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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104524
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ブロック共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 297/00 20060101AFI20240729BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20240729BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C08F297/00
C08F2/00 A
C08F2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008785
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】吉満 隼人
【テーマコード(参考)】
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4J011AA01
4J011AA05
4J011AB02
4J011BA04
4J011BA06
4J011BB01
4J011BB02
4J011BB07
4J011HA03
4J011HB02
4J011HB13
4J011HB14
4J011HB22
4J026HA02
4J026HA28
4J026HA32
4J026HA39
4J026HB06
4J026HB28
4J026HB32
4J026HB39
4J026HB45
4J026HB48
4J026HB49
4J026HE01
(57)【要約】
【課題】省エネルギー化を図りつつ、良好な物性のイソオレフィン系重合体ブロック及びスチレン系重合体ブロックを含むブロック共重合体が得られるブロック共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、イソオレフィン系重合体及びスチレン系重合体を含むブロック共重合体の製造方法であって、イソオレフィン系化合物をアミン系化合物の存在下で重合する工程1、及び、工程1で得られたイソオレフィン系重合体とスチレン系化合物を、アミン系化合物の存在下で重合する工程2を含み、工程1及び工程2のいずれにおいても、重合反応溶液中のアミン系化合物の濃度が3~25mMであり、重合温度がマイナス60~マイナス40℃であることを特徴とするブロック共重合体の製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソオレフィン系重合体及びスチレン系重合体を含むブロック共重合体の製造方法であって、
イソオレフィン系化合物をアミン系化合物の存在下で重合する工程1、及び、
工程1で得られたイソオレフィン系重合体とスチレン系化合物を、アミン系化合物の存在下で重合する工程2を含み、
工程1及び工程2のいずれにおいても、重合反応溶液中のアミン系化合物の濃度が3~25mMであり、重合温度がマイナス60~マイナス40℃であることを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
【請求項2】
工程1において、重合反応溶液における塩化チタン(IV)の濃度はアミン系化合物の濃度より15~50mM高い、請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項3】
工程2において、重合反応溶液における塩化チタン(IV)の濃度はアミン系化合物の濃度より15~50mM高い、請求項1又は2に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
イソオレフィン系化合物がイソブチレンである、請求項1~3のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記ブロック共重合体がイソブチレン系重合体とスチレン重合体とのブロック共重合体である、請求項1~4のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記ブロック共重合体の数平均分子量が10,000~300,000である、請求項1~5のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.90以下である、請求項1~6のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項8】
工程2の重合反応終了時における重合反応溶液中のブロック共重合体の濃度が、10~34重量%である、請求項1~7のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項9】
工程1でのイソオレフィン系化合物の仕込み量が150mL以上である、請求項1~8のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項10】
工程2でのスチレン系化合物の仕込み量が30mL以上である、請求項1~9のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソオレフィン系化合物及びスチレン系化合物をモノマーとして用いたブロック共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソオレフィン系化合物及びスチレン系化合物をモノマーとして用いた共重合体として、例えば、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(以下、SIBSとも記す。)等が挙げられる。SIBSは、通常、イソブチレンをカチオン重合してポリイソブチレン(以下、PIBとも記す。)を製造した後、PIBの末端を重合開始点としてスチレンをカチオン重合することにより製造されるが、イソブチレンのカチオン重合では、活性種であるカチオンが不安定な状態であるため、β-プロトン脱離による連鎖移動等の副反応が起こりやすい。一方、重合温度が低い程、β-プロトン脱離反応は抑えられ、物性が良好なSIBSが得られることが知られている。例えば、特許文献1には、SIBSの製造時に、マイナス70℃でカチオン重合を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-349648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、マイナス70℃でカチオン重合するには、冷却設備のためのコストや冷却のために多量のエネルギーコストが必要となる問題があった。
【0005】
本発明は、従来の課題を解決するため、省エネルギー化を図りつつ、良好な物性のイソオレフィン系重合体ブロック及びスチレン系重合体ブロックを含むブロック共重合体が得られるブロック共重合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イソオレフィン系重合体及びスチレン系重合体を含むブロック共重合体の製造方法であって、イソオレフィン系化合物をアミン系化合物の存在下で重合する工程1、及び、工程1で得られたイソオレフィン系重合体とスチレン系化合物を、アミン系化合物の存在下で重合する工程2を含み、工程1及び工程2のいずれにおいても、重合反応溶液中のアミン系化合物の濃度が3~25mMであり、重合温度がマイナス60~マイナス40℃であることを特徴とするブロック共重合体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のブロック共重合体の製造方法によれば、省エネルギー化を図りつつ、良好な物性のイソオレフィン系重合体ブロック及びスチレン系重合体ブロックを含むブロック共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、イソオレフィン系重合体及びスチレン系重合体を含むブロック共重合体を製造する際に、イソオレフィン系化合物を重合する工程1、及び、工程1で得られたイソオレフィン系重合体とスチレン系化合物を重合する工程2のいずれにおいても、重合反応溶液におけるアミン系化合物の濃度を所定の範囲にしつつ、より高い温度、具体的には、マイナス60~マイナス40℃にて重合反応を行うことで、冷却設備のためのコストや重合反応に必要な冷却に必要な電気エネルギーを削減しつつ、良好な物性のイソオレフィン系重合体ブロック及びスチレン系重合体ブロックを含むブロック共重合体が得られることを見出した。
【0009】
本明細書において、数値範囲が「~」で示されている場合、該数値範囲は両端値(上限及び下限)を含む。例えば、「A~B」という数値範囲は、A及びBという両端値を含む範囲となり、「A以上B以下」と同じ範囲となる。また、本明細書において、数値範囲が複数記載されている場合、異なる数値範囲の上限及び下限を適宜組み合わせた数値範囲を含むものとする。
【0010】
(工程1)
工程1において、イソオレフィン系化合物をアミン系化合物の存在下で重合してイソオレフィン系重合体を得る。
【0011】
イソオレフィン系重合体は、イソオレフィン系化合物のみを重合した重合体でもよく、イソオレフィン系化合物と他のモノマーを共重合した重合体でもよい。具体的には、イソオレフィン系重合体は、バランスの取れた物性の観点から、イソオレフィン系化合物由来の単位を60モル%以上100モル%以下含むことが好ましく、70モル%以上100モル%以下含むことがより好ましく、80モル%以上100モル%以下含むことがさらに好ましく、90モル%以上100モル%以下含むことがさらにより好ましく、95モル%以上100モル%以下含むことがさらにより好ましく、100モル%からなるものでもよい。イソオレフィン系重合体は、他のモノマーを40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、又は5モル%以下含んでもよい。
【0012】
イソオレフィン系化合物とは、二重結合を一つのみ有しており、二重結合を形成する二つの炭素原子のうち一つの炭素原子に二つのアルキル基が結合している化合物、あるいは二重結合を一つのみ有しており、二重結合を形成する二つの炭素原子のそれぞれに二つのアルキル基が結合している化合物を意味する。
【0013】
イソオレフィン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭素数4~7のイソオレフィン(例えば、イソブチレン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン等)等が挙げられる。中でも、ポリイソオレフィンがSIBSの前駆体として好適に用いる観点から、イソオレフィン系化合物はイソブチレンであることが好ましい。イソオレフィン系化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0014】
他のモノマーとしては、カチオン重合可能なモノマーであれば特に制限はないが、例えば、脂肪族オレフィン系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、ジエン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、シラン系モノマー、ビニルカルバゾール、β-ピネン、アセナフチレン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、バランスの取れた物性の観点から、他のモノマーは、芳香族ビニル系モノマーを含まないことが望ましい。
【0015】
イソオレフィン系化合物を60モル%以上含むモノマー成分を重合することで、イソオレフィン系化合物由来の単位を60モル%以上100モル%以下含むイソオレフィン系重合体を得ることができる。モノマー成分は、イソオレフィン系化合物を70モル%以上100モル%以下含むことが好ましく、80モル%以上100モル%以下含むことがより好ましく、90モル%以上100モル%以下含むことがさらに好ましく、95モル%以上100モル%以下含むことがさらにより好ましく、100モル%からなるものでもよい。
【0016】
工程1において、重合反応溶液中のアミン系化合物の濃度は3~25mMである。アミン系化合物は、電子供与体として機能するものであり、カチオン重合に際して、成長炭素カチオンを安定化させることができる。工程1の重合反応溶液(重合用組成物とも称される。)におけるアミン系化合物の濃度は3~25mMであることにより、より高い温度、具体的には、マイナス60~マイナス40℃にて重合反応を行う場合でも、重合速度を適度に調整し、イソオレフィン系化合物のカチオン重合におけるβ-プロトン脱離反応を抑制することができ、工程2におけるイソオレフィン系重合体とスチレン系化合物との重合が良好になり、物性が良好なブロック共重合体が得られる。アミン系化合物の濃度が3mM未満であると、マイナス60~マイナス40℃にて重合反応を行う際、重合速度の調整作用が弱く、イソオレフィン系化合物のカチオン重合におけるβ-プロトン脱離反応を抑制することができない。アミン系化合物の濃度が25mMを超えると、重合速度が遅くなりすぎ、重合に時間がかかるため、エネルギーコストが増えてしまう。重合反応溶液におけるアミン系化合物の濃度は4~23mMであることが好ましく、5~20mMであることがより好ましい。
【0017】
本明細書において、工程1における重合反応溶液中のアミン系化合物の濃度は、イソオレフィン系化合物の重合反応終了時、すなわちスチレン系化合物を仕込む直前における「重合反応溶液の体積」と「アミン系化合物のモル数」に基づいて、下記数式(1)で算出する。下記数式(1)において、「重合反応溶液の体積」は、「イソオレフィン系化合物の重合反応終了時までに重合系に仕込まれた全ての物質(モノマー、触媒、溶媒などを含む。)の体積の総和」である。
【0018】
[数式1]
[工程1における重合反応溶液中のアミン系化合物の濃度]=「アミン系化合物のモル数」(mmol)/「重合反応溶液の体積」(L)
【0019】
アミン系化合物としては、例えば、ピリジン系化合物を好適に用いることができる。ピリジン系化合物としては、例えば、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、3、5-ジメチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、2-tert-ブチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン等が挙げられる。ピリジン系化合物以外のアミン系化合物としては、例えば、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1-メチルピロリジン、1-メチルピペリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N,N’,N’-テトラアセチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。アミン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
重合の際、本発明の効果を阻害しない範囲内で、アミン系化合物に加えて、エーテル系化合物、エステル系化合物、及びアミド系化合物等の他の電子供与体を用いてもよい。
【0021】
工程1において、カチオン重合触媒を電子供与体と併用してもよい。カチオン重合触媒として、特に限定されないが、ルイス酸を好適に用いることができる。ルイス酸としては、塩化チタン(IV)を用いることが好ましく、工程1の重合反応溶液において、塩化チタン(IV)の濃度がアミン系化合物の濃度より15~50mM高いことがより好ましい。これにより、マイナス60~マイナス40℃にて重合反応を行う場合でも、重合速度を適度に調整し、カチオン重合におけるβ-プロトン脱離反応をより効果的に抑制することができる。工程1において、塩化チタン(IV)の濃度は、アミン系化合物の濃度より16~45mM高いことがさらに好ましく、17~40mM高いことがさらにより好ましく、18~35mM高いことが特に好ましい。
【0022】
本明細書において、工程1における重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度は、イソオレフィン系化合物の重合反応終了時、すなわちスチレンを仕込む直前における「重合反応溶液の体積」と「塩化チタン(IV)のモル数」に基づいて、下記数式(2)で算出する。下記数式(2)において、「重合反応溶液の体積」は、「イソオレフィン系化合物の重合反応終了時までに重合系に仕込まれた全ての物質(モノマー、触媒、溶媒などを含む。)の体積の総和」である。
【0023】
[数式2]
[工程1における重合反応溶液中の塩化チタン(IV)濃度]=「塩化チタン(IV)のモル数」(mmol)/「重合反応溶液の体積」(L)
【0024】
工程1おいて、重合反応溶液は重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。
【0025】
【化1】
【0026】
但し、前記一般式(1)において、複数のR1は同一又は異なってもよく、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基を示し、R2は1価若しくは多価の芳香族炭化水素基又は1価若しくは多価の脂肪族炭化水素基を示し、X1はハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数1~6のアシロキシ基(アシルオキシ基)を示し、nは1~6の整数を表し、X1が複数存在する時、それらは同一であっても異なってもよい。
【0027】
上記一般式(1)で表される化合物は、重合開始剤として機能するものであり、ルイス酸、例えば塩化チタン(IV)の存在下で炭素カチオンを生成し、カチオン重合の開始点になると考えられる。
【0028】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン[C65C(CH32Cl]、1,4-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン[1,4-Cl(CH32CC64C(CH32Cl]、1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン[1,3-Cl(CH32CC64C(CH32Cl]、1,3,5-トリス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン[1,3,5-(ClC(CH32363]、1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)-5-(tert-ブチル)ベンゼン[1,3-(C(CH32Cl)2-5-(C(CH33)C63]等が挙げられる。中でも、1,4-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン及び1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)-5-(tert-ブチル)ベンゼンからなる群から選ばれる一つ以上が好ましく、1,4-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン及び1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼンからなる群から選ばれる一つ以上のビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼンがより好ましい。なお、ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α-クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2-クロロ-2-プロピル)ベンゼンあるいはジクミルクロライドとも称され、1,4-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼンはp-ジクミルクロライドとも称される。
【0029】
重合反応溶液は、さらに有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒としては、カチオン重合で一般的に使用される有機溶媒であれば特に限定されず、ハロゲン化炭化水素;脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素等の非ハロゲン化炭化水素;又はこれらの混合物等を用いることができる。
【0030】
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロエタン、ジクロロエタン、1-クロロプロパン、1-クロロ-2-メチルプロパン、1-クロロブタン(塩化ブチルとも称される。)、1-クロロ-2-メチルブタン、1-クロロ-3-メチルブタン、1-クロロ-2,2-ジメチルブタン、1-クロロ-3,3-ジメチルブタン、1-クロロ-2,3-ジメチルブタン、1-クロロペンタン、1-クロロ-2-メチルペンタン、1-クロロ-3-メチルペンタン、1-クロロ-4-メチルペンタン、1-クロロヘキサン、1-クロロ-2-メチルヘキサン、1-クロロ-3-メチルヘキサン、1-クロロ-4-メチルヘキサン、1-クロロ-5-メチルヘキサン、1-クロロヘプタン、1-クロロオクタン、2-クロロプロパン、2-クロロブタン、2-クロロペンタン、2-クロロヘキサン、2-クロロヘプタン、2-クロロオクタン、及びクロロベンゼン等が使用できる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0031】
脂肪族炭化水素としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、2-メチルプロパン、2-メチルブタン、2,3,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、パラフィン油等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0032】
芳香族系炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0033】
中でも、溶解性及び経済性の点から炭素数3~5のハロゲン化炭化水素と脂肪族炭化水素との混合有機溶媒を用いることが好ましく、1-クロロプロパン、1-クロロブタン、及び1-クロロペンタンからなる群から選択される1種以上のハロゲン化炭化水素と、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びエチルシクロヘキサンからなる群から選択される1種以上の非ハロゲン化炭化水素との組み合わせが溶解性、経済性、反応性、及び後処理工程での蒸留のしやすさの点から特に好ましい。
【0034】
有機溶媒は、重合体の溶液の粘度及び除熱の容易さを考慮して、得られる重合体の濃度が1~50重量%となるように設定するのが好ましく、1~30重量%となるように設定することがより好ましい。
【0035】
工程1は、例えば、上述したアミン系化合物、ルイス酸(好ましくは、塩化チタン(IV))、重合開始剤(例えば、一般式(1)で表される化合物)、及び有機溶媒を共存させた条件下で行うことができる。
【0036】
工程1おいて、エネルギーコスト削減の観点から、重合温度は、マイナス60~マイナス40℃の範囲であり、マイナス55~マイナス45℃であることが好ましい。具体的には、塩化チタン(IV)以外の重合に用いる各成分をマイナス60~マイナス40℃の範囲内の温度まで冷却した後に、塩化チタン(IV)を加えて重合を開始することができる。本明細書において、工程1の重合温度とは、イソオレフィン系化合物の重合反応開始時点での重合反応溶液の温度を意味する。
【0037】
工程1において、重合時間は特に限定されないが、例えば、生産性の観点で、1分~48時間が好ましく、10分~36時間がより好ましく、30分~24時間がさらに好ましい。
【0038】
(工程2)
工程2では、工程1で得られたイソオレフィン系重合体と、スチレン系化合物を重合し、イソオレフィン系重合体とスチレン系重合体を含むブロック共重合体を得る。具体的には、工程2では、工程1で得られたイソオレフィン系重合体を含む重合反応溶液に、スチレン系化合物を仕込みイソオレフィン系重合体とスチレン系化合物を重合する。工程2では、スチレンに加えて、必要に応じて、後述する他のモノマーを仕込んでもよい。
【0039】
スチレン系重合体は、スチレン系化合物のみを重合した重合体でもよく、スチレン系化合物と他のモノマーを共重合した重合体でもよい。具体的には、スチレン系重合体は、バランスの取れた物性の観点から、スチレン系化合物由来の単位を60モル%以上100モル%以下含むことが好ましく、70モル%以上100モル%以下含むことがより好ましく、80モル%以上100モル%以下含むことがさらに好ましく、90モル%以上100モル%以下含むことがさらにより好ましく、95モル%以上100モル%以下含むことがさらにより好ましく、100モル%からなるものでもよい。スチレン系重合体は、他のモノマーを40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、又は5モル%以下含んでもよい。
【0040】
スチレン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、アミノスチレン、ジビニルベンゼン、カルボキシスチレン、アセチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ニトロスチレン、スルホニルスチレン、及びα-メチルスチレン等が挙げられる。スチレン系化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。入手性及び汎用性の観点から、スチレン系化合物としてはスチレンを用いることが好ましい。
【0041】
他のモノマーとしては、カチオン重合可能なモノマーであれば特に制限はないが、例えば、オレフィン系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、ジエン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、シラン系モノマー、ビニルカルバゾール、β-ピネン、アセナフチレン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0042】
工程2において、重合反応溶液中のアミン系化合物の濃度は3~25mMである。工程2における重合反応溶液中のアミン系化合物は、工程1において、重合系に仕込まれたアミン系化合物に由来するものでもよい。必要に応じて、工程2において、重合系に追加でアミン系化合物を仕込んでもよい。工程2において、重合系に追加で仕込むアミン系化合物としては、工程1で説明したものを適宜用いることができる。工程2の重合反応溶液におけるアミン系化合物の濃度は3~25mMであることにより、より高い温度、具体的には、マイナス60~マイナス40℃にて重合反応を行う場合でも、重合速度を適度に調整し、イソブチレン系重合体とスチレン系化合物の重合が良好になり、物性が良好なブロック共重合体が得られる。アミン系化合物の濃度が3mM未満であると、マイナス60~マイナス40℃にて重合反応を行う際、スチレン系化合物が重合しにくい。アミン系化合物の濃度が25mMを超えると、重合速度が遅くなりすぎ、重合に時間がかかるため、エネルギーコストが増えてしまう。工程2の重合反応溶液におけるアミン系化合物の濃度は4~23mMであることが好ましく、5~20mMであることがより好ましい。
【0043】
本明細書において、工程2における重合反応溶液中のアミン系化合物の濃度は、スチレン系化合物の重合反応終了時の「重合反応溶液の体積」と「アミン系化合物のモル数」に基づいて、下記数式(3)で算出する。下記数式(3)において、「重合反応溶液の体積」は、「スチレン系化合物の重合反応終了時までに重合系に仕込まれた全ての物質(モノマー、触媒、溶媒などを含む。)の体積の総和」である。
【0044】
[数式3]
[工程2における重合反応溶液中のアミン系化合物の濃度]=「アミン系化合物のモル数」(mmol)/「重合反応溶液の体積」(L)
【0045】
工程2において、重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度がアミン系化合物の濃度より15~50mM高いことが好ましい。これにより、マイナス60~マイナス40℃にて重合反応を行う場合でも、重合速度を適度に調整し、イソオレフィン系重合体とカチオン系化合物を効果的に重合することができる。工程2において、塩化チタン(IV)の濃度はアミン系化合物の濃度より、16~45mM高いことがより好ましく、17~40mM高いことがさらに好ましく、18~35mMであることが特に好ましい。工程2における重合反応溶液中の塩化チタン(IV)は、工程1において、重合系に仕込まれた塩化チタン(IV)に由来するものでもよい。必要に応じて、工程2において、重合系に追加で塩化チタン(IV)を仕込んでもよい。
【0046】
本明細書において、工程2における重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度は、スチレン系化合物の重合反応終了時における「重合反応溶液の体積」と「塩化チタン(IV)のモル数」に基づいて、下記数式(4)で算出する。下記数式(4)において、「重合反応溶液の体積」は、「スチレン系化合物の重合反応終了時までに重合系に仕込まれた全ての物質(モノマー、触媒、溶媒などを含む。)の体積の総和」である。
【0047】
[数式4]
[工程2における重合反応溶液中の塩化チタン(IV)濃度]=「塩化チタン(IV)のモル数」(mmol)/「重合反応溶液の体積」(L)
【0048】
工程2は、例えば、アミン系化合物、ルイス酸(好ましくは、塩化チタン(IV))、重合開始剤(例えば、一般式(1)で表される化合物)、及び有機溶媒を共存させた条件下で行うことができる。
【0049】
工程2において、エネルギーコスト削減の観点から、重合温度はマイナス60~マイナス40℃であり、マイナス55~マイナス45℃であることが好ましい。本明細書において、工程2の重合温度とは、スチレン系化合物の重合反応開始時点での重合反応溶液の温度を意味する。
【0050】
工程2において、重合時間は特に限定されないが、例えば、生産性の観点で、1分~48時間が好ましく、10分~36時間がより好ましく、30分~24時間がさらに好ましい。
【0051】
工程2において、重合反応溶液に10~90℃の水等を混合することで重合を終了することができる。なお、工程2における重合反応溶液中の塩化チタン(IV)及びアミン系化合物の濃度を算出する際の重合反応溶液の体積は、重合を終了させるために添加した水等の体積は含まない。
【0052】
工程2において、重合反応終了時の重合反応溶液中のブロック共重合体の濃度は、通常、10~34重量%であってもよく、好ましくは13~32重量%、より好ましくは16~30重量%である。10重量%以上だとブロック共重合体の生産効率がよくなる。
【0053】
本明細書において、工程2における重合反応終了時の重合反応溶液中のブロック共重合体濃度は、スチレン系化合物の重合反応終了時における「重合反応溶液の重量」と「ブロック共重合体の重量」に基づいて、下記数式(5)で算出する。下記数式(5)において、「重合反応溶液の重量」は、「スチレン系化合物の重合反応終了時までに重合系に仕込まれた全ての物質(モノマー、触媒、溶媒などを含む。)の重量の総和」であり、「ブロック共重合体の重量」は、重合反応溶液中に仕込まれた個々のモノマーの重量と消費率の積から算出される。
【0054】
[数式5]
[工程2における重合反応終了時の重合反応溶液中のブロック共重合体濃度](重量%)=「ブロック共重合体の重量」(g)/「重合反応溶液の重量」(g)×100
【0055】
本発明の1以上の実施形態のブロック共重合体の製造方法は、イソオレフィン系化合物又はスチレン系化合物の比較的大きいスケールでの重合反応に適用することが望ましい。工程1でのイソオレフィン系化合物の仕込み量は150mL以上であることが好ましく、工程2でのスチレン系化合物の仕込み量は30mL以上であることが好ましい。イソオレフィン系化合物又はスチレン系化合物の仕込み量が多いと、ブロック共重合体の生産効率がよくなる。
【0056】
前記ブロック共重合体の製造方法は、工程1及び工程2に加えて、他の工程を含んでもよい。他の工程としては、例えば、重合工程で得られた重合体溶液(ドープ)から有機溶媒や水等を除去する工程等が挙げられる。ドープから有機溶媒や水を除去する方法は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法を選択して実施できる。除去した有機溶媒は、適宜精製してもよい。
【0057】
重合に使用される有機溶媒をより高度に精製する方法としては、蒸留による方法が挙げられる。蒸留であれば、沸点に差異のある不純物はほぼ除去することが可能である。蒸留はバッチ蒸留でもよいし連続蒸留でもよい。例えば、バッチ蒸留の場合には、蒸留初期の塔頂留出液を抜き出すことにより低沸点不純物を除去し、かつ蒸留後の塔底残存液を抜き出すことにより高沸点不純物を除去することができる。連続蒸留の場合には、除去対象不純物の種類によって、1本又は複数本の蒸留塔により不純物が除去可能である。
【0058】
前記ブロック共重合体は、イソオレフィン系重合体ブロック及びスチレン系重合体ブロックを含むものであればよく、汎用性の観点から、前記ブロック共重合体は、イソブチレン重合体ブロックとスチレン重合体ブロックからなるブロック共重合体であることが好ましい。また、前記ブロック共重合体のブロック構造は特に限定されず、ジブロック、トリブロック、テトラブロック、ペンタブロック等のいずれでもよい。
【0059】
前記ブロック共重合体の数平均分子量は、特に限定されないが、例えば力学物性と、流動性、加工性及び成形性を両立する観点から、10,000~300,000であることが好ましく、15,000~250,000であることがより好ましく、20,000~200,000であることがさらに好ましく、25,000~150,000であることがさらにより好ましい。
【0060】
前記ブロック共重合体は、分子量分布が狭い観点から、分子量分布(Mw/Mn)が1.90以下であることが好ましく、1.80以下であることがより好ましく、1.70以下であることがさらに好ましく、1.60以下であることがさらにより好ましく、1.50以下であることがさらにより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)の下限は、特に限定されないが、例えば、1.05以上であってもよい。本明細書において、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法にて測定算出することができる。
【0061】
前記ブロック共重合体の用途は特に限定されないが、通常、ガスバリア性、及び柔軟性に富み、成形加工性、ゴム的特性、機械的強度、及び圧縮永久歪み特性に優れていることから、例えば、以下のような用途に利用可能である。但し、上記で得られたブロック共重合体の用途は、下記用途には特に限定されない。
(1)改質剤:樹脂改質剤(熱可塑性樹脂の耐衝撃性改質剤、制振性改質剤、ガスバリア性改質剤、軟化剤等;熱硬化性樹脂の耐衝撃性改質剤、低応力化剤等)、アスファルト改質剤(道路用アスファルト改質剤、防水シート用アスファルト改質剤、橋梁床版用防水剤)、及びゴム改質剤。
(2)接着剤又は粘着剤:ホットメルト系接着剤、水系接着剤、溶剤系接着剤、及び粘着剤。
(3)粘度調整剤:オイル、潤滑油等に添加する粘度調整剤。
(4)コーティング剤:塗料等に利用するベースレジン、及びシーラント。
(5)塩化ビニル系樹脂代替等に使用される材料:ケーブル、コネクター及びプラグ等の電線被覆剤;人形等の玩具;養生用テープ;ロゴマーク(スポーツウェア及びスポーツシューズ用);キャリーバッグ;衣料用包装材;トラックの幌;農業用フィルム(ハウス栽培用);消しゴム;業務用エプロン(ターポリン);床材及び天井材等の建物の内装材;レインコート、雨傘、ショッピングバッグ、椅子及びソファー等の表皮材;ベルトや鞄等の表皮材;ガーデンホース、冷蔵庫のガスケット(パッキング)、洗濯機又は掃除機のフレキシブルホース;並びに自動車用内装材。
(6)制振材、防振材、又は緩衝材:制振材(とくにアルミ又は銅版とともに多層に張り合わせた制振材)、防振材、緩衝材(建築用途、自動車用途、フロアー制振用途、フローリング用途、遊戯器具用途、精密機器用途、及び電子機器用途に使用)、靴底、文具及び玩具用品のグリップ、ゴルフクラブ及びバット等の心材、テニスラケット及び卓球ラケット等のラバー、並びにテニスラケット及び卓球ラケット等のグリップ。
(7)防音材、又は吸音材:自動車内外装材、自動車天井材、鉄道車両用材、及び配管用材。
(8)シール材:ガスケット、建築用ガスケット、栓体、合わせガラス用及び被覆ガラス用のガラスシール材、包装材、シート、多層シート、容器及び多層容器等のガスバリア用材、土木シート、防水シート、包装輸送資材、シーラント、医療用薬栓、並びにシリンジガスケット。
(9)チューブ:衣料用チューブ、インク用チューブ、食品用チューブ。
(10)発泡体:ビーズ発泡、徐圧発泡又は押出発泡による発泡体(配管被覆材、合成木材、木粉系発泡体等)、並びに化学発泡又は物理発泡における発泡剤のキャリヤー。
(11)その他:衣料用途;難燃剤用途;キャップ;バッグ;ガスケット;ホース;シューズ;運動用具類;発泡性耐火シート、エアバッグカバー、バンパー、内装部品(インパネの表皮材、シフトノブ等の表皮材等)、ウェザーストリップ、ルーフモール、ドア下モール等の自動車用部材;電子レンジ用食品トレー、ポーション用食品容器、食品容器用ラミネートフィルム、食品容器用ポリスチレンシート(刺身容器、鶏卵パック等)、カップラーメン容器、ポリスチレン系網目状発泡体、冷菓カップ、透明飲料カップ等の食品容器;ICトレー;CD-ROMシャーシ;ホイールキャップ;弾性糸;不織布;ワイヤーハーネス;紙おむつのパックシート;2色成形用コンパウンド材;水中ゴーグル;パソコン用マウス;クッション;及びストッパー。
【実施例0062】
以下、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって本発明はなんら限定されるものではない。
【0063】
実施例及び比較例で用いた測定・評価方法は以下のとおりである。
【0064】
(分子量測定)
重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により測定・算出した。測定装置としては東ソー社製HLC-8320型GPCシステムを用いて、クロロホルムを移動相とし、カラム温度40℃の条件下にて、重合体濃度が1mg/mLである試料溶液を注入することで測定した。
【0065】
(破断強度)
JIS K 6251:2017に準拠して測定した。試験片として2.0mm厚にプレスした評価用シートをダンベルで7号型に打ち抜いたものを使用した。測定時の引張速度は500mm/分とした。なお、評価用シートは、ブロック共重合体を150℃に予熱したプレス機で加圧することによって得た。
【0066】
(実施例1)
重合容器として500mLのセパラブルフラスコを用い、重合容器内を窒素置換した後、重合容器内に、注射器を用いて塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒61mLを加えた。次に、重合容器をマイナス50℃のドライアイス/エキネン中に浸して冷却した後、イソブチレン20.0mL(0.212mol)を加えた。次に、2-メチルピリジン0.043g(0.46mmol)、及び塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒1.00mLを加えた。次に、15重量%のp-ジクミルクロライドの塩化ブチル溶液0.47g(p-ジクミルクロライド:0.30mmol)、及び塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒10mLを加えた。次に、重合容器中の溶液がマイナス50℃まで冷却されていることを確認した後、塩化チタン(IV)0.16mL(1.5mmol)を加えることで重合反応を開始させた。当該時点における重合容器中の溶液(重合反応溶液)の温度(すなわち、工程1における重合温度)はマイナス53℃であった。
反応中は随時重合反応溶液を抜き取り、イソブチレンの消費率をガスクロマトグラフィーにより測定した。塩化チタン(IV)を投入してから20分後に、さらに塩化チタン(IV)を0.16mL(1.5mmol)追加した。最初に塩化チタン(IV)を投入してから80分後には、イソブチレンの100モル%が消費されていることを確認した。当該時点における重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度(すなわち、工程1における重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度)は32.0mMであり、2-メチルピリジンの濃度(すなわち、工程1における重合反応溶液中の2-メチルピリジンの濃度)は5.0mMであった。
最初に塩化チタン(IV)を投入してから80分後にスチレン4.24mL(36.9mmol)を投入した。当該時点における重合反応溶液の温度(すなわち、工程2における重合温度)はマイナス51℃であった。スチレンを投入してから60分後に、投入したスチレンの92モル%が消費されていることをガスクロマトグラフィーにより確認した。当該時点における重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度(すなわち、工程2における重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度)は31.0mM、2-メチルピリジンの濃度(すなわち、工程2における重合反応溶液中の2-メチルピリジンの濃度)は4.7mMであった。また、当該時点における重合反応溶液中のブロック共重合体の濃度(すなわち、工程2におけるブロック共重合体の濃度)は20重量%であった。次に、重合反応溶液全体を、50℃に加熱している純水45mLに注ぎ込み、そこへ重合容器内を塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒14gで洗浄した洗浄液も加えた後、30分間激しく撹拌することで重合を停止させた。
重合停止後の重合反応溶液を純水2mLで洗浄した。さらに重合反応溶液を純水39mLで洗浄した。その後、加熱下に水及び有機溶媒等の揮発分を留去し、乾燥させることにより、イソブチレン重合体ブロック及びスチレン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(SIBS)を得た。
【0067】
(実施例2)
重合容器として1Lのセパラブルフラスコを用い、重合容器内を窒素置換した後、重合容器内に、注射器を用いて、塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒384mLを加えた。次に、重合容器を-50℃のドライアイス/エキネン中に浸して冷却した後、イソブチレン150.3mL(1.591mol)を加えた。次に、2-メチルピリジン0.34mL(3.4mmol)を加えた。次に、15重量%のp-ジクミルクロライドの塩化ブチル溶液3.53g(p-ジクミルクロライド:2.29mmol)、及び塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒10mLを加えた。次に、重合容器中の溶液が-50℃まで冷却されていることを確認した後、塩化チタン(IV)1.16mL(10.5mmol)を加えることで重合反応を開始させた。
反応中は随時重合反応溶液を抜き取り、イソブチレンの消費率をガスクロマトグラフィーにより測定した。塩化チタン(IV)を投入してから20分後に、さらに塩化チタン(IV)を1.16mL(10.5mmol)追加した。最初に塩化チタン(IV)を投入してから95分後には、イソブチレンの100モル%が消費されていることを確認した。最初に塩化チタン(IV)を投入してから95分後にスチレン31.9mL(0.277mol)を投入した。スチレンを投入してから60分後に、投入したスチレンの96モル%が消費されていることをガスクロマトグラフィーにより確認した。次に、重合反応溶液全体を、50℃に加熱している純水279mLに注ぎ込み、そこへ重合容器内を塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒80gで洗浄した洗浄液を加えた後、30分間激しく撹拌することで重合を停止させた。
工程1において、重合温度はマイナス50℃であり、重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度は39.0mM、かつ2-メチルピリジンの濃度は6.3mMであった。また、工程2において、重合温度はマイナス51℃であり、重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度は37.0mM、かつ2-メチルピリジンの濃度は6.0mMであり、ブロック共重合体の濃度は25重量%であった。
重合停止後の重合反応溶液を純水14mLで洗浄した。さらに重合溶液を純水242mLで洗浄した。その後、加熱下に水及び有機溶媒等の揮発分を留去し、乾燥させることにより、イソブチレン重合体ブロック及びスチレン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(SIBS)を得た。
【0068】
(実施例3)
2-メチルピリジンの使用量を0.111g(1.19mmol)とすること以外は実施例1と同様に重合反応を開始させた。
反応中は随時重合反応溶液を抜き取り、イソブチレンの消費率をガスクロマトグラフィーにより測定した。塩化チタン(IV)を投入してから20分後に、さらに塩化チタン(IV)を0.16mL(1.5mmol)追加した。最初に塩化チタン(IV)を投入してから135分後には、イソブチレンの99モル%が消費されていることを確認した。最初に塩化チタン(IV)を投入してから135分後にスチレン4.24mL(36.9mmol)を投入した。スチレンを投入してから300分後に、投入したスチレンの91モル%が消費されていることをガスクロマトグラフィーにより確認した。次に、重合反応溶液全体を、50℃に加熱している純水45mLに注ぎ込み、そこへ重合容器内を塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒14gで洗浄した洗浄液を加えた後、30分間激しく撹拌することで重合を停止させた。
工程1において、重合温度はマイナス51℃であり、重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度は32.0mM、かつ2-メチルピリジンの濃度は13.0mMであった。また、工程2において、重合温度はマイナス53℃であり、重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度は31.0mM、かつ2-メチルピリジンの濃度は12.0mMであり、ブロック共重合体の濃度は20重量%であった。
重合停止後の重合反応溶液を純水2mLで洗浄した。さらに重合溶液を純水39mLで洗浄した。その後、加熱下に水及び有機溶媒等の揮発分を留去し、乾燥させることにより、イソブチレン重合体ブロック及びスチレン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(SIBS)を得た。
【0069】
(実施例4)
実施例3と同様に重合反応を開始させた。
反応中は随時重合反応溶液を抜き取り、イソブチレンの消費率をガスクロマトグラフィーにより測定した。塩化チタン(IV)を投入してから20分後に、さらに塩化チタン(IV)を0.25mL(2.2mmol)追加した。最初に塩化チタン(IV)を投入してから100分後には、イソブチレンの100モル%が消費されていることを確認した。最初に塩化チタン(IV)を投入してから100分後にスチレン4.24mL(36.9mmol)を投入した。スチレンを投入してから180分後に、投入したスチレンの90モル%が消費されていることをガスクロマトグラフィーにより確認した。次に、重合溶液全体を、50℃に加熱している純水45mLに注ぎ込み、そこへ重合容器内を塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒14gで洗浄した洗浄液を加えた後、30分間激しく撹拌することで重合を停止させた。
工程1において、重合温度はマイナス51℃であり、重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度は41.0mM、かつ2-メチルピリジンの濃度は13.0mMであった。また、工程2において、重合温度はマイナス50℃であり、重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度は39.0mM、かつ2-メチルピリジンの濃度は12.0mMであり、ブロック共重合体の濃度は20重量%であった。
重合停止後の重合溶液を純水2mLで洗浄した。さらに重合溶液を純水39mLで洗浄した。その後、加熱下に水及び有機溶媒等の揮発分を留去し、乾燥させることにより、イソブチレン重合体ブロック及びスチレン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(SIBS)を得た。
【0070】
(比較例1)
2-メチルピリジンの使用量を0.016g(0.17mmol)とすること以外は実施例1と同様に重合反応を開始させた。
反応中は随時重合反応溶液を抜き取り、イソブチレンの消費率をガスクロマトグラフィーにより測定した。塩化チタン(IV)を投入してから20分後に、さらに塩化チタン(IV)を0.08mL(0.8mmol)追加した。最初に塩化チタン(IV)を投入してから90分後には、イソブチレンの100モル%が消費されていることを確認した。最初に塩化チタン(IV)を投入してから100分後にスチレン4.24mL(36.9mmol)を投入した。スチレンを投入してから45分後に、投入したスチレンの96モル%が消費されていることをガスクロマトグラフィーにより確認した。次に、重合反応溶液全体を、50℃に加熱している純水45mLに注ぎ込み、そこへ重合容器内を塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒14gで洗浄した洗浄液を加えた後、30分間激しく撹拌することで重合を停止させた。
工程1において、重合温度はマイナス53℃であり、重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度は24.0mM、かつ2-メチルピリジンの濃度は1.8mMであった。また、工程2において、重合温度はマイナス50℃、重合反応溶液中の塩化チタン(IV)の濃度は23.0mM、かつ2-メチルピリジンの濃度は1.7mMであり、ブロック共重合体の濃度は20重量%であった。
重合停止後の重合反応溶液を純水2mLで洗浄した。さらに重合溶液を純水39mLで洗浄した。その後、加熱下に水及び有機溶媒等の揮発分を留去し、乾燥させることにより、イソブチレン重合体ブロック及びスチレン重合体ブロックとからなるブロック共重合体(SIBS)を得た。
【0071】
実施例及び比較例で得られたブロック共重合体の分子量及び破断強度を上述したとおりに測定し、その結果を下記表1に示した。
【0072】
【表1】
【0073】
上記表1の結果から分かるように、実施例では、工程1及び工程2における重合反応溶液中のアミン系化合物の濃度を3~25mMにすることで、マイナス70℃より高い温度において、エネルギー消費を抑制しつつ、破断強度が高いイソオレフィン系重合体ブロックとスチレン重合体ブロックとからなるブロック共重合体を得ることができた。