回路用)23)から流入するエア圧と、EDSS制御用回路(EDSS専用バルブ11)から流入するエア圧とを選択する。例えば、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20が踏まれず、EDSS制御用回路からエア圧がかかった場合、エアタンク21からのエアは減圧弁10、EDSS専用バルブ11、ダブルチェックバルブ12、エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13を介してブレーキブースター(リア用)25に流れる。その場合、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23はエアの圧力を検知しない一方、エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13はエアの圧力を検知する。それにより、(ABS制御用ECU27にて)EDSS制御時にブレーキ作動状態判定が可能になる。
【0045】
図3は、実施形態に係るブレーキシステム1が実行する処理の一例を示すフローチャートである。まず、エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13が、ブレーキがかかっていること(ダブルチェックバルブ12から流入するエアの圧力があること)を検知する(ステップS1)。次に、エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13が、S1における検知した旨の情報をABS制御用ECU27に送信する(ステップS2)。次に、ABS制御用ECU27が、S2においてダブルチェックバルブ13から検知した旨の情報を受信したことに応じて、(通常通り)ABS制御を行う(ステップS3)。
【0046】
続いて、エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13及びブレーキシステム1の作用効果について説明する。
【0047】
エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13は、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作に基づいて流入するエアとEDSSによるブレーキの作動に基づいて流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出するダブルチェックバルブ12から排出されたエアの圧力の検知を行うエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13であって、検知に関する検知情報をABS制御用ECU27に送信することでABS制御を行わせる。このような側面においては、EDSSによるブレーキの作動に基づいて流入するエアの圧力の検知が行われる。すなわち、EDSSによるブレーキの作動を検知することができる。そして、上述の検知に関する検知情報をABS制御用ECU27に送信することで、ABS制御用ECU27にABS制御を行わせる。これにより、EDSSによるブレーキの作動時にABS制御を行わせることができる。
【0048】
検知情報は、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報であってもよい。このような側面においては、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報をABS制御用ECU27に送信することで、ABS制御用ECU27にABS制御を行わせる。これにより、例えば、ブレーキがかかっていることを検知したことに基づいてABS制御をより確実に行うことができる。
【0049】
ブレーキシステム1は、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作に基づいて流入するエアとEDSSによるブレーキの作動に基づいて流入するエアとのうち圧力の高いエアを排出するダブルチェックバルブ12から排出されたエアの圧力の検知を行うエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13と、ABS制御用ECU27とを含むブレーキシステム1であって、エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13は、検知に関する検知情報をABS制御用ECU27に送信し、ABS制御用ECU27は、検知情報の受信に基づいてABS制御を行う。このような側面においては、エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13により、EDSSによるブレーキの作動に基づいて流入するエアの圧力の検知が行われる。すなわち、エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13により、EDSSによるブレーキの作動を検知することができる。そして、エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13が上述の検知に関する検知情報をABS制御用ECU27に送信し、ABS制御用ECU27が検知情報の受信に基づいてABS制御を行う。これにより、EDSSによるブレーキの作動時にABS制御を行わせることができる。
【0050】
また、ブレーキシステム1において、検知情報は、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報であってもよい。このような側面においては、ブレーキがかかっていることを検知した旨の情報をエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13がABS制御用ECU27に送信し、ABS制御用ECU27が当該情報の受信に基づいてABS制御を行う。これにより、例えば、ブレーキがかかっていることを検知したことに基づいてABS制御をより確実に行うことができる。
【0051】
また、ブレーキシステム1は、ダブルチェックバルブ12の上流にて、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作に基づいてダブルチェックバルブ12に流入するエアの圧力の検知である上流検知を行うエア圧スイッチ(リアエア回路用)23をさらに含み、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23は、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作を作動判定基準にしている制御を行うシステム(ブレーキオーバーライドシステムなど)に上流検知に関する情報を送信することで当該制御を行わせてもよい。このような側面においては、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23により、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作に基づいて流入するエアの圧力の検知が行われる。すなわち、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23により、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作を検知することができる。そして、エア圧スイッチ(リアエア回路用)23が、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作を作動判定基準にしている制御を行うシステムに上述の検知に関する情報を送信することで当該制御を行わせる。これにより、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作時に、ブレーキペダル(ブレーキバルブ)20の操作を作動判定基準にしている制御をより確実に行うことができる。
【0052】
エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13及びブレーキシステム1によれば、既存制御に影響なくEDSS制御時にABS制御が作動可能な回路構成になった。エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13及びブレーキシステム1によれば、EDSS制御時にABS制御が作動できる。エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13及びブレーキシステム1によれば、EDSS制御時にエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13によってブレーキがかかっていることを検知し、その情報をABS制御用ECU27に送ることでEDSS制御時にABS制御が可能になった。エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13及びブレーキシステム1によれば、既存の制御システム(ブレーキオーバーライドシステムなど)に手を入れていないので、既存の制御システムとの制御干渉は発生しない。エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13及びブレーキシステム1は、ドライバー異常時対応システム(EDSS)における協調制御を行う。エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13及びブレーキシステム1によれば、安全性が向上する。
【0053】
ブレーキシステム1によれば、ABS制御用ECU27を設けたサービスブレーキ回路において、ダブルチェックバルブ12を介してEDSS制御用回路を接続し、ダブルチェックバルブ12の上流と下流にエア圧スイッチ(エア圧スイッチ(リアエア回路用)23及びエア圧スイッチ(ABS作動判定用)13)を設け、下流のエア圧スイッチ(エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13)からの信号を基に、ABS制御用ECU27でブレーキの作動状態を判定する。サービスブレーキ回路とEDSS制御用回路とを接続したダブルチェックバルブ12の上流と下流にエア圧スイッチを設け、下流エア圧スイッチ(エア圧スイッチ(ABS作動判定用)13)でABS作動条件を判定することで、EDSS制御中にブレーキ作動状態が判定できるため、EDSS制御時によるABS制御への干渉を抑制できる。
【符号の説明】
【0054】
1…ブレーキシステム、10…減圧弁、11…EDSS専用バルブ、12…ダブルチェックバルブ、13…エア圧スイッチ(ABS作動判定用)、20…ブレーキペダル(ブレーキバルブ)、21…エアタンク、22…エア圧スイッチ(フロントエア回路用)、23…エア圧スイッチ(リアエア回路用)、24…ブレーキブースター(フロント用)、25…ブレーキブースター(リア用)、26…ハイドロユニット(ABS制御用)、27…ABS制御用ECU、28…ブレーキフロント右、29…ブレーキフロント左、30…ブレーキリア右、31…ブレーキリア左。
図1
図2
図3