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特開2024-104534射出成形システム、プログラム、記録媒体およびロボット制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104534
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】射出成形システム、プログラム、記録媒体およびロボット制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/42 20060101AFI20240729BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20240729BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20240729BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20240729BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B29C45/42
B29C33/44
B29C45/17
B29C45/76
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008799
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊川 雅之
【テーマコード(参考)】
3C707
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707KS01
3C707KT01
3C707KT05
3C707KT06
3C707LW12
4F202AM23
4F202CA11
4F202CM11
4F202CM90
4F202CR00
4F202CS00
4F206AM23
4F206JA07
4F206JL03
4F206JL07
4F206JL09
4F206JN41
4F206JP30
4F206JT06
4F206JT07
(57)【要約】
【課題】作業者の負担を軽減する。
【解決手段】基本思想は、「非定常作業」を自動化することにより、作業者の負担を軽減する思想である。具体的な態様としては、機械学習で強化学習された学習モデルを搭載した制御装置を使用してロボットの動作を制御するものであり、初期指令信号値に基づく動作ではロボットが非定常動作を実施できないと判断された場合、補正指令信号を出力し、ロボットは少なくとも補正指令信号に基づいて、非定常作業を行うものである。これにより、ロボットを操作する作業者の負担を軽減することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機と、
前記射出成形機から成形品を取り出す定常作業以外の非定常作業を行うロボットと、
前記ロボットの動作を制御する制御装置と、
を備える、射出成形システムであって、
前記制御装置は、
前記ロボットに初期指令信号を出力するための指令部と、
前記非定常作業を実施するための補正が必要であるかを判断する補正判断部と、
前記補正判断部によって、前記補正が必要であると判断された場合、補正指令信号を出力する補正指令部と、
を有し、
前記ロボットは、前記指令部から出力される前記初期指令信号に基づいて、前記非定常作業を行うように動作を開始する一方、前記補正判断部によって、前記初期指令信号に基づく動作では前記ロボットが前記非定常動作を実施できないと判断された場合、前記補正指令部は前記ロボットまたはロボットの操作装置に前記補正指令信号を出力し、前記ロボットは、少なくとも前記補正指令信号に基づいて、前記非定常作業を行うように構成されている、射出成形システム。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形システムにおいて、
前記補正指令部は、
前記補正指令信号の補正指令値を算出するための補正指令値算出部と、
補正指令値算出用学習モデルを生成する補正指令値算出用学習モデル生成部と、
前記補正指令値算出用学習モデルに対して強化学習を行う第1強化学習部と、
を有し、
前記補正指令値算出部は、前記補正指令値算出用学習モデル生成部で生成された前記補正指令値算出用学習モデルに基づいて前記補正指令値を算出し、
前記第1強化学習部は、前記非定常作業を実施するために行われた前記ロボットの移動における成功例および失敗例の両方に基づいて、前記補正指令値算出用学習モデルを強化学習する、射出成形システム。
【請求項3】
請求項1に記載の射出成形システムにおいて、
前記指令部は、
前記初期指令信号の初期指令値を算出するための初期指令値算出部と、
初期指令値算出用学習モデルを生成する初期指令値算出用学習モデル生成部と、
前記初期指令値算出用学習モデルに対して強化学習を行う第2強化学習部と、
を有し、
前記初期指令値算出部は、前記初期指令値算出用学習モデル生成部で生成された前記初期指令値算出用学習モデルに基づいて前記初期指令値を算出し、
前記第2強化学習部は、前記非定常作業を実施するために行われた前記ロボットの移動における成功例および失敗例の両方に基づいて、前記初期指令値算出用学習モデルを強化学習する、射出成形システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の射出成形システムにおいて、
前記射出成形システムは、前記ロボットを操作するロボット操作装置を有し、
前記ロボット操作装置は、前記ロボットの移動に関する前記補正を不要とする成功例を構築するためのティーチングを実施するティーチング実施部を有し、
前記ロボット操作装置は、前記指令部を介して、前記ティーチング実施部で実施されたティーチングに対応する初期指令信号の指令値を前記ロボットに出力する、射出成形システム。
【請求項5】
請求項1に記載の射出成形システムにおいて、
前記射出成形機は、
材料の射出動作を行う射出装置と、
型締動作を行う型締装置と、
を有し、
前記型締装置は、
第1金型を装着可能な固定盤と、
第2金型を装着可能な可動盤と、
を有し、
前記ロボットは、ロボット操作装置に接続され、
前記非定常作業には、前記第1金型または前記第2金型に関連する金型関連作業が含まれる、射出成形システム。
【請求項6】
請求項1または5に記載の射出成形システムにおいて、
前記ロボットは、前記非定常作業と前記定常作業の両方を行う兼用ロボットである、射出成形システム。
【請求項7】
請求項1または5に記載の射出成形システムにおいて、
前記ロボットは、前記非定常作業だけを行う専用ロボットである、射出成形システム。
【請求項8】
射出成形機から成形品を取り出す定常作業以外の非定常作業を行うロボットの動作を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記ロボットに初期指令信号を出力するための指令処理手段と、
前記非定常作業を実施するための補正が必要であるかを判断する補正判断処理手段と、
前記補正判断処理によって、前記補正が必要であると判断された場合に補正指令信号を出力する補正指令処理手段と、
を有し、
前記補正判断処理手段によって、前記初期指令信号に基づく動作では前記ロボットが前記非定常動作を実施できないと判断された場合、前記補正指令処理手段によって、前記ロボットに前記補正指令信号を出力することにより、少なくとも前記補正指令信号に基づいて、前記ロボットに前記非定常作業を実施させる、プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムにおいて、
前記プログラムは、
前記補正指令信号の補正指令値を算出するための補正指令値算出処理手段と、
補正指令値算出用学習モデルを生成する補正指令値算出用学習モデル生成処理手段と、
前記補正指令値算出用学習モデルに対して強化学習を行う第1強化学習処理手段と、
を有し、
前記補正指令値算出処理手段は、前記補正指令値算出用学習モデル生成処理手段で生成された前記補正指令値算出用学習モデルに基づいて前記補正指令信号の補正指令値を算出し、
前記第1強化学習処理は、前記非定常作業を実施するために行われた前記ロボットの自動移動における成功例および失敗例の両方に基づいて、前記補正指令値算出用学習モデルを強化学習する、プログラム。
【請求項10】
請求項8に記載のプログラムにおいて、
前記プログラムは、
前記初期指令信号の初期指令値を算出するための初期指令値算出処理手段と、
初期指令値算出用学習モデルを生成する初期指令値算出用学習モデル生成処理手段と、
前記初期指令値算出用学習モデルに対して強化学習を行う第2強化学習処理手段と、
を有し、
前記初期指令値算出処理手段は、前記初期指令値算出用学習モデル生成処理で生成された前記初期指令値算出用学習モデルに基づいて前記初期指令値を算出し、
前記第2強化学習処理手段は、前記非定常作業を実施するために行われた前記ロボットの自動移動における成功例および失敗例の両方に基づいて、前記初期指令値算出用学習モデルを強化学習する、プログラム。
【請求項11】
射出成形機から成形品を取り出す定常作業以外の非定常作業を行うロボットの動作を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記ロボットに初期指令信号を出力するための指令処理手段と、
前記非定常作業を実施するための補正が必要であるかを判断する補正判断処理手段と、
前記補正判断処理によって、前記補正が必要であると判断された場合に補正指令信号を出力する補正指令処理手段と、
を有し、
前記補正判断処理手段によって、前記初期指令信号に基づく動作では前記ロボットが前記非定常動作を実施できないと判断された場合、前記補正指令処理手段によって、前記補正指令信号を出力することにより、少なくとも前記補正指令信号に基づいて、前記ロボットに前記非定常作業を実施させる、プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項12】
射出成形機から成形品を取り出す定常作業以外の非定常作業を行うロボットの動作を制御するロボット制御方法であって、
前記ロボットに初期指令信号を出力するための指令工程と、
前記非定常作業を実施するための補正が必要であるかを判断する補正判断工程と、
前記補正判断工程によって、前記補正が必要であると判断された場合に補正指令信号を出力する補正指令工程と、
を有し、
前記補正判断工程によって、前記初期指令信号に基づく動作では前記ロボットが前記非定常動作を実施できないと判断された場合、前記補正指令工程によって、前記補正指令信号を出力することにより、少なくとも前記補正指令信号に基づいて、前記ロボットに前記非定常作業を実施させる、ロボット制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載のロボット制御方法において、
前記ロボット制御方法は、
ロボットの移動に関する前記補正を不要とする成功例を構築するためのティーチングを実施するティーチング実施工程と、
前記初期指令信号の初期指令値を算出するための初期指令値算出工程と、
初期指令値算出用学習モデルを生成する初期指令値算出用学習モデル生成工程と、
前記初期指令値算出用学習モデルに対して強化学習を行う第2強化学習工程と、
を有し、
前記ロボット制御方法は、
検出された異物の状態が過去にティーチングした際の異物の状態と同じ場合は、前記ティーチング実施工程で実施されたティーチングに対応する初期指令値を前記ロボットに出力し、
検出された異物の状態が過去にティーチングした際の異物の状態と類似の範囲内の場合は、前記初期指令値算出用学習モデルを用いて演算された初期指令値を前記ロボットに出力し、
検出された異物の状態が過去にティーチングした際の異物の状態と異なる場合は、ロボット操作装置から送信された初期指令値を前記ロボットに出力する、ロボット制御方法。
【請求項14】
請求項12に記載のロボット制御方法において、
前記ロボット制御方法は、
金型に残留する異物の状態を確認する異物残留状態確認用学習モデルの学習工程を有し、
前記学習工程は、異物の状態をラベルとした前記異物残留状態確認用学習モデルの教師あり学習、または、前記非定常作業を実施するために行われた前記ロボットの移動または把持における成功例および失敗例の両方に基づいた前記異物残留状態確認用学習モデルの強化学習により行われる、ロボット制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形システム、プログラム、記録媒体およびロボット制御技術に関し、例えば、射出成形機から成形品を取り出す定常作業以外の非定常作業をロボットによって行う射出成形システムに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-57383号公報(特許文献1)には、金型に関する作業である金型関連作業について、ロボットに対するティーチングを行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-57383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形機とは、材料の混練および溶融をした後、材料を金型に流し込んで成形品を製造する装置であり、材料の溶融、型への流し込み(射出)、冷却および取り出しといった一連の射出成形工程を処理することができる装置である。
【0005】
例えば、射出成形機は、金型を装着する型締装置と、溶融した材料をノズルから射出する射出装置から構成されており、成形品は、型締装置に装着された固定金型と可動金型とを型閉した際に形成されるキャビティに射出装置から射出された材料を流し込むことにより形成される。その後、成形品は、固定金型と可動金型とを型開した状態でエジェクタピンを突き出すことにより取り出される。この成形品の取り出しは、例えば、射出成形機に取り付けられた取出機によって行われる。
【0006】
ここで、本明細書では、成形品を金型から取り出す作業を「定常作業」と呼ぶ一方、「定常作業」以外の金型に関連する作業を「非定常作業」と呼ぶことにする。例えば、「非定常作業」には、金型交換作業や金型からの異物除去作業が含まれる。すなわち、金型に関連する作業には、「定常作業」と「非定常作業」があり、例えば、「定常作業」は取出機を使用して行われることが普及している。これに対し、「非定常作業」は、金型交換等の単純作業はロボットにより行われているが、複雑な作業は作業者自体によって行われている。この点に関し、作業者の負担を軽減するため、「非定常作業」の少なくとも一部または全部を自動化または設定作業の簡略化をすることが望まれている。また、その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態における射出成形システムは、射出成形機と、射出成形機から成形品を取り出す定常作業以外の非定常作業を行うロボットと、ロボットの動作を制御する制御装置と、を備える。ここで、制御装置は、ロボットに初期指令信号を出力するための指令部と、非定常作業を実施するための補正が必要であるかを判断する補正判断部と、補正判断部によって、補正が必要であると判断された場合、ロボットまたはロボットの操作装置に対して補正指令信号を出力する補正指令部と、を有する。
【0008】
このとき、ロボットは、指令部から出力される初期指令信号に基づいて、非定常作業を行うように動作を開始する一方、補正判断部によって、初期指令信号に基づく動作ではロボットが非定常動作を実施できないと判断された場合、補正指令部は補正指令信号を出力し、ロボットは、補正指令信号に基づいて、非定常作業を行うように構成される。
【0009】
一実施の形態におけるプログラムは、射出成形機から成形品を取り出す定常作業以外の非定常作業を行うロボットの動作を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。ここで、プログラムは、ロボットに初期指令信号を出力するための指令処理手段と、非定常作業を実施するための補正が必要であるかを判断する補正判断処理手段と、補正判断処理手段によって、補正が必要であると判断された場合、ロボットに対して補正指令信号を出力する補正指令処理手段と、を有する。
【0010】
このとき、補正判断処理手段によって、初期指令信号に基づく動作ではロボットが非定常動作を実施できないと判断された場合、補正指令処理手段によって、補正指令信号を出力することにより、補正指令信号に基づいて、ロボットに非定常作業を実施させる。
【0011】
一実施の形態におけるロボット制御方法は、射出成形機から成形品を取り出す定常作業以外の非定常作業を行うロボットの動作を制御するロボット制御方法である。
【0012】
ここで、ロボット制御方法は、ロボットに初期指令信号を出力するための指令工程と、非定常作業を実施するための補正が必要であるかを判断する補正判断工程と、補正判断工程によって、補正が必要であると判断された場合に補正指令信号を出力する補正指令工程と、を有する。
【0013】
このとき、補正判断工程によって、初期指令信号に基づく動作ではロボットが非定常動作を実施できないと判断された場合、補正指令工程によって、ロボットに補正指令信号を出力することにより、補正指令信号に基づいて、ロボットに非定常作業を実施させる。
【発明の効果】
【0014】
一実施の形態によれば、作業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】射出成形機の構成を示す模式図である。
図2】ロボットによる「定常作業」の概要を示す図である。
図3】ロボットによる「非定常作業」の概要を示す図である。
図4】射出成形システムの機能構成を示すブロック図である。
図5】射出成形システムの動作を説明するフローチャートである。
図6】射出成形システムの動作を説明するフローチャートである。
図7】射出成形システムの動作を説明するフローチャートである。
図8】射出成形システムの動作を説明するフローチャートである。
図9】具現化態様2における射出成形システムの機能ブロック図である。
図10】変形例1における縦型射出成形機を模式的に示す図である。
図11】変形例3における射出成形システムの配置例を示す模式図である。
図12】変形例4におけるロボットのバリエーションを示しており、(a)は、兼用ロボットを多軸ロボットから構成する例を示す図であり、(b)は、兼用ロボットをXYZ軸移動式ロボットから構成する例を示す図である。
図13】変形例5におけるロボットのグリップ部のバリエーションを示しており、(a)から(c)は、グリップ部のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0017】
<射出成形機の構成>
本実施の形態における技術的思想は、射出装置と型締装置とを備える射出成形機に幅広く適用することが可能である。この点に関し、以下では、射出成形機のうち、1つの型締装置に対して1つの射出装置が設けられた射出成形機を例に挙げて、本実施の形態における技術的思想を説明するが、本実施の形態における技術的思想は、これに限らず、例えば、1つの型締装置に対して複数の射出装置が設けられた「マルチ射出成形機」にも幅広く適用することが可能である。
【0018】
<<射出成形機の概要>>
図1は、射出成形機100の構成を示す模式図である。
【0019】
図1において、射出成形機100は、型締装置1と、射出装置2とを有している。ここで、型締装置1は、型締動作を行う装置である。例えば、型締装置1は、射出装置2から射出された材料を流し込む金型を装着可能に構成されており、金型に対して型締動作を行うことにより形成されたキャビティ(密閉空間)に材料を流し込むことによって、成形品を製造する装置である。一方、射出装置2は、射出動作を行う装置であり、例えば、材料の混練および溶融をして、混練および溶融した材料を型締装置1に取付けられた金型に形成されたキャビティに射出する装置である。
【0020】
<<型締装置の構成>>
図1に示すように、型締装置1は、移動可能な可動盤11と、固定された固定盤10とを有しており、可動盤11と固定盤10との間の距離を可変制御することができるように構成されている。そして、可動盤11と固定盤10との間には、可動金型13と固定金型12とが配置可能になっている。これにより、例えば、型締装置1によって、可動盤11と固定盤10との間の距離を可変制御することで、可動金型13と固定金型12との間の距離を近づけて「型閉」(「型閉」には「型締」を含む)することができるとともに、可動金型13と固定金型12との間の距離を遠ざけて「型開」することができる。このとき、可動金型13と固定金型12との間を「型閉」すると、可動金型13と固定金型12との間に密閉空間(キャビティ)CAVが形成され、この密閉空間CAVに材料を流し込むことにより、成形品が形成される。特に、図1に示す射出成形機100では、可動金型13と固定金型12との間を「型閉」すると、1つの密閉空間CAVが形成され、この密閉空間CAVに材料を流し込むことにより成形品が形成される。このようにして、型締装置1が構成される。
【0021】
<<射出装置の構成>>
次に、図1に示すように、型締装置1には、材料を押し出す射出装置2が接続されており、射出装置2から押し出された材料は、可動金型13と固定金型12との間を「型閉」することにより形成される密閉空間CAVに流れ込むようになっている。
【0022】
この射出装置2は、材料(原料)を入れるためのホッパ21と、シリンダ22を有する。そして、ホッパ21に材料を入れると、この材料は、シリンダ22の内部に配置されている回転可能なスクリュ23で混練される。具体的に、スクリュ23は、スクリュ回転用モータ24と接続されており、このスクリュ回転用モータ24を駆動させることにより、スクリュ23が回転するように構成されている。
【0023】
このとき、シリンダ22の周囲にはヒータ25が配置されており、シリンダ22の内部に入れられた材料は、ヒータ25で加熱されながら、スクリュ23で混練されて溶融材料となる。そして、シリンダ22の先端には、ノズル26が設けられている。また、スクリュ23には、ピストン27が接続されており、このピストン27は、油圧装置28によって前進動作と後退動作とが制御される。これにより、例えば、油圧装置28でピストン27を前進させるように制御すると、ピストン27に接続されているスクリュ23が前進する結果、前進するスクリュ23によって押し出された溶融材料がノズル26から射出される。このようにして、射出装置2が構成される。
【0024】
ただし、射出装置2の射出動作を行う機構は、油圧装置28に代えて、射出用モータとボールねじ機構も採用される。
【0025】
なお、例えば、射出装置2から射出する材料(溶融材料)としては、金属材料を想定している。具体的に、射出装置2から射出する材料は、マグネシウム合金を想定している。この場合、マグネシウム合金からなる溶融材料は固まりやすいことから、射出装置2から射出する射出速度を速くする必要がある。このことから、射出装置2では、油圧装置28を使用して射出動作を行うように構成されている。ただし、射出装置2から射出する材料は、金属材料に限定されるものではなく、樹脂(プラスチック)なども使用できる。
【0026】
<射出成形機の動作>
射出成形機100は、上記のように構成されており、以下にその動作について説明する。
【0027】
まず、図1において、射出する材料が金属材料の場合は、開いている可動金型13と固定金型12のキャビティ面に離型剤を噴霧する。その後、型締装置1の可動盤11を移動させる。これにより、可動金型13を固定金型12に接触させて「型閉」する。その後、油圧装置28によってピストン27を前方方向に前進させるように制御する。これにより、ピストン27と接続されているスクリュ23が左方向すなわち前進方向に移動する。この結果、ノズル26の先端部から「型閉」した可動金型13と固定金型12との間の密閉空間CAV(キャビティ)に、後述する計量工程によりノズル26とスクリュ23との間に所定量溜められた溶融材料が、注入される。すなわち、計量された溶融材料がノズル26から密閉空間CAV内に射出される(射出工程)。
【0028】
続いて、射出終了後に、溶融材料の冷却に伴って生じる材料の収縮を補うために、シリンダ22内に残っている溶融材料を通して密閉空間CAV内の材料に圧力を加える。つまり、溶融材料が射出された後、スクリュ23によって密閉空間CAVに圧力をかけた状態が維持される(保圧工程)。保圧工程が終了すると溶融材料の凝固する温度以下の温度に制御されている可動金型13および固定金型12によって、溶融材料が冷却される(冷却工程)。具体的に、密閉空間CAV内に充填されている溶融材料が凝固する温度以下の温度まで、可動金型13および固定金型12によって、冷却される。
【0029】
図1において、固体状の材料をホッパ21からシリンダ22内に投入されている。そして型締装置1側の冷却工程と並行して、スクリュ回転用モータ24によってスクリュ23を回転駆動させると同時に、ピストン27を油圧装置28で後方方向に移動させることにより、ピストン27と接続されているスクリュ23を後方方向に所定量移動させる。その間、スクリュ23の回転駆動により、ホッパ21から供給された材料が射出装置2のシリンダ22で溶融されて前方方向に進む。すなわち、ヒータ25による熱およびスクリュ23の回転により生じる材料のせん断発熱によって、ホッパ21から供給された材料は、加熱されて溶融することにより溶融材料となって前方方向に進む。この結果、溶融材料がノズル26とスクリュ23との間のシリンダ22内に所定量溜まる(計量工程)。
【0030】
その後、計量工程および冷却工程が終了すると、型締装置1を動作させることにより、可動金型13と固定金型12との間を「型開」する。このように、可動金型13と固定金型12との間を「型開」した後、型締装置1に備わるエジェクタ装置によって、成形された成形品をエジェクタピンで突き出す。これにより、型締装置1から成形品を取り出すことができる。この成形品は、射出成形機100によって成形された製品となる。
【0031】
このような一連の動作を繰り返すことにより、連続して同一形状の成形品を製造することができる。以上のようにして、射出成形機100を繰り返し動作させることにより、成形品を量産することができる。
【0032】
<実施の形態おける基本思想>
続いて、本実施の形態における基本思想について説明する。
【0033】
本実施の形態における基本思想は、「発明が解決しようとする課題」の欄に記載している「非定常作業」の少なくとも一部または全部を自動化または設定作業の簡略化をすることにより、作業者の負担を軽減する思想である。具体的な態様としては、機械学習で強化学習された学習モデルを搭載した制御装置を使用してロボットの動作を制御するものであり、初期指令信号に基づく動作ではロボットが非定常動作を実施できないと判断された場合、補正指令信号を出力し、ロボットは少なくとも補正指令信号に基づいて、非定常作業を行うものである。これにより、ロボットを操作する作業者の負担を軽減できる。
【0034】
さらに、基本思想は、以下に示す技術的意義も有している。
【0035】
例えば、安全衛生法によると、ロボットは、産業用ロボットと協働ロボットとに区別される。ここで、産業用ロボットを作業者が操作するためには、資格が必要である一方、現状の国内では、80W未満の協働ロボットは、操作のための資格は不要である。
【0036】
したがって、例えば、型締力が200t以下程度の射出成形機では、協働ロボットを使用して「非定常作業」を行なうこともできると考えられる。この場合、資格を有していない作業者であっても、協働ロボットを操作することができる。ただし、協働ロボットの場合、作動ストロークが最大1.5m程度であり、作業者自体が手で異物を取り除く範囲内の作業しか実施することができない。このことから、射出成形機における「非定常作業」を行なうためには、協働ロボットではなく、協働ロボットよりも大型の産業用ロボットを使用することが望ましい。ところが、産業用ロボットを作業者が操作するためには、資格が必要であることから、「非定常作業」を産業用ロボットで実施する場合、産業用ロボットを操作する作業者は、有資格者に限定されることになる。
【0037】
この点に関し、機械学習で強化学習された学習モデルを搭載した制御装置を使用してロボットを制御することにより、「非定常作業」を完全自動化する基本思想の理想態様によれば、作業者がロボットを操作することがなくなり、作業者の負担を軽減することができるとともに、作業者が有資格者に限定されるという問題も無意味に帰すことができる。
【0038】
ただし、上述した基本思想は、理想態様で具現化されることが望ましいが、基本思想は、理想態様として具現化される場合に限定されることなく、「非定常作業」の一部を自動化する現実態様として具現化される場合であっても作業者の負担を軽減できることから有用である。すなわち、本実施の形態における基本思想は、幅広い態様を包含する思想であり、機械学習で強化学習された学習モデルを搭載した制御装置を使用してロボットの動作を制御することにより、「非定常作業」の少なくとも一部の動作を自動化する思想である。この基本思想は、例えば、以下の構成要素を含む思想である。
【0039】
ロボットの動作を制御する制御装置は、
(1)ロボットに初期指令信号(初期指令値を含む)を出力するための指令部と、
(2)「非定常作業」を実施するための補正が必要であるかを判断する補正判断部と、
(3)補正判断部によって、補正が必要であると判断された場合、ロボットに対して補正指令信号を出力する補正指令部と、
を有する。
【0040】
そして、ロボットは、指令部から出力される初期指令値に基づいて、「非定常作業」を行うように動作を開始する一方、補正判断部によって、初期指令値に基づく動作ではロボットが「非定常動作」を実施できないと判断された場合、補正指令部はロボットに補正指令値を出力し、ロボットは、補正指令値に基づいて、「非定常作業」を行う。
【0041】
ここで、基本思想では、上述した補正指令部が機械学習で強化学習される。
【0042】
具体的に、補正指令部は、
(A)補正指令信号の補正指令値を算出するための補正指令値算出部、
(B)補正指令値算出用学習モデルを生成する補正指令値算出用学習モデル生成部、
(C)補正指令値算出用学習モデルに対して強化学習を行う第1強化学習部、
を有する。
【0043】
このとき、補正指令値算出部は、補正指令値算出用学習モデル生成部で生成された補正指令値算出用学習モデルに基づいて前記補正指令値を算出し、第1強化学習部は、「非定常作業」を実施するために行われたロボットの自動移動における成功例および失敗例の両方に基づいて、補正指令値算出用学習モデルを強化学習する。
【0044】
すなわち、基本思想は、ロボットを初期指令値に基づいて動作させる一方、初期指令信号に基づく動作ではロボットが「非定常動作」を実施できない場合、ロボット、制御装置、ロボット操作装置のいずれかに対して補正指令信号(補正指令値を含む)を出力して動作させることを前提として、補正指令値を出力する補正指令部を機械学習で強化学習する思想である。
【0045】
このような基本思想は、「非定常作業」の少なくとも一部の動作を自動化する現実態様と、「非定常作業」を完全自動化する理想態様のいずれかによって具現化される。
【0046】
例えば、具現化態様1では、「非定常作業」の少なくとも一部の動作を自動化する現実態様について説明する。一方、例えば、具現化態様2では、「非定常作業」の動作を完全自動化する理想態様について説明する。
【0047】
具現化態様1では、初期指令値について、作業者がロボットを操作することにより得られた「ティーチング」を使用する。具体的に、具現化態様1において、射出成形システムは、ロボットを操作するロボット操作装置を有し、ロボット操作装置は、ロボットの移動に関する補正を不要とする成功例を構築するための作業者によるティーチングを実施するティーチング実施部を有し、ロボット操作装置は、指令部を介して、ティーチング実施部で実施されたティーチングに対応する初期指令値をロボットに出力する。
【0048】
これに対し、具現化態様2では、補正指令値を出力する補正指令部を機械学習で強化学習するだけでなく、初期指令値を出力する指令部も機械学習で強化学習する。
【0049】
具体的に、具現化態様2において、指令部は、
(D)初期指令値を算出するための初期指令値算出部、
(E)初期指令値算出用学習モデルを生成する初期指令値算出用学習モデル生成部、
(F)初期指令値算出用学習モデルに対して強化学習を行う第2強化学習部、
を有する。
【0050】
このとき、初期指令値算出部は、初期指令値算出用学習モデル生成部で生成された初期指令値算出用学習モデルに基づいて前記初期指令値を算出し、第2強化学習部は、「非定常作業」を実施するために行われたロボットの移動における成功例および失敗例の両方に基づいて、初期指令値算出用学習モデルを強化学習する。
【0051】
以下では、まず、基本思想を具現化した具現化態様1について説明する。
【0052】
<具現化態様1>
具現化態様1では、射出成形機に取り付けられるロボットが「非定常作業」と「定常作業」の両方を行う兼用ロボットから構成される例について説明する。すなわち、ロボットは、射出成形機から成形品を取り出す「定常作業」を行うように構成されているとともに、「定常作業」以外の「非定常作業」を行うように構成されている。
【0053】
ここで、例えば、図1に示すように、射出成形機100は、型締装置1と射出装置2から構成されており、型締装置1は、固定金型12を装着可能な固定盤10と、可動金型13を装着可能な可動盤11とを有している。このとき、本明細書でいう「非定常作業」には、固定金型12または可動金型13に関連する金型関連作業が含まれる。そして、金型関連作業には、異物除去作業が含まれており、本明細書では、「非定常作業」の一例として、異物除去作業を取り上げて説明することにする。
【0054】
<<「定常作業」の概要>>
具現化態様1では、「定常作業」と「非定常作業」の両方を行うロボットを使用するが、まず、このロボットによる「定常作業」の概要について説明する。
【0055】
図2は、ロボット30による「定常作業」の概要を示す図である。
【0056】
図2において、固定盤10には、ロボット30が取り付けられている。このロボット30は、アーム31と、アーム31の先端に取り付けられたグリップ部32を有している。そして、このグリップ部32には、カメラ40Aが取り付けられている。また、可動盤11には、カメラ40Bが取り付けられている。
【0057】
図2では、射出成形機100を動作させることにより成形品150を製造した後、型締装置1を「型開」した状態が示されている。この状態において、成形品150は可動盤11に備わるエジェクタ装置および可動金型13に備わるエジェクタピンによって可動金型13から突き出された後(図示せず)、可動金型13から突き出された成形品150は、ロボット30を構成するアーム31とグリップ部32を動作させることにより、ロボット30のグリップ部32によって把持される。そして、グリップ部32で把持された成形品150は、型締装置1の外部に取り出される。以上のようにして、ロボット30による成形品150の取り出し作業が完了する。
【0058】
ここで、ロボット30による成形品150の取り出し作業を自動化することを考える。この場合、最初に作業者がロボット30を操作して成形品150の取り出し作業を行う。そして、作業者がロボット30を操作して成形品150を取り出す作業の手順をロボット30に記憶させる。この作業がいわゆるティーチングである。
【0059】
このとき、成形品150を取り出す作業の手順は規則的である。このことから、一度ティーチングによってロボット30に成形品150を取り出す作業の手順を記憶させれば、自動でロボット30に成形品150を取り出す作業を容易に行わせることができる。
【0060】
<<「非定常作業」の概要>>
次に、図3は、ロボット30による「非定常作業」の概要を示す図である。
【0061】
図3では、射出成形機100を動作させることにより成形品150を製造した後、型締装置1を「型開」した状態が示されている。この状態において、成形品150から一部の部位150Aが取れてしまう場合がある。この場合、取れてしまった部位150Aが固定金型12の内部に残存することになる。これにより、固定金型12の内部に存在するスプルブッシュがスプルの部位150Aによって塞がれてしまう。したがって、スプルブッシュを塞ぐ部位150Aを除去する必要がある。この作業が異物である部位150Aを除去する異物除去作業である。
【0062】
ここで、射出装置2から射出された材料が流れる流路がランナ流路やスプルブッシュである。特に、分岐する前の流路がスプルブッシュと呼ばれている一方、分岐した後の流路がランナ流路と呼ばれている。具現化態様1において、ランナ流路やスプルブッシュに残存するランナやスプルといった異物を除去する異物除去作業は、主にロボット30によって行われる。具体的には、作業者がロボット操作装置200によってロボット30を操作することで異物除去作業が行われる。例えば、作業者がロボット操作装置200を操作することでロボット30を構成するアーム31およびグリップ部32を動作させることにより、グリップ部32でスプル等の異物(部位150A)を把持する。そして、作業者がロボット操作装置200を操作することにより、グリップ部32で把持した異物を型締装置1の外部に取り出す。このようにして、ロボット30による異物除去作業が完了する。
【0063】
ここで、ロボット30による異物除去作業を自動化することを考える。この場合、上述した成形品150の取り出し作業と同様に、ティーチングを行って異物除去作業を自動化することが考えられる。しかしながら、成形品150の取り出し作業とは異なり、異物除去作業の手順は不規則である。すなわち、異物の存在する場所や異物のサイズなどは様々であり、異物除去作業には様々な態様がある。
【0064】
したがって、ある特定の異物除去作業に対するティーチングを行っても、その他の種類の異物除去作業には、そのティーチングは役に立たない場合が多い。つまり、異物除去作業の自動化では、ある特定の異物除去作業に対応するティーチングによってロボット30に異物除去作業の手順を記憶させたとしても、手順の異なる異物除去作業の種類は無数にある結果、あらゆる異物除去作業に臨機応変に対応するようにロボット30による異物除去作業の自動化を実現することは困難なのである。つまり、ロボット30による異物除去作業の自動化は、ティーチングだけでは実現することが困難である。
【0065】
そこで、具現化態様1では、ティーチングの他に、機械学習で強化学習された学習モデルを搭載した制御装置を使用してロボット30の動作を制御することにより、「非定常作業」である異物除去作業の少なくとも一部の動作を自動化している。すなわち、具現化態様1では、作業者によるティーチングと、機械学習で強化学習された学習モデルを搭載した制御装置によるロボット30の制御とを組み合わせることにより、異物除去作業の少なくとも一部の動作を自動化している。これにより、ロボット30を操作する作業者の負担を軽減することが期待できる。以下では、具現化態様1について説明する。
【0066】
<<具現化態様1における射出成形システム>>
図4は、射出成形システムの機能構成を示すブロック図である。
【0067】
図4において、射出成形システムは、射出成形機100、ロボット30、ロボット操作装置200および制御装置300を有している。
【0068】
射出成形機100は、材料の混練および溶融をした後、材料を金型に流し込んで成形品を製造する装置であり、材料の溶融、型への流し込み(射出)、冷却および取り出しといった一連の射出成形工程を処理することができる装置である。
【0069】
この射出成形機100は、例えば、図4に示すように、型開閉検出部101、入力部104、記憶部105およびシーケンス制御部106を有している。
【0070】
型開閉検出部101は、射出成形機100に取り付けられた可動金型と固定金型との間の「型開」および「型閉」を制御するように構成されており、例えば、金型保護検出部102と型開閉位置検出部を含んでいる。
【0071】
金型保護検出部102は、完全に「型閉」動作が完了していないのに型締動作用のサーボモータの電流値が異常に上昇することを検出することにより異物が残存していることを検出するように構成されている。また、型開閉位置検出部103は、「型開」時や「型閉」時における可動金型13の位置を検出するように構成されている。
【0072】
入力部104は、射出成形機100に射出成形動作を実施させるためのパラメータ値や設定情報に代表される入力データを入力する機能を有する。そして、記憶部105は、入力部104に入力した入力データや、射出成形動作を実施するための射出成形動作プログラムやファイルを記憶するように構成されている。
【0073】
シーケンス制御部106は、例えば、記憶部105に記憶されている入力データ、射出成形動作プログラムおよびファイルなどに基づいて、材料の溶融、型への流し込み(射出)、冷却および取り出しといった一連の射出成形動作を制御するように構成されている。
【0074】
続いて、ロボット30は、射出成形機100から成形品を取り出す「定常作業」を行なうだけでなく、「定常作業」以外の異物除去作業に代表される「非定常作業」も行なうように構成されている。すなわち、具現化態様1におけるロボット30は、「定常作業」と「非定常作業」の両方を行う兼用ロボットであり、例えば、作動部33、記憶部36、制御部37および検出部38を有している。
【0075】
ロボット30は、アーム31とグリップ部32を有しており、アーム31およびグリップ部32は、作動部33によって動作が制御される。例えば、作動部33は、サーボモータ34とサーボアンプ35を有しており、サーボモータ34とサーボアンプ35によってアーム31およびグリップ部32が動作する。
【0076】
なお、サーボモータ34には、アーム31を動作させるためのアーム用サーボモータと、グリップ部32を動作させるグリップ部用サーボモータがあり、サーボアンプ35にもアーム用サーボアンプとグリップ部用サーボアンプがある。
【0077】
ただし、本明細書では、特に必要がない限り、アーム用サーボモータとグリップ部用サーボモータとをまとめてサーボモータ34と呼び、アーム用サーボアンプとグリップ部用サーボアンプとをまとめてサーボアンプ35と呼ぶ。
【0078】
記憶部36は、ロボット30を動作させるために必要な各種データやプログラムを記憶する機能を有し、制御部37は、記憶部36に記憶されている各種データやプログラムに基づいて、作動部33のサーボモータ34やサーボアンプ35を制御するように構成されている。すなわち、制御部37は、作動部33を制御することによって、ロボット30のアーム31やグリップ部32を動作させるように構成されている。
【0079】
検出部38は、ロボット30を動作させるために必要な情報を取得するためのセンサから構成され、例えば、超音波センサ39や撮像装置であるCCDカメラ等のカメラ40を有している。なお、超音波センサ39やカメラ40は、例えば、ロボット30のグリップ部に設けられるが、撮像装置には、ロボット30に取り付けられるカメラ40だけでなく、型締装置の可動盤に取り付けられるカメラなども存在してもよい。従って具現化態様1においては、カメラ40を含むセンサの数と種類は限定されない。
【0080】
次に、ロボット操作装置200は、作業者がロボット30を操作することができるように設けられた装置であり、例えば、操作処理部201、入力部203、出力部204および記憶部205を有している。
【0081】
入力部203は、ロボット30の検出部38からの出力信号や作業者からの操作信号を入力するように構成されており、操作処理部201は、入力部203から入力した信号に基づいて、ロボット30を操作するための指令信号を生成するように構成されている。そして、出力部204は、操作処理部201で生成された指令信号を出力する機能を有する。また、記憶部205は、データ、ファイルおよびプログラムを記憶する。
【0082】
なお、ロボット操作装置200は、作業者によるティーチングを実施することもできるように構成されており、例えば、操作処理部201には、作業者によるティーチングを実施するためのティーチング実施部202を有している。例えば、ロボット操作装置200は、ロボット30を操作する通常モードと、ティーチングを実施するティーチングモードとを備えており、通常モードは操作処理部201で実施される一方、ティーチングモードはティーチング実施部202で実施される。従ってロボット操作装置200は、本開示の制御装置の少なくとも一部の機能を備えたものでもよい。
【0083】
続いて、制御装置300は、「非定常作業」である異物除去作業の少なくとも一部の動作を自動化するための装置である。この制御装置300は、例えば、指令部301、補正判断部302、補正指令部303、異物確認部307および記憶部308を有している。
【0084】
指令部301は、ロボット30に初期指令信号である初期指令値を出力するように構成されており、後述する条件に合致した場合、指令部301から出力された初期指令信号(初期指令値)に基づいて、ロボット30は、異物除去作業を行うように動作を開始するように構成されている。また異物除去作業時に指令部301からロボット30に出力される初期指令信号は、作業者がロボット操作装置200を操作することによっても生成される。
【0085】
ここで、本明細書でいう「指令信号」とは、ロボット30をどれだけ移動させるかという具体的な数値(移動距離)まで含む指示態様とともに、移動距離は予め設定されて単にその移動距離を移動するか否かの「ON/OFF」だけの指示態様も包含する広い概念で使用しており、「指令信号」には、上述した「初期指令信号」と後述する「補正指令信号」とが含まれる。これに対し、本明細書でいう「指令値」とは、ロボット30をどれだけ移動させるかという具体的な数値(移動距離)を含む指示態様を意図しており、「指令値」は、「指令信号」の下位概念として使用している。この「指令値」にも、「初期指令値」と「補正指令値」とが含まれる。
【0086】
補正判断部302は、異物除去作業を行うための補正が必要であるか否かを判断するように構成されている。すなわち、補正判断部302は、初期指令値に基づくロボット30の動作によって異物除去作業を実施することができるか否かを判断する機能を有する。
【0087】
補正指令部303は、補正判断部302によって、異物除去作業を行うための補正が必要であると判断された場合、ロボット30に対して補正指令信号である補正指令値を出力するように構成されている。この場合、ロボット30は、補正指令信号(補正指令値)に基づいて、異物除去作業を行う。
【0088】
なお、上記において異物除去作業を行うための補正が必要であると判断された場合、補正指令信号をロボット30に送ることにより、ロボット30の作動を停止したり、ロボット操作装置200の表示画面に警告を発することも行われる。それらの場合では、作業者が補正指令信号に確認してから異物除去作業の次のステップを作動させる。従って補正指令部303から補正指令信号をロボット操作装置200に向けて出力し、その後にロボット操作装置200が操作されることにより制御装置からロボット30に向けて補正指令値が出力されるようなケースも本開示に含まれる。
【0089】
このように構成されている補正指令部303は、補正指令値算出部304、補正指令値算出用学習モデル生成部305および第1強化学習部306を有している。
【0090】
補正指令値算出部304は、補正指令値を算出する機能を有する。また、補正指令値算出用学習モデル生成部305は、補正指令値算出用学習モデルを生成するように構成されている一方、第1強化学習部306は、補正指令値算出用学習モデルに対して強化学習を行うように構成されている。例えば、補正指令値算出部304は、補正指令値算出用学習モデル生成部305で生成された補正指令値算出用学習モデルに基づいて補正指令値を算出する一方、第1強化学習部306は、異物除去作業を実施するために行われたロボット30の移動(特に、自動移動)における成功例および失敗例の両方に基づいて、第1強化学習工程において補正指令値算出用学習モデルを強化学習するように構成される。
【0091】
詳細に説明すると、補正指令値算出用学習モデル生成部305で生成される補正指令値算出用学習モデルには、アーム補正用学習モデルとグリップ部補正用学習モデルとが含まれている。そして、補正指令値算出部304は、アーム用補正指令値を算出する機能と、グリップ部用補正指令値を算出する機能とを有している。例えば、補正指令値算出部304は、アーム補正用学習モデルに基づいてアーム用補正指令値を算出する一方、グリップ部補正用学習モデルに基づいてグリップ部用補正指令値を算出するように構成されている。また、第1強化学習部306は、ロボット30の移動(特に、自動移動)における成功例および失敗例の両方に基づいて、アーム補正用学習モデルおよびグリップ部補正用学習モデルのそれぞれを強化学習するように構成されている。
【0092】
異物確認部307は、射出成形機100の型締装置における異物残留状態を確認するように構成されている。具体的に、異物確認部307は、成形品全部残留、成形品一部残留、ランナの詰まり、スプルの詰まりなどに異物残留状態を分類する機能を有する。
【0093】
異物確認部307は、例えば、ロボット30に取り付けられたカメラ40から出力されたカメラ画像に基づいて異物残留状態を分類する。特に、異物確認部307における異物残留状態の確認は、メーカ出荷前に制御装置300の記憶部308に教師あり学習させた異物残留状態確認用学習モデルを予め記憶させておき、この異物残留状態確認用学習モデルに基づいて行うことが考えられる。教師あり学習については、例えば、キャビティ面の色(光度)が出ていれば「異物残留なし」と教師あり学習させる一方、それ以外の色(光度)が発現している部分が存在する場合には、「異物残留あり」と教師あり学習させることにより、異物確認部307は、異物残留状態を確認できる。
【0094】
さらに使用する金型の種類によってランナやスプルの位置は相違するが、この場合も異物確認部307は、ランナやスプルの色の相違に基づいて、ランナ残留の有無や状態、スプル残留の有無や状態を見分けることができる。また更に成形品の製造工程を通して異物残留状態確認用学習モデルを用いて異物残留の有無や異物状態の確認を繰り返す。そして異物残留の有無の判断や異物残留の状態の判断が正しかった場合や間違っていた場合は、それぞれ前記判断のラベルデータを用いて異物残留状態確認用学習モデルを強化学習することにより、異物残留状態の認識精度を向上させることができる。
【0095】
上記のように異物残留状態確認用学習モデルの学習工程は、異物の状態(異物の形状または異物の位置、異物が無い状態も含む)をラベルとした前記異物残留状態確認用学習モデルの教師あり学習、または前記非定常作業を実施するために行われた前記ロボットの移動または把持における成功例および失敗例の両方に基づいた前記異物残留状態確認用学習モデルの強化学習等により行われる。
【0096】
記憶部308は、例えば、各種データ、ファイルおよびプログラムとともに、補正指令値、指令値算出用学習モデル、異物残留状態確認用学習モデルなどを記憶する機能を有する。さらに、記憶部308は、ティーチング記憶部315および過去異常状態記憶部314を含んでいる。ここで、ティーチング記憶部315は、ロボット操作装置200のティーチング実施部202で実施されたロボット30のティーチング(ロボット30の動作)に対応する初期指令値を記憶するように構成されている。また、過去異常状態記憶部314は、異物確認部307で確認した過去の異物残留状態を記憶するように構成されている。このとき、ティーチング記憶部315に記憶されている初期指令値と、過去異常状態記憶部314に記憶されている異物残留状態を示すデータとは関連付けて記憶されている。
【0097】
なお、具現化態様1では、図4に示すように、制御装置300は、射出成形機100、ロボット30およびロボット操作装置200とは、互いに無線を含む通信線で電気的に接続された独立構成要素として図示されているが、これに限らず、制御装置300は、射出成形機100、ロボット30およびロボット操作装置200のいずれかに組み込まれていてもよいし、制御装置300を構成する各機能部が射出成形機100、ロボット30およびロボット操作装置200に分散されて組み込まれていてもよい。
【0098】
以上のようにして、具現化態様1における射出成形システムが構成されている。
【0099】
<<射出成形システムの動作>>
次に、射出成形システムの動作について説明する。
【0100】
図5から図8は、射出成形システムの動作を説明するフローチャートである。
【0101】
1.図5に示すフローチャートの動作
図5において、成形品を製造する通常の成形工程では、ロボット30と射出成形機100とが動作している。そして、成形品を製造した後、射出成形機100において型開動作が完了したか否かが判断され(S101)、型開動作が完了した時点で、制御装置300の異物確認部307は、可動盤11に取り付けられたカメラ40Bやロボット30のグリップ部32に取り付けられたカメラ40Aなどを使用して固定金型面を撮影することにより異物の残留があるか否かを監視する(S102)。
【0102】
一般的には、可動金型面は、順調に成形品を製造できた場合、成形品が残留してエジェクタピンによって突き出されるため、異物が残留することは少ない。したがって、固定金型面に成形品の全部や一部分が残留することが問題であるため、カメラ40Aやカメラ40Bによって固定金型面が撮影されて、固定金型面が監視される。ただし、金型や成形品の種類によっては可動金型面も監視してもよい。
【0103】
異物確認部307において異物の残留が確認されない場合には(S103)、成形品を取り出した後、次の成形工程を実施するために再び型閉動作を行う(S104)。
【0104】
このとき、完全に型閉動作が完了していないのに型締装置1の型開閉用サーボモータの電流値が異常に上昇した場合、金型保護検出部102は、実際には異物が残留していると判断する(S105)。この金型保護検出部102による機能は、金型保護制御と呼ばれる機能であり、金型保護制御は、金型のキャビティ面を傷付けないようにするために射出成形機100に設けられている機能である。
【0105】
一方、金型保護検出部102においても異物の残留が検出されない場合には、「異物なし」として、次の成形品を製造する成形工程が実施される(S106)。
【0106】
これに対し、異物確認部307によって異物の残留が確認されている場合や、金型保護検出部102によって異物の残留が確認されている場合、異物確認部307は、異物残留状態がどのような状態であるかを確認する(S107)。
【0107】
具体的に、異物確認部307における異物残留状態の確認は、制御装置300の記憶部308に記憶されている異物残留状態確認用学習モデルにカメラ40Aやカメラ40Bから出力されたカメラ画像を入力することにより行われる。この結果、異物確認部307は、異物残留状態確認用学習モデルからの出力に基づいて、異物残留場所と異物残留種類を特定する。例えば、異物残留場所や異物残留種類としては、成形品全部残留、成形品一部残留、ランナの詰まり、スプルの詰まりなどを挙げることができる。
【0108】
続いて、制御装置300は、残留する異物の場所と種類が特定されると、以前に同じ金型で同一種類の異物が同一の場所に残留していた過去の異物残留状態が記憶部308の過去異常状態記憶部314に記憶されているデータに存在するか否かを検索する。すなわち、一旦異物除去作業が行われると、その際の異物の種類、形状および場所などの情報は、制御装置300の記憶部308にある過去異常状態記憶部314に記憶される。このため、制御装置300は、過去異常状態記憶部314に蓄積されている過去の異物残留状態を示すデータの中に同じ異物残留状態を示すデータがあるか否かを検索する。
【0109】
そして、過去異常状態記憶部314に蓄積されている過去の異物残留状態を示すデータの中に今回特定された異物残留状態と同じ異物残留状態(または略同一の異物残留状態)を示すデータが存在する場合(S108)、制御装置300は、ティーチング記憶部315に記憶されているロボット30のティーチングに対応する初期指令値を読み出す(S109)。その後、制御装置300の指令部301は、読み出された初期指令値をロボット30に出力する。これにより、ロボット30は、指令部301から出力された初期指令値に基づいて、自動移動して異物除去作業を行う(S110)。
【0110】
すなわち、ティーチング記憶部315には、ロボット30の異物除去作業として実施されたロボット30のティーチングを再現するための初期指令値を記憶するように構成されており、ティーチング記憶部315に記憶されている初期指令値と、過去異常状態記憶部314に記憶されている異物残留状態を示すデータとは互いに関連付けて記憶されている。つまり、過去異常状態記憶部314に記憶されている異物残留状態に対応する初期指令値がティーチング記憶部315に記憶されており、この初期指令値によってロボット30を自動移動させると、この初期指令値に関連付けられた異物残留状態を解消する異物除去作業が実施される。
【0111】
この際、例えば、超音波センサ39やカメラ40に基づく異常信号が発せられず正常に異物除去作業が実施された場合(S111)、制御装置300は、この成功例に基づく強化学習を異物残留状態確認用学習モデルに対して実施する(S112)。すなわち、制御装置300による自動制御に問題がないことがフィードバックされて、異物残留状態確認用学習モデルに対する強化学習に役立てられる。
【0112】
一方、ロボット30の上述した自動移動による異物除去作業を実施している際、例えば、金型面にロボット30のグリップ部32が異常接近したことを超音波センサ39が検知するなどして異常信号が発せられた場合(S111)、制御装置300は、この失敗例に基づく強化学習を異物残留状態確認用学習モデルに対して実施する(S113)。すなわち、制御装置300による自動制御に問題があったことがフィードバックされて、異物残留状態確認用学習モデルに対する強化学習に役立てられる。例えば、今回異物を認識した画像が過去のティーチングに基づくロボット30の自動移動に適合しなかったことが強化学習されて、異物残留状態確認用学習モデルの関数式が修正される。
【0113】
なお、ここでの動作は、ステップS108において、過去異常状態記憶部に蓄積されている過去の異物残留状態を示すデータの中に今回特定された異物残留状態を示すデータがあると判断されている場合の動作である。したがって、過去の異物残留状態に関連付けられた初期指令値を使用してロボット30を自動移動させているため、異常信号は殆ど発生しない。しかしながら、例えば、誤った画像認識をする可能性も皆無ではないため、異常信号が発せられた場合の対応もインターロック機能として設けられている。
【0114】
ステップS113を実施した後は、図6の「A」に進む。
【0115】
また、ステップS108において、過去異常状態記憶部に蓄積されている過去の異物残留状態を示すデータの中に今回特定された異物残留状態と同じ異物残留状態を示すデータが存在しない場合(S108)、制御装置300は、過去異常状態記憶部に蓄積されている過去の異物残留状態を示すデータの中に今回特定された異物残留状態と類似する異物残留状態を示すデータが存在するか否かを判断する(S114)。そして、類似する異物残留状態を示すデータが存在する場合には、図6の「B」に進む。一方、類似する異物残留状態を示すデータが存在しない場合には、図6の「A」に進む。
【0116】
2.図6に示すフローチャートの動作
次に、図6に示すフローチャートの動作について説明する。
【0117】
まず、初期指令値には、ロボット30のアーム31を自動動作させるためのアーム用初期指令値と、ロボット30のグリップ部32を自動動作させるためのグリップ部用初期指令値が含まれている。また、補正指令値には、アーム31の補正動作を実施させるためのアーム用補正指令値と、グリップ部32の補正動作を実施させるためのグリップ部用補正指令値とが含まれている。
【0118】
図6において、作業者は、ロボット操作装置200のアーム用ハンドルを操作する(S201)。これにより、ロボット30のアーム31が移動する。具体的には、ロボット操作装置200において、アーム用ハンドルの移動量(XYZ座標の移動量)がアームの先端に取り付けられたグリップ部32のXYZ座標の移動量に置換される。そして、グリップ部32のXYZ座標の移動量がロボット30のアーム用サーボモータの回転値に置換される(S202)。続いて、ロボット操作装置200からアーム用サーボモータの回転値を含む初期指令値がアーム用サーボアンプに送られた後、アーム用サーボアンプからアーム用サーボモータに信号が送られてアーム用サーボモータが駆動する(S203)。これにより、ロボット30に初期指令信号が送られてアーム31が移動する。
【0119】
この際、アーム31の先端に取り付けられているグリップ部32が金型や固定盤などに衝突させないようにする必要がある。このため、グリップ部32と金型や異物との距離がロボット30の検出部38を構成する超音波センサ39やカメラ40で測定される(S204)。そして、例えば、作業者がアーム用ハンドルの操作を誤ってハンドルの操作量が大きすぎる結果、グリップ部と金型や異物とが衝突する可能性がある場合(S205)、補正指令信号が送られてアーム用サーボモータの回転が停止された後(S206)、アラームが発信される(S207)。
【0120】
一方、グリップ部と金型や異物とが衝突する可能性がない場合(S205)、アーム31が最終目的位置(グリップ部32が動作すれば異物を把持可能な位置)に到達するまで上述したステップS201からの動作が繰り返される。
【0121】
そして、作業者が最終目的位置である把持位置にグリップ部32が到達したと判断すると、作業者はアーム用ハンドルの操作を中止する。これにより、ロボット操作装置200からロボット30に停止指令が出力される結果(S208)、アーム用サーボモータの回転が停止されてアーム31が停止する(S209)。
【0122】
ただし、この段階では、作業者はグリップ部32が動作すれば異物を把持可能な最適位置でアーム31を停止させていると考えても、実際には、グリップ部32の位置が異物を把持するためには遠すぎて最適位置でない場合もある。このため、ロボット30の検出部38を構成する超音波センサ39やカメラ40によって、グリップ部32と金型面や異物との位置関係と、グリップ部32の角度が確認される(S210)。
【0123】
次に、制御装置300の補正判断部302は、アーム31の自動移動に補正が必要か否かを判断する(S211)。補正判断部302によって補正が必要であると判断された場合、制御装置300の補正指令値算出部304は、アーム補正用学習モデルを使用してアーム用補正指令信号であるアーム用補正指令値を算出する(S212)。このとき、例えば、アーム補正用学習モデルは、予め補正指令値算出用学習モデル生成部305で生成されており、生成されたアーム補正用学習モデルは、例えば、記憶部308に記憶されている。したがって、補正指令値算出部304は、記憶部308に記憶されているアーム補正用学習モデルを使用してアーム用補正指令値を算出することができる。
【0124】
そして、補正指令部303は、補正指令値算出部304で算出されたアーム用補正指令値をロボット30に出力する。この結果、ロボット30は、アーム用補正指令値に基づいて、アーム用サーボモータの補正駆動が行われて、アーム31の補正動作が実施される。これにより、アーム31の位置が微修正される。
【0125】
一方、最初から補正判断部302において補正が不要であると判断された場合や、ステップS212とステップS213を繰り返すことにより補正が完了している場合、アーム31の位置がグリップ部32によって異物を把持するために最適な位置に到達しているものとして、図7の「C」に進む。
【0126】
なお、図5のステップS114において、過去異常状態記憶部に蓄積されている過去の異物残留状態を示すデータの中に今回特定された異物残留状態と類似する異物残留状態を示すデータが存在する場合には、図6のステップS211(「B」)に進み、ステップS211とステップS212とを実施することによって、アーム31の位置の微修正が行われる。つまり、過去の異物残留状態を示すデータの中に今回特定された異物残留状態と類似する異物残留状態を示すデータが存在する場合、類似する異物残留状態に対応するアーム用初期指令値に対して補正することにより、今回特定された異物残留状態に対する異物除去作業を実施するためのアームの自動移動を実現できることを考慮したものである。
【0127】
言い換えれば、過去の異物残留状態を示すデータの中に今回特定された異物残留状態と類似する異物残留状態を示すデータが存在する場合、類似する異物残留状態に対応するアーム用初期指令値を今回特定された異物残留状態に対する異物除去作業のアーム31の自動移動に利用することができる。
【0128】
これに対し、図5のステップS111において異常信号が発せられた場合や、図5のステップS114において過去異常状態記憶部に蓄積されている過去の異物残留状態を示すデータの中に今回特定された異物残留状態と類似する異物残留状態を示すデータが存在しない場合、過去の異物残留状態に対応するアーム用初期指令値を今回特定された異物残留状態に対する異物除去作業のアーム31の自動移動に利用することができない。
【0129】
したがって、この場合、上述したように、図6のステップS201からステップS210を実施して、今回特定された異物残留状態に対する異物除去作業のアーム31の自動移動を実現するための新たなアーム用初期指令値を設定する動作を行っている。
【0130】
すなわち、検出された異物の状態が過去にティーチングした際の異物の状態と同じ場合は、ティーチング実施部で実施されたティーチングに対応する初期指令値を初期指令部301を介してロボット30に出力し、検出された異物の状態が過去にティーチングした際の異物の状態と所定の類似の範囲内の場合は、初期指令値学習部401に格納された初期指令値算出用学習モデルを用いて演算された初期指令値を初期指令部301を介してロボット30に出力し、検出された異物の状態が過去にティーチングした際の異物の状態と著しく異なる場合(所定の類似の範囲以外の場合)は、作業者がロボット操作装置200を操作することによりロボット操作装置200から初期指令部301を介して送信された初期指令信号をロボット30に出力する。
【0131】
3.図7に示すフローチャートの動作
続いて、図7に示すフローチャートの動作について説明する。
【0132】
まず、作業者は、ロボット操作装置200のグリップ部用ハンドルを操作することにより、グリップ部32を移動させる(S301)。そして、ロボット操作装置200において、グリップ部用ハンドルの移動量がグリップ部32の移動量に置換される(S302)。その後、ロボット操作装置200において、グリップ部32の移動量からグリップ部用サーボモータの移動量が決定される。次に、ロボット操作装置200からグリップ部用サーボモータの移動量を含む初期指令値がグリップ部用サーボアンプに送られた後、グリップ部用サーボアンプからグリップ部用サーボモータに信号が送られてグリップ部用サーボモータが駆動する(S303)。これにより、グリップ部32が移動する。このとき、最初は高速でグリップ部32を移動させる一方、グリップ部32が異物に到達する直前で低速となるようにグリップ部32の移動速度を調整することが望ましい。
【0133】
ここで、グリップ部32の異物を直接挟む把持面は耐熱性および弾性を有するシリコーンゴムなどの物質が望ましい。なお、金属製のバネを使用してグリップ部32の弾性を確保してもよい。さらに、軽金属射出成形機で高温の異物を除去する場合、グリップ部の把持面は金属やガラスウールに代表される耐熱性の高い部材を使用することが望ましい。
【0134】
続いて、グリップ部32の把持力が強すぎると把持によって異物を粉砕してしまうため、グリップ部32の負荷(グリップ部用サーボモータのトルク)を検出する。このとき、グリップ部32の負荷が第1負荷値以上であると(S304)、グリップ部32の負荷が表示される(S305)。そして、グリップ部32の負荷が第1負荷値よりも大きい第2負荷値以上になると(S306)、自動的にグリップ部用サーボモータの回転が停止される(S308)。一方、グリップ部32の負荷が第1負荷値よりも大きい第2負荷値以上ではない場合であっても、作業者がこの負荷値でOKと判断するときは停止信号が出力されて(S307)、グリップ部用サーボモータの回転が停止する(S308)。
【0135】
次に、異物に対するグリップ部32の当接位置や負荷(把持力)が最終確認された後、制御装置300の補正判断部302は、グリップ部32の自動移動に対する補正が必要か否かを判断する(S310)。そして、補正判断部302によって補正が必要であると判断された場合、制御装置300の補正指令値算出部304は、グリップ部補正用学習モデルを使用してグリップ部用補正指令値を算出する(S311)。このとき、例えば、グリップ部補正用学習モデルは、予め補正指令値算出用学習モデル生成部305で生成されており、生成されたグリップ部補正用学習モデルは、例えば、記憶部308に記憶されている。したがって、補正指令値算出部304は、記憶部308に記憶されているグリップ部補正用学習モデルを使用してグリップ部用補正指令値を算出することができる。
【0136】
そして、補正指令部303は、補正指令値算出部304で算出されたグリップ部用補正指令値をロボット30に出力する。この結果、ロボット30は、グリップ部用補正指令値に基づいて、グリップ部用サーボモータの補正駆動が行われて、グリップ部32の補正動作が実施される。これにより、グリップ部32の位置が微修正される。
【0137】
一方、最初から補正判断部302において補正が不要であると判断された場合や、ステップS311とステップS312を繰り返すことにより補正が完了している場合、グリップ部32によって異物が正常に把持されているものとして、図8の「D」に進む。
【0138】
4.図8に示すフローチャートの動作
次に、図8に示すフローチャートの動作について説明する。
【0139】
図8において、アーム用サーボモータを駆動させることにより、異物を把持したグリップ部32が取り付けられているアーム31を移動させて異物除去動作を行う(S401)。アーム31の移動は、図6に示すステップS203の復路となるため、作業者による操作を行わなくても、制御装置300から自動的に指令値を送信することによって自動化が可能である。その後、アーム31を移動させて所定時間経過した際、制御装置300は、グリップ部32が異物を保持しているか否かを判断する(S402)。このとき、異物を保持しているか否かの確認は、例えば、グリップ部32の位置とグリップ部用サーボモータの負荷監視や作業者の目視などを組み合わせて行われる。
【0140】
そして、異物を保持していると判断される場合、予め定められた異物の開放位置までロボット30のアーム31を移動させた後(S403)、その位置でグリップ部32の開放動作を行う(S404)。なお、異物確認位置において、異物が保持されていない場合、異物除去作業の失敗例のラベルとなる。一方、グリップ部32によって異物開放位置で異物を正常に開放できた場合は成功例のラベルとなる。無論、金型に異物の残留がないことの確認も必要となるが、それは作業者やカメラによって行われる。
【0141】
続いて、異物除去作業が成功した場合、アーム31の動作をティーチングする(S405)。例えば、ロボット30のアーム31の移動軌跡と停止位置を含む初期指令値が制御装置300の記憶部308のティーチング記憶部315に記憶される。このとき、今回の異物残留状態も記憶部308の過去異常状態部314に記憶され、ティーチング記憶部315に記憶された初期指令値と、過去異常状態記憶部314に記憶された異物残留状態を示すデータとは互いに関連付けられて記憶される。なお、アーム31の補正動作が行われた場合には、初期指令値と補正指令値とを加えた値が新たな初期指令値としてティーチング記憶部315に記憶される。
【0142】
また、異物除去作業が成功した場合、グリップ部32の動作をティーチングする(S406)。例えば、ロボット30のグリップ部32の把持動作の移動量と把持力を含む初期指令値が制御装置300の記憶部308のティーチング記憶部315に記憶される。このとき、今回の異物残留状態も記憶部308の過去異物状態部に記憶され、ティーチング記憶部に記憶された初期指令値と、過去異常状態記憶部314に記憶された異物残留状態を示すデータとは互いに関連付けられて記憶される。なお、グリップ部32の補正動作が行われた場合には、初期指令値と補正指令値とを加えた値が新たな初期指令値としてティーチング記憶部315に記憶される。
【0143】
これにより、今後の異物除去作業において、同じ金型で同一種類の異物が同一の場所に残留していた場合、作業者が異物除去作業を行わなくても自動的にロボット30が異物除去作業を行うことができる。したがって、作業者の負担を軽減することができる。
【0144】
さらに、異物除去作業に成功した場合、上述したティーチングに加えて、アーム補正用学習モデルの成功例に基づく強化学習(S407)およびグリップ部補正用学習モデルの成功例に基づく強化学習(S408)が行われる。例えば、制御装置300の第1強化学習部306において、ニューラルネットワーク上で行われるディープラーニングの関数式(補正指令値の部分)が成功例として強化学習によって修正される。
【0145】
一方、異物除去作業に失敗した場合、アーム補正用学習モデルの失敗例に基づく強化学習(S409)およびグリップ部補正用学習モデルの失敗例に基づく強化学習(S410)が行われる。例えば、制御装置300の第1強化学習部306において、ニューラルネットワーク上で行われるディープラーニングの関数式(補正指令値の部分)が失敗例として強化学習(重み付けをマイナス)によって修正される。そして、異物を保持できていない場合のアーム31の位置にもよるが、図6の「A」または図6の「B」から異物除去作業の動作がやり直される。
【0146】
以上のようにして、射出成形システムを動作させることができる。
【0147】
<<ロボット制御プログラム>>
上述した射出成形システムで実施されるロボット制御方法は、射出成形機から成形品を取り出す定常作業以外の非定常作業を行うロボットの動作を制御する処理をコンピュータに実行させるロボット制御プログラムにより実現することができる。
【0148】
「非定常作業」を行うロボットの動作を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムは、ロボットに初期指令信号を出力するための指令処理手段と、非定常作業を実施するための補正が必要であるかを判断する補正判断処理手段と、補正判断処理によって、補正が必要であると判断された場合、ロボットまたはロボットの操作装置に対して補正指令信号を出力する補正指令処理手段を備えており、補正判断処理手段によって、初期指令信号値に基づく動作ではロボットが「非定常作業」を実施できないと判断された場合、補正指令処理手段によって、ロボットまたはロボットの操作装置に補正指令信号値を出力することにより、少なくとも補正指令信号に基づいて、ロボットに前記非定常作業を実施させることができる。
【0149】
例えば、コンピュータからなる制御装置300において、ハードディスク装置などからなる記憶部308に記憶されているプログラム群の1つとして、具現化態様1におけるロボット制御プログラムを導入することができる。そして、このロボット制御プログラムを制御装置300であるコンピュータに実行させることにより、具現化態様1におけるロボット制御方法を実現することができる。
【0150】
ロボットの動作を制御する処理に関するデータを作成するための各処理をコンピュータに実行させるロボット制御プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して頒布可能である。記録媒体には、ハードディスクやフレキシブルディスクに代表される磁気記憶媒体、CD-ROMやDVD-ROMに代表される光学記憶媒体、ROMやEEPROMなどの不揮発性メモリに代表されるハードウェアデバイスなどが含まれる。
【0151】
<<具現化態様1における特徴>>
続いて、具現化態様1における特徴点について説明する。
【0152】
具現化態様1における特徴点は、「非定常作業」の一例である異物除去作業の一部をロボット30で実施する際、初期指令値に基づいてロボット30の動作を開始することを前提として、初期指令値だけでは異物除去作業を実施できない場合、ロボット30に補正動作をさせるための補正指令値を算出し、算出した補正指令値をロボット30に出力することにより、ロボット30に異物除去作業を実施させる点にある。
【0153】
これにより、ロボット30の動作を高精度に制御することができる結果、異物除去作業を高精度に実施することができる。つまり、特徴点によれば、初期指令値だけでは異物除去作業を完了することができなくても、補正指令値を使用することによりロボット30に補正動作を行わせて異物除去作業を完了させる可能性を高めることができる。したがって、特徴点によれば、ロボット30による異物除去作業の成功確率を向上できる。
【0154】
さらに、具現化態様1における特徴点は、ティーチングの他に、機械学習で強化学習された学習モデルを搭載した制御装置を使用してロボット30の動作を制御することにより、異物除去作業の少なくとも一部の動作を自動化している点にある。すなわち、具現化態様1では、作業者によるティーチングと、機械学習で強化学習された学習モデルを搭載した制御装置によるロボット30の制御とを組み合わせることにより、異物除去作業の少なくとも一部の動作を自動化している。これにより、ロボット30を操作する作業者の負担を軽減することができる。ここにおいて機械学習で強化された学習モデルは、補正指令値算出用学習モデルであり、第1強化学習部306により強化学習される。
【0155】
本明細書でいう「ティーチング」とは、異物除去作業を完了することができた場合(成功例)のロボット30の移動軌跡などの条件(初期指令値)を記憶させることである。しかしながら、ある特定の異物除去作業に対するティーチングを行っても、その他の種類の異物除去作業には、そのティーチングはそのままでは役に立たない。なぜなら、異物除去作業の自動化では、ある特定の異物除去作業に対応するティーチングによってロボット30に異物除去作業の手順を記憶させたとしても、手順の異なる異物除去作業の種類は無数にある結果、あらゆる異物除去作業に臨機応変に対応するようにロボット30による異物除去作業の自動化を実現することは困難だからである。つまり、ロボット30による異物除去作業の自動化は、ティーチングだけでは実現することが困難である。
【0156】
この点に関し、具現化態様1では、ティーチングだけでなく、機械学習で強化学習された学習モデルによる補正も使用している。ここで、本明細書でいう「機械学習で強化学習された学習モデルによる補正」では、異物除去作業を完了することができた場合の成功例だけでなく、異物除去作業を完了することができなかった場合の失敗例も学習モデルの強化学習に使用される。すなわち、失敗例はティーチングとはそぐわない概念であり、ティーチングには使用されないが、「機械学習で強化学習された学習モデルによる補正」では使用される。この点で、ティーチングと「機械学習で強化学習された学習モデルによる補正」とは相違する。特に、具現化態様1で実施している「機械学習で強化学習された学習モデルによる補正」では、成功例だけでなく失敗例も強化学習に使用している点で、学習効率を向上できる点で有用である。
【0157】
また、例えば、「異物残留状態AAA」、「異物残留状態AAB」および「異物残留状態ABB」のティーチングが存在する場合、単純なティーチングだけでは、「異物残留状態ABA」が出現した場合に対応することができない。
【0158】
これに対し、「機械学習で強化学習された学習モデルによる補正」では、今回特定された異物残留状態と完全一致する過去の異物残留状態が存在しなくても、今回特定された異物残留状態と類似する過去の異物残留状態が存在していれば、その類似する異物残留状態に対する異物除去作業を利用して、今回特定された異物残留状態に対応する異物除去作業を完了することができる。すなわち、「機械学習で強化学習された学習モデルによる補正」によれば、「異物残留状態ABA」が出現した場合に対応することができる。
【0159】
この点で、ティーチングだけでなく、機械学習で強化学習された学習モデルによる補正も使用する具現化態様1における特徴点によれば、ティーチングだけを使用する構成に比べて、未知の異物除去作業にも柔軟に対応できるという技術的意義を有している。したがって、具現化態様1における特徴点は、異物除去作業の少なくとも一部の動作をロボット30で自動化する技術において臨機応変に対応できる技術を提供できる。この結果、特徴点によれば、ロボット30を操作する作業者の負担を軽減できる点で優れている。
【0160】
また、今回特定された異物残留状態と過去に類似する異物残留状態が存在しない場合、機械学習で強化学習された学習モデルにより初期指令値を生成することも考えられるが、精度が低下することも考えられる。そのため、作業者がロボット操作装置を操作することによりロボット操作装置から送信された初期指令信号をロボット30に出力し、それと同時に今回特定された異物残留状態に対するロボット制御のティーチングを行ってもよい。
【0161】
<具現化態様2>
具現化態様2では、ティーチングの他に、機械学習で強化学習された学習モデルを搭載した制御装置を使用してロボットの動作を制御することにより、「非定常作業」である異物除去作業を完全自動化する例について説明する。すなわち、具現化態様2では、補正指令値だけでなく、初期指令値も機械学習で強化学習する例について説明する。
【0162】
<<概要>>
具現化態様2における射出成形システムの動作は、具現化態様1における射出成形システムの動作を示す図5から図8と同等である。つまり、具現化態様2は、具現化態様1とベースとなる技術的思想は共通するため、具現化態様2に特有の部分を説明する。
【0163】
まず、図5に示すフローチャートに対応する部分は同等である。
【0164】
また、図6から図8に示すフローチャートにおいては、作業者がロボット操作装置を使用して操作する動作が、機械学習で強化学習された学習モデルを搭載した制御装置を使用してロボットを制御する動作になる。
【0165】
具体的に、射出成形機メーカは、出荷時から異物残留画面(異物の種類を含む)と異物未残留画面を多数教師あり学習により読み込ませて、カメラ撮影された状態で異物であるか否か、異物である場合は、その種類および異物の存在する場所を認識できるようにしておく。そして、異物の種類と場所に対して、ロボットの移動軌跡および作業内容とを対応づけて制御装置の記憶部に多数記憶させておく。
【0166】
例えば、カメラ撮影または金型保護制御によって実際に異物が固定金型などに検出されると、ロボットと固定金型との位置関係から、ロボットの移動軌跡のシミュレーションが実施される。例えば、最初の金型を取り付けた段階で、固定金型と可動金型とを合わせたいわゆる型厚(嵌合部は考慮せず)が測定される。また、可動金型の厚み(背面からキャビティ面までの厚み)は、ロボットを取出機として使用する際に、可動盤の型開時の位置からロボットの前進位置を減算することにより求められる。そして、型厚から可動金型の背面からキャビティ面までの厚みを減算することにより、固定金型の背面からキャビティ面までのおおよその厚み(成形品の肉厚は考慮せず)が算出される。これにより、ロボットと固定金型の位置関係がわかり、ロボットの移動軌跡のシミュレーションが行われる。
【0167】
このようにして、ロボットの移動軌跡がシミュレーションされると、それらは、作業者が操作する場合と同様に、制御装置の指令部からロボットのサーボアンプを介してサーボモータに初期指令値が出力される。この結果、ロボットは、制御装置から出力された初期指令値に基づいて金型関連作業の「非定常作業」を行う。
【0168】
この際の初期指令値は、固定金型のキャビティ面の位置を完全に正確に把握するには手間が多くかかることから、グリップ部が異物を完全に挟める位置のやや手前で停止させるための値とすることが望ましい。
【0169】
そこからは、具現化態様2における動作も図6のステップS205から同様となる。また、グリップ部による把持動作も作業者がグリップ部を操作しないため、作業者がグリップ部の負荷表示を見て、これ以上強く把持してはいけないとの判断は行わないが、基本的には、図7および図8に示すフローチャートと同様である。すなわち、具現化態様2では、予め定められた負荷の範囲内で異物に把持が行われる。そして、異物除去作業が完了した場合、アームの移動およびグリップ部の把持の両方についてティーチングが行われる。
【0170】
<<<初期指令値の自動生成>>>
次に、具現化態様2では、初期指令値を自動生成しているので、この点を説明する。
【0171】
例えば、メーカ出荷時までにどのような金型でも共通するパターンについては、多数の画像データを制御装置に教師あり学習させることにより学習モデルを生成する。具体的には、キャビティ面の色の違いなどを機械学習させて学習モデルを生成する。
【0172】
そして、カメラで撮影した画像を制御装置に出力して、どういった異物残留状態であるかを判断させる。ただし、個別の金型ごとによく発生する異物残留状態がある。例えば、特定のランナ溝の部分に材料が残存してしまうことがあるので、その場合は、この異物残留状態を機械学習させる。
【0173】
基本的な異物残留状態における異物除去作業についても、メーカ出荷時までに制御装置にプログラミングしておく。すなわち、成形品が全面的に固定金型に残留した場合の対処方法や主要な位置にスプルのみが残留した場合の対処方法などについてプログラミングする。ただし、異物除去作業も、また個別の金型ごとに大幅に異なることから、実際にベースとなる学習モデルによる初期指令値に基づいて、基本形のアームの移動を行い、アームの移動に補正が必要な場合は、補正指令値により補正を行う。グリップ部32の動作の制御指令値についても同様に学習モデルを用いて生成が行われるとともに実際の異物除去作業がうまくいった場合とうまくいかなかった場合で、それぞれ学習モデルを強化学習していく。これにより、まったく同じ作業は、制御装置を使用してティーチングすることができたことになり、類似の異物除去作業も制御装置がロボットの最適な動作状態を類推することができるようになる。
【0174】
例えば、異物除去作業以外の「非定常作業」も同様に基本の学習モデルは制御装置の記憶部に格納されており、金型ごとに初期指令値からロボットの動作を行い、補正が必要な場合は制御装置からロボットに対して補正指令値を出力する。これにより、まったく同じ作業は制御装置を使用してティーチングすることができたことになり、類似の作業も制御装置がロボットの最適な動作状態を類推することができるようになる。
【0175】
なお、学習モデルを用いた類似の作業の制御の類推の手法については、後述する<<学習モデルの一例>>の部分で詳しく説明する。
【0176】
<<具現化態様2における射出成形システム>>
具現化態様2における射出成形システムの機能ブロック構成は、具現化態様1における射出成形システムの機能ブロック構成とほぼ同様であるため、相違点を中心に説明する。
【0177】
図9は、具現化態様2における射出成形システムの機能ブロック図である。
【0178】
制御装置300は、「非定常作業」である異物除去作業の動作を完全に自動化するための装置である。制御装置300Aは、指令部301、補正判断部302、補正指令部303、異物確認部307、記憶部308、学習部400および入力装置404を有する。
【0179】
学習部400は、初期指令値学習部401と補正指令値学習部402から構成されている。そして、初期指令値学習部401は、初期指令値算出用学習モデル生成部310と第2強化学習部311とを含んでいる。一方、補正指令値学習部402は、補正指令値算出用学習モデル生成部305と第1強化学習部306を含んでいる。
【0180】
初期指令値学習部401は、初期指令値を算出する機能を有する。また、初期指令値算出用学習モデル生成部310は、初期指令値算出用学習モデルを生成するように構成されている一方、第2強化学習部311は、第2強化学習工程において初期指令値算出用学習モデルに対して強化学習を行うように構成されている。例えば、初期指令値学習部401は、初期指令値算出用学習モデル生成部310で生成された初期指令値算出用学習モデルに基づいて初期指令値を算出する一方、第2強化学習部311は、異物除去作業を実施するために行われたロボット30の自動移動における成功例および失敗例の両方に基づいて、初期指令値算出用学習モデルを強化学習するように構成されている。
【0181】
詳細に説明すると、初期指令値算出用学習モデル生成部310で生成される初期指令値算出用学習モデルには、アーム用学習モデルとグリップ部用学習モデルとが含まれている。そして、初期指令値学習部401は、アーム用初期指令値を算出する機能と、グリップ部用初期指令値を算出する機能とを有している。例えば、初期指令値学習部401は、アーム用学習モデルに基づいてアーム用初期指令値を算出する一方、グリップ部用学習モデルに基づいてグリップ部用初期指令値を算出するように構成されている。
【0182】
また、第2強化学習部311は、ロボット30の自動移動における成功例および失敗例の両方に基づいて、アーム用学習モデルおよびグリップ部用学習モデルのそれぞれを強化学習するように構成されている。
【0183】
補正指令値学習部402は、補正指令値を算出する機能を有する。また、補正指令値算出用学習モデル生成部305は、補正指令値算出用学習モデルを生成するように構成されている一方、第1強化学習部306は、第1強化学習工程において補正指令値算出用学習モデルに対して強化学習を行うように構成されている。例えば、補正指令値学習部402は、補正指令値算出用学習モデル生成部305で生成された補正指令値算出用学習モデルに基づいて補正指令値を算出する一方、第1強化学習部306は、異物除去作業を実施するために行われたロボット30の自動移動における成功例および失敗例の両方に基づいて、補正指令値算出用学習モデルを強化学習するように構成されている。
【0184】
詳細に説明すると、補正指令値算出用学習モデル生成部305で生成される補正指令値算出用学習モデルには、アーム補正用学習モデルとグリップ部補正用学習モデルとが含まれている。そして、補正指令値学習部402は、アーム用補正指令値を算出する機能と、グリップ部用補正指令値を算出する機能とを有している。例えば、補正指令値学習部402は、アーム補正用学習モデルに基づいてアーム用補正指令値を算出する一方、グリップ部補正用学習モデルに基づいてグリップ部用補正指令値を算出するように構成されている。また、第1強化学習部306は、ロボット30の自動移動における成功例および失敗例の両方に基づいて、アーム補正用学習モデルおよびグリップ部補正用学習モデルのそれぞれを強化学習するように構成されている。
【0185】
このように具現化態様2では、初期指令値を生成するための初期指令値算出用学習モデルと、初期指令値で異物の近くにアーム31が移動してから補正(微修正)するための補正指令値算出用学習モデルとが存在し、初期指令値算出用学習モデルと補正指令値算出用学習モデルとは別の学習モデルなので、学習部400が初期指令値学習部401と補正指令値学習部402とを含むように記載されている。そして、それぞれの学習部に強化学習部が含まれるように記載されている。
【0186】
なお、最初から一発で完全に正しい異物除去可能位置にロボット30を移動させることは困難であると考えられる。すなわち、型開時に可動盤に取り付けられたカメラによって得られた情報から推定される異物情報と、ロボット30が実際に異物のそばに近づいてグリップ部32に搭載されたカメラから得られた異物情報では、後者のほうから詳しい情報を得られることが多く、インターロック回路の意味でも補正指令値は必要である。
【0187】
記憶部308は、学習モデル記憶部312、過去動作ログ記憶部313および過去異常状態記憶部314を含んでいる。ここで、学習モデル記憶部312には、上述した初期指令値算出用学習モデルと補正指令値算出用学習モデルとが記憶される。なお、学習モデルは、金型ごとに記憶されるが、例えば、異物の種類ごとに記憶したり、それらを掛け合わせた形で記憶させることもできる。過去動作ログ記憶部313は、ロボット30のティーチング(ロボット30の動作)に対応する初期指令値を記憶するように構成されている。また、過去異常状態記憶部314は、異物確認部307で確認した過去の異物残留状態を記憶するように構成されている。このとき、過去動作ログ記憶部313に記憶されている初期指令値と、過去異常状態記憶部314に記憶されている異物残留状態を示すデータとは互いに関連付けて記憶されている。
【0188】
入力装置404は、制御装置300Aによりオフラインティーチングを行うに際しては、射出成形機情報と金型情報に伴ったロボット30の移動可能な仮想空間情報(後でロボット30が金型に当接しそうになったら強化学習により変更される)を入力するように構成されている。また、入力装置404は、異物の種類によってどの異物除去器具を使ってどの程度の強さで把持や当接させるのかといった基本的な情報(後で異物除去作業に失敗したら強化学習により変更される)を入力するように構成されている。なお、予め異物の種類と異物の発生する位置を想定して、幾通りかのロボット30の初期指令値は、上述した仮想空間情報を用いてオフラインティーチングにより入力装置404から入力される。
【0189】
以上のようにして、具現化態様2における射出成形システムが構成されている。
【0190】
<<学習モデルの一例>>
具現化態様2で使用する初期指令値を生成するための初期指令値算出用学習モデルは、中間層が複数存在するディープラーニングを想定している。
【0191】
特に、回帰型ニューラルネットワークにおいては、線形回帰を使用して過去にデータのない指令値を予測することができる。
【0192】
以下では、簡単なモデルケースを例に挙げて初期指令値を生成するための初期指令値算出用学習モデルを説明する。
【0193】
(1)金型の左上部(座標:1、1)に異物がありロボットを移動させて異物の除去に成功した際のロボットの移動軌跡のティーチングデータ、(2)金型の右上部(座標:1、3)に異物がありロボットを移動させて異物の除去に成功した際のロボットの移動軌跡のティーチングデータ、(3)金型の中央下部(座標:3、2)に異物がありロボットを移動させて異物の除去に成功した際のロボットの移動軌跡のティーチングデータが既にあるものとする。そこから、回帰型ニューラルネットワークの学習モデル(複数の関数式)を使用して、(4)金型の中央上部に異物があると検出された際のロボットに指令位置Xが(座標:1、2)と推定される。
【0194】
ここにおいて、過去の成功データ(1)、(2)、(3)と、過去データのない検出された位置(4)は説明変数であり、ここから制御装置が推測した位置X(座標:1、2)が目的変数に対応する。
【0195】
そして、(座標:1、2)に行きなさいという初期指令値が制御装置からロボットに出力され、この初期指令値に基づいてロボットが動作する。その際に、ロボットのアームとグリップ部が金型面や異物に干渉せず(干渉しないことは超音波センサやカメラにより事前チェックされる)、ロボットが(座標:1、2)に到達した際に、異物前面のグリップ部を僅かに前進させたら異物を把持できる位置かどうかを補正判断工程において判断する。
【0196】
補正判断工程においてグリップ部を僅かに前進させたら異物を把持できる位置にロボットが到達していると判断された場合、回帰型ニューラルネットワークの学習モデルの活性化関数などから構成される関数式は、強化学習により重み付けが変更されて更新される。具体的には、金型の中央上部(座標:1、2)に異物が検出された際に、初期の3点のデータを基にした線形回帰モデルを使用して推測したロボットの初期指令値(位置X)が正しかったので、金型の中央下部(座標:1、2)以外の金型の位置で異物が発見された際も、今回と同じ線形回帰モデルを使用して推測したロボットの初期指令値(場所)も正しい確率が高くなると判断し、そのように導き出すことができた関数式の報酬の重み付け係数を増加させる。
【0197】
また、金型の中央上部に異物が検出され、回帰型ニューラルネットワークの線形回帰モデルを使用してロボットの移動位置(座標1、2)を推測し、推測位置から生成される初期指令値に基づいてロボットが(座標1、2)に到達して停止したにも関わらず、(座標1、2)がグリップ部を僅かに前進させた後に異物を把持できる位置ではないと判断された場合は(判断はカメラ画像と超音波センサを使用して行う)、回帰型ニューラルネットワークの初期指令値を生成するための初期指令値算出用学習モデルに含まれる活性化関数などの関数式についても強化学習により修正される。具体的には、線形回帰により、データがある3点を基にして中央上部(座標:1、2)の画像が示されたときの初期指令値が、補正後の位置に到達するような初期指令値を含む線形となるように関数式の集合体に変更される。すなわち、前回(座標:1、2)を導出した関数式の重み付けの係数が小さくなるように変更される。そして、ニューラルネットワークを使用した場合に(座標:1、2)を導出した際の報酬が最も高くなるように強化学習が行われる。
【0198】
このため、次回からは、カメラで認識した位置(中央上部(座標:1、2))に限らず、中央下部やや右寄り(座標:3、2.2)などの他の位置において異物が認識された際にも、変更後の学習モデルの関数式を使用しての推定移動位置(指令値)が、より正確となる確率が高くなるように僅かに変更される。この際の強化学習には、誤差逆伝播法(バックプロパゲーション)という手法を使用することが主流である。ただし、これに限らず、その他の強化学習として、TD学習(その中の代表としてQ学習)やモンテカルロ法などを使用することもできる。
【0199】
なお、上記では、非常に単純化してロボットの停止位置(目標位置)を説明しているが、実際は、異物の形状や種類によっても停止位置は異なる。異物が把持可能なものであるならグリップ部で把持可能な位置が望ましい。また、異物が把持することが困難なもの(例えば、スプル孔から突出していないスプル)の場合、熱した棒状部材などによりスプルの除去を行うが、前記棒状部材をスプルの前面位置に正確に停止させる必要がある。さらに金型のランナ残留の場合は、正面ではなく、ランナ溝の側方から「へら」などで押し出すことも考えられ、この場合、必ずしも異物の正面が最適な異物除去器具の停止位置とは限らない点に留意する必要がある。
【0200】
ここでは、学習モデルとして、ニューラルネットワークを使用する例について説明したが、これに限らず、決定木を使用した手法を適用することも考えられる。すなわち、決定木を使用した手法は、今後上述したような簡易的な制御の主流となる可能性を秘めていることから、決定木を使用した手法も有望である。
【0201】
決定木を使用した手法は、制御の良否について○×で絞り込んでいく手法であり、サンプルデータの少ない制御にも有効であると考えられている。特に、DBT(ディープ・バイナリ・ツリーの略)で日本語では「深層二分木」と呼ばれる手法が期待されている。
【0202】
また、上記の補正判断工程において初期指令値によりグリップ部32を前進させた位置が、そのまま異物を把持 できない位置か或いは僅かにグリップ部32を前進させた後に異物を把持できる位置ではないと判断された場合(初期指令値に基づく動作ではロボットが非定常作業を実施できないと判断された場合)は、補正指令工程によりアーム31の状態またはグリップ部32の状態(異物とグリップ部の相対的な位置関係および角度を含む)の補正を行う。
【0203】
補正指令工程については初期指令値の場合と同様に現在のグリップ部32と異物の関係に対して過去に同じ関係であった際の制御履歴があれば内容がそのまま適用された補正指令値が生成される。すなわち、過去の制御履歴がティーチングデータに相当する。
【0204】
また、現在のグリップ部32と異物の関係に対して過去に類似する関係の制御履歴があれば機械学習装置を用いて現在のグリップ部32と異物の関係に基づいた補正指令値が生成される。この際に補正指令値算出用学習モデルを用いた補正指令値によりアーム31を移動させた際、グリップ部32により異物を把持した際に良好に把持された場合は、次回からは前記関係においてアーム31を移動させる際のティーチングがティーチング実施部により実施される。また同時に補正指令値算出用学習モデルが成功例により強化学習される。また前記補正指令値に基づいてロボット30よりアーム31を移動させて非定常作業を実施させようとしてグリップ部32により異物を把持した際に、良好に異物の把持できなかった場合は、補正指令値算出用学習モデルが失敗例により強化学習される。
【0205】
これらの補正指令値算出用学習モデルの強化学習の内容は、上記した初期指令値を生成するための初期指令値算出用学習モデルの説明と同じか類似するので説明を援用し、重複する説明は行わない。
【0206】
また、現在のグリップ部32と異物の位置関係に対して過去に類似する関係(相対的な位置および角度の関係)の制御履歴が全く無ければそのことがロボット操作装置200の表示画面等に表示され、作業者がロボット操作装置200を用いてロボット30を直接制御して補正指令値を生成し、アーム31およびグリップ部32を、異物を把持するのに最適な位置に移動させる。またその際の制御履歴は、ティーチングされティーチング記憶部315に格納される。
【0207】
なお、本開示においてロボットにより異物を除去するまでの工程で用いる学習モデルは、初期指令値算出用学習モデルのみを用いることによっても実行可能であり、補正指令値算出用学習モデルは必須のものではない。すなわち、異物除去時のロボット制御は、成功例および失敗例の学習を重ねるにつれて一度の指令によりグリップ部32が異物を把持するために最適な目的位置に到達できる公算が極めて高くなる。そして、グリップ部32が最適な目的位置に到達していない場合が少ないか位置の誤差が小さければ、補正判断部は補正が必要と判断された場合に学習モデルを使用しないで生成した補正指令信号(補正指令値)を送信することで事足りる場合もある。またはその際に作業者が補助的にロボット操作装置200を操作して制御装置により補正指令値を生成することも考えられる。
【0208】
<<具現化態様2における特徴>>
続いて、具現化態様2における特徴点について説明する。
【0209】
具現化態様2における特徴点は、機械学習で強化学習された学習モデルを搭載した制御装置を使用してロボットを制御することにより、「非定常作業」を完全自動化する基本思想の理想態様を具現化している点にある。すなわち、特徴点は、補正指令値を機械学習装置に格納された補正指令値算出用学習モデルを用いて算出するだけでなく、初期指令値も機械学習装置に格納された初期指令値算出用学習モデルを用いてで算出する点にある。
【0210】
これにより、特徴点によれば、基本思想の理想態様を実現することができる。この結果、具現化態様2によれば、作業者がロボットを操作することがなくなり、作業者の負担を軽減することができるとともに、作業者が有資格者に限定されるという問題も解消できる。
【0211】
<具現化態様1および具現化態様2に適用可能な変形例>
<<変形例1>>
射出成形システムを構成する射出成形機は、例えば、図10に示すような縦型射出成形機100Aから構成されていてもよい。
【0212】
図10は、縦型射出成形機100Aを模式的に示す図である。この縦型射出成形機100Aでは、縦方向(鉛直方向)に型締装置1Aの可動盤11Aと該可動盤11Aに取付けられる可動金型13Aが移動されるように構成されている。縦型射出成形機100Aにおいては、可動盤11Aが上昇位置で停止した場合、当然ながら停電時でも作用する落下防止機能を備えている。ただし、作業者が可動盤11A(可動金型13A)の下に入って異物除去作業をすることは心理的な負担が大きい作業といえる。また、上型の下面に付着した異物を除去する作業は、作業者の目が上側になるように頭の角度を変える必要があり、負荷の大きい作業といえる。
【0213】
このため、例えば、作業者の代わりにロボット30Aを使用して縦型射出成形機100Aにおける異物除去作業に代表される「非定常作業」を行わせることができる。この場合、作業者の負担が大きい作業をロボットが実施するため、作業者の負担を低減できる。
【0214】
<<変形例2>>
例えば、射出成形機には、熱硬化性樹脂を材料とする熱硬化性樹脂用射出成形機や、マグネシウムに代表される軽金属を材料とする軽金属用射出成形機がある。
【0215】
熱硬化性樹脂用射出成形機や軽金属用射出成形機では、金型に異物が発生した場合、異物が高温状態にあることが多いため、作業者が異物除去作業を行う際、高温から手を保護するための皮手袋などを装着する必要があるが、できれば避けたい作業である。
【0216】
そこで、この場合も、作業者の代わりにロボットを使用して異物除去作業に代表される「非定常作業」を行わせることができる。特に、熱硬化性樹脂用射出成形機や軽金属用射出成形機が中型以下(一例として、型締力が200t以下(2000kN以下))の場合、固定盤や固定金型の大きさも所定値以下であることから、異物除去作業を行うロボットとして消費電力が80kW未満の協働ロボットを使用することができる。協働ロボットの場合、作業者が協働ロボットを操作して移動軌跡などをティーチングする際の制限事項を少ないので、誰でも容易にロボットを使用した異物除去作業を行うことができる。
【0217】
<<変形例3>>
本変形例3では、「非定常作業」だけを行う専用ロボットを採用する例を説明する。
【0218】
図11は、工場に射出成形システムを配置する例を示す模式図である。
【0219】
図11において、工場のフロアには、多数の射出成形機100B1、100B2、100B3・・・が並んで配置されており、それに対してフロア上を移動可能なロボット30Bが1台または射出成形機100B1等の台数よりも極めて少ない台数だけ準備されている。そして、本変形例3では、1台のロボット30Bを各射出成形機100B1等の間で移動させて何等かの「非定常作業」を行う。ここでいう「非定常作業」とは、連続成形サイクル時に毎回発生する成形品の取出作業を除くものである。
【0220】
例えば、「非定常作業」には、異物除去作業の他、キャビティ面の清掃作業(表面に付着した物質の除去作業)、キャビティ面への離型剤噴霧作業、設置不良のインサート物の除去作業、ロボット30Bの先端にカメラや温度センサや探傷装置などを取り付けての金型状態の精密検査作業および金型交換作業などが含まれる。
【0221】
特に、ロボット30Bを用いた金型交換作業においてボルトの締結作業や温調用カプラの着脱作業を行う際には専用のグリップ部をアームに取付けて作業が行われる。
【0222】
ロボット30Bによるボルトの締結作業は、締付トルクを一定に行うことができる。また、ロボット30Bによるボルトの締結作業は、図10に示すような縦型射出成形機100Aの場合、可動盤11Aの下面に可動金型13Aを取付ける際などに作業者の作業負担を軽減することが可能となる。
【0223】
本変形例3の利点は、「非定常作業」を行うロボット30Bと取出機とが兼用ではなく、ロボット30Bが「非定常作業」だけを行う専用ロボットから構成されているため、取出機としては、現在使用している装置を継続して利用できる点にある。すなわち、取出機としては、大抵の場合、XYZ軸方向に直線的に移動するものか、あるいは、水平取り出しの場合、水平方向と型ア開閉方向に移動して後は吸盤かチャック部分が首振りするものが使用される。これらは、多軸ロボットと比較すると価格も安いと言える。
【0224】
一方、「非定常作業」を行うロボット30Bは、大抵の場合、多軸ロボットから構成される。つまり、本変形例3では、「非定常作業」を行うロボット30Bの1台だけを高価な多軸ロボットから構成すればよい。この結果、本変形例3によれば、各射出成形機に高価な多軸ロボットを設ける必要がないため、射出成形システムのコストを削減できる。
【0225】
なお、ロボット30Bは、本体の下部のベース板にキャスタが取り付けられているため、フロアを移動可能に構成されている。このことから、ロボット30Bは、各射出成形機100B1等に移動することができる。また、ロボット30Bは、射出成形機100B1等の型開した金型の操作側近傍位置、または、型開した金型の反操作側近傍位置にロックして、射出成形機100B1等に対するロボットの位置が常時同じになるように固定される。すなわち、射出成形機100B1等のベッド(基台)に対して、ロボット30Bの基台を完全にロックできるようになっている。これにより、固定盤や可動盤に対するロボット30Bの位置が一定となる結果、ある射出成形機100B1で使用したデータを前記射出成形機100B1と同一機種の別の異なる射出成形機100B2,100BC・・・に同一金型を取り付けた場合に使用することが可能となる。
【0226】
<<変形例4>>
例えば、ロボット30は、多軸ロボットやXYZ軸移動式ロボットから構成することができる。そして、ロボット30は、取出機と兼用される兼用ロボットでもよいし、取出機とは別の専用ロボットでもよい。以下では、兼用ロボットを前提として説明する。
【0227】
図12は、兼用ロボットの構成例を示す模式図である。特に、図12(a)は、兼用ロボット30Cを多軸ロボットから構成する例を説明する模式図であり、図12(b)は、兼用ロボット30DをXYZ軸移動式ロボットから構成する例を説明する模式図である。
【0228】
兼用ロボット30Cを多軸ロボットから構成する場合、兼用ロボット30DをXYZ軸移動式ロボットから構成する場合よりも、異物の取り出しには金型面に対するグリップ部の角度も変えることができるため様々な状況に対応できる利点が得られる。一方、多軸ロボットは、XYZ軸移動式ロボットと比較して高価である。言い換えれば、XYZ軸移動式ロボットは、多軸ロボットよりも安価であるという利点を有している。
【0229】
例えば、兼用ロボット30C、30Dは、固定盤10の上面に固定されるものが多いが、可動盤11の上面に固定するように構成されていてもよい。ただし、可動盤の上面に固定される兼用ロボットの場合、移動物の重量が重くなるという不利な点がある。また、兼用ロボット30C、30Dは、射出成形機100に取り付けられる構成だけでなく、射出成形機100の外部に設けられてもよい。
【0230】
固定盤の上面や可動盤の上面に取り付けられる兼用ロボットでは、図示しない安全扉を閉鎖した状態で成形品150を上方向に取り出すことができる。これに対し、水平方向に移動する(上下方向には移動できない)兼用ロボットでは、安全扉の一部または全部を開放した状態でないと成形品150を取り出すことができないものがあり、その場合、兼用ロボットの周囲も含めて作業者が立ち入ることができないように安全カバーなどを設ける必要がある。
【0231】
なお、XYZ軸移動式ロボットでも、金型面12Aに対して上下左右には移動した上で、グリップ部32を金型面12Aに近づけることができることから、平板などの比較的単純な形の成形品150が固定金型12側に残留した際などの取り出しには有利である。
【0232】
<<変形例5>>
本変形例5では、グリップ部のバリエーションについて説明する。
【0233】
図13(a)から図13(c)は、グリップ部のバリエーションを示す図である。
【0234】
図13(a)においては、グリップ部に吸盤50Aと把持機構50Bの両方が取り付けられている例が示されている。グリップ部は、ランナ・スプル把持用やゲート切断用の場合もあるし、異物除去作業専用の場合もある。
【0235】
図13(b)においては、グリップ部に把持機構50Bが取り付けられており、成形品の取り出しと異物除去作業を兼用する例が示されている。このとき、把持機構50Bは回転可能に構成されており、例えば、把持機構50Bの回転駆動源としては、サーボモータやステッピングモータなどで駆動する電動のものであってもよいし、エアシリンダを使用するものであってもよい。特に、電動機構によれば、異物の大きさや挟まっている状態が相違する場合に容易に対応することができる。
【0236】
図13(c)においては、吸盤50Aと把持機構50Bのいずれか一方をグリップ部に取り付ける例が示されている。このように、グリップ部においては、吸盤50Aと把持機構50Bを付け替えることができるように構成されていてもよい。
【0237】
例えば、ロボットに吸盤50Aだけが取り付けられたタイプでも、吸盤50Aの向きを180度回転させれば比較的簡単な成形品の残留に対応することができる。ただし、可動金型側に成形品が残留した際には、成形品の凸面を吸着するのに対し、固定金型側に成形品が残留した際には、成形品の凹面を吸着することになる。このため、固定金型側に成形品が残留した場合、そのままでは吸盤で吸着することが困難となることも想定され、一部の吸盤50Aだけで吸着するか、あるいは、各吸盤50Aの突出高さ(金型面に対する相対的な距離)を変更するという対応を考える必要がある。
【0238】
これに対し、把持機構によって成形品のスプルやランナを把持して取り出すタイプでは、固定金型側に成形品が残留した際、把持機構によって成形品を掴むことができる部分がないことも考えられる。ただし、固定金型面にランナやスプルのみ残留した場合、吸盤で吸着するよりも把持機構によって把持して引き抜いたほうがよいことがある。
【0239】
したがって、例えば、兼用ロボットでは、グリップ部の片方に吸盤を取り付けるとともに、グリップ部の他方に180度回転可能な把持機構が設けられている構成が最も汎用性が高い構成であるということができる。
【0240】
なお、グリップ部は、例えば、サーボモータによって駆動させることができる。このサーボモータによる駆動は、把持機構同士の間隔制御や把持機構による負荷を把握する点で有利であるが高価となる。そこで、例えば、負圧ポンプに接続されるエア吸引管を設けることによる吸盤での吸引と、コンプレッサに接続される高圧エア管を設けることによるエアシリンダでの把持機構の保持を実現する構成も考えられる。この構成は、把持機構の保持力を調整可能とすることもできるとともに、比較的安価に実現できる利点がある。
【0241】
<<変形例6>>
上述した変形例5では、異物除去作業を行うための異物除去器具として、吸盤や把持機構を例に挙げて説明したが、異物除去器具としては、これに限らず、様々な異物除去器具がある。そこで、本変形例6では、異物除去器具のバリエーションについて説明する。
【0242】
金型のキャビティ面は、通常、鏡面加工や微細なシボ加工等が施されており、傷を付けるようなことは絶対に回避する必要がある。本変形例6の異物除去器具は、グリップ部に着脱可能に構成されており、主に作業者が異物の形状を見て適切な異物除去器具に取り換えることが行われる。ただし、工作機械の切削ツールの自動交換装置のように、ロボットの傍に複数の異物除去器具が準備されており、カメラ画像を確認した制御装置が最適な異物除去器具を選択してもよい。
【0243】
以下では、吸盤や把持機構以外の異物除去器具について説明する。
【0244】
1.へら
例えば、異物除去器具として、硬質ゴム等からなる断面半円形の「へら」がある。これは、固定金型側のランナ溝も半割状であることから、「へら」もそれに対応した形になっていることを考慮したものである。「へら」を使用する場合は、残留ランナのあるランナ溝の側方から溝に沿って「へら」を移動させることが望ましく、一般的には、除去された残留ランナが下方に落下するようになっている。
【0245】
2.棒状部材やねじ状部材
棒状部材やねじ状部材は、例えば、金属から構成されている。この棒状部材やねじ状部材は、ヒータが取り付けられているか、または、射出成形機の外部で加熱手段によって、樹脂材料の溶融温度以上の温度に加熱される。
【0246】
例えば、樹脂材料のスプルがスプル孔の奥のほうに詰まっている場合は、グリップ部により掴んで引き出すことができないことから、上述したような加熱された棒状部材やねじ状部材をスプルの中央に押し付けてスプルの内部まで樹脂材料を溶かしながら侵入させる。特に、ねじ状部材の場合は、回転させながらスプルに侵入させる。
【0247】
スプルに対して一定の深さまで棒状部材やねじ状部材を挿入したら、スプルと棒状部材およびねじ状部材の温度が降温されてスプルの樹脂材料が固化するのを待つ。そして、樹脂材料が固化したら、次に、ロボットのグリップ部を型開方向(スプルと同軸方向)に移動させることにより、棒状部材またはねじ状部材と一体化された樹脂材料を取り出す。この際、例えば、射出装置の傍から作業者が銅棒の一端をスプルの射出装置側に押し当てて作業者が銅棒の他端をハンマーで叩いて取り出すことも行われている。
【0248】
3.ブラシ、布あるいはバフなど
例えば、異物がキャビティ面の一定面積に薄く貼り付いたカス状の異物である場合、キャビティ面を傷付けない材質から構成されたブラシ、布あるいはバフなどをグリップ部に取り付けて異物除去作業(清掃作業)を行うこともできる。
【0249】
以下では、(1)吸盤および把持機構、(2)「へら」、(3)棒状部材およびねじ状部材、(4)ブラシ、布あるいはバフなどと併用して使用される異物除去手段を説明する。
【0250】
4.高圧空気吹付
高圧空気吹付では、高圧空気供給用のホースがロボットのアームを介して先端部まで接続されており、先端部は断面積を絞っている。そして、先端部から高圧空気が吹き出すようになっている。先端部の形状は、例えば、円形形状、長円計形状、半円形状あるいは長方形形状をしている。なお、高圧空気吹付については、上述した異物除去器具との併用だけでなく、単独でも使用することができる。
【0251】
5.加熱手段
加熱手段には、異物除去器具を直接加熱する手段や異物自体を加熱する手段が含まれている。この加熱手段を実現する構成としては、赤外線ハロゲンランプやバーナなどを挙げることができる。例えば、ゴムの射出成形工程において、キャビティやランナに存在するゴムが未加硫状態で切断されて異物として残留した場合では、未加硫ゴムを上述した加熱手段で加熱することにより安定して取り出すことができる。また、例えば、屈曲部で異常な応力が発生して引っ掛かっている樹脂材料を加熱手段で加熱することにより軟化させると、応力が開放されて異物を取り出しやすくなる。
【0252】
6.冷却手段
冷却手段を使用する技術的意義は、キャビティ内に残留している成形品や異物を冷却手段によって強制的に冷却収縮させることにより成形品や異物を取り出しやすくすることにある。具体的には、異物に液体窒素やドライアイスを当接させて冷却する。または、0度以上20度以下の冷風をノズルから送風して異物を冷却収縮させる。
【0253】
ただし、冷却手段による冷却収縮だけでは異物を除去することが困難であるため、冷却手段は、把持機構などの機械的手段で異物を取り出す際の補助的手段として使用することが望ましい。また、最終的な異物の取り出しは作業者によって行われる一方、異物の温度が高温であると作業者による取り扱いが困難となるため、冷却手段を異物の温度を低下させる目的で使用することも考えられる。
【0254】
7.化学的な液体散布
例えば、酸性物質を含む液剤(洗浄剤)を噴霧した後、ブラシ、布あるいは「へら」などで異物を除去する。この化学的な液体散布の技術的意義は、異物の溶解や分離を促すことにより異物を除去しやすくすることにある。
【0255】
なお、吸盤や把持機構で異物を保持して所定位置に取り出す手段以外の異物除去器具で異物除去作業を行う場合、異物が金型下方の射出成形機の基台(ベッド)などの目的としている場所に落下しているか否かを作業者またはカメラにより確認する必要がある。
【0256】
<<変形例7>>
例えば、具現化態様1において、作業者が作業する際にVRゴーグルを使用してもよい。VRゴーグルを使用することにより、異物をより近くから立体的に視認することができる結果、異物除去作業の精度を向上させることができる。ただし、VRゴーグルを使用するためには、多数のカメラが必要になる。
【0257】
VRゴーグルを使用する利点としては、射出成形機の安全扉を閉めた状態や遠隔地のように直接視認できない状態からでも異物除去作業を行うことができる点が挙げられる。これにより、例えば、ロボットの誤動作による作業者に対する安全配慮を考慮する必要がなくなり、ロボットの手動操作→ティーチングに関して資格がなくても実施できる作業が増加する可能性を高めることができる点で有用である。
【0258】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0259】
1 型締装置
1A 型締装置
2 射出装置
10 固定盤
11 可動盤
11A 可動盤
12 固定金型
12A 金型面
13 可動金型
13A 可動金型
21 ホッパ
22 シリンダ
23 スクリュ
24 スクリュ回転用モータ
25 ヒータ
26 ノズル
27 ピストン
28 油圧装置
30 ロボット
30A ロボット
30B ロボット
30C 兼用ロボット
30D 兼用ロボット
31 アーム
32 グリップ部
33 作動部
34 サーボモータ
35 サーボアンプ
36 記憶部
37 制御部
38 検出部
39 超音波センサ
40 カメラ
40A カメラ
40B カメラ
50A 吸盤
50B 把持機構
100 射出成形機
100A 縦型射出成形機
100B1 射出成形機
100B2 射出成形機
100B3 射出成形機
101 型開閉検出部
102 金型保護検出部
103 型開閉位置検出部
104 入力部
105 記憶部
106 シーケンス制御部
150 成形品
150A 部位
200 ロボット操作装置
201 操作処理部
202 ティーチング実施部
203 入力部
204 出力部
205 記憶部
300 制御装置
300A 制御装置
301 指令部
302 補正判断部
303 補正指令部
304 補正指令値算出部
305 補正指令値算出用学習モデル生成部
306 第1強化学習部
307 異物確認部
308 記憶部
310 初期指令値算出用学習モデル生成部
311 第2強化学習部
312 学習モデル記憶部
313 過去動作ログ記憶部
314 過去異常状態記憶部
315 ティーチング記憶部
400 学習部
401 初期指令値学習部
402 補正指令値学習部
404 入力装置
CAV キャビティ
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