(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104537
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】認証システム、認証方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240729BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20240729BHJP
G06K 19/10 20060101ALI20240729BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240729BHJP
G06K 7/14 20060101ALI20240729BHJP
G06V 10/22 20220101ALI20240729BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
G06K19/06 037
G06K19/10
G06K7/10 372
G06K7/14 017
G06V10/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008806
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴一
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA18
5L096CA02
5L096FA19
5L096FA59
5L096HA07
5L096JA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不正なコピーを検出することができる認証システム、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】認証情報を含む情報コードと凸版印刷されたパターンとを有する認証用ラベル1を用いて認証情報の照合を行う認証システム31であって、認証用ラベル1の画像および特徴量と認証情報とを登録した記憶部41と、判定対象のラベルを撮影して得られた判定対象画像を取得するカメラ51と、判定対象画像から特徴量を抽出する特徴量抽出部44と、判定対象画像から認証情報を抽出する認証情報抽出部43と、抽出された特徴量および認証情報と記憶部に記憶された特徴量および認証情報とを照合する照合部45と、パターンの所定領域について、認証用ラベルの画像と判定対象画像とを比較して、判定対象画像が認証用ラベルから得られたものか、認証用ラベルの複写物から得られたものであるかを判定する複写判定部46と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証情報を含む情報コードと凸版印刷されたパターンとを有する認証用ラベルを用いて認証情報の照合を行う認証システム(31)であって、
前記認証用ラベルの画像および特徴量と前記認証情報とを登録した記憶部(41)と、
判定対象のラベルを撮影して得られた判定対象画像を取得する画像取得部(51)と、
前記判定対象画像から認証情報を抽出する認証情報抽出部(43)と、
前記判定対象画像から特徴量を抽出する特徴量抽出部(44)と、
抽出された認証情報および特徴量と前記記憶部に記憶された認証情報および特徴量とを照合する照合部(45)と、
前記パターンの所定領域について、前記認証用ラベルの画像と前記判定対象画像とを比較して、前記判定対象画像が前記認証用ラベルから得られたものか、前記認証用ラベルの複写物から得られたものであるかを判定する複写判定部(46)と、
を備える認証システム。
【請求項2】
前記複写判定部は、曲線状のマージナルゾーンを含む領域を前記所定領域として比較を行う請求項1に記載の認証システム。
【請求項3】
前記複写判定部は、前記所定領域内においてインクが乗っている領域と乗っていない領域の面積に基づいて、前記比較を行う請求項1に記載の認証システム。
【請求項4】
前記複写判定部は、前記パターンに含まれるファインダパターンを前記所定領域として、前記所定領域内の白と黒の面積に基づいて、前記比較を行う請求項1に記載の認証システム。
【請求項5】
前記判定部は、白黒からなる領域を前記所定領域として比較を行う請求項1に記載の認証システム。
【請求項6】
認証情報を含む情報コードと凸版印刷されたパターンとを有する認証用ラベルを用いて認証情報の照合を行う認証方法であって、
判定対象のラベルを撮影して得られた判定対象画像を取得するステップと、
前記判定対象画像から認証情報を抽出するステップと、
前記判定対象画像から特徴量を抽出するステップと、
抽出された認証情報および特徴量と予め記憶部に記憶された認証情報および特徴量とを照合するステップと、
前記パターンの所定領域について、前記認証用ラベルの画像と前記判定対象画像とを比較して、前記判定対象画像が前記認証用ラベルから得られたものか、前記認証用ラベルの複写物から得られたものであるかを判定するステップと、
を備える認証方法。
【請求項7】
認証情報を含む情報コードと凸版印刷されたパターンとを有する認証用ラベルを用いて認証情報の照合を行うためのプログラムであって、コンピュータに、
判定対象のラベルを撮影して得られた判定対象画像を取得するステップと、
前記判定対象画像から認証情報を抽出するステップと、
前記判定対象画像から特徴量を抽出するステップと、
抽出された認証情報および特徴量と予め記憶部に記憶された認証情報および特徴量とを照合するステップと、
前記パターンの所定領域について、前記認証用ラベルの画像と前記判定対象画像とを比較して、前記判定対象画像が前記認証用ラベルから得られたものか、前記認証用ラベルの複写物から得られたものであるかを判定するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸版印刷された認証用画像を用いて認証情報の照合を行う認証システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、QRコード(登録商標)等の認証用画像をスマートホン等の携帯端末で読み取り、コードをデコードして照合する認証方法が広く普及している。本発明者は、QRコードに加えて、ランダムパターンを使った複合UID(Unique Identifier)の技術を提案した(特許文献1)。
【0003】
特許文献1にて提案した複合UIDの一つの態様は、ランダムなアナログ印刷とユニークなデジタル印刷の組み合わせからなる。長尺状の材料ロールにランダムパターンをエンドレス印刷し、これをカットしてラベルにすることにより、結果的な位置ずれがランダムパターンを構成する。したがって、ランダムパターンは製造者自身にも再現困難な偶然のパターンであり、複合UIDを偽造することは極めて難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
QRコード等を印刷したラベルはコピーすることが可能である。特許文献1に記載した複合UIDも、1枚単位では、すでに存在する複合UIDのラベルをコピー機でコピーしたり、デジタルカメラで撮影してプリントアウトしたりする等の方法で、コピーすることができてしまう。
【0006】
本発明は、上記背景に鑑み、不正なコピーを検出することができる認証システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために以下の技術的手段を採用する。特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0008】
本発明の認証システム(31)は、認証情報を含む情報コードと凸版印刷されたパターンとを有する認証用ラベルを用いて認証情報の照合を行う認証システムであって、前記認証用ラベルの画像および特徴量と前記認証情報とを登録した記憶部(41)と、判定対象のラベルを撮影して得られた判定対象画像を取得する画像取得部(51)と、前記判定対象画像から認証情報を抽出する認証情報抽出部(43)と、前記判定対象画像から特徴量を抽出する特徴量抽出部(44)と、抽出された認証情報および特徴量と前記記憶部に記憶された認証情報および特徴量とを照合する照合部(45)と、前記パターンの所定領域について、前記認証用ラベルの画像と前記判定対象画像とを比較して、前記判定対象画像が前記認証用ラベルから得られたものか、前記認証用ラベルの複写物から得られたものであるかを判定する複写判定部(46)とを備える。
【0009】
マージナルゾーンは凸版印刷によって画像部分の周りに生じるインクの濃い輪郭である。マージナルゾーンを含む認証用画像を複写した場合、2値化処理されるため、マージナルゾーン周辺の濃淡部において、元の画像と複写物の画像との間で誤差が生じる。本発明では、マージナルゾーンについて認証用ラベルの画像と判定対象画像とを比較することで、判定対象画像が認証用ラベルから得られたものかどうかを判定する。これにより、認証用ラベルを用いた認証情報の照合に関し、認証用画像自体を複写して照合をパスできないようにできる。
【0010】
本発明の認証システムにおいて、前記複写判定部は、曲線状のマージナルゾーンを含む領域を前記所定領域として比較を行ってもよい。
【0011】
認証用ラベルの複写の際には、セル単位でインクが乗るか乗らないかが決まるので、曲線を忠実に表現することができず、認証用ラベルの画像と認証用ラベルの複写物の画像との間で大きな差異が生じやすい。この構成により、認証用ラベルの複写を適切に検出することができる。
【0012】
本発明の認証システムにおいて、前記複写判定部は、前記所定領域内においてインクが乗っている領域と乗っていない領域の面積に基づいて、前記比較を行ってもよい。これにより、認証用ラベルの画像と判定対象画像とを容易に比較することができる。
【0013】
本発明の認証システムにおいて、前記複写判定部は、前記パターンに含まれるファインダパターンを前記所定領域として、前記所定領域内の白と黒の面積に基づいて、前記比較を行ってもよい。ファインダパターンを用いることにより、複写判定に用いる所定領域を高速に捕捉できると共に、所定領域の範囲指定の正確性が向上する。認証用ラベルの画像と判定対象画像とを容易かつ精度良く比較することができる。
【0014】
本発明の認証システムにおいて、前記判定部は、白黒からなる領域を前記所定領域として比較を行ってもよい。発明者らの実験によれば、白黒の領域の方がカラーの領域に比べて、精度の良い判定を行えた。
【0015】
本発明の認証方法は、認証情報を含む情報コードと凸版印刷されたパターンとを有する認証用ラベルを用いて認証情報の照合を行う認証方法であって、判定対象のラベルを撮影して得られた判定対象画像を取得するステップと、前記判定対象画像から認証情報を抽出するステップと、前記判定対象画像から特徴量を抽出するステップと、抽出された認証情報および特徴量と予め記憶部に記憶された認証情報および特徴量とを照合するステップと、前記パターンの所定領域について、前記認証用ラベルの画像と前記判定対象画像とを比較して、前記判定対象画像が前記認証用ラベルから得られたものか、前記認証用ラベルの複写物から得られたものであるかを判定するステップとを備える。
【0016】
本発明のプログラムは、認証情報を含む情報コードと凸版印刷されたパターンとを有する認証用ラベルを用いて認証情報の照合を行うためのプログラムであって、コンピュータに、判定対象のラベルを撮影して得られた判定対象画像を取得するステップと、前記判定対象画像から認証情報を抽出するステップと、前記判定対象画像から特徴量を抽出するステップと、抽出された認証情報および特徴量と予め記憶部に記憶された認証情報および特徴量とを照合するステップと、前記パターンの所定領域について、前記認証用ラベルの画像と前記判定対象画像とを比較して、前記判定対象画像が前記認証用ラベルから得られたものか、前記認証用ラベルの複写物から得られたものであるかを判定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、認証用ラベルの不正な複写を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】認証用ラベルの所定パターンの特徴量について説明するための図である。
【
図3】ファインダパターンを拡大して示す図である。
【
図4】マージナルゾーンをデジタルコピー(複写)したときに起こる現象を模式的に示す図である。
【
図5】比較に用いる面積のパラメータを説明するための図である。
【
図6】第1の実施の形態の認証システムの構成を示す図である。
【
図7】記憶部に記憶された認証用ラベルの情報を示す図である。
【
図8】第1の実施の形態の認証システムの動作を示すフローチャートである。
【
図9】第2の実施の形態の認証システムの構成を示す図である。
【
図10】第2の実施の形態の認証システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施の形態の認証システムについて図面を参照して説明する。なお、以下の説明はあくまでも好ましい態様の一例を示したものであり、特許請求の範囲に記載された発明を限定する意図ではない。
【0020】
最初に本実施の形態の認証システムで用いられる認証用ラベルと複写判定の原理について説明する。
【0021】
図1は、認証用ラベル1の例を示す図である。認証用ラベル1は、例えば、シールであり、物品に貼り付けて用いられる。認証用ラベル1は、中央に配置されたQRコード20と、ラベルの一辺に沿って形成された所定のパターン(以下、「所定パターン10」という。)とを有する。
図1において所定パターン10は、ファインダパターン11~15や黒丸の形状のマークが赤(
図1では斜めのハッチングで示す)の領域の中に入り込んだ図柄である。なお、ファインダパターンとは、元々はQRコードの位置を検出するパターン(
図1でいう21A~21C)を示す用語であるが、本明細書ではQRコードのファインダパターンと同様に、内側の黒色の図形を取り囲む黒色領域を有し、中心点を通ってどの方向に直線を引いても当該直線上における白黒比が一定のものをファインダパターンと称している。ファインダパターン11~15のうち、ファインダパターン11,15は菱形の形状を有する。また、ファインダパターン12は、円形のファインダパターンである。
図1では、ファインダパターン11~15を例示しているが、ファインダパターンは、本書における定義からも分かるように、
図1に示すファインダパターン11~15以外の形状や白黒比のものであってもよい。所定パターン10は、認証用ラベル1ごとに異なるパターンであり、そのパターンの特徴量により、認証用ラベル1を照合することができる。
【0022】
QRコード20には、認証用ラベル1を一意に識別するための認証情報がエンコードされている。認証用ラベル1ごとに異なるQRコード20は、デジタル印刷によって認証用ラベル1に印刷される。デジタル印刷には熱転写印字、電子写真方式印字、レーザーマーク、インクジェット式等を含む。レーザーマークの場合には、材料ロール20に全体もしくは一部を黒色としたベタ印刷を行い、ベタ印刷上にレーザーマーカーによって白抜きを行ってパターン形成をする。
【0023】
これに対し、所定パターン10は、アナログ印刷の一つである凸版印刷により印刷される。具体的には、まず、長尺状の材料ロールに対して所定パターン10の元となる図柄をエンドレス印刷する。そして、図柄が印刷された材料ロールを認証用ラベル1の大きさにカットすることで所定パターン10を生成する。材料ロールをカットして生成された台紙に対してQRコード20をデジタル印刷して認証用ラベル1が完成する。
【0024】
このようにして印刷された所定パターン10は、印刷された図柄自体の違いに加え、カットされた位置によって、各認証用ラベル1における所定パターン10の形状が異なってくるので、製造者自身も再現することが困難である。なお、
図1に示す所定パターン10は一例であり、所定パターン10は
図1に示すものに限定されない。認証用ラベル1に用いられる所定パターン10は、不規則な形状で再現性がないことが望ましい。また、所定パターン10は図柄に限らず、文字列でもよい。連続する文字列のように一定の規則性があっても、カットする位置により、異なるパターンとして使用することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施の形態で用いられる認証用ラベル1は、デジタル印刷されたQRコード20と凸版印刷されたランダムパターンの組み合わせで構成されている。本書では、このような認証用ラベル1を複合UID(Unique Identifier)ともいう。
【0026】
図2は、認証用ラベル1の所定パターン10の特徴量について説明するための図である。本実施の形態において特徴量は、一例として、QRコード20の所定部と所定パターン10との位置に基づく情報である。
図1の例では、QRコード20のファインダパターン(「切出しシンボル」)ともいう。)21A,21Bを所定部とし、切出しシンボルの角部と所定パターン10との距離a~dを特徴量としている。なお、特徴量は、例えば、距離a~dの和、距離a~dのうち所定の2つの距離の比等、他の値でもよいし、距離a~dとは異なる量でもよい。
【0027】
本実施の形態の認証システム31は認証用ラベル1の複写を検出する機能を有する。認証用ラベル1の所定パターン10に含まれるファインダパターン11を、不正な複写を検出するための所定領域(以下、「複写判定領域」という。)として用いる。なお、ファインダパターン11は、黒色の正方形の周囲に一定の間隔をあけて黒色の枠で取り囲んだ形状を有している。外側の黒の枠の太さを1とすると、白の間隔も1であり、内側の正方形の辺の長さが3である。ファインダパターン11は、360°どの方向からでもファインダパターン11の中心を通る走査線の白黒比が1:1:3:1:1である。ファインダパターン11の形状は、QRコード20で用いられるファインダパターン21A~21Cと同じである。
【0028】
なお、
図1に示す所定パターン10の中に円形のファインダパターン12が含まれているが、これを複写判定領域としてもよい。円形のファインダパターン12には曲線部分が含まれているため、ジャギーが多く発生しやすく複写したことを検出しやすい。また、円形のファインダパターン12の場合には、コピーするときの向きにかかわらず、セルの配列方向に対して角度を有する曲線部分を有するという点からも、複写したことを検出しやすいという効果がある。
【0029】
図3~
図5を参照して、不正コピーを検出する原理について説明する。
図3は、ファインダパターン11を拡大して示す図である。
図3には、1目盛を1mmとする目盛を記載している。上述したとおり、所定パターン10は凸版印刷により印刷されているので、ファインダパターン11の周囲にマージナルゾーンが形成されている。マージナルゾーンとは、凸版印刷の大きな特徴で、印刷した画像や点のふち(縁)に生じる隈取り(インキの濃い輪郭)のことである。例えば、
図3に〇で囲んで示す部分は、濃淡を有することが分かる。
【0030】
図4は、マージナルゾーンをデジタルコピー(複写)したときに起こる現象を模式的に示す図である。左側が凸版印刷により得られたオリジナルの認証用ラベル1の一部を示し、右側がデジタルコピーをしたときに得られるラベルを示す。
図4に示すように、オリジナルでは濃淡の階調を有していた領域Mが、境界線がギザギザの白黒の領域Rになる。デジタルコピーでは、値を「0」または「1」に変換するので、滑らかな階調を表現することができないためである。本実施の形態の認証システム31は、マージナルゾーンを含む所定領域について、登録された認証用ラベル1の画像と判定対象の画像を比較することで、判定対象の画像が真正な認証用ラベル1を撮影して得られた画像か、認証用ラベル1の複写物を撮影して得られた画像かを判定する。
【0031】
なお、ファインダパターン11は、QRコード20に対して傾いており、ファインダパターンの直線はQRコード20の辺に対して斜めになっている。通常、認証用ラベルをコピーする際には、QRコードがまっすぐになる方向でコピーすることが多いと予想されるが、その場合、複写判定領域のファインダパターン11が斜めになる。斜めの線の場合にはギザギザが現れやすいので、コピーの前後での誤差が大きくなり、コピーの検出精度を高めることができる。ユーザにはどこが複写判定領域かを知らないので、意図的に、複写判定領域のファインダパターン11がコピー方向に対して垂直になるようにすることはできない。
【0032】
認証システム31は、マージナルゾーンの比較を行うために、複写判定領域のファインダパターン11の白と黒の面積を利用する。
図5は、比較に用いる面積のパラメータを説明するための図である。なお、
図5では引出線が見えるように、ファインダパターン11の黒の領域をハッチングで示している。
【0033】
ファインダパターン11は、外側の黒の領域R1と、白の領域R2と、内側の黒の領域R3を有している。本実施の形態では、ファインダパターン11全体に対するこれらの領域R1~R3の面積を比較し、その差分が所定の閾値以下であるかどうかによって、判定対象画像が真正な認証用ラベル1を撮影したものか、認証用ラベル1のコピーを撮影したものかを見分ける。
【0034】
(第1の実施の形態)
図6は、第1の実施の形態の認証システム31の構成を示す図である。認証システム31は、認証サーバ40と携帯端末50とがネットワークによって接続されて構成されている。認証サーバ40には、予め認証用ラベル1についての情報が登録されており、携帯端末50で取得した認証用ラベル1の画像の照合を行う機能を有する。
【0035】
認証サーバ40は、認証用ラベル1の情報を記憶した記憶部41と、携帯端末50と通信を行う通信部42と、認証情報抽出部43と、特徴量抽出部44と、照合部45と、複写判定部46とを備えている。
【0036】
図7は、記憶部41に記憶された認証用ラベル1の情報を示す図である。認証用ラベル1の情報は認証用ラベル1を出荷する際に認証用ラベル1を撮影し、撮影したラベルから各種の情報を取得することによって得られる。記憶部41には、認証情報と、特徴量のデータと、判定用FP(ファインダパターン)面積比のデータと、画像データが記憶されている。ここで、認証情報は、認証用ラベル1のQRコード20にエンコードされた認証情報である。特徴量のデータは、所定パターン10の特徴量を示す情報である。判定用FP面積比は、
図5で説明した面積比を示すデータである。ここには、複写判定領域を特定するデータも含んでおり、面積比を計算すべきファインダパターンを特定できる。画像データは、認証用ラベル1を撮影して得られた画像データである。
【0037】
通信部42は、携帯端末50から判定対象画像のデータを受信すると共に、携帯端末50に対して判定結果のデータを送信する機能を有する。認証情報抽出部43は、携帯端末50から送信された判定対象画像中のQRコード20をデコードして認証情報を抽出する。特徴量抽出部44は、判定対象画像中の所定パターン10の特徴量を抽出する。
【0038】
照合部45は、判定対象画像から抽出した認証情報及び特徴量と、記憶部41に記憶された認証情報及び特徴量と合致するかどうかの照合を行う。具体的には、照合部45は、判定対象画像から抽出した認証情報に対応する特徴量のデータを記憶部41から読み出し、読み出したデータと判定対象画像から抽出した特徴量のデータとを照合する。
【0039】
複写判定部46は、判定対象画像が認証用ラベル1の複写物を撮影して得られた画像か否かの判定を行う。具体的には、複写判定部46は、まず、判定対象画像中から複写判定領域のファインダパターン11を検出し、検出したファインダパターン11の面積比を計算する。続いて、複写判定部46は、認証情報抽出部43にて抽出された認証情報に対応する面積比のデータを記憶部41から読み出し、読み出した面積比のデータと検出した面積比のデータを比較する。面積比の差分が所定の閾値以下であれば、判定対象画像にかかる認証用ラベル1は真正なものであると判定し、差分が所定の閾値より大きければ、判定対象画像にかかる認証用ラベル1は複写されたものであると判定する。
【0040】
次に、携帯端末50の構成について説明する。携帯端末50は、認証用ラベル1を読み取る専用の端末でもよいし、スマートホン等の汎用の端末であってもよい。汎用の端末を用いる場合には、所定のアプリケーションをインストールして、認証サーバ40との通信や、認証結果の表示を行ったり、認証サーバ40と通信して認証サーバ40側のアプリケーションを起動したりする。
【0041】
携帯端末50は、カメラ51と、通信部52と、表示部53とを有している。判定対象のラベルをカメラ51にて撮影し、得られた判定対象画像を通信部52を介して認証サーバ40に送信する。携帯端末50は、認証サーバ40から送信される認証結果のデータを通信部42によって受信し、受信した認証結果を表示部53にて表示する。
【0042】
図8は、第1の実施の形態の認証システム31の動作を示すフローチャートである。まず、携帯端末50は、判定対象のラベルをカメラ51にて撮影し、判定対象画像を取得し(S10)、取得した判定対象画像を認証サーバ40に送信する(S11)。
【0043】
認証サーバ40は、携帯端末50から送信された判定対象画像を受信すると(S12)、受信した判定対象画像から認証情報と特徴量を抽出する(S13)。認証サーバ40は、抽出した認証情報と特徴量と、記憶部41に記憶された認証情報と特徴量とを照合し(S14)、判定対象画像にかかる認証用ラベル1の認証を行う。具体的には、判定対象画像から抽出した認証情報と特徴量との組み合わせが、記憶部41に記憶された認証情報と特徴量との組み合わせのいずれかと一致すれば、照合OKと判定される。
【0044】
続いて、認証サーバ40は、判定対象画像に係る認証用ラベル1が複写物でないかどうかの判定を行う(S15)。具体的には、認証サーバ40は、所定パターン10に含まれる所定のファインダパターン11の白と黒のファインダパターン全体に対する面積比と、記憶部41に記憶された面積比とを比較することにより、判定する。
【0045】
認証サーバ40は、認証結果を携帯端末50に送信する(S16)。認証サーバ40は、認証情報および特徴量の照合と複写判定の結果がいずれもOKの場合に認証OKを送信し、いずれかの判定結果がNGの場合に認証NGを送信する。携帯端末50は、認証サーバ40から認証結果を受信すると(S17)、受信した認証結果を表示する(S18)。
【0046】
以上、本実施の形態の認証システム31の構成について説明したが、上記した認証システム31を構成する認証サーバ40のハードウェアの例は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク、ディスプレイ、キーボード、マウス、通信インターフェース等を備えたコンピュータである。上記した認証サーバ40の各機能を実現するモジュールを有するプログラムをRAMまたはROMに格納しておき、CPUによって当該プログラムを実行することによって、上記した認証サーバ40が実現される。このようなプログラムも本発明の範囲に含まれる。
【0047】
本実施の形態の認証システム31は、凸版印刷されたファインダパターン11のマージナルゾーンに基づいて、オリジナルの認証用ラベル1か、複写された認証用ラベル1かの判定を行うので、不正に複写された認証用ラベル1の使用を防止し、セキュリティを向上させることができる。
【0048】
また、本実施の形態の認証システム31は、複写判定において、マージナルゾーンの誤差を判定するために、ファインダパターン11の白と黒の面積比を用いる構成を採用したことで、高速かつ安定した評価が可能である。なお、本実施の形態では、黒と白の3つの領域R1~R3の面積比を判定する例を挙げたが、領域R1~R3の一部のみを用いた判定でもよく、例えば、白の領域R2の面積比のみを用いてもよい。発明者の実験によれば、白の面積の面積比を用いた場合にも、十分に精度の高い判定が可能であった。
【0049】
また、本実施の形態の認証システム31では、所定パターン10に含まれるファインダパターン11を用いて複写の判定を行う例を挙げたが、所定パターン10に含まれるすべてのファインダパターン11~15を用いて複写の判定を行ってもよい。例えば、すべてのファインダパターン11~15の白の領域の面積の合計値を用いて判定を行うことができる。すべてのファインダパターン11~15を用いることとすれば、どのファインダパターンを用いるかを指定する必要がなくなり、位置データからファインダパターンを探す処理を省くことができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
図9は、第2の実施の形態の認証システム32の構成を示す図である。第2の実施の形態の認証システム32の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じである。すなわち、認証システム32全体として、有している機能は第1の実施の形態と同じであるが、認証サーバ40と携帯端末50との役割分担が異なる。
【0051】
第2の実施の形態では、携帯端末50が認証情報抽出部54と特徴量抽出部55とを有している。また、携帯端末50は、複写判定に用いるファインダパターン11の白と黒の面積比を計算する面積比計算部56を有する。携帯端末50は、判定対象画像から抽出した認証情報と特徴量と面積比のデータを認証サーバ40に送信する。認証サーバ40は、携帯端末50から受信した特徴量と面積比のデータに基づいて、判定対象画像の照合と複写判定を行う。
【0052】
図10は、第2の実施の形態の認証システム32の動作を示すフローチャートである。
まず、携帯端末50は、判定対象のラベルをカメラ51にて撮影して判定対象画像を取得し(S20)、判定対象画像からQRコード20を特定する情報である認証情報を抽出する(S21)。携帯端末50は、認証情報を認証サーバ40に送信する(S21)。
【0053】
認証サーバ40は、携帯端末50から送信された認証情報を受信すると(S22)、受信した認証情報に対応して記憶された判定用ファインダパターンの特定データ(
図7「FPの位置データ」)を記憶部41から読み出し、判定用ファインダパターンの特定データを携帯端末50に送信する(S23)。
【0054】
携帯端末50は、判定用ファインダパターンの特定データを受信し(S24)、受信した特定データによって特定されるファインダパターンを検出し、そのファインダパターンの白と黒の全体に対する面積比を計算する(S25)。また、携帯端末50は、所定パターン10の特徴量を計算する(S25)。本実施の形態においては、所定パターン10の特徴量は、QRコード20のファインダパターン21A,21Bの角部と所定パターン10との距離a~dを特徴量としていることが分かっているので、携帯端末50は特徴量を計算できる。所定パターン10の特徴量の決定の仕方が認証用ラベルごとに異なる場合には、認証サーバ40に、QRコード20に対応付けて特徴量の決定の仕方を示すデータを記憶しておき、認証サーバ40は当該データを携帯端末50に与える。
【0055】
携帯端末50は、所定パターン10の特徴量と複写判定用ファインダパターンの白黒の面積比のデータを、認証情報とともに認証サーバ40に送信する(S25)。認証サーバ40は、携帯端末50から特徴量と面積比のデータを受信する(S26)。認証サーバ40は、認証情報に対応付けられた特徴量のデータを記憶部41から読み出し、読み出した特徴量のデータと受信した特徴量のデータを照合する(S27)。続いて、認証情報に対応付けられた面積比のデータを記憶部41から読み出し、読み出した面積比のデータと受信した面積比のデータとを比較して複写判定を行う(S28)。
【0056】
認証サーバ40は、認証結果を携帯端末50に送信する(S29)。認証サーバ40は、特徴量の照合と複写判定の結果がいずれもOKの場合に認証OKを送信し、いずれかの判定結果がNGの場合に認証NGを送信する。携帯端末50は、認証サーバ40から認証結果を受信すると(S30)、受信した認証結果を表示する(S31)。
【0057】
以上、本発明の実施の形態の認証システムについて詳細に説明したが、本発明の認証システムは上記した実施の形態に限定されるものではない。
【0058】
第2の実施の形態の認証システムは、第1の実施の形態の認証システムの機能分担を変えた例を説明したが、認証システムの機能分担は、上記した実施の形態に限定されない。例えば、携帯端末50にて判定対象画像から抽出した認証情報を認証サーバ40に送り、認証情報に対応する特徴量と判定用FP面積比のデータを認証サーバ40から受信し、携帯端末50にて照合と複写判定を行ってもよい。
【0059】
上記した実施の形態では、複写判定領域として、所定パターンに含まれるファインダパターンを用いる例を挙げたが、複写判定領域はファインダパターンに限定されるものではない。複写判定領域は、マージナルゾーンを含んでいればよい。複写判定領域は、曲線状の境界線を有するマージナルゾーンを含むことが好ましい。
【0060】
また、上記した実施の形態では、白黒の領域であるファインダパターンを複写判定領域としたが、複写判定領域はカラーであってもよい。マージナルゾーンはインクが乗っているところと乗っていないところの境界に生じるので、カラーであっても複写判定領域とすることができる。
【0061】
上記した実施の形態では、マージナルゾーンの比較を行うために、白と黒の面積のデータを用いることとしたが、マージナルゾーンの濃淡消失に起因する誤差を検出する方法として別の方法を採用してもよい。例えば、マージナルゾーンの境界が直線状の場合には、境界の直線度についての指標を用いて、複写の判定を行ってもよい。
【0062】
上記した実施の形態では、認証用ラベルがQRコードを含む例について挙げたが、認証情報をエンコードしたコードはQRコード以外のコードであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 認証用ラベル
10 所定パターン
11 ファインダパターン
20 QRコード
21A~21C ファインダパターン
31,32 認証システム
40 認証サーバ
41 記憶部
42 通信部
43 認証情報抽出部
44 特徴量抽出部
45 照合部
46 複写判定部
50 携帯端末
51 カメラ
52 通信部
53 表示部
54 認証情報抽出部
55 特徴量抽出部
56 面積比計算部