(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104533
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】パワーユニット
(51)【国際特許分類】
B60K 6/405 20071001AFI20240729BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20240729BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20240729BHJP
F01P 3/18 20060101ALI20240729BHJP
F01P 3/20 20060101ALI20240729BHJP
F01P 11/04 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B60K6/405 ZHV
B60K1/00
F01P3/02 X
F01P3/18 G
F01P3/20 J
F01P11/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008798
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏行
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】木本 恭郁
(72)【発明者】
【氏名】國分 智史
(72)【発明者】
【氏名】中村 茜
【テーマコード(参考)】
3D202
3D235
【Fターム(参考)】
3D202EE00
3D202EE21
3D202EE23
3D235BB19
3D235BB45
3D235CC13
3D235CC32
3D235DD17
3D235DD19
3D235FF14
3D235FF22
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH04
(57)【要約】
【課題】パワーユニットの製造コストを抑制する。
【解決手段】一実施形態に係るパワーユニットは、エンジンおよび電動モータを備えている。前記パワーユニットは、前記エンジンのシリンダブロックに取り付けられ、冷却液が案内される流路を備える流路部材を有する。前記パワーユニットは、前記流路部材に取り付けられ、前記電動モータに電気的に接続されるインバータを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンおよび電動モータを備えるパワーユニットであって、
前記エンジンのシリンダブロックに取り付けられ、冷却液が案内される流路を備える流路部材と、
前記流路部材に取り付けられ、前記電動モータに電気的に接続されるインバータと、
を有する、パワーユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーユニットにおいて、
前記エンジンは、前記シリンダブロックとして、第1シリンダブロックおよび第2シリンダブロックを備え、
前記流路部材の流路は、前記第1シリンダブロックのウォータジャケットと前記第2シリンダブロックのウォータジャケットとの双方に連通している、
パワーユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のパワーユニットにおいて、
前記インバータは、冷却液が案内されるヒートシンクを備え、
前記ヒートシンクの流路と前記流路部材の流路とは、互いに連通している、
パワーユニット。
【請求項4】
請求項1に記載のパワーユニットにおいて、
前記インバータは、吸気マニホールドの集合部と車体のダッシュパネルとの間に位置している、
パワーユニット。
【請求項5】
請求項1に記載のパワーユニットにおいて、
前記流路部材は、鋳造部材である、
パワーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよび電動モータを備えるパワーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、エンジンおよび電動モータからなるパワーユニットや、エンジンからなるパワーユニットを備えている(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-304936号公報
【特許文献2】特開2022-54889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンおよび電動モータからなるパワーユニットを用いる場合には、パワーユニットと共にインバータを車両に搭載する必要がある。しかしながら、車両に対してインバータを取り付けるためには、インバータ専用の取付ブラケットを用いることが必要であった。このように、インバータ専用の取付ブラケットを用いることは、パワーユニットの製造コストを増加させる要因となっていた。
【0005】
本発明の目的は、パワーユニットの製造コストを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るパワーユニットは、エンジンおよび電動モータを備えるパワーユニットであって、前記エンジンのシリンダブロックに取り付けられ、冷却液が案内される流路を備える流路部材と、前記流路部材に取り付けられ、前記電動モータに電気的に接続されるインバータと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、パワーユニットの製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態であるパワーユニットを備えた車両の一例を示す図である。
【
図2】エンジンルーム内に配置されるパワーユニットを上方から示す図である。
【
図3】吸気マニホールドが外された状態のパワーユニットを示す図である。
【
図4】吸気マニホールドおよびインバータが外された状態のパワーユニットを示す図である。
【
図5】インバータおよびその近傍を示す拡大図である。
【
図7】
図5のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】
図5のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】冷却システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0010】
<パワーユニット構造>
図1は本発明の一実施の形態であるパワーユニット10を備えた車両11の一例を示す図である。
図1に示すように、車両11は、エンジン12およびモータジェネレータ(電動モータ)13からなるパワーユニット10を有している。パワーユニット10の出力軸14には、プロペラ軸15およびデファレンシャル機構16を介して車輪17が連結されている。なお、図示する車両11は、後輪駆動車であるが、これに限られることはなく、前輪駆動車であっても良く、全輪駆動車であっても良い。
【0011】
図2はエンジンルーム20内に配置されるパワーユニット10を上方から示す図である。
図2に示すように、エンジン12は、一方のシリンダバンクに設けられるシリンダブロック(第1シリンダブロック)21と、他方のシリンダバンクに設けられるシリンダブロック(第2シリンダブロック)22と、を有している。また、シリンダブロック21,22のそれぞれには、図示しない動弁機構を備えたシリンダヘッド23,24が組み付けられている。なお、図示するエンジン12は、一対のシリンダブロック21,22を備えた水平対向エンジンである。
【0012】
図1および
図2に示すように、エンジン12のシリンダブロック21,22には、吸入空気を案内する吸気マニホールド25が取り付けられている。吸気マニホールド25は、図示しないスロットルバルブ等が接続される集合部26と、シリンダヘッド23,24の各吸気ポート23a,24aに向けて集合部26から分岐するブランチ27と、を有している。また、シリンダブロック21,22には冷却液を案内する分配パイプ30が取り付けられており、この分配パイプ30に対してインバータ31が取り付けられている。つまり、エンジン12のシリンダブロック21,22には、分配パイプ30を介してインバータ31が取り付けられている。また、
図2に示すように、インバータ31は、吸気マニホールド25の集合部26と車体28のダッシュパネル29との間に位置している。
【0013】
図1に示すように、インバータ31は、電力ケーブル32を介してバッテリ33に電気的に接続されるとともに、電力ケーブル34を介してモータジェネレータ13に電気的に接続されている。つまり、モータジェネレータ13とバッテリ33とは、電力変換機器であるインバータ31を介して互いに接続されている。モータジェネレータ13を力行状態に制御する際には、バッテリ33からの直流電力がインバータ31を介して交流電力に変換され、この交流電力がモータジェネレータ13に供給される。一方、モータジェネレータ13を発電状態に制御する際には、モータジェネレータ13からの交流電力がインバータ31を介して直流電力に変換され、この直流電力がバッテリ33に供給される。
【0014】
<インバータ取付構造>
エンジン12に対するインバータ31の取付構造について説明する。
図3は吸気マニホールド25が外された状態のパワーユニット10を示す図であり、
図4は吸気マニホールド25およびインバータ31が外された状態のパワーユニット10を示す図である。
【0015】
図3および
図4に示すように、エンジン12のシリンダブロック21,22には、ラジエータ60から一対のシリンダブロック21,22に冷却液を分配する分配パイプ(流路部材,鋳造部材)30が取り付けられている。分配パイプ30は、冷却液を案内するメイン流路(流路)40が形成される本体部41と、本体部41から延びる第1取付部42と、本体部41から延びる第2取付部43と、を有している。分配パイプ30はアルミニウム等の金属材料を用いて鋳造される鋳造部材であり、本体部41、第1取付部42および第2取付部43は一体に形成されている。なお、分配パイプ30は、水渡しパイプとも呼ばれている。
【0016】
図4に示すように、分配パイプ30の本体部41は、ラジエータ60に接続される入力ポート44と、後述するシリンダブロック21のウォータジャケット72に接続される出力ポート45と、後述するシリンダブロック22のウォータジャケット73に接続される出力ポート46と、を有している。また、第1取付部42は、メイン流路40に連通するバイパス流路47と、バイパス流路47に開口するバイパスポート48と、を有している。さらに、第2取付部43は、メイン流路40に連通するバイパス流路49と、バイパス流路49に開口するバイパスポート50と、を有している。
【0017】
図4に示すように、分配パイプ30の本体部41は、複数の締結ボルト51によってシリンダブロック21,22に固定されている。また、分配パイプ30の第1取付部42は、複数の締結ボルト52によってシリンダブロック21に固定されており、分配パイプ30の第2取付部43は、複数の締結ボルト53によってシリンダブロック22に固定されている。さらに、第1取付部42は複数の雌ネジ部54を有しており、第2取付部43は複数の雌ネジ部55を有している。そして、
図3に示すように、インバータ31のハウジング31aは、複数の締結ボルト56を用いて第1および第2取付部42,43の雌ネジ部54,55に固定されている。
【0018】
これまで説明したように、シリンダブロック21,22には分配パイプ30が取り付けられており、分配パイプ30にはインバータ31が取り付けられている。これにより、別体となるインバータ専用の取付ブラケットを用いることなく、シリンダブロック21,22にインバータ31を取り付けることができる。このように、分配パイプ30を介してシリンダブロック21,22にインバータ31を取り付けることにより、部品点数および取付工数を削減することができ、パワーユニット10の製造コストを抑制することができる。さらに、インバータ31は集合部26とダッシュパネル29との間に配置されている。このように、エンジン後部に対してインバータ31を配置することにより、車両衝突時においてもインバータ周囲の空間を確保することができ、車両衝突からインバータ31を適切に保護することができる。
【0019】
<冷却システム>
続いて、エンジン12およびインバータ31の冷却システム61について説明する。
図5はインバータ31およびその近傍を示す拡大図である。また、
図6は
図5のVI-VI線に沿う断面図であり、
図7は
図5のVII-VII線に沿う断面図であり、
図8は
図5のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【0020】
図5、
図6、
図7および
図8に示すように、インバータ31は、ハウジング31aと、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子62を備えた制御基板63と、を有している。また、インバータ31は、制御基板63に実装された半導体素子62を冷却するため、制御基板63に絶縁板64および放熱板65を介して接触するヒートシンク66を有している。このヒートシンク66は、冷却液が案内される冷却流路(流路)67と、冷却流路67に開口する入力ポート68と、冷却流路67に開口する出力ポート69と、を有している。さらに、ヒートシンク66の入力ポート68はバイパスポート48に接続されており、ヒートシンク66の出力ポート69はバイパスポート50に接続されている。
【0021】
このように、インバータ31が備えるヒートシンク66の冷却流路67と、分配パイプ30に形成されるメイン流路40とは、互いに連通している。これにより、
図5~
図8に矢印αで示すように、メイン流路40からバイパス流路47を介して冷却流路67に冷却液を案内することができ、冷却流路67からバイパス流路49を介してメイン流路40に冷却液を戻すことができる。すなわち、ラジエータ60を経て冷却された冷却液の一部を、インバータ31のヒートシンク66に案内することができるため、インバータ31の半導体素子62を適切に冷却することができる。これにより、インバータ31の作動領域つまりモータジェネレータ13の運転領域を拡大することができ、車両11の走行性能および燃費性能を高めることができる。
【0022】
ここで、
図9は冷却システム61の一例を示すブロック図である。
図9に示すように、冷却システム61は、冷却液を圧送するウォータポンプ70を有している。ウォータポンプ70の吐出ポート71から圧送された冷却液は、ラジエータ60を経て冷却された後にシリンダブロック上の分配パイプ30に案内される。前述したように、分配パイプ30に案内された冷却液の一部は、インバータ31のヒートシンク66に流れて半導体素子62を冷却した後に、再び分配パイプ30に戻される。また、分配パイプ30に案内された冷却液は、ウォータジャケット72,73,74,75に流れてシリンダブロック21,22およびシリンダヘッド23,24を冷却した後に、ウォータポンプ70の吸入ポート76に吸い込まれる。なお、シリンダブロック21およびシリンダヘッド23のウォータジャケット72,74は互いに連通しており、シリンダブロック22およびシリンダヘッド24のウォータジャケット73,75は互いに連通している。
【0023】
このように、1つの冷却システム61によってエンジン12およびインバータ31の双方を冷却することができるため、パワーユニット10が備える冷却システム61の複雑化を回避することができる。つまり、エンジン用の冷却システムとは別個に、インバータ用の冷却システムを設ける必要がないため、この点からもパワーユニット10の製造コストを抑制することができる。
【0024】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、パワーユニット10を構成するエンジン12として、一対のシリンダブロック21,22を備えた水平対向エンジンを用いているが、これに限られることはない。つまり、冷却液を案内する分配パイプ30を備えたエンジンであれば、1つのシリンダブロックを備えたエンジンであっても良い。例えば、V型エンジンを備えたパワーユニットに本発明を適用しても良く、直列エンジンを備えたパワーユニットに本発明を適用しても良い。
【0025】
前述の説明では、共通の冷却システム61によってエンジン12およびインバータ31の双方を冷却しているが、これに限られることはなく、エンジン12およびインバータ31の冷却システムを2つに分けても良い。この場合であっても、分配パイプ30に対してインバータ31を取り付けることにより、部品点数および取付工数を削減することができるため、パワーユニット10の製造コストを抑制することができる。また、
図6~
図8に示した例では、制御基板63の一方面側にヒートシンク66を設けているが、これに限られることはなく、制御基板63の一方面側と他方面側との双方にヒートシンク66を設けても良い。なお、インバータ31に対してコンバータを組み込んでも良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0026】
10 パワーユニット
11 車両
12 エンジン
13 モータジェネレータ(電動モータ)
21 シリンダブロック(第1シリンダブロック)
22 シリンダブロック(第2シリンダブロック)
25 吸気マニホールド
26 集合部
28 車体
29 ダッシュパネル
30 分配パイプ(流路部材,鋳造部材)
31 インバータ
40 メイン流路(流路)
66 ヒートシンク
67 冷却流路(流路)
72 ウォータジャケット
73 ウォータジャケット