(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104546
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】頭皮/毛髪の処置に好適な組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20240729BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20240729BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240729BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20240729BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20240729BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/92
A61K8/34
A61K8/42
A61Q5/12
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023008820
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】太中 希恵
(72)【発明者】
【氏名】アドリヤン・ケゼール
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC531
4C083AC641
4C083AC642
4C083AD041
4C083AD532
4C083CC03
4C083CC33
4C083CC37
4C083DD23
4C083DD28
4C083EE01
4C083EE22
(57)【要約】
【課題】ケラチン物質、好ましくは頭皮及び毛髪を処置するのに有用である、安定な組成物を提供すること。
【解決手段】(a)少なくとも1種のポリオールと、(b)少なくとも1種の脂肪アミン又はその塩と、(c)脂肪酸-エステル混合物と、(d)水とを含む、組成物であって、組成物中の(d)水の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下である、組成物を提供する。本発明による組成物は安定であり、ケラチン物質、好ましくは頭皮及び毛髪を処置するのに有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のポリオールと、
(b)少なくとも1種の脂肪アミン又はその塩と、
(c)脂肪酸-エステル混合物と、
(d)水と
を含む、組成物であって、組成物中の(d)水の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下である、組成物。
【請求項2】
(a)ポリオールが、グリコールから選択され、好ましくはカプリリルグリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはプロピレングリコールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の(a)ポリオールの量が、組成物の総質量に対して、10質量%~90質量%、好ましくは20質量%~85質量%、より好ましくは30質量%~80質量%の範囲である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(b)脂肪アミンが、アルキルアミドアミン、好ましくはC6~22アルキルアミドC1~6ジアルキルアミンから選択され、より好ましくはステアラミドプロピルジメチルアミンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の(b)脂肪アミンの量が、組成物の総質量に対して、0.1質量%~5質量%、好ましくは0.5質量%~4質量%、より好ましくは1質量%~3質量%の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(c)脂肪酸-エステル混合物が、
(c1)複数の、例えば少なくとも3種、4種又は5種の中鎖脂肪酸を含む脂肪酸成分と、
(c2)複数の、例えば少なくとも3種、4種又は5種の中鎖脂肪酸のモノエステルを含むモノエステル成分と
を含み、中鎖脂肪酸が、6~20個の炭素原子を有するモノカルボン酸を示す、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
組成物。
【請求項7】
(c1)脂肪酸成分が、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキジン酸からなる群から選択される少なくとも3種の脂肪酸を含み、且つ(c1)脂肪酸成分中の各脂肪酸の対応するグリセリドが、(c2)モノエステル成分として使用され、
好ましくは、(c1)脂肪酸成分が、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸を含み、その一方で(c2)モノエステル成分が、モノカプリリン、モノカプリン及びモノラウリンを含み、
(c1)脂肪酸成分中の脂肪酸の総量と、(c2)モノエステル成分中のモノエステルの総量との質量比が、4:1~1:1、好ましくは3:1~1:1、より好ましくは2.5:1~1.5:1の範囲にある、
請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
(c)脂肪酸-エステル混合物が、
(c1)脂肪酸成分の総量に対して、
5~20wt%、好ましくは7~15wt%、より好ましくは8~10wt%の量にあるカプリル酸、
1~10wt%、好ましくは2~8wt%、より好ましくは4~7wt%の量にあるカプリン酸、及び
20~70wt%、好ましくは30~60wt%、より好ましくは40~55wt%の量にあるラウリン酸
を含む脂肪酸成分と、
(c2)モノエステル成分の総量に対して、
0.5~15wt%、好ましくは1~10wt%、より好ましくは4~7wt%の量にあるモノカプリリン、
0.1~10wt%、好ましくは1~8wt%、より好ましくは3~5wt%の量にあるモノカプリン、及び
10~40wt%、好ましくは15~35wt%、より好ましくは20~30wt%の量にあるモノラウリン
を含むモノエステル成分と
を含む、活性化された未使用のココナツ油である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(c)脂肪酸-エステル混合物が、それぞれ、活性化された未使用のココナツ油の総量に対して
(c1)カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸を、5~40wt%、好ましくは10~30wt%、より好ましくは20~25wt%の量で含む、脂肪酸成分、
(c2)モノカプリリン、モノカプリン及びモノラウリンを、1~30wt%、好ましくは5~20wt%、より好ましくは10~15wt%の量で含む、モノエステル成分、
(c3)カプリル酸とカプリン酸とラウリン酸とのジグリセリドを、10~50wt%、好ましくは20~45wt%、より好ましくは30~40wt%の量で含む、ジエステル成分、
(c4)カプリル酸とカプリン酸とラウリン酸とのトリグリセリドを、10~70wt%、好ましくは15~50wt%、より好ましくは20~30wt%の量で含む、トリエステル成分
を含む、活性化された未使用のココナツ油である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中の(c)脂肪酸-エステル混合物の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~20質量%、好ましくは0.01質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(e)少なくとも1種の一価のC2~4アルコールを更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(f)少なくとも1種の脂肪族アルコールを更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
大気圧下25℃の温度にて液体の形態にある、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
化粧用組成物、好ましくはケラチン物質用の化粧用組成物、より好ましくは頭皮及び/又は毛髪用の化粧用組成物である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ケラチン物質、例えば頭皮及び毛髪を処置する美容方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮及び毛髪を処置するのに好適な組成物、好ましくは化粧用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケラチン物質は、ヒトの体の表面、例えば皮膚及び毛髪上に、広く存在している。
【0003】
最近、多くの人々が、頭皮ケアの懸念のうちの1つである脱毛防止(AHL:Anti-Hair Loss)に、より関心を持つようになってきた。そのため、最近、頭皮ケア製品の開発及び市販化に顕著な進歩があった。
【0004】
例えば、WO2021/134463は、脂肪酸-エステル混合物、例えば活性化された未使用のココナツ油、及び多量の水を含む組成物を開示している。WO2021/134463で開示されている組成物は、頭皮ケアに有用である。
【0005】
しかしながら、脂肪酸-エステル混合物及び多量の水を含む組成物が不安定な傾向があり、その結果、それが経年的に相分離を引き起こし、その理由が、脂肪酸-エステル混合物が、水との低いその相溶性に起因して水から分離しやすいためであることが発見された。そのため、WO2021/134463に開示されている組成物の安定性を改善する余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2021/134463
【特許文献2】EP1973415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ケラチン物質、好ましくは頭皮及び毛髪を処置するのに有用である安定な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1種のポリオールと、
(b)少なくとも1種の脂肪アミン又はその塩と、
(c)脂肪酸-エステル混合物と、
(d)水と
を含む、組成物であって、組成物中の(d)水の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下である、組成物によって達成することができる。
【0009】
(a)ポリオールは、グリコールから選択され、好ましくはカプリリルグリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択することができ、より好ましくはプロピレングリコールであってよい。
【0010】
本発明による組成物中の(a)ポリオールの量は、組成物の総質量に対して、10質量%~90質量%、好ましくは20質量%~85質量%、より好ましくは30質量%~80質量%の範囲であってよい。
【0011】
(b)脂肪アミンは、アルキルアミドアミン、好ましくはC6~22アルキルアミドC1~6ジアルキルアミンから選択することができ、より好ましくはステアラミドプロピルジメチルアミンであってよい。
【0012】
本発明による組成物中の(b)脂肪アミンの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~5質量%、好ましくは0.5質量%~4質量%、より好ましくは1質量%~3質量%の範囲であってよい。
【0013】
(c)脂肪酸-エステル混合物は、
(c1)複数の、例えば少なくとも3種、4種又は5種の中鎖脂肪酸を含む脂肪酸成分と、
(c2)複数の、例えば少なくとも3種、4種又は5種の中鎖脂肪酸のモノエステルを含むモノエステル成分と
を含んでよく、
中鎖脂肪酸は、6~20個の炭素原子を有するモノカルボン酸を示す。
【0014】
(c1)脂肪酸成分は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキジン酸からなる群から選択される少なくとも3種の脂肪酸を含んでよく、且つ(c1)脂肪酸成分中の各脂肪酸の対応するグリセリドは、(c2)モノエステル成分として使用されてよく、
好ましくは、(c1)脂肪酸成分は、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸を含んでよく、その一方で(c2)モノエステル成分は、モノカプリリン、モノカプリン及びモノラウリンを含んでよく、
(c1)脂肪酸成分中の脂肪酸の総量と、(c2)モノエステル成分中のモノエステルの総量との質量比は、4:1~1:1、好ましくは3:1~1:1、より好ましくは2.5:1~1.5:1の範囲であってよい。
【0015】
(c)脂肪酸-エステル混合物は、
(c1)脂肪酸成分の総量に対して、
5~20wt%、好ましくは7~15wt%、より好ましくは8~10wt%の量にあるカプリル酸、
1~10wt%、好ましくは2~8wt%、より好ましくは4~7wt%の量にあるカプリン酸、
20~70wt%、好ましくは30~60wt%、より好ましくは40~55wt%の量にあるラウリン酸
を含む脂肪酸成分と、
(c2)モノエステル成分の総量に対して、
0.5~15wt%、好ましくは1~10wt%、より好ましくは4~7wt%の量にあるモノカプリリン、
0.1~10wt%、好ましくは1~8wt%、より好ましくは3~5wt%の量にあるモノカプリン、
10~40wt%、好ましくは15~35wt%、より好ましくは20~30wt%の量にあるモノラウリン
を含むモノエステル成分と
を含む、
活性化された未使用のココナツ油であってよい。
【0016】
(c)脂肪酸-エステル混合物は、それぞれが活性化された未使用のココナツ油の総量に対して、
(c1)カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸を、5~40wt%、好ましくは10~30wt%、より好ましくは20~25wt%の量で含む、脂肪酸成分、
(c2)モノカプリリン、モノカプリン及びモノラウリンを、1~30wt%、好ましくは5~20wt%、より好ましくは10~15wt%の量で含む、モノエステル成分、
(c3)カプリル酸とカプリン酸とラウリン酸とのジグリセリドを、10~50wt%、好ましくは20~45wt%、より好ましくは30~40wt%の量で含む、ジエステル成分、
(c4)カプリル酸とカプリン酸とラウリン酸とのトリグリセリドを、10~70wt%、好ましくは15~50wt%、より好ましくは20~30wt%の量で含む、トリエステル成分
を含む、活性化された未使用のココナツ油であってよい。
【0017】
本発明による組成物中の(c)脂肪酸-エステル混合物の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~20質量%、好ましくは0.01質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の範囲であってよい。
【0018】
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種の一価のC2~4アルコールを更に含んでよい。
【0019】
本発明による組成物は、(f)少なくとも1種の脂肪族アルコールを更に含んでよい。
【0020】
本発明による組成物は、大気圧下25℃の温度にて液体の形態にあってよい。
【0021】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくはケラチン物質用の化粧用組成物、より好ましくは、頭皮及び/又は毛髪用の化粧用組成物であってよい。
【0022】
本発明はまた、ケラチン物質、例えば頭皮及び毛髪を処置するための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、美容方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
鋭意検討の結果、本発明者らは、ケラチン物質、好ましくは頭皮及び毛髪を処置するのに有用である安定な組成物を提供することが、可能であることを発見した。
【0024】
そのため、本発明の一態様は、
(a)少なくとも1種のポリオールと、
(b)少なくとも1種の脂肪アミン又はその塩と、
(c)脂肪酸-エステル混合物と、
(d)水と
を含む、組成物であって、組成物中の(d)水の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下である、組成物である。
【0025】
本発明による組成物は、熱い温度においてさえ又はUV(紫外)線下においてさえ、相分離又は固化が観察されないように、安定である。したがって、本発明による組成物は、熱い条件においてさえ又はUVを含む日光下でさえ、貯蔵することができる。
【0026】
本発明による組成物が、相分離又は固化を引き起こさないため、それは、頭皮及び毛髪等のケラチン物質上に等しく延展することができる。そのため、本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくは頭皮及び毛髪を処置するのに有用である。
【0027】
したがって、本発明による組成物は、安定であり、ケラチン物質、好ましくは頭皮及び毛髪を処置するのに有用である。
【0028】
更に、本発明による組成物は、好ましくはココナツ油、より好ましくは中鎖脂肪酸を含む活性化された未使用のココナツ油である(c)脂肪酸-エステル混合物に由来する、美容効果、例えば水和及び湿潤化を付与することができる。
【0029】
また、(c)脂肪酸-エステル混合物は、抗細菌性の性質を有することができる。したがって、本発明による組成物はまた、抗細菌性効果も有することができる。
【0030】
更に、(c)脂肪酸-エステル混合物は、ケラチン物質上、特に頭皮上に起こる、痒い感覚を制御することができる。したがって、本発明による組成物は、痒い感覚等の不快な感覚なしで、頭皮をケアするのに好ましくは使用することができる。
【0031】
これ以降、本発明による組成物を、より詳細に説明する。
【0032】
ポリオール
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のポリオールを含む。2種以上の異なるタイプの(a)ポリオールを組み合わせて使用してよい。そのため、単一のタイプの(a)ポリオール、又は異なるタイプの(a)ポリオールの組み合わせを使用することができる。
【0033】
用語「ポリオール」は、本明細書では、2つ以上のヒドロキシ基を有するアルコールを意味し、糖類又はその誘導体を包含しない。糖類の誘導体には、糖類の1つ又は複数のカルボニル基を還元することによって得られる糖アルコール、及びそこでその1つ又は複数のヒドロキシ基中の水素原子が、少なくとも1個の置換基、例えばアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基又はカルボニル基で置き換えられた糖類又は糖アルコールが挙げられる。
【0034】
ポリオールは、少なくとも2個のヒドロキシ基、好ましくは2~5個のヒドロキシ基を含む、C2~C12ポリオール、好ましくはC2~C9ポリオールであってよい。
【0035】
ポリオールは、天然ポリオールであっても合成ポリオールであってもよい。ポリオールは、直鎖状、分枝状又は環状の分子構造を有してよい。
【0036】
ポリオールは、グリセリン類及びその誘導体、並びにグリコール類及びその誘導体から選択することができる。ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール(5~50個のエチレンオキシド基)及びカプリリルグリコールからなる群から選択することができる。
【0037】
(a)ポリオールは、グリコールから選択することができ、好ましくはカプリリルグリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択することができ、より好ましくはプロピレングリコールであってよい。
【0038】
本発明による組成物中の(a)ポリオールの量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であってよい。
【0039】
本発明による組成物中の(a)ポリオールの量は、組成物の総質量に対して、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下であってよい。
【0040】
本発明による組成物中の(a)ポリオールの量は、組成物の総質量に対して、10質量%~90質量%、好ましくは20質量%~85質量%、より好ましくは30質量%~80質量%であってよい。
【0041】
脂肪アミン又はその塩
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の脂肪アミン又はその塩を含む。2種以上の異なるタイプの(b)脂肪アミン又はその塩を組み合わせて使用してよい。そのため、単一のタイプの(b)脂肪アミン若しくはその塩、又は異なるタイプの(b)脂肪アミン若しくはその塩の組み合わせを使用することができる。
【0042】
用語「脂肪」は、本明細書では、比較的大きい数の炭素原子の包含を意味する。
【0043】
(b)脂肪アミンは、6~22個の炭素原子、好ましくは8~22個の炭素原子、より好ましくは12~22個の炭素原子を有しうる、置換された又は非置換の炭化水素基、例えばアルキル基を有してもよい。置換基は、ヒドロキシル基又はポリオキシアルキレン基であってよい。
【0044】
(b)脂肪アミンは、第一級、第二級又は第三級脂肪アミンの形態にあってよい。
【0045】
(b)脂肪アミンは、アルキルアミドアミンから選択することができ、これは、C6~22アルキルアミドC1~6ジアルキルアミンであってよい。アルキルアミドアミンは、以下の式(I):
RCONH(CH2)n NR1R2 (I)
(式中、
RCOは、6~22個の炭素原子を有しうるアシル基、例えばステアロイル、ベヘノイル、パルミトイル及びココイルを示し、
R1及びR2は、独立に、C1~6アルキル基、例えばメチル基及びエチル基を示し、
nは、1~5、好ましくは1~3、より好ましくは2又は3の整数を示す)
によって表すことができる。
【0046】
(b)脂肪アミンは、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ジエチルアミノエチルステアラミド、ジメチルステアラミン、ジメチルソイアミン、ソイアミン、トリデシルアミン、エチルステアリルアミン、エトキシル化ステアリルアミン、ジヒドロキシエチルステアリルアミン及びアラキジルベヘニルアミンからなる群から選択することができる。
【0047】
脂肪アミンの塩は、限定されない。(b)脂肪アミンの塩は、ハロゲン、酢酸塩、リン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、乳酸塩及びアルキルスルホン酸塩から選ぶことができる。例えば、(b)脂肪アミンの塩は、ステアリルアミンヒドロクロリド、ソイアミンクロリド、ステアリルアミンホルメート、N-獣脂プロパンジアミンジクロリド及びステアラミドプロピルジメチルアミンシトレートから選択することができる。
【0048】
(b)脂肪アミンは、アルキルアミドアミン、好ましくはC6~22アルキルアミドC1~6ジアルキルアミンから選択することができ、より好ましくはステアラミドプロピルジメチルアミンであってよい。
【0049】
本発明による組成物中の(b)脂肪アミン又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってよい。
【0050】
本発明による組成物中の(b)脂肪アミン又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下であってよい。
【0051】
本発明による組成物中の(b)脂肪アミン又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~5質量%、好ましくは0.5質量%~4質量%、より好ましくは1質量%~3質量%であってよい。
【0052】
脂肪酸-エステル混合物
本発明による組成物は、(c)脂肪酸-エステル混合物を含む。
【0053】
用語「脂肪酸-エステル混合物」は、本明細書では、脂肪酸とエステルとの混合物を意味する。
【0054】
(c)脂肪酸-エステル混合物は、
(c1)複数の、例えば少なくとも3種、4種又は5種の中鎖脂肪酸を含む脂肪酸成分と、
(c2)複数の、例えば少なくとも3種、4種又は5種の中鎖脂肪酸のモノエステルを含むモノエステル成分と
を含んでよい。
【0055】
(c2)モノエステル成分中のモノエステルは、中鎖脂肪酸の、グリセロール等の低級ポリオールとのモノエステルであってよい。
【0056】
中鎖脂肪酸は、6~20個の炭素原子、好ましくは8~16個の炭素原子、より好ましくは8~12個の炭素原子を有するモノカルボン酸であってよい。
【0057】
中鎖脂肪酸は、以下の式(II):
R-C(O)-OH (II)
(式中、
Rは、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和のC5~C19、好ましくはC7~C15、より好ましくはC7~C11炭化水素基、例えばアルキル基を表し、好ましくは、Rは、直鎖状炭化水素基であり、より好ましくはRは、直鎖状アルキル基である)
によって表すことができる。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、Rは、奇数、例えば5、7、9、11、13、15、17又は19個の炭素原子を有してもよい。好ましくは、Rは、7、9、11、13又は15個の炭素原子を有してもよく、より好ましくは、Rは、7、9又は11個の炭素原子を有してもよい。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、中鎖脂肪酸は、単独で使用されてもよく、又は2種以上の脂肪酸の組み合わせとして使用されてもよい。好ましくは、中鎖脂肪酸は、少なくとも3種、4種又は5種の脂肪酸の組み合わせとして使用される。
【0060】
好ましくは、式(II)による中鎖脂肪酸は、カプリル酸(C8)(オクタン酸とも呼ばれる)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)又はアラキジン酸(C20)であってよい。
【0061】
中鎖脂肪酸は、ポリオールで少なくとも部分的にエステル化されてよい。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、(c2)モノエステル成分として有用なモノエステルは、以下の式(III):
R-C(O)-OR' (III)
(式中、
Rは、式(II)に規定されているものであり、
R'は、ポリオールからの残留物である)
によって表されるモノエステルであってよい。
【0063】
ポリオールは、2~20個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは2~6個の炭素原子を含有してよい。有用なポリオールは、グリセロール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール又はジエチレングリコールであってよい。
【0064】
好ましくは、式(III)中、R及びR'は、互いに異なり、Rは、直鎖状C7~C15アルキルを表し、R'は、2~6個の炭素原子を含有する直鎖状ポリオールからの残留物を表す。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、式(II)による中鎖脂肪酸は、好ましくは、式(III)によるモノエステルとの組み合わせで使用されて、(c)脂肪酸-エステル混合物を形成する。
【0066】
好ましくは、(c)脂肪酸-エステル混合物のための中鎖脂肪酸とモノエステルとは同じ脂肪酸部分に関与し、すなわち、式(II)の中鎖脂肪酸と式(III)のモノエステルとは、対応するR基を有する。すなわち、Rとしてヘプチルを有する式(II)の中鎖脂肪酸、すなわちカプリル酸である中鎖脂肪酸が使用される場合、そうであれば、Rとしてヘプチルを有する式(III)のモノエステル、すなわちカプリル酸のモノエステルであるモノエステルが使用されて、(c)脂肪酸-エステル混合物を形成する。また、(c)脂肪酸-エステル混合物のために2種以上の脂肪酸が同時に使用される場合、それぞれ同じ脂肪酸部分を有する、対応する2種以上のモノエステルが使用される。換言すれば、本発明の一実施形態によれば、(c)脂肪酸-エステル混合物は、式(II)の2種以上の脂肪酸と、各脂肪酸の部分的にエステル化されたモノエステルとの混合物であるとみなすことができる。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、(c)脂肪酸-エステル混合物は、複数の、例えば式(II)の少なくとも3種、4種又は5種の中鎖脂肪酸、及びそれぞれ式(II)の中鎖脂肪酸と同じ対応するR基を有する式(III)のモノエステルを含む。中鎖脂肪酸部分に対応して、同じポリオールが使用されてモノエステルを形成することが好ましい。すなわち、(c)脂肪酸-エステル混合物のための式(III)の2種以上のモノエステルについて、それらは同じR'基を有する。何よりも、上に挙げた多様に対応する中鎖脂肪酸を有するグリセリドを形成するために、グリセロールが特に使用される。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、例えば、(c)脂肪酸-エステル混合物は、(c1)脂肪酸成分として使用されることになる、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキジン酸からなる群から選択される少なくとも3種の脂肪酸を含む。その一方で、(c1)脂肪酸成分中の各脂肪酸の対応するモノエステルは、(c2)モノエステル成分として使用される。好ましくは、(c2)モノエステル成分のモノエステルは、それぞれグリセリドである。
【0069】
好ましくは、本発明の一実施形態によれば、(c1)脂肪酸成分は、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸を含む。その一方で、対応する(c2)モノエステル成分は、カプリルグリセリド(モノカプリリンとも呼ばれる)、カプリングリセリド(モノカプリンとも呼ばれる)、及びラウリングリセリド(モノラウリンとも呼ばれる)を含む。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、例えば、(c)脂肪酸-エステル混合物に関して、(c1)脂肪酸成分中の脂肪酸の総量と、(c2)モノエステル成分中のモノエステル、例えばそのグリセリドの総量とは、4:1~1:1、好ましくは3:1~1:1、より好ましくは2.5:1~1.5:1の範囲の質量比において存在する。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、例えば、(c)脂肪酸-エステル混合物は、脂肪酸と、(c2)モノエステル成分としての対応するモノエステルとの混合物を得るために、(c1)脂肪酸成分をポリオールで部分的に直接エステル化してモノエステルを形成することによって得ることができる。ポリオールが使用されるとき、マルチエステル、例えばジエステル、トリエステルなどが最終的に形成されうることが良く理解される。したがって、少なくとも3種の脂肪酸、少なくとも3種の脂肪酸に対応するモノエステル、及び少なくとも3種の中鎖脂肪酸に対応するマルチエステルを含む(c)脂肪酸-エステル混合物が、本発明の目的にとって依然として有用である。
【0072】
本発明の目的では、用語「マルチエステル」は、ポリオールのエステル化から形成された、ポリオール分子の1つ超のヒドロキシル基がエステル化されているエステルを意味するために提供される。したがって、本発明による「ジエステル」又は「トリエステル」は、ポリオール分子の2つ又は3個のヒドロキシル基がエステル化されるところのエステルを、それぞれ意味する。
【0073】
例えば、グリセロールが(c1)脂肪酸成分をエステル化するのに使用されるとき、有用な(c)脂肪酸-エステル混合物は、少なくとも3種の脂肪酸、少なくとも3種の脂肪酸に対応するモノテステル、ジエステル及びトリエステルを含んでよい。例えば、有用な(c)脂肪酸-エステル混合物は、(c1)脂肪酸成分として、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸を、(c2)モノエステル成分として、モノカプリリン、モノカプリン及びモノラウリンを、並びにカプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸のジグリセリド及びトリグリセリドを含んでよい。
【0074】
(c)脂肪酸-エステル混合物がまたマルチエステルも含むとき、マルチエステルの含有量は特に限定されない。例えば、マルチエステルは、(c)脂肪酸-エステル混合物中、最大で90wt%、好ましくは80wt%以下、より好ましくは70wt%以下、更により好ましくは65wt%以下の量で使用することができる。
【0075】
(AVCO)
本発明の一実施形態によれば、例えば、(c)脂肪酸-エステル混合物は、天然起源のものとすることができる。何よりも、ココナツ油が、多種のC8~C20脂肪酸の混合物、特に等しい数の炭素原子を有するものの混合物を含むことがきわめて知られている。
【0076】
そのため、本発明が、(c)脂肪酸-エステル混合物として、ココナツ油、又はココナツ油の誘導体、例えばココナツ油のエステル化製品を使用することが望ましい。
【0077】
何よりも、ココナツ油の有用な誘導体は、活性化された未使用のココナツ油(Activated Virgin Coconut Oil(AVCO))と呼ばれるものである。好ましくは、ココナツ油は、グリセロールでエステル化されている。本発明により有用なAVCOは、(c1)脂肪酸成分としてカプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸を含んでよく、(c2)モノエステル成分としてモノカプリリン、モノカプリン及びモノラウリンを含んでよい。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、例えば、有用なAVCOとして、(c1)脂肪酸成分中の脂肪酸の総量と、(c2)モノエステル成分中のモノグリセリドの総量とは、4:1~1:1、好ましくは3:1~1:1、より好ましくは2.5:1~1.5:1の範囲の質量比において存在する。
【0079】
より詳細には、例えば、AVCOについての例示的実施形態1では、有用なAVCOは、以下を含んでよい: (c1)脂肪酸成分の総量に対して、5~20wt%、好ましくは7~15wt%、より好ましくは8~10wt%の量にあるカプリル酸; 1~10wt%、好ましくは2~8wt%、より好ましくは4~7wt%の量にあるカプリン酸;及び20~70wt%、好ましくは30~60wt%、より好ましくは40~55wt%の量にあるラウリン酸を含む、脂肪酸成分;並びに(c2)モノエステル成分の総量に対して、0.5~15wt%、好ましくは1~10wt%、より好ましくは4~7wt%の量にあるモノカプリリン; 0.1~10wt%、好ましくは1~8wt%、より好ましくは3~5wt%の量にあるモノカプリン;及び10~40wt%、好ましくは15~35wt%、より好ましくは20~30wt%の量にあるモノラウリンを含む、モノエステル成分。
【0080】
ココナツ油のエステル化から得られるAVCOは、上記の(c1)脂肪酸成分及び(c2)モノエステル成分に加えて、ジグリセリド及びトリグリセリドを更に含むことができる。本発明の一実施形態によれば、例えば、有用なAVCOは、(c1)脂肪酸成分として、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸を含んでよく; (c2)モノエステル成分として、モノカプリリン、モノカプリン及びモノラウリンを含んでよく;且つ任意選択でカプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸のジグリセリド及びトリグリセリドを含んでよい。
【0081】
AVCOがまた、ジグリセリド及びトリグリセリドから選択されるマルチエステルも含むとき、マルチエステルの含有量は特に限定されず、例えば最大で90wt%、好ましくは80wt%以下、より好ましくは70wt%以下、更により好ましくは65wt%以下の量においてである。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、例えば、有用なAVCOは、それぞれがAVCOの総量に対して、以下を含んでよい: (c1)5~40wt%、好ましくは10~30wt%、より好ましくは20~25wt%の量にある、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸を含む脂肪酸成分; (c2)1~30wt%、好ましくは5~20wt%、より好ましくは10~15wt%の量にある、モノカプリリン、モノカプリン及びモノラウリンを含むモノエステル成分; (c3)10~50wt%、好ましくは20~45wt%、より好ましくは30~40wt%の量にある、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸のジグリセリドを含むジエステル成分;並びに(c4)10~70wt%、好ましくは15~50wt%、より好ましくは20~30wt%の量にある、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸のトリグリセリドを含むトリエステル成分。
【0083】
有用なAVCOは、好ましくは、参照により本明細書に組み込まれるEP1973415による教示に従って調製されたものとすることができる。したがって、例示的なAVDOは、それぞれがAVCOの総質量に対して、24.63mg/gのカプリル酸(C8)、17.81mg/gのカプリン酸(C10)、133.70mg/gのラウリン酸(C12)、及び11.82mg/gのモノカプリリン、8.29mg/gのモノカプリン及び57.16mg/gのモノラウリン;又は23.10mg/gのカプリル酸(C8)、16.08mg/gのカプリン酸(C10)、116.81mg/gのラウリン酸(C12)及び16.04mg/gのモノカプリリン、10.35mg/gのモノカプリン及び75.54mg/gのモノラウリンを含むことができ、好ましくは、AVCOは、1,3-特定のリパーゼを有してそれをグリセロール分解に供した触媒化ココナツ油に由来する。
【0084】
AVCOとして、市販製品を使用することができる。市販のAVCOとして、Biotropics社により市販されているAVCO(INCI名: Cocos Nucifera(ココナツ)油)を挙げることができる。
【0085】
本発明による組成物中の(c)脂肪酸-エステル混合物の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0086】
本発明による組成物中の(c)脂肪酸-エステル混合物の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってよい。
【0087】
本発明による組成物中の(c)脂肪酸-エステル混合物の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~20質量%、好ましくは0.01質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%であってよい。
【0088】
水
本発明による組成物は、限定された量の(d)の水を含んでよい。
【0089】
(d)水の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であってよい。
【0090】
(d)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。
【0091】
(d)水の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.005質量%~8質量%、より好ましくは0.01質量%~6質量%であってよい。
【0092】
一実施形態では、本発明による組成物は、水を含まなくてもよい。
【0093】
一価のC2~4アルコール
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種の一価のC2~4アルコールを含んでよい。2種以上の異なるタイプの(e)一価のC2~4アルコールを組み合わせて使用してよい。そのため、単一のタイプの(e)一価のC2~4アルコール、又は異なるタイプの(e)一価のC2~4アルコールの組み合わせを使用することができる。
【0094】
(e)一価のC2~4アルコールは、脂肪族アルコール又は高級アルコールではない。
【0095】
用語「一価の」アルコールは、本明細書では、1個のヒドロキシ基を有するアルコールを意味する。
【0096】
(e)一価のC2~4アルコールは、非芳香族(脂肪族)であってよい。
【0097】
(e)一価のC2~4アルコールは、好ましくは飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC2~4脂肪族一価のアルコールである。好ましい一価のC2~4アルコールは、エタノール、イソプロパノール及びこれらの混合物である。
【0098】
本発明による組成物中の(e)一価のC2~4アルコールの量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であってよい。
【0099】
本発明による組成物中の(e)一価のC2~4アルコールの量は、組成物の総質量に対して、40質量%以下、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下であってよい。
【0100】
本発明による組成物中の(e)一価のC2~4アルコールの量は、組成物の総質量に対して、1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~35質量%、より好ましくは10質量%~30質量%であってよい。
【0101】
脂肪族アルコール
本発明による組成物は、(f)少なくとも1種の脂肪族アルコールを含んでよい。2種以上の異なるタイプの(f)脂肪族アルコールを組み合わせて使用してよい。そのため、単一のタイプの(f)脂肪族アルコール、又は異なるタイプの(f)脂肪族アルコールの組み合わせを使用することができる。
【0102】
用語「脂肪」は、本明細書では、比較的大きい数の炭素原子の包含を意味する。そのため、6個以上、好ましくは8個以上、より好ましくは10個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪族アルコールの範囲内に包含される。脂肪族アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。脂肪族アルコールは、直鎖状であっても分枝状であってもよい。2種以上の脂肪族アルコールが組み合わせて使用されてもよい。
【0103】
(f)脂肪族アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、8~40個の炭素原子、例えば8~30個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和の、直鎖状及び分枝状の基から選ばれる)を有してよい。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C24アルキル基及びC12~C24アルケニル基から選ばれる。Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0104】
挙げることができる(f)脂肪族アルコールの非限定的な例には、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、リノレイルアルコール、ウンデシレニルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール、セテアリルアルコール、及びこれらの混合物がある。
【0105】
好適な脂肪族アルコールの例には、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0106】
脂肪族アルコールは、脂肪族アルコールの混合物を表すことができ、これは、脂肪族アルコールのいくつかの種が、市販製品中、混合物の形態において共存できることを意味する。
【0107】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物中で使用される脂肪族アルコールは、セチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物(セテアリルアルコール)から選ばれる。
【0108】
本発明による組成物中の(f)脂肪族アルコールの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってよい。
【0109】
本発明による組成物中の(f)脂肪族アルコールの量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってよい。
【0110】
本発明による組成物中の(f)脂肪族アルコールの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%であってよい。
【0111】
他の成分
本発明による組成物は、皮膚、特定すると頭皮及び毛髪等のケラチン物質用の化粧料中で従来使用されている任意の任意選択の成分、例えばアニオン性、非イオン性、カチオン性、両性又は双性イオン性ポリマー、又はこれらの混合物;アニオン性、非イオン性、カチオン性(成分(b)以外)、両性界面活性剤;増粘剤;芳香剤;乳酸等の酸性化剤、塩基性化剤、メントール等のトニック;保存剤;並びに不透明化剤を含んでよい。
【0112】
組成物
本発明による組成物は、当業者に周知である方法のいずれかに従って、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合することによって調製することができる。
【0113】
本発明による組成物は、大気圧(760mmHg又は105Pa)下25℃等の室温にて、流体の形態、好ましくは液体又はペーストの形態、より好ましくは液体の形態にあることができる。
【0114】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくはケラチン物質用の化粧用組成物、より好ましくは、頭皮及び/又は毛髪用の化粧用組成物であってよい。
【0115】
本発明による組成物は、皮膚、詳細には頭皮をケアするのに使用することができる。好ましくは、本発明による組成物は、頭皮用のコンディショナーとして使用することができる。
【0116】
本発明による組成物はまた、毛髪をケアするのに使用することができる。そのため、本発明による組成物は、毛髪用のコンディショナーとして使用することができる。
【0117】
本発明による組成物は、リーブオンタイプであってもリンスオフタイプであってもよい。リーブオンタイプの組成物は、ケラチン物質上に使用された後にリンスオフされない。リンスオフタイプの組成物は、ケラチン物質上に使用されたのちにリンスオフされる。
【0118】
例えば、本発明による組成物は、ローション、スプレー、トニックなどの形態にあることができる。
【0119】
本発明による組成物はまた、その中に本発明による組成物が、好ましくはノズルキャップを備えたボトル中に充填されるアンプルとしても使用することができる。
【0120】
美容方法
本発明はまた、ケラチン物質、例えば頭皮及び毛髪を処置する美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、美容方法にも関する。
【0121】
本発明による組成物は、最初に手に適用し、次いでその手で頭皮/毛髪に接触することによって、頭皮/毛髪に塗布されてもよい。別の実施形態では、本発明による組成物は、例えば噴霧によって、頭皮/毛髪上に直接塗布されてもよい。他の実施形態では、本発明による組成物は、アプリケータ又は装置、例えばブラシ又はノズルの使用によって、頭皮/毛髪上に塗布されてもよい。
【0122】
本発明による組成物は、リーブオン処置又はリンスオフ処置のために、頭皮及び毛髪等のケラチン物質に塗布されてよい。
【0123】
本発明の一実施形態では、本発明による組成物は、頭皮若しくは毛髪ケア組成物、又は頭皮若しくは毛髪コンディショニング組成物として使用することができる。
【0124】
使用
本発明はまた、
(a)少なくとも1種のポリオールと、
(c)脂肪酸-エステル混合物と、
(d)水と
を含む組成物中における、(b)少なくとも1種の脂肪アミン又はその塩の、組成物を安定化させるための使用であって、組成物中の(d)水の量が、組成物の相総質量に対して、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下である、使用に関しうる。
【0125】
本発明はまた、
(a)少なくとも1種のポリオールと、
(b)少なくとも1種の脂肪アミン又はその塩と、
(c)脂肪酸-エステル混合物と
を含む組成物中における、(d)水の、組成物を安定化させるための使用であって、組成物中の(d)水の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下であるように制御される、使用に関しうる。
【0126】
本発明はまた、
(a)少なくとも1種のポリオールと、
(c)脂肪酸-エステル混合物と
を含む組成物中における、(b)少なくとも1種の脂肪アミン又はその塩及び(d)水の、組成物を安定化させるための使用であって、組成物中の(d)水の量が、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下であるように制御される、使用に関しうる。
【0127】
本発明による組成物のための上記成分(a)~(d)についての説明はまた、本発明による使用のための上記成分(a)~(d)にも当てはめることができる。
【実施例0128】
本発明を、実施例によって、より詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。以下の実施例は、本発明の分野における非限定的な例示として提示される。
【0129】
(実施例1~4及び比較例1~5)
調製
表1に示す、実施例1~4及び比較例1~5による以下の組成物を、表1に示す成分を室温にて混合することによって調製した。別段の指定がない限り、表1に示す成分の量についての数値は全て、原材料としての「質量%」に基づく。酸とメタノールと増粘剤との総量は、組成物の総質量に対して2.0質量%以下である。
【0130】
【0131】
評価
(安定性(RT))
100gの量にある実施例1~4及び比較例1~5による組成物のそれぞれを、その調製直後に、透明なガラス容器中に室温(25℃)にて装入した。室温(RT)における各組成物の外観を、以下の基準に従って目視で評価した。
良好:固化を観察しなかった
不良:固化を観察した
【0132】
結果を、表1中の「安定性(RT)」というタイトルの行に示す。
【0133】
(安定性(50℃))
その調製直後に100gの量にある実施例1~4及び比較例1~5による組成物のそれぞれを、透明なガラス容器中に装入し、50℃にて7日間維持し、続いて室温(25℃)に冷却した。室温における各組成物の外観を、以下の基準に従って目視で評価した。
良好:相分離を観察しなかった
不良:相分離を観察した
【0134】
結果を、表1中の「安定性(50℃)」というタイトルの行に示す。
【0135】
(安定性(UV))
その調製直後に100gの量にある実施例1~4及び比較例1~5による組成物のそれぞれを、透明なガラス容器中に装入し、UV線(1500キセノンランプ)を室温(25℃)にて24時間照射した。室温における各組成物の外観を、以下の基準に従って目視で評価した。
良好:相分離を観察しなかった
不良:相分離を観察した
【0136】
結果を、表1中の「安定性(UV下)」というタイトルの行に示す。
【0137】
(概要)
本発明に対応する実施例1~4による組成物は、熱い条件下でさえ及びUV照射条件下でさえ、非固化及び非相分離の点で、優れた安定性を示している。
【0138】
かなりの量の水を含んだ比較例1~4による組成物は、それらが固化したように、安定ではなかった。
【0139】
脂肪アミンを含んでいなかった比較例5による組成物はまた、それが、熱い条件下及びUV照射条件下で相分離を引き起こしたように、安定ではなかった。